(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤および粉砕助剤樹脂を含み、前記粉砕助剤樹脂が、前記結着樹脂および前記離型剤を構成する樹脂とは異なる樹脂からなり、分子量40,000未満の重量比率が70%以上でかつ分子量500,000以上の重量比率が5〜10%であり、前記結着樹脂中に平均粒径0.2〜0.5μmの樹脂粒子の形態で分散されている電子写真用トナーであり、
前記トナーの母粒子の粒子径3μm未満の粒子の個数割合が10pop%以下であり、
前記離型剤が1種である
ことを特徴とする電子写真用トナー。
電子写真感光体上の静電潜像を請求項1〜3のいずれか1つに記載の電子写真用トナーで顕像化し、得られたトナー像を転写媒体に転写した後、ベルト定着装置を用いて前記トナー像を定着することを特徴とする画像形成方法。
電子写真感光体と、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を請求項1〜3のいずれか1つに記載の電子写真用トナーで顕像化してトナー像を形成する現像装置と、前記トナー像を転写媒体に転写する転写装置と、前記転写媒体上のトナー像を定着するベルト定着装置とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1)トナー
本発明のトナーは、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤および粉砕助剤樹脂を含み、前記粉砕助剤樹脂が、前記結着樹脂および前記離型剤を構成する樹脂とは異なる樹脂からなり、分子量40,000未満の比率が70%以上でかつ分子量500,000以上の比率が5〜10%であり、前記結着樹脂中に平均粒径0.2〜0.5μmの樹脂粒子の形態で分散されていることを特徴とする。
本発明のトナーは、上記の必須成分以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で必要に応じて、帯電防止剤などの公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0019】
図1は、本発明のトナーの粉砕途中における構造を示す模式断面図である。
本発明のトナーの製造において、粉砕工程中のトナー1は、結着樹脂2のマトリクス中に粉砕助剤樹脂3がドメイン構造をなして分散されているものと考えられる。なお、
図1において、後述する着色剤および離型剤、添加されていてもよい帯電制御剤などの他成分の記載を省略している。
【0020】
本発明のトナーによれば、トナー1の製造の粉砕工程において、結着樹脂2中に分散されている粉砕助剤樹脂3が粉砕の起点となり、粉砕性が上がる、つまり粉砕し易くなる。すなわち、分散されている粉砕助剤樹脂3が、粉砕の起点となって粉砕エネルギーが効率よく行き渡り、トナー性能を損なうことなく短い粉砕処理時間で所望の粒子径のトナーに粉砕することが可能となる。
図1における点線は、粉砕助剤樹脂3を起点として発生し得る粉砕ラインを示している。
その結果、ベルト定着装置における低温定着性および耐ホットオフセット性を両立させるために、結着樹脂として、相対的に分子量の大きな樹脂を多く含有させても、粉砕に要する時間が長くなることなく、トナーを製造することができる。
【0021】
結着樹脂として、相対的に分子量の大きな樹脂を多く含有させることで、ベルト定着装置を備えた画像形成装置において、比較的低い温度でトナー像を定着させた場合でも、トナーが軟化し始める温度域において、トナーの塑性変形(ずれによる変形)が生じ易い。これにより、トナー粒子内部の離型剤(ワックス)がトナー表面にしみ出し易くなり、そのしみ出したワックスが定着ベルト表面に十分に行き渡るため、記録紙(用紙)の剥離不良が起こり難い。
また、トナーが高温でも高い弾性を有することより、比較的高温でトナー像を定着させた場合でも、トナー層が高い弾性を保持し、定着後でもトナー層が定着ベルトに付着せず離れ易くなる。その結果、小さい剥離角でも剥離させることができる。
そして、本発明のトナーは、外添剤を加えて一成分現像剤として、また外添剤と共にキャリアを加えて二成分現像剤として用いることができる。
【0022】
本発明のトナーは、上記の理由から、5.5〜7.0μmの範囲の粒子径を有することが好ましい。より好ましいトナー粒子径は5.8〜6.7μmである。
以下に、トナーの主な構成成分およびそれを用いたトナーの製造方法について説明する。
【0023】
(粉砕助剤樹脂)
本発明のトナーに含まれる粉砕助剤樹脂は、後述する結着樹脂および離型剤を構成する樹脂とは異なる樹脂からなり、分子量40,000未満の比率が70%以上でかつ分子量500,000以上の比率が5〜10%であり、前記結着樹脂中に平均粒径0.2〜0.5μmの樹脂粒子の形態で分散されている。
【0024】
本発明において、粉砕助剤樹脂は、トナーの製造の粉砕工程において結着樹脂中に分散されて粉砕の起点となるように、つまり粉砕の起点が形成され易くなるようにする必要がある。このため、粉砕助剤樹脂は、結着樹脂と相溶化し難い、つまり相溶性が低い樹脂である必要がある。
粉砕助剤樹脂としては、例えば、一般にトナーの結着樹脂として用いられるポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂を用いることができるが、上記の目的を達成するためには、結着樹脂を構成する樹脂とは異なる種類の樹脂を選択することが望ましい。
【0025】
結着樹脂と同種の樹脂、例えばポリエステル系樹脂を用いる場合は、結着樹脂よりも重量平均分子量が大幅に小さい樹脂を粉砕助剤樹脂として選択することが好ましい。粉砕助剤樹脂が結着樹脂に近い重量平均分子量を有する場合には、結着樹脂と完全に相溶化してしまい、粉砕の起点が形成されずに粉砕性の向上に至らないことがある。
したがって、本発明においては、結着樹脂がポリエステル系樹脂であり、かつ粉砕助剤樹脂がポリスチレン系樹脂である組み合わせが好ましい。また、この組み合わせによれば、より短い粉砕処理時間でトナー性能を損なうことなく所望の粒子径のトナーを製造することが可能となる。
