特許第6012403号(P6012403)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012403
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】オルガノシロキサン誘導体組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/58 20060101AFI20161011BHJP
   A61Q 90/00 20090101ALI20161011BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20161011BHJP
   C07F 7/08 20060101ALI20161011BHJP
   C08G 77/14 20060101ALI20161011BHJP
   C08L 83/06 20060101ALI20161011BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   A61K8/58
   A61Q90/00
   B01J13/00 F
   C07F7/08 W
   C08G77/14
   C08L83/06
   C09K3/00 103L
【請求項の数】7
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-239039(P2012-239039)
(22)【出願日】2012年10月30日
(65)【公開番号】特開2014-88344(P2014-88344A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(73)【特許権者】
【識別番号】000110077
【氏名又は名称】東レ・ダウコーニング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(72)【発明者】
【氏名】池田 智子
(72)【発明者】
【氏名】塩 庄一郎
(72)【発明者】
【氏名】飯村 智浩
(72)【発明者】
【氏名】林 昭人
(72)【発明者】
【氏名】古川 晴彦
【審査官】 松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−109263(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/025146(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/099007(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/049247(WO,A1)
【文献】 特開2008−266285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/58
A61Q 90/00
B01J 13/00
C07F 7/08
C08G 77/14
C08L 83/06
C09K 3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記平均一般式(2)で表される組成物であることを特徴とするオルガノシロキサン誘導体組成物。
【化2】
(上記式中、R〜Rは、1つまたは2つが−O−Si(Rで表される官能基(Rは、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかである)、又は−O−Si(R−Xで表される官能基(Rは、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかであり、Xはi=1のときの下記一般式(3)で示される官能基である)であり、その他のR〜R炭素数1〜10の1価炭化水素基である。Mn+が、亜鉛イオン(Zn+)及び/又はアルミニウムイオン(Al+)である。sは0.1<s≦1.0の数であり、tは0.1<t≦0.8の数であり、n×s−t=1の関係を満たす。Aは、C2qで表される直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、qは〜20の整数である。また、平均一般式(2)で表されるオルガノシロキサン誘導体の1分子中に含まれるケイ素原子(Si)の平均合計数は2〜100である。)
【化3】

(上記式中、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかであり、R及びRは、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかである。Bは、一部に分岐を有してよいC2rで表される直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、rは2〜20の整数である。iはXで示されるシリルアルキル基の階層を示し、階層数がnのとき1〜nの整数であり、階層数nは1〜10の整数であり、aiはiがいずれのときも0〜2の整数であり、Xi+1はiがn未満のときは該シリルアルキル基であり、i=nのときはメチル基である。)
【請求項2】
上記平均一般式(2)で表されるオルガノシロキサン誘導体であって、
及びRが−O−Si(Rで表される官能基(Rは、炭素数1〜6のアルキル基である)であり、
が、炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、qが6〜20の整数であることを特徴とする請求項に記載のオルガノシロキサン誘導体組成物。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載のオルガノシロキサン誘導体からなるオイルゲル化剤。
【請求項4】
液状油用であることを特徴とする請求項3に記載のオイルゲル化剤。
【請求項5】
(A)請求項3又は4に記載のオイルゲル化剤と、
(B)上記(A)成分以外の液状油と、
を含むことを特徴とするゲル状組成物。
【請求項6】
(a)下記平均一般式(6)で表される組成物と、
【化6】

(上記式中、R〜Rは、1つまたは2つが−O−Si(Rで表される官能基(Rは、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかである)、又は−O−Si(R−Xで表される官能基(Rは、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかであり、Xはi=1のときの下記一般式(7)で示される官能基である)であり、その他のR〜Rは炭素数1〜10の1価炭化水素基である。M’が、水素原子又は1価の金属原子である。Aは、C2qで表される直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、qは6〜20の整数である。また、平均一般式(6)で表されるオルガノシロキサン誘導体の1分子中に含まれるケイ素原子(Si)の平均合計数は2〜100である。)
【化7】

(上記式中、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかであり、R及びRは、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかである。Bは、一部に分岐を有してよいC2rで表される直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、rは2〜20の整数である。iはXで示されるシリルアルキル基の階層を示し、階層数がnのとき1〜nの整数であり、階層数nは1〜10の整数であり、aiはiがいずれのときも0〜2の整数であり、Xi+1はiがn未満のときは該シリルアルキル基であり、i=nのときはメチル基である。)
(b)多価金属陽イオンMn+が、亜鉛イオン(Zn+)又はアルミニウムイオン(Al+)を含む水溶液と、
(c)水酸化物イオンを含む水溶液とを含み、
前記(a)成分に対する(b)成分の混合量が、物質量比で0.1当量超1.0当量以下であり、且つ、
前記(a)成分に対する(c)成分の混合量が、物質量比で0.05当量超1.0当量以下で、混合することを
特徴とするオルガノシロキサン誘導体組成物の製造方法。
【請求項7】
前記(a)成分を、予め水溶液に調製した前記(b)成分と混合し、その後、前記(c)成分を混合することを特徴とする請求項に記載のオルガノシロキサン誘導体組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規オルガノシロキサン誘導体組成物、特に、そのシリコーンオイルのゲル化能の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油分等の液状有機化合物のゲル化剤として、高級脂肪酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、1,2−ヒドロキシステアリン酸、ジベンジリデンソルビトール、アミノ酸誘導体、アミド化合物、ウレア化合物等が知られている。これらのゲル化剤は、有機溶剤、動植物油、鉱物油などのゲル化剤としては有効であるが、シリコーン油をゲル化させることはできなかった。ゆえに、シリコーン油と前記化合物の両方を同時且つ安定的にゲル化させる手段も限られていた。
