【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 日本工業出版、環境浄化技術、2012.9−10、vol.11、No.5、26−29頁、平成24年9月1日発行
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
粒径が4mm以上20mm以下のろ材が充填され、該ろ材に微生物が担持されてなる生物酸化装置と、粒径が0.5mm以上4mm以下のろ材が充填され、該ろ材に微生物が担持されてなる生物接触ろ過装置とを順に有し、前記微生物が鉄バクテリア、マンガン酸化菌を含む微生物であり、前記生物酸化装置が空気または酸素を供給する散気装置を備えることを特徴とする重金属を含む排水の処理装置。
前記生物酸化装置は、生物酸化装置に流入する被処理水のpHを3.0から5.5の範囲に調整するpH調整剤供給装置を備え、前記生物接触ろ過装置は、生物接触ろ過装置に流入する被処理水のpHを5.5から7.0の範囲に調整するpH調整剤供給装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の重金属を含む排水の処理装置。
前記重金属を含む排水がフッ素を含有し、前記生物接触ろ過装置の後に、リン酸イオン供給装置を具備し、リン酸イオンを添加してフッ素を晶析する晶析装置を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の重金属を含む排水の処理装置。
前記晶析装置は、平均粒子径が0.2mm以上0.8mm以下の炭酸カルシウムが種晶として充填され、底部から被処理水が通水され、流入箇所に気体を吹き込む装置を備えることを特徴とする請求項3記載の重金属を含む排水の処理装置。
前記晶析装置は、晶析装置に流入する被処理水にカルシウムイオンを添加するカルシウムイオン供給装置を備えることを特徴とする請求項3又は4に記載の重金属を含む排水の処理装置。
前記生物酸化装置は、生物酸化装置に流入する被処理水に2価の鉄イオンを添加する鉄イオン供給装置、及び/又はマンガンイオンを添加するマンガンイオン供給装置を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに一項に記載の重金属を含む排水の処理装置。
前記生物酸化装置は、生物酸化装置に流入する被処理水にマンガンイオンを添加するマンガンイオン供給装置及びアンモニア性窒素を添加するアンモニア性窒素供給装置を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに一項に記載の重金属を含む排水の処理装置。
重金属を含む排水の処理方法であって、該排水を、粒径が4mm以上20mm以下のろ材が充填され、該ろ材に微生物が担持されてなり、空気または酸素を供給する散気装置を備える生物酸化装置により処理する生物酸化処理工程と、次いで粒径が0.5mm以上4mm以下のろ材が充填され、該ろ材に微生物が担持されてなる生物接触ろ過装置により処理する生物接触ろ過処理工程とを有し、前記微生物が鉄バクテリア、マンガン酸化菌を含む微生物であることを特徴とする重金属を含む排水の処理方法。
前記生物酸化装置に流入する被処理水のpHを3.0から5.5の範囲に調整し、生物接触ろ過装置に流入する被処理水のpHを5.5から7.0の範囲に調整することを特徴とする請求項8に記載の重金属を含む排水の処理方法。
前記重金属を含む排水がフッ素を含有し、生物接触ろ過処理工程の後に、リン酸イオンを添加してフッ素を晶析する晶析装置によりフッ素の除去を行うフッ素晶析工程を有することを特徴とする請求項8又は9に記載の重金属を含む排水の処理方法。
前記リン酸イオンを、リン酸性リン濃度が晶析装置に流入する被処理水のフッ素濃度に対して4〜9倍(質量比)となるように添加することを特徴とする請求項10に記載の重金属を含む排水の処理方法。
前記晶析装置が、平均粒子径が0.2mm以上0.8mm以下の炭酸カルシウムが種晶として充填され、底部から被処理水を通水し、流入箇所に気体を吹き込みながら晶析を行うことを特徴とする請求項10又は11に記載の重金属を含む排水の処理方法。
前記晶析装置に流入する被処理水にカルシウムイオンを添加するカルシウムイオン供給工程を有し、前記被処理水のフッ素濃度に対して、カルシウムイオンを 10〜20倍(Ca/F質量比)となるように添加することを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載の重金属を含む排水の処理方法。
前記生物酸化装置に流入する被処理水の2価鉄イオンの濃度が0.5mg/L以下であり、マンガンイオンの濃度の2価鉄イオン及びマンガンイオン以外の重金属の濃度に対する割合(Mn/Fe2+及びMn以外の重金属質量比)が0.5未満の場合は、前記被処理水にマンガンイオンを前記割合が0.5〜1となるように添加すると共に、アンモニア性窒素をMn濃度に対して0.5倍から1倍(NH4−N/Mn質量比)となるように添加することを特徴とする請求項17に記載の重金属を含む排水の処理方法。
前記生物酸化装置のろ過速度を生物酸化装置に流入する被処理水中の鉄濃度およびアルミニウム濃度の総和が20mg/L以上の場合、0.8mg/L・ min以上1.5mg/L・min以下とし、生物接触ろ過装置のろ過速度を生物接触ろ過装置に流入する被処理水中の鉄濃度およびアルミニウム濃度の総和が15mg/L以上の場合、1.2mg/L・min以下とすることを特徴とする請求項8〜18のいずれかに記載の重金属を含む排水の処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、pH調整の薬品量が少なく、発生汚泥量を削減し、運転管理費を低減可能な重金属を含む排水の処理装置及び処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、以下の処理装置及び処理方法により上記課題が解決されることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は以下のとおりである。
