特許第6012392号(P6012392)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012392
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】ハイブリッドシステム
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/40 20071001AFI20161011BHJP
   B60K 6/26 20071001ALI20161011BHJP
   B60K 6/36 20071001ALI20161011BHJP
   B60K 6/38 20071001ALI20161011BHJP
   B60K 6/405 20071001ALI20161011BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20161011BHJP
   B60K 6/543 20071001ALI20161011BHJP
   B60L 11/14 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   B60K6/40ZHV
   B60K6/26
   B60K6/36
   B60K6/38
   B60K6/405
   B60K6/48
   B60K6/543
   B60L11/14
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-231869(P2012-231869)
(22)【出願日】2012年10月19日
(65)【公開番号】特開2014-83869(P2014-83869A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】柳生 寿美夫
(72)【発明者】
【氏名】高木 剛
(72)【発明者】
【氏名】河端 真一
(72)【発明者】
【氏名】林 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】仲井 章平
【審査官】 増子 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−260676(JP,A)
【文献】 特開2001−206084(JP,A)
【文献】 特開2012−066641(JP,A)
【文献】 実開昭58−031703(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 − 6/547
B60W 10/00 − 20/50
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(E)から突出されたクランク軸(3)を支持可能なオイルポンプ(20)を設け、前記オイルポンプ(20)に動力一方向自動伝達式のクラッチ(4)を連結し、前記オイルポンプ(20)からクラッチ(4)に延設された前記クランク軸(30)を前記クラッチ(4)の入力部材(4A)に連結し、クラッチ(4)の出力部材(4B)を無段変速機構(5)のドライブ軸(6)に連結し、無段変速機構(5)のドライブ部材(7)とクラッチ(4)の出力部材(4B)との間のドライブ軸(6)上にモータジェネレータ(8)のロータ(9)を連結していることを特徴とするハイブリッドシステム。
【請求項2】
前記クラッチ(4)の出力部材(4B)と無段変速機構(5)のドライブ軸(6)とを同芯で一体的に連結し、ドライブ軸(6)にロータ(9)を嵌合固定し、モータジェネレータ(8)のモータケース(8a)をクラッチ(4)のクラッチケーシング(4a)と無段変速機構(5)の変速ケース(19)とに固定していることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッドシステム。
【請求項3】
前記無段変速機構(5)はベルト式無段変速機構であり、クラッチ(4)は遠心クラッチ又はワンウエイクラッチであることを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッドシステム。
【請求項4】
エンジン(E)の停止時、クラッチ(4)を介した動力伝達が遮断される回転数でエンジン(E)が回転する低速回転時又はクラッチ(4)を介して動力が伝達される回転数でエンジン(E)が回転する高速回転時に、モータジェネレータ(8)に対してロータ(9)をモータ駆動させる制御手段(11)を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイブリッドシステム。