【0003】
一方、特に低粘度のシリコーンオイルは、その優れた進展性、さっぱり感、潤滑性、撥水性、安全性等から様々な用途に用いられ、特に化粧品において汎用されている。しかしながら、このようなシリコーンオイルは、一般に他の油分との相溶性が低いため、安定性に優れた製品を調製することは困難であった。例えば、低粘度のシリコーンオイルの場合、ゲル状製品とするためにワックスと混合しても、安定な組成物とはならず、しかも外観が濁ったものとなり、ワックスに代えて架橋型シリコーンと混合すると、べたつき感が残り、シリコーンオイル本来のさっぱり感が失われてしまうという問題があった。
【0004】
このようなシリコーンオイルのゲル化の問題に対し、現在まで様々な手段が提案されている。例えば、特許文献1には、シリコーンオイルのゲル化剤として、ポリエーテルグラフト型オルガノポリシロキサンが開示されているが、このゲル化剤は特定量の水を併用することを要し、得られる組成物はその感触と経時安定性の点において満足できるものではない。
【0005】
また、近年、使用感や、安定性、さらにレオロジー性に優れた材料として、カルボキシル基を含む特定構造を有するオルガノポリシロキサン誘導体についても、様々な構造・用途が提案されている。
例えば、特許文献2には、カルボン酸基に対し、陽イオン価数として等量の多価金属イオンを添加して得たカルボン酸多価金属塩変性基を有するオルガノシロキサンをシリコーンオイルのゲル化剤として用いることを開示している。しかし、そのゲル化性能は、必ずしも満足のゆくものではなかった。
また、特許文献3には、特定構造を有するカルボン酸基含有オルガノシロキサン誘導体の一価金属塩、炭素数10〜30の一価脂肪族アルコール、水からなるゲル組成物が開示されている。
【0006】
また、特許文献4には、特定構造を有するカルボン酸基含有オルガノシロキサン誘導体の末端カルボキシル基の2価又は3価金属塩であるオルガノシロキサンを表面処理剤として使用する発明が開示されている。
しかし、これらの誘導体は、水のゲル化あるいは表面処理剤として用い得るが、油性の増粘、ゲル化剤としての使用に適するものではない。
さらに、特許文献5及び6には、アミド基含有カルボン酸金属塩を分子内に有するポリオルガノシロキサンがシリコーンオイルのゲル化剤として提案されている。しかし、該ゲル化剤は、多量を高温で長時間に亘って油剤と混合する必要があり、さらに改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07−215817号公報
【特許文献2】特開平08−109263号公報
【特許文献3】WO2009/025146号公報
【特許文献4】WO2009/022621号公報
【特許文献5】特開2007−332295号公報
【特許文献6】特開2007−001996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みて行われたものであり、油剤を少量で安定してゲル化することのできるオルガノシロキサン誘導体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来技術の課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討を行った結果、カルボキシル基を含む特定構造のオルガノシロキサン誘導体組成物を用いることによって、シリコーンオイルをゲル化することができ、得られたゲル状組成物が優れた熱安定性及び経時安定性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第一の主題は、下記平均一般式(1)で示される官能基を有するオルガノシロキサン誘導体組成物である。
(化1)
−(CH−A−COO(Mn+(OH (1)
(上記式中、Aは、C2qで表される直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、qは0〜20の整数である。Mは1種以上のn価の金属陽イオンであり、nは2以上の数である。sは0.1<s≦1.0の数であり、tは0.05<t≦1.0の数であり、n×s−t=1の関係を満たす。)
また、前記オルガノシロキサン誘導体組成物において、下記平均一般式(2)又は下記平均一般式(4)で表される誘導体組成物が好適である。
【化2】
(上記式中、R〜Rは、少なくとも1つが−O−Si(Rで表される官能基(Rは、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかである)、又は−O−Si(R−Xで表される官能基(Rは、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかであり、Xはi=1のときの下記一般式(3)で示される官能基である)であり、その他のR〜Rは同一又は異なっていてもよい置換又は非置換の1価炭化水素基である。Mは1種類以上のn価の金属陽イオンであり、nは2以上の数である。sは0.1<s≦1.0の数であり、tは0.05<t≦1.0の数であり、n×s−t=1の関係を満たす。Aは、C2qで表される直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、qは0〜20の整数である。また、平均一般式(2)で表されるオルガノシロキサン誘導体の1分子中に含まれるケイ素原子(Si)の平均合計数は2〜100である。)
【化3】
(上記式中、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかであり、R及びRは、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかである。Bは、一部に分岐を有してよいC2rで表される直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、rは2〜20の整数である。iはXで示されるシリルアルキル基の階層を示し、階層数がnのとき1〜nの整数であり、階層数nは1〜10の整数であり、aiはiがいずれのときも0〜2の整数であり、Xi+1はiがn未満のときは該シリルアルキル基であり、i=nのときはメチル基である。)
【化4】

(式中、R〜R12は、同一又は異なっていてもよい置換又は非置換の1炭化水素基であり、Mは1種類以上のn価の金属陽イオンであり、nは2以上の数である。sは0.1<s≦1.0の数であり、tは0.05<t≦1.0の数であり、n×s−t=1の関係を満たす。Aは、C2qで表される直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、qは0〜20の整数である。pは0〜20の数である。)
【0011】
また、前記オルガノシロキサン誘導体組成物において、Mn+が、2価の金属陽イオン、3価の金属陽イオン、又はこれらの混合物であることが好適である。
また、前記オルガノシロキサン誘導体組成物において、Mn+が、亜鉛イオン(Zn2+)及び/又はアルミニウムイオン(Al3+)を含み、且つ、
tが、0.1<t≦0.8の数であることが好適である。
【0012】
また、前記オルガノシロキサン誘導体組成物は、上記平均一般式(2)で表されるオルガノシロキサン誘導体組成物であって、
及びRが−O−Si(Rで表される官能基(Rは、炭素数1〜6のアルキル基である)であり、
が、炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、qが6〜20の整数であることが好適である。
また、前記オルガノシロキサン誘導体組成物は、上記平均一般式(4)で表されるオルガノシロキサン誘導体組成物であって、
〜R12が置換又は非置換の炭素原子数1〜20のアルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であり、qが6〜20の整数であり、pが1〜20の数であることが好適である。
【0013】
また、本発明の第三の主題は、前記オルガノシロキサン誘導体組成物、又は前記オルガノシロキサン誘導体組成物からなるオイルゲル化剤である。
前記オイルゲル化剤は、液状油用であることが好適である。
【0014】
また、本発明の第四の主題は、(A)前記オイルゲル化剤と、(B)上記(A)成分以外の液状油と、を含むことを特徴とするゲル状組成物である。
【0015】
また、本発明の第5の主題は、
(a)下記平均一般式(5)で表される官能基を有するオルガノシロキサン誘導体組成物と、
(化5)
−(CH−A−COOM’ (5)
(上記式中、AはC2qで表される直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、qは0〜20の整数である。M’は水素原子又は1価の金属原子である。)
(b)多価金属陽イオンMn+(Mn+は、1種以上のn価の金属Mの陽イオンを表し、nは2以上の数である)を含む水溶液と、
(c)水酸化物イオンを含む水溶液と、
を混合することを特徴とするオルガノシロキサン誘導体組成物の製造方法である。
【0016】
また、前記製造方法において、前記(a)成分に対する(b)成分の混合量が、物質量比で0.1当量超1.0当量以下であり、且つ、前記(a)成分に対する(c)成分の混合量が、物質量比で0.05当量超1.0当量以下であることが好適である。