(1)粒径が4mm以上20mm以下のろ材が充填され、該ろ材に微生物が担持されてなる生物酸化装置と、粒径が0.5mm以上4mm以下のろ材が充填され、該ろ材に微生物が担持されてなる生物接触ろ過装置とを順に有し、
前記微生物が鉄バクテリア、マンガン酸化菌を含む微生物であり、前記生物酸化装置が空気または酸素を供給する散気装置を備えることを特徴とする重金属を含む排水の処理装置。
(2)前記生物酸化装置は、生物酸化装置に流入する被処理水のpHを3.0から5.5の範囲に調整するpH調整剤供給装置を備え、前記生物接触ろ過装置は、生物接触ろ過装置に流入する被処理水のpHを5.5から7.0の範囲に調整するpH調整剤供給装置を備えることを特徴とする前記(1)に記載の重金属を含む排水の処理装置。
(3)前記重金属を含む排水がフッ素を含有し、前記生物接触ろ過装置の後に、リン酸イオン供給装置を具備し、リン酸イオンを添加してフッ素を晶析する晶析装置を有することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の重金属を含む排水の処理装置。
(4)前記晶析装置は、平均粒子径が0.2mm以上0.8mm以下の炭酸カルシウムが種晶として充填され、底部から被処理水が通水され、流入箇所に気体を吹き込む装置を備えることを特徴とする前記(3)記載の重金属を含む排水の処理装置。
(5)前記晶析装置は、晶析装置に流入する被処理水にカルシウムイオンを添加するカルシウムイオン供給装置を備えることを特徴とする前記(3)又は(4)に記載の重金属を含む排水の処理装置。
(6)前記生物酸化装置は、生物酸化装置に流入する被処理水に2価の鉄イオンを添加する鉄イオン供給装置、及び/又はマンガンイオンを添加するマンガンイオン供給装置を備えることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに一項に記載の重金属を含む排水の処理装置。
(7)前記生物酸化装置は、生物酸化装置に流入する被処理水にマンガンイオンを添加するマンガンイオン供給装置及びアンモニア性窒素を添加するアンモニア性窒素供給装置を備えることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに一項に記載の重金属を含む排水の処理装置。
(8)重金属を含む排水の処理方法であって、該排水を、粒径が4mm以上20mm以下のろ材が充填され、該ろ材に微生物が担持されてなり、空気または酸素を供給する散気装置を備える生物酸化装置により処理する生物酸化処理工程と、次いで粒径が0.5mm以上4mm以下のろ材が充填され、該ろ材に微生物が担持されてなる生物接触ろ過装置により処理する生物接触ろ過処理工程とを有
し、前記微生物が鉄バクテリア、マンガン酸化菌を含む微生物であることを特徴とする重金属を含む排水の処理方法。
(9)前記生物酸化装置に流入する被処理水のpHを3.0から5.5の範囲に調整し、生物接触ろ過装置に流入する被処理水のpHを5.5から7.0の範囲に調整することを特徴とする前記(8)に記載の重金属を含む排水の処理方法。
(10)前記重金属を含む排水がフッ素を含有し、生物接触ろ過処理工程の後に、リン酸イオンを添加してフッ素を晶析する晶析装置によりフッ素の除去を行うフッ素晶析工程を有することを特徴とする前記(8)又は(9)に記載の重金属を含む排水の処理方法。
(11)前記リン酸イオンを、リン酸性リン濃度が晶析装置に流入する被処理水のフッ素濃度に対して4〜9倍(質量比)となるように添加することを特徴とする前記(10)に記載の重金属を含む排水の処理方法。
(12)前記晶析装置が、平均粒子径が0.2mm以上0.8mm以下の炭酸カルシウムが種晶として充填され、底部から被処理水を通水し、流入箇所に気体を吹き込みながら晶析を行うことを特徴とする前記(10)又は(11)に記載の重金属を含む排水の処理方法。
(13)前記晶析装置に流入する被処理水にカルシウムイオンを添加するカルシウムイオン供給工程を有し、前記被処理水のフッ素濃度に対して、カルシウムイオンを10〜20倍(Ca/F質量比)となるように添加することを特徴とする前記(10)〜(12)のいずれか一項に記載の重金属を含む排水の処理方法。
(14)前記晶析装置に流入する被処理水のpHが6.0〜7.0であることを特徴とする前記(10)〜(13)のいずれか一項に記載の重金属を含む排水の処理方法。
(15)前記生物酸化装置に流入する被処理水の2価の鉄イオンの濃度の2価鉄イオン及びマンガンイオン以外の重金属の濃度に対する割合(Fe
2+/Fe
2+及びMn以外の重金属質量比)が5未満の場合は、前記被処理水に2価の鉄イオンを前記割合が5〜10となるように添加することを特徴とする前記(8)〜(14)のいずれかに一項に記載の重金属を含む排水の処理方法。
(16)前記2価鉄イオン及びマンガンイオン以外の重金属が、ヒ素及び鉛を含有し、2価鉄イオンの濃度のヒ素及び鉛濃度に対する割合(Fe
2+/As+Pb質量比)が5未満の場合、被処理水に2価の鉄イオンを前記割合が5〜10となるように添加することを特徴とする前記(15)に記載の重金属を含む排水の処理方法。
(17)前記生物酸化装置に流入する被処理水のマンガンイオンの濃度の2価鉄イオン及びマンガンイオン以外の重金属の濃度に対する割合(Mn/Fe
2+及びMn以外の重金属質量比)が0.5未満の場合は、前記被処理水にマンガンイオンを前記割合が0.5〜1となるように添加することを特徴とする前記(8)〜(16)のいずれかに一項に記載の重金属を含む排水の処理方法。
(18)前記生物酸化装置に流入する被処理水の2価鉄イオンの濃度が0.5mg/L以下であり、マンガンイオンの濃度の2価鉄イオン及びマンガンイオン以外の重金属の濃度に対する割合(Mn/Fe
2+及びMn以外の重金属質量比)が0.5未満の場合は、前記被処理水にマンガンイオンを前記割合が0.5〜1となるように添加すると共に、アンモニア性窒素をMn濃度に対して0.5倍から1倍(NH
