(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記位相決定部は、ビーム方向を維持しながらヌル方向を変化させるように前記位相器へ設定する位相設定値を変化させ、前記測定された受信信号強度が最小である位相設定値に決定することを特徴とする請求項2に記載のアンテナ装置。
前記位相決定部は、第1のビーム方向を維持しながら第2のビーム方向を変化させるように前記位相器へ設定する位相設定値を変化させ、前記測定された受信信号強度が最大である第2のビーム方向にヌルを形成する位相設定値に決定することを特徴とする請求項2に記載のアンテナ装置。
前記位相決定部は、第1のビーム方向を維持しながら第2のビーム方向を変化させるように前記位相器へ設定する位相設定値を変化させ、前記測定された受信信号強度が最大である位相設定値に決定することを特徴とする請求項2に記載のアンテナ装置。
前記位相決定部は、無線通信端末の通信品質を表す通信品質情報に基づいて通信品質の劣化を検出した場合に、前記位相器へ設定する位相設定値を変化させ、前記測定された受信信号強度に基づいて前記位相器の位相設定値を決定する位相制御動作を行う、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した特許文献1のアレーアンテナ給電装置では、主ビームを所望の方向に向けることはできるが、主ビーム方向を維持しながら、ビームを向けたくない方向にヌルを形成したり、又は、主ビーム方向とは異なる方向にさらにビームを形成したりすることができない。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、主ビーム方向を維持しながら、ビームを向けたくない方向にヌルを形成したり、主ビーム方向とは異なる方向にさらにビームを形成したりすることができるアンテナ装置、アンテナ指向性制御方法およびコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るアンテナ装置は、複数のアンテナ素子と、前記アンテナ素子の各々に対応して設けられる位相器と、ビーム方向とヌル方向の組合せ毎に、又は、第1のビーム方向と第2のビーム方向の組合せ毎に、前記アンテナ素子の各々に対応する前記位相器に設定される位相設定値を記憶する位相設定値記憶部と、ビーム方向とヌル方向の入力情報、又は、第1のビーム方向と第2のビーム方向の入力情報に従って、前記位相設定値記憶部に記憶される該入力情報に対応する位相設定値を前記位相器へ設定する位相決定部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明に係るアンテナ装置は、複数のアンテナ素子と、前記アンテナ素子の各々に対応して設けられる位相器と、前記アンテナ素子の受信信号強度を測定する測定部と、ビーム方向とヌル方向の組合せ毎に、又は、第1のビーム方向と第2のビーム方向の組合せ毎に、前記アンテナ素子の各々に対応する前記位相器に設定される位相設定値を記憶する位相設定値記憶部と、ビーム方向を維持しながらヌル方向を変化させるように、又は、第1のビーム方向を維持しながら第2のビーム方向を変化させるように、前記位相器へ設定する位相設定値を変化させ、前記測定された受信信号強度に基づいて前記位相器の位相設定値を決定する位相決定部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明に係るアンテナ装置において、前記位相決定部は、ビーム方向を維持しながらヌル方向を変化させるように前記位相器へ設定する位相設定値を変化させ、前記測定された受信信号強度が最小である位相設定値に決定することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るアンテナ装置において、前記位相決定部は、第1のビーム方向を維持しながら第2のビーム方向を変化させるように前記位相器へ設定する位相設定値を変化させ、前記測定された受信信号強度が最大である第2のビーム方向にヌルを形成する位相設定値に決定することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るアンテナ装置において、前記位相決定部は、第1のビーム方向を維持しながら第2のビーム方向を変化させるように前記位相器へ設定する位相設定値を変化させ、前記測定された受信信号強度が最大である位相設定値に決定することを特徴とする。
