特許第6012490号(P6012490)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012490
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】キャリパブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/18 20060101AFI20161011BHJP
   F16D 65/14 20060101ALI20161011BHJP
   B61H 5/00 20060101ALN20161011BHJP
   F16B 43/00 20060101ALN20161011BHJP
   F16D 125/06 20120101ALN20161011BHJP
   F16D 121/08 20120101ALN20161011BHJP
【FI】
   F16D65/18
   F16D65/14
   !B61H5/00
   !F16B43/00 Z
   F16D125:06 A
   F16D125:06 Z
   F16D121:08
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-12493(P2013-12493)
(22)【出願日】2013年1月25日
(65)【公開番号】特開2014-145371(P2014-145371A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100148231
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 謙治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 努
(72)【発明者】
【氏名】大河原 義之
【審査官】 岩谷 一臣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−047430(JP,A)
【文献】 実開昭52−160782(JP,U)
【文献】 特開2003−269434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D49/00−71/04
B61H 5/00
F16B23/00−43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪とともに回転するディスクに摩擦力を付与することで車輪を制動するキャリパブレーキ装置であって、
キャリパ本体と、
前記キャリパ本体に進退自在に設けられ、前記キャリパ本体の圧力室内の圧力に応じて進退するピストンと、
前記ディスクに摺接することで前記ディスクに摩擦力を付与可能な制輪子と、
前記制輪子を支持するとともに、前記ピストンに取り付けられるガイドプレートと、
前記ピストンと前記ガイドプレートを締結する締結部材と、を備え、
前記締結部材は、テーパ状の座面を有しており、
前記ピストン及び前記ガイドプレートの少なくとも一方は、前記締結部材の座面が着座するテーパ状の当接部を有し
前記ピストンは、前記締結部材の一部を収容可能な空気室を形成する収容凹部と、前記収容凹部の開口端を閉塞するキャップ部材と、を備える、
ことを特徴とするキャリパブレーキ装置。
【請求項2】
前記締結部材は、
ねじ軸を有するボルトと、
前記ボルトと前記ガイドプレートとの間に位置するテーパ状のボルト側座面と、
前記ねじ軸に螺合するナットと、を備える、ことを特徴とする請求項1に記載のキャリパブレーキ装置。
【請求項3】
前記締結部材は、
ねじ軸を有するボルトと、
前記ねじ軸に螺合するナットと、
前記ナットと前記ピストンとの間に位置するテーパ状のナット側座面と、
を備える、ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか一つに記載のキャリパブレーキ装置。
【請求項4】
前記ボルトは、前記ボルト側座面が形成される頭部及び前記頭部から延設される前記ねじ軸を有し、
前記ガイドプレートは、前記ボルト側座面が着座するテーパ状のボルト当接部及び前記ねじ軸を挿通させる第1挿通孔を有する第1収容部を備え、
前記第1挿通孔を通じて前記ピストン側に突出する前記ねじ軸に前記ナットが螺合することで、前記ガイドプレートと前記ピストンとが締結されることを特徴とする請求項2に記載のキャリパブレーキ装置。
【請求項5】
前記締結部材は、前記ねじ軸を挿通させるとともに、前記ナット側座面を有するワッシャをさらに備え、
