(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スポットの、渦巻状の走査方向に沿う長さをスポット長Dと定義し、前記走査部による前記被写体に対する走査速度をVと定義し、前記パルス光の時間幅をパルス幅Tと定義した場合に、
前記光源部は、次式に示すスポット長D
スポット長D=走査速度V×パルス幅T
が略一定となるように、前記パルス幅Tを前記走査速度Vに合わせて変化させる、
請求項1に記載の走査型共焦点内視鏡システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2や特許文献3に例示される走査型内視鏡システムでは、照射光を略円形の走査領域内で中心から周辺に向かい一定の回転周期で渦巻状に二次元走査する。このように、照射光は等角速度で走査されるため、円周長の短い走査領域内の中心に近い領域ほど照射光の走査速度が遅く、円周長の長い走査領域内の周辺に近い領域ほど照射光の走査速度が速い。そのため、走査領域内の中心部分と周辺部分とでは、走査領域(生体組織)に対する単位面積当たりの照射光量(照射エネルギー)が異なる。より詳細には、走査領域内の中心に近い領域ほど単位面積当たりの照射エネルギーが高く、走査領域内の周辺に近い領域ほど単位面積当たりの照射エネルギーが低い。
【0007】
従って、このような渦巻状の走査方式の構成を特許文献1に例示される共焦点内視鏡システムに適用すると、単位面積当たりの照射エネルギーが高い走査領域内の中心に近い生体組織ほど、生体組織に堆積した蛍光物質の分解(褪色)が走査領域内の周辺に近い生体組織と比べて速く進行する。このため、走査領域内の中心部分が周辺部分と比べて暗い画像となり、一様な明るさの共焦点画像を得ることができないという問題が指摘される。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、走査領域内における蛍光物質の褪色による共焦点画像の明るさのムラを抑えるのに好適な走査型共焦点内視鏡システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態に係る走査型共焦点内視鏡システムは、励起光であるパルス光を射出する光源部と、光源部より射出されるパルス光により被写体を略円形の走査領域内で中心及び周辺の一方から他方に向かい一定の回転周期で渦巻状に二次元走査する走査部と、パルス光の集光点と光学的に共役の位置に配置された共焦点ピンホールと、パルス光により励起された被写体から発せられる蛍光を、共焦点ピンホールを介して受光して画像信号として検出する画像信号検出部と、検出される画像信号に対し、パルス光による走査領域内の走査位置と対応する位置関係にある二次元画素配列内の画素位置を、画像信号の検出タイミングに応じて割り当て、割り当てられた画素位置に各画像信号を配列して共焦点画像を生成する画像生成部とを備えたものである。光源部は、パルス光により走査領域内の各走査位置に形成されるスポットの面積及びスポットの単位面積当たりの
照射エネルギーが略一定となるように、走査位置が走査領域内の周辺に近付くほど、パルス光の時間幅を短くすると共にパルス光の強度を増加させる。
【0010】
本発明の一形態によれば、走査領域内の各走査位置に形成されるスポットの面積及びスポットの単位面積当たりの
照射エネルギーが略一定に揃えられるため、走査領域の全域において褪色が略同じ速さで進行する。そのため、褪色による共焦点画像の明るさのムラが抑えられる。
【0011】
また、例えば、スポットの、渦巻状の走査方向に沿う長さをスポット長Dと定義し、走査部による被写体に対する走査速度をVと定義し、パルス光の時間幅をパルス幅Tと定義した場合に、光源部は、次式に示すスポット長D
スポット長D=走査速度V×パルス幅T
が略一定となるように、パルス幅Tを走査速度Vに合わせて変化させる。
【0012】
また、例えば、スポット1つ当たりの照射エネルギーをEと定義し、パルス光の強度をWと定義した場合に、
光源部は、次式に示す一スポット当たりの照射エネルギーE
一スポット当たりの照射エネルギーE=強度W×パルス幅T
が略一定となるように、強度Wをパルス幅Tに合わせて変化させる。
【0013】
また、光源部は、走査領域内の各走査位置へのパルス光の射出タイミングを、二次元画素配列内の各画素位置と1対1で対応するタイミングで制御する構成としてもよい。
【0014】