【0026】
ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレンなどのスチレン系単量体の単独重合体およびこれらの共重合体、ならびにスチレン系単量体と、それと共重合可能なビニル単量体との共重合体などが挙げられる。ビニル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリルなどの単官能単量体、ならびにジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの二官能単量体などが挙げられる。ここで、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートを意味する。
これらのポリスチレン系樹脂の中でも、スチレンとアクリレートとの共重合体(スチレンアクリル樹脂)が特に好ましい。
【0027】
また、本発明において、粉砕助剤樹脂は、離型剤の機能に影響を及ぼすことなく、トナーの製造の粉砕工程において相溶化せずに粉砕の起点を形成することができるように、離型剤を構成する樹脂とは異なる種類の樹脂を選択することが望ましい。
【0028】
本発明において、粉砕助剤樹脂は、分子量40,000未満の比率が70%以上でかつ分子量500,000以上の比率が5〜10%である。
粉砕助剤樹脂の分子量40,000未満の比率が70%未満では、粉砕助剤樹脂が結着樹脂中に適度(均一)に分散配置されたとしても、トナーの製造の粉砕工程において粉砕性の向上が期待できないことがある。
より好ましい分子量40,000未満の比率は、75%以上であり、その上限は、85%程度である。
【0029】
また、粉砕助剤樹脂の分子量500,000以上の比率が5%未満では、トナー粒子径を5.5〜7.0μmのように小さくした場合に過粉砕になり、3μmよりも小さい超微粉のトナー粒子が過多になり、印字中にトナー飛散が起こり易くなり、非画像部にトナーが付着する、所謂カブリ現象が起こり、安定した印字ができなくなることがある。
一方、粉砕助剤樹脂の分子量500,000以上の比率が10%を超えると、トナーの製造の粉砕工程において粉砕性の向上が期待できないことがある。
より好ましい粉砕助剤樹脂の分子量500,000以上の比率は、6〜8%である。
【0030】
本発明において、粉砕助剤樹脂は、結着樹脂中に平均粒径0.2〜0.5μmの樹脂粒子の形態で分散されていることが好ましい。
分散されている粉砕助剤樹脂の平均粒径が0.2μm未満では、トナーの製造の粉砕工程において粉砕助剤樹脂が粉砕の起点になり難く、粉砕性の向上が期待できないことがある。
一方、分散されている粉砕助剤樹脂の平均粒径が0.5μmを超えると、トナーの製造の粉砕工程において粉砕性が向上し過ぎて過粉砕となり、粒子径の小さな微粉が多く発生し、トナー飛散などのトナー性能を低下させることがある。
好ましい粉砕助剤樹脂の平均粒径は、0.25〜0.45μmである
【0031】
また、粉砕助剤樹脂としては、重量平均分子量を4000未満とすることが好ましい。これは、重量平均分子量が4000以上である場合には、たとえ上記の範囲で適度に分散配置されていたとしても、粉砕時の起点となりにくいためである。この場合、より好ましくは、重量平均分子量を3500以下とすることである。なお、粉砕助剤樹脂の重量平均分子量の下限は1000である
【0032】
粉砕助剤樹脂の添加量は特に限定されないが、トナー全体、つまりトナー母粒子中の2〜16重量%であるのが好ましく、より好ましくは5〜16重量%であり、特に好ましくは5〜12重量%である。
粉砕助剤樹脂の添加量を上記範囲とすることにより、長期の画像安定性を損なうことなく、短い粉砕処理時間で所望の粒子径のトナーにすることが可能となる。
【0033】
(結着樹脂)
本発明のトナーに含まれる結着樹脂としては、ポリエステル系樹脂を好適に用いることができる。
ポリエステル系樹脂は、通常、2価のアルコール成分および3価以上の多価アルコール成分から選ばれる1種以上と、2価のカルボン酸および3価以上の多価カルボン酸から選ばれる1種以上とを、公知の方法により縮重合反応もしくはエステル化、エステル交換反応させることにより得られる。
縮重合反応における条件は、モノマー成分の反応性により適宜設定すればよく、また重合体が好適な物性になった時点で反応を終了させればよい。例えば、反応温度は170〜250℃程度、反応圧力は5mmHg〜常圧程度である。
【0034】
2価のアルコール成分としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのジオール類;ビスフェノールA;ビスフェノールAのプロピレン付加物;ビスフェノールAのエチレン付加物;水素添加ビスフェノールAなどが挙げられる。
【0035】
3価以上の多価アルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、スクロース(蔗糖)、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンなどが挙げられる。
本発明のトナーにおいては、上記の2価のアルコール成分および3価以上の多価アルコール成分の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
2価のカルボン酸として、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸およびこれらの酸無水物もしくは低級アルキルエステルなどが挙げられる。
【0037】
3価以上の多価カルボン酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸およびこれらの酸無水物もしくは低級アルキルエステルなどが挙げられる。
本発明のトナーにおいては、上記の2価のカルボン酸および3価以上の多価カルボン酸の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
