【実施例】
【0063】
本発明の一実施形態では、ストロンチウム含有化合物は、トロンビン希釈バッファー中の二価のイオンとして用いられる。トロンビン溶液は、希釈バッファーを用いて調製する。フィブリノゲン溶液およびストロンチウム含有トロンビン溶液を混合して、ゲルを形成する。
【0064】
本発明のもう1つの実施形態では、製剤にストロンチウム含有化合物を塩粒子として加える。トロンビン溶液および粒子を混合して改変トロンビン溶液を調製する。フィブリノゲン溶液および改変トロンビン溶液を混合してゲルを形成する。
実施例I:バッファー溶液に溶解したストロンチウム含有化合物。
【0065】
一連のバッファーは、再蒸留水で調製した。これらのバッファーについては、トロンビンバッファー中の二価のカチオンは、Caまたはカチオン濃度が40mMで一定に維持されるようなCa+Sr混合物(塩化ストロンチウムについての以下の表参照のこと)。トロンビンを、トロンビンバッファー中、4IUの濃度に希釈した。
【0066】
【化1】
次いで、フィブリノゲンを、トロンビンと1:1の割合で混合した(従って、ゲル化血餅中のストロンチウム濃度は半分となる)。このために、2mlのトロンビン溶液を、5mlのシリンジに移してもよい。2mlのフィブリノゲン(Tisseel、Baxter、凝固可能タンパク質、[フィブリノゲンおよびフィブロネクチン]72〜110mg/ml)を、別個の5mlのシリンジに移した。フィブリノゲンおよびトロンビンを含有するこのシリンジを、組み合わせることを目的として、任意の最新式ミキサーと接続してもよい。
【0067】
in−vitro実験のためには、150μlのフィブリノゲン溶液を、24ウェルプレートのウェルにピペットで加えることによって血餅を調製した。このプレートをプレートシェーカー上に置き、ウェル底中へ確実に均一に分配させた。次いで、ウェルに150μlのトロンビン溶液を加え、プレートをプレートシェーカー上に置き、確実に均質な血餅とした。ヒト骨芽細胞様細胞株(SaoS−2)を、血餅上で最大7日間培養して、細胞増殖/細胞分化において何らかの相違が観察され得るかどうかを確かめた。
図1は、トロンビン希釈バッファーに塩化ストロンチウム(SrC12)が加えられた場合の増殖の結果(アラマーブルー)を示す。同様の結果は、酢酸ストロンチウム(SrAc)についても利用可能である。
【0068】
アラマーブルーアッセイは、代謝性アッセイであり、増殖を測定するために用いられることが多い。ストロンチウムの添加は、20mM CaCl
2を含む正常血餅と比較した場合に、これらの血餅上での増殖の大幅な増大をもたらした。同様の結果はまた、DNA染色を用いて増殖を定量した場合にも観察された(
図2)。7日後、カルシウムストロンチウム混合物またはカルシウムのみを含有する血餅上で増殖させた細胞間に明確な相違を観察することができた。したがって、本発明者らは、ストロンチウムは、骨芽細胞様SaOS−2細胞の増殖に対して正の効果を有すると結論付けた。
【0069】
これらの最初の実験は、細胞増殖における相違を調べるよう設計され、骨芽細胞分化を調査するための十分な時間を提供しなかった。酵素アルカリホスファターゼは、分化の初期指標であるが、レベルは、実際には約10〜14日までピークに達しない。予備結果は、ストロンチウムを含有する血餅におけるアルカリホスファターゼ発現の増加を示している(
図3)。酢酸ストロンチウムの場合には、これらの値は、重要ではないと思われる。これらの実験は、14日の調査期間で反復されている。
【0070】
細胞研究観察に加え、比濁法(turbidmetric)分析を実施し、血餅構造がストロンチウムの結果として変更されたかどうかを調べた(
図4)。血餅濁度は、線維の平均断面積に直接比例しており、従って、血餅が濁るほど、線維直径は増大した。
【0071】
図4中の比濁法データは、カルシウム含有血餅との比較において、ストロンチウム含有血餅の動力学および吸光度が極めて小さな相違しか示さないことを示す。これは、カルシウムとストロンチウムは、同様の結合部位、特に、FXIII結合部位を占めることができるという観察結果によって説明することができる。
【0072】
最初の実験については、細胞を、血餅の表面に播種した。この播種法を選択した理由の1つは、いくつかの細胞種は血餅内に播種されると、細胞死が大量に生じ、細胞は血餅の表面に移動を行うということである。この効果についての可能性のある説明は、骨芽細胞様細胞がCaCl