前記ピストンは、前記ワッシャの前記ナット側座面が着座するテーパ状のワッシャ当接部及び前記ねじ軸を挿通させる第2挿通孔を有する、前記収容凹部としての第2収容部を備え、
前記第2挿通孔を通じて前記第2収容部側に突出する前記ねじ軸に前記ワッシャを介して前記ナットが螺合することで、前記ガイドプレートと前記ピストンとが締結されることを特徴とする請求項3に記載のキャリパブレーキ装置。
【請求項6】
前記ボルト当接部は、前記ガイドプレートに窪むように形成され、
前記ボルト当接部の深さは、前記ボルトの頭部の厚さよりも大きくなるように設定されることを特徴とする請求項4に記載のキャリパブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪とともに回転するブレーキディスクに摩擦力を付与することで、車輪の回転を制動するキャリパブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄道車両では、油圧や空気圧等の流体圧力を利用して車輪の回転を制動するブレーキ装置が用いられている。
【0003】
特許文献1には、空気圧を高めてダイヤフラムを膨張させることで、ピストンを移動させ、制輪子(ブレーキシュー)を車輪のブレーキディスクに摺接させるキャリパブレーキ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−202669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなキャリパブレーキ装置では、制輪子はガイドプレートに支持されており、当該ガイドプレートはピストンに取り付けられている。ガイドプレートとピストンとは、ピストンに設けられたピンをガイドプレートに形成された孔部に挿入し、ピンの先端を折り曲げ、ピンが孔部から抜けないようにすることで、相互に締結される。しかしながら、ピストンのピンとガイドプレートの孔部を係合させる締結方法では、振動等によってピンと孔部の係合部分が摩耗し、ガイドプレートとピストンの締結力が低下しやすい。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ガイドプレートとピストンの締結力の低下を抑制可能なキャリパブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車輪とともに回転するディスクに摩擦力を付与することで車輪を制動するキャリパブレーキ装置であって、キャリパ本体と、前記キャリパ本体に進退自在に設けられ、前記キャリパ本体の圧力室内の圧力に応じて進退するピストンと、前記ディスクに摺接することで前記ディスクに摩擦力を付与可能な制輪子と、前記制輪子を支持するとともに、前記ピストンに取り付けられるガイドプレートと、前記ピストンと前記ガイドプレートを締結する締結部材と、を備え、前記締結部材は、テーパ状の座面を有しており、前記ピストン及び前記ガイドプレートの少なくとも一方は、前記締結部材の座面が着座するテーパ状の当接部を有している。そして、前記ピストンは、前記締結部材の一部を収容可能な空気室を形成する収容凹部と、前記収容凹部の開口端を閉塞するキャップ部材と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のキャリパブレーキ装置によれば、ガイドプレートとピストンの締結時には、締結部材のテーパ状の座面が、ピストン及びガイドプレートの少なくとも一方に形成されたテーパ状の当接部に当接する。このように座面と当接部を面接触させることで、ガイドプレート等が振動した場合であっても当接部分において摩耗が生じにくくなる。したがって、締結部材が緩みにくくなり、ガイドプレートとピストンの締結力の低下が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態によるキャリパブレーキ装置の平面図である。
図2】本発明の実施形態によるキャリパブレーキ装置の正面図である。
図3図2のIII−III面におけるキャリパブレーキ装置の断面図である。
図4】キャリパブレーキ装置を構成するガイドプレートとボルトの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態によるキャリパブレーキ装置100について説明する。
【0011】
まず、図1及び図2を参照して、キャリパブレーキ装置100の全体構成について説明する。
【0012】