本発明のトナーにおいて、結着樹脂は、9,000〜90,000の範囲の重量平均分子量を有しかつその分子量分布における分子量100,000以上の割合が10〜30%であるのが好ましい。結着樹脂の重量平均分子量および分子量100,000以上の割合が上記の範囲であれば、ベルト定着装置における低温定着性および耐ホットオフセット性の両立効果がさらに発揮される。
結着樹脂の重量平均分子量が9,000未満では、定着高温側での剥離性が悪くなるおそれがあり、一方、結着樹脂の重量平均分子量が90,000を超えると、低温定着性が悪くなるおそれがある。
結着樹脂の重量平均分子量を20,000以上とすることで、定着高温側での剥離性をより一層確実に良好なものにでき、一方、結着樹脂の重量平均分子量を70,000以下とすることで、低温定着性をより一層確実に良好なものにできる。
したがって、より好ましい結着樹脂の重量平均分子量の範囲は、20,000〜70,000である。
【0039】
また、結着樹脂の分子量分布における分子量100,000以上の割合が10%未満では、定着高温側での剥離性が悪くなるおそれがある。一方、結着樹脂の分子量分布における分子量100,000以上の割合が30%を超えると、低温定着性が悪くなるおそれがある。この割合を20%以下とすることで、低温定着性をより一層確実に良好なものにできる。
したがって、より好ましい結着樹脂の分子量分布における分子量100,000以上の割合の範囲は、10〜20%である。
【0040】
トナー母粒子中の結着樹脂の配合量は、60〜90重量%であるのが好ましく、70〜
85重量%であるのが特に好ましい。
【0041】
(着色剤)
本発明のトナーに含まれる着色剤としては、当該技術分野で常用される有機系および無機系の様々な種類および色の顔料および染料を用いることができ、例えば、黒色、白色、黄色、橙色、赤色、紫色、青色および緑色の着色剤が挙げられる。
【0042】
黒色の着色剤としては、例えば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライトおよびマグネタイトなどが挙げられる
白色の着色剤としては、例えば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などが挙げられる。
【0043】
黄色の着色剤としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138などが挙げられる。
【0044】
橙色の着色剤としては、例えば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43などが挙げられる。
【0045】
赤色の着色剤としては、例えば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222などが挙げられる。
【0046】
紫色の着色剤としては、例えば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどが挙げられる。
青色の着色剤としては、例えば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60などが挙げられる。
緑色の着色剤としては、例えば、クロムグリーン、酸化クロム、ピクメントグリーンB、マイカライトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG、C.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
【0047】
本発明のトナーにおいては、上記の着色剤の1種を単独でまたは2種を組み合わせて用いることができ、それらの組み合わせは異色であっても同色であってもよい。
また、2種以上の着色剤を複合粒子化して用いてもよい。複合粒子は、例えば、2種以上の着色剤に適量の水、低級アルコールなどを添加し、ハイスピードミルなどの一般的な造粒機で造粒し、乾燥させることによって製造できる。さらに、結着樹脂中に着色剤を均一に分散させるために、マスターバッチ化して用いてもよい。複合粒子およびマスターバッチは、乾式混合の際にトナー組成物に混入される。
【0048】
着色剤の配合量は特に限定されないが、結着樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましく、0.2〜10重量部が特に好ましい。
着色剤の配合量が上記の範囲内であれば、トナーの各種物性を損なうことなしに、高い画像濃度を有し、画質品位の非常に良好な画像を形成することができる。
換算すれば、トナー母粒子中の着色剤の配合量は、2.5〜7.5重量%であるのが好ましく、3.0〜6.5重量%であるのが特に好ましい。
【0049】
(離型剤)
本発明のトナーに含まれる離型剤としては、当該技術分野で常用される離型剤を用いることができ、例えば、パラフィンワックスおよびマイクロクリスタリンワックスならびにそれらの誘導体などの石油系ワックス;フィッシャートロプシュワックス、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど)、低分子量ポリプロピリンワックスおよびポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックスなど)ならびにそれらの誘導体などの炭化水素系合成ワックス;カルナバワックス、ライスワックスおよびキャンデリラワックスならびにそれらの誘導体、木蝋などの植物系ワックス;蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス;脂肪酸アミドおよびフェノール脂肪酸エステルなどの油脂系合成ワックス;長鎖カルボン酸およびその誘導体;長鎖アルコールおよびその誘導体;シリコーン系重合体;高級脂肪酸などが挙げられる。
上記の誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、ビニル系モノマーとワックスとのグラフト変性物などが含まれる。
本発明においては、上記の離型剤の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