4−N/Mn質量比)となるように添加することを特徴とする前記(17)に記載の重金属を含む排水の処理方法。
(19)前記生物酸化装置のろ過速度を生物酸化装置に流入する被処理水中の鉄濃度およびアルミニウム濃度の総和が20mg/L以上の場合、 0.8mg/L・min以上1.5mg/L・min以下とし、生物接触ろ過装置のろ過速度を生物接触ろ過装置に流入する被処理水中の鉄濃度およびアルミニ ウム濃度の総和が15mg/L以上の場合、1.2mg/L・min以下とすることを特徴とする前記(8)〜(18)のいずれかに記載の重金属を含む排水の処理方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る重金属を含む排水の処理装置及び処理方法によると、重金属を含む排水に含有されている、鉄、マンガン、カドミウム、鉛、亜鉛等の重金属を、更にアルミニウム、フッ素をも好適に除去することができる。除去に当たっては、凝集剤や酸化薬剤を一切使用することなく運転管理費を低減でき、従来法よりも安価で汚泥の発生量も少なく、コストパフォーマンスに優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の重金属を含む排水の処理装置における生物酸化装置、生物接触ろ過装置は、ろ材が充填されているとともに、該ろ材に微生物が担持されている生物酸化装置および生物接触ろ過装置であって、該ろ材の粒径は前者が4mm以上20mm以下、後者が0.5mm以上4mm以下であり、前記生物酸化装置は空気または酸素を供給する散気装置を備える。
【0012】
本発明の重金属を含む排水の処理装置を用いて処理を行う重金属を含む排水とは、少なくとも鉄、マンガン、カドミウム、鉛、スズ、銅、亜鉛、ヒ素等の重金属の一種以上を含むものであり、その他にアルミニウム、カルシウム等の軽金属、及びフッ素を含んでいてもよい。このような重金属を含む排水としては、例えば鉱山廃水、トンネル湧水、土壌汚染水、地下汚染水、温泉排水、地熱発電排水等が挙げられ、これらの排水は、例えば、鉄、マンガンは数十〜数百mg/L程度、カドミウム、鉛、スズ、銅、亜鉛、ヒ素等は数mg/L程度含有し、また、アルミニウム、カルシウムは数十mg/L、フッ素は数mg/L程度含有し、ほとんどの場合、中性から酸性を示す。鉄やアルミの濃度が高くなるほど、酸性度が増す。
【0013】
上記生物酸化装置により、重金属を含有する排水の前処理を行い、その後、生物接触ろ過装置により仕上げ処理を行う。即ち、前段で、生物処理により鉄、鉛、ヒ素、等の重金属のほとんどを酸化し、中和によりアルミニウムをフロック化し、その半分程度を除去して、後段の生物接触ろ過装置で、マンガン、亜鉛、クロム、カドミウム等を除去する。また、生物酸化装置で取り残した鉄、アルミニウム等の金属を除去する。
【0014】
生物酸化装置は、微生物により金属の酸化を行う。そのため空気又は酸素を供給する散気装置を備える。生物酸化装置は散気装置により、その底部から空気または酸素を吹き込むようになっており、上部から被処理水を通水し、ろ過する。その空気または酸素の量は被処理水の鉄、マンガンの濃度により決定することが好ましい。また、アンモニア性窒素が含まれる場合はその濃度も考慮することが好ましい。
例えば、空気を吹き込む場合、前記空気の量は、質量で被処理水中の鉄量の30〜40倍程度が好ましい。酸素を吹き込む場合は、7〜9倍程度が好ましい。
【0015】
生物酸化装置のろ材の粒径は4mm以上20mm以下であることが重要である。生物ろ過装置に用いられているものよりも粒径が大きなろ材が好ましく、不溶化したコロイド状の鉄もろ材に付着している微生物による生物膜に吸着し、除去することが可能である。粒径が4mmより小さいと、ろ過速度を早くすることができず、目詰まりを起こす恐れがあり、20mmを超えると処理能力が低下する。
【0016】
生物接触ろ過装置のろ材の粒径は0.5mm以上4mm以下であることが重要である。生物酸化装置により大半の鉄、アルミニウムを除去しているので、生物接触ろ過装置のろ材は生物酸化装置のろ材よりも粒径が小さいもの用いることができる。粒径が0.5mm未満であると、ろ過速度が遅くなり、4mmを超えると処理能力が低下する。また、生物酸化装置で散気しているので生物接触ろ過装置に流入する被処理水には酸素が溶存しており、接触ろ過でよい。
【0017】
本発明に係る処理装置は、上記生物酸化装置、生物接触ろ過装置ともに、被処理水中の金属イオン濃度によりろ材の粒径を選定することが好ましい。
生物酸化装置のろ材の粒径は4mm以上20mm以下であり、後段の生物接触ろ過装置は粒径が0.5mm以上4mm以下のろ材を充填する。
生物酸化装置のろ材径は、生物酸化装置に流入する被処理水の鉄濃度およびアルミニウム濃度の総和が20mg/L以上60mg/L未満の場合、生物酸化装置のろ材の粒径は5mm以上10mm未満、鉄濃度およびアルミニウム濃度の総和が60mg/L以上の場合、ろ材の粒径は10mm以上20mm以下とすることが好ましい。
また、生物接触ろ過装置に充填するろ材の粒径は同じく生物接触ろ過装置に流入する被処理水の鉄濃度およびアルミニウム濃度の総和が40mg/L未満の場合、ろ材の粒径は0.5mm以上2mm未満、鉄濃度およびアルミニウム濃度の総和が40mg/L以上60mg/L未満の場合、ろ材の粒径は1mm以上3mm以下、鉄濃度およびアルミニウム濃度の総和が60mg/L以上の場合、さらに後段にもう1系列同じ接触ろ過装置を設置することが好ましい。
前記ろ材の粒径は、JIS Z 8801で定められている試験用ふるいにより分別を行い、ふるいによりその範囲外の粒径のものを除いたものである。即ち、粒径が4mm以上20mm以下のろ材とは、ふるいにより粒径が4mm未満のものと20mmを超えるものを除いたろ材であることを意味する。
【0018】
