特許第6012455号(P6012455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シーメンス ヘルスケア ダイアグノスティクス プロダクツ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツングの特許一覧

特許6012455血小板機能を測定するシステムにおいて測定結果を標準化する方法
<>
  • 特許6012455-血小板機能を測定するシステムにおいて測定結果を標準化する方法 図000005
  • 特許6012455-血小板機能を測定するシステムにおいて測定結果を標準化する方法 図000006
  • 特許6012455-血小板機能を測定するシステムにおいて測定結果を標準化する方法 図000007
  • 特許6012455-血小板機能を測定するシステムにおいて測定結果を標準化する方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012455
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】血小板機能を測定するシステムにおいて測定結果を標準化する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/49 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
   G01N33/49 X
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-279378(P2012-279378)
(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公開番号】特開2014-122836(P2014-122836A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】510259921
【氏名又は名称】シーメンス ヘルスケア ダイアグノスティクス プロダクツ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス レヒナー
【審査官】 大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−506215(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0237960(US,A1)
【文献】 特開2012−220493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の血小板機能を判定する方法であって、以下の工程、すなわち
a)測定用セルを使用し、前記測定用セルは以下の要素、
i)試料を保持する保持室と、
ii)前記試料が前記保持室から測定室に導かれる毛細管と、
iii)2つの区画に分割され、第1の区画が毛細管からの試料を収納する測定室と、
iv)測定室を2つの区画に分割し、試料が前記第1の区画から第2の区画に流れることができる開口部を有する隔壁要素と
を備え、
b)前記測定用セルの前記保持室に試料を充填し、
c)血小板機能の自動判定装置に前記測定用セルを配置し、前記装置は以下の手段、
i)前記測定用セルの前記測定室に負圧を印加する手段と、
ii)前記負圧印加の結果として、前記測定用セルの前記計測室に負圧が印加された場合に前記測定用セルから導出された全容積を判定する手段と、
を備え
d)前記測定用セルの前記測定室に負圧を印加し、前記毛細管中および前記隔壁要素の前記開口部中において前記試料を導く
工程を含む方法において、
さらに以下の工程、
e)前記隔壁要素の前記開口部を所定の時間間隔内において通過する試料容積を決定し、
f)前記決定された試料容積を正常な血小板機能の基準試料容積値と比較する、
または
g)前記隔壁要素の前記開口部を所定の時間間隔内において通過する試料容積を決定し、
h)最初の流量を決定し、
i)前記最初の流量の5倍と前記試料容積との差分を算出し、前記差分を正常な血小板機能の基準差分値と比較する
工程を含む方法。
【請求項2】
工程e)または工程g)において、負圧印加の結果として前記測定用セルから導出される全容積を測定し、用いられた前記測定用セルの前記測定された全容積と前記測定用セルの前記死容積との差分を決定することによって、所定の時間間隔内に前記隔壁要素の開口部を通過する試料容積が決定される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程f)において、前記決定された試料容積は、正常な血小板の基準試料容積値に関して表される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
正常な血小板機能の前記基準試料容積値を100%とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程i)において、前記算出された差分は、正常な血小板機能の基準差分値に関して表される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
