特許第6012435号(P6012435)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイハツ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6012435-車両用デフロスタ装置のダクト構造 図000002
  • 特許6012435-車両用デフロスタ装置のダクト構造 図000003
  • 特許6012435-車両用デフロスタ装置のダクト構造 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012435
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】車両用デフロスタ装置のダクト構造
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
   B60H1/00 102R
   B60H1/00 102L
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-260619(P2012-260619)
(22)【出願日】2012年11月29日
(65)【公開番号】特開2014-104915(P2014-104915A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087619
【弁理士】
【氏名又は名称】下市 努
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛行
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 智弘
【審査官】 河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−147414(JP,A)
【文献】 特開平11−165525(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0006999(US,A1)
【文献】 実開平03−031252(JP,U)
【文献】 特開2002−029287(JP,A)
【文献】 特開2001−150933(JP,A)
【文献】 特開2004−314946(JP,A)
【文献】 特開平11−129744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機器からの空気が導入される空気導入口と、
フロントウインドガラスに指向し、かつ車幅方向左,右に分岐するよう形成された空気吹き出し口と、
該各空気吹き出し口と前記空気導入口とを連通接続する中空状の空気流路とを有するデフロスタダクトを備えた車両用デフロスタ装置のダクト構造であって、
前記デフロスタダクトの分岐部には、ダクト上壁面を前記空気流路内に膨出させてなる内方膨出部が形成され、
該内方膨出部の車幅方向左,右側壁部は、車幅方向外方に膨出する大略水滴形状をなしており、該水滴形状の最大膨出部は前記空気導入口寄りに位置している
ことを特徴とする車両用デフロスタ装置のダクト構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントウインドガラスの曇りや凍結を除去する車両用デフロスタ装置のダクト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のデフロスタダクトとして、例えば、特許文献1に開示されているように、HVACから空気が送風される空気受け入れ口と、フロントウインドガラスに指向する左,右の開口部と、前記空気受け入れ口から左,右の開口部に向かって車幅方向外側に広がるよう延びる左,右の空気流通部とを備えたものが一般的である。前記デフロスタダクトの開口部からフロントウインドガラスに空気を吹き付けることにより、該ウインドガラスに付着した水滴による曇りや凍結を除去し、もって視界を確保するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−218904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年の小型車においては、車室内をできるだけ広くするために、ワイヤハーネスや各種機器等の車載部品をインストルメントパネル内に収容するようにしており、インストルメントパネル内の密度が高くなる傾向にある。このためデフロスタダクトの上方に配索されるワイヤハーネス等の経路を確保できず、場合によってはワイヤハーネスがデフロスタダクトに干渉するおそれがある。
【0005】
また従来のデフロスタ装置では、特に冬期において、デフロスタダクトから吹き付けた空気がフロントウインドガラスの左,右下端部に届きにくく、曇りや凍結が除去できない場合があり、視界を確保する上での対策が要請されている。
【0006】