ろ材としては、微生物を担持させることができる多孔質ろ材が好ましく、粒径のばらつきの幅が小さく揃っていて、砂よりも軽くて、多孔質であればよく、たとえばゼオライト、アンスラサイト、ザクロ石、軽石、活性炭など色々なものが利用できる。ろ過装置に上部から通水する際は、水に沈むものが好ましい。
【0019】
ろ材に担持させる微生物としては、鉄、マンガン等の重金属を酸化する微生物が好ましい。
鉄、マンガンを酸化する微生物としては、基本的には原水中に含まれる微生物が、生物ろ過装置に充填した多孔質ろ材に付着し増殖することで除去性能を発揮するが、増殖するまでに2、3カ月を要することもあるため、その期間を短縮するため、既設で除鉄、除マンガンのために用いられている鉄バクテリア、マンガン酸化菌等を含むものであれば特に制限されるものではなく、公知のものを用いることができる。例えば、Gallionella、Thiobacillus、Leptothrix、Caldimonas、Hyphomicrobium、Nitrosomonas、Nitosospira、Nitrobacter、Nitrospira,Geobacter,Geothrix属等が挙げられる。
【0020】
生物酸化装置に用いる微生物としては、被処理水中の鉄、マンガン等の重金属の濃度が高いので、濃度が高い場合に処理能力の高い微生物が好ましい。
生物接触ろ過装置に用いる微生物としては、被処理水中の鉄、マンガン等の重金属の濃度が低いので、濃度が低い場合に酸化処理能力の高い微生物が好ましい。
【0021】
本発明に係る処理装置は、生物酸化装置、生物接触ろ過装置に流入する被処理液のpHを制御するpH調整剤供給装置を備えることが好ましい。
pH調整剤により、生物酸化装置に流入する被処理水のpHは3.0から5.5の範囲に調整し、生物接触ろ過装置に流入する被処理水のpHを5.5から7.0に調整することが好ましい。
生物酸化装置に流入する被処理液のpHを3.0から5.5の範囲とすることにより、鉄の酸化、アルミニウムの水酸化が可能である。生物接触ろ過装置のpHを5.5から7.0にすることにより、マンガンの酸化を行い、該酸化物により残存するその他の重金属の吸着除去することができる。
また、生物酸化装置においては、流入する被処理液のpHによっては、一部マンガンの酸化も行われ、マンガン、カドミウム、亜鉛等も除去される。
重金属を含む排水中の、鉄、マンガン以外の重金属の含有量が少ない場合、特に生物酸化装置に流入する被処理液のpHを3〜4に制御すると、鉄のみをろ材に析出させることができ、生物接触ろ過装置に流入する被処理水のpHを5.5〜7.0にてマンガンと残る鉄を析出させることができる。鉄、マンガンは有害金属の回収剤となるため、鉄、マンガンのみが吸着したろ材を、逆洗して鉄、マンガンを回収し、有害金属の回収剤として有効利用することができる。
また、排水がアルミニウムを含有する場合、アルミニウムはpH3.0〜4.5では一部は析出し、一部は溶解しているものもある。pHを4.5〜5.5の条件で水酸化アルミニウムとして析出してくるので、生物酸化装置によりアルミニウムの一部を除去することが可能となる。細かなフロックのものは、後段の生物接触ろ過装置によりろ過される。
【0022】
特に生物接触ろ過装置に流入する被処理液のpHは重要で、pH5.5〜7.0の範囲とすることにより、カドミウム、亜鉛、マンガンなどの金属の処理が可能となる。
【0023】
pH調整剤としては、一般的にpHを調整するために用いるアルカリ、酸を用いることができる。
例えば、アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化マグネシウム等を用いることができる。
酸としては、塩酸、硫酸等を用いることができる。
【0024】
上記の構成によれば、前段で、生物処理によりヒ素、鉄、アルミニウム、鉛等の金属イオンの半分程度を除去して、仕上げ処理の生物接触ろ過装置への負荷を低減することができる。
鉄に関しては、通常の酸化剤による酸化では、式(1)に示すように2価の鉄は酸化され、3価の鉄になるとともに水素イオンが発生するためpHを下げるが、重金属を含む排水は、硫酸酸性であることが多く、式(2)に示すように塩基性硫酸鉄へ形態変化することにより、水素イオンが消費され、pHを下げずに酸化が可能となる。
また、生物接触ろ過処理により、マンガン酸化を行い、亜鉛やクロム、カドミウムを除去し、生物酸化装置で取り残した鉄、アルミニウム等の金属も除去する。
マンガンの酸化についても通常の酸化剤によるマンガン酸化では(3)式に示すように4価のマンガンとなるが、生物酸化では式(4)に示すように3価のマンガンとなり、水素イオンの発生が少なく、次工程におけるpH調整剤の使用量を低減することができ、運転管理費を低減可能な処理装置を実現することができる。
鉄とマンガンイオンの処理ができれば、残る鉛、カドミウム、亜鉛、ヒ素といった金属イオンは鉄の水酸化物とマンガンの酸化物に吸着していっしょに除去される。
Fe
2++O
2+3/2H
2O → Fe(OH)
3+2H
+ ・・・(1)
Fe(OH)
3+2H
++SO
42- → Fe(OH)SO
4+2H
2O ・・・(2)
Mn
2++NaClO+2H
2O → MnO
2・H
2O↓+NaCl+2H
+
・・・(3)
Mn
2++1/2O
2+1/2H
2O → 1/2Mn
2O
3+H
+ ・・・(4)
【0025】
前記生物酸化装置は、生物酸化装置に流入する被処理水に2価の鉄イオンを添加する鉄イオン供給装置、及び/又はマンガンイオンを添加するマンガンイオン供給装置を備えることができる。また、前記生物酸化装置は、生物酸化装置に流入する被処理水にマンガンイオンを添加するマンガンイオン供給装置及びアンモニア性窒素を添加するアンモニア性窒素供給装置を備えることができる。
【0026】
2価鉄イオンは重金属、特にヒ素及び鉛に対してその除去効果が高く、生物酸化装置に流入する被処理水の2価の鉄イオンの濃度の2価鉄イオン及びマンガンイオン以外の重金属の濃度に対する割合(Fe
2+/Fe
2+及びMn以外の重金属質量比)が5未満の場合は、前記被処理水に2価の鉄イオンを前記割合が5〜10となるように添加することが好ましい。