離型剤としては、融点70℃以下の炭化水素系離型剤が好ましい。
離型剤の融点が70℃以下であれば、ベルト定着装置における低温定着性および耐ホットオフセット性の両立効果がさらに発揮され、特に低温定着性において好ましい。その融点の下限は60℃程度である。
【0051】
離型剤の配合量は特に限定されないが、結着樹脂100重量部に対して0.2〜20重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましく、1.0〜8.0重量部が特に好ましい。
離型剤の配合量が上記の範囲内であれば、トナーの各種物性を損なうことなしに、高い画像濃度を有し、画質品位の非常に良好な画像を形成することができる。
換算すれば、トナー母粒子中の離型剤の配合量は、2.0〜7.0重量%であるのが好ましく、3.0〜5.0重量%であるのが特に好ましい。
【0052】
(帯電制御剤)
本発明のトナーに含まれていてもよい帯電制御剤としては、当該技術分野で常用される正電荷制御用および負電荷制御用の電荷制御剤を用いることができる。
【0053】
正電荷制御用の電荷制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。
負電荷制御用の電荷制御剤としては、例えば、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸などが挙げられる。
本発明のトナーにおいては、上記の電荷制御剤の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
帯電制御剤の配合量は特に限定されないが、結着樹脂100重量部に対して0.5〜3重量部が好ましく、1〜2重量部が特に好ましい。
帯電制御剤の配合量が上記の範囲内であれば、トナーの各種物性を損なうことなしに、高い画像濃度を有し、画質品位の非常に良好な画像を形成することができる。
換算すれば、トナー母粒子中の帯電制御剤の配合量は、0.5〜2.0重量%であるのが好ましく、0.7〜1.5重量%であるのが特に好ましい。
【0055】
(トナーの製造方法)
本発明のトナーの製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができるが、湿式法と比較して工程数が少なく、設備コストが掛からないなどの点で湿式法が好ましく、中でも粉砕法が特に好ましい。
以下、本実施形態でもある粉砕法によるトナー製造方法について説明する。
粉砕法によるトナーの製造では、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤および粉砕助剤樹脂、ならびに必要に応じて配合される帯電制御剤などの公知の添加剤を含むトナー材料を混合・溶融混練して混練物を得、次いで混練物を冷却固化・粉砕し、その後必要に応じて分級などの粒度調整を行い、トナー粒子を得る。
【0056】
混合は乾式が好ましく、混合機としては、当該技術分野で常用される公知の装置を使用でき、例えば、ヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などの混合装置が挙げられる。
【0057】
混練機としては、当該技術分野で常用される公知の装置を使用でき、例えば、二軸押出機、三本ロール、ラボブラストミルなどの一般的な混練機が挙げられる。具体的には、例えば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87、PCM−30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)などの1軸または2軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式の混練機が挙げられ、これらの中でも、オープンロール方式の混練機は、混練時のシェアが強く顔料などの着色剤および離型剤などを高分散できる点で好ましい。
【0058】
粉砕機としては、当該技術分野で常用される公知の装置を使用でき、例えば、超音速ジェット気流を利用して粉砕するジェット式粉砕機、高速で回転する回転子(ロータ)と固定子(ライナ)との間に形成される空間に固化物を導入して粉砕する衝撃式粉砕機が挙げられる。
【0059】
分級には、当該技術分野で常用される公知の装置、特に旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)のような遠心力および風力により過粉砕トナー粒子を除去できる分級機を使用できる。
【0060】
得られるトナー粒子の体積平均粒径は、3.0〜8.0μmであるのが好ましい。
トナー粒子の体積平均粒径が上記の範囲内であれば、高精細な画像を長期にわたって安定して形成することができる。トナー粒子の体積平均粒径が3μm未満では、トナー粒子の粒径が小さくなり過ぎ、高帯電化および低流動化が起こり、感光体にトナーを安定して供給することができなくなり、地肌かぶりおよび画像濃度の低下などが発生するおそれがある。一方、トナー粒子の平均粒径が8μmを超えると、トナー粒子の粒径が大きくなり過ぎ、高精細な画像が得られないことがある。
より好ましいトナー粒子の体積平均粒径は、5.8〜6.7μmである。
【0061】
本発明のトナーは、外添剤をさらに含む一成分系現像剤、または外添剤およびキャリアをさらに二成分系現像剤として用いられる。
なお、外添剤を添加する前のトナーを「トナー母粒子」ともいう。
【0062】
(外添剤)
本発明のトナーには、その搬送性および帯電性ならびにトナーを二成分現像剤にする場合のキャリアとの撹拌性などを向上させるために外添剤が添加される。
外添剤としては、当該技術分野で常用される外添剤を用いることができ、例えば、シリカ、酸化チタンなどが挙げられ、シリコーン樹脂、シランカップリング剤などにより表面処理(疎水化処理)されているものが好ましい。
外添剤の配合量は特に限定されないが、トナー母粒子100重量部に対して1〜10重量部が好ましく、2〜5重量部がより好ましい。
【0063】
(キャリア)
