(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012430
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】ケーブルの被覆剥ぎ取り工具及びこれを用いた剥ぎ取り方法
(51)【国際特許分類】
H02G 1/12 20060101AFI20161011BHJP
B26B 27/00 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
H02G1/12 009
B26B27/00 G
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-254429(P2012-254429)
(22)【出願日】2012年11月20日
(65)【公開番号】特開2014-103783(P2014-103783A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】新名 孝夫
【審査官】
久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−145419(JP,U)
【文献】
特開2001−204980(JP,A)
【文献】
実開昭61−192616(JP,U)
【文献】
実開昭54−158389(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/12
B26B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルの被覆の中間層を剥ぎ取る工具において、
ケーブル被覆の剥ぎ取る中間層の外周長より長い帯状のコイルバネから成るバネ板を設け、
当該バネ板の長手方向に平行する両側縁の一方の一側縁を刃状に尖らせて刃部とし、
かつ当該バネ板の一端から離れた位置の前記刃部に、当該刃部の側縁からバネ板の内側に向けて一定幅の切り欠きを設けたことを特徴とする、ケーブル被覆剥ぎ取り工具。
【請求項2】
前記切り欠きの内周縁が鋭利になっていることを特徴とする、請求項1に記載のケーブル被覆剥ぎ取り工具。
【請求項3】
ケーブルの被覆の中間層を剥ぎ取る方法において、
請求項1又は2のケーブル剥ぎ取り工具を、当該工具の内径より大きい外形を有する中間層の外周に巻き付け、
剥がそうとする中間層の外周に当該工具の前記切り欠きが直に接するようにして当該工具のバネ板を中間層の外周に圧接し、
前記中間層を剥がしていき、前記工具の付近まで剥がした前記中間層の一側を前記工具の切り欠きに入れて、工具側に引っ張ることにより前記中間層の一側に切り込みを作り、
さらに前記中間層を当該工具側に引っ張りながら、工具の外周に沿って前記中間層を回して、前記工具の刃部により当該中間層を引き剥がしていくことを特徴とする、ケーブル被覆剥ぎ取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高圧ケーブル等の被覆剥ぎ取り工具に関するもので、更に詳しく述べると、ケーブルの銅テープ層や外部半導電層等の薄膜から成る中間層の剥ぎ取りが容易かつ確実に行える剥ぎ取り工具及びこれを用いた剥ぎ取り方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高圧等のケーブル5の銅テープ層4は、
図15に示すように、残しておく銅テープ層4の箇所の端部に針金7等を巻き付けて縛り、これをストッパーとして、外端部から銅テープ層4を剥がしていく。そして、針金7箇所で、カッター8により銅テープ層4に切り込みを入れ、当該切り込み箇所から針金7の円周に沿って、カッター8で銅テープ層4を切りながら剥がしていた。
【0003】
また、前記銅テープ層4の内側の外部半導電層6についても、
図16に示すように、残しておく外部半導電層6の箇所の端部外周にテープ9を巻いて固定し、これをストッパーとして、外端部から外部半導電層6を剥がしていく。そして、テープ9箇所で、カッター8により切り込みを入れ、当該切り込み箇所からテープ9の外周に沿ってカッター8で外部半導電層6を切りながら剥がしていく。
【0004】
