【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 固体酸化物形燃料電池システム要素技術開発 実用性向上のための技術開発 超効率運転のための高圧運転技術の共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る燃料電池モジュールの各種実施形態及び各種変形例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
「第一実施形態」
まず、本発明に係る燃料電池モジュールの第一実施形態について、
図1〜
図7を参照して説明する。
【0021】
本実施形態の燃料電池モジュールMは、
図1に示すように、容器中心軸Avを中心として容器中心軸方向Dvに延びる円筒形状の圧力容器10と、この圧力容器10内に配置されている複数のカートリッジ201及び複数の各種配管300と、を備えている。
【0022】
配管300としては、燃料ガス供給源1からの燃料ガスGfを圧力容器10内の各カートリッジ201に導く燃料ガス供給配管310と、各カートリッジ201を通過した燃料ガスGfを圧力容器10外に導く燃料ガス排出配管320と、酸化剤ガス供給源2からの酸化剤ガスGoを圧力容器10内の各カートリッジ201に導く酸化剤ガス供給配管330と、各カートリッジ201を通過した酸化剤ガスGoを圧力容器10外に導く酸化剤ガス排出配管340とがある。なお、燃料ガス排出配管320の上流側や下流側(例えば、圧力容器10の外部)には、調整弁350が設けられている。また、酸化剤ガス供給配管330の上流側や下流側(例えば、圧力容器10の外部)にも、調整弁360が設けられている。
【0023】
燃料ガスGfとしては、例えば、水素、一酸化炭素、メタン等の炭化水素系ガス、石炭等の炭素質原料のガス化により得られた炭化水素を含むガス、又は、これらの2以上の成分を含むガス等が利用される。また、酸化剤ガスGoとしては、例えば、酸素を15〜30vol%含むガス等が利用される。代表的な酸化剤ガスGoとしては、空気であるが、燃焼排気ガスと空気との混合ガスや、酸素と空気との混合ガスを利用してもよい。
【0024】
圧力容器10は、例えば、内部の圧力が0.1MPa〜約5MPa、内部の温度が大気温度〜約550℃で運用される。このため、この圧力容器10は、耐圧性を考慮して、円筒形状の成し、その容器中心軸Avが上下方向に延びるよう設置されている。また、この圧力容器10は、耐圧性と共に、酸化剤ガスGo中に含まれる酸素などの酸化剤に対する耐食性も要求されるため、例えば、SUS304などのステンレス系材で形成されている。
【0025】
円柱形状の複数のカートリッジ201は、いずれも、カートリッジ中心軸Acが圧力容器10の容器中心軸Avと平行になるよう、圧力容器10内に配置されている。つまり、本実施形態では、カートリッジ中心軸Acは、容器中心軸Avと同様、上下方向に延びている。本実施形態において、所定数のカートリッジ201は、容器中心軸方向Dv(上下方向)における位置が互いに同じ位置になり、且つ容器中心軸Avに対して垂直な仮想面を含む方向で互いに隣接するよう配置されて、カートリッジ群200を構成している。本実施形態の燃料電池モジュールMは、このカートリッジ群200を2つ備えている。2つのカートリッジ群200(200a,200b)は、圧力容器10内で容器中心軸方向Dvに並んでいる。
【0026】
カートリッジ201は、容器中心軸Avと平行なカートリッジ中心軸Acに沿う複数のセルスタックを有して構成されている。
図2に示すように、電池セル集合体であるセルスタック101は、円筒形状(又は管形状)の基体管103と、基体管103の外周面に形成されている複数の燃料電池セル105と、隣り合う燃料電池セル105の間に形成されているインターコネクタ107とを有する。燃料電池セル105は、