本発明のトナーは、一成分現像剤、二成分現像剤のいずれの形態でも使用することができ、二成分現像剤として使用する場合には、外添剤以外にさらにキャリアを配合する。
キャリアとしては、当該技術分野で常用されるキャリアを用いることができ、例えば、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロムなどからなる単独または複合フェライトおよびキャリア芯粒子を公知の被覆物質で表面被覆したものなどが挙げられる。
キャリアの平均粒径は、10〜100μmが好ましく、20〜50μmがより好ましい。
キャリアの配合量は特に限定されないが、トナー母粒子100重量部に対して4〜15重量部が好ましく、5〜10重量部がより好ましい。
【0064】
(2)ベルト定着装置および画像形成装置
本発明の画像形成装置は、感光体と、該感光体上に形成された静電潜像を本発明のトナーで顕像化してトナー像を形成する現像装置と、前記トナー像を転写媒体に転写する転写装置と、前記転写媒体上のトナー像を定着するベルト定着装置とを備えることを特徴とする。
本発明の画像形成装置およびそれに搭載されるベルト定着装置について、図面を用いて説明する。
図2は、本発明のトナーを用いる画像形成装置の構成例を示す概略断面図であり、
図3は、
図2の画像形成装置に搭載されるベルト定着装置の構成例を示す模式断面図である。
【0065】
画像形成装置100は、電子写真方式のプリンタであり、4つの可視像形成ユニット(イエロー可視像形成ユニット110Y、マゼンタ可視像形成ユニット110M、シアン可視像形成ユニット110Cおよびブラック可視像形成ユニット110B:これらを合わせて「可視像形成ユニット110」ともいう)を記録紙搬送路に沿って配列した所謂タンデム式のプリンタである。
具体的には、可視像形成ユニット110に記録紙P(転写媒体、記録媒体)を供給する供給トレイ120と定着装置40との間に形成される記録紙Pの搬送路に沿って4つの可視像形成ユニット110が配設されている。そして、記録紙搬送手段130である無端状の搬送ベルト133によって搬送される記録紙Pに対して各可視像形成ユニット110が各色トナー像を重ねて転写し、その後、定着装置40が記録紙Pに対してトナー像を定着し、これによりフルカラー画像が形成される。
【0066】
搬送ベルト133は、駆動ローラ131とアイドリングローラ132とに架けられており、所定の周速度(150〜400mm/秒程度、例えば220mm/秒)に制御されて周回する。記録紙Pは、周回している搬送ベルト130に静電吸着することによって搬送される。
【0067】
各可視像形成ユニット110においては、感光体ドラム111が備えられ、この感光体ドラム111の周囲に、帯電ローラ112、露光手段(レーザ光照射手段)113、現像器114、転写ローラ115、クリーナー116が配置されている。
【0068】
可視像形成ユニット110Yの現像器Yにはイエロートナーを含む現像剤が収容され、可視像形成ユニット110Mの現像器Mにはマゼンタトナーを含む現像剤が収容され、可視像形成ユニット110Cの現像器Cにはシアントナーを含む現像剤が収容され、可視像形成ユニット110Bの現像器Bにはブラックトナーを含む現像剤が収容されている。
なお、現像剤は、一成分現像剤、二成分現像剤のいずれであってもよい。
また、一成分現像剤に含まれるトナーは、非磁性、磁性のいずれであってもよく、二成分現像剤に含まれるキャリアは、非磁性、磁性のいずれであってもよい。
【0069】
そして、各可視像形成ユニット110において、記録紙P上にトナー像が転写されるが、この転写の手順は以下の通りである。まず、帯電ローラ112によって感光体ドラム111表面を一様に帯電し、その後、レーザ光照射手段113によって画像情報に応じて感光体ドラム111表面をレーザで露光して静電潜像を形成する。さらにその後、感光体ドラム111表面の静電潜像に対して現像器114によってトナーが供給される。これにより、前記静電潜像が現像(顕像化)されてトナー画像が生成される。そして、感光体ドラム111表面に生成されたトナー画像は、このトナー画像のトナーとは逆極性のバイアス電圧が印加された転写ローラ115によって、搬送ベルト(搬送手段)130にて搬送される記録紙Pに順次転写されるようになっている。
【0070】
その後、記録紙Pは、搬送ベルト133の湾曲箇所(駆動ローラ131に巻き付いている部分)において搬送ベルト133から剥離し、定着装置40に搬送される。さらに、定着装置40において、所定の温度に加熱された定着ベルトによって記録紙Pに適度な温度と圧力とが与えられる。これにより、記録紙Pのトナーは溶解し、トナーが記録紙Pに定着し、記録紙P上に堅牢な画像が形成される。
【0071】
定着装置(ベルト定着装置)40は、
図3に示すように、加熱ローラ41と、加熱ローラ41との関係で軸方向が互いに平行になるように配されている剥離ローラ42と、加熱ローラ41および剥離ローラ42に架けられており、これらローラが回転することによって周回するように駆動する無端状の定着ベルト43と、加熱ローラ41との関係で軸方向が互いに平行になるように配されている加圧ローラ44とを備えている。なお、
図3に記載されているN方向は、定着ベルト43の周回方向を示したものである。
【0072】
加熱ローラ41および剥離ローラ42は、定着ベルト43の内周側の表面(以下「内周面」という)に巻き付かれるような位置に配されている。また、加圧ローラ44は、定着ベルト43を挟むように所定の荷重(50〜300N程度、例えば200N)にて加熱ローラ41に押圧されている。そして、加圧ローラ44の外周においては、加熱ローラ41に押圧されている押圧部分とこの押圧部分よりもN方向下流側の一部とが定着ベルト43の外周側の表面(以下「外周面」という)に巻き付かれている。
【0073】
なお、加圧ローラ44の外周における押圧部分を「実ニップ領域」と称し、加圧ローラ44の外周において押圧部分よりも下流側にて定着ベルト43の外周面に巻き付かれている領域を「仮想ニップ領域」と称する。実ニップ領域のN方向の幅は、5〜20mm程度(例えば5mm)であり、仮想ニップ領域のN方向の幅は8〜30mm程度(例えば3mm)である。