【0011】
本発明に係るアンテナ装置において、前記測定部は、特定基地局の下り信号の受信信号強度を測定することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るアンテナ装置において、前記測定部は、特定基地局と通信する無線通信端末の上り信号の受信信号強度を測定することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るアンテナ装置において、前記位相決定部は、無線通信端末の通信品質を表す通信品質情報に基づいて通信品質の劣化を検出した場合に、前記位相器へ設定する位相設定値を変化させ、前記測定された受信信号強度に基づいて前記位相器の位相設定値を決定する位相制御動作を行う、ことを特徴とする。
【0014】
本発明に係るアンテナ装置は、複数のアンテナ素子と、前記アンテナ素子の各々に対応して設けられる位相器と、前記アンテナ素子の受信信号強度を測定する測定部と、ビーム方向とヌル方向の組合せ毎に、又は、第1のビーム方向と第2のビーム方向の組合せ毎に、前記アンテナ素子の各々に対応する前記位相器に設定される位相設定値を記憶する位相設定値記憶部と、前記位相器へ位相設定値を設定する位相決定部と、を備え、前記位相決定部は、ビーム方向とヌル方向の入力情報、又は、第1のビーム方向と第2のビーム方向の入力情報に従って、前記位相設定値記憶部に記憶される該入力情報に対応する位相設定値を前記位相器へ設定し、ビーム方向を維持しながらヌル方向を変化させるように、又は、第1のビーム方向を維持しながら第2のビーム方向を変化させるように、前記位相器へ設定する位相設定値を変化させ、前記測定された受信信号強度に基づいて前記位相器の位相設定値を決定する、ことを特徴とする。
【0015】
本発明に係るアンテナ指向性制御方法は、複数のアンテナ素子を有するアンテナ装置に対して前記アンテナ素子の各々に対応する位相器を設け、ビーム方向とヌル方向の組合せ毎に、又は、第1のビーム方向と第2のビーム方向の組合せ毎に、前記アンテナ素子の各々に対応する前記位相器に設定される位相設定値を位相設定値記憶部に記憶するステップと、ビーム方向とヌル方向の入力情報、又は、第1のビーム方向と第2のビーム方向の入力情報に従って、前記位相設定値記憶部に記憶される該入力情報に対応する位相設定値を前記位相器へ設定するステップと、を有することを特徴とする。
【0016】
本発明に係るアンテナ指向性制御方法は、複数のアンテナ素子を有するアンテナ装置に対して前記アンテナ素子の各々に対応する位相器を設け、ビーム方向とヌル方向の組合せ毎に、又は、第1のビーム方向と第2のビーム方向の組合せ毎に、前記アンテナ素子の各々に対応する前記位相器に設定される位相設定値を位相設定値記憶部に記憶するステップと、前記アンテナ素子の受信信号強度を測定するステップと、ビーム方向を維持しながらヌル方向を変化させるように、又は、第1のビーム方向を維持しながら第2のビーム方向を変化させるように、前記位相器へ設定する位相設定値を変化させ、前記測定された受信信号強度に基づいて前記位相器の位相設定値を決定するステップと、を有することを特徴とする。
【0017】
本発明に係るアンテナ指向性制御方法は、複数のアンテナ素子を有するアンテナ装置に対して前記アンテナ素子の各々に対応する位相器を設け、ビーム方向とヌル方向の組合せ毎に、又は、第1のビーム方向と第2のビーム方向の組合せ毎に、前記アンテナ素子の各々に対応する前記位相器に設定される位相設定値を位相設定値記憶部に記憶するステップと、前記アンテナ素子の受信信号強度を測定するステップと、ビーム方向とヌル方向の入力情報、又は、第1のビーム方向と第2のビーム方向の入力情報に従って、前記位相設定値記憶部に記憶される該入力情報に対応する位相設定値を前記位相器へ設定するステップと、ビーム方向を維持しながらヌル方向を変化させるように、又は、第1のビーム方向を維持しながら第2のビーム方向を変化させるように、前記位相器へ設定する位相設定値を変化させ、前記測定された受信信号強度に基づいて前記位相器の位相設定値を決定するステップと、を有することを特徴とする。
【0018】