キャリパブレーキ装置100は、空気を作動流体として利用する鉄道車両用のブレーキ装置である。キャリパブレーキ装置100は、車輪1のディスク1Aに制輪子30を摺接させてディスク1Aに摩擦力を付与することで、車輪1の回転を制動する。
【0013】
図1及び図2に示すように、キャリパブレーキ装置100は、キャリパ本体10と、キャリパ本体10を支持するとともに車体に固定される支持枠20と、車輪1を挟んで対向するようにキャリパ本体10に設けられる一対の制輪子30と、一方の制輪子30を支持するガイドプレート40と、キャリパ本体10に進退自在に設けられるとともにガイドプレート40を支持するアンカピン51と、空気圧により制輪子30をディスク1Aに向かって押圧する押圧機構60と、を備える。
【0014】
車輪1の外側及び内側の両端面には、制輪子30が摺接するディスク1Aが形成されている。ディスク1Aは、ブレーキディスクであって、車輪1とともに一体的に回転する。なお、キャリパブレーキ装置100では、車輪1にディスク1Aを一体形成したが、ディスク1Aを別部材として車輪1に取り付けるようにしてもよい。
【0015】
キャリパ本体10は、車輪1を跨ぐように延設される第1キャリパアーム11及び第2キャリパアーム12と、第1キャリパアーム11及び第2キャリパアーム12を連結するキャリパヨーク13と、キャリパヨーク13から車輪1側とは反対側に延設されるブラケット14と、を備える。キャリパ本体10は、ブラケット14を介して、支持枠20に取り付けられる。
【0016】
キャリパ本体10のブラケット14は、支持枠20を跨いで向かい合うように二股状に形成されている。ブラケット14及び支持枠20は、上下一対のスライドピン21を介して連結されている。
【0017】
スライドピン21は支持枠20及びキャリパ本体10のブラケット14を貫通しており、スライドピン21の両端部はブラケット14に固定されている。また、スライドピン21は、支持枠20に対して摺動可能に設けられている。キャリパ本体10は、スライドピン21を介して、当該スライドピン21の軸方向への移動が可能なように支持枠20にフローティング支持されている。
【0018】
なお、支持枠20とブラケット14の間に位置するスライドピン21は、ゴム製のダストブーツ22によって覆われている。これにより、スライドピン21と支持枠20の摺動部分へのダスト等の進入が防止される。
【0019】
制輪子30は、キャリパ本体10の第1キャリパアーム11及び第2キャリパアーム12のそれぞれの先端に、車輪1のディスク1Aに対向するように設けられる。制輪子30は、車輪1のディスク1Aに摺接するライニング31を有している。
【0020】
第1キャリパアーム11側の制輪子30は、押圧機構60によって、車輪1のディスク1Aに摺接するように押圧される。この制輪子30は、ライニング31が設けられる面と反対側の背面がガイドプレート40に取り付けられるように構成されている。ガイドプレート40には、制輪子30の背面に設けられた係合板32(図1参照)と係合可能な係合溝41が長手方向に沿って形成されている。ガイドプレート40は、後述するアンカピン51によってキャリパ本体10に支持されている。
【0021】
キャリパブレーキ装置100では、押圧機構60により押圧された第1キャリパアーム11側の制輪子30が車輪1の一方のディスク1Aに摺接すると、キャリパ本体10が支持枠20に対してスライドピン21の軸方向に移動し、第2キャリパアーム12側の制輪子30が車輪1の他方のディスク1Aに摺接する。そして、制輪子30のライニング31がディスク1Aに摺接する時に生じる摩擦力によって、車輪1の回転が制動される。
【0022】
次に、図3を参照して、キャリパ本体10の一部を構成する第1キャリパアーム11の内部構造について説明する。
【0023】
キャリパ本体10の第1キャリパアーム11は、ガイドプレート40を支持する上下一対の支持機構50と、これら支持機構50の間に位置する押圧機構60と、を有している。
【0024】
支持機構50は、アンカボルト52によって第1キャリパアーム11に固定されるピン受部53と、ピン受部53に対して進退可能に設けられ、制輪子30が設置されたガイドプレート40を第1キャリパアーム11に対して支持するアンカピン51と、ピン受部53内へ進入する方向にアンカピン51を付勢する戻しばね54と、を備える。
【0025】
アンカピン51は、有底円筒状部材であって、ピン受部53内に進退自在に設けられる。
【0026】