【0074】
定着装置40においては、記録紙Pが実ニップ領域と仮想ニップ領域とを順に通過することによって、記録紙P上のトナー画像が記録紙P上に定着するようになっている。なお、記録紙Pが実ニップ領域および仮想ニップ領域を通過する時、定着ベルト43の外周面は記録紙Pのトナー画像形成面に接触し、加圧ローラ44の外周は記録紙Pにおけるトナー画像形成面とは反対の面に接触する。
【0075】
加熱ローラ41は、所定の温度(150〜200℃程度、例えば190℃)になるように加熱され、定着ベルト43の内周面から定着ベルト43に熱を伝導するためのものである。なお、加熱ローラ41から熱が伝導された定着ベルト43は、実ニップ領域および仮想ニップ領域を通過する記録紙Pを加熱する。
【0076】
加熱ローラ41は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅などの金属またはそれらの合金(例えば鉄)からなり、その形状は、厚み0.2〜1.0mm程度(例えば0.3mm)、直径20〜50mm程度(例えば30mm)の円筒状部材(芯金)である。
また、円筒状芯金の外周に弾性層を形成したものを加熱ローラ41としてもよい。
弾性層は、シリコーンゴムなどからなり、その厚みは0.5〜2.0mm程度(例えば5mm)である。
【0077】
また、加熱ローラ41の内側には、加熱ローラ41を加熱するヒータランプ(図示せず)が配置されている。ヒータランプは、制御回路(図示せず)によって通電されると発光し、赤外線を放射する。これにより、加熱ローラ41の内周側の面が赤外線を吸収して加熱され、加熱ローラ41全体が加熱される。
【0078】
加圧ローラ44は、例えば、
図3に示されるように、内側から順に芯金44a、弾性層44b、離型層44cが形成されているローラであり、直径20〜50mm程度(例えば30mm)である。また、加圧ローラ44の芯金44aの内側には加圧ローラ44を加熱するためのヒータランプ(図示せず)が備えられている。
【0079】
芯金44aは、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅などの金属またはそれらの合金(例えば鉄)からなり、その形状は、厚み1.0〜5.0mm程度(例えば3mm)の円筒状部材である。
弾性層44bは、シリコーンゴムなどからなり、その厚みは1.0〜5.0mm程度(例えば5mm)である。
離型層44cは、加圧ローラ44の表層(外周の表面に露出されている層)に相当し、PFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、PFAとPTFEとの共重合体などのフッ素樹脂からなるチューブであり、その厚みは20〜100μm程度(例えば50μm)である。
【0080】
剥離ローラ42は、実ニップ領域(実ニップ部)および仮想ニップ領域(仮想ニップ部)を通った記録紙Pを定着ベルト43から剥離するために備えられたローラである。つまり、定着装置40に剥離ローラ42が備えられていることによって、実ニップ領域および仮想ニップ領域よりも記録紙搬送方向下流側において定着ベルト43は記録紙搬送方向から離れるように曲げられる。このような構成によって記録紙Pは定着ベルト43から剥離するのである。
剥離ローラ42は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅などの金属またはそれらの合金(例えば鉄)からなり、その形状は、厚み0.3〜2.0mm程度(例えば0.5mm)、直径10〜30mm程度(例えば14mm)の円筒状部材(芯金)である。
【0081】
図4は、
図2の画像形成装置に搭載される別のベルト定着装置の構成例を示す模式断面図である。
この定着装置(ベルト定着装置)60は、
図4に示すように、定着ローラ(Siスポンジ製)61と、定着ローラ61との関係で軸方向が互いに平行になるように配されている加熱ローラ62と、定着ローラ61および加熱ローラ62に架けられており、これらローラが回転することによって周回するように駆動する無端状の定着ベルト63と、定着ローラ61との関係で軸方向が互いに平行になるように配されている加圧ローラ(Siソリッド製)64とを備えている。
なお、
図4におけるN方向は定着ベルト63の周回方向を示し、角度αは転写ニップを通過した記録紙Pと定着ベルト63とが成す角度、すなわち剥離角を示す。
【0082】
(3)画像形成方法
本発明の画像形成方法は、感光体上の静電潜像を本発明のトナーで顕像化し、得られたトナー像を転写媒体に転写した後、ベルト定着装置を用いて前記トナー像を定着することを特徴とする。
【実施例】
【0083】
以下に実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
実施例および比較例において、各物性値を以下に示す方法により測定した。
【0084】
[結着樹脂および粉砕助剤樹脂の軟化点Tm(℃)]
流動特性評価装置(株式会社島津製作所製製、フローテスター、型番:CFT−100C)を用いて、試料1gを昇温速度6℃/分で加熱しながら、荷重20kgf/cm
2(9.8×10
5Pa)を与え、ダイ(ノズル口径1mm、長さ1mm)から試料を流出させる。試料の半分量が流出したときの温度を軟化点Tm(℃)とする。
【0085】
[結着樹脂および粉砕助剤樹脂のガラス転移温度Tg(℃)]
示差走査熱量計(セイコー電子工業株式会社製、(現 セイコーインスツル株式会社)製、型番:DSC220)を用いて、日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じて、試料1gを昇温速度10℃/分で加熱してDSC曲線を測定する。得られたDSC曲線において、ガラス転移に相当する吸熱ピークの高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度Tg(℃)とする。
【0086】
[離型剤の融点mp(℃)]