また、前記製造方法において、前記(a)成分を、予め水溶液に調製した前記(b)成分と混合し、その後、前記(c)成分を混合することが好適である。
また、前記製造方法において、前記(a)成分におけるM’が1価の金属原子であり、且つ、前記(b)成分における多価金属陽イオンMn+が、亜鉛イオン(Zn2+)又はアルミニウムイオン(Al3+)であることが好適である。
【0017】
また、前記製造方法において、前記(a)成分が、下記平均一般式(6)又は下記平均一般式(8)で表される組成物であることが好適である。
【化6】
(上記式中、R〜Rは、少なくとも1つが−O−Si(Rで表される官能基(Rは、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかである)、又は−O−Si(R−Xで表される官能基(Rは、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかであり、Xはi=1のときの下記一般式(7)で示される官能基である)であり、その他のR〜Rは同一又は異なっていてもよい置換又は非置換の1価炭化水素基である。Mは水素原子又は1価の金属原子である。Aは、C2qで表される直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、qは0〜20の整数である。また、平均一般式(6)で表されるオルガノシロキサン誘導体の1分子中に含まれるケイ素原子(Si)の平均合計数は2〜100である。)
【化7】
(上記式中、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかであり、R及びRは、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかである。Bは、一部に分岐を有してよいC2rで表される直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、rは2〜20の整数である。iはXで示されるシリルアルキル基の階層を示し、階層数がnのとき1〜nの整数であり、階層数nは1〜10の整数であり、aiはiがいずれのときも0〜2の整数であり、Xi+1はiがn未満のときは該シリルアルキル基であり、i=nのときはメチル基である。)
【化8】
(式中、R〜R12は、同一又は異なっていてもよい置換又は非置換の1炭化水素基であり、Mは水素原子又は1価の金属原子である。Aは、C2qで表される直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、qは0〜20の整数である。pは0〜20の数である。)
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、水を用いずに液状油を少量でゲル化することができる。また、本発明によるゲル状組成物は、チキソトロピックなレオロジー特性を有し、熱安定性、経時安定性に優れており、ゲル化された油分を要する様々な分野において有用である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
まず、本発明に係るオルガノシロキサン誘導体組成物について説明する。
本発明に用いられるオルガノシロキサン誘導体組成物は、下記平均一般式(1)で示される官能基を有する。
(化9)
−(CH−A−COO(Mn+(OH (1)
【0020】
上記平均一般式(1)で示される官能基は、オルガノシロキサンのケイ素原子に直接結合している。すなわち、本発明のオルガノシロキサン誘導体組成物は、上記官能基で変性されたオルガノシロキサンである。
なお、「平均一般式」は、オルガノシロキサン誘導体組成物に含まれるオルガノシロキサン誘導体が、平均して当該一般式の表す構造を形成していることを意味する。
上記平均一般式(1)において、AはCH2で表される直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、qは0〜20の整数である。すなわち、q=0の場合、カルボキシル変性基はエチレン基を介してオルガノシロキサンのケイ素と結合することになる。なお、本発明においてはqの値が前記上限を超えると、使用感触に劣る場合がある。
【0021】
上記平均一般式(1)において、Mn+は1種以上のn価の金属Mの陽イオンであり、nは2以上の数である。本発明においては、Mn+が、2価の金属陽イオン、3価の金属陽イオン、又はこれらの混合物であることが好ましい。2価の金属陽イオンとしては、例えば、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、マンガンイオン(Mn2+)、バリウムイオン(Ba2+)、鉄イオン(Fe2+)、ニッケル(II)イオン(Ni2+)、亜鉛イオン(Zn2+)、銅(II)イオン(Cu2+)等が挙げられる。3価の金属陽イオンとしては、例えば、アルミニウムイオン(Al3+)、鉄(III)イオン(Fe3+)、クロム(III)イオン(Cr3+)等が挙げられる。本発明においては、特に、亜鉛イオン(Zn2+)、アルミニウムイオン(Al3+)を含むことが好ましい。
【0022】
上記平均一般式(1)において、sは、オルガノシロキサン誘導体1分子当たりの金属陽イオンの平均付加数を表し、0.1<s≦1.0の数であり、好ましくは、0.2<s<0.85の数である。tは、オルガノシロキサン誘導体1分子当たりの水酸化物イオンの平均付加数を表し、0.05<t≦1.0の数であり、好ましくは0.1<t≦0.8の数であり、特に好適には、0.3<t≦0.8の数である。
また、s及びtは、n×s−t=1の関係を満たす。すなわち、上記平均一般式(1)において、金属陽イオンは、カルボキシラートイオン及び水酸化イオンを中和する量が付加されており、水酸化物イオンは、カルボキシラートイオンと共に金属陽イオンを中和する量が付加されている。
【0023】
上記官能基が結合するオルガノシロキサンの構造は、シロキサン結合(Si−O−Si)に有機基が付加した構造を有するものであれば限定されないが、特に、各種鎖状オルガノシロキサンを好適に適用し得る。
鎖状オルガノシロキサンとしては、例えば、下記式(I)で表されるものが挙げられる。
【化10】
上記一般式(I)において、nは0以上、好ましくは0〜10の整数であり、最も好適には1〜3である。R〜Rは水素原子、炭化水素基、水酸基、アルコキシ基等であり、それぞれ異なっていてもよい。
したがって、本発明のオルガノシロキサン誘導体の一実施形態は、上記一般式(I)で表される鎖状オルガノシロキサンのケイ素原子との結合基、すなわち、R〜Rのいずれか1つ以上が上記平均一般式(1)で示される官能基に置き換わった化合物を包含する。
【0024】
本発明において、上記平均一般式(1)で示される官能基を有するオルガノシロキサン誘導体組成物として好ましくは、下記平均一般式(2)又は下記平均一般式(4)で表される誘導体組成物である。
【化11】
上記平均一般式(2)で表されるオルガノシロキサン誘導体組成物は、上記平均一般式(1)で表される官能基で変性されたオルガノシロキサン誘導体組成物であり、誘導体1分子中のケイ素原子(Si)の平均合計数が2〜100の範囲にあることを特徴とするものである。
上記平均一般式(2)において、R〜Rは、少なくとも1つが−O−Si(Rで表される官能基(Rは、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかである)、又は−O−Si(R−Xで表される官能基(Rは、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかであり、Xはi=1のときの下記一般式(3)で示される官能基である)である。なお、R〜Rにおいて、その全てが前記官能基のいずれかであってもよい。あるいは、R〜Rの少なくとも1つが前記官能基であれば、その他のR〜Rは、同一または異なっていてもよい置換又は非置換の一価炭化水素基のいずれかであってもよい。
【0025】
−O−Si(Rで表される官能基において、Rは、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかである。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、ヘキシル等の直鎖状、分岐状あるいは環状のアルキル基が挙げられる。−O−Si(Rで表される官能基としては、例えば、−O−Si(CH、−O−Si(CH(C)、−O−Si(CH(C)、−O−Si(CH(C)、−O−Si(CH(C11)、−O−Si(CH(C13)、−O−Si(CH(C)等が挙げられる。なお、前記官能基としては、トリアルキルシロキシ基であることが好ましく、トリメチルシロキシ基であることが最も好適である。
【0026】
また、−O−Si(R−Xで表される官能基は、デンドリマー構造を有するオルガノシロキシ基であり、Rは、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかである。また、Xはi=1のときの下記一般式(3)で示される官能基である。
【0027】
【化12】
【0028】