正常な血小板機能の前記基準差分値を100%とする請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は凝固診断の分野に属し、測定用セルを用いて血小板機能を判定するインビトロ方法に関する。本方法によって、用いられる測定用セルの種類にかかわらず、比較可能な測定結果を得ることが可能となる。
【背景技術】
【0002】
第1に、血管系中の血液の流動性を保ち、第2に、凝結塊の形成時に血管外の血液の損失を確実に回避する生理学的なプロセスは、止血法の部類に属する。止血の調節には、多数の蛋白質因子、さらには例えば、血小板などの細胞成分を必要とする。血管損傷の場合、初期状態において血小板が内皮下のコラーゲンに付着する。この付着が、フォンウィルブランド因子(VWF)などの付着性の蛋白質によって媒介される。この付着プロセスにおいて、血小板は活性化され、その顆粒から媒介物を放出し、さらなる血小板の凝集および活性化の強化を誘発する。これによって、一次血管壁閉塞(一次止血)が達成され、それを安定化するために血漿凝固系のさらなる反応を必要とする(二次止血)。これらのプロセスが制御不能となると、血栓形成傾向または出血性素因が発生する可能性があり、重症度によっては重篤な後遺症が発生する可能性がある。
【0003】
凝固診断は、様々な方法およびシステムが知られており、それによって患者の血液が適切に凝固するか、または凝固障害が存在するかを判断できる。凝固障害がある場合、最適な治療上の処置を選択できるように、存在する障害の原因に関するより正確な情報を入手する必要がある場合が多い。具体的に検査可能な凝固系の重要な副機能は一次止血であるが、これは血小板の機能効率にほぼ依存する。
【0004】
既知の血小板機能検査方法の1つは、出血時間による判定である。これは、一次止血をとらえるインビボ包括的検査である。患者に小さな切り傷または刺し傷を施して出血が停止するまでの時間を計測することによって、出血時間を判定する。これは大まかで標準化が困難な検査であり、特に一次止血の一時的な状態(スナップショット)を得るために特に緊急時において使用される。血小板凝集抑制剤の摂取によって出血時間は延長される。出血時間による判定の欠点は、出血時間が正常な場合でも、血小板機能障害の可能性を除外できないことである。
【0005】
インビトロ方法によって、血小板機能障害の非常に高感度な検出が可能となる。典型的に、インビトロ方法では、活性化因子の添加によって全血試料または血小板浮遊血漿(PRP)の試料において血小板の凝集が誘発され、凝集反応が測定される。血小板凝集を誘発するために最も一般的に使用される活性化因子は、ADP(アデノシン5’−二リン酸)、コラーゲン、エピネフリン(アドレナリン)、リストセチン、その様々な組み合わせ、およびトロンビン、TRAP(トロンビン受容体活性化蛋白質)、U−46619、ヘパリン(特にヘパリン誘発性血小板減少症の場合)またはセロトニンである。
【0006】
インビトロにおいて血小板機能を測定する既知の一システムは、いわゆる血小板機能分析器システム、略してPFAシステム(PFA−100(登録商標)、PFA−200,Siemens Healthcare Diagnostics Products GmbH,ドイツ,マールブルク)である。このPFAシステムを使用する場合、流動状態、したがって高ずり応力の存在する状態における全血試料における一次止血を測定する。
【0007】
小動脈血管において通常発生する流動状態およびずり応力をシミュレーションするため、PFA分析装置に挿入されたPRA測定用セルにおいて約40mbarの負圧を発生させると、試料貯蔵容器に配置されるクエン酸塩加の全血液が直径約200μmの毛細管の中を流れる。毛細管は測定室に開口している。この測定室は隔壁要素、例えば膜によって閉止され、負圧によって血流が生じる中心の毛細開口部を含む。多くの場合、少なくとも開口部周辺の領域において、上記の膜は血小板凝集を誘発する1つ以上の活性化因子を含み、そこを流れた血液は開口部の上記領域において凝集誘発物質と接触するようになる。血小板の付着および凝集が誘発されると、結果的に開口部の上記領域において血小板血栓が形成され、膜開口部を閉止して血流を停止させる。本システムにおいて、膜開口部の閉止までの時間が測定される。この「閉止時間」は、血小板の機能効率と相関する。閉止時間に基づいて血小板機能を判定する方法で使用される測定用セルは、例えば特許文献1に記載されている。今まで、閉止時間測定方法では、コラーゲン(Col)、さらにはADPまたはエピネフリン(Epi)で被覆した膜を有する測定用セルを使用していた。P2Y(12)拮抗剤群からの抗血栓剤、例えばクロピドグレルを判定するのに特に適したその他の測定用セルは、ADPおよびプロスタグランジンE1(INNOVANCE(登録商標)PRA P2Y,特許文献2)を含有する膜を有する。
【0008】
PFAシステムを用いて試料中の血小板機能を判定する既知の一方法は、以下の工程、すなわち
a)測定用セルを使用し、前記測定用セルは以下の要素、すなわち
i)試料を保持する保持室と、
ii)前記試料が前記保持室から測定室に導かれる毛細管と、