特に2価鉄イオンの濃度のヒ素及び鉛濃度に対する割合(Fe
2+/As+Pb質量比)が5未満である場合、被処理水に2価の鉄イオンを前記割合が5〜10となるように添加することが好ましい。
前記割合を5〜10とすることにより、本発明の処理装置により処理された処理水中のヒ素濃度を例えば0.005ppm等の基準値以下まで処理することができる。
【0027】
前記生物酸化装置に流入する被処理水のマンガンイオンの濃度の2価鉄イオン及びマンガンイオン以外の重金属の濃度に対する割合(Mn/Fe
2+及びMn以外の重金属質量比)が0.5未満の場合は、前記被処理水にマンガンイオンを前記割合が0.5〜1となるように添加することが好ましい。
マンガン酸化細菌は、鉄を栄養塩とする鉄バクテリアと共存するか、またはアンモニア性窒素を酸化する硝化菌との共存が必要で、マンガン酸化菌のみでの生育は考えられない。よって、2価鉄イオンの含有量が低く、その他の重金属の濃度が高い場合は、重金属を除去するために、2価鉄イオンとマンガンイオン、またはマンガンイオンとアンモニア性窒素を供給することが必要となる。
被処理水にカドミウム、亜鉛が含有される場合は酸化マンガンによる吸着が優れており、被処理水中のマンガンがカドミウムや鉛、亜鉛、クロムなどの重金属を吸着除去するために、被処理水のマンガンイオンの濃度の2価鉄イオン及びマンガンイオン以外の重金属の濃度に対する割合(Mn/Fe
2+及びMn以外の重金属質量比)が0.5未満の場合は、その0.5倍から1倍量のマンガンが概ね必要となる。鉱山やトンネル湧水には亜鉛が5mg/L程度含有している場合があり、そうすると必要なマンガン濃度は2.5〜5mg/Lになる。一般的な地下水で0.5mg/Lのマンガン濃度ではマンガンが不足するので添加することが好ましい。
【0028】
また、前記生物酸化装置に流入する被処理水の2価鉄イオンの濃度が0.5mg/L以下であり、マンガンイオンの濃度の2価鉄イオン及びマンガンイオン以外の重金属の濃度に対する割合(Mn/Fe
2+及びMn以外の重金属質量比)が0.5未満の場合は、前記被処理水にマンガンイオンを前記割合が0.5〜1となるように添加すると共に、アンモニア性窒素をMn濃度に対して0.5倍から1倍(NH
4−N/Mn質量比)となるように添加することが好ましい。
添加するマンガン量は、前記割合が1倍より大きいと、過剰な添加により、発生汚泥量の増加に繋がる。0.5倍より少ないと、重金属の環境基準値以下に処理できなくなる。前記割合は好ましくは0.7から1倍である。
また、アンモニア性窒素の添加量を上げると、消費する酸素量が多くなり好ましくない。
【0029】
2価の鉄イオンを添加するための化合物としては、硫酸第一鉄が好ましく、アンモニア性窒素を添加するための化合物としては、塩化アンモニウム、尿素、アンモニア水等が好ましい。
Mnイオンを添加するための化合物としては、硫酸マンガンが好適である。
【0030】
被処理水中の重金属及びアルミニウムの濃度は、ICPやICP−MSにより測定することができる。
【0031】
上記の構成によれば、酸性排水等の重金属を含む排水に含有されている、アンモニア、ヒ素、鉄、マンガン及びその他の金属イオンを好適に除去することができるとともに、被処理水のろ過流速を大きくすることが可能となり、ろ材の洗浄間隔も長くすることが可能となる。また、アルミニウムイオンが存在する場合は、生物酸化装置におけるpH、ろ材粒径を調整し、生物酸化装置で水酸化アルミニウムとしてろ過し、後段の生物接触ろ過装置への負担を低減し、後段の生物接触ろ過装置で残留するアルミフロックの除去を行う。
【0032】
また、被処理水にフッ素イオンが含まれる場合、金属イオンの処理ではほとんど処理することはできず、晶析法を用いて除去する。
【0033】
本発明の処理装置は、被処理水にフッ素イオンが含まれる場合、前処理を行うための上記生物酸化装置と、金属イオンの仕上げ処理を行う生物接触ろ過装置、さらにはフッ素を除去するための晶析装置を組合せ、鉄、マンガン、カドミウム、鉛、亜鉛、ヒ素等の重金属と、アルミニウムと、フッ素イオンの除去を行うことができる。
【0034】
晶析装置は、リン酸イオン供給装置を具備し、平均粒子径が0.2mm以上0.8mm以下の炭酸カルシウムが種晶として充填され、底部から被処理水が通水され、流入箇所に気体を吹き込む装置を備えることが好ましい。
【0035】
フッ素イオンはリン酸イオンとカルシウムイオンの存在により、pH6〜7にするとフルオロリン酸カルシウムという結晶物として種晶に析出する。従って、晶析装置は、晶析装置に流入する被処理水にリン酸イオンを添加するリン酸イオン供給装置を有することが好ましい。また被処理水は、通常カルシウムイオンを含んでいるが、カルシウムイオンを含有しない場合、もしくは含有されるカルシウムイオンの量が少ない場合は、カルシウムイオン供給装置を設け、カルシウムイオンを添加することが好ましい。
リン酸イオンを供給するための化合物としては、リン酸イオンを供給できるものであればよく、リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸カリウム等が挙げられるが、コスト面を考慮すると、リン酸が好ましい。
カルシウムイオンを添加するための化合物としては、水酸化カルシウム、塩化カルシウム等が挙げられ、pH調整剤を兼ね、水酸化カルシウムの添加が好ましい。
【0036】
フロオロリン酸カルシウムによるフッ素処理は、化学式(5)に基づき、結晶化して除去される。
5Ca
2++3PO
43-+F
- → Ca
5(PO
4)
3F ・・・(5)
カルシウムイオンの添加量は、フッ素濃度の10〜20倍(質量比)であり、リン酸イオンの添加量は、リン酸性リン濃度がフッ素濃度の4〜9倍(質量比)となる添加が必要である。
【0037】
また、フルオロリン酸カルシウムは晶析装置の種晶に析出すると、種晶同士がくっつきやすくなり、種晶同士がくっつくとブロックとなり、流入箇所が詰まりやすくなる。流入箇所に気体を吹き込む装置を設け、気体を吹き込むことによりブロックとなるのを防止することができる。
