特許第6012472号(P6012472)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マーベル ワールド トレード リミテッドの特許一覧

特許6012472専用基準信号(DRS)プリコーディング粒度の通知、方法、通信装置及び移動通信端末
<>
  • 特許6012472-専用基準信号(DRS)プリコーディング粒度の通知、方法、通信装置及び移動通信端末 図000002
  • 特許6012472-専用基準信号(DRS)プリコーディング粒度の通知、方法、通信装置及び移動通信端末 図000003
  • 特許6012472-専用基準信号(DRS)プリコーディング粒度の通知、方法、通信装置及び移動通信端末 図000004
  • 特許6012472-専用基準信号(DRS)プリコーディング粒度の通知、方法、通信装置及び移動通信端末 図000005
  • 特許6012472-専用基準信号(DRS)プリコーディング粒度の通知、方法、通信装置及び移動通信端末 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012472
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】専用基準信号(DRS)プリコーディング粒度の通知、方法、通信装置及び移動通信端末
(51)【国際特許分類】
   H04J 99/00 20090101AFI20161011BHJP
   H04J 11/00 20060101ALI20161011BHJP
   H04J 1/00 20060101ALI20161011BHJP
   H04B 7/04 20060101ALI20161011BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20161011BHJP
【FI】
   H04J15/00
   H04J11/00 Z
   H04J1/00
   H04B7/04
   H04W16/28 130
【請求項の数】17
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-547574(P2012-547574)
(86)(22)【出願日】2011年1月4日
(65)【公表番号】特表2013-516880(P2013-516880A)
(43)【公表日】2013年5月13日
(86)【国際出願番号】IB2011050015
(87)【国際公開番号】WO2011083417
(87)【国際公開日】20110714
【審査請求日】2014年1月6日
(31)【優先権主張番号】61/293,115
(32)【優先日】2010年1月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502188642
【氏名又は名称】マーベル ワールド トレード リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】エレル、アドラム
(72)【発明者】
【氏名】イェリン、ダニエル
【審査官】 羽岡 さやか
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/115772(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0232494(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/131163(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0322613(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0323773(US,A1)
【文献】 米国特許第05231629(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0180561(US,A1)
【文献】 特表2012−519407(JP,A)
【文献】 Qualcomm Europe,UE-RS Patterns for ranks 5 to 8[online], 3GPP TSG-RAN WG1#59 R1-094869,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_59/Docs/R1-094869.zip>,2009年11月
【文献】 Huawei,Reduction of signalling for MIMO precoding[online], 3GPP TSG-RAN WG1#46 R1-062133,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_46/Docs/R1-062133.zip>,2006年 6月
【文献】 Nokia, Nokia Siemens Networks,Beyond four-layer UE-specific reference symbol design for LTE-Advanced[online], 3GPP TSG-RAN WG1#59 R1-094650,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_59/Docs/R1-094650.zip>,2009年11月
【文献】 Ericsson, ST-Ericsson,On Rel-10 DM RS design for rank 5-8[online], 3GPP TSG-RAN WG1#59 R1-094438,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_59/Docs/R1-094438.zip>,2009年11月
【文献】 Nokia,DL pilot structure and synchronization aspects (revision of R1-051089),3GPP TSG RAN WG1 Meeting #42bis R1-051242,フランス,2005年10月,Pages 1-5
【文献】 Samsung,Discussion on DM-RS for LTE-Advanced[online], 3GPP TSG-RAN WG1#58b R1-094088,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_58b/Docs/R1-094088.zip>,2009年10月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 99/00