iii)隔壁要素によって2つの区画(コンパートメント)に分割される測定室であって、第1の区画は毛細管からの試料を収納する測定室と、
iv)測定室を2つの区画に分割し、試料が前記第1の区画から第2の区画に流れることができる開口部を有する隔壁要素と
を備え、
b)前記測定用セルの前記保持室に試料を充填し、
c)血小板機能の自動判定用の装置に前記測定用セルを配置し、前記装置は以下の要素、すなわち
i)前記測定用セルの前記測定室に負圧を印加する手段と、
ii)前記負圧印加の結果として、前記測定用セルの前記計測室に負圧が印加された場合に前記測定用セルから導出された全容積を判定する手段と、
を備え
d)前記測定用セルの前記測定室に負圧を印加し、前記毛細管中および前記隔壁要素の前記開口部中において前記試料を導く
工程を含む方法。
【0009】
負圧の印加の結果として測定用セルから導出された全容積は、継続的に判定される。流量(μL/min)は、単位時間毎に測定用セルから導出される容積から決定される。
【0010】
血栓は徐々に開口部を収縮させ、試料液体の通過が困難となるため、流量は典型的に時間の経過に伴って減少する。
【0011】
この検査結果として、閉止時間が秒単位で提示される。閉止時間は、3秒間の間流量が最初の流量の10%よりも小さくなった時間と定義される。この場合の最初の流量とは、血小板血栓が開口部にまだ形成されていないが死容積がシステムから導出された時点での計測開始時の流量である。
【0012】
患者の試料の閉止時間が基準範囲外である場合は、血小板機能に障害があることを示す。閉止時間が長くなった場合は、凝集能力の低下による血小板機能不全があることを示す。閉止時間が短くなった場合は、凝集能力の上昇による血小板機能不全があることを示す。
【0013】
正常な血小板機能を有する健康なドナーからの試料の閉止時間は多くの因子に依存する。
【0014】
閉止時間は、使用される測定用セルの種類の影響を基本的に受ける。上述したように、血小板活性化因子または血小板抑制剤の異なる組み合わせを含む測定用セルが使用される。コラーゲンおよびエピネフリン(Col/Epi)を含む測定用セルを使用する場合、正常な試料の閉止時間は84〜160秒の間である。コラーゲンおよびADP(Col/ADP)を含む測定用セルを使用する場合、正常な試料の閉止時間は68〜121秒の間である。ADPおよびプロスタグランジンE1(ADP/PGE1)を含む測定用セルを使用する場合、正常な試料の閉止時間は106秒未満となる。基準範囲において大きくばらつきがある場合は、そのような閉止時間は有意ではないが、使用されている測定用セルの種類と関連してのみ解釈できるという欠点がある。例えば130秒の閉止時間は、Col/Epi測定用セルの正常な結果であるが、Col/ADPまたはADP/PGE1の測定用セルでは異常な結果であり、出血性素因を示唆している。
【0015】
閉止時間に影響を与える別の因子は、測定用セルの構造である。開口部または毛細管の直径が異なることによって、血栓形成が影響を受け、したがって開口部が閉止する率も影響を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第97/34698号
【特許文献2】欧州特許出願公開第1850134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、PFAシステムにおける血小板機能の計測が使用される全種類の測定用セルに対して統一および標準化され、それによって使用される測定用セルの種類にかかわらず、その測定結果が直接比較可能なように、血小板機能判定の上述した既知の方法を改良することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この課題は、所定の時間間隔内において隔壁要素の開口部を通過する試料容積を決定後、決定された試料容積の値を正常な血小板機能の基準試料容積の値と比較することによって達成される。
【0019】
所定の時間間隔内において隔壁要素の開口部を通過する試料容積は、負圧印加の結果として、測定用セルから導出された全容積を測定し、使用された測定用セルの全測定容積と死容積との差分を決定することによって決定されることが好ましい。
【0020】
負圧印加の結果として、測定用セルの測定室において負圧が印加された際に測定用セルから導出される全容積の計測結果は、後述のように、測定用セルの測定室に負圧を印加する手段が測定用セルから導出する容積を測定することによって決定することが可能である。この負圧印加手段は、プランジャーを有するシリンダーからなることが好ましく、プランジャーは、ステップモータおよびプランジャー棒を介してシリンダーの軸方向に移動可能である。負圧は、プランジャーを移動させることによって測定用セルに発生する。測定用セルの測定室において、または測定用セルをシリンダーに接続することによって作り出され、負圧が蓄積する空間において、圧力センサはその時点の圧力を測定する。制御部は、測定圧力を事前に設定した対象圧力と比較する。血液が毛細管へ流れると、圧力は増加する。圧力定数を例えば−40mbarに維持するために、制御部はステップモータを制御して、プランジャーを軸方向に移動させる。既知の直径のシリンダーにおいてプランジャーによって網羅される経路を使用すれば、測定用セルから導出される全容積を算出できる。