図3に示すように、燃料極112と固体電解質111と空気極113とが積層して形成されている。セルスタック101は、さらに、基体管103の外周面に形成されている複数の燃料電池セル105のうちで、基体管103の軸方向において最も端に形成されている燃料電池セル105の空気極113に、インターコネクタ107を介して電気的に接続されているリード膜115を有する。
【0027】
本実施形態では、この円筒形状(又は管形状)のセルスタック101の内周側に燃料ガスGfが通り、セルスタック101の外周側に酸化剤ガスGoが通る。
【0028】
基体管103は、例えば、CaO安定化ZrO
2(CSZ)、Y
2O
3安定化ZrO
2(YSZ)、MgAl
2O
4等のいずれかで形成されている多孔質体である。この基体管103は、燃料電池セル105とインターコネクタ107とリード膜115とを支持する役目を担っている。さらに、この基体管103は、内周側に供給された燃料ガスGfを基体管103の細孔を介して基体管103の外周面に形成される燃料電池セル105に拡散させる役目も担っている。
【0029】
燃料極112は、例えば、Ni/YSZ等、Niとジルコニア系電解質材料との複合材の酸化物で形成されている。この場合、燃料極112は、燃料極112の成分であるNiが燃料ガスGfに対して触媒として作用する。この触媒としての作用は、基体管103を介して供給された燃料ガスGf中に、例えば、メタン(CH
4)と水蒸気とが含まれている場合、これら相互を反応させ、水素(H
2)と一酸化炭素(CO)に改質する作用である。
【0030】
空気極113は、例えば、LaSrMnO
3系酸化物、又はLaCoO
3系酸化物で形成されている。この空気極113は、固体電解質111との界面付近において、供給される酸化剤ガスGo中の酸素を解離させて酸素イオン(O
2−)を生成する。
【0031】
固体電解質111は、例えば、主としてYSZで形成されている。このYSZは、ガスを通しにくい気密性と、高温下での高い酸素イオン導電性とを有している。この固体電解質111は、空気極113で生成された酸素イオン(O
2−)を燃料極112に移動させる。
【0032】
前述の燃料極112では、固体電解質111との界面付近において、改質により得られた水素(H
2)及び一酸化炭素(CO)と、固体電解質111から供給された酸素イオン(O
2−)とが反応し、水(H
2O)及び二酸化炭素(CO
2)が生成される。この燃料電池セル105では、この反応過程で酸素イオンから電子が放出されて、発電が行われる。
【0033】
インターコネクタ107は、例えば、SrTiO
3系などのM
1−xL
xTiO
3(Mはアルカリ土類金属元素、Lはランタノイド元素)で表される導電性ペロブスカイト型酸化物で形成されている。このインターコネクタ107は、燃料ガスGfと酸化剤ガスGoとが混合しないように緻密な膜で、酸化雰囲気と還元雰囲気との両雰囲気下で安定した電気導電性を有する。このインターコネクタ107は、隣り合う燃料電池セル105において、一方の燃料電池セル105の空気極113と他方の燃料電池セル105の燃料極112とを電気的に接続する。つまり、このインターコネクタ107は、隣り合う燃料電池セル105同士を電気的に直列接続する。
【0034】
リード膜115は、電子伝導性を有すること、及びセルスタック101を構成する他の材料との熱膨張係数が近いことが必要であることから、例えば、Ni/YSZ等のNiとジルコニア系電解質材料との複合材で形成されている。このリード膜115は、インターコネクタ107により電気的に直列接続されている複数の燃料電池セル105で発電された直流電力をセルスタック101の端部付近まで導出する役目を担っている。
【0035】
カートリッジ201は、
図2に示すように、複数のセルスタック101と、セルスタック101の束の下端部を覆う第一カートリッジヘッダ(燃料ガス供給ヘッダ)220aと、複数のセルスタック101の束の上端部を覆う第二カートリッジヘッダ(燃料ガス排出ヘッダ)220bと、を有している。複数のセルスタック101は、互いに平行で且つその長手方向における互いの位置が揃って、全体として円柱形状を成している。また、第一カートリッジヘッダ220a及び第二カートリッジヘッダ220bは、円柱形状を成している複数のセルスタック101の束の外径よりわずかに大きな外径の円筒形状を成している。このため、カートリッジ201は、全体として、セルスタック101の長手方向に長い円柱形状を成している。