本発明の晶析装置に用いる炭酸カルシウムは、ヒドロキシアパタイトよりも結晶粒子が強く、底部から気体を吹き込んでも、結晶粒子が壊れることが無く、処理水が白濁することがないので、種晶に適している。
気体としては、空気が好ましく、原水量に対して0.05〜0.1倍で吹き込むことが好ましい。
【0038】
また、種晶の粒径を選択することで、環境基準であるフッ素イオン濃度0.8mg/L以下の処理が可能となった。種晶としては平均粒子径0.2mm〜0.8mmの範囲で粒径を選択することが好ましい。
より好ましくは0.3〜0.4mmの範囲である。粒径が0.2mm未満になると、基体を吹き込むと舞い上がり生じるため、分離が難しくなり、0.8mmを超えると環境基準である0.8mg/L以下とすることが困難であると共に、晶析物の流動が悪くなり、晶析物同士が結合して塊状となって閉塞する。
前記平均粒子径は、重量累積粒度分布の50%径を示す。
【0039】
本発明に係る重金属を含む被処理水の処理装置は、上記生物装置を2系統以上備えていてもよい。
上記の構成によれば、生物装置による処理に異常が起きた場合に生物装置を切替えて、連続して安定した水質を確保することができる。
【0040】
本発明に係る重金属を含む排水の処理装置は、上記生物酸化装置、生物接触ろ過装置ともに、被処理水中の金属イオン濃度により大きさが設計され、特に鉄とアルミニウムイオン濃度により決定される。
【0041】
生物酸化装置のろ過速度は生物酸化装置に流入する被処理水中の鉄濃度およびアルミニウム濃度の総和が20mg/L以上の場合、0.8mg/L・min以上1.5mg/L・min以下とし、生物接触ろ過装置のろ過速度を生物接触ろ過装置に流入する被処理水中の鉄、アルミニウム濃度の総和が15mg/L以上の場合、1.2mg/L・min以下とすることが好ましい。ろ過速度がこれ以上大きい装置の場合、処理水の悪化や生物処理装置の洗浄頻度が増加し、被処理水の処理効率が低下する。小さい場合は装置が大きくなり、逆洗のための設備などが大きくなる。
前記ろ過速度は、以下の式による求められる値である。
(流入の鉄濃度−処理水の鉄濃度)/滞留時間
前記滞留時間は、ろ材が充填されている容積を流量で除して求める。
【0042】
本発明に係る重金属を含む排水の処理方法は、上記生物酸化装置と生物接触ろ過装置を用いて、原水としての重金属を含む排水を通水して、鉄、マンガン、鉛、カドミウム、ヒ素、亜鉛、銅、クロム等の重金属を除去する。原水がフッ素イオンを含有する場合は、上記生物接触ろ過装置の後に、晶析装置を設け、その処理水に含まれるフッ素イオンをリン酸を添加することで、フルオロリン酸カルシウムとして晶析することができる。
上記の構成によれば、鉄、マンガン、鉛、ヒ素、亜鉛、カドミウム、銅、クロム等の重金属、及びフッ素イオンを効率よく除去することができ、環境基準値以下にすることができる。また、凝集剤や酸化薬剤を一切使わず運転管理費を低減できる。
具体的には、カドミウム、鉛、六価クロム、ヒ素については、環境基準値であるカドミウム0.01mg/L以下、鉛0.01mg/L以下、六価クロム0.05mg/L以下、ヒ素0.01mg/L以下とすることができる。亜鉛は2mg/L以下、フッ素は0.8mg/L以下、銅は2mg/L以下、マンガンは2mg/L以下、鉄は2mg/L以下とすることができる。
【0043】
次に、本発明の重金属を含む排水の処理装置及び処理方法を図面を用いて説明する。
図1は本発明の重金属を含む排水の処理装置一例の概略図である。処理装置は、生物酸化装置3、生物接触ろ過装置12を備え、更にフッ素晶析装置20により構成されている。
生物酸化装置3には、粒径4mm以上20mm以下のろ材が充填され、該ろ材に微生物が担持されている。生物接触ろ過装置12には、粒径0.5mm以上4mm以下のろ材が充填され、該ろ材に微生物が担持されている。生物酸化装置3は、空気又は酸素を供給する散気装置7を備える。
フローを順次説明する。原水槽1に流入した排水が原水ポンプ2にて生物酸化装置3に移送され、ブロワ8にて生物酸化装置3の底部から散気を行い、鉄イオンやマンガンイオンを酸化する為の空気を供給し、主に除鉄、除アルミニウム処理を行い、一部除マンガン処理も行う。生物酸化装置3に流入する手前でpHを測定し、そのpHを3.0〜5.5、さらに好ましくは4〜5に調整し、除鉄、除アルミニウムを行う。鉄イオンは微生物による酸化で、アルミニウムイオンは水酸化物イオンの添加による水酸化によってろ過効果により除去される。鉄イオンの酸化のため、空気又は酸素の供給が必要で、反応装置は上部がフリーの重力式を採用する。
【0044】
生物酸化装置のろ材は粒径を粒径4mm以上20mm以下とし、その鉄イオン、アルミニウムイオンの濃度が総和で20mg/L以上40mg/L以下の場合、好ましくは5mm以上10mm未満が望ましい。ろ材の粒径が細かすぎると、鉄の酸化物やアルミニウムの水酸化物によりろ材間が速く閉塞し、直ぐに逆洗が必要となる。逆に粗すぎると、酸化速度が得られないため、ほとんど処理ができない。
また、生物酸化装置の処理速度は原水の鉄イオン、アルミニウムイオン濃度により変化するが、鉄イオン濃度およびアルミニウムイオン濃度の総和で20mg/L以上の場合、0.8mg/L・min以上1.5mg/L・min以下とする。アルミニウムイオンは生物による酸化には関係がないが、アルミニウムイオン濃度が高い場合は、ろ材の閉塞が速く、洗浄間隔を維持するために、一定の反応時間、ろ過速度を持たせる。あまり反応速度が速いと、洗浄間隔が短くなる。逆に反応速度が遅すぎると処理設備が大きくなる欠点がある。