また、走査部は、例えば、被写体を走査領域内の中心から周辺に向かい一定の回転周期で渦巻状に二次元走査する。この場合、光源部は、走査部が走査領域内で被写体を1回転走査する毎に、パルス光の時間幅を短くすると共にパルス光の強度を増加させる構成としてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、走査領域内における蛍光物質の褪色による共焦点画像の明るさのムラを抑えるのに好適な走査型共焦点内視鏡システムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の走査型共焦点内視鏡システムについて説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態の走査型共焦点内視鏡システム1の構成を示すブロック図である。本実施形態の走査型共焦点内視鏡システム1は、共焦点顕微鏡の原理を応用して設計されたシステムであり、高倍率かつ高解像度の被写体を観察するのに好適に構成されている。
図1に示されるように、走査型共焦点内視鏡システム1は、システム本体100、共焦点プローブ200及びモニタ300を備えている。走査型共焦点内視鏡システム1を用いた共焦点観察は、可撓性を有する共焦点プローブ200の管状部の先端面を被写体(体腔内の生体組織)に当て付けた状態で行う。
【0019】
システム本体100は、光源102、光分波合波器(フォトカップラ)104、ダンパ106、CPU108、CPUメモリ110、光ファイバ112、受光器114、信号処理回路116、画像メモリ118、信号出力回路120、レーザ制御回路122、リマップテーブル用メモリ124、パルス信号強度調整用メモリ126及び操作部128を有している。共焦点プローブ200は、光ファイバ202、共焦点光学ユニット204、サブCPU206、サブメモリ208及び走査ドライバ210を有している。
【0020】
光源102は、CPU108の指示によるレーザ制御回路122の駆動制御に従い、患者の体腔内に投与された薬剤に含有されている蛍光物質を励起する励起光を射出する。励起光は、例えば波長488nmのパルス状のレーザ光であり、以下「パルス光」と記す。パルス光は、光分波合波器104に入射する。光分波合波器104のポートの一つには、光コネクタ152が結合している。光分波合波器104の不要ポートには、光源102より射出されたパルス光を無反射終端するダンパ106が結合している。前者のポートに入射したパルス光は、光コネクタ152を介して共焦点プローブ200内に配置された光学系に入射する。
【0021】
光ファイバ202の基端は、光コネクタ152を通じて光分波合波器104と結合している。光ファイバ202の先端は、共焦点プローブ200の先端部に組み込まれた共焦点光学ユニット204内に収められている。光分波合波器104を射出したパルス光は、光コネクタ152を介して光ファイバ202の基端に入射した後、光ファイバ202を伝送して光ファイバ202の先端より射出される。
【0022】
図2(a)は、共焦点光学ユニット204の構成を概略的に示す図である。以下、共焦点光学ユニット204を説明する便宜上、共焦点光学ユニット204の軸線方向(長手方向)をZ方向と定義し、Z方向に直交しかつ互いに直交する二方向をそれぞれ、X方向、Y方向と定義する。
図2(a)に示されるように、共焦点光学ユニット204は、各種構成部品を収容する金属製の外筒204Aを有している。外筒204Aは、外筒204Aの内壁面形状に対応する外壁面形状を持つ内筒204Bを同軸(Z方向)にスライド可能に保持している。光ファイバ202の先端(以下、符号「202a」を付す。)は、外筒204A、内筒204Bの各基端面に形成された開口を通じて内筒204Bに収容支持されており、走査型共焦点内視鏡システム1の二次的な点光源として機能する。点光源である先端202aの位置は、CPU108による制御に基づいて周期的に変化する。
【0023】
サブメモリ208は、共焦点プローブ200の識別情報や各種プロパティ等のプローブ情報を格納している。サブCPU206は、システム起動時にサブメモリ208からプローブ情報を読み出して、システム本体100と共焦点プローブ200とを電気的に接続する電気コネクタ154を介してCPU108に送信する。CPU108は、送信されたプローブ情報をCPUメモリ110に格納する。CPU108は、格納したプローブ情報を必要時に読み出して共焦点プローブ200の制御に必要な信号を生成して、サブCPU206に送信する。サブCPU206は、CPU108から送信された制御信号に従って走査ドライバ210に必要な設定値を指定する。