これらの工法では、前記ストッパーに沿ってカッター8で剥ぎ取る層を切っていかなければならず、当該カッター8で剥ぎ取る層の内側の層を傷つけてしまう恐れがある。特に、これらの中間層を剥ぎ取る際、ケーブル5を回転させることが出来ない場合もあり、その場合は、ケーブル5の下部にカッター8を当てなければならず、ケーブル8の下部が作業者から見にくい箇所では、なおさらである。この様に剥ぎ取る層の内側の層を傷つけると当該ケーブル5の絶縁等に支障を来す。また、切り口をきれいに切ることが要求されているが、これも前記工法では、螺旋状に巻かれている銅テープ層4や外部半導電層6を、刃先が斜めに横断するように切り剥がすため、作業者の腕によりまちまちである。従って、これらの作業には、熟練を要する。
【0005】
そこで、特許文献1のものが開発された。これは、電線被覆剥ぎ用工具を、シース及び絶縁体の剥ぎ取り用ダイスを2個と、ダイスストッパーと、遮蔽銅テープ切り取りバンドと、テクニックナイフとから構成したもので、シースと絶縁体の剥ぎ取りは、前記剥ぎ取り用ダイスを被覆電線の端部に外挿し、ダイスの円筒形部材を被覆電線の芯線方向に移動させながら回転することで、螺旋状に剥ぎ取る。
【0006】
外部半導電層の剥ぎ取りは、前記ダイスストッパーにテクニックナイフを固定し、ダイスストッパーを旋回させて外部半導電層を輪切りにし、その後テクニックナイフで二つの輪切りの間を縦切りする。また、遮蔽銅テープの剥ぎ取りは、その露出幅に対応した幅を有する締付けバンドを遮蔽銅テープの外周に取り付け、このバンドをストッパーとして剥ぎ取る。
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3053261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1のものは、銅テープ層の剥ぎ取りにおいては、従来の針金に代えて、締付けバンドを用いたもので、作業者は銅テープ層を前記締付けバンドに沿ってカッター等で切り取っていくのは変わらない。従って、銅テープ層の内側の層をカッター等で傷つける恐れがある。
【0009】
また、外部半導電層の剥ぎ取りは、被覆電線の外周を2つの板体で挟み込んで、これらを一体に回しながら一方の板体に設けたテクニックナイフにより当該外部半導電層を輪切りに切り、この様にして被覆電線の一定間隔をあけた2箇所を輪切りにし、これらの輪切り箇所の間を作業者がナイフで縦切りする。従って、中の層をカッター等で傷つける恐れがあり、作業者の熟練を要する作業となっている。それ故、前述の従来工法の問題点が解決されていない。
【0010】
この発明は、この従来技術を踏まえて、作業者の熟練を要せず、中の層を傷つけることなく、極めて容易に銅テープ層や外部半導電層等の中間層の剥ぎ取りが出来るケーブル被覆剥ぎ取り工具及びこれを用いた剥ぎ取り方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、ケーブル被覆の剥ぎ取る中間層の外周長より長い帯状のコイルバネから成るバネ板を設け、当該バネ板の長手方向に平行する両側縁の一方の一側縁を刃状に尖らせて刃部とし、かつ当該バネ板の一端から離れた位置の前記刃部に、当該刃部の側縁からバネ板の内側に向けて一定幅の切り欠きを設けた、ケーブル被覆剥ぎ取り工具とした。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記切り欠きの内周縁が鋭利になっていることを特徴とする、ケーブル被覆剥ぎ取り工具とした。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2のケーブル剥ぎ取り工具を、当該工具の内径より大きい外径を有する銅テープ層又は外部半導電層等の薄膜状中間層の外周に巻き付け、工具の前記切り欠きが剥がそうとする中間層の外周に直に接するようにして当該工具のバネ板を中間層の外周に圧接し、前記中間層を剥がしていき、前記工具の付近まで剥がした前記中間層の一側を前記工具の切り欠きに入れて、工具側に引っ張ることにより前記中間層の一側に切り込みを作り、さらに当該工具側に引っ張りながら、工具の外周に沿って前記中間層を回して、前記工具の刃部により当該中間層を引き剥がしていく、ケーブル被覆剥ぎ取り方法とした。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜3の各発明によれば、工具のバネ板の一側に刃部を設け、当該刃部に内側に向いて切り欠きを有するため、工具付近まで剥がした銅テープ層又は外部半導電層等の中間層の一側を前記切り欠きに入れて工具側に引っ張れば、容易に中間層に切り込みが入る。また、この切り込みを起点にして、前記中間層を工具側に引っ張りながら工具の外周に沿って前記中間層を回すことにより、前記工具の刃部で前記中間層を剥ぎ取ることが出来る。
