【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、多層シートを光起電力モジュールの裏面カバーとして用いる使用であって、前記多層シートが、以下の層:
a)ソーラーセルと向かい合った、成形材料からなる層であって、該成形材料が、成形材料全体に対してそれぞれ、少なくとも35質量%の、好ましくは少なくとも40質量%の、特に好ましくは少なくとも45質量%の、殊に好ましくは少なくとも50質量%の、より特に好ましくは少なくとも55質量%のポリアミド割合を有する前記層と、
c)成形材料からなる中間層であって、該成形材料が、成形材料全体に対してそれぞれ、少なくとも35質量%の、好ましくは少なくとも40質量%の、特に好ましくは少なくとも45質量%の、殊に好ましくは少なくとも50質量%の、より特に好ましくは少なくとも55質量%のポリプロピレン割合を有する前記層と、
e)外側に向かって配置された、成形材料からなる層であって、該成形材料が、成形材料全体に対してそれぞれ、少なくとも35質量%の、好ましくは少なくとも40質量%の、特に好ましくは少なくとも45質量%の、殊に好ましくは少なくとも50質量%の、より特に好ましくは少なくとも55質量%のポリアミド割合を有する前記層と、
を有し、かつ前記a)とc)の層間の付着並びに前記c)とe)の層間の付着は、以下の1.、2.から選択される措置:
1. 付着性向上のために十分な濃度の酸無水物基を有するポリプロピレンを前記c)の層中に存在させる措置、
2. 付着媒介層b)を、前記a)とc)の層間へと、及び付着媒介層d)を、前記c)とe)の層間へと導入する措置
によって引き起こされる、前記使用によって解決される。
【0010】
前記措置1.において、前記成形材料のポリプロピレン全体か、又はその一部のみは官能化されていてよい。官能化されたポリプロピレンに関しては、次のポイントと同じことが当てはまる。その代わりに、ポリプロピレン成形材料は、それと相容性の官能化されたポリオレフィンを含有してよく、該ポリオレフィンは、十分に官能性の基、特に酸無水物基もしくはエポキシ基が、ポリアミド層への接合のために提供され、それは、例えばエチレン、メチルアクリレート及び/又はエチルアクリレート並びにグリシジルメタクリレートもしくは無水マレイン酸(MSA)からなる共重合体である。前記の官能化されたポリオレフィンは、ポリプロピレンと、それらが分子状に混合可能であるかもしくはコンパウンディングの後にポリプロピレン中に熱力学的に安定に分散されている場合には相容性であるため、こうして前記a)とe)の層同士についての固い層付着を媒介する。
【0011】
前記措置2.において、付着媒介剤(Haftvermittler)の種類は重要ではない。層同士が互いに十分に固く結合して、製造並びにその後の使用に際して剥離しない、あらゆる付着媒介剤を使用できる。最も単純な場合には、該付着媒介剤は、酸無水物基を含むポリプロピレンであり、前記酸無水物基は、公知のように、ポリプロピレンと、不飽和ジカルボン酸無水物、不飽和ジカルボン酸もしくは不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステルとを、隣接する層のポリアミドに良好に接合するのに十分な濃度で、熱的にもしくはラジカル的に反応させることによって導入される。好適な試薬は、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノブチルエステル、フマル酸、アコニット酸又は無水イタコン酸である。このように、好ましくは0.1〜4質量%の不飽和無水物が前記ポリプロピレンに対してグラフト化されている。技術水準によれば、不飽和ジカルボン酸無水物又はその前駆体は、また他の不飽和モノマー、例えばスチレン、α−メチルスチレンもしくはインデンなどのモノマーと一緒にグラフト化することもできる。しかしながら、付着媒介剤は、酸無水物基を有するかかるポリプロピレンとポリアミドとからなるブレンドであってもよい。更に、付着媒介剤は、官能化されていないポリプロピレンを含有してもよい。適しているのは、また、ポリプロピレンと、好適な添加剤、例えばエチレン、メチルアクリレート及び/又はエチルアクリレート並びにグリシジルメタクリレートあるいはMSAからなる共重合体などの添加剤とのブレンドである。更なる好適な付着媒介剤は、ポリアミド、官能化されたエチレン−プロピレン−ゴム及び官能化されていないポリプロピレンから構成されている。適しているのは、また、EP−A−1216823号に開示される付着媒介剤である。付着媒介剤がポリアミドを含む場合に、ここで、前記a)とe)の層中と同じポリアミドか又は該ポリアミドと、その上に付着するのに十分に相容性のポリアミドが選択されるべきである。