【請求項5】
エンジン(E)の高速回転時に、モータジェネレータ(8)に対してエンジン(E)からの動力でロータ(9)をジェネレータ駆動させる制御手段(11)を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハイブリッドシステム。
【請求項6】
エンジン(E)の回転速度低下時に、モータジェネレータ(8)に対して無段変速機構
(5)からの動力でロータ(9)をジェネレータ駆動させる制御手段(11)を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のハイブリッドシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン及びモータジェネレータの駆動力を無段変速機構に伝達するパラレル式のハイブリッドシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタ、バックホー、多目的作業車、乗用自動車等の走行可能な作業機に搭載可能であって、エンジン及びモータジェネレータの駆動力をベルト式無段変速機構(CVT)に伝達するハイブリッドシステムとして、特許文献1、2に開示されているものがある。
特許文献1の技術は、エンジンのクランク軸を多板式のクラッチの入力部材に連結し、クラッチの出力部材をベルト式無段変速機構のドライブ軸に連結しており、前記クラッチのクラッチハウジングの外周側にロータを一体回転可能に取り付けた電動機とを有し、エンジンで駆動する通常モードと、エンジン及び電動機で駆動するアシストモードと、電動機で駆動するEVモードと、電動機を回生制動する回生モードとを備えている。
【0003】
また、特許文献2においては、エンジンのクランク軸を多板式のクラッチの入力部材に連結し、クラッチの出力部材をベルト式無段変速機構のドライブ軸の一端に連結し、ドライブ軸の他端を電動機と連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-261544号公報
【特許文献2】特開2003-307270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の技術においては、電動機を作動してハイブリッド機能を入り状態にするには、手動装置あるいは電気コントロール装置でクラッチを入り状態にしなくてはならなく、また、電動機で駆動するEVモード及び電動機を回生制動する回生モードとしたときは、クラッチが入り状態になるのでエンジンのクランク軸も回転することになり、クランク軸を回転することなく、EVモード又は回生モードにすることは困難になっている。
【0006】
前記特許文献2の技術においては、クラッチが切りの状態でも、電動機の出力軸は無段変速機構のドライブ軸に直結状態で、又はギヤ伝動手段を介して駆動することができるが、電動機は無段変速機構のドライブ軸の軸心方向外部又は径外方向にスペースと取って配置しなくてはならなく、装置が大型になってしまう。
本発明は、このような従来技術の問題点を解決できるようにしたハイブリッドシステムを提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、エンジンのクランク軸が停止していても低速回転していても、クラッチの切り状態と関係なく、モータジェネレータによるハイブリッド機能を発揮でき、かつクラッチと無段変速機構との間にコンパクトに構成できるようにしたハイブリッドシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明における課題解決のための具体的手段は、次の通りである。
第1に、エンジンEから突出されたクランク軸3を支持可能なオイルポンプ20を設け、前記オイルポンプ20に動力一方向自動伝達式のクラッチ4を連結し、前記オイルポンプ20からクラッチ4に延設された前記クランク軸30を前記クラッチ4の入力部材4Aに連結し、クラッチ4の出力部材4Bを無段変速機構5のドライブ軸6に連結し、無段変速機構5のドライブ部材7とクラッチ4の出力部材4Bとの間のドライブ軸6上にモータジェネレータ8のロータ9を連結していることを特徴とする。
【0009】