示差走査熱量計(セイコー電子工業株式会社製、(現 セイコーインスツル株式会社)製、型番:DSC220)を用いて、試料1gを温度20℃から昇温速度10℃/分で200℃まで加熱し、次いで200℃から20℃に急冷させる操作を2回繰返し、DSC曲線を測定する。2回目の操作で測定したDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの温度を離型剤の融点mp(℃)とする。
【0087】
[トナー母粒子の体積平均粒径(μm)]
電解液(ベックマン・コールター株式会社製、商品名:ISOTON−II)50mlに、試料20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlを加え、超音波分散器(アズワン株式会社製、卓上型2周波超音波洗浄器、型式:VS−D100)を用いて周波数20kHzで3分間分散処理して測定用試料を得る。得られた測定用試料を、粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製、型式:Multisizer3)を用いて、アパーチャ径:100μm、測定粒子数:50000カウントの条件下で測定し、試料粒子の体積粒度分布から体積平均粒子径(μm)を求める。
また、粒子径3μm未満の試料粒子の個数割合(pop%)を求める。
【0088】
[粉砕助剤樹脂の分散径(μm)]
トナーをエポキシ樹脂に包埋し、ウルトラミクロトーム(Reichert社製、型式:ウルトラカットN)で面出しを行い、試料を得る。得られた試料を、走査透過電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型式:S−4800)で観察する。得られた画像データから無作為に200〜300個の離型剤粒子を抽出し、画像解析ソフト(旭化成エンジニアリング株式会社製、製品名:A像くん)の画像解析により粉砕助剤樹脂の円相当の平均分散径(μm)を求める。
【0089】
[トナー母粒子の製造工程における粉砕性]
ジェット式粉砕機(日本コークス株式会社製、型式:CGS−16)に、粗粉砕後のトナーフレークを投入して微粉砕し、分級後の粒度が7.0μmになるような粒度(6.3±0.3μm)に条件を設定し、設定後に1時間運転した時の粗粉砕フレークの供給量で判断する。
得られた結果から、次の基準により粉砕性を評価する。
◎:非常に良好(粗粉砕フレークの供給量が2000g以上)
○:良好 (粗粉砕フレークの供給量が1500g以上2000g未満)
△:やや不良 (粗粉砕フレークの供給量が1000g以上1500g未満)
×:不良 (粗粉砕フレークの供給量が500g未満)
【0090】
(実施例1)
結着樹脂:ポリエステル系樹脂A(Tg:62℃、Tm:115℃、Mw65000)
78重量%
着色剤:C.I.Pigment Blue 15:3(DIC製) 4重量%
離型剤:パラフィンワックス(mp:69℃、日本精▲蝋▼株式会社製、商品名:HNP11) 7重量%
帯電制御剤:サリチル酸系化合物(オリエント化学工業株式会社、商品名:ボントロンE84) 1重量%
粉砕助剤樹脂:ポリスチレン系樹脂A(Tg:60℃、Tm:130℃、分子量40,000未満の割合75%、分子量500,000以上の割合8%) 10重量%
【0091】
ヘンシェルミキサ(日本コークス工業株式会社製、型式:FM20C)を用いて、上記のトナー原料を3分間、前混合した後、オープンロール型連続混練機(日本コークス工業株式会社製、型式:MOS100−400)を用いて溶融混練物を得た。
得られた溶融混練物を、冷却ベルトで冷却させた後、φ2mmのスクリーンを有するスピードミルを用いて粗粉砕し、次いでジェット式粉砕機(日本コークス株式会社製、型式:CGS−16)を用いて微粉砕し、さらにエルボージェット分級機(日鉄鉱業株式会社製、型式:EJ−LABO)を用いて分級して、トナー母粒子を約2000g得た。粉砕助剤樹脂の分散径(平均粒径)は0.29μmであった。
【0092】
(実施例2)
粉砕助剤樹脂として、ポリスチレン系樹脂Aの代わりに、ポリスチレン系樹脂B(Tg:61℃、Tm:133℃、分子量40,000未満の割合80%
、分子量500,000以上の割合10%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、トナー母粒子を得た。粉砕助剤樹脂の分散径は0.28μmであった。
【0093】
(実施例3)
結着樹脂のポリエステル系樹脂A78重量%を83重量%に、粉砕助剤樹脂のポリスチレン系樹脂A10重量%を5重量%にしたこと以外は実施例1と同様にして、トナー母粒子を得た。粉砕助剤樹脂の分散径は0.21μmであった。
【0094】
(実施例4)
結着樹脂のポリエステル系樹脂A78重量%を72重量%に、粉砕助剤樹脂のポリスチレン系樹脂A10重量%を16重量%にしたこと以外は実施例1と同様にして、トナー母粒子を得た。粉砕助剤樹脂の分散径は0.49μmであった。
【0095】
(実施例5)
粉砕助剤樹脂として、ポリスチレン系樹脂Aの代わりに、ポリスチレン系樹脂C(Tg:59℃、Tm:125℃、分子量40,000未満の割合80%
、分子量500,000以上の割合5%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、トナー母粒子を得た。粉砕助剤樹脂の分散径は0.31μmであった。
【0096】
(比較例1)
結着樹脂のポリエステル系樹脂A78重量%を85重量%に、粉砕助剤樹脂のポリスチレン系樹脂A10重量%を3重量%にしたこと以外は実施例1と同様にして、トナー母粒子を得た。粉砕助剤樹脂の分散径は0.19μmであった。
【0097】
(比較例2)
結着樹脂のポリエステル系樹脂A78重量%を71重量%に、粉砕助剤樹脂のポリスチレン系樹脂A10重量%を17重量%にしたこと以外は実施例1と同様にして、トナー母粒子を得た。粉砕助剤樹脂の分散径は0.51μmであった。
【0098】
(比較例3)
粉砕助剤樹脂として、ポリスチレン系樹脂Aの代わりに、ポリエステル系樹脂B(Tg:63℃、Tm:132℃、分子量40,000未満の割合80%