【0036】
第一カートリッジヘッダ220a及び第二カートリッジヘッダ220bは、いずれも、複数のセルスタック101の束の端部が開口228から内部に入り込む円筒形状のケーシング229a,229bと、ケーシング229a,229bの開口228を塞ぐ断熱体227a,227bと、ケーシング229a,229bの内部空間をセルスタック101の長手方向で2つの空間に仕切る管板225a,225bと、を有している。管板225a,225b等は、高温耐久性のある金属材料で形成されている。管板225a,225b及び断熱体227a,227bには、複数のセルスタック101の端部のそれぞれが挿通可能な貫通孔が形成されている。管板225a,225bは、その貫通孔に挿通されたセルスタック101の端部をシール部材又は接着剤237を介して支持する。このため、この管板225a,225bには貫通孔が形成されているものの、この管板225a,225bを基準にしてケーシング229a,229b内の一方の空間に対する他方の空間の気密性が確保されている。断熱体227a,227bの貫通孔の内径は、ここに挿通されるセルスタック101の外径よりも大きく形成されている。つまり、断熱体227a,227bの貫通孔の内周面と、この貫通孔に挿通されたセルスタック101の外周面との間には隙間235a,235bが存在する。
【0037】
第一カートリッジヘッダ220aのケーシング229aと管板225aとで形成されている空間は、燃料ガスGfが供給される燃料ガス供給室217を形成している。このケーシング229aには、燃料ガス供給配管310からの燃料ガスGfを燃料ガス供給室217に導くための燃料ガス供給孔231aが形成されている。この燃料ガス供給室217内には、複数のセルスタック101における基体管103の下端部が位置し、ここで開口している。この開口は、ガス入口103aを形成している。燃料ガス供給配管310から燃料ガス供給室217に導かれた燃料ガスGfは、複数のセルスタック101の基体管103の内部に流れ込む。この際、燃料ガスGfは、燃料ガス供給室217により、複数のセルスタック101の各基体管103に対してほぼ均等流量に配分される。このため、複数のセルスタック101における各発電量の均一化を図ることができる。
【0038】
第二カートリッジヘッダ220bのケーシング229bと管板225bとで形成されている空間は、セルスタック101の基体管103内を通過した燃料ガスGfが流れ込む燃料ガス排出室219を形成している。このケーシング229bには、燃料ガス排出室219に流れ込んだ燃料ガスGfを燃料ガス排出配管320に導くための燃料ガス排出孔231bが形成されている。この燃料ガス排出室219内には、複数のセルスタック101における基体管103の上端部が位置し、ここで開口している。この開口はガス出口103bを形成している。複数のセルスタック101の各基体管103内を通過した燃料ガスGfは、前述したように、燃料ガス排出室219に流入した後、燃料ガス排出配管320を通って、圧力容器10外へ排出される。
【0039】
第二カートリッジヘッダ220bのケーシング229bと断熱体227bと管板225bとで形成されている空間は、酸化剤ガス供給室216を形成している。このケーシング229bには、酸化剤ガス供給配管330からの酸化剤ガスGoを酸化剤ガス供給室216に導くための酸化剤ガス供給孔233bが形成されている。この酸化剤ガス供給室216内に導かれた酸化剤ガスGoは、断熱体227bの貫通孔の内周面と、この貫通孔に挿通されているセルスタック101の外周面との間の隙間235bから、第一カートリッジヘッダ220aと第二カートリッジヘッダ220bとの間の発電室215へと流出する。
【0040】