2を補給された培地中で培養される場合に説明され得る。
図5は、12.5mMのCaCl
2の存在下、組織培養プラスチック上でのSaOS−2細胞培養の結果を示す。細胞死(MTSアッセイによって測定されるような)は、塩化カルシウムの存在下で培養された細胞について生じる。これは、細胞培養の最初の24時間内に起こる。それに反して、ストロンチウム含有化合物の存在下で培養された細胞の増殖においてはわずかな減少しかない。いくつかの細胞、すなわち、線維芽細胞およびケラチノサイトが高カルシウムを必要とすること、従って、血餅のカルシウム濃度によって影響を受けないことを指摘することは重要である。
実施例2:フィブリン/ストロンチウムドープ−リン酸カルシウムナノ粒子
トロンビンを、トロンビンバッファーで4IUの濃度に希釈した。フィブリノゲンを、トロンビンと1:1の割合で混合した。このために、2mlのトロンビン溶液を、5mlのシリンジに移してもよい。2mlのフィブリノゲン(Tisseel、Baxter、凝固可能タンパク質、[フィブリノゲンおよびフィブロネクチン]72−110mg/ml)を、別個の5mlのシリンジに移した。粒子(1μm未満のナノ粒子)を、最終血餅容積のパーセンテージ重量(w/v)として組み込む。これらは、秤量し、別の5mlのシリンジに入れる。
【0073】
粒子およびトロンビンを含有するシリンジを、ルアーアダプターを介して接続し、シリンジからシリンジへ内容物を移すことによってトロンビンおよび粒子を均質化する。トロンビン/粒子およびフィブリノゲンを含有するシリンジを、ルアーアダプターを介して接続し、内容物を均質化する。材料は、約30秒間液体のままであり、この時間の間に、欠損に注入できる。
【0074】
in−vitro実験のためには、24ウェルプレートのウェルに150μlのフィブリノゲン溶液をピペットで加えることによって血餅を調製する。粒子(1μm未満のナノ粒子)を、最終血餅容積のパーセンテージ重量(w/v)として加える。プレートをプレートシェーカー上に置き、ウェル底中へ確実に均一に分配させた。次いで、ウェルに150μlのトロンビン溶液を加え、プレートをプレートシェーカー上に置き、確実に均質な血餅とした。予備研究では、ヒト骨芽細胞様細胞(SaOS−2またはNHOst)を血餅上で最大14日間培養して、細胞増殖、細胞分化において何らかの相違が観察され得るかどうかを確かめた。
【0075】
粒子を含有する血餅上に播種された細胞の定性分析は、正常なフィブリン血餅と比較した場合に良好な生体適合性を示す(
図6)。定量されていないが、粒子を含まないフィブリン血餅上の細胞は、形態がより丸みを帯びており、一方で、粒子を含有する血餅上のものはより広がっていると思われる。これのさらなる証拠は、血餅の横断図において見ることができる(
図7)。これについては、細胞を、血餅中に播種した。数日後、フィブリン血餅中の細胞を、血餅の表面に移した。比較によって、血餅を含有する粒子中の細胞は血餅中のままであり、広がっており、好都合な形態を示した。
実施例3:ウサギ大腿骨顆部欠損モデルにおけるストロンチウムドープヒドロキシアパタイトの使用
上記の研究は、ストロンチウムは骨形成を刺激し、同時に、骨吸収を抑圧することを示唆する。先の研究は、骨芽細胞様細胞および一次骨芽細胞に対するSrC12の効果を調査した。脊椎増強において使用できる製剤を同定する試みの過程で、ストロンチウムでドープされた修飾されたヒドロキシルアパタイトをウサギ大腿骨顆部欠損モデルにおいて試験し、ストロンチウムの骨形成を刺激する可能性を評価した。カルシウムヒドロキシルアパタイトは、硝酸カルシウムおよびリン酸アンモニウムを高pH値(水酸化アンモニウムで調整した)で一緒に撹拌することによって実験台で製造できる。得られた沈殿を遠心分離、洗浄、乾燥およびか焼すると、ヒドロキシルアパタイト様物質が得られる。硝酸カルシウムを、硝酸ストロンチウムと、それぞれの置換パーセンテージで組み合わせることによって、骨欠損にフィブリンとともに一緒に注入できる、ストロンチウム−カルシウムヒドロキシルアパタイト様粒子を製造することが可能である。
【0076】