H04B 7/04
H04J 1/00
H04J 11/00
H04W 16/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機において、通信チャネルを介して送信機から複数のブロックにおいて送信される1以上の専用基準信号を含む複数の信号であって、対応する期間に対応するサブキャリアのグループで送信され、当該信号を前記送信機の複数のアンテナポートにマッピングする対応するプリコーディングスキームを使用してプリコーディングされる複数の信号を受信する段階と、
受信した前記複数の信号に基づいて、複数のスペクトルサブバンドの各々において前記通信チャネルに関するフィードバックを前記受信機で計算し、前記複数のスペクトルサブバンドについての前記フィードバックを前記送信機へと報告する段階と、
少なくとも所定の数の空間レイヤにおいて、前記複数の信号が前記送信機から前記受信機へと送信されることを特定した場合、前記フィードバックが報告される前記複数のスペクトルサブバンドの各々に含まれる前記1以上の専用基準信号にわたって同時に、前記通信チャネルの1以上のパラメータを推定する段階と、
前記推定された1以上のパラメータに基づいて、前記複数の信号をデコードする段階と、
を備え、
前記1以上のパラメータを推定する段階は、
前記プリコーディングスキームが、前記送信機及び前記受信機の間の物理的伝播チャネルのレートよりも速くないレートで変化する、2以上のリソースブロックのセットを特定する段階と、
前記2以上のリソースブロックの前記セットが特定された場合、前記2以上のリソースブロックの前記セットに含まれる複数の専用基準信号を同時に処理することによって、前記複数のスペクトルサブバンドの各々について前記1以上のパラメータを推定する段階と、
を有する、
方法。
【請求項2】
前記1以上のパラメータを推定する段階は、
前記受信機において推定条件を評価する段階と、
前記推定条件が満たされる場合には、前記複数のスペクトルサブバンドの各々について前記1以上のパラメータを推定する段階と、
を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記推定条件を評価する段階は、
空間レイヤの数が4よりも多い場合に、前記複数の信号が前記送信機から前記受信機へと送信されることを特定することを含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記推定条件を評価する段階は、
前記送信機から複数の受信機への同時送信を除外するシングルユーザー送信モードで、前記複数の信号が前記受信機へと送信されることを特定することを含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の信号を受信する段階は、周波数分割複信(FDD)モードで前記複数の信号を受信する段階を有する、
請求項1から請求項4までの何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の信号を受信する段階は、
受信機固有でない共通のプリコーディングスキームを使用してプリコーディングされた共通基準信号を受信する段階を有し、
前記1以上のパラメータを推定する段階は、
前記共通基準信号に基いて、前記通信チャネルの少なくとも第1パラメータを査定する段階と、
前記第1パラメータに基づいて及び前記フィードバックが報告された前記複数のスペクトルサブバンドの各々に含まれる前記専用基準信号に基づいて、前記通信チャネルの少なくとも第2パラメータを査定する段階と
を有する、
請求項1から請求項5までの何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の信号は、
その値が、同時チャネル推定が許容されないことを前記受信機に示すビット、又は、
その値が、前記複数の専用基準信号を同時に処理することによって前記1以上のパラメータを推定することが許されることを示すビット、
を含む、
請求項1から請求項6までの何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記1以上のパラメータを推定する段階は、
前記2以上のリソースブロックの前記セットが特定されない場合、各リソースブロックについて個別に、前記複数の専用基準信号における前記1以上のパラメータを推定する段階を有する、
請求項1から請求項7までの何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
1以上の受信アンテナと、
前記1以上の受信アンテナを介して複数の信号を受信する受信機と、
を備え、
前記複数の信号は、通信チャネルを介して複数のブロックにおいて送信機から送信される1以上の専用基準信号を含み、
前記1以上の専用基準信号を含む各ブロックにおける前記複数の信号は、対応する期間に対応するサブキャリアのグループ上で送信され、前記複数の信号を前記送信機の複数のアンテナポートにマッピングする対応するプリコーディングスキームを使用してプリコーディングされ、
前記受信機は、
受信した前記複数の信号に基づいて、複数のスペクトルサブバンドの各々における前記通信チャネルに関するフィードバックを計算し、
前記複数のスペクトルサブバンドについての前記フィードバックを前記送信機へと報告し、
少なくとも所定の数の空間レイヤにおいて、前記複数の信号が前記送信機から前記受信機へと送信されることを特定した場合、前記フィードバックが報告される前記複数のスペクトルサブバンドの各々に含まれる前記1以上の専用基準信号にわたって同時に、前記通信チャネルの1以上のパラメータを推定し、
前記推定された1以上のパラメータに基づいて前記複数の信号をデコードし、
前記受信機は、
前記プリコーディングスキームが、前記送信機及び前記受信機の間の物理的伝播チャネルのレートよりも速くないレートで変化する2以上のリソースブロックのセットを特定し、
前記2以上のリソースブロックの前記セットが特定された場合、前記2以上のリソースブロックの前記セットに含まれる複数の専用基準信号を同時に処理することによって、前記複数のスペクトルサブバンドの各々について前記1以上のパラメータを推定する、
通信装置。
【請求項10】
前記受信機は、
推定条件を評価し、
前記推定条件が満たされる場合には、前記複数のスペクトルサブバンドの各々について前記パラメータを推定する、
請求項9に記載の通信装置。
【請求項11】
空間レイヤの数が4よりも多い場合に、前記複数の信号が前記送信機から前記受信機へと送信されることを特定することにより、前記受信機は、前記推定条件を評価する、