第1キャリパアーム11の上部に位置するアンカピン51は、ピン受部53の外側に位置する外周面に、径方向に突出する鍔部51Aを有している。ガイドプレート40の上端部分には、アンカピン51を挿通させる挿通孔42の周囲に、アンカピン51の鍔部51Aと嵌合する嵌合溝43が形成されている。上端側のアンカピン51は、鍔部51Aがガイドプレート40の嵌合溝43に嵌った状態で、ガイドプレート40を支持している。
【0027】
第1キャリパアーム11の下部に位置するアンカピン51は、ピン受部53の外側に位置する外周面に凹設された環状溝部51Bを有している。ガイドプレート40の下端部分にはアンカピン51を通過させるU字状の切欠部44が形成されており、切欠部44の上半分の内縁がアンカピン51の環状溝部51Bに嵌り込むようになっている。下端側のアンカピン51は、環状溝部51Bにガイドプレート40の切欠部44が係合することによって、ガイドプレート40を支持している。
【0028】
これら2つのアンカピン51の内部には、戻しばね54がそれぞれ収装されている。戻しばね54は、コイルばねであって、制動状態から非制動状態になった時に、付勢力によってアンカピン51を初期位置まで戻す付勢部材である。
【0029】
なお、アンカピン51は、制動時に外部に露出する部分がゴム製のダストブーツ55によって覆われるように構成されている。これにより、ピン受部53内へのダスト等の進入が防止される。
【0030】
押圧機構60は、上下の支持機構50の間の第1キャリパアーム11に設けられるシリンダ61と、シリンダ61に対して進退自在に設けられるピストン70と、ピストン70の背面に当接した状態で第1キャリパアーム11内に圧力室62を画成するように設けられるダイヤフラム63と、を備える。
【0031】
シリンダ61の内周面は略楕円状に形成されており、シリンダ61内にはピストン70が収容されている。シリンダ61には、ピストン70の背面側のシリンダ開口端を閉塞するキャリパカバー64がボルト65を介して固定される。
【0032】
ダイヤフラム63は、ゴム製の弾性膜である。ダイヤフラム63は、その外縁部63Aがシリンダ61の端面とキャリパカバー64の端面とによって挟み込まれた状態で、ピストン70の背面側に配設される。ダイヤフラム63とキャリパカバー64とによって、圧力室62が画成される。ダイヤフラム63は、圧力室62内の空気圧に応じて弾性変形し、ピストン70を進退させる。なお、圧力室62は、通孔66(図2参照)を介して、外部の空気圧供給源に接続される。
【0033】
ダイヤフラム63は、外縁部63Aと、ピストン70の背面に当接する当接部63Bと、外縁部63Aと当接部63Bとの間に連続して形成される折返し部63Cと、を備える。
【0034】
ダイヤフラム63の外縁部63Aは、シリンダ61とキャリパカバー64とによって挟持される。外縁部63Aがシール部材として機能するので、圧力室62の気密性が確保される。
【0035】
ダイヤフラム63の折返し部63Cは、シリンダ61とピストン70との間の隙間に位置する。折返し部63Cは、圧力室62内の空気圧に応じて、折り返された状態と伸長した状態とに変形可能に構成されている。
【0036】
ダイヤフラム63の当接部63Bは、ピストン70の背面に当接しており、圧力室62内の空気圧に応じてピストン70を押圧する。圧力室62内の空気圧が高められてダイヤフラム63が膨張すると、ダイヤフラム63の当接部63Bにより押圧されたピストン70は、退出方向、つまり図3において左方向に移動する。
【0037】
ピストン70は、略楕円状の円盤部材である。ピストン70は、ダイヤフラム63の当接部63B及び折返し部63Cによって、シリンダ61内に保持されている。シリンダ61の内周面にはピストン70の外周面に摺接するダストシール67が設けられており、ダストシール67によってシリンダ61内へのダスト等の進入が防止される。
【0038】
ピストン70の前面には、断熱板90を挟んだ状態でガイドプレート40が取り付けられる。ガイドプレート40及びピストン70は、ガイドプレート40の前面側に配設されたボルト81にピストン70の背面側に配設されたナット82がワッシャ83及び皿ばね84を介して螺合することで、互いに締結される。このように、ガイドプレート40は上下一対のボルト81及びナット82によりピストン70に固定される。
【0039】
ボルト81は、六角穴付きの皿ボルトである。ボルト81は、円錐テーパ状の座面81B(ボルト側座面)が形成される頭部81Aと、頭部81Aから延設されるねじ軸81Cと、を備える。
【0040】
ナット82は、ねじ軸81Cに螺合するように構成されている。
【0041】