第2に、前記クラッチ4の出力部材4Bと無段変速機構5のドライブ軸6とを同芯で一体的に連結し、ドライブ軸6にロータ9を嵌合固定し、モータジェネレータ8のモータケース8aをクラッチ4のクラッチケーシング4aと無段変速機構5の変速ケース19とに固定していることを特徴とする。
第3に、前記無段変速機構5はベルト式無段変速機構であり、クラッチ4は遠心クラッチ又はワンウエイクラッチであることを特徴とする。
【0010】
第4に、エンジンEの停止時、クラッチ4を介した動力伝達が遮断される回転数でエンジンEが回転する低速回転時又はクラッチ4を介して動力が伝達される回転数でエンジンEが回転する高速回転時に、モータジェネレータ8に対してロータ9をモータ駆動させる制御手段11を備えていることを特徴とする。
第5に、エンジンEの高速回転時に、モータジェネレータ8に対してエンジンEからの動力でロータ9をジェネレータ駆動させる制御手段11を備えていることを特徴とする。
第6に、エンジンEの回転速度低下時に、モータジェネレータ8に対して無段変速機構5からの動力でロータ9をジェネレータ駆動させる制御手段11を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エンジンのクランク軸が停止していても低速回転していても、クラッチの切り状態と関係なく、モータジェネレータによるハイブリッド機能を発揮でき、かつクラッチと無段変速機構との間にコンパクトに構成できる。
即ち、無段変速機構5のドライブ部材7とクラッチ4の出力部材4Bとの間のドライブ軸6上にモータジェネレータ8のロータ9を連結しているので、エンジンEのクランク軸3が停止していても低速回転していても、モータジェネレータ8に駆動モードも回生モードも採らせることができ、しかもドライブ軸6の軸方向にも径外方向にもモータジェネレータ8をコンパクトに配置することができる。
【0012】
また、ロータ9をドライブ軸6に嵌合固定し、モータケース8aをクラッチケーシング4aと変速ケース19とに固定しているので、モータジェネレータ8をクラッチ4と無段変速機構5との間にコンパクトに配置することができる。
また、エンジンEの駆動力を遠心クラッチ又はワンウエイクラッチを介してベルト式無段変速機構へ自動的に伝達しながら、モータジェネレータ8の駆動力又は制動力をベルト式無段変速機構に伝達することができる。
【0013】
また、エンジンEの停止時、低速回転時又は高速回転時に、モータジェネレータ8にモータ機能をさせることができる。
また、エンジンEの高速回転時に、モータジェネレータ8にジェネレータ機能をさせ、発電させることができる。
また、エンジンEの回転速度低下時に、モータジェネレータ8にジェネレータ機能をさせて、エネルギの回生及び制動をさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態を示す全体断面正面図である。
図2】同全体断面側面図である。
図3】同要部の拡大断面正面図である。
図4】モータジェネレータの断面図である。
図5】ハイブリッドシステムのトルク・パワー関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜4において、4輪駆動型作業車の荷台の下部に搭載される原動部として適用可能なハイブリッドシステム1を例示している。
このハイブリッドシステム1は、エンジンE及びモータジェネレータ8の動力を無段変速機構5を介してトランスミッションMへ伝達する動力伝達装置になっている。
【0016】
エンジンEのクランク軸3を突出している側面にオイルポンプ20のボディ20aとクラッチ4のクラッチケーシング4aとを連結し、このクラッチケーシング4aにモータジェネレータ8のモータケース8aを固定し、このモータケース8aに無段変速機構5の変速ケース19の入力側を固定している。
エンジンEはOHC形式の単気筒空冷エンジンを例示しており、そのクランク軸3はオイルポンプ20を貫通してクラッチ4のクラッチケーシング4a内まで延設され、クラッチ4の入力部材4Aが嵌合し、出力部材4Bを回転自在に支持している。
【0017】
前記オイルポンプ20のボディ20aは、エンジンEとクラッチ4とを仕切る隔壁を構成し、かつクランク軸3を支持する軸受ケースを兼ねている。
クラッチ4はクランク軸3の回転動力を一方向には自動伝達に伝達するが、逆方向から