【0021】
測定用セルから導出される全容積は、測定用セルの死容積と、隔壁要素の開口部を実際に通過する試料の容積(試料容積)とからなる。測定全容積と既知の測定用セル固有の死容積との差分は、所定の時間間隔内または開口部の閉止までに隔壁要素の開口部を通過する試料容積を与える。
【0022】
測定用セルの死容積は、負圧が測定用セルの測定室に印加された場合に、
第1の時間において試料液体が隔壁要素を通過する前に隔壁要素の開口部を通過する容積に対応する。測定用セルの死容積は、典型的に、測定用セルの毛細管および隔壁要素の前方に位置する測定室区画に特に存在する空気からなり、毛細管からの試料を収容する。
【0023】
この死容積は測定用セルの構造に依存する。特定の種類の測定用セルの死容積を算出することができる、もしくは実験的に事前に決定される。実験的測定においては、複数の同種の測定用セルの死容積が決定され、測定死容積の中央値がこの種類の測定用セルに対する死容積として適用されることが好ましい。
【0024】
もしくは、所定の時間間隔内において隔壁要素の開口部を通過する試料容積は、電子工学的または光学的に測定室の第2の区画の試料容積の充填度を決定することによって決定してもよい。
【0025】
その後、決定された試料容積値は、正常な血小板機能の基準試料容積値と比較される。
【0026】
正常な血小板機能の基準試料容積値は、使用される測定用セルの種類に依存し、その値は実験的に事前に決定される。
【0027】
実験的測定において、所定の時間間隔内または開口部の閉止までに隔壁要素の開口部を通過する明らかに健康な血液ドナー(正常な試料)からの十分に多数の試料の試料容積が、同種の測定用セルにおいて決定され、測定試料容積の中央値はこの種類の測定用セルの基準試料容積値として適用される。
【0028】
決定された試料容積は、正常な血小板機能の基準試料容積値に対して表現されることが好ましい。特に、正常な血小板機能の基準試料容積値を100%とすることが好ましい。このように決定された検査結果は、基準と比較した血小板機能の尺度(基準のパーセント)となる。これは、一次止血能1(PHC1)とも呼ばれる。
【0029】
この演算式の一例を以下に挙げる。
(式(1))
【0030】
【数1】
【0031】
ここで、
TVmedian=正常な血小板機能の全容積の中央値、
DVmedian=使用された測定用セルの種類の死容積の中央値、
TV=分析される試料の全容積
である。
【0032】
本発明の目的は、所定の時間間隔内に隔壁要素の開口部を通過する試料容積を決定し、最初の流量を決定後、最初の流量の5倍と試料容積との差分を算出し、その差分を正常な血小板機能の基準差分値と比較することによっても達成される。
【0033】
試料容積は、上述したように決定される。
【0034】
最初の流量は、測定開始時の試料液体の最大流量である。最初の流量は、流量、すなわち計測開始時から、すなわち負圧が測定用セルの測定室に印加された時点から、単位時間毎に測定用セルから導出される容積を継続的に決定することによって決定されることが好ましい。測定開始時において、最終的に流量が継続的に減少するようになるまで、とりわけ死容積を最初に吸引したことに起因する流量の特定変動が存在する。この場合の最初の流量は、少なくとも10秒間継続的に流量が最終的に減少する前に測定された流量として定義される。
【0035】
決定された最初の流量の5倍と決定された試料容積との差分を算出後、この差分を正常な血小板機能の基準差分値と比較する。
【0036】
測定試料固有の最初の流量の5倍と正常な血小板機能の事前に決定された基準試料容積値との差分を算出することによって、基準差分値が試料計測毎に個々に決定される。正常な血小板機能の基準試料容積値は、上述したように決定される。
【0037】
決定された最初の流量の5倍と決定された試料容積との間で決定された差分は、正常な血小板機能の基準差分値に対して表現されることが好ましい。特に、正常な血小板機能の基準差分値を100%とすることが好ましい。このように決定された検査結果は、基準と比較した血小板機能の尺度(基準のパーセント)となる。これは、一次止血能2(PHC2)とも呼ばれる。
【0038】
この演算式の一例を以下に挙げる。
(式(2))
【0039】
【数2】
【0040】
ここで、
IF=分析される試料の最初の流量、
TVmedian=正常な血小板機能の全容積の中央値、
DVmedian=使用された測定用セルの種類の死容積の中央値、
TV=分析される試料の全容積
【0041】