ろ材の洗浄は生物酸化装置の水位がろ材の閉塞により上昇し、例えば差圧で1mとなったときまたは、所定のタイマーにより洗浄を行う。洗浄方法は生物酸化装置3の水位が所定の位置になるまで水抜きを行い、その後、洗浄コンプレッサー10にて空気を生物酸化装置3の底部より散気して、ろ材間の汚泥を剥離させ、次に、処理水槽16の処理水を逆洗ポンプ25にて生物酸化装置3の底部から送り込んで、上部から汚泥を排出して、汚泥濃縮タンク30に送る。汚泥濃縮タンクの流入前で、高分子タンク26のアニオン高分子を高分子供給ポンプ29で供給し、汚泥を濃縮する。濃縮された汚泥は汚泥移送ポンプ32で天日乾燥床31に送られ、充填された砂によりろ過されると共に、天日によって水分が蒸発し、含水率の低いケーキとなる。場所がない場合は天日乾燥は脱水機でも構わなず、効率的に汚泥が減量できる方法を選択する。また、汚泥のろ液は原水槽に戻される。
【0045】
その後、加圧ポンプ11により加圧して、生物接触ろ過装置12に供給する。ここでは、鉄イオンがほとんど酸化されているとともに、溶存酸素濃度も高いため、上部から流入し底部から処理水が流出する圧力式のろ過設備とする。酸化して除去できなかった微細な鉄、アルミフロックの除去やマンガンの酸化除去をメインに行う。生物接触ろ過装置12に流入する前に再度pHを5.5以上7.0以下に調整する。
【0046】
ろ材の粒径はマンガン酸化がより効率的に実施でき、微細なフロックがろ過できると共に、ろ材の閉塞による洗浄間隔が保てるように、粒径0.5mm以上4mm以下のろ材が充填される。さらに好ましくは粒径0.5mm以上3mm未満のろ材が望ましい。
生物接触ろ過装置のろ過速度を生物接触ろ過装置に流入する被処理水中の鉄濃度および、アルミニウム濃度の総和で15mg/L以上の場合、1.2mg/L・min以下とする。マンガンの酸化では汚泥量はそれほど増加せず、除去し切れなかった鉄イオンやアルミニウムイオン濃度に影響される。
【0047】
生物接触ろ過装置12はタイマーによる洗浄を行う。洗浄は所定の位置まで装置内の水位を下げた後、装置底部の洗浄空気管15に洗浄コンプレッサー10から空気を送りろ材間の汚泥を剥離させ、上部から洗浄排水を排出し、汚泥濃縮タンク30に貯める。汚泥濃縮タンクでは生物酸化装置の洗浄と同様、アニオン高分子を供給して汚泥を濃縮、その後天日乾燥床31に送水して乾燥させる。天日乾燥床でろ過された水分はフッ素を含むため、原水槽に戻される。
生物接触ろ過装置12の処理水は処理水槽16に貯留され、次の工程であるフッ素晶析装置20に晶析ポンプ19にて送水される。フッ素晶析装置20は下部から原水が供給され、上部から処理水が流出する仕組みで、その中間に晶析物が充填されている。晶析物としては安価で無害な炭酸カルシウムの結晶を用いることが望ましい。炭酸カルシウムの結晶は溶解しにくく、強固であるから利用しやすい。その他にも、参考特許に記載のヒドロキシアパタイトなどの例があるが、結晶物が摩擦に弱く、処理水が白濁するため、水処理用としては勧められない。粒径は、反応性が高く、上部から越流しにくい0.2mm以上0.8mm以下のものを用いる。好ましくは0.3mmから0.4mmが望まれる。
【0048】
晶析装置にフッ素イオンとカルシウムイオンを含む原水を下部から流入させ、リン酸タンク21からリン酸供給ポンプ22にてリン酸を原水に添加し、次式の反応により、
5Ca
2+ + 3PO
43‐ + F
‐ → Ca
5(PO
4)
3F
フルオロリン酸カルシウムとして炭酸カルシウムの周りに析出させる。
結晶物が大きく成長してくると除去能力が低下するため、炭酸カルシウムが成長して粒径が0.8mmを超えた場合には引き抜くことが好ましい。
引き抜きは原水供給を停止し、晶析物引抜バルブ23を開けて、晶析物回収パック24に回収する。
【実施例】
【0049】
実施例、比較例を以下に示す。
実施例1
内径0.2m、高さ2.8mの反応槽に、ろ材として粒径5〜10mmの天然ゼオライトが1.6m充填され、該ろ材に地下水を原水とした浄水場の鉄バクテリア汚泥から得た微生物が担持された生物酸化装置と、内径0.2m、高さ2.8mの反応槽に、ろ材として0.5〜2.0mmの天然ゼオライトが1.6mm充填され、該ろ材に地下水を原水とした浄水場の鉄バクテリア汚泥から得た微生物が担持された生物接触ろ過装置を有する
図1に示すような処理装置を用いて以下の重金属を含む排水の処理を行った。尚、生物酸化装置は、底部から3L/minにて散気して空気を供給した。
原水は、pH3.4、
鉄 28mg/L
アルミニウム 8.8mg/L
マンガン 2.5mg/L
亜鉛 1.4mg/L
鉛 0.1mg/L
銅 0.5mg/L
カドミウム 0.1mg/L
であった。原水のpHを、pH調整剤供給装置により水酸化ナトリウムを添加して、pH4.5に調整し、流量107L/hr(LV4m/hr)で生物酸化装置によりろ過を行った。
【0050】
生物酸化装置により処理された処理水はpH5.0、
鉄 4.4mg/L
アルミニウム 2.2mg/L
マンガン 1.4mg/L
亜鉛 0.7mg/L
鉛 0.01mg/L
銅 0.2mg/L
カドミウム 0.01mg/L
であった。
除去速度は
(28+8.8−4.4−2.2)(mg/L)/28(min)
=1.08(mg/L・min)
であり、
滞留時間は、ろ材の充填されている容積が、
0.2×0.2÷4×3.14×1.6=0.050(m
3)
であるため、
0.05(m
3)÷107(L/hr)=28(min)
であった。
【0051】
次に、前記生物酸化処理により処理された処理水のpHをpH調整剤供給装置により水酸化ナトリウムを添加してpH6.0に調整し、生物接触ろ過装置によりろ過を行った。
生物接触ろ過装置により処理された処理水はpH6.0、
鉄 0.1mg/L
アルミニウム 0.2mg/L
マンガン 0.1mg/L
亜鉛 0.1mg/L
鉛 0.01mg/L
銅 0.1mg/L
カドミウム 0.01mg/L
であった。
生物接触ろ過装置に流入される被処理水における鉄とアルミニウムの総和は6.6mg/Lであり、除去速度は
(4.4+2.2−0.1−0.2)(mg/L)/25(min)
=0.25(mg/L・min)
であった。
滞留時間は、ろ材の充填されている容積が、
0.2×0.2÷4×3.14×1.6=0.050(m