の動力は伝達しない動力一方向自動伝達式のクラッチであり、例えば、クランク軸3が一定回転数以上になったときにクラッチ入りとなる遠心クラッチ、又はクランク軸3の回転を常に伝達するが逆方向はフリーとなるワンウエイクラッチ(フリーホイール)が採用できる。
【0018】
実施形態においては、クラッチ4に遠心湿式クラッチが採用されており、クランク軸3の回転数に応じて高まる遠心力に基づいてクランク軸3の回転駆動力を下流側に伝達する。
クラッチ4はクラッチケーシング4aで包囲されたクラッチ室内に入力部材4Aと出力部材4Bとが配置され、入力部材4Aはクランク軸3に嵌合固定されていて複数枚のクラッチ板21を揺動自在に有しており、出力部材4Bはクラッチ板21を覆うカップ形状であって、クランク軸3の端部に軸受22を介して相対回転自在に支持され、同時にクラッチケーシング4aに軸受23を介して回転自在に支持されている。
【0019】
クラッチ4はクランク軸3で入力部材4Aを駆動し、入力部材4Aの回転によりクラッチ板21が遠心力によって揺動して出力部材4Bに当接し、その摩擦で出力部材4Bが回転することにより動力が伝達される。
前記出力部材4Bは無段変速機構5のドライブ軸6と一体成形されている。ドライブ軸6はクラッチ4側の端部にロータ軸部6Aを有し、このロータ軸部6Aが出力部材4Bと接続されており、出力部材4B、ロータ軸部6A及びドライブ軸6は軸心がクランク軸3の軸心と同芯である。
【0020】
前記ロータ軸部6Aは、出力部材4B及び/又はドライブ軸6と別個に形成してスプライン等で嵌合連結することも可能であるが、鍛造等で一体成形する方が、強度もコストも有利になる。
クラッチ4のクラッチケーシング4aは、出力部材4Bと同芯にしてその径外側を覆う内ケース部4aAと、その外側を覆う外ケース部4aBとを有し、内外ケース部4aA、4aBは周囲部の一部で共通となり、オイルポンプ20のボディ20a側で繋がっている。
【0021】
クラッチケーシング4aの前部は内ケース部4aAから外ケース部4aBが作業車前後方向で前方へ離れており、その間に風流入空間25を形成しており、外ケース部4aBは前部に風流入空間25と連通する風取入口26を有し、この風取入口26は吸気用エアークリーナ(図示せず)とダクトを介して接続されており、作業車走行中にエアークリーナから風取入口26を通って風流入空間25に外気を取り入れ、クラッチ4の内部を空冷可能になっている。
【0022】
前記内外ケース部4aA、4aBはエンジンE側の端部がボディ20aにボルト固定され、外ケース部4aBの無段変速機構5側の端部がモータケース8aとボルト固定されている。
モータジェネレータ8はクラッチ4と無段変速機構5との間に配置されていて両者を連結しており、ロータ9がドライブ軸6のロータ軸部6Aに嵌合固定され、ステータ10がモータケース8aの内周に焼きバメにて固定されている。
【0023】
このモータジェネレータ8はロータ9に永久磁石を固定した同期モータ(PMSM)、例えば、永久磁石埋込式集中巻同期モータ(IPMモータ)が用いられており、コイルを集中巻したステータ10への通電によって永久磁石を埋め込んだロータ9が駆動されてモータとして機能する。
モータジェネレータ8は、エンジンEの高速回転時にロータ9が駆動されることにより、又は、制動時等に無段変速機構5からの動力によってロータ9が被駆動されることによって、ステータ10から電力を取り出すジェネレータとして機能し、電力、回生エネルギを取り出せる。
【0024】
図4において、モータジェネレータ8のロータ9は、例えば、薄いけい素鋼板を複数枚積層した回転子鉄心の外周に周方向間隔をおいて開口を形成し、その開口に永久磁石9aを埋設しており、永久磁石9aの配置位置の径外側に弓形膨出部9bを有し、永久磁石9aの配置位置間で弓形膨出部9bを繋ぐ円弧凹部9cを形成していて、ステータ10の内
周面と僅少間隙を介して対面する。
【0025】
ロータ9は回転子鉄心内に複数の冷却風挿通孔15を形成しており、クラッチケーシング4aの風流入空間25からの風を軸心方向に流通可能にしている。前記ロータ9とステータ10との間の間隙も冷却風挿通孔15となっている。
ステータ10は、薄い電極鋼板10aを複数枚積層した固定子鉄心に、固定子巻線10bを所定の巻数で直接巻き付けて集中巻にしたものであり、円筒形状になっている。このステータ10は固定子巻線10b間に隙間が形成され、この隙間がクラッチケーシング4aの風流入空間25からの風を軸心方向に流通可能にする冷却風挿通孔15となっている。
【0026】