本発明は、前記従来の実情に鑑みてされたもので、デフロスタダクトの上方でのワイヤハーネス等の車載部品の配索経路を確保できるとともに、フロントウインドガラスの曇りや凍結を確実に除去できる車両用デフロスタ装置のダクト構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、空調機器からの空気が導入される空気導入口と、フロントウインドガラスに指向し、かつ車幅方向左,右に分岐するよう形成された空気吹き出し口と、該各空気吹き出し口と前記空気導入口とを連通接続する中空状の空気流路とを有するデフロスタダクトを備えた車両用デフロスタ装置のダクト構造であって、
前記デフロスタダクトの分岐部には、ダクト上壁面を前記空気流路内に膨出させてなる内方膨出部が形成され、該内方膨出部の車幅方向左,右側壁部は、車幅方向外方に膨出する大略水滴形状をなしており、該水滴形状の最大膨出部は前記空気導入口寄りに位置していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るダクト構造によれば、デフロスタダクトの分岐部に空気流路内に膨出する内方膨出部を形成したので、該内方膨出部から空気流路内に流入する空気の流速を高めることができる。そして前記内方膨出部を、その左,右側壁部が車幅方向外方に膨出する水滴形状とするとともに、該水滴形状の最大膨出部を空気導入口寄りに位置させたので、該空気導入口から導入された空気は、前記水滴形状の空気導入口寄りに位置する最大膨出部から高い流速でもって左,右の空気流路内に分岐されて流れ易くなる。そのため空気吹き出し口の車幅方向外側部分から吹き出される空気量が増加し、これによりフロントウインドガラスの左,右下端部の曇りや凍結を確実に除去することができ、視界を確保できる。
【0009】
また前記導入された空気の一部は、内方膨出部の左,右の側壁部に沿って流れることから、フロントウインドガラスの中央部の除曇性能が低下することはない。
【0010】
またデフロスタダクトの前記内方膨出部の凹みを利用してワイヤハーネス等を配索することにより、デフロスタダクトとの干渉を防止することができ、車載部品の配索経路を確保することができる。
【0011】
また内方膨出部の凹みにより形成された上方空間を利用することにより、ワイヤハーネスの結線作業や配索作業を容易に行うことができ、作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1による車両用デフロスタ装置のデフロスタダクトの斜視図である。
図2】前記デフロスタダクトの断面図(図1のII-II線断面図)である。
図3】前記デフロスタダクトの運転席側から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1ないし図3は、本発明の実施例1による車両用デフロスタ装置のダクト構造を説明するための図である。
【0015】
図において、1は自動車のインストルメントパネル(以下、インパネと略記する)2内に配設されたデフロスタ装置を示している。このデフロスタ装置1は、空調機器3と、デフロスタダクト4とを備えている。
【0016】
前記デフロスタダクト4は、ブロー成形により製造されたもので、大略扇形状をなすダクト本体8と、該ダクト本体8の基部8aから車幅方向左,右外方に延びる円筒形状のサイドダクト9,9とを一体に形成した構造を有する。
【0017】
前記左,右のサイドダクト9は、前記インパネ2の左,右端部に形成された不図示の空気吹き出し口に接続されており、該各吹き出し口は不図示のサイドウインドガラス,ドアウインドガラスに指向している。
【0018】
前記ダクト本体8の左,右前端部及び上,下中央部には、それぞれ取付け部8b,8b及び8c,8cが形成されており、この各取付け部8b,8cを介してダクト本体8は前記インパネ2に取り付け固定されている。
【0019】
前記ダクト本体8は、前記基部8aから車幅方向外方に扇状をなすよう拡開しており、該ダクト本体8の前側に配設されたフロントウインドガラス6の下辺部に沿って延びている。
【0020】
前記デフロスタダクト4のダクト本体8は、前記空調機器3からの空気が導入される空気導入口4aと、前記フロントウインドガラス6に指向する左,右一対の空気吹き出し口4b,4bと、該各空気吹き出し口4bと前記空気導入口4aとを連通接続する中空状の空気流路4cとを有する。前記左,右の空気吹き出し口4bは、前記インパネ2に形成された開口2cに接続されており、該開口2cからフロントウインドガラス6に向かって空気が吹き付けられる。
【0021】
前記空気導入口4aには、前記左,右のサイドダクト9が連通接続されている。また前記空気導入口4aには、中間ダクト11を介在させて前記空調機器3が接続されている。
【0022】
前記デフロスタダクト4のダクト本体8の中央上部には、前記空気流路4cを左,右に分岐する分岐壁4dが形成されている。この分岐壁4dは、ダクト本体8の上縁部から下方に大略V字形状なすよう形成されており、これにより空気導入口4aに導入された空気の一部は、前記分岐壁4dに沿って左,右の空気吹き出し口4bに流れる。
【0023】