本発明に係るコンピュータプログラムは、複数のアンテナ素子と、前記アンテナ素子の各々に対応して設けられる位相器とを有するアンテナ装置のコンピュータに、ビーム方向とヌル方向の組合せ毎に、又は、第1のビーム方向と第2のビーム方向の組合せ毎に、前記アンテナ素子の各々に対応する前記位相器に設定される位相設定値を位相設定値記憶部に記憶するステップと、ビーム方向とヌル方向の入力情報、又は、第1のビーム方向と第2のビーム方向の入力情報に従って、前記位相設定値記憶部に記憶される該入力情報に対応する位相設定値を前記位相器へ設定するステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムであることを特徴とする。
【0019】
本発明に係るコンピュータプログラムは、複数のアンテナ素子と、前記アンテナ素子の各々に対応して設けられる位相器とを有するアンテナ装置のコンピュータに、ビーム方向とヌル方向の組合せ毎に、又は、第1のビーム方向と第2のビーム方向の組合せ毎に、前記アンテナ素子の各々に対応する前記位相器に設定される位相設定値を位相設定値記憶部に記憶するステップと、前記アンテナ素子の受信信号強度を測定するステップと、ビーム方向を維持しながらヌル方向を変化させるように、又は、第1のビーム方向を維持しながら第2のビーム方向を変化させるように、前記位相器へ設定する位相設定値を変化させ、前記測定された受信信号強度に基づいて前記位相器の位相設定値を決定するステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムであることを特徴とする。
【0020】
本発明に係るコンピュータプログラムは、複数のアンテナ素子と、前記アンテナ素子の各々に対応して設けられる位相器とを有するアンテナ装置のコンピュータに、ビーム方向とヌル方向の組合せ毎に、又は、第1のビーム方向と第2のビーム方向の組合せ毎に、前記アンテナ素子の各々に対応する前記位相器に設定される位相設定値を位相設定値記憶部に記憶するステップと、前記アンテナ素子の受信信号強度を測定するステップと、ビーム方向とヌル方向の入力情報、又は、第1のビーム方向と第2のビーム方向の入力情報に従って、前記位相設定値記憶部に記憶される該入力情報に対応する位相設定値を前記位相器へ設定するステップと、ビーム方向を維持しながらヌル方向を変化させるように、又は、第1のビーム方向を維持しながら第2のビーム方向を変化させるように、前記位相器へ設定する位相設定値を変化させ、前記測定された受信信号強度に基づいて前記位相器の位相設定値を決定するステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、主ビーム方向を維持しながら、ビームを向けたくない方向にヌルを形成したり、主ビーム方向とは異なる方向にさらにビームを形成したりすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。以下の各実施形態では、無線通信システムの基地局のアンテナ装置を説明する。
【0024】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るアンテナ装置1の構成を示すブロック図である。
図1において、アンテナ装置1は、複数(
図1の例では9個)のアンテナ素子10と、アンテナ素子10の各々に対応して設けられる位相器11と、送信信号100を各アンテナ素子10に分配する分配器12と、各位相器11に位相設定値110を設定する制御部20とを備える。
【0025】
位相器11は、送信信号100の位相を位相設定値110に変更する。位相設定値110は、0度以上360度未満の値であり、0度は位相の変更なし(送信信号100の元の位相を維持する)である。
【0026】
図2は、本発明の第1実施形態に係る制御部20の構成を示すブロック図である。
図2において、制御部20は、入力部21と位相決定部22と位相設定値記憶部23を有する。入力部21は、アンテナ指向性を特定する入力情報を入力する。具体的には、入力情報は、ビーム方向とヌル方向を指定する情報である。又は、入力情報は、第1のビーム方向と第2のビーム方向を指定する情報である。位相決定部22は、入力部21から入力された入力情報に従って、位相設定値記憶部23に記憶される各アンテナ装置1の位相設定値110を出力する。
【0027】
図3、
図4、
図5は位相設定値記憶部23の構成例を示す図である。