上記一般式(3)において、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかであり、R及びRは、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかである。R〜Rは炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、全てメチル基であることが特に好ましい。また、Bは、一部に分岐を有してよいC2rで表される直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、rは2〜20の整数である。Bである炭素数2〜20のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基等の直鎖状アルキレン基;メチルメチレン基、エチルエチレン基、1−メチルペンチレン基、1,4−ジメチルブチレン基等の分岐状アルキレン基が例示される。これらの中でも、エチレン基又はヘキシレン基が好ましい。
【0029】
上記一般式(3)において、iはXで示されるシリルアルキル基の階層を示し、階層数、すなわち、該シリルアルキル基の繰り返し数がnのとき1〜nの範囲の整数である。階層数nは1〜10の整数である。Xi+1はiがn未満のとき上記シリルアルキル基であり、i=nのときメチル基(−CH)である。aiはi=1のときは0〜2の整数であり、iが2以上のときは3未満の数である。aiは1以下であることが好ましく、0であることが特に好ましい。
すなわち、デンドリマー構造の階層nが1である場合、式(3)のシリルアルキル基は、
【0030】
【化13】
で示され、デンドリマー構造の階層nが2である場合、式(3)のシリルアルキル基は、
【0031】
【化14】
で示され、デンドリマー構造の階層nが3である場合、式(3)のシリルアルキル基は、
【0032】
【化15】
で示されるものである。
【0033】
−O−Si(R−Xで表される官能基として、特に好適には、下記一般式(III)で示されるシリルアルキル基の階層数nが1の官能基、又は下記一般式(IV)で示されるシリルアルキル基の階層数nが2の官能基が挙げられる。
【0034】
【化16】
【0035】
【化17】
【0036】
また、上記平均一般式(2)中、R〜Rにおいては、その少なくとも1つが、前記−O−Si(Rで表される官能基、又は−O−Si(R−Xで表される官能基のいずれかであれば、その他のR〜Rは、同一又は異なっていてもよい置換または非置換の一価炭化水素基のいずれかであってもよい。R〜Rである非置換基の一価炭化水素基しては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、ヘキシル等の直鎖状、分岐状あるいは環状のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;アラルキル基が例示される。R〜Rである置換の一価炭化水素基としては、3,3,3−トリフロロプロピル基、3,3,4,4,4−ペンタフロロブチル基等のパーフルオロアルキル基;3−アミノプロピル基、3−(アミノエチル)アミノプロピル基等のアミノアルキル基;アセチルアミノアルキル基等のアミドアルキル基が例示される。また、R〜Rの炭化水素基の一部が水酸基、アルコキシ基、ポリエーテル基又はパーフルオロポリエーテル基で置換されていてもよく、該アルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が例示される。
【0037】
上記平均一般式(2)中、R〜Rの1つ又は2つが、前記−O−Si(Rで表される官能基、又は−O−Si(R−Xで表される官能基のいずれかである場合、その他のR〜Rは、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基が特に好ましい。特に、平均一般式(2)中、R〜Rにおいて、全部または2つが前記―O−Si(Rで表される官能基、又は−O−Si(R−Xで表される官能基のいずれかであることが好ましく、その他のR〜Rはメチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0038】
また、Mn+は1種以上のn価の金属Mの陽イオンであり、nは2以上の数である。本発明においては、Mn+が、2価の金属陽イオン、3価の金属陽イオン、又はこれらの混合物であることが好ましい。2価の金属陽イオンとしては、例えば、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、マンガンイオン(Mn2+)、バリウムイオン(Ba2+)、鉄イオン(Fe2+)、ニッケル(II)イオン(Ni2+)、亜鉛イオン(Zn2+)、銅(II)イオン(Cu2+)等が挙げられる。3価の金属陽イオンとしては、例えば、アルミニウムイオン(Al3+)、鉄(III)イオン(Fe3+)、クロム(III)イオン(Cr3+)等が挙げられる。本発明においては、特に、亜鉛イオン(Zn2+)、アルミニウムイオン(Al3+)を含むことが好ましい。
【0039】
上記平均一般式(2)において、sは、オルガノシロキサン誘導体1分子当たりの金属陽イオンの平均付加数を表し、0.1<s≦1.0の数であり、好ましくは、0.25<s<0.85の数である。tは、オルガノシロキサン誘導体1分子当たりの金属陽イオンの平均付加数を表し、0.05<t≦1.0の数であり、好ましくは0.1<t≦0.8の数である。
また、s及びtは、n×s−t=1の関係を満たす。すなわち、上記平均一般式(2)において、金属陽イオンは、カルボキシラートイオン及び水酸化イオンを中和する量が付加されており、水酸化物イオンは、カルボキシラートイオンと共に金属陽イオンを中和する量が付加されている。
【0040】
AはC2qで表される直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、qは0〜20の整数である。なお、q=0の場合、平均一般式(2)で表されるオルガノシロキサン誘導体組成物は、下記平均一般式(2’)で表される誘導体組成物であり、カルボキシル変性基はエチレン基を介してケイ素と結合しているものである。本発明においてはqの値が前記上限を超えると、使用感触に劣る場合がある。
Si−(CH−COO(Mn+(OH (2’)
【0041】
また、上記平均一般式(2)で表されるオルガノシロキサン誘導体組成物は、誘導体1分子中のケイ素原子の平均合計数が2〜100の範囲にあることを特徴とするものである。ケイ素原子の平均合計数は2〜10の範囲が好ましく、特に3〜5の範囲であることが好ましい。一方、誘導体1分子中のケイ素原子の合計数が前記上限を超えると、オイルゲル化剤として充分に機能しない場合がある。
【0042】
上記平均一般式(2)で表されるオルガノシロキサン誘導体組成物としては、より具体的には、R、Rが−O−Si(Rで表される官能基(Rは、炭素数1〜6のアルキル基である)であり、Rが炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基であり、qの値が6〜12であるオルガノシロキサン誘導体組成物が好適に用いられる。
【0043】
【化18】
【0044】
上記平均一般式(4)で表されるオルガノシロキサン誘導体組成物は、分子鎖の両末端がアルキルカルボキシル基で変性されたオルガノシロキサン誘導体組成物である。
上記一般式(3)において、式中、R〜R12は、同一又は異なっていてもよい置換又は非置換の一価炭化水素基のいずれかから選択される。R〜R12である非置換の一価炭化水素基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基;アリル基、ヘキセニル基等の直鎖状または分岐鎖状のアルケニル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等アリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等のアラルキル基が例示される。R〜R12である置換の一価炭化水素基は、これらの基の炭素原子に結合した水素原子が部分的に水酸基、ハロゲン原子、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基、アルコキシ基、ポリエーテル基またはパーフルオロポリエーテル基等の有機基で置換された基であり、3,3,3−トリフロロプロピル基、3,3,4,4,4−ペンタフロロブチル基等のパーフルオロアルキル基;3−アミノプロピル基、3−(アミノエチル)アミノプロピル基等のアミノアルキル基;アセチルアミノアルキル基等のアミドアルキル基が例示される。R〜R12は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基およびアラルキル基であることが好ましく、1分子中のR〜R12の90モル%以上がメチル基及び/またはフェニル基であることが特に好ましい。
【0045】