請求項10に記載の通信装置。
【請求項12】
前記送信機から複数の受信機への同時送信を除外するシングルユーザー送信モードで、前記複数の信号が前記受信機へと送信されることを特定することにより、前記受信機は、前記推定条件を評価する、
請求項10に記載の通信装置。
【請求項13】
前記受信機は、周波数分割複信(FDD)モードで前記複数の信号を受信する、
請求項9から請求項12までの何れか1項に記載の通信装置。
【請求項14】
前記受信機は、
受信機固有でない共通のプリコーディングスキームを使用してプリコーディングされた共通基準信号を受信し、
前記共通基準信号に基づいて、前記通信チャネルの少なくとも第1パラメータを査定し、
前記第1パラメータに基づいて及び前記フィードバックが報告された前記複数のスペクトルサブバンドの各々に含まれる前記専用基準信号に基いて、前記通信チャネルの少なくとも第2パラメータを査定する、
請求項9から請求項13までの何れか1項に記載の通信装置。
【請求項15】
前記複数の信号は、
その値が、同時チャネル推定が許容されないことを前記受信機に示すビット、又は、
その値が、前記複数の専用基準信号を同時に処理することによって前記1以上のパラメータを推定することが許されることを示すビット、
を含む、
請求項9から請求項14までの何れか1項に記載の通信装置。
【請求項16】
前記受信機は、
前記2以上のリソースブロックの前記セットが特定されない場合、各リソースブロックについて個別に、前記複数の専用基準信号における前記1以上のパラメータを推定する、
請求項9から請求項15までの何れか1項に記載の通信装置。
【請求項17】
請求項9から請求項16までの何れか1項に記載の前記通信装置を備える、
移動通信端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、通信システムに関し、より詳細には、複数入力複数出力(MIMO)通信システムにおける基準信号(reference signals)の処理に関する。
【0002】
[優先権情報]
本出願は、2010年1月7日出願の米国特許仮出願第61/293,115号の優先権を主張するものであり、前記出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
通信システムの中には、複数の送信アンテナ及び複数の受信アンテナを使用して、複数の通信チャネルを介して、送信機から受信機へとデータを送信するものが存在する。複数チャネル送信は、例えば、高いスループットを達成する空間多重化スキーム、高いアンテナ指向性を達成するビーム形成スキーム、及び、チャネルフェージング及びマルチパス効果に強い空間ダイバーシチスキームにおいて使用されている。これらのスキームはしばしば、複数入力複数出力(MIMO)スキームと称される。
【0004】
MIMOスキームは、例えば、ロングタームエボリューション(LTE)システムとも称されるE−UTRA(Evolved Universal Terrestrial Radio Access)システムにおいて使用されることが考えられている。第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)E−UTRA規格は、E−UTRAユーザー機器(UE)及び基地局(eNodeB)で使用されるMIMOスキームについて規定している。これらのスキームについては、例えば、3GPP技術仕様書36.211、"技術規格グループ無線アクセスネットワーク:Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E−UTRA);物理チャネル及び変調(リリース8)"(3GPP TS 36.211)、バージョン8.6.0、2009年3月、3GPP技術仕様書36.213、"技術規格グループ無線アクセスネットワーク:Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E−UTRA);物理層プロセス(リリース8)"、(3GPP TS 36.213)、バージョン8.6.0、2009年3月、及び、3GPP技術仕様書36.814、"技術規格グループ無線アクセスネットワーク:E−UTRA物理層アスペクトについての更なる発展(リリース9)"、(3GPP TR 36.814)、バージョン0.4.1、2009年2月に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0005】
特に、技術仕様書(TS)36.211の6.10の章には、LTEダウンリンク送信で使用される基準信号が規定されている。サブセクション6.10.1では、セル固有の基準信号(共通準信号−CRSとも称される)について規定されている。サブセクション6.10.3では、UE固有の基準信号(専用準信号−DRSとも称される)について規定されている。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に記載される実施形態は、通信方法を提供する。通信方法は、受信機において、通信チャネルを介して複数のブロックで送信機から送信される1以上の専用基準信号を含む信号を受信する段階を備える。専用基準信号を含む各ブロックにおける信号は、対応する期間に、対応するサブキャリアのグループ上で送信され、信号を送信機の複数のアンテナポートにマッピングする対応するプリコーディングスキームを使用してプリコーディングされる。受信された信号に基づいて、複数のスペクトルサブバンドの各々における通信チャネルに関してフィードバックが受信機において計算され、複数のスペクトルバンドについてのフィードバックが、送信機に報告される。通信チャネルの1以上のパラメータは、フィードバックが報告される複数のスペクトルサブバンドの各々に含まれる複数の専用基準信号にわたって同時に、通信チャネルの1以上のパラメータが推定される。推定されたパラメータに基づいて、信号がデコードされる。
【0007】
ある実施形態では、1以上のパラメータを推定する段階は、受信機において推定条件を評価する段階と、推定条件が満たされる場合には、複数のスペクトルサブバンドの各々についてパラメータを推定する段階とを有する。一実施形態では、推定条件を評価する段階は、少なくとも所定の数の空間レイヤにおいて、信号が送信機から受信機へと送信されることを特定することを含む。一実施形態例では、空間レイヤの所定の数は、4に等しい。開示される一実施形態では、推定条件を評価する段階は、送信機から複数の受信機への同時送信を除外するシングルユーザー送信モードで、信号が受信機へと送信されることを特定することを含む。