モータジェネレータ8はモータケース8aの外周面に多数のフィン8bが形成されており、作業車走行時の風によって外部から空冷可能になっている。
従って、モータジェネレータ8は、フィン8bを介して外部空冷され、ロータ9の冷却風挿通孔15及びステータ10の冷却風挿通孔15を流れる風流入空間25からの風によって内部空冷されている。
【0027】
ベルト式無段変速機構5は、互いに平行なドライブ軸6及びドリブン軸33と、ドライブ軸6上のドライブ部材7としてのドライブプーリ及びドリブン軸33上のドリブンプーリ34と、両プーリ7、34間に巻き掛けられた無端ベルト35と、これらを包囲する変速ケース19とを有する。
ドライブ軸6はロータ軸部6Aと反対側の端部に端軸36が嵌合固定され、この端軸36がモータケース8a及び変速ケース19に固定された支持部材37に軸受38を介して支持されている。
【0028】
ドライブ軸6上のドライブプーリ7は、端軸36側が軸方向摺動可能であり、モータジェネレータ8側は軸方向不動になっている。
ドリブン軸33はトランスミッションMの入力軸39と一体成形又は別個に形成して連結しており、ドリブン軸33上のドリブンプーリ34は軸先端側が軸方向摺動可能であり、トランスミッションM側は軸方向不動になっている。
【0029】
変速ケース19は最中形状に合わされた基部ケース19Aと外ケース19Bとを有し、基部ケース19Aの入力側は支持部材37とともにモータケース8aに固定され、出力側はトランスミッションMのミッションケースMaに連結部材40を介して連結されており、外ケース19Bは入力側が支持部材37を覆い、出力側はドリブンプーリ34を覆っている。
【0030】
前記モータジェネレータ8の冷却風挿通孔15を通ってきた冷却風は、変速ケース19内に入ってベルト式無段変速機構5の内部構成部材を冷却する。
基部ケース19A(又は外ケース19B)の後部には、内外を連通する排出部42を有し、前記ベルト式無段変速機構5を冷却した冷却風を外部に排出するように構成されている。
【0031】
前記クラッチケーシング4aの風取入口26から風流入空間25、モータジェネレータ8の冷却風挿通孔15、変速ケース19内の空間、さらに排出部42に至る通路は、クラッチケーシング4aからモータジェネレータ8内を通って介して変速機構5内に至る冷却風の流動を可能にする冷却風路14を形成している。
前記エンジンE及びモータジェネレータ8は制御手段11に接続されており、エンジンEの始動及び回転、モータジェネレータ8のモータ駆動及びジェネレータ回生動作等が制御されている。
【0032】
図1〜4及び図5に基づいて、ハイブリッドシステム1を作業車に搭載して運転を行うときの、制御手段11による制御動作を説明する。なお、図5において、右下3本の曲線がパワーを示し、右上3本の曲線がトルクを示している。
エンジンEを単独運転する場合(図5に2点鎖線A1で示す。)、エンジンEを始動した2000回転未満のアイドリング状態では、クランク軸3の回転は遠心クラッチ4を入り状態にすることはなく、ベルト式無段変速機構5は停止し、作業車は停止状態を維持する。
【0033】
エンジンEの回転を高めて、略2000回転になると遠心クラッチ4が入り始め、回転が上昇するにつれてクラッチ滑りが減少し、略3000回転(例えば、2940回転)になるまで急激にトルクが上昇し(最大トルク:26Nm)、略3000回転で遠心クラッチ4が結合してベルト式無段変速機構5へエンジンパワー(図5に2点鎖線A2で示す。)を供給する。
【0034】
車速を約10km/hへ加速(最大トルク:26Nm)になると、その後は無段変速機構5で変速されて、40km/h走行に達する。
前記エンジンEを単独運転する場合には、モータジェネレータ8はモータ機能をせずにジェネレータ機能をすることができる。例えば、エンジンEが略2000回転以上の中高速回転になった時、遠心クラッチ4が入ってロータ9が回転するので、ステータ10から電力を回収することができ、作業車の微速走行と発電とが同時にできる。
【0035】
エンジンE及びモータジェネレータ8のハイブリッド運転をする場合、モータジェネレータ8のモータ出力は定格運転時のトルク略15Nmから最大トルク略30Nmまで変更できる。
定格運転する場合(図5に実線B1で示す。)、モータジェネレータ8はロータ9の回転数が0〜2000回転でも、遠心クラッチ4の入り切りに関係なく無段変速機構5のドライブ軸6を駆動でき、ロータ9の回転数が2000回転(遠心クラッチ4の出力部材4Bの回転数も同じ)でも、モータパワーを3〜4kW発生する。