3)
であるため、
0.05(m
3)÷120(L/hr)=25(min)
であった。
【0052】
実施例2
実施例1において、生物酸化装置のろ材を粒径10mm〜20mmの天然ゼオライトに変更した以外は実施例1と同じ生物酸化装置及び生物接触ろ過装置を有する処理装置を用いて、以下の原水の処理を行った。
原水のpH3.2、
鉄 40mg/L
アルミニウム 30mg/L
マンガン 20mg/L
亜鉛 6mg/L
鉛 1mg/L
銅 8mg/L
カドミウム 0.04mg/L
の原水をpH調整剤供給装置により水酸化ナトリウムを添加して、pH5に調整し、流量88L/hrで生物酸化装置によりろ過を行った。
【0053】
生物酸化装置の処理水はpH5.5、
鉄 10mg/L
アルミニウム 10mg/L
マンガン 15mg/L
亜鉛 3mg/L
鉛 0.01mg/L
銅 4mg/L
カドミウム 0.02mg/L
であった。
除去速度は
(40+30−10−10)(mg/L)/34(min)
=1.47(mg/L・min)
であり、
滞留時間は、ろ材の充填されている容積が、
0.2×0.2÷4×3.14×1.6=0.050(m
3)
であるため、
0.05(m
3)÷88(L/hr)=34(min)
であった。
【0054】
次に、前記生物酸化処理により処理された処理水のpHをpH調整剤供給装置により水酸化ナトリウムを添加してpH6.0に調整し、生物接触ろ過装置によりろ過を行った。
生物接触ろ過装置の処理水はpH6で、
鉄 0.3mg/L
アルミニウム 0.3mg/L
マンガン 1mg/L
亜鉛 0.1mg/L
鉛 0.01mg/L
銅 0.1mg/L
カドミウム 0.01mg/L
であった。
除去速度は
(10+10−0.3−0.3)(mg/L)/28(min)
=0.69(mg/L・min)
であり、
滞留時間は、ろ材の充填されている容積が、
0.2×0.2÷4×3.14×1.6=0.050(m
3)
であるため、
0.05(m
3)÷107(L/hr)=28(min)
であった。
【0055】
実施例3
内径1.6m、高さ2mの反応槽に、ろ材として粒径10〜20mmの天然ゼオライトが1.6m充填され、該ろ材に地下水を原水とした浄水場の鉄バクテリア汚泥から得た微生物が担持された生物酸化装置と、内径0.2m、高さ2.8mの反応槽に、ろ材として0.5〜2.0mmの天然ゼオライトが1.6mm充填され、該ろ材に地下水を原水とした浄水場の鉄バクテリア汚泥から得た微生物が担持された生物接触ろ過装置を有する
図1に示すような処理装置を用いて以下の重金属を含む排水の処理を行った。尚、生物酸化装置は、底部から3L/minにて散気して空気を供給した。
原水は、
鉄 60mg/L
アルミニウム 25mg/L
マンガン 5mg/L
亜鉛 2mg/L
鉛 0.04mg/L
銅 2.0mg/L
カドミウム 0.02mg/L
であった。原水のpHをpH調整剤供給装置により水酸化ナトリウムを添加して、pH5.6に調整し、流量9m
3/hrで生物酸化装置によりろ過を行った。反応時間は38.5分であった。
【0056】
生物酸化装置により処理された処理水は、
鉄 35mg/L
アルミニウム 10mg/L
マンガン 4mg/L
亜鉛 1.5mg/L
鉛 0.02mg/L
銅 1.1mg/L
カドミウム 0.02mg/L
に処理された。
除去速度は
(60−35+25−10)/38.5×60=1.04(mg/L・h)
であった。
【0057】
次に、前記生物酸化処理により処理された処理水のpHをpH調整剤供給装置により水酸化ナトリウムを添加してpH7.0に調整し、生物接触ろ過装置によりろ過を行った。
生物接触ろ過装置の処理水は、
鉄 1.5mg/L
アルミニウム 1mg/L
マンガン 1.8mg/L
亜鉛 0.8mg/L
鉛 0.01mg/L
銅 0.01mg/L
カドミウム 0.01mg/L
まで処理された。洗浄は2日に1回となり、鉄、マンガンの処理が安定した。
除去速度は、
(35−1.5+10−1)/38.5×60=1.1(mg/L・hr)
であった。
【0058】
比較例1
実施例3において、生物酸化装置に用いたろ材を粒径10〜30mmの天然ゼオライトとした以外は実施例3と同様に原水を生物酸化装置にて処理した。
得られた処理水は
鉄 55mg/L
アルミニウム 20mg/L
マンガン 5mg/L
亜鉛 1.8mg/L
鉛 0.03mg/L
銅 2.0mg/L
カドミウム 0.02mg/L
に処理されたが、ほとんど処理が進まなかった。
【0059】
比較例2
実施例3において、生物接触ろ過装置に用いたろ材を粒径0.3〜1.5mmの天然ゼオライトとした以外は実施例3と同様に原水を生物酸化装置にて処理し、次いで生物接触ろ過装置で処理した。
得られた生物接触ろ過装置の処理水は
鉄 3mg/L
アルミニウム 1mg/L
マンガン 4mg/L
亜鉛 1.4mg/L
鉛 0.01mg/L
銅 0.8mg/L
カドミウム 0.01mg/L
であり、上記のように処理されたが、洗浄が1日に2回必要で、鉄、マンガンの処理性能が確保できず、亜鉛、銅の処理性が悪かった。
【0060】
実施例4
被処理水にフッ素が含有される場合のフッ素の処理について、フッ素晶析装置によるフッ素除去を実施した。
晶析装置は、平均粒径が0.3mmの炭酸カルシウム(三共精粉株式会社製、粒状炭カルK−1)が種晶として充填され、底部から被処理水を通水し、流入箇所に空気を6L/hrで供給した。
カルシウム濃度 80mg/L
フッ素濃度 2.4mg/L
の被処理水に、リン酸性リンが20mg/Lとなるように85%リン酸を74.4mg/L添加し、pHを水酸化ナトリウムを用いてpH6.2とし、通水速度13m/hrにて処理を行った結果、処理水はフッ素濃度が0.75mg/Lとなった。
【0061】
実施例5
実施例4において、晶析装置に平均粒径が0.5mmの炭酸カルシウムを種晶として用いた以外は実施例4と同様に、被処理水の処理を行った。処理水はフッ素濃度が1.7mg/Lであった。