【0008】
別の実施形態では、信号を受信する段階は、周波数分割複信(FDD)モードで信号を受信する段階を有する。更なる別の実施形態では、信号を受信する段階は、受信機固有でない共通のプリコーディングスキームを使用してプリコーディングされた共通基準信号を受信する段階を有し、上記パラメータを推定する段階は、共通基準信号に基いて、通信チャネルの少なくとも第1パラメータを査定する段階と、第1パラメータに基づいて及び前記フィードバックが報告された前記複数のスペクトルサブバンドの各々に含まれる前記専用基準信号に基いて、前記通信チャネルの少なくとも第2パラメータを査定する段階とを有する。
【0009】
本明細書に記載される実施形態では、1以上の受信アンテナと、1以上の受信アンテナを介して信号を受信する受信機とを備える通信装置が提供される。受信機は、受信アンテナを介して、通信チャネルを介して複数のブロックにおいて送信機から送信される1以上の専用基準信号を含む信号を受信し、1以上の専用基準信号を含む各ブロックにおける信号が、対応する期間に対応するサブキャリアのグループ上で送信され、信号を送信機の複数のアンテナポートにマッピングする対応するプリコーディングスキームを使用してプリコーディングされ、受信した信号に基づいて、複数のスペクトルサブバンドの各々における通信チャネルに関するフィードバックを計算し、複数のスペクトルサブバンドについてのフィードバックを送信機へと報告し、フィードバックが報告される複数のスペクトルサブバンドの各々に含まれる1以上の専用基準信号にわたって同時に、通信チャネルの1以上のパラメータを推定し、推定されたパラメータに基づいて信号をデコードする。幾つかの実施形態では、開示される装置を備える移動通信端末が提供される。
【0010】
本開示は、図面と共に、以下に記載される実施形態の詳細な説明からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】以下に記載される一実施形態に係る複数入力複数出力(MIMO)を概略的に例示したブロック図である。
図2】以下に記載される一実施形態に係るMIMO受信機を概略的に例示したブロック図である。
図3】以下に記載される一実施形態に係るダウンリンクMIMO送信における時間周波数リソースの割り当てを示した図である。
図4】以下に記載される一実施形態に係るMIMO送信の方法を概略的に示したフローチャートである。
図5】以下に記載される一実施形態に係るMIMO受信の方法を概略的に示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
周知のMIMOスキームでは、送信機は、変調された符号ストリームを、空間レイヤ、すなわち、異なる複数のMIMO送信チャネルを介して受信機に送信される複数の信号へとマッピングする。そして、送信機は、プリコーディングオペレーションを適用して、各空間レイヤを、対応する送信アンテナポートのセットにマッピングする。送信機は、特定の受信機への送信のために、E−UTRAではリソースブロック(RB)と称される、時間−周波数ブロックのセットを割り当てる。各ブロック内の送信は、空間レイヤの送信アンテナポートへのマッピングを規定する対応するプリコーディングスキームを使用して、プリコーディングされる。各ブロックは、ブロックと関連付けられたプリコーディングスキームを使用してプリコーディングされる、1以上の専用基準信号(DRS)を含み、また、プリコーディングがブロック固有でも受信機固有でもない、1以上の共通基準信号(CRS)も含んでもよい。E−UTRAのeNodeBのダウンリンクにおいて実行される、この種の送信プロセスについては、上記で引用した3GPP技術仕様書36.211規格の第6章に詳細に記載されている。
【0013】
このような送信を受信すると、典型的な受信機は、CRS及び/又はDRSを処理することによりチャネルパラメータを推定し、推定されたチャネルパラメータを使用してデータを再構築する。ブロック(DRSを含む)はそれぞれ、ブロック毎に変化する可能性のある、それぞれのプリコーディングスキームでプリコーディングされるため、受信機が前もって知ることができないような態様で、チャネルパラメータがブロック毎に変わってしまうことがしばしば起こる。そこで、従来のMIMO受信機は通常、チャネルパラメータを計算するときに、各ブロックについて個別にDRSを処理しなければならなかった。従来の受信機において、DRSベースのチャネル推定を1つのブロックに限定すると、各ブロックは限られた数のDRSを有することから、達成できる推定精度が限定されてしまう。一般的に、復調プロセスは推定されたチャネルに基づくことから、受信機の復調性能も限定されてしまう。
【0014】
本明細書に記載される実施形態は、プリコーディングされたMIMO伝送の受信及び再構築のための改善された方法及びシステムを提供する。これらの方法及びシステムにおいて、受信機は、プリコーディングスキームが一定である又は変化が遅い2つ以上のブロックのセットを特定する。受信機がこのようなセットを特定できる場合には、受信機は、このブロックのセットに含まれる複数のDRSを同時に(一緒に:jointly)処理することによって、1以上のチャネルパラメータを推定する。チャネルパラメータが、ブロック毎ではなく、複数のブロックにわたる複数のDRSを使用して推定されるので、推定精度を向上させることができ、データ再構築の受信機性能も改善させることができる。
【0015】
幾つかの実施形態では、受信機は、複数のスペクトル帯域における通信チャネルを示すフィードバックを計算し、複数のスペクトル帯域についてのフィードバックを送信機に報告する。一実施形態において、受信機は、フィードバックが報告されるスペクトル帯域各々における複数DRSにわたって同時にチャネルパラメータを推定する。ここでは、報告されるスペクトル帯域の各々内で、プリコーディングスキームが一定に維持されることを仮定しており、これは、送信機はプリコーディングスキームを変更するのに使用されるような粒度の高い情報を有さないことに基づく。
【0016】
図1は、一実施形態に係るMIMO送信機20を概略的に示したブロック図である。以下の記載では、E−UTRA基地局(eNodeB)の送信機を参照して説明が行われるが、本明細書に記載される方法及びシステムは、例えば、LTEアドバンスト(LTE−A)、IEEE802.16(WiMAXとも称される)その他の任意の好適な通信規格又はプロトコルに従って動作する送信機でも使用可能である。また、以下の記載では、eNodeBからUEへのダウンリンク送信について主に説明されるが、開示される方法及びシステムは、アップリンク送信にも適用可能である。