【0012】
前記ポリアミドは、部分晶質ポリアミド、例えばPA6、PA66、PA610、PA612、PA10、PA810、PA106、PA1010、PA11、PA1011、PA1012、PA1210、PA1212、PA814、PA1014、PA618、PA512、PA613、PA813、PA914、PA1015、PA11、PA12などのポリアミド又は部分芳香族ポリアミド、いわゆるポリフタルアミド(PPA)であってよい。(ポリアミドの符号は国際規格に相応しており、その際、1つ以上の最初の数字は出発ジアミンのC原子数を示し、1つ以上の最後の数字はジカルボン酸のC原子数を示す。数字が1つだけ挙げられている場合、これは、α,ω−アミノカルボン酸から、もしくはα,ω−アミノカルボン酸から誘導されたラクタムから出発していることを意味し;その他の点はH.Domininghaus,Die Kunststoffe und ihre Eigenschaften,第272頁以降,VDI−Verlag,1976を参照のこと)。好適なPPAは、例えばPA66/6T、PA6/6T、PA6T/MPMDT(MPMDは、2−メチルペンタメチレンジアミンを表す)、PA9T、PA10T、PA11T、PA12T、PA14T並びに最後のタイプと、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との又はω−アミノカルボン酸もしくはラクタムとの共重縮合物である。部分晶質ポリアミドは、ISO 11357によるDSC法で2回目の昇温時に融解ピークの積分により測定される25J/gより高い溶融エンタルピーを有する。
【0013】
しかしながら、そのポリアミドは、半晶質のポリアミドであってもよい。半晶質ポリアミドは、ISO 11357によるDSC法で2回目の昇温時に融解ピークの積分により測定される4〜25J/gの溶融エンタルピーを有する。好適な半晶質ポリアミドのための例は、
− 1,10−デカン二酸もしくは1,12−ドデカン二酸と4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタンとからなるポリアミド(PA PACM10及びPA PACM12)であって、35〜65%のトランス,トランス−異性体割合を有する4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタンに由来するもの;
− 上述の部分晶質ポリアミドを基礎とするコポリマー;並びに
− 上述の部分晶質ポリアミドと、それと相容性の非晶質ポリアミドとからなるブレンド
である。
【0014】
そのポリアミドは、非晶質のポリアミドであってもよい。非晶質ポリアミドは、ISO 11357によるDSC法で2回目の昇温時に融解ピークの積分により測定される4J/gより低い溶融エンタルピーを有する。非晶質ポリアミドのための例は、
− テレフタル酸及び/又はイソフタル酸と、2,2,4−及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンからなる異性体混合物とからのポリアミド、
− イソフタル酸と1,6−ヘキサメチレンジアミンからのポリアミド、
− テレフタル酸/イソフタル酸と1,6−ヘキサメチレンジアミンとからなる、場合により4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタンとの混合物における混合物からのコポリアミド、
− テレフタル酸及び/又はイソフタル酸、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン及びラウリンラクタムもしくはカプロラクタムからのコポリアミド、