第一カートリッジヘッダ220aと第二カートリッジヘッダ220bとの間の発電室215には、複数のセルスタック101の燃料電池セル105が配置されている。このため、この発電室215では、燃料ガスGfと酸化剤ガスGoとが電気化学的反応して、発電が行われる。なお、この発電室215で、セルスタック101の長手方向における中央部付近の温度は、燃料電池モジュールMの定常運転時に、およそ700℃〜1100℃の高温雰囲気になる。また、この発電室215は、第一カートリッジヘッダ220aと第二カートリッジヘッダ220bとの間であって、外周側が後述の内側断熱材16で囲まれた空間である。
【0041】
第一カートリッジヘッダ220aのケーシング229aと断熱体227aと管板225aとで形成されている空間は、発電室215を通った酸化剤ガスGoが流入する酸化剤ガス排出室218を形成している。このケーシング229aには、酸化剤ガス排出室218に流れ込んだ酸化剤ガスGoを酸化剤ガス排出配管340に導くための酸化剤ガス排出孔233aが形成されている。発電室215中の酸化剤ガスGoは、断熱体227aの貫通孔の内周面と、この貫通孔に挿通されているセルスタック101の外周面との間の隙間235aから酸化剤ガス排出室218内に流入した後、酸化剤ガス排出配管340を通って、圧力容器10外へ排出される。
【0042】
発電室215の高温化に伴って、各カートリッジヘッダ220a,220bの管板225a,225bが高温化する。第一カートリッジヘッダ220a及び第二カートリッジヘッダ220bの断熱体227a,227bは、この管板225a,225bが高温化による強度低下や酸化剤ガスGo中に含まれている酸化剤による腐食を抑える。さらに、この断熱体227a,227bは、管板225a,225bの熱変形も抑える。
【0043】
前述したように、発電室215中の酸化剤ガスGoと、この発電室215に配置されている複数のセルスタック101の内側を通る燃料ガスGfとは、セルスタック101における複数の燃料電池セル105で電気化学反応する。この結果、複数の燃料電池セル105で発電が行われる。
【0044】
複数の燃料電池セル105での発電で得られた直流電流は、複数の燃料電池セル105相互間に設けられているインターコネクタ107を経て、セルスタック101の端部側へ流れ、このセルスタック101のリード膜115に流れ込む。そして、この直流電流は、リード膜115から、集電板(不図示)を介して、カートリッジ201の集電棒(不図示)に流れ、カートリッジ201外部へ取り出される。複数の集電棒は、互いに直列及び/又は並列接続されている。集電棒のうち、最も下流側の集電棒は、例えば、図示されていないインバータに接続されている。カートリッジ201外部に取り出された直流電流は、直列及び/又は並列接続されている複数の集電棒を経て、例えば、インバータに流れ、ここで交流電流に変換されて、電力負荷へと供給される。
【0045】
セルスタック101の内周側を流れる燃料ガスGfとセルスタック101の外周側を流れる酸化剤ガスGoとは、このセルスタック101を介して熱交換する。この結果、燃料ガスGfは、酸化剤ガスGoにより加熱され、酸化剤ガスGoは、逆に燃料ガスGfにより冷却される。本実施形態では、これら燃料ガスGfと酸化剤ガスGoとがセルスタック101の内周側と外周側とを対向して流れる。このため、燃料ガスGfと酸化剤ガスGoとの熱交換率が高まり、燃料ガスGfによる酸化剤ガスGoの冷却効率、及び酸化剤ガスGoによる燃料ガスGfの加熱効率が高まる。よって、本実施形態において、酸化剤ガスGoは、第一カートリッジヘッダ220aを形成する管板225a等が座屈変形等しない温度に冷却されてから、この第一カートリッジヘッダ220aの酸化剤ガス排出室218に流れ込む。また、本実施形態において、燃料ガスGfは、発電室215内のセルスタック101内で、ヒーター等を用いることなく発電に適した温度に予熱昇温される。
【0046】