【0017】
送信機20は、1以上の変調チェーンを有し、各変調チェーンは、スクランブラ28及び変調マッパー32を含む。送信される入力データは、符号語を生成するべく、誤り訂正コード(ECC)でエンコードされる。符号語はそれぞれ、対応するスクランブラ28によってスクランブルされた後、対応する変調マッパー32により変調される。変調マッパーはそれぞれ、複素数値の変調された符号のストリームを生成する。四位相偏移変調(QPSK)又は直角位相振幅変調(QAM)のような任意の好適な変調スキームを使用することができる。
【0018】
レイヤマッパー36は、変調マッパー32によって生成された変調符号ストリームを、1以上の空間レイヤにマップする。(特定の通信チャネルに割り当てられた時間及び周波数リソースの所与のセットについて、複数の送信及び受信アンテナが"空間的"ディメンションをこれらのリソースに付加する。付加される空間的ディメンションを利用する方法の可能性の1つとして、時間‐周波数リソース当りの送信される個々の変調符号の数を増やすことが考えられる。1つの送信アンテナ及び1つの受信アンテナの場合に対する、増加係数は、空間レイヤの数として規定される。)各空間レイヤは、MIMO通信チャネル上で送信される複素数値のストリームを含む。
【0019】
マップされた空間レイヤは、プリコーダ40に供給される。プリコーダ40は、空間レイヤを、特定のプリコーディングスキームに従って、送信機の送信アンテナポート52上にマップする。(ここで、所与のアンテナポートは、必ずしも1つの物理的なアンテナに対応しておらず、複数の物理的アンテナから発生する信号の重ね合わせ(加重和)として必ずしも受信機が認知可能とは限らない態様で生成される送信信号を送信する"仮想アンテナ"に対応している場合もある。送信アンテナポートの数は、レイヤの数よりも多くてもよい。)リソースマッパー44は、リソース要素(時間−周波数割り当て)を、対応する送信アンテナポートに割り当てる。マッパー44の出力は、送信アンテナポート52を介して受信機へと送信されるOFDM信号を生成する、対応する直交周波数分割多重(OFDM)生成器48によって処理される。
【0020】
本実施例では、送信機20は、ダウンリンクデータを複数の受信機に送信するE−UTRA eNodeBを含む。幾つかの実施形態では、送信機20は、送信される時間‐周波数リソースブロック(RB)のセットを特定の受信機に対して割り当てる。各RBは、複数のOFDMサブキャリアの特定のグループ上で、特定の数のOFDM符号を含む期間に送信される。所与のRB内では、送信機20のプリコーダ40は、RB毎に変化する対応するプリコーディングスキームを使用して、空間レイヤを送信アンテナポート52へとプリコードする。
【0021】
RBはそれぞれ、複数の基準信号(RS)を含む、すなわち、RBに送入される既知のパイロット信号であり、チャネル推定及び/又はその他の機能のために受信機によって使用される信号を含む。ある実施形態では、RBはそれぞれ、データと同じプリコーディングスキームを使用してプリコーディングされる専用基準信号(DRS)を含む。DRSは、RBに関するチャネルパラメータを推定するべく受信機によって使用されてもよく、パラメータは後で、ブロックのデータの復調に使用される。RBはそれぞれ、プリコーディングがブロック固有又は受信機固有でない共通基準信号(CRS)を含んでもよいDRS及びCRSの両方を含むRB構成の一例が図3に示されている。
【0022】
送信機20は、異なる複数の送信機要素を設定及び制御するコントローラ56を含む。具体的には、コントローラ56は、同時DRS処理に適したRBを示す信号情報を生成するプリコーディング信号モジュール60を含む。この信号情報は、ダウンリンクで受信機へと送信される。モジュール60の機能については、以下に詳細に説明する。
【0023】
図2は、一実施形態に係るMIMO受信機70を概略的に示したブロック図である。受信機70は、1以上の受信アンテナポート74、MIMOデコーダ78及びチャネル推定モジュール82を含む。以下の説明では、E−UTRA UEの受信機を参照して説明がなされるが、その他の受信機についても考えうる。上記したように、本明細書に記載される方法及びシステムは、他の様々な通信プロトコルに適用可能である。
【0024】
受信機70は、アンテナポート74を使用して、送信機20からダウンリンク信号を受信する。MIMOデコーダ78は、異なる空間レイヤ上で送信されたデータを復調するべく、受信されたMIMO信号をデコードする。再構築されたデータが、受信機70の出力として提供される。各RBについて、チャネル推定モジュール82は、このRBが送信された有効通信チャネルを推定する。デコーダ78は、推定されたチャネルに基づいて、受信されたMIMO信号をコヒーレントに復調し、このRBにおける空間レイヤで伝播されたデータを再構築する。
【0025】
図1及び図2に示す送信機及び受信機の配置は、単純化された構成であり、コンセプトを明確に示す目的で描かれている。別の実施形態では、別の好適な送信機又は受信機の構成を使用することができる。開示される技術の説明に必須でない構成、例えば、様々な無線周波数(RF)要素については、図示を明瞭にするために、図1及び図2では省略されている。
【0026】
送信機20及び受信機70の異なる構成要素は、1以上の特定用途向け集積回路(ASIC)及び/又はフィールドプログラム可能ゲートアレイ(FPGA)のような、専用ハードウェアを使用して実装してもよい。これに替えて、送信機又は受信機の構成要素は、汎用ハードウェアで実行されるソフトウェア、又は、ハードウェア及びソフトウェア要素の組み合わせを使用して実装されてもよい。ある実施形態では、コントローラ56、チャネル推定モジュール82及び/又はMIMOデコーダ78の一部は、本明細書に記載される機能を実行するべくソフトウェアにプログラムされる汎用プロセッサを使用して実装されてもよい。ソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電気的形式でプロセッサにダウンロードされてもよく、これに替えて又は加えて、磁気的、光学的又は電子的メモリのような有形媒体に提供及び/又は格納されてもよい。
【0027】