− 1,12−ドデカン二酸もしくはセバシン酸、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン及び場合によりラウリンラクタムもしくはカプロラクタムからの(コ)ポリアミド、
− イソフタル酸、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン及びラウリンラクタムもしくはカプロラクタムからのコポリアミド、
− 1,12−ドデカン二酸と、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン(低いトランス,トランス異性体割合で)とからのポリアミド、
− テレフタル酸及び/又はイソフタル酸と、アルキル置換されたビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン同族体とからの、場合によりヘキサメチレンジアミンとの混合物での(コ)ポリアミド、
− ビス(4−アミノ−3−メチル−5−エチル−シクロヘキシル)メタンと場合により一緒の更なるジアミンと、イソフタル酸と場合により一緒の更なるジカルボン酸とからなるコポリアミド、
− m−キシリレンジアミン及び更なるジアミン、例えばヘキサメチレンジアミンと、イソフタル酸と場合により一緒の更なるジカルボン酸、例えばテレフタル酸及び/又は2,6−ナフタリンジカルボン酸などのジカルボン酸との混合物からのコポリアミド、
− ビス(4−アミノ−シクロヘキシル)メタン及びビス(4−アミノ−3−メチル−シクロヘキシル)メタンと、8〜14個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸との混合物からのコポリアミド、並びに
− 1,14−テトラデカン二酸と、芳香族の、芳香脂肪族のもしくは脂環式のジアミンとを含む混合物からのポリアミドもしくはコポリアミド
である。
【0015】
これらの例は、更なる成分(例えばカプロラクタム、ラウリンラクタム又はジアミン/ジカルボン酸の組み合わせ)を添加することによって又は出発成分を別の成分に部分的にもしくは完全に置き換えることによって非常に広範囲に変更することができる。
【0016】
前記ポリアミドは、また、ポリエーテルエステルアミド又はポリエーテルアミドであってもよい。ポリエーテルエステルアミドは、例えばDE−A−2523991号及びDE−A−2712987号から公知であり、それらは、コモノマーとしてポリエーテルジオールを含む。ポリエーテルアミドは、例えばDE−A−3006961号から公知であり、それらは、コモノマーとしてポリエーテルジアミンを含む。
【0017】
ポリエーテルジオールもしくはポリエーテルジアミンでは、そのポリエーテル単位は、例えば1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール又は1,3−ブタンジオールを基礎としうる。ポリエーテル単位は、また混合型の構成であってもよく、例えばジオールに由来する単位のランダム分布もしくはブロック状分布で構成されていてよい。ポリエーテルジオールもしくはポリエーテルジアミンのモル質量の質量平均は、200〜5000g/モル、好ましくは400〜3000g/モルであり、そのポリエーテルエステルアミドもしくはポリエーテルアミドの割合は、好ましくは4〜60質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。好適なポリエーテルジアミンは、相応のポリエーテルジオールを、還元的アミノ化又はアクリルニトリルへのカップリングと引き続いての水素化によって転化させることによって得られ、それらは、例えばHuntsman Corp.によるJEFFAMIN(登録商標)D型もしくはED型又はELASTAMINE(登録商標)型の形で、又はBASF SEによるポリエーテルアミンDシリーズの形で市販されている。より少量で、ポリエーテルトリアミンを一緒に使用してもよく、例えば分枝鎖状のポリエーテルアミドが使用されるべき場合にはJEFFAMIN(登録商標)T型のものを使用してよい。好ましくは、ポリエーテルジアミンもしくはポリエーテルトリアミンであって、エーテル酸素原子1個当たりに平均して少なくとも2.3個の炭素原子が鎖中に含まれるものが使用される。本発明によれば、ポリエーテルアミドが、より良好な耐加水分解性のため好ましい。