本実施形態において、燃料ガスGfが通る流路を形成する流路形成部材は、燃料ガス供給配管310と、第一カートリッジヘッダ(燃料ガス供給ヘッダ)220aと、複数のセルスタック101と、第二カートリッジヘッダ(燃料ガス排出ヘッダ)220bと、燃料ガス排出配管320とで形成されている。本実施形態では、流路形成部材を構成する以上の要素のうち、第一カートリッジヘッダ(燃料ガス供給ヘッダ)220aと複数のセルスタック101の下端部とで炭素溜り部401を形成している。
【0047】
燃料ガスGfは炭化水素を含むことから炭素Cが析出する。炭素溜り部401において、第一カートリッジヘッダ(燃料ガス供給ヘッダ)220aの内面のうちで、上を向いている底面229cが、燃料ガスから析出した炭素Cが堆積し得る炭素受け面(以下、本実施形態では、「炭素受け面229c」と示す場合がある)を成している。また、この炭素溜り部401において、複数のセルスタック101の下端部で鉛直方向に開口しているガス入口103aが溜り部出口(以下、本実施形態では、「溜り部出口103a」と示す場合がある)を成している。この溜り部出口103aは、第一カートリッジヘッダ220aの底面である炭素受け面229cより上方に位置し、炭素溜り部401側からみて鉛直上方に向かって開口している。
【0048】
燃料ガスGfから析出した炭素Cは、燃料ガスGfの流路中を沈降する。特に、燃料ガスGfの流速が低下した場合や、燃料ガスGfの流れが停止した場合には、炭素Cの沈降傾向は顕著である。このような場合、このため、複数のセルスタック101及び第一カートリッジヘッダ220a中の炭素Cは、第一カートリッジヘッダ(燃料ガス供給ヘッダ)220aの底面、つまり炭素溜り部401の炭素受け面229cに炭素Cが堆積する。炭素受け面229cに堆積した炭素Cは、燃料ガスGfの流速が増加すると、一部が浮遊するものの、セルスタック101のガス入口である溜り部出口103aが炭素受け面229cよりも上方に位置し、炭素溜り部401側からみて鉛直上方に向かって開口しているため、炭素溜り部401から下流側に流出し難い。
【0049】
よって、本実施形態では、炭素溜り部401の下流側に設けられている調節弁350(
図1参照)等の制御機器に流れ込む炭素Cの量を抑えることができ、炭素Cによる制御機器等の動作不良を最小限に抑えることができる。このように、本実施形態では、燃料ガスGfの流路を形成する流路形成部材の要素の一部の形状や向き等を工夫したことで、炭素Cによる制御機器等の動作不良を最小限に抑えることができるため、設備コスト及びランニングコストを抑えることができる。
【0050】
なお、本実施形態では、燃料ガスGfと酸化剤ガスGoとがセルスタック101の内周側と外周側とを対向して流れる、つまり燃料ガスGfと酸化剤ガスGoとが逆向きに流れるが、必ずしもこの必要はなく、例えば、燃料ガスGfと酸化剤ガスGoとがセルスタック101の内周側と外周側で同じ向き(下方から上方)に流れてもよい。
【0051】
「第二実施形態」
次に、本発明に係る燃料電池モジュールの第二実施形態について、
図4に基づいて説明する。
【0052】
第一実施形態の燃料電池モジュールM1では、圧力容器10の容器中心軸Av、カートリッジ201のカートリッジ中心軸Ac、セルスタック101の長手方向がいずれも上下方向を向いている。これに対して、本実施形態の燃料電池モジュールM2では、圧力容器10の容器中心軸Av、カートリッジ201のカートリッジ中心軸Ac、セルスタック101の長手方向がいずれも水平方向を向いている。本実施形態の燃料電池モジュールM2は、係る点を除いて、全て第一実施形態の燃料電池モジュールと同一である。
【0053】
本実施形態の燃料電池モジュールM2においても、流路形成部材を構成する複数の要素のうち、第一カートリッジヘッダ(燃料ガス供給ヘッダ)220aと複数のセルスタック101の端部とで炭素溜り部402を形成している。但し、本実施形態では、セルスタック101の長手方向等が水平方向を向いているため、炭素溜り部402において、第一カートリッジヘッダ(燃料ガス供給ヘッダ)220aの内面のうちで、上を向いている底面229dが、燃料ガスから析出した炭素Cが堆積し得る炭素受け面(以下、本実施形態では、「炭素受け面229d」と示す場合がある)を成している。また、この炭素溜り部402において、複数のセルスタック101の端部で水平方向に開口しているガス入口103aが溜り部出口(以下、本実施形態では、「溜り部出口103a」と示す場合がある)を成している。この溜り部出口103aは、第一カートリッジヘッダ220aの底面である炭素受け面229dより上方に位置し、水平方向に向かって開口している。