ワッシャ83は、ねじ軸81Cを挿通させるワッシャであり、円錐テーパ状の座面83A(ナット側座面)を有している。ワッシャ83の内径は、ボルト81のねじ軸81Cに接触しないようにねじ軸81Cの外径よりも大きく設定されている。
【0042】
皿ばね84は、ねじ軸81Cを挿通させる円盤状のばね部材であって、ワッシャ83とナット82との間に配置される。皿ばね84の内径は、ボルト81のねじ軸81Cに接触しないようにねじ軸81Cの外径よりも大きく設定されている。
【0043】
上記の通り、ボルト81、ナット82、ワッシャ83、及び皿ばね84が、ガイドプレート40とピストン70を締結する締結部材80を構成している。
【0044】
ガイドプレート40の前面には、ボルト81の頭部81Aを収容可能な第1収容凹部45が上下方向に離間して2つ形成されている。また、ピストン70の背面には、第1収容凹部45と対応する位置に、ナット82、ワッシャ83、及び皿ばね84を収容可能な第2収容凹部71が形成されている。
【0045】
第1収容凹部45には、ボルト81の座面81Bが着座するテーパ状のボルト当接部45Aと、ボルト81のねじ軸81Cを挿通させる第1挿通孔45Bと、が形成されている。図4に示すように、ボルト81の座面81Bがなすテーパ角度、つまりボルト81の周方向に180°ずれた位置においてテーパ面に沿って延設される2つの線のなす角度は120°に設定されている。また、ボルト当接部45Aの当接面がなすテーパ角度も、ボルト81の座面81Bに対応して120°に設定されている。
【0046】
図3に示すように、第2収容凹部71の底面には、ワッシャ83の座面83Aが着座するテーパ状のワッシャ当接部71Aと、ボルト81のねじ軸81Cを挿通させる第2挿通孔71Bと、が形成されている。なお、ワッシャ83の座面83Aがなすテーパ角度は120°に設定されており、ワッシャ当接部71Aの当接面がなすテーパ角度もワッシャ83の座面83Aに対応して120°に設定されている。
【0047】
ボルト81の頭部81Aの座面81Bがボルト当接部45Aに当接するように配置された状態では、ボルト81のねじ軸81Cは、第1収容凹部45の第1挿通孔45B、断熱板90の挿通孔、及び第2収容凹部71の第2挿通孔71Bを通じて、第2収容凹部71内に突出する。このように突出したボルト81のねじ軸81Cに、ワッシャ83及び皿ばね84を介してナット82が螺合する。この時、ワッシャ83の座面83Aはワッシャ当接部71Aに当接している。
【0048】
キャリパブレーキ装置100では、第1収容凹部45に配設されたボルト81と第2収容凹部71に配設されたナット82とが螺合することで、ピストン70の前面側にガイドプレート40が固定される。ガイドプレート40とピストン70が締結された状態において、ボルト81の頭部81Aはボルト当接部45Aから前方に突出しないようになっている。つまり、ボルト当接部45Aの深さは、深さ方向(図3において左右方向)におけるボルト81の頭部81Aの厚さよりも大きくなるように設定されている。
【0049】
なお、空気室として構成される第2収容凹部71の開口端にはキャップ部材72が嵌め込まれ、キャップ部材72により第2収容凹部71は閉塞されている。
【0050】
上記のように構成されるキャリパブレーキ装置100では、締結部材80を構成するボルト81及びナット82によって、ガイドプレート40とピストン70が締結されている。ガイドプレート40とピストン70の締結時には、ボルト81のテーパ状の座面81Bは第1収容凹部45のテーパ状のボルト当接部45Aに当接しており、ワッシャ83のテーパ状の座面83Aは第2収容凹部71のテーパ状のワッシャ当接部71Aに当接している。このように、ボルト81の座面81Bとボルト当接部45A、及びワッシャ83の座面83Aとワッシャ当接部71Aを面接触させることで、ガイドプレート40等が振動した場合であってもこれら部材の当接部分において摩耗が生じにくくなる。したがって、ボルト81とナット82の螺合が緩みにくくなり、ガイドプレート40とピストン70の締結力の低下が抑制される。
【0051】
また、ボルト81にナット82を螺合してガイドプレート40とピストン70を固定する時に、ボルト81の座面81Bがボルト当接部45Aに沿って移動し、ワッシャ83の座面83Aがワッシャ当接部71Aに沿って移動するので、ガイドプレート40とピストン70との位置合わせを自動的に行うことが可能となる。これにより、ガイドプレート40とピストン70との位置決めが容易となる。
【0052】