【0018】
該ポリプロピレンは、基本的にあらゆる商慣習のポリプロピレン型、例えばアイソタクチックなもしくはシンジオタクティックなホモポリプロピレン、プロペンとエテン及び/又はブテン−1とのランダムコポリマー、プロペン−エテン−ブロックコポリマーなどであってよい。該ポリプロピレンは、あらゆる公知の方法に従って、例えばチーグラー・ナッタ触媒反応又はメタロセン触媒反応に従って製造することができる。前記ポリプロピレンは、衝撃強さを与える成分、例えばEPMゴムもしくはEPDMゴム又はSEBSなどの成分を含有してよい。好ましくは、該ポリプロピレンは、いわゆるプロペン−エテン−ブロックコポリマーであり、しばしば、ヘテロ相コポリマーとも呼称される。かかるヘテロ相コポリマーは、例えば以下のように行われる2相工程において製造することができる: 最初に、例えばチーグラー・ナッタ触媒を用いて、イソタクチックの大きいポリプロピレンを製造し、その際、状況によっては少量のエテンが存在してよく、これによりランダム共重合体が得られる。この材料は、ヘテロ相コポリマーのマトリックスとして機能する。第2の反応段階(場合により別の反応器内で)においては、場合により第2の触媒、例えばメタロセン触媒を導入する。ここで、エテンとプロペンとの共重合を実施し、その際、この重合は第1の重合体の中空空間で生ずる。これにより、この第2のポリマーをそこに堆積させる。好ましい実施態様においては、このブロックコポリマーもしくはヘテロ相コポリマーは、エテンを、少なくとも0.5質量%、少なくとも0.6質量%、少なくとも0.7質量%、少なくとも0.8質量%、又は少なくとも0.9質量%で、かつ最大20質量%、最大15質量%、最大12質量%、最大10質量%、又は最大8質量%で、重合導入させて含有する。更に、15質量%までの1−ブテンが重合導入されていてよい。
【0019】
前記a)の層の成形材料は、上述のポリアミドの1つを又は複数を混合物として含んでよい。更に、成形材料の全ポリマー割合に対して、40質量%までは、別の熱可塑性樹脂が含まれていてよく、例えば衝撃強さを与えるゴム又はポリエチレンもしくはポリプロピレンなどのポリオレフィンが含まれていてよい。場合により含まれるゴム又はポリオレフィンは、好ましくは、技術水準に相応して、ポリアミドマトリクスとの相容性が得られる官能基を含む。更に、ポリアミドに慣用の助剤及び添加剤、特に光安定剤及び/又は熱安定剤が、又は好ましくはまた光反射性の充填剤、例えば二酸化チタンなどの充填剤(WO2011066595号)が含まれていてよい。
【0020】
前記c)の層の成形材料は、ポリプロピレンに慣用の助剤及び添加剤、特に光安定剤及び/又は熱安定剤、光反射性の充填剤、例えば二酸化チタンなどの充填剤並びに補強性充填剤、例えばガラス繊維、ウォラストナイトもしくは雲母などの充填剤を含有してよい。
【0021】
前記e)の層の成形材料のためには、前記a)の層の成形材料と同じものが当てはまり、同様に充填剤に関しては、前記c)の層の成形材料と同じものが当てはまる。更に、前記e)の層の成形材料は、着色されていてよく、かつ/又は艶消し剤を有してよい。
【0022】
個々のシート層は、一般に、以下の厚さを有する:
・ 前記a)の層と前記e)の層: 15〜100μm、好ましくは25〜50μm
・ 前記c)の層: 100〜500μm、好ましくは150〜400μm
・ 前記b)の層と前記d)の層: 3〜40μm、好ましくは5〜25μm
【0023】
本発明により使用される多層シートは、先行技術のあらゆる方法、例えば同時押出又は積層によって製造することができる。該シートは、ソーラーセルが埋め込まれているシール層と、例えば積層又は接着によって結合される。前記a)の層中のポリアミド割合のため、積層に際して、該シール層に対して良好な付着性が得られる。シール層としては、先行技術により一般に用いられているあらゆる材料を使用できる。
【0024】
本発明の対象は、また、特許請求の範囲に記載の多層シートを使用して製造した光起電力モジュールである。
【0025】
本発明を以下で例示的に詳説する。このために、以下の成形材料を製造した。その際、"部"は、常に質量部である。