この例は、ストロンチウム置換カルシウムヒドロキシルアパタイト様粒子が、フィブリン単独または純粋なカルシウムヒドロキシルアパタイト様粒子よりも良好に新規骨形成を刺激することを示すデータを示す。これらの結果は、予備細胞培養の際に得られたデータのin vivo確証を提供する。
【0077】
材料および方法:
本実施例において記載される研究では、以下の化学試薬を用いた。硝酸カルシウム四水和物;99% A.C.S.試薬[Sigma−Aldrich;237124−500G;FW:236,15];硝酸ストロンチウムp.A.>99%[Fluka;85899 500g;Lot&Filling Code:1086321、53706181;FW:211,63];リン酸アンモニウム二相性p.A.[Riedel−de Haen;30402 500g;FW:132,06];水酸化アンモニウム[Sigma−Aldrich、318612−2L;バッチ番号:11103PD;FW:35,05;H
2O中、5N];EtOh96%;Fibrinkleber[Baxter
AG;Fibrinkleber TIM 3;08P6004H;5ml;1500434];トロンビン[Baxter AG; B205553 thromb.SD TIM 5;500IE;US 5ml]; 塩化カルシウム二水和物(ミニム99%)[Sigma; C7902−1KG;バッチ番号:044K0160];および塩化ナトリウム[Merck、1.06404.1000 1kg;Charge/Lot:K38062004 745;FW:58,44.
実験は、以下のとおり種々の溶液を使用した:40mM CaCl
2+200mM NaCl:250ml再蒸留水中、1.47g CaCl
2+2.92g NaCl;凍結乾燥トロンビン−5ml 40mM CaCl
2+200mM NaClで再構成および凍結乾燥フィブリノゲン−5mlの3000KIE/アプロチニン1mlに再構成。
【0078】
実験は、以下のとおりに各々6つのウサギの膝を含む4つの試験群で実施した:
群1.フィブリン+トロンビン(8IU/ml 最終濃度)
群2.フィブリン+トロンビン(8IU/ml 最終濃度)+100%Ca(0% Sr置換)
群3.フィブリン+トロンビン(8IU/ml 最終濃度)+75% Ca(25% Sr置換)
群4.フィブリン+トロンビン(8IU/ml 最終濃度)+20% Ca(80% Sr置換)。
【0079】
試験物質の調製:
フィブリノゲンは、再構成し、1mlシリンジ[Braun;omifix−1ml;Luer]にシリンジあたり0.5mlフィブリノゲンで分注した。トロンビンは、再構成し、40mM CaCl
2+200mM NaClで16IU/mlに希釈した。これも、1mlシリンジに、シリンジあたり0.5mlを分注した。
【0080】
ヒドロキシルアパタイト粉末は、等容積の2M 硝酸カルシウム溶液(またはストロンチウム置換のパーセンテージに従って、硝酸ストロンチウム、得られた溶液は合わせて2Mを有さなくてはならない)および1.2Mリン酸アンモニウム溶液とともに撹拌することによって製造した。硝酸カルシウムにリン酸アンモニウム を添加すると、ペースト状物質が沈殿する。等容積の水酸化アンモニウムをその後添加すると、沈殿物のpHが11に上昇し、ペースト状沈殿物を液体にした。完全に撹拌した後、混合物を遠心分離し、上清を廃棄し、沈殿物をアルコール(エタノール96%)で2回、再蒸留水で1回洗浄した。洗浄ステップの間、沈殿物を常に浄化し、遠心分離し、上清は廃棄した。その後、沈殿物を真空下、60℃で1日間乾燥させ、製粉し、1100℃で1時間か焼した。
【0081】
冷却した後、ヒドロキシルアパタイト様粒子を熱で滅菌し、1mlシリンジに、シリンジあたり0.3gを分注した。
【0082】
ウサギの処理
12匹のウサギを用いて主な実験を実施した。それらを鎮静させ、大腿骨顆部にボアホール(直径4.5mm)をドリルで開けた。粒子を含むトロンビン成分を噴出させた後フィブリノゲンを、または対照としてフィブリノゲンを含むトロンビンのみを噴出させることによって、試験材料のうち1種を用いてこれらのドリルホールを各々埋めた。1mlシリンジの円錐体が、ドリルホールに完璧に適合し、そのために直接適用が可能であった。
【0083】
それぞれの材料を注入した後(24の膝について無作為化した)、皮膚を縫い、その後8週間、ウサギをモニターし続けた。
【0084】
術後分析