図3において、位相設定値記憶部23は、ビーム方向とヌル方向の組合せ毎に、アンテナ素子10の各々に対応する位相器11に設定される位相設定値を記憶する。例えば、方向aに主ビームを形成し、且つ、方向bにヌルを形成するための位相設定値Wabの構成例が
図4に示されている。なお、
図4中の位相設定値Wabの値は、便宜上の値である。
【0028】
位相決定部22は、入力情報で指定されるビーム方向とヌル方向に対応する位相設定値を
図3に例示される位相設定値記憶部23から取得し、取得した位相設定値をそれぞれ対応する位相器11へ設定する。これにより、入力情報で指定されるビーム方向に主ビームを形成し、且つ、入力情報で指定されるヌル方向にヌルを形成することができる。
【0029】
図5において、位相設定値記憶部23は、第1のビーム方向と第2のビーム方向の組合せ毎に、アンテナ素子10の各々に対応する位相器11に設定される位相設定値を記憶する。この位相設定値の構成は
図4の構成例と同様である。
【0030】
位相決定部22は、入力情報で指定される第1のビーム方向と第2のビーム方向に対応する位相設定値を
図5に例示される位相設定値記憶部23から取得し、取得した位相設定値をそれぞれ対応する位相器11へ設定する。これにより、入力情報で指定される第1のビーム方向と第2のビーム方向の両方にビームを形成することができる。
【0031】
なお、入力情報として位置情報(緯度、経度)を用い、該位置情報に基づいて、ビーム方向とヌル方向、又は、第1のビーム方向と第2のビーム方向を算出するようにしてもよい。
【0032】
[第2実施形態]
図6は、本発明の第2実施形態に係るアンテナ装置1の構成を示すブロック図である。
図1において、アンテナ装置1は、複数(
図1の例では9個)のアンテナ素子10と、アンテナ素子10の各々に対応して設けられる位相器11と、送信信号100を各アンテナ素子10に分配する分配器12と、各位相器11に位相設定値110を設定する制御部20とを備える。制御部20には、各アンテナ素子10で受信された受信信号200が入力される。
【0033】
位相器11は、送信信号100の位相を位相設定値110に変更する。位相設定値110は、0度以上360度未満の値であり、0度は位相の変更なし(送信信号100の元の位相を維持する)である。
【0034】
図7は、本発明の第2実施形態に係る制御部20の構成を示すブロック図である。
図7において、制御部20は、位相決定部22と位相設定値記憶部23と測定部30を有する。測定部30は、各アンテナ素子10の受信信号200の受信信号強度を測定する。位相決定部22は、測定部30で測定された受信信号強度に基づいて、各位相器11に設定する位相設定値110を決定する。位相設定値記憶部23は上述した
図3、
図4、
図5と同様である。
【0035】
以下、第2実施形態に係る位相設定値決定方法について例1、例2、例3を説明する。
【0036】
(位相設定値決定方法の例1)
位相決定部22は、主ビーム方向を維持しながらヌル方向を変化させるように、各位相器11に設定する位相設定値110を変化させる。例えば、主ビーム方向を方向aに維持しながらヌル方向を変化させる場合、
図3に例示される位相設定値記憶部23において、ビーム方向aの組であるヌル方向bの位相設定値Wabとヌル方向cの位相設定値Wacを使用する。
【0037】
まず、位相決定部22は、位相設定値Wabを各位相器11に設定し、この設定で測定された第1の受信信号強度を位相設定値Wabに関連付けて記録する。次いで、位相決定部22は、位相設定値Wacを各位相器11に設定し、この設定で測定された第2の受信信号強度を位相設定値Wacに関連付けて記録する。次いで、位相決定部22は、記録された第1の受信信号強度と第2の受信信号強度を比較し、最小である受信信号強度を判定する。次いで、位相決定部22は、最小である受信信号強度に関連付けられている位相設定値を、各位相器11に設定する位相設定値110に決定する。これにより、主ビーム方向を方向aに維持しながら、測定される受信信号強度が最小になるようにヌルを形成することができる。
【0038】
(位相設定値決定方法の例2)
位相決定部22は、第1のビーム方向を維持しながら第2のビーム方向を変化させるように、各位相器11に設定する位相設定値110を変化させる。例えば、第1のビーム方向を方向aに維持しながら第2のビーム方向を変化させる場合、