【0024】
走査ドライバ210は、指定された設定値に応じたドライブ信号を生成して、先端202a付近の光ファイバ202の外周面に接着固定された二軸アクチュエータ204Cを駆動制御する。
図2(b)は、二軸アクチュエータ204Cの構成を概略的に示す図である。
図2(b)に示されるように、二軸アクチュエータ204Cは、走査ドライバ210と接続された一対のX軸用電極(図中「X」、「X’」)及びY軸用電極(図中「Y」、「Y’」)を圧電体上に形成した圧電アクチュエータである。
【0025】
走査ドライバ210は、交流電圧Xを二軸アクチュエータ204CのX軸用電極間に印加して圧電体をX方向に共振させると共に、交流電圧Xと同一周波数であって位相が直交する交流電圧YをY軸用電極間に印加して圧電体をY方向に共振させる。交流電圧X、Yはそれぞれ、振幅が時間に比例して線形に増加して、時間(X)、(Y)かけて実効値(X)、(Y)に達する電圧として定義される。光ファイバ202の先端202aは、二軸アクチュエータ204CによるX方向、Y方向への運動エネルギーが合成されることにより、X−Y平面に近似する面(以下、「XY近似面」と記す。)上において中心軸AXを中心に渦巻状のパターンを描くように回転する。先端202aの回転軌跡は、印加電圧に比例して大きくなり、実効値(X)、(Y)の交流電圧が印加された時点で最も大きい径を有する円の軌跡を描く。
図3に、XY近似面上の先端202aの回転軌跡を示す。
【0026】
パルス光は、二軸アクチュエータ204Cへの交流電圧の印加開始直後から印加停止までの期間中、レーザ制御回路122による光源102の駆動制御に従って、光ファイバ202の先端202aから所定の発光パターンで射出される。以下、説明の便宜上、この期間を「サンプリング期間」と記す。サンプリング期間が経過して二軸アクチュエータ204Cへの交流電圧の印加が停止すると、光ファイバ202の振動が減衰する。XY近似面上における先端202aの円運動は、光ファイバ202の振動の減衰に伴って収束し、所定時間経過後に中心軸AX上で停止する。以下、説明の便宜上、サンプリング期間が終了してから先端202aが中心軸AX上に停止するまでの期間(より正確には、中心軸AX上での停止を保証するため、停止までに要する計算上の時間より僅かに長い期間)を「制動期間」と記す。一フレームに対応する期間は、1つのサンプリング期間と1つの制動期間で構成される。制動期間を短縮するため、制動期間の初期段階に二軸アクチュエータ204Cに逆相電圧を印加して制動トルクを積極的に加えてもよい。
【0027】
また、
図2(a)に示されるように、光ファイバ202の先端202aの前方には、対物光学系204Dが設置されている。対物光学系204Dは、複数枚の光学レンズで構成されており、図示省略されたレンズ枠を介して外筒204Aに保持されている。レンズ枠は、外筒204Aの内部において、内筒204Bと相対的に固定され支持されている。そのため、レンズ枠に保持された光学レンズ群は、外筒204Aの内部を内筒204Bと一体となってZ方向にスライドする。
【0028】
内筒204Bの基端面と外筒204Aの内壁面との間には、圧縮コイルばね204E及び形状記憶合金204Fが取り付けられている。圧縮コイルばね204Eは、自然長からZ方向に初期的に圧縮狭持されている。形状記憶合金204Fは、Z方向に長尺な棒形状を持ち、常温下で外力が加わると変形して、一定温度以上に加熱されると形状記憶効果で所定の形状に復元する性質を有している。形状記憶合金204Fは、形状記憶効果による復元力が圧縮コイルばね204Eの復元力より大きくなるように設計されている。走査ドライバ210は、サブCPU206が指定した設定値に応じたドライブ信号を生成して、形状記憶合金204Fを通電し加熱することにより、形状記憶合金204Fの伸縮量を制御する。形状記憶合金204Fは、伸縮量に応じて内筒204Bを光ファイバ202ごとZ方向に進退させる。具体的には、形状記憶合金204Fは、加熱されてZ方向に延びる(復元する)ことにより、内筒204Bを光ファイバ202ごと前方(Z方向)に押し出す。形状記憶合金204Fはまた、徐冷が進むにつれて形状記憶効果による復元力が低下することに伴い、圧縮コイルばね204EによりZ方向に圧縮されて、内筒204Bを光ファイバ202ごと後方(Z方向)に引っ込める。
【0029】