幾つかの実施形態において、受信機70におけるモジュール82は、2段階の推定プロセスを使用してチャネルパラメータを推定する。第1段階では、モジュール82は、ドップラー拡散及びマルチパス遅延拡散(後者は、"コヒーレンス帯域幅"とも読み替えられる)のような長期的なチャネル特性を推定する。第2段階では、モジュール82は、短期的・瞬間的チャネルパラメータを、DRSをフィルタリングすることによって推定する。モジュール82は、第2段階において、第1段階で推定された長期的特性に基づいて、適切なフィルタを設定する。この種の2段階のチャネル推定プロセスについては、例えば、Hanzo他、"ブロードバンドマルチユーザー通信、WLAN及びブロードキャスティングのためのOFDM及びMC−CDMA"、ウィリーIEEEプレス、2003年9月19日、第14章、485−548ページに記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
典型的には、ドップラー拡散が小さいチャネルは、時間的にゆっくり変化するため、相対的に長い期間にわたって推定することができる。反対に、ドップラー拡散が大きいチャネルは、短い期間にわたって推定することができる。典型的には、マルチパス遅延拡散が小さいチャネル(すなわち、大きなコヒーレンシ帯域幅)は、周波数においてゆっくり変化し、相対的に多数のサブキャリアにわたって推定することができる。反対に、マルチパス遅延拡散が大きいチャネルは、少ない数のサブキャリアにわたって推定することができる。復調性能を高く維持するためには、時間及び周波数フィルタを適切に設定することが重要である。
【0029】
プリコーディングスキームが、送信に使用される送信アンテナポートの特定の組み合わせを規定することから、所与のRBにおけるチャネルパラメータは、送信機によって適用されるプリコーディングスキームに依存する。したがって、モジュール82は、RBの特定のプリコーディングスキームを使用してプリコーディングされたDRSを処理することにより、所与のRBにおけるチャネルパラメータを推定する。モジュール82はまた、送信機と受信機との間の物理チャネルにおける変動を査定するべく、上記プロセスの間にCRSを考慮する。
【0030】
図3は、一実施形態に係るダウンリンクMIMO送信における時間−周波数リソースの割り当てを示す図である。典型的なE−UTRA実装では、基地局は、OFDM符号のシーケンスを送信し、各符号は、複数のOFDMサブキャリア上で送信される。この時間−周波数リソースは、複数のリソースブロック(RB)に分割される。図3の例において、12個のサブキャリアを含むリソースブロックがそれぞれ、14個のOFDM符号を搬送する構成が示されている。基地局は、ダウンリンク送信のための複数のRBからなるセットを、各UEに割り当てる。所与のUEに割り当てられた複数のRBは、必ずしも、時間又は周波数において連続していない。
【0031】
図3の例では、2つのRB90A及び90Bが、周波数において隣接している。OFDM符号の単位では、横軸が時間軸である。OFDM符号の単位では、縦軸が周波数軸である。各RBは、既知のロケーションに送入される基準信号(RS)を含む。図3の例では、各RBは、複数の共通基準信号(CRS)94及び複数の専用基準信号(DRS)98を含む。
【0032】
図3のRBの構成は、一例として選択されており、開示される方法及びシステムは、特定の構成に限定されない。その他の好適なRB構成を使用することができる。複数のRB構成の例については、上記で引用した3GPP TS 36.211の第6章に記載されている。
【0033】
上記で説明したように、受信機70は、RBにおいて送信されるRSを処理することにより、チャネルパラメータを推定する。以下の説明では、DRSベースの推定について述べる。推定精度は、チャネルパラメータが推定されるDRSの数に依存する。不十分な数のDRSでチャネルを推定すると、チャネルパラメータが不正確になる可能性がある。上記のような2段階のチャネル推定を使用する場合、第1段階におけるドップラー又はマルチパス拡散の推定が不正確であると、第2段階におけるフィルタリングも不正確になる可能性がある。したがって、できるだけ多くのDRSにわたってチャネルを推定するのが望ましく、特に、複数のRBにおける複数のDRSを使用して推定を行うのが望ましい。
【0034】
一方、異なる複数のRBは、異なるチャネルパラメータを有する可能性があることから、無差別に複数のRBでチャネル推定を行うべきではない。具体的には、異なるRB(そこに含まれるDRSも含め)は一般的に、異なるプリコーディングスキームでプリコーディングされている、すなわち、異なるアンテナポートの組み合わせを介して送信される。
【0035】
実際には、基地局が、(1つの所与のUEに対して割り当てられた複数のRBのうちの)1つのRBから別のRBへとプリコーディングスキームを変更するレートは、異なるMIMOシナリオ間で大きく変動する。例えば、周波数分割複信(FDD)の基地局がUEからのフィードバックなしにMIMOビーム形成を使用する場合、基地局は典型的には、実際のダウンリンクチャネルパラメータについての大まかな情報のみしか有さない。このシナリオでは、基地局は、相対的に長い期間の間(例えば、数秒間)、周波数レンジ全体にわたって固定されたプリコーディングスキームを維持してもよい。別のシナリオでは、基地局は、物理的伝播チャネルにおける変化に適合するレートでプリコーディングスキームを変更してもよい。このシナリオは、例えば、時間分割複信(TDD)基地局が、UEからのフィードバックに基づく物理チャネル変化を追従するべくプリコーディングスキームを採用する場合が考えられる。
【0036】
別のシナリオでは、2つのRBが同じUEに割り当てられており、時間及び/又は周波数において隣接してる場合であっても、基地局は、1つのRBから次のRBへとプリコーディングスキームを変更してもよい。このシナリオは、例えば、基地局が、対象のUEへの通信チャネルだけではなく、別の考慮すべき事項に基づいて、プリコーディングを決定する場合が考えられる。例えば、基地局は、別のUEへの干渉を最小にするような態様で、プリコーディングスキームを設定してもよい。別のUEは、RBの同じセットに割り当てられていない可能性があることから、プリコーディングスキームは、1のRBと別のRBとの間で大幅に変化する可能性がある。
【0037】
ある実施形態では、受信機70は、同時DRSベースのチャネル推定に好適な2つ以上のRBを特定する。一般的に、複数のRBにおける複数のDRS上での推定の利点を得るため、RBは以下の2つの条件を満たす必要がある。1.送信機と受信機の間の物理伝播チャネル(例えば、リンク配置及びマルチパスの状態)は、複数のRB間で十分に類似している。2.複数のRBで使用されているプリコーディングスキームは、同一又は十分に類似している。
【0038】