【0054】
本実施形態では、第一カートリッジヘッダ(燃料ガス供給ヘッダ)220a内の炭素Cのほとんどは、沈降する際に複数のセルスタック101に流れ込まずに、第一カートリッジヘッダ220aの底面、つまり炭素溜り部402の炭素受け面229dに堆積する。しかも、炭素受け面229dに堆積した炭素Cは、セルスタック101のガス入口である溜り部出口103aが炭素受け面229dよりも上方に位置し、水平方向に向かって開口しているため、炭素溜り部402から下流側に流出し難い。
【0055】
よって、本実施形態でも、第一実施形態と同様、炭素Cによる制御機器等の動作不良を最小限に抑えることができると共に、設備コスト及びランニングコストを抑えることができる。
【0056】
「第三実施形態」
次に、本発明に係る燃料電池モジュールの第三実施形態について、
図5に基づいて説明する。
【0057】
本実施形態の燃料電池モジュールM3は、第一実施形態の燃料電池モジュールM1の上下方向を逆にしたものである。よって、本実施形態では、複数のセルスタック101の長手方向が第一実施形態と同様に上下方向を向いているものの、第一カートリッジヘッダ(燃料ガス供給ヘッダ)220aは、セルスタック101の上側に位置し、セルスタック101の束の上端部を覆い、第二カートリッジヘッダ(燃料ガス排出ヘッダ)220bは、セルスタック101の下側に位置し、セルスタック101の下端部を覆っている。
【0058】
また、本実施形態では、円筒状のセルスタック101の上端は封鎖されて、ガス入口103aは水平方向に向かって開口している。
【0059】
本実施形態では、流路形成部材を構成する複数の要素のうち、第一カートリッジヘッダ(燃料ガス供給ヘッダ)220aと複数のセルスタック101の上端部とで炭素溜り部403を形成している。
【0060】
炭素溜り部403において、第一カートリッジヘッダ(燃料ガス供給ヘッダ)220aの管板225aで上を向いている面225cが、燃料ガスGfから析出した炭素Cが堆積し得る炭素受け面(以下、本実施形態では、「炭素受け面225c」と示す場合がある)を成している。また、この炭素溜り部403において、複数のセルスタック101の上端部で水平方向に向かって開口しているガス入口103aが溜り部出口(以下、本実施形態では、「溜り部出口103a」と示す場合がある)を成している。この溜り部出口103aは、第二実施形態と同様、炭素溜り部403の炭素受け面225cより上方に位置し、水平方向に開口している。
【0061】
したがって、本実施形態でも、第二実施形態と同様、第一カートリッジヘッダ(燃料ガス供給ヘッダ)220a内の炭素Cのほとんどは、沈降する際に複数のセルスタック101に流れ込まずに、炭素溜り部403の炭素受け面225cに堆積する。しかも、炭素受け面225cに堆積した炭素Cは、セルスタック101のガス入口である溜り部出口103aが炭素受け面225cよりも上方に位置し、水平方向に向かって開口しているため、炭素溜り部403から下流側に流出し難い。
【0062】
よって、本実施形態でも、第一及び第二実施形態と同様、炭素Cによる制御機器等の動作不良を最小限に抑えることができると共に、設備コスト及びランニングコストを抑えることができる。
【0063】
「第四実施形態」
次に、本発明に係る燃料電池モジュールの第四実施形態について、
図6及び
図7に基づいて説明する。
【0064】
本実施形態の燃料電池モジュールM4のカートリッジ201は、
図6に示すように、第一実施形態のカートリッジ201と同一である。また、本実施形態でも、燃料ガスGfが通る流路を形成する流路形成部材は、燃料ガス供給配管310や燃料ガス排出配管320を有している。但し、本実施形態では、流路形成部材を構成する複数の要素のうち、燃料ガス排出配管320の一部が炭素溜り部404を形成している。