光ファイバ202の先端202aより射出されたパルス光は、対物光学系204Dを透過して被写体の表面又は表層でスポットを形成する。スポット形成位置は、点光源である先端202aの進退に応じてZ方向に変位する。すなわち、共焦点光学ユニット204は、二軸アクチュエータ204Cによる先端202aのXY近似面上の周期的な円運動とZ方向の進退を併せることで、被写体を三次元走査する。
【0030】
光ファイバ202の先端202aは、対物光学系204Dの前側焦点位置に配置されているため、共焦点ピンホールとして機能する。先端202aには、パルス光により励起された被写体より発せられる蛍光のうち先端202aと光学的に共役な集光点からの蛍光のみが入射する。先端202aより光ファイバ202内に入射した蛍光は、光ファイバ202を伝送後、光コネクタ152を介して光分波合波器104に入射する。光分波合波器104は、入射した蛍光を光源102から射出されるパルス光と分離して光ファイバ112に導く。蛍光は、光ファイバ112を伝送して受光器114により検出される。ここで検出される信号は、被写体の共焦点画像をなす画像情報であり、以下「画像信号」と記す。受光器114により検出された画像信号は、図示省略された回路にてAD変換された後、信号処理回路116に入力される。なお、受光器114は、微弱な光を低ノイズで検出するため、例えば光電子増倍管等の高感度光検出器としてもよい。
【0031】
ここで、サンプリング期間中の光ファイバ202の先端202aの位置(軌跡)が決まると、先端202aがある位置に来た時に射出されるパルス光による走査領域内の走査位置(スポット形成位置)と、このスポット形成位置からの戻り光(蛍光)を受光器114で受光して画像信号を得る信号取得タイミング(以下、「サンプリング点」という。)がほぼ一義的に決まる。そこで、本実施形態では、予め、キャリブレーションにより先端202aの軌跡をモニタし、その結果を基にスポット形成位置及びサンプリング点を推定している。そして、各サンプリング点に対応する、共焦点画像をなす各画素の位置(画素アドレス)とパルス光の発光パターンとが決定されている。サンプリング点(換言すると走査領域内の走査位置)と画素アドレスとの対応関係は、リマップテーブルとして、リマップテーブル用メモリ124に格納されている。リマップテーブルでは、共焦点画像をなす全ての画素アドレスの夫々について、対応するサンプリング点(換言すると走査位置)が1対1で関連付けられている。
【0032】
レーザ制御回路122は、リマップテーブルに基づいて各々が各画素アドレスと1対1で対応付けられたパルス信号よりなるパルス信号列を生成し、生成されたパルス信号列を用いて光源102によるパルス光の発光タイミングを制御する。また、パルス信号強度調整用メモリ126には、一サンプリング期間内に照射されるパルス光と各パルス光の強度とを関連付けたパルス光強度調整用テーブルが格納されている。レーザ制御回路122は、パルス光強度調整用テーブルに基づいてパルス信号列内の各パルス信号により発光されるパルス光の強度を調整する。これにより、光源102から、リマップテーブルの各サンプリング点(及び各画素アドレス)に対応するタイミングで、所定の強度に調整されたパルス光が発光される。
【0033】
信号処理回路116は、受光器114にて蛍光が受光されることによって検出される画像信号に対し、リマップテーブルを参照して、その蛍光が発せられた位置(パルス光の走査位置)と対応する位置関係にある画素アドレスを、サンプリング点に応じて割り当てる(リマッピングする)。このリマッピングにより、各画像信号によって表現される点像を画素アドレスに従って二次元に配列したもの(共焦点画像)の生成が可能となる。リマップ処理後の画像信号は、画像メモリ118にフレーム単位でバッファリングされる。バッファリングされた信号は、所定のタイミングで画像メモリ118から信号出力回路120に掃き出されて、NTSC(National Television System Committee)やPAL(Phase Alternating Line)等の所定の規格に準拠した映像信号に変換されてモニタ300に出力される。これにより、高倍率かつ高解像度の被写体の共焦点画像がモニタ300の表示画面に表示される。
【0034】