ボルト当接部45Aはガイドプレート40に窪むように形成されており、ボルト当接部45Aの深さはボルト81の頭部81Aの厚さよりも大きくなるように設定されている。これにより、ボルト81の頭部81Aがボルト当接部45Aから突出せず、制輪子30をガイドプレート40に取り付ける際に制輪子30とボルト81との干渉を回避できる。
【0053】
キャリパブレーキ装置100では、ワッシャ83とナット82との間に皿ばね84が配設される。ボルト81とナット82には、車両の振動や、車輪1のディスク1Aと制輪子30の摺接による摩擦熱が繰り返し入力するが、皿ばね84のバネ作用により外力等を吸収でき、ボルト81とナット82の緩みを防止することができる。したがって、ガイドプレート40とピストン70の締結力の低下をより抑制することが可能となる。
【0054】
また、ワッシャ83及び皿ばね84の内径は、ボルト81のねじ軸81Cに接触しないようにねじ軸81Cの外径よりも大きく設定されているので、制動時の摩擦熱がボルト81からワッシャ83及び皿ばね84に伝わりにくくなり、制動時の摩擦熱に起因するワッシャ83及び皿ばね84の熱膨張を抑制できる。これにより、ワッシャ83及び皿ばね84の膨張収縮に起因するボルト81とナット82の螺合の緩みが発生しにくく、ガイドプレート40とピストン70の締結力の低下をより抑制することが可能となる。
【0055】
キャリパブレーキ装置100では、ガイドプレート40とピストン70の間に断熱板90を介在させるので、車輪1のディスク1Aと制輪子30の摺接による摩擦熱がピストン70に伝達しにくくなる。これにより、摩擦熱がピストン70の背面に配設されるダイヤフラム63に伝達することを抑制でき、ダイヤフラム63の熱劣化を防止することができる。
【0056】
キャリパブレーキ装置100では、第2収容凹部71を空気室として構成するので、第2収容凹部71内に収容されているナット82に伝わった熱がダイヤフラム63に伝達しにくく、摩擦熱のダイヤフラム63への伝達を抑制することができる。
【0057】
本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0058】
上記した実施形態によるキャリパブレーキ装置100では、締結部材80のボルト81の座面81Bがボルト当接部45Aに当接するとともに締結部材80ワッシャ83の座面83Aがワッシャ当接部71Aに当接する。しかしながら、ボルト81の座面81B及びガイドプレート40のボルト当接部45Aだけをテーパ状にしてもよいし、これとは逆に、ワッシャ83の座面83A及びピストン70のワッシャ当接部71Aだけをテーパ状にしてもよい。このように締結部材80に含まれるテーパ状の座面81B,83Aがガイドプレート40及びピストン70の少なくとも一方のテーパ状の当接部45A,71Aに当接するように構成しても、これら部材の当接部分において摩耗が生じにくくなり、ガイドプレート40とピストン70の締結力の低下を抑制できる。
【0059】
キャリパブレーキ装置100では、ボルト81の座面81B、ワッシャ83の座面83A、ボルト当接部45A、及びワッシャ当接部71Aのテーパ角度は120°に設定されているが、この角度に限定されるものではない。したがって、これらのテーパ角度は必要に応じて任意の角度に設定される。
【0060】
キャリパブレーキ装置100では、ボルト81にテーパ状の座面81Bを形成し、ワッシャ83にテーパ状の座面83Aを形成したが、このような構成に限定されるものではない。例えば、ボルト81の頭部81Aに座面81Bを形成する代わりに、ボルト81の頭部81Aとガイドプレート40のボルト当接部45Aとの間に、テーパ状の座面を有するワッシャを設けてもよい。また、ナット82とピストン70のワッシャ当接部71Aとの間に、テーパ状の座面83Aを有するワッシャ83を設ける代わりに、ナット82にテーパ状の座面を形成してもよい。さらに、上記した両構成を同時に採用してもよい。この場合には、ボルト81の頭部81Aとガイドプレート40のボルト当接部45Aとの間にテーパ状の座面を有するワッシャが設けられ、ナット82にテーパ状の座面が形成される。
【符号の説明】
【0061】
100 キャリパブレーキ装置
1 車輪
1A ディスク
10 キャリパ本体
30 制輪子
40 ガイドプレート
45 第1収容凹部
45A ボルト当接部
45B 第1挿通孔
60 押圧機構
61 シリンダ
62 圧力室
63 ダイヤフラム
70 ピストン
71 第2収容凹部
71A ワッシャ当接部
71B 第2挿通孔
72 キャップ部材
80 締結部材
81 ボルト
81A 頭部
81B 座面
81C ねじ軸
82 ナット
83 ワッシャ
83A 座面
84 皿ばね
90 断熱板
図1
図2
図3
図4