また、Mn+は1種以上のn価の金属Mの陽イオンであり、nは2以上の数である。本発明においては、Mn+が、2価の金属陽イオン、3価の金属陽イオン、又はこれらの混合物であることが好ましい。2価の金属陽イオンとしては、例えば、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、マンガンイオン(Mn2+)、バリウムイオン(Ba2+)、鉄イオン(Fe2+)、ニッケル(II)イオン(Ni2+)、亜鉛イオン(Zn2+)、銅(II)イオン(Cu2+)等が挙げられる。3価の金属陽イオンとしては、例えば、アルミニウムイオン(Al3+)、鉄(III)イオン(Fe3+)、クロム(III)イオン(Cr3+)等が挙げられる。本発明においては、特に、亜鉛イオン(Zn2+)、アルミニウムイオン(Al3+)を含むことが好ましい。
【0046】
上記平均一般式(4)において、sは、オルガノシロキサン誘導体1分子当たりの金属陽イオンの平均付加数を表し、0.1<s≦1.0の数であり、好ましくは、0.25<s<0.80の数である。tは、オルガノシロキサン誘導体1分子当たりの水酸化物イオンの平均付加数を表し、0.05<t≦1.0の数であり、好ましくは0.1<t≦0.8の数である。
また、s及びtは、n×s−t=1の関係を満たす。すなわち、上記平均一般式(4)において、金属陽イオンは、カルボキシラートイオン及び水酸化イオンを中和する量が付加されており、水酸化物イオンは、カルボキシラートイオンと共に金属陽イオンを中和する量が付加されている。
【0047】
AはC2qで表される直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であり、qは0〜20の整数である。なお、q=0の場合、平均一般式(4)で表されるオルガノシロキサン誘導体組成物は、下記平均一般式(4’)で示される誘導体組成物であり、カルボキシル変性基はエチレン基を介してケイ素と結合するものである。
(化19)
MOOC−(CH−(SiR10−O)−SiR1112−(CH−COO(Mn+(OH (4’)
【0048】
上記平均一般式(4)において、pはジ置換ポリシロキサンの平均重合度を示し、0〜20の数である。本発明において、pが1〜20であることがより好ましく、1〜10であることが特に好ましい。一方、pが前記上限を超えると、オイルゲル化剤として充分に機能しない場合がある。
【0049】
上記平均一般式(4)で表されるオルガノシロキサン誘導体組成物としては、R〜R12が炭素原子数1〜20のアルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であり、qが6〜20の整数であり、pが1〜20の数であるオルガノシロキサン誘導体組成物が好適に用いられる。
【0050】
上記平均一般式(1)で示される官能基を有するオルガノシロキサン誘導体組成物は、
(a)下記平均一般式(5)で表される官能基を有するオルガノシロキサン誘導体組成物と、
(化20)
−(CH−A−COOM’ (5)
(上記式中、AはC2qで表される直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、qは0〜20の整数である。M’は水素原子又は1価の金属原子である。)
(b)多価金属陽イオンMn+(Mn+は、1種以上のn価の金属Mの陽イオンを表し、nは2以上の数である)を含む水溶液と、
(c)水酸化物イオンを含む水溶液と、
を混合することにより製造することができる。
【0051】
以下、(a)〜(c)成分について説明する。
(a)成分
(a)成分は、上記平均一般式(5)で表される官能基を有するオルガノシロキサン誘導体組成物である。上記平均一般式(5)で示される官能基は、オルガノシロキサンのケイ素原子に直接結合しており、該オルガノシロキサンの構造は、製造される平均一般式(1)で示される官能基を有するオルガノシロキサン誘導体組成物のオルガノシロキサン部分に反映される。したがって、上記平均一般式(5)で表される官能基が結合するオルガノシロキサンは、平均一般式(1)で示される官能基の場合と同様、シロキサン結合(Si−O−Si)に有機基が付加した構造を有するものであれば特に限定されず、例えば、上記一般式(I)で表される各種鎖状オルガノシロキサンが適用され得る。
【0052】
上記平均一般式(5)で表される官能基において、Aは平均一般式(1)で示される官能基のA部分に反映される。したがって、平均一般式(5)におけるAは、平均一般式(1)で示される官能基の場合と同様、C2qで表される直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、qは0〜20の整数である。
また、上記平均一般式(5)において、M’は水素原子又は1価の金属原子である。1価の金属原子としては、Li,Na,Kが挙げられる。
【0053】
上記平均一般式(5)で表されるオルガノシロキサン誘導体組成物は、例えば、前述の一般式(I)で表されるオルガノシロキサンにおいて、平均一般式(1)の官能基を導入するケイ素原子に結合した水素原子を有するものと、CH=CH−A−COOSiMeで示されるビニル末端を有するカルボン酸トリメチルシリル誘導体とを、白金系触媒の存在下に付加反応させ、保護基であるトリメチルシリル基1モルあたり、少なくとも1モル以上のメタノール等の一価アルコール、水又はこれらの混合物を加えて加熱することにより、加アルコール分解により脱保護させる工程により製造することができる。なお、Aは前記同様の基であり、M’が1価の金属原子である場合は、対応する金属(M’)イオンを含む化合物による中和工程をさらに含む。一例として、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)等の水溶液を添加することにより、カルボキシル基(−COOH)を中和する工程である。
【0054】
特に、本発明においては、(a)成分として、下記平均一般式(6)又は(8)で表されるオルガノシロキサン誘導体組成物を用いることが好ましい。下記平均一般式(6)で表されるオルガノシロキサン誘導体組成物を(a)成分として用いることにより、上記平均一般式(2)で表されるオルガノシロキサン誘導体組成物を得ることができ、下記平均一般式(8)で表されるオルガノシロキサン誘導体組成物を(a)成分として用いることにより、上記平均一般式(4)で表されるオルガノシロキサン誘導体組成物を得ることができる。
【0055】
【化21】
【0056】
上記平均一般式(6)中、R〜Rは、少なくとも1つが−O−Si(Rで表される官能基(Rは、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかである)、又は−O−Si(R−Xで表される官能基(Rは、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかであり、Xはi=1のときの下記一般式(7)で示される官能基である)であり、その他のR〜Rは同一又は異なっていてもよい置換又は非置換の1価炭化水素基である。M’は水素原子又は1価の金属原子である。Aは、C2qで表される直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、qは0〜20の整数である。また、平均一般式(6)で表されるオルガノシロキサン誘導体組成物の誘導体1分子中に含まれるケイ素原子(Si)の平均合計数は2〜100である。
【0057】
【化22】
【0058】
上記一般式(7)中、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかであり、R及びRは、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかである。Bは、一部に分岐を有してよいC2rで表される直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、rは2〜20の整数である。iはXで示されるシリルアルキル基の階層を示し、階層数がnのとき1〜nの整数であり、階層数nは1〜10の整数であり、aiはiがいずれのときも0〜2の整数であり、Xi+1はiがn未満のときは該シリルアルキル基であり、i=nのときはメチル基である。
【0059】
【化23】
【0060】
上記平均一般式(8)中、R〜R12は、同一又は異なっていてもよい置換又は非置換の1炭化水素基であり、M’は水素原子又は1価の金属原子である。Aは、C2qで表される直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、qは0〜20の整数である。pは0〜20の数である。)
【0061】
なお、上記平均一般式(6)で表されるオルガノシロキサン誘導体組成物は、特に、以下の工程(1)〜(3)により容易に得ることができる。
工程(1):
(化24)
HSi(−O−SiRH)3−f
(式中、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基またはフェニル基のいずれかであり、Rは同一又は異なっていてもよい置換又は非置換の一価炭化水素基であり、fは1〜3の整数である)で示されるジメチルシロキシ基を有するオルガノシランと、CH=CH−A−COOSiMeで示されるビニル末端を有するカルボン酸トリメチルシリル誘導体(式中、Aは前記同様の基)とを、白金系遷移金属触媒の存在下に付加反応させ、下記一般式の中間体(1−1)を得る工程。
(化25)
Si(−O−SiRH)3−f−(CH−A−COOSiMe (1−1)