上記のように、被写体は、XYの二次元方向に関して略円形の走査領域内の中心から周辺に向かい渦巻状に走査(スパイラルスキャン)される。このとき、光ファイバ202は共振運動のため、各スパイラルの周期(1回転の走査にかかる時間)は同じである。そのため、例えば被写体に一定の時間間隔でパルス光を照射した場合、走査速度の遅い走査領域内の中心に近い領域ほどスポット形成位置が密となり、単位面積当たりの照射エネルギーが高くなる。この結果、走査領域内の中心に近い領域ほど褪色がより一層顕著に起きるという、上述した問題が発生する。
【0035】
これに対し、本実施形態では、パルス光を一定の時間間隔で照射することなく、共焦点画像をなす1つの画素に対して1つのパルス光(走査位置)を対応させ、その対応関係に応じたタイミングでパルス光を照射する。
図4は、パルス光による被写体に対するスポット形成位置と、ラスタ座標(共焦点画像の画素アドレス)との関係を模式的に示す図である。
図4に示されるように、一画素に対応する被写体の領域に対して1つのパルス光を照射することにより、走査領域内の中心に近い領域ほどスポット形成位置が密に配置されるという問題が解消される。
【0036】
ところで、渦巻状の走査方式(スパイラルスキャン方式)では、走査領域内の周辺に近付くほど走査速度が速くなるため、パルス幅(パルス光の時間幅)を一定とすると、パルス光により被写体に形成されるスポットの形状は、
図4の拡大図に示されるように、走査領域内の中心から周辺に向かうほどスパイラル方向に長くなる(スポット長が長くなる)。パルス光(スポット径)の大きさ自体は実質一定であるため、被写体に形成される各スポットの幅は実質同じである。そのため、スポットの面積はスポット長に依存して変化する。例えば、スポット長が等しいスポットは面積も等しく、スポット長が異なるスポットは面積も異なる。スポット長が短いほどスポット面積は小さくなる。
図4の拡大図に示す例では、走査領域内の中心に近い領域ほどスポット長が短くスポット面積が小さいため、パルス光の強度を一定とすると、走査領域内の中心に近い領域ほどスポットの単位面積当たりの照射エネルギーが高くなる。この結果、走査領域内の中心に近い領域のスポットほど褪色をより速く進行させるという問題が発生する。そこで、本実施形態の走査型共焦点内視鏡システム1では、以下に説明するように、パルス光の時間幅及び強度が設定されている。
【0037】
図5は、一サンプリング期間内に照射されるパルス光の時間幅及び強度の関係を示す図である。
図5の例では、説明の便宜上、一サンプリング期間内に行われる被写体の走査は5回転(5スパイラル)とする。
図5中、「スパイラルS」のS1〜S5は、一サンプリング期間内における各スパイラルの序数を示す。例えば、スパイラルS1は1回転目のスパイラルを示し、走査領域内の中心に最も近い領域の走査に対応する。また、スパイラルS5は5回転目のスパイラルを示し、走査領域内の周辺に最も近い領域の走査に対応する。なお、説明の便宜上、
図5に示す各パラメータを相対値で示しているため、単位は付してない。
【0038】
また、
図5中、「走査速度V」のV1〜V5はそれぞれ、スパイラルS1〜S5時の走査速度を示す。走査速度V1〜V5は、各スパイラルS1〜S5の周期が一定であることから、スパイラル軌跡の直径と相関した値となっており、走査位置が走査領域内の中心から周辺に近付くにつれてリニアに上昇する。
図5の例では、走査速度V1を0〜1(スパイラルS1の始点での走査速度〜スパイラルS1の終点での走査速度)とし、走査速度V2〜V5をそれぞれ、1〜2(スパイラルS2の始点での走査速度〜スパイラルS2の終点での走査速度)、2〜3(スパイラルS3の始点での走査速度〜スパイラルS3の終点での走査速度)、3〜4(スパイラルS4の始点での走査速度〜スパイラルS4の終点での走査速度)、4〜5(スパイラルS5の始点での走査速度〜スパイラルS5の終点での走査速度)とする。
【0039】
また、
図5中、「強度W」のW1〜W5はそれぞれ、スパイラルS1〜S5時に被写体に照射されるパルス光の強度を示す。強度W1〜W5は、一パルス毎に(すなわち走査領域内の中心から周辺に近付く毎に)増加する。
図5の例では、強度W1を0〜1(スパイラルS1の始点での強度〜スパイラルS1の終点での強度)とし、強度W2を1〜2(スパイラルS2の始点での強度〜スパイラルS2の終点での強度)とし、強度W3を2〜3(スパイラルS3の始点での強度〜スパイラルS3の終点での強度)とし、強度W4を3〜4(スパイラルS4の始点での強度〜スパイラルS4の終点での強度)とし、強度W5を4〜5(スパイラルS5の始点での強度〜スパイラルS5の終点での強度)とする。なお、スパイラルS1の始点に対応する走査位置には、パルス光が照射されないため、強度W1が0となっている。
