【0016】
本発明に係る表面処理剤の調製時に、本イミダゾール化合物を水に溶解(水溶液化)するに当たっては、通常、可溶化剤として有機酸または無機酸を使用するが、少量の有機溶剤を併用しても良い。
この有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ヘプタン酸、カプリル酸、カプリン酸、ウラリル酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、パラニトロ安息香酸、パラトルエンスルホン酸、サリチル酸、ピクリン酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、酒石酸、アジピン酸等が挙げられ、無機酸としては、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。
また、有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類あるいはアセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、エチレングリコール等の水と自由に混和するものを使用することができる。
これらの可溶化剤は、1種または2種以上を組み合わせて使用しても良く、表面処理剤中に好ましくは0.1〜40重量%の割合、より好ましくは0.1〜10重量%の割合で含有させれば良い。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例および比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例で使用したイミダゾール化合物と、試験片および評価試験方法等は次のとおりである。
【0021】
[イミダゾール化合物]
・2−メチルイミダゾール(四国化成工業社製、商品名「2MZ」)
・2−ヘキシルイミダゾール(「Methoden der organischen Chemie(Houben-Weyl),Band E8c,Heterene3-Teil3(1994)」に記載された合成方法に準拠して合成した。)
・2−オクチルイミダゾール(同上)
・2−デシルイミダゾール(同上)
・2−ウンデシルイミダゾール(四国化成工業社製、商品名「C11Z」)
・2−ペンタデシルイミダゾール(「Methoden der organischen Chemie(Houben-Weyl),Band E8c,Heterene3-Teil3(1994)」に記載された合成方法に準拠して合成した。)
・2−ヘプタデシルイミダゾール(四国化成工業社製、商品名「C17Z」)
【0022】
[試験片]
40mm×30mmのサイズの銅と、10mm×30mmのサイズの半田メッキ(注:銅表面に半田メッキを形成)とを有し、前記銅と半田メッキが銅回路により導通したパターンを有する65mm×50mm×1mm厚のガラスエポキシ樹脂製のプリント配線板を試験片として使用した。
【0023】
[表面処理剤の造膜性試験]
まず、前述の試験片を脱脂した後、ソフトエッチング、水洗、エアーブローによる水切りを行った。次いで、試験片を40℃の液温に保持した表面処理剤に60秒間揺動浸漬した後、水洗、エアーブローによる水切り、乾燥して、銅表面上に化成皮膜を形成させた。
その後、試験片の銅部分を所定の大きさに切り出し、0.5%の塩酸水溶液に浸漬して化成皮膜を溶解させた。この塩酸水溶液中のイミダゾール化合物の濃度を紫外分光光度計を用いて測定し、化成皮膜の厚さ(以下、膜厚と云う)を算出して、表面処理剤の造膜性を評価した。
膜厚は、下記評価基準で評価した。
○:0.1μm以上である。
×:0.1μm未満である。
化成皮膜の膜厚が厚い程、表面処理剤の造膜性が優れていると判定される。
【0024】
[半田メッキの腐食試験]
前述の表面処理剤の造膜性試験と同様にして、試験片を表面処理剤で処理した。その後、走査型電子顕微鏡(HITACHI社製、製品名「S−4800」)を用いて、試験片の半田メッキ部を観察し、半田メッキの腐食の程度を評価した。
半田メッキ部の腐食の程度は、下記の基準で評価した。
○:半田メッキの表面が、ほとんど変化していない。
△:半田メッキの表面に小さな穴ができている。
×:半田メッキの表面に大きな穴ができている。
半田メッキの表面の腐食が少ない程、表面処理剤が半田に含まれる錫のイオン化を抑制する能力に優れていると判定される。
【0025】
[半田メッキの変色試験]
前述の表面処理剤の造膜性試験と同様にして、試験片を表面処理剤で処理した。その後、目視により試験片の半田メッキ部を観察して、半田メッキの変色の程度を評価した。
半田メッキ部の変色の程度は、下記の基準で評価した。
○:銀色の光沢があり、変色していない。
△:白っぽく変色している。
×:黒っぽく変色している。
半田メッキの表面の変色が少ない程、表面処理剤が半田に含まれる錫のイオン化を抑制する能力に優れていると判定される。
【0026】
〔実施例1〕
イミダゾール化合物として2−オクチルイミダゾール、酸として酢酸、銅化合物として酢酸銅・一水和物を、表1記載の組成になるようにイオン交換水に溶解させた後、アンモニア水でpH5.2に調整して表面処理剤を調製した。
次いで、この表面処理剤を用いて、表面処理剤の造膜性試験、半田メッキの腐食試験および半田メッキの変色試験を行った。これらの評価試験結果は表1に示したとおりであった。
【0027】
〔実施例2〜11〕
実施例1と同様にして、表1記載の組成を有する表面処理剤を調製し、評価試験を行った。得られた試験結果は表1に示したとおりであった。
【0028】
〔比較例1〜12〕
実施例1と同様にして、表2記載の組成を有する表面処理剤を調製し、評価試験を行った。得られた試験結果は表2に示したとおりであった。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
表1には、2位に炭素数8、10、11のアルキル基を有するイミダゾール化合物を使用し、銅イオン濃度10〜80ppm、pH4.0〜5.2に調整した表面処理剤の試験結果を示した。
実施例1〜11の何れの試験例においても、半田メッキと導通した銅の表面に、銅の酸化を防ぐための十分な膜厚の化成皮膜が形成され、且つ半田メッキの腐食(変色)が抑制されていると認められる。
【0032】
表2には、2位に炭素数1、6、15、17のアルキル基を有するイミダゾール化合物を使用した場合(比較例1〜4)と、2位に炭素数11のアルキル基を有するイミダゾール化合物を使用し、銅イオン濃度が0ppmの場合(比較例5)と、80ppmを超えた場合(比較例6〜9)と、pHが4.0未満の場合(比較例10〜12)の試験結果を示した。
これらの試験結果によると、2位に炭素数8〜13の範囲外のアルキル基を有するイミダゾール化合物を使用した場合には、半田メッキと導通した銅の表面に、銅の酸化を防ぐための十分な膜厚の化成皮膜が形成されない。
また、2位に炭素数11のアルキル基を有するイミダゾール化合物を使用した場合であっても、銅イオン濃度が0ppmの場合には、十分な膜厚の化成皮膜が形成されず、銅イオン濃度が80ppmを超える場合には、半田メッキの腐食(変色)を抑制する効果が認められない。また、pH4.0未満の場合には、十分な膜厚の化成皮膜が形成されず、半田メッキの腐食(変色)を抑制する効果も認められない。
なお、pH5.3の場合には、表面処理剤中にイミダゾール化合物が結晶として析出したため、評価試験は実施していない。