【0036】
このモータジェネレータ8のモータ駆動はエンジンEの回転を補強することになり、モータジェネレータ8のトルクにエンジン単独トルクが加わると、単独運転のエンジンパワーより3〜8割増しのハイブリッドパワー(図5に実線B2で示す。)を無段変速機構5へ供給できる。
最大運転する場合(図5に点線C1で示す。)、モータジェネレータ8は車速0km/hからエンジン単独トルクを越える30Nmまで加速することが可能であり、ロータ9の回転数が2000回転でも、トルクを6〜8Nm発生し、エンジンEの回転を強力に補強する(ハイブリッド機能)。このハイブリッド機能により、単独運転時のエンジンパワーより2倍程度の最大ハイブリッドパワー(図5に点線C2で示す。)を無段変速機構5へ供給でき、車速の急加速が可能になる。
【0037】
モータジェネレータ8をモータ機能だけで単独運転する場合、即ち、モータジェネレータ8はエンジンEを停止又はアイドリング状態でも使用可能であり、ドライブ軸6に定格トルク15Nmから最大トルク30Nmまで供給でき、モータパワーを3〜8kW発生して作業車を走行でき、無段変速機構5による変速も行われる。
モータジェネレータ8のモータ機能のみの駆動では、クラッチ4の出力部材4Bを駆動しても入力部材4Aは駆動されないので、クランク軸3が回転することはなく、モータパワーがエンジンEで浪費されることはない。
【0038】
作業車を減速するとき又は制動するとき、無段変速機構5からの回転力はロータ9を駆動し、モータジェネレータ8はジェネレータ機能の状態、即ち、制動エネルギ回生状態になり、ステータ10から電力が回収される。
クラッチ4にワンウエイクラッチを使用する場合は、トランスミッションMに摩擦クラッチ等の動力を断接できるクラッチを設けておく。エンジンEの回転中はロータ9及びドライブ軸6は駆動され、ベルト式無段変速機構5へ動力を伝達する。このとき、モータジェネレータ8をモータとして機能させると、ハイブリッドパワーが得られる。また、モータジェネレータ8をジェネレータとして機能させると、電力を得ることができる。
【0039】
減速時又は制動時に、クランク軸3よりロータ9の回転速度が高い場合には、モータジェネレータ8はエネルギを回収でき、ロータ9の回転速度が低下するとワンウエイクラッチを介してクランク軸3に回転抵抗を与える。このとき、エンジンEのアイドリングを停止してもよい。
エンジンEを始動させずにモータジェネレータ8をモータとして機能させると、ワンウエイクラッチによりクランク軸3を駆動することなく、作業機を発進、微速走行させることが可能になる。
【0040】
以上のごとく、ハイブリッドシステム1は制御手段11でエンジンE及びモータジェネレータ8を制御することにより、エンジンEの停止時、低速回転時又は高速回転時に、モータジェネレータ8に対してロータ9をモータ駆動させるモータ機能を発揮させ、エンジン代用駆動源、エンジン補助駆動源となり、エンジンEの中高速回転時に、モータジェネレータ8に対してエンジンEからの動力でロータ9をジェネレータ駆動させるジェネレータ機能を発揮させ、エンジン駆動の発電機となり、エンジンEの減速、制動等の回転速度低下時に、モータジェネレータ8に対して無段変速機構5からの動力でロータ9をジェネレータ駆動させてジェネレータ機能を発揮させ、エンジン駆動の発電機、回生ブレーキとなることができる。
【0041】
なお、本発明は前記実施形態における各部材の形状及びそれぞれの前後・左右・上下の位置関係は、図1〜5に示すように構成することが最良である。しかし、前記実施形態に限定されるものではなく、部材、構成を種々変形したり、組み合わせを変更したりすることもできる。
例えば、ベルト式無段変速機構5の代わりに、遊星歯車式無段変速機構又はその他の無段変速機構でもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 ハイブリッドシステム
3 クランク軸
4 クラッチ
4A 入力部材
4B 出力部材
4a クラッチケーシング
5 ベルト式無段変速機構
6 ドライブ軸
6A ロータ軸部
7 ドライブ部材(ドライブプーリ)
8 モータジェネレータ
8a モータケース
8b フィン
9 ロータ
10 ステータ
11 制御手段
14 冷却風路
15 冷却風挿通孔
19 変速ケース
25 風流入空間
26 風取入口
E エンジン
M トランスミッション
図1
図2
図3
図4
図5