、分子量500,000以上の割合5%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、トナー母粒子を得た。粉砕助剤樹脂の分散径は0.10μmであった。
【0099】
(比較例4)
粉砕助剤樹脂として、ポリスチレン系樹脂Aの代わりに、ポリスチレン系樹脂D(Tg:59℃、Tm:134℃、分子量40,000未満の割合68%
、分子量500,000以上の割合11%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、トナー母粒子を得た。粉砕助剤樹脂の分散径は0.32μmであった。
【0100】
(比較例5)
粉砕助剤樹脂として、ポリスチレン系樹脂Aの代わりに、ポリスチレン系樹脂E(Tg:58℃、Tm:127℃、分子量40,000未満の割合85%
、分子量500,000以上の割合3%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、トナー母粒子を得た。粉砕助剤樹脂の分散径は0.35μmであった。
【0101】
(比較例6)
粉砕助剤樹脂を添加しないこと以外は実施例1と同様にして、トナー母粒子を得た。
【0102】
(二成分現像剤の製造)
実施例1〜5および比較例1〜3において得られたトナー(トナー母粒子)100重量部のそれぞれに、シランカップリング剤で疎水化処理された平均一次粒径20nmのシリカ粒子0.7重量部および酸化チタン1重量部を混合して外添トナーを得た。さらに得られた外添トナーと、体積平均粒径60μmのフェライトコアキャリアとを、二成分現像剤全量に対する外添トナーの濃度が7%になるように調整して混合し、トナー濃度7%の二成分現像剤を得た。
【0103】
[二成分現像剤の評価]
得られた各二成分現像剤を用いて画像形成を行い、以下に示すように、それらの定着性、画像安定性および画像カブリを評価し、さらにそれらに基づいて総合評価を行なった。
得られた結果を、各トナー母粒子の製造に用いた粉砕助剤樹脂の物性および製造工程における粉砕性と共に表1に示す。
【0104】
[定着性]
評価用に改造した市販複写機(シャープ株式会社製、型式:MX−3600FN)を用いて、上記二成分現像剤による定着画像を作製した。
まず、記録紙(シャープ株式会社製、PPC用紙、型式:SF−4AM3)に、べた画像部(縦20mm、横50mmの長方形)を含むサンプル画像を未定着画像として形成した。この際、べた画像部におけるトナーの記録用紙への付着量が0.5mg/cm
2となるよう調整した。
【0105】
次に、
図4に示すベルト定着装置を用いて定着画像を作製した。
定着プロセス速度を150mm/秒とし、定着ベルトの温度を130℃から5℃刻みで上げ、低温オフセットおよび高温オフセットが起こらない温度域を求め、その温度幅を定着非オフセット域とした。
「低温オフセット」および「高温オフセット」とは、定着時にトナーが記録紙に定着せずに、定着ベルトに付着したまま定着ベルトが一周した後に記録紙に付着することと定義する。
【0106】
得られた結果から、次式により定着非オフセット域を求めた。
定着非オフセット域(℃)=定着上限温度(℃)−定着下限温度(℃)
得られた結果から、次の基準により定着性を評価した。
◎:非常に良好(定着非オフセット域が50℃以上)
○:良好 (定着非オフセット域が35℃以上50℃未満)
△:やや不良 (定着非オフセット域が25℃以上35℃未満)
×:不良 (定着非オフセット域が25℃未満)
【0107】
[画像安定性]
市販複写機(シャープ株式会社製、型式:MX−6540FN)に、上記二成分現像剤を充填し、感光体上へのトナー付着量が0.4mg/cm
2となるよう調節して印字したときの、初期の画像濃度(ID
0)および10,000(以下「10k」と記す)枚印字後の画像濃度(ID
10k)をそれぞれ測色色差計(X−Rite社製、型式:X−Rite938)を用いて測定した。
【0108】
得られた結果から、次式により画像安定率を求めた。
画像安定率(%)=(ID
10k/ID
0)×100
得られた結果から、次の基準により画像安定性を評価した。
◎:非常に良好(画像安定率が95%以上)
○:良好 (像安定率が90%以上95%未満)
△:やや悪い (画像安定率が80%以上90%未満)
×:不良 (画像安定率が80%未満)
【0109】
[画像カブリ]
分光式色差計(日本電色工業株式会社製、型式:SZ90型)を用いて、画像安定性評価で印字された画像の非画像部の白色度(三刺激値X、Y、Z)を測定した。
得られた結果から、次の基準により画像カブリを評価した。
◎:非常に良好(Zの値が0.5以下)
○:良好 (Zの値が0.5を超え0.7以下)
△:やや不良 (Zの値が0.7を超え1.0以下)
×:不良 (Zの値が1.0を超える)
【0110】
[総合評価]
トナー母粒子の製造工程における粉砕性、ならびに二成分現像剤の定着性および画像安定性の結果から、次の基準で総合評価を行った。
◎:非常に良好(いずれの評価も◎である)
○:良好 (いずれの評価も◎または○である)
△:やや悪い (いずれかの評価が△であるが、×はない)
×:不良 (いずれかの評価が×である、もしくはいずれも△である)
【0111】
【表1】
【0112】
表1の結果から、実施例1〜5のトナーを用いた二成分現像剤では、ベルト定着装置における低温定着性および耐ホットオフセット性を両立するために結着樹脂として、相対的に分子量の大きい樹脂を多く含有する樹脂を用いても短時間で製造できかつトナー粒子径を5.5〜7.0μmに小さくしても、トナー飛散、カブリが生じることない安定した印字ができ、一方、比較例1〜6のトナーを用いた二成分現像剤では、それらができないことがわかる。
具体的には、粉砕助剤樹脂の分散径(平均粒径)が0.2〜0.5μmの範囲外にある比較例1〜3のトナーを用いた二成分現像剤、分子量40,000未満の割合が70%未満であるか、または分子量500,000以上の割合が5〜10%の範囲外にある比較例4および5のトナーを用いた二成分現像剤では、上記のような本発明の効果が得られないことがわかる。