本発明の利点は、使用される測定用セルの種類にかかわらず、すなわち使用される血小板活性化または血小板抑制物質の種類にかかわらず、さらに測定用セルの構造にかかわらず、血小板機能が低下した(出血のおそれ)試料が常に100%より小さい検査結果を有し、血小板機能が上昇した(血栓症のおそれ)試料が常に100%より大きい結果を有することである。上記の標準化によって、様々な種類の測定用セルの正常な範囲が異なることはほとんどない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、INNOVANCE PFA P2Y測定用セルにおける正常な血小板活性を有する健康なドナーからの全血試料の典型的な流れ曲線を示す図である。測定開始時の流量の最初の変動後、流量は継続的に減少する。継続的な減少の開始時において測定された流量が最初の流量(IF)である。閉止時間(CT)は、3秒間の間で流量が最初の流量の10%よりも小さくなった時間と定義される。
図2図2は、Col/Epi、Col/ADPおよびINNOVANCE PFA P2Y(P2Y)測定用セルを用いた場合の健康なドナー(N=138人の健康な血液ドナー)からの全血試料の血小板活性の判定結果からのPHC(1)値の分布および百分率を示す図である。全3種類の測定用セルのPHC(1)の95%の中心間隔の上限および下限は、互いに近接していることは明らかである。
図3図3は、Col/Epi、Col/ADPおよびINNOVANCE PFA P2Y(P2Y)測定用セルを用いた場合の健康なドナー(N=138人の健康な血液ドナー)からの全血試料の血小板活性の判定結果からのPHC(2)値の分布および百分率を示す図である。この場合も、全3種類の測定用セルのPHC(2)の95%の中心間隔の上限および下限は、互いに近接していることは明らかである。
図4図4は、INNOVANCE PFA P2Y測定用セルを用いた場合の、クロピドグレル摂取前(N=23)後(N=23)の心臓病患者からの全血試料の血小板活性の判定からのPHC(1)およびPHC(2)値の分布を示す図である。血小板機能が大幅に低下した場合でも、PHC(1)およびPHC(2)の両方が区別可能な結果を提示することは明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下の実施例は、本発明を例示するものであり、限定的に理解されるべきではない。
【0044】
健康な血液ドナーからの試料においてPHC(1)およびPHC(2)を使用して血小板機能を基準のパーセントとして判定
【0045】
3.2%および3.8%の緩衝クエン酸ナトリウムにおける138人の健康なドナーからの血液試料が、PFA装置(PFA−100,Siemens Healthcare Diagnostics Products GmbH)の異なる3種類のPFA測定用セルを用いて繰り返し測定された。コラーゲン(Col)およびADP被覆(Col/ADP)またはコラーゲン(Col)およびエピネフリン(Epi)被覆(Col/Epi)、またはADPおよびプロスタグランジンE1被覆(INNOVANCE(登録商標)PFA P2Y、略してP2Y)を有する膜を有する測定用セルが使用された。全容積、死容積(測定の最初の4秒間で測定用セルから引かれる空気容積)、および最初の流量は、上記装置によって決定された生データから決定された。その後、全測定値(P2Y測定用セルによる4つの測定値とドナー毎のCol/EpiおよびCol/ADP測定用セルによる2つの測定値)の全容積および死容積が、正常な血小板機能の全容積の中央値(TVmedian)、すなわち、正常な血小板機能の基準試料容積値と、使用された測定用セルの種類の死容積の中央値(DVmedian)とを算出するために使用された。各中央値を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
上記の中央値は、各試料の血小板機能を基準のパーセントとして算出する際の定数として上述の式(1)および式(2)で使用した。
【0048】
標準化PHC(1)値の分布を図2に示す。PHC(2)値の分布を図3に示す。
【0049】
3種類の測定用セルのPHC(1)およびPHC(2)の95%の中心間隔の上限および下限は、互いに非常に近接していることは明らかである。わずかな差分は、測定用セルの特性、例えば用いられた血小板作用薬の効力および濃度などに起因する場合がある。
【0050】
用いられる測定用セルの種類にかかわらず、本発明による本方法を用いて決定された血小板機能結果は直接比較可能である。
【実施例1】
【0051】
抗凝固療法を受けている患者からの試料においてPHC(1)およびPHC(2)を使用して血小板機能を基準のパーセントとして判定
【0052】
血小板機能の抑制剤であるクロピドグレル摂取のINNOVANCE PFA P2Y測定値のPHC(1)およびPHC(2)値に対する影響について、心臓病患者の協力の下に調査を行った。そのため、クロピドグレル(300mg)の摂取前および少なくとも4時間後に各患者から3.2%緩衝クエン酸ナトリウムにおいて血液を採取し、血小板活性をINNOVANCE PFA P2Y測定用セルを用いて測定した。各試料の血小板機能を基準のパーセントとして算出するために、表1に示すような中央値を使用した。図4は、クロピドグレル摂取前後のPHC(1)およびPHC(2)値を示す。
【0053】
血小板機能が大幅に低下した場合でも、PHC(1)およびPHC(2)の両方が区別可能な結果を提示することは明らかである。ただし、この場合、全結果は>300sとして報告されるため、典型的に使用されている閉止時間にはあてはまらない。
図1
図2
図3
図4