図5に例示される位相設定値記憶部23において、第1のビーム方向aの組である第2のビーム方向bの位相設定値Wab1と第2のビーム方向cの位相設定値Wac1を使用する。
【0039】
まず、位相決定部22は、位相設定値Wab1を各位相器11に設定し、この設定で測定された第1の受信信号強度を方向bに関連付けて記録する。次いで、位相決定部22は、位相設定値Wac1を各位相器11に設定し、この設定で測定された第2の受信信号強度を方向cに関連付けて記録する。次いで、位相決定部22は、記録された第1の受信信号強度と第2の受信信号強度を比較し、最大である受信信号強度を判定する。次いで、位相決定部22は、最大である受信信号強度に関連付けられている方向を、ヌルを形成する方向に決定する。ここでは、説明の便宜上、ヌルを形成する方向が方向cに決定されたとする。次いで、位相決定部22は、
図3に例示される位相設定値記憶部23において、ビーム方向aと組になっているヌル方向cの位相設定値Wacを、各位相器11に設定する位相設定値110に決定する。これにより、主ビーム方向を方向aに維持しながら、測定される受信信号強度が最大の方向にヌルを形成することができる。
【0040】
(位相設定値決定方法の例3)
位相決定部22は、第1のビーム方向を維持しながら第2のビーム方向を変化させるように、各位相器11に設定する位相設定値110を変化させる。例えば、第1のビーム方向を方向aに維持しながら第2のビーム方向を変化させる場合、
図5に例示される位相設定値記憶部23において、第1のビーム方向aの組である第2のビーム方向bの位相設定値Wab1と第2のビーム方向cの位相設定値Wac1を使用する。
【0041】
まず、位相決定部22は、位相設定値Wab1を各位相器11に設定し、この設定で測定された第1の受信信号強度を方向bに関連付けて記録する。次いで、位相決定部22は、位相設定値Wac1を各位相器11に設定し、この設定で測定された第2の受信信号強度を方向cに関連付けて記録する。次いで、位相決定部22は、記録された第1の受信信号強度と第2の受信信号強度を比較し、最大である受信信号強度を判定する。次いで、位相決定部22は、最大である受信信号強度に関連付けられている位相設定値を、各位相器11に設定する位相設定値110に決定する。これにより、第1のビーム方向を方向aに維持しながら、測定される受信信号強度が最大になるように第2のビームを形成することができる。
【0042】
測定部30が受信信号強度を測定する受信信号としては、以下の例1、例2が挙げられる。
【0043】
(受信信号の例1)
測定部30は、特定基地局の下り信号(基地局から端末の方向へ送信される信号)の受信信号強度を測定する。例えば、
図8に示される無線通信システムでは、マクロ基地局40が形成するマクロセル42内に、ピコ基地局41がピコセル43を形成している。この場合、ピコセル43内において、マクロセル42の電波強度が大きいと、ピコセル43内に在る無線通信端末がマクロセル42の電波を使用して通信してしまい、ピコセル43の電波の利用効率が低下する。この対策として、マクロ基地局40の主ビーム44の方向を維持しながら、ピコセル43の方向45にヌルを形成することが挙げられる。これにより、マクロセル42の主サービスエリアでの電波強度を維持しながら、ピコセル43内でのマクロセル42の電波強度を大きく下げることができる。この結果として、マクロセル42の通信サービス品質を維持しながら、ピコセル43内に在る無線通信端末がマクロセル42の電波ではなくピコセル43の電波を使用して通信することを促進し、ピコセル43の電波の利用効率を向上させることができる。このために、マクロ基地局40に本実施形態のアンテナ装置1を適用し、測定部30はピコ基地局41の下り信号の受信信号強度を測定し、位相決定部22は該測定された受信信号強度に基づいてヌルの方向45を決定する。
【0044】
(受信信号の例2)
測定部30は、特定基地局と通信する無線通信端末の上り信号(端末から基地局の方向へ送信される信号)の受信信号強度を測定する。例えば、