【0040】
また、
図5中、「パルス幅T」のT1〜T5はそれぞれ、スパイラルS1〜S5時に被写体に照射されるパルス光の時間幅を示す。パルス幅T1〜T5は、一パルス毎に(すなわち走査領域内の中心から周辺に近付く毎に)短くなる。
図5の例では、パルス幅T1を10〜5(スパイラルS1の始点でのパルス幅〜スパイラルS1の終点でのパルス幅)とする(上述したように、スパイラルS1の始点に対応する走査位置にはパルス光が照射されないが、説明の便宜上、パルス幅T1=10のパルス光が照射されると仮定する。)。また、パルス幅T2を5〜5/2(スパイラルS2の始点でのパルス幅〜スパイラルS2の終点でのパルス幅)とし、パルス幅T3を5/2〜5/3(スパイラルS3の始点でのパルス幅〜スパイラルS3の終点でのパルス幅)とし、パルス幅T4を5/3〜5/4(スパイラルS4の始点でのパルス幅〜スパイラルS4の終点でのパルス幅)とし、パルス幅T5を5/4〜1(スパイラルS5の始点でのパルス幅〜スパイラルS5の終点でのパルス幅)とする。
【0041】
また、
図5中、「スポット長D」のD1〜D5はそれぞれ、スパイラルS1〜S5時に被写体に形成されるスポットのスパイラル方向の長さ(
図4参照)を示す。このスポット長Dは次式により定義される。
スポット長D=走査速度V×パルス幅T
【0042】
図5の例では、一サンプリング期間内において被写体が1回転走査される毎に走査速度Vが上昇する一方、この走査速度Vの上昇に合わせてパルス幅Tを短くすることにより、スポット長Dを略一定に保つことができている。すなわち、走査領域内の中心から周辺に向かうほどスポットがスパイラル方向に長くなるという、上述した問題が解消されている。なお、各パルス信号に対応するパルス幅Tの情報は、リマップテーブルに含まれている。そのため、レーザ制御回路122は、リマップテーブルに基づいて生成されたパルス信号列を用いることにより、スパイラルの回転数が増える毎にパルス幅Tが短くなるパルス光を、各サンプリング点に対応するタイミングで発光することができる。
【0043】
但し、スポット長Dを一定に揃えただけでは、次式に示されるように、パルス幅Tを走査領域内の周辺に近付くほど短くしたことに伴い、一スポット当たりの照射エネルギーEが走査領域内の周辺に近付くほど低くなるという新たな問題が発生する。
一スポット当たりの照射エネルギーE=強度W×パルス幅T
【0044】
そこで、本実施形態では、一サンプリング期間内において被写体が1回転走査される毎にパルス幅Tを短くする一方、このパルス幅Tを短くすることに合わせて強度Wを増加させることにより、一スポット当たりの照射エネルギーEを一定に保つように構成されている。各パルス光の強度Wを示す強度情報は、パルス光強度調整用テーブルに含まれている。そのため、レーザ制御回路122は、リマップテーブルに基づいて生成されたパルス信号列及びパルス信号列に含まれる各パルス信号に対応する強度情報に基づいて、スパイラルの回転数が増える毎にパルス幅Tが短くなり且つ強度Wが増加するパルス光を、各サンプリング点に対応するタイミングで発光することができる。
【0045】
なお、CPUメモリ110には、適切なパルス幅Tと強度Wとが組み合わせられた情報のセットが複数種類記憶されている。術者は、操作部128を操作することにより、CPUメモリ110に記憶された複数種類の上記情報の中から1つを指定することができる。また、パルス幅T及び強度Wは、術者が操作部128を操作して任意にその数値を指定できるようにしてもよい。
【0046】
このように、本実施形態では、走査領域内に形成される各スポットの面積及び単位面積当たりの
照射エネルギーが略一定に揃えられるため、走査領域の全域において褪色が略同じ速さで進行する。そのため、褪色による共焦点画像の明るさのムラが抑えられる。
【0047】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施例等又は自明な実施例等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
【0048】
例えば、本実施形態では、パルス幅Tの低減及び強度Wの増加を一パルス毎に(すなわち走査領域内の中心から周辺に近付く毎に)行っているが、別の実施形態では、パルス幅Tの低減及び強度Wの増加を一スパイラル毎に行ってもよい。