【0065】
炭素溜り部404は、
図7に示すように、燃料ガス排出配管320中で下流側に向かって鉛直下方に延びる部分から水平方向に延びる部分に形成されている。燃料ガス排出配管320中で水平方向に延びる部分に形成されている炭素溜り部404は、燃料ガス排出配管320中で鉛直下方に延びる部分とこの炭素溜り部404との境目が、溜り部入口321を成す。炭素溜り部404は、溜り部入口321から下方に広がっており、炭素溜り部404の内面のうちで上を向いている底面が炭素受け面323を成している。鉛直方向における溜り部入口321から炭素受け面323までの距離は、燃料ガス排出配管320中で水平方向に延びる部分の内径寸法よりも長い。また、炭素溜り部404の溜り部出口322は、炭素溜り部404の内面のうちで側方を向いている側面の上部に形成されている。この溜り部出口322は、水平方向に向かって開口している。
【0066】
本実施形態では、燃料ガス排出配管320中で下流側に向かって鉛直下方に延びる部分及び炭素溜り部404中の炭素Cは、炭素溜り部404の炭素受け面323に堆積する。しかも、この炭素溜り部404の溜り部出口322は炭素受け面323よりも上方に位置し、水平方向に開口しているため、炭素受け面323に堆積した炭素Cは、炭素溜り部404から下流側に流出し難い。
【0067】
よって、本実施形態でも、以上の各実施形態と同様、炭素Cによる制御機器等の動作不良を最小限に抑えることができると共に、設備コスト及びランニングコストを抑えることができる。なお、本実施形態において、溜り部出口322は、炭素溜り部404の内面のうちで下方を向いている天面に形成され、上方に向かって開口しているものであってもよい。
【0068】
「第五実施形態」
次に、本発明に係る燃料電池モジュールの第五実施形態について、
図8及び
図9に基づいて説明する。
【0069】
本実施形態の燃料電池モジュールM
5は、第四実施形態のカートリッジモジュールの変形例で、
図8に示すように、第四実施形態と同様、燃料ガス排出配管320の一部が炭素溜り部405を形成している。
【0070】
炭素溜り部405は、
図9に示すように、燃料ガス排出配管320を上下方向に蛇行させたものである。この炭素溜り部405の炭素受け面326aは、燃料ガス排出配管320中で下流側に向かって水平方向に延びる部分325から鉛直上方に向かう折れ曲がり部分326中の内面で、上を向いている面である。また、この炭素溜り部405の溜り部出口328aは、燃料ガス排出配管320中で鉛直上方に向かって延びる部分327から鉛直下方に向かう折り返し部分328に形成されている。この溜り部出口328aは、水平方向に向かって開口している。
【0071】
本実施形態では、炭素溜り部405中の炭素Cは、炭素溜り部405の炭素受け面326aに堆積する。しかも、この炭素溜り部405の溜り部出口328aは炭素受け面326aよりも上方に位置し、水平方向に開口しているため、炭素受け面326aに堆積した炭素Cは、炭素溜り部405から下流側に流出し難い。
【0072】
よって、本実施形態でも、以上の各実施形態と同様、炭素Cによる制御機器等の動作不良を最小限に抑えることができると共に、設備コスト及びランニングコストを抑えることができる。
【0073】
なお、第四及び第五実施形態における炭素溜り部404,405は、いずれも、第一実施形態における燃料ガス排出配管320中に形成したものであるが、第二及び第三実施形態における燃料ガス排出配管320中に形成してもよい。また、第四及び第五実施形態における炭素溜り部404,405は、第一、第二、第三実施形態と異なり、カートリッジ201の向きがいかなる方向に向いていても適用可能である。
【0074】
また、以上の実施形態において、炭素溜り部の溜り部出口は、炭素受け面より上方に位置して鉛直上方又は水平方向に向かって開口しているが、斜め上方に向かって開口していてもよい。