【0015】
従って、従来工法や特許文献1のように、カッターやナイフを用いる必要がない。当該工具の、切り欠き及び刃部により前記中間層の端部をきれいに剥ぎ取ることが出来る。しかも、前記工具の切り欠き及び刃部は、前記中間層の外周に固定されているため、どのような作業者でも中間層の内側の層を傷つけることがなく、剥ぎ取り作業ができる。
【0016】
また、この工具はコイルバネから成るバネ板で構成されているため、当該工具で被覆を剥がすケーブルの外周に装着する際、バネ板を端部からその弾性に抗して剥がしながら、ケーブルの外周側面にこれを掛けて巻くことにより装着することが出来るとともに、ケーブルの端部からコイルバネの中心孔を挿入し、所定の位置まで、ケーブルの長手方向に沿って工具をずらして装着することもできる。従って、ケーブルの中間部でも当該工具を装着でき、当該工具のケーブルへの装着は極めて容易である。
【0017】
また、当該工具は、帯状のコイルバネから成るため、当該工具の自然状態での内径より大きな外径を有する銅テープ層層及び外部半導電層のケーブルであれば、種々の径のケーブルに使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この発明の実施の形態例1の工具のコイルバネから成るバネ板の斜視図である。
【
図2】この発明の実施の形態例1の工具のコイルバネから成るバネ板を伸ばした状態を示す斜視図である。
【
図3】この発明の実施の形態例1の工具を銅テープ層に装着した状態の側面図である。
【
図4】この発明の実施の形態例1の工具を銅テープ層に装着した状態の正面図である。
【
図5】この発明の実施の形態例1の工具の切り欠きに銅テープ層の一側を入れた状態の側面図である。
【
図6】この発明の実施の形態例1の工具の刃部に沿って銅テープ層を引き剥がしている状態の側面図である。
【
図7】この発明の実施の形態例1の工具で銅テープ層を剥がした状態の側面図である。
【
図8】この発明の実施の形態例1の工具で銅テープ層を剥がした後、前記工具を外した状態の側面図である。
【
図9】この発明の実施の形態例1の工具を外部半導電層に装着した状態の側面図である。
【
図10】この発明の実施の形態例1の工具を外部半導電層に装着した状態の正面図である
【
図11】この発明の実施の形態例1の工具の切り欠きに外部半導電層の一側を入れた状態の側面図である。
【
図12】この発明の実施の形態例1の工具の刃部に沿って外部半導電層を引き剥がしている状態の側面図である。
【
図13】この発明の実施の形態例1の工具の刃部に沿って外部半導電層を引き剥がした状態の側面図である。
【
図14】この発明の実施の形態例1の工具で外部半導電層を剥がした後、前記工具を外した状態の側面図である。
【
図15】ケーブルにおける銅テープ層を剥がす従来の方法を示す側面図である。
【
図16】ケーブルにおける外部半導電層を剥がす従来の方法を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態例1を図に基づいて説明する。この発明の方法に使用するケーブル被覆剥ぎ取り工具Aは、
図1及び
図2に示すように、帯状のコイルバネから成るバネ板1を設ける。
【0020】
このバネ板1の長さは、剥ぎ取る中間層の外周長より長いものとする。そして、当該当該バネ板1の長手方向に平行する両側縁の一方の一側縁を刃状に尖らせて刃部2とし、かつ当該バネ板1の長手方向の一端からやや離れた位置の前記刃部2に、当該刃部2の側縁2aからバネ板1の内側に向けて一定幅の略U字型の切り欠き3を設けたものである。この切り欠きは、矩形でも良い。また、この切り欠き3の内周縁は刃状に鋭利になっているものが良い。
【0021】
従って、この工具Aは、自然状態では、
図1に示す如くコイル状に丸まっており、弾性に抗して
図2に示すように広げると、バネ板1の一側の刃部2に前記切り欠き3が設けられていることが分かる。
【0022】