図8に示される無線通信システムにおいて、マクロ基地局40に本実施形態のアンテナ装置1を適用し、測定部30は、ピコ基地局41と通信する無線通信端末の上り信号の受信信号強度を測定する。そして、位相決定部22は該測定された受信信号強度に基づいてヌルの方向45を決定する。これにより、マクロ基地局40は、ピコセル43内において実際に無線通信端末がピコ基地局41と通信しているエリアに対して、ヌルを形成することができる。
【0045】
上述した受信信号の例1、例2は、上述した位相設定値決定方法の例1、例2、例3と組み合わせることができる。例えば、まず、位相設定値決定方法の例1と受信信号の例2を組み合わせて実施し、この実施において測定された受信信号強度(無線通信端末の上り信号の受信信号強度)が利用可能か否かを閾値により判定する。この結果、利用可能であれば、位相設定値決定方法の例1と受信信号の例2の組み合わせでヌルの方向を決定する。一方、利用不可能であれば、位相設定値決定方法の例1と受信信号の例1の組み合わせでヌルの方向を決定する。同様に、受信信号の例1、例2と、位相設定値決定方法の例2または例3と組み合わせるようにしてもよい。
【0046】
[第3実施形態]
第3実施形態は、第2実施形態の変形例である。第3実施形態の構成は、上述した
図6および
図7の構成と同様である。第3実施形態では、位相決定部22は、無線通信端末の通信品質を表す通信品質情報に基づいて通信品質の劣化を検出した場合に、各位相器11へ設定する位相設定値110を変化させ、測定部30で測定された受信信号強度に基づいて各位相器11の位相設定値110を決定する動作を行う。
【0047】
図9は、本発明の第3実施形態に係るアンテナ指向性制御処理のフローチャートである。以下、
図9を参照して第3実施形態に係るアンテナ指向性制御処理を説明する。
【0048】
(ステップS1)位相決定部22は、変数Nに0を設定する。
【0049】
(ステップS2)位相決定部22は、無線通信端末のCIR(Carrier to Interference Ratio)を取得する。CIRは、無線通信端末の通信品質を表す通信品質情報の一例である。無線通信端末は、各基地局から送信される固有の識別信号を受信し、該受信信号に基づいて所望基地局と干渉基地局に関するCIRを算出する。このCIRは、無線通信端末から基地局に向けて送信され、各基地局で受信できる。位相決定部22は、自基地局で受信されたCIRを取得する。このCIRの取得では、位相決定部22は、どの無線通信端末のCIRであるかが分かるように、無線通信端末の識別情報とCIRの組を取得する。
【0050】
(ステップS3)位相決定部22は、取得したCIRが閾値CIR_TH未満であるかを判定する。閾値CIR_THは、任意に設定可能とする。該判定の結果、閾値CIR_TH未満である場合にはステップS4に進み、閾値CIR_TH以上である場合にはステップS2に戻る。
【0051】
(ステップS4)位相決定部22は、変数Nに1を加算する。但し、この加算処理では、同じ無線通信端末は1度だけ加算対象にするように、加算対象にした無線通信端末の識別情報を記録し、該記録の確認を行う。また、該記録は、本アンテナ指向性制御処理の開始時にリセットされる。
【0052】
(ステップS5)位相決定部22は、一定時間の計時タイマにより一定時間経過したかを判定する。該計時タイマは本アンテナ指向性制御処理の開始時に起動される。一定時間は、任意に設定可能とする。該判定の結果、一定時間経過した場合には該一定時間の計時タイマを再起動しステップS6に進む。一方、一定時間経過していない場合にはステップS2に戻る。
【0053】
(ステップS6)位相決定部22は、変数Nが閾値N_TH超過であるかを判定する。閾値N_THは、任意に設定可能とする。該判定の結果、閾値N_TH超過である場合にはステップS7に進み、閾値N_TH以下である場合にはステップS2に戻る。
【0054】
(ステップS7)位相決定部22は、各位相器11へ設定する位相設定値110を変化させ、測定部30で測定された受信信号強度に基づいて各位相器11の位相設定値110を決定する位相制御動作を行う。この位相制御動作は、上述した第2実施形態と同様である。
【0055】
[第4実施形態]
第4実施形態は、第1実施形態と第2実施形態を組み合わせた例である。第4実施形態の全体構成は、上述した
図6の構成と同様である。
図10は、本発明の第4実施形態に係る制御部20の構成を示すブロック図である。
図10において、制御部20の構成は、上述した
図7の構成に入力部21を設けたものである。