8週間後、ウサギを安楽死させることになり、膝をμCTによって分析し、薄片を組織学的に染色した。
【0085】
結果
μCT分析:ストロンチウムサンプルの高い乳白度のために、定量結果を得ることは困難であり、そのため分析は、μCT像を肉眼で評価し、それらを定量化することによって半定量的に実施した。骨形成の評価は、3つのレベル(1:低;2:中程度;3:高)で実施した。閉じられたドリルホールの評価は、閉じられたドリルホールには「+」を、閉じられていないドリルホールには「−」を与えることによって行った。データは、
図8〜14中にグラフで示されている。μCT像はスナップショットであるのに対し、すべてのグラフは、評価可能な処理された動物の平均である。
【0086】
図8は、完全に閉じられた(両側が閉じられている)ドリルホールのグラフを示す。評価された、フィブリンで埋められたウサギ顆状突起欠損のうち、両側が閉じられたものはなく、したがって、ゼロパーセントの完全に閉じられたドリルホール境界が
図8において見られる。粒子中25%Srの置換は、80%の閉じられたドリルホール境界という最高の値をもたらした。
【0087】
図9では、フィブリンの存在下におけるウサギ大腿骨顆部のμCTがある。欠損はまだ明確であるが、残存する物質(フィブリン)は見えず、ドリルホールの片側はまだ開いている。
【0088】
ストロンチウムの添加は著しい効果を引き起こす。
図11は、80%Sr材料におけるウサギ大腿骨顆部のμCTを示す。欠損はまだ明確であるが、欠損のほとんどは埋まっており、材料(Sr80%)ははっきりと目に見える。新規骨形成は明らかに同定可能であり、ドリルホールの両側は閉じられている。
【0089】
上記の結果はまた、組織学的研究を用いて確認された。
図12は、フィブリンで処理されたウサギ大腿骨顆部欠損の組織学的に染色された薄片を示す。試験物質は存在していない。したがって、炎症の兆候は見られない。いくつかの短い海綿骨骨梁がドリルホールの内側に見られる。掘削器具管(bur canal)の開放時に、新規に形成された骨物質は、海綿骨の形のものである。血管は、ドリル腔の内側にほとんど規則的に分布しており、あまり血管新生されていないわずかなスポットのみを示す。いくつかのより大きな血管は、ドリル腔の片側の骨物質に接近して存在する。
【0090】
フィブリン血餅中80%ストロンチウムで処理したサンプル(
図13)では、ドリル腔の40〜70%は試験物質で埋められている。試験物質は、ドリル腔の内側の細長い形のサンプル中すべてにある。1サンプルでは、より顆粒に近く、一方で他の2種はより粗い試験物質を示す。3種のサンプルのうち2種では、フィブリンは、試験物質に近い、より大きなパッチとして存在する。炎症は1サンプル中に数個であり、その他の試料では、3〜10の大きな炎症で変動する。1サンプルでは、試験物質は、新規に構築された骨組織に直接接触しているのに対し、その他の2種では、より離れて存在する。2種のサンプルは、ドリル腔の内側に規則的に分布する血管を有しているのに対し、第3のものは、群生した血管新生を有する。
【0091】
考察
μCTデータは、Sr25%置換ヒドロキシルアパタイト様粒子を含有する製剤は、その他の試験された物質よりも良好にドリルホールの閉鎖を引き起こし、密度は低いものの80%置換粒子に匹敵する骨形成を誘導することを示す。
【0092】
フィブリン単独は、より少ない骨形成しか引き起こさず、ドリルホールは片側のみ閉じられる。純粋なカルシウムヒドロキシルアパタイトを含有する製剤は、あまり密度が高くないが、骨形成またはドリルホールの閉鎖を誘導しないと思われる。
【0093】
高ストロンチウム濃度製剤は極めて密度が高く、新規骨形成を誘導するが、Sr25%よりも大幅ではない。さらに、ドリルホール閉鎖は、低濃度のストロンチウムと比較して悪く、したがって、低濃度のストロンチウムであっても、骨形成を誘導するのに十分である。
【0094】
組織学的結果は、カルシウムヒドロキシルアパタイト様粒子中のストロンチウムの置換は、新規骨の形成を誘導することを示唆する。血管新生、骨芽細胞の移動、従って、新規骨形成の必要条件は、すべてのサンプルにおいて検出された。
実施例4:ストロンチウムは、骨芽細胞に対するPTHと相乗効果を有する。
【0095】