【0062】
工程(2):
(化26)
Si(O−Rai(OSiR−Xi+13−ai
(式中、RはC2rで表される直鎖状または分岐鎖状のアルケニル基であり、rは2〜20の整数である。R、R、R、Xi+1、aiは前記同様の基及び数である)で示されるアルケニル基を有するオルガノシランと、白金系触媒の存在下に付加反応させ、下記一般式の中間体(1−2)を得る工程。
(化27)
Si{−OSiR−B−Si(O−Rai(OSiR−Xi+13−ai3−f−(CH−A−COOSiMe (1−2)
【0063】
工程(3):
中間体(1−2)に、保護基であるトリメチルシリル基1モルあたり、少なくとも1モル以上のメタノール等の一価アルコール、水又はこれらの混合物を加えて加熱することにより、加アルコール分解により脱保護させる工程。
なお、平均一般式(5)で表される官能基において、M’が1価の金属原子である場合には、対応する金属(M’)イオンを含む化合物による中和工程をさらに含む。一例として、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)等の水溶液を添加することにより、カルボキシル基(−COOH)を中和する工程である。
【0064】
また、上記平均一般式(8)で表されるオルガノシロキサン誘導体組成物は、
(化28)
H−(SiR10−O)−SiR1112−H
(式中、R〜R12は前記同様の基であり、pは0〜20の数)
で示される分子鎖両末端ケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン1モルに対し、少なくとも2モルのCH=CH−A−COOSiMeで示されるビニル末端を有するカルボン酸トリメチルシリル誘導体とを、白金系触媒の存在下に付加反応させ、保護基であるトリメチルシリル基1モルあたり、少なくとも1モル以上のメタノール等の一価アルコール、水又はこれらの混合物を加えて加熱することにより、加アルコール分解により脱保護させる工程により製造することができる。なお、Aは前記同様の基であり、Mが金属原子又は有機陽イオンの場合には、対応する金属イオン(Mn+)を含む化合物又は塩基性の有機化合物による中和工程をさらに含む。
具体的には、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)等の水溶液を添加することにより、カルボキシル基(−COOH)を中和する工程である。
【0065】
なお、上記製造に用いる白金系触媒は、ケイ素結合水素原子とアルケニル基のヒドロシリル化反応触媒であり、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、白金のケトン錯体、白金のビニルシロキサン錯体、四塩化白金、白金微粉末、アルミナまたはシリカの担体に固体状白金を担持させたもの、白金黒、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体、これらの白金系触媒を含むメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性有機樹脂粉末が例示される。好ましくは、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体または塩化白金酸である。
【0066】
(b)成分
本発明における(b)成分は、多価金属陽イオンMn+を含む水溶液である。Mn+は、本方法により製造される平均一般式(1)で示される官能基を有するオルガノシロキサン誘導体組成物におけるMn+に反映される。したがって、(b)成分におけるMn+もまた、平均一般式(1)の場合と同様、1種以上のn価の金属Mの陽イオンを表し、nは2以上の数である。本発明においては、Mn+が、2価の金属陽イオン、3価の金属陽イオン、又はこれらの混合物であることが好ましい。2価の金属陽イオンとしては、例えば、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、マンガンイオン(Mn2+)、バリウムイオン(Ba2+)、鉄イオン(Fe2+)、ニッケル(II)イオン(Ni2+)、亜鉛イオン(Zn2+)、銅(II)イオン(Cu2+)等が挙げられる。3価の金属陽イオンとしては、例えば、アルミニウムイオン(Al3+)、鉄(III)イオン(Fe3+)、クロム(III)イオン(Cr3+)等が挙げられる。本発明においては、特に、亜鉛イオン(Zn2+)、アルミニウムイオン(Al3+)を含むことが好ましい。
このようなMn+を含む水溶液としては、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化マンガン、塩化バリウム、塩化鉄、(II)、塩化鉄(III)、塩化ニッケル、塩化亜鉛、塩化銅(II)、塩化アルミニウム等の塩化物の水溶液;硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、硫酸ニッケル、硫酸亜鉛、硫酸銅(II)、硫酸アルミニウム等の硫酸塩の水溶液;硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸アルミニウム、硝酸鉄(III)、硝酸亜鉛、硝酸銅(II)、硝酸アルミニウム等の硝酸塩の水溶液;リン酸カルシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸鉄(II)等のリン酸塩の水溶液;水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、水酸化銅(II)等の水酸化物の水溶液等が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて使用し得る。本発明においては、特に、亜鉛イオン、アルミニウムイオンを含む水溶液(例えば、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウム、硝酸亜鉛、硝酸アルミニウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム等)、とりわけ塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸亜鉛の使用が好ましい。
【0067】
(c)成分
(c)成分は、水酸化物イオンを含む水溶液である、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、水酸化銅(II)等が挙げられ、特に水酸化ナトリウムが好適である。
【0068】
上記(a)成分を(b)成分(水溶液)に加えると、活性部である特定官能基部分が陰イオンの性質をもち、これが(b)成分より電離した多価金属陽イオンと反応して金属石鹸を形成する。この金属石鹸を(c)成分と中和反応させることにより、平均一般式(1)で表される官能基を有するオルガノシロキサン誘導体組成物が生成される。
したがって、本発明は、(a)成分を、予め水溶液に調製した(b)成分及び(c)成分と混合することにより得られる。この際、混合順は特に限定されず、(a)成分を(b)成分と混合・反応させたのち、(c)成分と混合しても、3成分を同時に混合・反応させてもよいが、反応効率を考慮し、(a)成分を、予め水溶液に調製した(b)成分と混合し、その後、前記(c)成分を混合することがより好ましい。
(b)成分の混合量は、(a)成分における平均一般式(5)で示される官能基に対して、物質当量比で0.1当量より大きく、1.0当量以下であり、(c)成分の混合量は、該官能基に対して、物質量比で0.05当量より大きく1.0当量以下であることが好ましい。混合量が前記範囲より小さい場合、オルガノポリシロキサン誘導体組成物が十分に生成されないことがあり、また、過剰に混合しても一定量を超えるオルガノポリシロキサン誘導体組成物は生成されない。
【0069】
上記した本発明に係るオルガノシロキサン誘導体組成物は、オイルゲル化剤として油剤のゲル化に使用することができる。
なお、本発明のオルガノシロキサン誘導体組成物により、油剤をゲル化して得られるゲル状組成物は、系の内部にゲル構造を有する組成物である。ゲル構造の有無の決定は、従来公知の方法によって行えばよく、例えば、X線回折法により行うことができる。また、前記ゲル状組成物はチキソトロピックなレオロジー特性を有する。本発明においては、金属イオンとカルボン酸部分の相互作用、及び水中における水酸イオン(−OH)との分子間相互作用によってゲルが形成されているものと考えられる。この結果、外観が増粘して、油分の流動性が失われ、全体が均一で柔軟性を有するゲル状物を形成する。
【0070】
本発明のゲル状組成物は、特に、
(A)上記オルガノシロキサン誘導体組成物からなるオイルゲル化剤と、
(B)上記(A)成分以外の液状油
を含むことを特徴とする。
本発明のゲル状組成物において、(A)成分は、上述の本発明に係るオルガノシロキサン誘導体組成物からなるオイルゲル化剤であり、(B)成分のゲル化剤として作用する。
前記(A)成分は、ゲル状組成物に対し1〜99重量%、好ましくは2〜40重量%の範囲で配合することができる。
【0071】