図11は、本発明の第4実施形態に係るアンテナ指向性制御処理のフローチャートである。以下、
図11を参照して第4実施形態に係るアンテナ指向性制御処理を説明する。
【0056】
(ステップS21)位相決定部22は、位相設定値記憶部23に記憶される位相設定値のうち、入力部21から入力された入力情報に対応する位相設定値110を各位相器11に設定する。この位相設定動作は、上述した第1実施形態と同様である。これにより、位相の疎調整が行われる。
【0057】
(ステップS22)位相決定部22は、各位相器11へ設定する位相設定値110を変化させ、測定部30で測定された受信信号強度に基づいて各位相器11の位相設定値110を決定する位相制御動作を行う。この位相制御動作は、上述した第2実施形態と同様である。これにより、位相の微調整が行われる。
【0058】
上述した第4実施形態によれば、ステップS21で大まかな位相調整を行い、次いでステップS22で測定により実際の状況に即するように位相の微調整を行う。これにより、詳細な位相調整に要する時間の短縮と、位相調整の精度向上とを図ることができる。
【0059】
なお、第3実施形態と第4実施形態を組合せるようにしてもよい。
【0060】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0061】
なお、
図8に示される無線通信システムにおいて、FDD(Frequency Division Duplex)である場合には、上り信号と下り信号で周波数が異なること、及び、マクロ基地局40とピコ基地局41では制御信号が異なることから、各信号を区別することができる。また、
図8に示される無線通信システムにおいて、TDD(Time Division Duplex)である場合には、上り信号と下り信号で時間が異なること、及び、マクロ基地局40とピコ基地局41では制御信号が異なることから、各信号を区別することができる。
【0062】
また、ビーム方向およびヌル方向は、垂直方向の調整も、水平方向の調整も可能である。垂直方向の調整を行う場合には、各アンテナ素子10を垂直方向に配置する。水平方向の調整を行う場合には、各アンテナ素子10を水平方向に配置する。垂直方向および水平方向の調整を行う場合には、各アンテナ素子10を垂直方向と水平方向に格子状に配置する。
【0063】
また、ヌルを形成する場合には3個以上のアンテナ素子10を備える。
【0064】
また、本発明は様々な無線通信システムに適用可能である。例えば、
図12に例示される無線通信システムでは、基地局52のサービスエリア内に高層ビル53が存在する。この場合、基地局52は、地上方向のエリアに加えて高層ビル53の高層階のエリアにも電波を放射する必要がある。このため、基地局52は、地上方向(第1のビーム方向)へのビーム50を維持しながら、高層ビル53の高層階方向(第2のビーム方向)へもビーム51を形成する。このとき、本発明を適用することによって、ビーム50の第1のビーム方向を維持しながら、ビーム51を形成する第2のビーム方向を適切に決定することができる。
【0065】
また、
図13に例示される無線通信システムでは、郊外などでのサービスエリアを確保するために、基地局60からの電波を受信して増幅し再放射する中継局(リピータ)61が設けられている。ここで、
図14に示されるように、中継局61に電波を放射する基地局60において、自己のサービスエリアのサイズを調整する場合には、中継局61の方向(第1のビーム方向)へのビーム65を維持しながら、自己のサービスエリアのサイズを調整するためのビーム67を形成する。このとき、本発明を適用することによって、ビーム65の第1のビーム方向を維持しながら、ビーム67を形成する第2のビーム方向を適切に決定することができる。これにより、中継局61に対して電波強度の低下を抑制し、中継局61のサービスエリアが縮小されることを防止できる。
【0066】
また、上述したアンテナ装置1を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disk)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0067】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。