典型的には、受信機は、プリコーディングスキームが所定の距離以上異なっていないRBを、同時DRSベースチャネル推定の候補として特定する。幾つかの実施形態では、プリコーディングスキームの許容される変化率は、物理的伝播チャネルの変化率から導かれる。すなわち、物理的伝播チャネルの変化以上にプリコーディングスキームが変化しないRBを、同時DRSベースのチャネル推定に使用してもよい。これに替えて、許容される変化率は、その他の好適な基準を使用して決定することができる。典型的な実装では、受信機は、特定のフィルタリングをDRSに適用することにより、チャネルを推定する。フィルタリングスキームは、特定された複数のブロックにわたる物理的通信チャネルにおける変化量に基づいて選択される。この種のメカニズムについては、図5を参照して以下に説明される。
【0039】
ある実施形態では、送信機(基地局)は、同時チャネル推定に使用してもよい複数のRBを示す信号情報を、受信機(UE)に送信する。幾つかの実施形態では、信号情報は、同時推定が許容される時間及び周波数における、RBの特定の粒度を規定する。
【0040】
信号情報は、好適なレートで、好適な信号メカニズムを使用して所定のUEに送信されてもよい。例えば、信号情報は、複数のUEに共通の準静的メカニズムを使用して送信することができ、例えば、E−UTRAで規定される"システム情報"メッセージを使用してもよい。加えて又はこれに替えて、信号情報は、準静的UE固有のメカニズムを使用して送信することができ、例えば、UEにプリコーディングされた送信を受信するように指示するメッセージにおいて送信されてもよい。E−UTRAでは、このようなメッセージは、無線リソース制御(RRC)メッセージと称される。更に加えて又はこれに替えて、信号情報は、特定の送信時間間隔(TTI)におけるUEへのリソース割り当てを規定する動的UE固有信号メカニズムを使用して送信されてもよい。E−UTRAでは、信号は、物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)上で送信される。更に加えて又はこれに替えて、信号情報は、その他の好適な信号手段を使用して送信されてもよい。
【0041】
幾つかの実施形態では、信号情報は、1つのビットを含む。1ビット値は、UEに、同時チャネル推定が許容されない、すなわち、DRSベースのチャネル推定が、各RB毎に実行されるべきであることを示す。別のビット値は、(例えば、プリコーディングスキームが固定されている、又は、UEのダウンリンク割り当て全体における伝播チャネルよりも遅いレートで変化する場合に)UEに割り当てられた複数のRBのセット全体に対して、同時DRSベースの推定が許されることを示す。
【0042】
別の実施形態では、信号情報は、それぞれ3つの値を使用して、周波数粒度及び時間粒度を規定してもよい。例えば、周波数粒度は、(1)1つのRB、(2)(所定の複数のサブバンドのグループのうちの)1つのサブバンド、及び、(3)所与のTTI内にUEに割り当てられるRBの全て、のうちの1つとして規定されてもよい。E−UTRAでは、サブバンドの各々は、マッピングがチャネル品質情報(CQI)レポートに規定されているRBのグループを含む。同様に、時間粒度は、(1)1つのTTI、(2)周波数割り当てが変化しない期間、及び、(3)プリコーディングが固定されている期間又は滑らかに変化する期間、のうちの1つとして規定されてもよい。
【0043】
∈{1,2,3}は時間粒度を表し、i∈{1,2,3}は周波数粒度を表す一対の値[i,i]を使用して、時間及び周波数粒度をUEに通知することができる。ある実施形態では、起こる可能性の低い組み合わせ(例えば、[1,3]又は[3,1]を省略することができ、3つのビットのみを使用して、残りの値の組み合わせを通知することができる。一実施形態において、1つのサブバンドを、基地局によって使用される基本周波数リソーススケジューリングユニットに設定することができる。
【0044】
TTI毎の高速通知に特に適した別の例では、信号情報は、粒度が1つのRBであるか又は割り当てられた全RBであるかを示す1つのビットを含み、時間粒度は、1つのTTIであると仮定される。
【0045】
幾つかの実施形態では、準静的信号通知又は動的信号通知を組み合わせることができる。例えば、特定の一対の値[i,i]が、静的に及び初期値としてUEに通知されてもよい。加えて、1つのビットをTTI毎に通知して(例えば、PDCCH上で)、初期値を書き換えてもよい。このビットは、例えば、このTTIにおいてプリコーディングが変化し、その結果1つ前のチャネル推定が不適切となったので使用すべきでないことを示してもよい。周波数粒度は、一般的にこの書き換えによる影響を受けない。
【0046】
更にこれに替えて、基地局は、どのRBを同時DRSベースのチャネル推定に使用できるかをUEに通知するのに、その他の好適な信号通知メカニズムを使用することができる。典型的であって必ずしもそうであるとは限らないが、信号通知メカニズムは、適用可能なRB粒度、及び、プリコーディングが固定されている又はゆっくりと変化するRBのIDを、UEに通知してもよい。
【0047】
本明細書に記載される実施形態は、主に、UEにとってダウンリンク送信が、1つの仮想送信アンテナ(E−UTRAにおけるポート5)から発生しているように見えるようなプリコーディングスキームを参照して説明がなされた。しかしながら、本明細書に記載されるシステム及び方法は、このようなスキームに限定されない。開示された技術は、受信機にとって、複数の送信アンテナからダウンリンク送信が生じているように見える、プリコーディングスキームに対しても等しく適用可能である。
【0048】
幾つかの実施形態では、受信機は、プリコーディングが大幅に変化する可能性が低いRBを黙示的な基準を使用して特定してもよく、これには送信機からの信号の通知を必ずしも必要としない。例えば、基地局が、プリコーディングされたDRSを有する複数の空間レイヤを同じUEに送信する場合、基地局は、典型的には、同じRB割り当て内の別のUEに送信を行わない。したがって、基地局は、RB割り当て内では、突然プリコーディングスキームを変更するようなことはほとんどない。このロジックに従うと、UEが基地局から2つ以上の空間レイヤを受信する場合には、プリコーディングは固定されている又はゆっくり変化するとUEは仮定してもよい。別の実施形態では、UEがN≧2である、N個を超える空間レイヤを受信する場合に、プリコーディングは固定されている又はゆっくり変化するとUEは仮定してもよい。
【0049】
ある実施形態では、受信機70は、送信機20と受信機70との間の通信チャネルを示すフィードバックを推定し、このフィードバックを送信機に報告する。フィードバックの種類の例としては、チャネル状態情報(CSI)、プリコーディングマトリックスインジケータ(PMI)、又は、その他の好適なフィードバック種類が含まれる。送信機は、受信機によって報告されたフィードバックに基づいて、自身の送信を受信機に適用する。一実施形態例では、受信機は、特定の空間粒度において、すなわち、複数のスペクトルサブバンドの各々に対して、チャネルフィードバックを推定及び報告する。