本発明のゲル状組成物において、(B)成分は、常温(25℃)において、(B)成分全体として液状を呈する(すなわち、流動性を有する)疎水性の物質であれば特に制限されず、1種又は2種以上を組み合わせて配合することができる。したがって、(B)成分は、液状油等の液状の疎水性物質又はそれらの組み合わせの他、常温(25℃)で固形状の疎水性物質(固形油等)であっても、上記液状の疎水性の物質等と併用して液状とすることにより、(B)成分として本発明のゲル状組成物に用い得る。そのような場合、必要に応じ、機械力を用いて成分を分散混合する、あるいは、成分を加熱融解させて使用する等行ってもよい。
【0072】
上記のような疎水性の物質としては、例えば、シリコーンオイルや各種有機化合物が挙げられる。
シリコーンオイルとしては、環状、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、25℃における粘度は、通常、0.65〜100000mm/sの範囲であり、好ましくは0.65〜10000mm/sの範囲である。具体的には、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状ジオルガノポリシロキサン;ヘキサメチルジシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルアルキルポリシロキサン等の直鎖状ジオルガノポリシロキサン;メチルトリストリメチルシロキシシラン、エチルトリストリメチルシロキシシラン、プロピルトリストリメチルシロキシシラン、テトラキストリメチルシロキシシラン等の分岐状オルガノポリシロキサンなどが挙げられ、これらの中でも、揮発性の直鎖状ジメチルポリシロキサン、分岐状メチルポリシロキサン及び環状ジメチルポリシロキサンが好ましい。
【0073】
有機化合物としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、メシチレン、流動パラフィン、ワセリン、n−パラフィン、イソパラフィン、イソドデカン、ポリブテン、オゾケライト、セレシン、スクワラン、プリスタン、α−オレフィンオリゴマー等の炭化水素類;アボカド油、アルモンド油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、サザンカ油、サフラワー油、大豆油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、パーシック油、ヒマシ油、綿実油、落花生油、カカオ脂、パーム油、パーム核油、モクロウ、ヤシ油等の植物性油脂類;ミンク油、卵黄油、牛脂、豚脂、硬化油等の動物性油脂類;ミツロウ、カルナウバロウ、鯨ロウ、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、カンデリラロウ、ホホバ油、マイクロクリスタリンワックス等のロウ類;ミリスチルアルコール、イソステアリルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、2−ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール等の高級アルコール類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、2−エチルヘキサン酸セチル、ヒマシ油脂肪酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸オレイル、乳酸セチル、乳酸オクチルドデシル、乳酸ミリスチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、酢酸ラノリン、モノステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、オレイン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸グリセリル、セスキオレイン酸グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、リンゴ酸ジイソステアリル、ジイソステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸プロピレングリコール、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジ2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリル酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ2−エチルヘキサン酸酸エチレングリコール、イソデシルベンゾエート、ジカプリル酸プロピレングリコール、イソノナン酸イソノニル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、ジカプリン酸エチレングリコール、ジラウリン酸ポリエチレングリコール、パルミチン酸エチレングリコール、オレイン酸エチレングリコール、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、トリオクタノイン、等のエステル油;イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等の脂肪酸;液状脂肪酸トリグリセライド、人工皮脂(スクワランと液状脂肪酸トリグリセライドとオレイン酸の混合物)が例示される。
【0074】
本発明においては、ゲル化しやすさの点で、特に、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、流動パラフィン、酢酸ブチルを使用することが好ましい。
前記(B)成分は、ゲル状組成物に対し1〜99重量%の範囲で配合することができる。
【0075】
本発明に係るゲル状組成物は、上記(A)成分と(B)成分とを混合することにより調製することができる。また、例えば、前述のオルガノシロキサン誘導体組成物の製造方法による(A)成分の合成を(B)成分中において行う、あるいは該(A)成分の合成を任意の溶媒中において行い、(B)成分を混合すること等によっても調製できる。
前記溶媒としては、本発明の組成物におけるゲル状態が損なわれない限り、例えば、水、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の低級アルコール類;フェノール類;アミン類;カルボン酸類等の高極性の液状有機化合物も用い得る。
【実施例】
【0076】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下に実施例及び比較例において用いたオルガノシロキサン誘導体組成物(実施例1〜6、比較例1〜4)の構造及びその合成方法を示す。なお、各化合物は、H,13C,29Si−NMR(NMR装置:Fourier Transform Nuclear Magnetic Resonance Spectrometer JEOL
JNM-EX400(日本電子社製))により同定した。
【0077】
<実施例1>
合成方法
撹拌機、温度計、冷却管を備えたフラスコに、1%水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液1400gを調製し、70℃に加温した。下記合成方法により得た化合物A145.5gを70℃で添加後、該温度を維持しながらさらに1時間撹拌した。その後、25%硫酸亜鉛七水和物(ZnSO・7HO)水溶液231.6gを70℃で添加し、さらに1時間撹拌して亜鉛石鹸を析出させた。そこへ5%水酸化ナトリウム水溶液を65.1g添加し、70℃で1時間撹拌して中性であること(中和反応が完了したこと)を確認した後、冷却して水を除去した。
得られた生成物を過剰量のイオン交換水中に加熱溶解し、水を分離する操作を5回行い、水酸化亜鉛および副生する塩(NaSO)を洗浄した。
その後、生成物を減圧下、105℃において乾燥し、透明から白色の固体状の物質を得た。分析の結果、前記物質は、化合物Aに由来するカルボキシル変性オルガノシロキサン誘導体部分を「RSi−C1020−COO」と略記した場合、平均組成式として「RSi−C1020−COO(Zn2+5/8(OH1/4」と表される複合塩組成物を含有していた。
なお、中和反応式は次のとおり。
(化29)
8RSi−C1020−COONa+5ZnSO+2NaOH→3Zn(O−C(=O)−C1020−RSi+2(RSi−C1020−(C=O)−O−Zn−OH)+5NaSO
【0078】
(化合物Aの合成方法)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン100g、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.02gを加え、70−100℃の範囲を保つように、ウンデシレン酸トリメチルシリル105gを滴下した。滴下終了後、2時間、100℃で熟成した後、ガスクロマトグラフィーを用いて反応の完了を確認した。低沸点分を減圧下、留去した。その後、メタノール、水を加え、還流下5時間熟成し、脱保護を行った。その後再び低沸点分を減圧下除去し、化合物Aを得た。分析の結果、下記化学構造式で示される化合物Aであることが確認された。
【化30】
【0079】
<実施例2>
合成方法