前記インパネ2の車幅方向中央部の前記デフロスタダクト4に望む部分には、メータユニット13が配設されている。このメータユニット13には、コネクタ14を介してワイヤハーネス15が接続されている。
【0024】
前記ワイヤハーネス15は、前記デフロスタダクト4の上方を通って、該デフロスタダクト4の下方に車幅方向に延びるよう配設されたハーネス幹線部材16内に配索されている。
【0025】
前記メータユニット13は、前記インパネ2に形成された収容凹部2a内に収容され、該インパネ2に取り付け固定されている。この収容凹部2aには、組み付開口2bが形成されており、該組付け開口2bを介して前記ワイヤハーネス15が配索されている。詳細には、メータユニット13を組み付けるには、ワイヤハーネス15を収容凹部2aの下方から組み付け開口2bを通して後方に引き出し、この引き出したワイヤハーネス15のコネクタ14をメータユニット13に接続し、この状態でメータユニット13を収容凹部2a内に嵌め込んで取り付ける。
【0026】
そして前記デフロスタダクト4の分岐壁4d部分には、内方膨出部4eが形成されている。この内方膨出部4eは、前記デフロスタダクト4のダクト上壁面4fの車幅方向中央部を前記空気流路4c内に膨出するよう凹ませることにより形状されている。
【0027】
前記内方膨出部4eは、車両中心線Lより車幅方向左の助手席側に少し偏位した位置に配置されている(図3参照)。これは、運転席側に配設された不図示のステアリングシャフトや各操作ペダルとの干渉を防止するめに、空調機器3を助手席側に偏位させて配置しているためである。
【0028】
前記内方膨出部4eは、デフロスタダクト4の空気導入口4aから前記分岐壁4dより前方の左,右の空気吹き出し口4bの内端部に延びるよう形成されている。
【0029】
前記内方膨出部4eの車幅方向左,右側壁部4g,4hは、前記空気導入口4a側から前記空気吹き出し口4a側にいくほど高さhが徐々に低くなるように形成されている。これにより前記内方膨出部4e部分の流路の高さは上流側から下流側にかけて略同じとなっている。一方、前記内方膨出部4eの左,右外方に位置する空気流路4cの高さは、上流側が高く、下流側が徐々に低くなっている。
【0030】
そして前記内方膨出部4eの左,右側壁部4g,4hは、平面視で車幅方向外方に膨出する大略水滴形状をなしており、該水滴形状の最大膨出部4g′,4h′は、前記空気導入口4a側寄りに位置している(図3の斜線部分参照)。詳細には、前記左,右側壁部4g,4hは、空気導入口4aから前記最大膨出部4g′,4h′まで車幅方向外側に徐々に拡開しつつ延び、該最大膨出部4g′,4h′から左,右の空気吹き出し口4bの内端部に向かって内側に徐々に狭まるように形成されている。これにより前記左,右の最大膨出部4g′,4h′は、内方膨出部4eの車両前後方向中心線L′より空気導入口4a側に位置している。
【0031】
本実施例によれば、デフロスタダクト4の分岐部4dに空気流路4c内に膨出する内方膨出部4eを形成したので、内方膨出部4eから空気流路4cに流入する空気の流速を高めることができる。
【0032】
そして前記内方膨出部4eを、その左,右側壁部4g,4hが車幅方向外方に膨出する水滴形状とするとともに、該水滴形状の最大膨出部4g′,4h′を空気導入口4a寄りに位置させたので、該空気導入口4aから導入された空気は、前記水滴形状の空気導入口4a寄りに位置する最大膨出部4g′,4h′から高い流速でもって左,右の空気流路4cの空気導入口4a寄り部分内に分岐されて流れ易くなる。そのため空気吹き出し口4bの車幅方向外側部分から吹き出される空気量が増加し、これによりフロントウインドガラス6の左,右下端部の曇りや凍結を確実に除去することができ、視界を確保できる。
【0033】
また前記導入された空気の一部は、内方膨出部4eの左,右側壁部4g,4hに沿って流れることから、フロントウインドガラス6の中央部の除曇性能が低下することはない。
【0034】
また前記内方膨出部4eの左,右側壁部4g,4hを、空気導入口4a側から前記空気吹き出し口4a側にいくほど高さhが徐々に低くなるように形成したので、つまりワイヤハーネス15の配設スペースが必要な部分の凹みは大きく、配設スペースの不要な部位の凹みは小さくしたので、空気の流路抵抗が必要以上に大きくなるのを回避できる。
【0035】
また、デフロスタダクト4の内方膨出部4eを利用して該デフロスタダクト4に干渉することなくワイヤハーネス15を配索することができ、車載部品の配索経路を確保することができる。
【0036】
また前記内方膨出部4eの上方空間を利用することにより、上述のメータユニット13を組み付ける際のワイヤハーネス15の結線作業や配索作業を容易に行うことができ、作業性を向上できる。
【符号の説明】
【0037】
1 デフロスタ装置
3 空調機器
4 デフロスタダクト
4a 空気導入口
4b 空気吹き出し口
4c 空気流路
4d 分岐壁(分岐部)
4e 内方膨出部
4f ダクト上壁面
4g,4h 左,右側壁部
4g′,4h′ 最大膨出部
6 フロントウインドガラス
図1
図2
図3