【0050】
ある実施形態では、受信機70は、チャネルフィードバックが報告されるスペクトルサブバンドの各々において、複数のDRSにわたって、チャネルパラメータを同時に(一緒に)推定する。このメカニズムの基本として、送信機は、スペクトル間隔の粒度においてのみ受信機からフィードバック情報を受けていることから、送信機が所定のスペクトル間隔内でプリコーディングスキームを変更する可能性は低いと仮定している。すなわち、受信機が特定のスペクトル粒度でフィードバックを提供する場合、送信機は、より細かい粒度においてプリコーディングスキームを修正するのに使用できる情報を有さない。典型的には、この技術は、FDDシステムで使用される。
【0051】
幾つかの実施形態では、上記の仮定は、ある送信モードでは維持されるが、別の送信モードでは維持されない。したがって、幾つかの実施形態では、受信機は先ず、上記の仮定が維持されるか否かを判断する特定の推定基準を評価する。この基準が満たされる場合には、受信機は、各スペクトルサブバンド内でプリコーディングは固定されていると仮定し、それに従ってチャネルパラメータを推定する。この基準が満たされない場合には、受信機は、この仮定を使用しない。
【0052】
一実施形態例では、送信機から受信機へと送信される空間レイヤの数が空間レイヤの所定数よりも多い場合には、受信機は、各スペクトルサブバンドの複数のDRSにわたって同時に(まとめて)チャネルパラメータを推定する。一実施形態において、空間レイヤの所定の数は4であるが、その他の好適な数を使用することができる。
【0053】
別の実施形態例では、送信機が、複数の受信機への同時送信が許されないシングルユーザーモードで受信機へ信号を送信する場合、受信機は、各スペクトルサブバンドの複数のDRSにわたって、チャネルパラメータを同時に推定する。この種のモードの一例には、上記で引用した、E−UTRA規格で規定されるシングルユーザーMIMO(SU−MIMO)がある。更にこれに替えて、その他の好適な条件を使用することができ、例えば、マルチユーザーMIMO(MU−MIMO)又は基地局間協調伝送(Cooperative Multipoint:CoMP)が現在適用されていないことを検証するための様々な条件を使用することができる。
【0054】
図4は、一実施形態に係るMIMO送信の方法を概略的に示したフローチャートである。方法は、プリコーディング規定段階100から開始し、送信機20(本例では、E−UTRA eNodeBである)が、所定のUEへと送信されるべきRB各々に対するプリコーディングスキームを規定する。ブロック特定段階104において、送信機は、プリコーディングスキームが固定される又はゆっくりと変化する2つ以上のRBを特定する。ここで、"ゆっくりと変化する"とは、典型的には、送信機と受信機との間の物理的伝播チャネルのレートよりも速くないレートで変化するプリコーディングスキームを意味する。そして、信号通知段階108において、送信機は、ダウンリンク信号を使用して、特定したブロックを受信機に示す。
【0055】
図5は、一実施形態に係るMIMO受信の方法を概略的に示したフローチャートである。図5の方法において、受信機は、プリコーディングに関係なく、物理通信チャネルにおける変化量(周波数及び/又は時間における)に合致するように、DRSベースのチャネル推定で使用されるフィルタリングスキームを設定する。
【0056】
図5の方法は、受信段階110から開始し、受信機70(本例では、E−UTRA UE)が、送信機(この例では、E−UTRA eNodeB)からのダウンリンク送信を受信する。ダウンリンク送信は、複数のRBに分割され、各RBは、図3の構成で示したようなCRS及びDRSを含む。RBチェック段階114において、受信機は、同時DRSベース推定を可能とする程度に十分類似したプリコーディングを有する2つ以上のRBの特定を試みる。受信機は、送信機から送信された信号情報に基づいて、又は、黙示的条件を使用して、好適なRBを特定してもよい。幾つかの実施形態において、受信機は、上記で説明したように、チャネルフィードバックを報告するのに使用される同じスペクトルサブバンドに属する複数のRBを特定する。
【0057】
好適なRBが特定できない場合には、1つのブロック推定段階118において、受信機は、各RBについて個別に、すなわち、RB毎に、DRSにおけるチャネルパラメータを推定する。復調段階122において、MIMOデコーダ78は、推定されたチャネルパラメータを使用して、複数のRBにおいて伝達されるデータを復調する。
【0058】
一方、受信機が、十分に類似したプリコーディングを有する2つ以上のRBを特定することができる場合には、変化量査定段階126において、特定されたRBにわたって物理通信チャネルの変化量(時間及び/又は周波数における)を査定する。典型的には、受信機は、このタスクを、受信されたCRSを処理することにより実行する。CRSは、UE又はRBに固有の態様でプリコーディングされていないことから、プリコーディングに関係なく、物理的な伝播チャネルの特性を査定するのに使用することができる。受信機は、ドップラー及びマルチパス拡散(又は、等価のコヒーレンシ帯域幅)のようなチャネル特性を推定することにより、チャネル変化量を査定してもよい。チャネル変化量を査定した後で、受信機は、査定した変化量に基づいて、同時DRSベースチャネル推定のためのフィルタリングスキームを設定する。
【0059】
マルチブロック推定段階130において、受信機におけるモジュール82は、特定されたRBにおける複数のDRSを同時に(一緒に)処理することにより、チャネルパラメータを推定する。モジュール82は、典型的には、上記の段階126において設定されたフィルタリングスキームを使用して、DRSをフィルタリングすることにより、チャネルパラメータを推定する。段階122において、MIMOデコーダ78は、推定されたチャネルパラメータを使用して復調を実行する。
【0060】
上記の実施形態は、例示のためにのみ引用されており、本発明は、上記の説明で具体的に示され説明されたことに限定されない。本発明の範囲は、上記で記載した様々な特徴の組み合わせ及びサブコンビネーションの両方を含み、本明細書を読んだ当業者が想到し、従来技術に開示されていない変形及び改良についても本発明の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5