撹拌機、温度計、冷却管を備えたフラスコに、1%水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液1400gを調製し、70℃に加温した。上記製造方法により得た化合物A145.5gを70℃で添加後、該温度を維持しながらさらに1時間撹拌した。その後、25%塩化亜鉛(ZnCl)水溶液119.28gを70℃で添加し、さらに1時間撹拌して亜鉛石鹸を析出させた。そこへ5%水酸化ナトリウム水溶液を65.1g添加し、70℃で1時間撹拌して中性であること(中和反応が完了したこと)を確認した後、冷却して水を除去した。
得られた生成物を過剰量のイオン交換水中に加熱溶解し、水を分離する操作を5回行い、水酸化亜鉛及び副生する塩(NaCl)を洗浄した。
その後、生成物を減圧下、105℃において乾燥し、透明から白色の固体状の物質を得た。分析の結果、前記物質は、化合物Aに由来するカルボキシル変性オルガノシロキサン誘導体部分を「RSi−C1020−COO」と略記した場合、平均組成式として「RSi−C1020−COO(Zn2+5/8(OH1/4」と表される複合塩組成物を含有していた。
なお、中和反応式は次のとおり。
(化31)
8RSi−C1020−COONa+5ZnCl+2NaOH→3Zn(O−C(=O)−C1020−RSi+2(RSi−C1020−(C=O)−O−Zn−OH)+10NaCl
【0080】
<実施例3>
合成方法
撹拌機、温度計、冷却管を備えたフラスコに、1%水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液1400gを調製し、70℃に加温した。上記製造方法により得た化合物A145.5gを70℃で添加後、該温度を維持しながらさらに1時間撹拌した。その後、25%塩化亜鉛(ZnCl)水溶液127gを70℃で添加し、さらに1時間撹拌して亜鉛石鹸を析出させた。そこへ5%水酸化ナトリウム水溶液を86.8g添加し、70℃で1時間撹拌して中性であること(中和反応が完了したこと)を確認した後、冷却して水を除去した。
得られた生成物を過剰量のイオン交換水中に加熱溶解し、水を分離する操作を5回行い、水酸化亜鉛及び副生する塩(NaCl)を洗浄した。
その後、生成物を減圧下、105℃において乾燥し、透明から白色の固体状の物質を得た。分析の結果、前記物質は、化合物Aに由来するカルボキシル変性オルガノシロキサン誘導体部分を「RSi−C1020−COO」と略記した場合、平均組成式として「RSi−C1020−COO(Zn2+2/3(OH1/3」と表される複合塩組成物を含有していた。
なお、中和反応式は次のとおり。
(化32)
6RSi−C1020−COONa+4ZnCl+2NaOH→2Zn(O−C(=O)−C1020−RSi+2(RSi−C1020−(C=O)−O−Zn−OH)+8NaCl
【0081】
<実施例4>
合成方法
撹拌機、温度計、冷却管を備えたフラスコに、1%水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液1400gを調製し、70℃に加温した。上記製造方法により得た化合物A145.9gを70℃で添加後、該温度を維持しながらさらに1時間撹拌した。その後、25%硫酸亜鉛(ZnSO)水溶液277.9gを70℃で添加し、さらに1時間撹拌して亜鉛石鹸を析出させた。そこへ5%水酸化ナトリウム水溶液を130.4g添加し、70℃で1時間撹拌して中性であること(中和反応が完了したこと)を確認した後、冷却して水を除去した。
得られた生成物を過剰量のイオン交換水中に加熱溶解し、水を分離する操作を5回行い、水酸化亜鉛及び副生する塩(NaSO)を洗浄した。
その後、生成物を減圧下、105℃において乾燥し、透明から白色の固体状の物質を得た。分析の結果、前記物質は、化合物Aに由来するカルボキシル変性オルガノシロキサン誘導体部分を「RSi−C1020−COO」と略記した場合、平均組成式として「RSi−C1020−COO(Zn2+3/4(OH1/2」と表される複合塩組成物を含有していた。
なお、中和反応式は次のとおり。
(化33)
4RSi−C1020−COONa+3ZnSO+2NaOH→Zn(O−C(=O)−C1020−RSi+2(RSi−C1020−(C=O)−O−Zn−OH)+3NaSO
【0082】
<実施例5>
合成方法
撹拌機、温度計、冷却管を備えたフラスコに、1%水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液1400gを調製し、70℃に加温した。上記製造方法により得た化合物A145.9gを70℃で添加後、該温度を維持しながらさらに1時間撹拌した。その後、25%塩化アルミニウム六水和物(AlCl・6HO)水溶液135.2gを70℃で添加し、さらに1時間撹拌してアルミニウム石鹸を析出させた。そこへ5%水酸化ナトリウム水溶液を52.1g添加し、70℃で1時間撹拌して中性であること(中和反応が完了したこと)を確認した後、冷却して水を除去した。
得られた生成物を過剰量のイオン交換水中に加熱溶解し、水を分離する操作を5回行い、水酸化亜鉛及び副生する塩(NaCl)を洗浄した。
その後、生成物を減圧下、105℃において乾燥し、透明から白色の固体状の物質を得た。分析の結果、前記物質は、化合物Aに由来するカルボキシル変性オルガノシロキサン誘導体部分を「RSi−C1020−COO」と略記した場合、平均組成式として「RSi−C1020−COO(Al3+2/5(OH1/5」と表される複合塩組成物を含有していた。
【0083】
<実施例6>
合成方法
撹拌機、温度計、冷却管を備えたフラスコに、1%水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液1400gを調製し、70℃に加温した。下記製造方法により得た化合物B141.9gを70℃で添加後、該温度を維持しながらさらに1時間撹拌した。その後、25%塩化亜鉛(ZnCl)水溶液127gを70℃で添加し、さらに1時間撹拌して亜鉛石鹸を析出させた。そこへ5%水酸化ナトリウム水溶液を86.8g添加し、70℃で1時間撹拌して中性であること(中和反応が完了したこと)を確認した後、冷却して水を除去した。
得られた生成物を過剰量のイオン交換水中に加熱溶解し、水を分離する操作を5回行い、水酸化亜鉛及び副生する塩(NaCl)を洗浄した。
その後、生成物を減圧下、105℃において乾燥し、透明から白色の固体状の物質を得た。分析の結果、前記物質は、化合物Bに由来するカルボキシル変性オルガノシロキサン誘導体部分を「RSi−C1020−COO」と略記した場合、平均組成式として「RSi−C1020−COO(Zn2+2/3(OH1/3」と表される複合塩組成物を含有していた。
【0084】
(化合物Bの合成方法)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、1,1,3,3,−テトラメチルジシロキサン596.3g(4.45モル)を仕込み、1−ヘキセン74.8g(0.89モル)と白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.07gを70℃にて2時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間エージングした後、過剰の1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを減圧下、留去した。この反応混合物にウンデシレン酸トリメチルシリル250.6g(0.98モル)を85℃滴下し、テトラメチルジシロキサン中のケイ素原子結合水素原子(Si−H)を完全に反応させた。反応終了後、低沸分を減圧下、留去した。その後、メタノールを加え、2時間の過熱還流後、低沸分を減圧除去し、化合物Bを得た。分析の結果、下記化学構造式で示される化合物Bであることが確認された。
【化34】
【0085】
<比較例1>
上記した化合物Aの合成方法において得られる下記化合物Aを比較例1とした。
【化35】
【0086】
<比較例2>
上記化合物Aを水酸化ナトリウムにより中和して得られる下記塩を比較例2とした。
【化36】
【0087】
<比較例3>
上記化合物Aをアミノメチルプロパノール(AMP)により中和して得られる下記塩を比較例3とした。
【化37】
【0088】
<比較例4>
上記化合物Aを塩化亜鉛により中和して得られる下記塩を比較例4とした。
【化38】
【0089】
上記実施例1〜6及び比較例1〜3を用い、下記オイルゲル化試験を行った。
オイルゲル化試験
(A)上記実施例1〜6及び比較例1〜310部を、(B)液状油(デカメチルペンタシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(6mm/s(25℃))、流動パラフィン、酢酸ブチル)90部と70℃で撹拌し、室温に冷却して、各組成物を得た。得られた組成物の外観を、下記基準にて評価した。結果を下記表1に示す。
(外観による評価基準)
○:組成物がゲル状である。
×:組成物が液状である、又は(A)及び(B)成分が分離した状態である。
【0090】
【表1】
【0091】
上記表1に示すとおり、特定構造の官能基を有する本発明のオルガノポリシロキサン誘導体は、いずれの油剤も好適にゲル化するものであった。