次に、工具Aを用いてケーブル被覆の剥ぎ取り方法のうち、銅テープ層4の剥ぎ取りについて説明する。
【0023】
まず、
図3に示すように、銅テープ層4を剥ぎ取るケーブル5の当該銅テープ層4の外周に工具Aを装着する。その際、工具Aの刃部2を剥ぎ取る銅テープ層4の端部側に位置させる。また、工具Aの切り欠き3が銅テープ層4の外周に直に接するように、工具Aのバネ板1を調整する。具体的には
図4に示すように、バネ板1の端部を銅テープ層4の外周から外して自体の端部で巻き玉を設ける。また、工具Aはコイルバネから成る板バネ1であるため、銅テープ層4の外周に圧接される。
【0024】
また、工具Aの銅テープ層4の外周への装着方法については、バネ板1を端部からその弾性に抗して剥がしながら、銅テープ層4の外周側面にこれを掛けて巻くことにより装着することが出来る。また、銅テープ層4又はケーブル5の端部からコイルバネの中心孔を挿入し、所定の位置まで、銅テープ層4又はケーブル5の長手方向に沿って工具Aをずらして装着することもできる。これらは、その場の状況に応じて選択できる。
【0025】
そして、銅テープ層4をその外端部からケーブル5の周囲で回しながら剥がしていく。当該銅テープ層4が工具A付近まで剥がれると、
図5に示すように、工具Aの切り欠き3に銅テープ層4の一側を引っ掛けて、銅テープ層4を工具A側に引っ張り、銅テープ層4の一側に切り込みを入れる。
【0026】
この銅テープ層4の切り込みから、
図6に示すように、工具Aの刃部2に銅テープ層4の一側を当てながら、かつ工具A側に銅テープ層4を引っ張りながら、工具Aの外周に沿って銅テープ層4を引き剥がしていく。この際、工具Aの刃部2は鋭利になっており、また、銅テープ層4の外周に圧接されているため、容易に剥がれる。また、当該銅テープ層4を工具Aの刃部2に沿って引きはがす際、前記バネ板1の端部を巻き付けた巻き玉が邪魔な場合は、当該巻き玉を他の箇所にずらしながら作業をすることもできる。
【0027】
これにより、
図7に示すように、銅テープ層4の端部は、工具Aの一側の刃部2に沿って切断され、工具Aを外すと、
図8に示すように、その切り口が一直線状に形成される。
【0028】
さらに次に、工具Aを用いて半導電層6の剥ぎ取りについて説明する。
【0029】
まず、
図9に示すように、外部半導電層6を剥ぎ取るケーブル5の当該外部半導電層6の外周に工具Aを装着する。その際、工具Aの刃部2を剥ぎ取る外部半導電層6の端部側に位置させる。また、工具Aの切り欠き3が外部半導電層6の外周に直に接するように、工具Aのバネ板1を調整する。具体的には
図10に示すように、バネ板1の端部を外部半導電層6の外周から外して自体の端部で巻き玉を設ける。なお、工具Aの前記外部半導電層6の外周への装着方法は、前記銅テープ層4の場合と同じである。
【0030】
そして、外部半導電層6をその端部からケーブル5の周囲で回しながら剥がしていく。当該外部半導電層6が工具A付近まで剥がれると、
図11に示すように、工具Aの切り欠き3に外部半導電層6の一側を引っ掛けて、外部半導電層6を工具A側に引っ張り、外部半導電層6の一側に切り込みを入れる。
【0031】
この外部半導電層6の切り込みから、
図12に示すように、工具Aの刃部2に外部半導電層6の一側を当てながら、かつ工具A側に外部半導電層6を引っ張りながら、工具Aの外周に沿って外部半導電層6を引き剥がしていく。この際、工具Aの刃部2は鋭利になっており、また、外部半導電層6に圧接されているため、外部半導電層6は容易に剥がれる。また、当該外部半導電層6を工具Aの刃部2に沿って引きはがす際、前記バネ板1の端部を巻き付けた巻き玉が邪魔な場合は、当該巻き玉を他の箇所にずらしながら作業をすることもできる。
【0032】
これにより、
図13に示すように、外部半導電層6の端部は、工具Aの一側の刃部2に沿って切断され、工具Aを外すと、
図14に示すように、その切り口が一直線状に形成される。
【0033】
以上の説明は、銅テープ層と外部半導電層の剥ぎ取りについて説明したが、この工具Aはこれらの層にかぎらず、薄膜状の中間層であれば、用いることが出来る。
【符号の説明】
【0034】
A ケーブル被覆剥ぎ取り工具
1 バネ板 2 刃部
2a 側縁 3 切り欠き
4 銅テープ層 5 ケーブル
6 外部半導電層 7 針金
8 カッター 9 テープ