本実施例は、骨形成因子の活性化に対する、副甲状腺ホルモン(PTH)およびストロンチウム(SrC12として用いられる)の組み合わせが、骨芽細胞におけるcAMP産生の増大を好むかどうかを調べるための、ラット骨肉腫細胞でのin vitro研究を記載する。本明細書に記載される研究は、SrC12は、骨芽細胞におけるcAMPの生成において、PTHと正の相乗効果を有することを示す。このような効果は、CaCl
2で処理された細胞については観察されなかった。cAMPは、タンパク同化骨形成を誘導することが知られているので、本明細書に示されるデータは、SrおよびPTHの併用療法は、in vivoでの骨形成の増大につながるという結論を支持する。
【0096】
材料および方法
骨肉腫細胞株UMR−106(NewLab Bioquality AG、Erkrath、Germany)を用いて、バイオアッセイを実施した。
【0097】
以下に記載されるアッセイは以下の培地を用いた:
細胞培養培地:DMEM(Sigma、D6546;4500mg/l グルコース、ピルビン酸Na、Na2CO3を含み、0.584g/l L−グルタミンを補給した);10% FCS;2mM L−Glu。
【0098】
飢餓培地:DMEM(Sigma、D6546;4500mg/l グルコース、ピルビン酸Na、Na2CO3を含み、0.584g/l L−グルタミンを補給した);2mM L−Glu;
SI培地:10ml 飢餓培地;2mM IBMX
飢餓培地中、20mM SrCl2:19,6ml培地 0,4ml 1M SrCl
2
飢餓培地中、20mM CaCl2 19,6ml培地 0,4ml 1M CaCl
2
細胞培養
UMR−106細胞を、30000個細胞/cm
2の密度で増殖培地に播種し、37℃/8.0% CO
2でインキュベートした。24時間後、培地を、新鮮培地、20mM SrCl
2含有する培地または20mM CaCl
2を含有する培地のいずれかで交換した。細胞を、37℃/8.0% CO
2で24時間、さらにインキュベートした。細胞を、以下の手順に従って回収した。
【0099】
細胞を、HBSSで2回洗浄し、6mlのトリプシン/EDTAを用いて、室温で3分間表面から剥離させた。トリプシン消化は、12mlの増殖培地を用いて停止した。遠心分離(3分、1000rpm、RT)後、細胞を、12mlの飢餓培地に再懸濁し、CASY細胞カウンターを用いてカウントした。死細胞の割合は、どの実験でも10%を下回っていた。細胞を、飢餓培地で1.6×10
6個細胞/mlの最終濃度に再懸濁した。50μlの細胞懸濁液を、96ウェルプレートの各ウェルに移し、37℃、8.0%CO
2で30分間インキュベートした。
【0100】
フィブリノゲン溶液中、264μg/ml TGplPTHサンプルでの細胞の処理
サンプルを、2mM IBMX(SI培地)を含有する新たに調製した飢餓培地で希釈した。SI培地の調製には、DMSO中、30μlの0.67M IBMXストックを、10mlの飢餓培地に加えた。
【0101】
すべてのサンプル希釈物を、この培地で調製し、UMR−106細胞におけるホスホジエステラーゼ活性を阻害した(Janik、P.、1980;Chasin M.およびHarris、D.N.、1976)。37℃で30分インキュベートした後、50μlの希釈サンプル(結果に示されるように)を細胞に加えた。cAMP産生細胞を、37℃、8.0%CO
2で1時間インキュベートした。各サンプル濃縮物を、2連のcAMP分析に従って、少なくとも2連で細胞に加えた。
【0102】
cAMP Biotrak酵素免疫アッセイ
cAMP EIAの試薬調製。アッセイバッファー、溶解試薬1A/1B、溶解試薬 2A/2B、cAMP標準、抗血清、cAMPペルオキシダーゼコンジュゲートおよび洗浄バッファーは、製造業者(cAMP Biotrak EIAキット、GE Healthcare)のマニュアルに従って調製した。1M 硫酸停止溶液は、53mlのH
2SO
4(濃度=18.76M)を947mlの再蒸留水で希釈することによって調製した。
【0103】
細胞溶解およびcAMPの希釈。cAMPの抽出のために、100μlのPTHを含有する細胞懸濁液を、25μlの(最終希釈1:5)、cAMP Biotrak EIAキット(GE Healthcare)の一部である、溶解試薬溶媒1Aとともにインキュベートした。完全な溶解のために、細胞を、500rpm、室温で15分間振盪した。抽出されたcAMPは、溶解試薬1B(cAMP Biotrak EIA kit)を用い、最終的に1:20に希釈した(アッセイプレートでの1:1希釈(125μl溶解試薬1Bを加えた)と、それに続く、ELISAプレートでの1:10希釈(90μlの溶解試薬1B+10μlの希釈細胞懸濁液)。
【0104】
cAMP作業標準の調製。非アセチル化アッセイ(cAMP Biotrak EIAキット)の凍結乾燥cAMP標準を、アッセイバッファーに溶解して、32pmol/mlの濃度を得た。2倍希釈シリーズは、32pmol/ml〜0.5pmol/mlの範囲で調製した。
【0105】
内部対照。100μlの各標準およびサンプル希釈物を、適当なウェルに移し、2連で分析した。さらに、2種の異なる内部対照、非特異的結合(NSB)対照およびゼロ対照(0)が、cAMP ELISAの特異性を示すために必要であり、製造業者(GE Healthcare)によって推奨されるように実施した。
【0106】
酵素イムノアッセイ手順。100μlの抗血清を、NSB対照を除くすべてのウェルに加えた。抗体反応は、振盪しながら4℃で2時間実施した。50μlのcAMPペルオキシダーゼコンジュゲートとともに、振盪しながら4℃で1時間インキュベートした後、すべてのウェルを、300μlの洗浄バッファーを用いて4回洗浄した。最後に、各ウェルに、150μlのTMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)を加え、基質反応を、室温で10分間可能にした。反応は、100μlの1M H
2SO
4を加えることによって停止し、およびプレートリーダーを用いて450nmで光学密度を直ちに調べた。
【0107】
データ分析。光学密度は、ソフトウェアKC4を用いて、450nmでサンプルの吸光度を測定することによって、プレートリーダー(Synergy HT)で調べた。バックグラウンド補正、平均値、標準偏差、変動の係数の算出および標準曲線の作製は、Microsoft Excel 2000で実施した。Sigmaplot9.0を、4パラメータフィットおよびEC50算出のために用いた。PLA1.2(Stegmann
Systemberatung)を並列直線分析および相対力の検出のために用いた。
【0108】
結合しているcAMPペルオキシダーゼコンジュゲートのパーセンテージ。各標準およびサンプルの結合しているcAMPペルオキシダーゼコンジュゲートのパーセントを、以下の関係を用いて算出した:
【0109】
【化2】
標準曲線。cAMP標準曲線は、パーセントB/BO(y軸)を、logc(cAMP)(x軸)の関数としてプロットすることによって作成した。
【0110】
サンプル中のcAMP濃度。希釈係数(20×)を考慮して、産生されたcAMP量は、標準曲線のパラメーター(傾きおよび切片)を用いて算出した。
【0111】
直線性:cAMP ELISAの標準曲線の相関係数(R
2>0.95)を評価した。
【0112】
バイオアッセイ分析のためのサンプルの調製。分析のために、サンプルを、2mMのホスホジエステラーゼ阻害剤IBMXを含有する飢餓培地(SI培地)で、2400nMTGplPTH(13,2μg/ml TGplPTH)の最終濃度に希釈した。すべてのサンプルについて、150μlの以下の8シリーズ希釈物を調製し、50μlを細胞(細胞での総容積:100μl)に直接加えた。すべてのサンプルおよびすべての希釈物について、OD450の平均値、標準偏差、cAMP濃度および変動係数を算出した。
【0113】
【化3】
段階希釈の表。用量反応曲線を作製するために、各サンプルについて7回の1:1段階希釈ステップを実施し、すべての希釈物は、3連で分析した。
【0114】
結果
PTH生物活性に対するSrCl
2およびCaCl
2の影響を、5つの異なる実験にわたって独立してモニターした(
図14)。これらの研究によって、TGplPTH処理に先立つUMR−106細胞の、20mM SrC12をともなう24hプレインキュベーションは、生物活性の2倍の増大につながるのに対し、CaCl
2は、PTH生物活性の変化を示さない(
図14)ということが示された。これらの結果は、ストロンチウムおよびPTHが、cAMP産生に対して相乗作用を有することを示し、PTHおよびストロンチウムの組み合わせは、in vivoでのタンパク同化骨形成につながり得るという結論を支持する。