特許第6012555号(P6012555)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012555
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】画像信号のための補間信号生成方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/387 20060101AFI20161011BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20161011BHJP
   G06T 3/40 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   H04N1/387 101
   H04N5/232 Z
   G06T3/40 750
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-137762(P2013-137762)
(22)【出願日】2013年7月1日
(65)【公開番号】特開2015-11598(P2015-11598A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2015年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】596032188
【氏名又は名称】小澤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小澤 直樹
【審査官】 佐田 宏史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−044423(JP,A)
【文献】 特開平11−261807(JP,A)
【文献】 特開2004−023384(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0157786(US,A1)
【文献】 江田 孝治,“DCT符号インデックスを用いた高精細画像の作成法”,電気学会論文誌C,日本,一般社団法人電気学会,2013年 3月 1日,Vol.133, No.3,pp.680-687
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/387,5/232
G06T 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元状に配列された複数の画素で構成される画像信号から水平方向に連続するN画素および垂直方向に連続するN画素で形成されるN×N画素のブロックを成す第1の画素群を抽出し(Nは整数)、
上記第1の画素群から得られる信号に直交変換を施して第1の周波数係数群を生成し、
上記第1の周波数係数群に周波数補正を施して第2の周波数係数群を生成し、
上記第2の周波数係数群に、上記第1の画素群における画素の間隔より小さい間隔で信号を生成する逆直交変換を施して、少なくとも上記第1の画素群に画素が存在しない第1の位置に対応する第1の信号を生成し、
上記画像信号における上記第1の位置に対応する信号として上記第1の信号を用いる画像信号のための補間信号生成方法において、
上記周波数補正は、上記画像信号における上記画素の間隔を2dx、上記画素において入射する光を信号に変換する範囲の一方向における割合をa(1/2<a<1)、画像信号の空間周波数をfとしたとき2a/{1+(2a-1)・cos(2π・f・dx)}に対応する補正係数に基づくものであることを特徴とした画像信号のための補間信号生成方法。
【請求項2】
上記直交変換は離散コサイン変換であり、上記逆直交変換は逆離散コサイン変換であることを特徴とした請求項1記載の画像信号のための補間信号生成方法。
【請求項3】
二次元状に配列された複数の画素で構成される画像信号から水平方向に連続するN画素および垂直方向に連続するN画素で形成されるN×N画素のブロックを成す第1の画素群を抽出し(Nは整数)、
上記第1の画素群から得られる信号に直交変換を施して第1の周波数係数群を生成する処理と、
上記第1の周波数係数群に周波数補正を施して第2の周波数係数群を生成する処理と、
上記第2の周波数係数群に、上記第1の画素群における画素の間隔より小さい間隔で信号を生成する逆直交変換を施して、少なくとも上記第1の画素群に画素が存在しない第1の位置に対応する第1の信号を生成する処理
に対応するフィルタ演算を上記第1の画素群に対して施し、
上記画像信号における上記第1の位置に対応する信号として上記第1の信号を用いる画像信号のための補間信号生成方法において、
上記周波数補正は、上記画像信号における上記画素の間隔を2dx、上記画素において入射する光を信号に変換する範囲の一方向における割合をa(1/2<a<1)、画像信号の空間周波数をfとしたとき2a/{1+(2a-1)・cos(2π・f・dx)}に対応する補正係数に基づくものであることを特徴とした画像信号のための補間信号生成方法。
【請求項4】
上記直交変換は離散コサイン変換であり、上記逆直交変換は逆離散コサイン変換であることを特徴とした請求項3記載の画像信号のための補間信号生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像信号のための補間信号生成方法に関する。さらに詳しくは、固体撮像素子を用いて生成された画像信号の画素数を増加させるのに適した、画像信号のための補間信号生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、一般的なテレビジョン放送で得られる画像信号のうちで最も解像度の高い画像信号はフルハイビジョンと呼ばれるもので、水平1920画素、垂直1080画素で構成されている。これに対して、水平方向・垂直方向とも画素数を2倍に増加させた4Kと呼ばれる方式の開発が進められ、すでにこれに対応する液晶ディスプレイなどが入手可能となっている。
そこでフルハイビジョンの画像信号を水平方向・垂直方向とも画素数が2倍になるように補間して、4Kに対応する画像信号を生成する方法が提案され、実施されている。
【0003】
こうした画素の補間に用いることができる補間信号の生成方法として、線形補間方法やバイキュービック補間方法が知られているが、離散コサイン変換(以後“DCT”)と逆離散コサイン変換(以後“IDCT”)によって補間信号を生成する方法が米国特許5,168,375、あるいは特開平11−261807に述べられている。
こうした方法では、元の画像信号の画素に対してDCT処理を行い、得られた周波数係数を用いてIDCT処理を行う際に、DCTに用いた画素の間隔に比べて半分の間隔で信号を再生することによって補間画素の信号を生成するものである。これによれば、補間信号が元の画素から得られた周波数係数を用いて生成されるので、周波数特性を低下させることなく画素の補間を達成できる。
【0004】
さらに、上述の米国特許5,168,375には、DCTで得られた周波数係数に周波数特性に対応する係数を乗算することによってIDCTで得られる再生信号の周波数補正を達成する方法が述べられている。この方法によると、画素の補間をDCTとIDCTの処理で行うことを前提とすれば、通常は画素信号とフィルタマトリクス係数との積和演算で実現する周波数補正の処理が、DCTで得られた周波数係数に対する補正係数の乗算で達成できるので、全体の処理が簡素化する。
【0005】
また、特開2004−23384に示されている従来技術では、画素の補間をDCTとIDCTの処理で行うときには、補間信号は元となる画素の信号の1次結合として得られることから、DCT処理の対象となるブロックの画素に対して2次元のフィルタ処理を施せばよいことが示されている。この方法によれば補間信号の生成のための処理がさらに簡素化する。
【0006】
一方、最近は一般向けのビデオカメラやディジタルスチルカメラなどはもとより、放送用のテレビカメラに至るまで、ほとんどの撮像装置に固体撮像素子が用いられている。こうした撮像装置では、固体撮像素子の撮像面に2次元状に並べられた複数の画素から得られた信号を、表示装置に対応したフォーマットに変換することによって画像信号が生成される。たとえば放送用テレビカメラでフルハイビジョンの画像信号を得る際に水平1920画素、垂直1080画素の固体撮像素子を用いれば、固体撮像素子の画素とフルハイビジョン対応の表示装置の画素が1対1に対応する。
こうしたことから、フルハイビジョンの画像信号を4Kの表示装置に対応させるために水平方向・垂直方向とも画素数が2倍になるように補間することは、固体撮像素子の画素を分割して水平方向・垂直方向とも2倍に倍増する処理に対応している。したがって、固体撮像素子によって得られたフルハイビジョンの画像信号を、補間によって4Kの画像信号に変換する際には、画素の分割に対応する周波数特性の補正をすべきである。しかし従来技術の補間信号生成方法では、固体撮像素子の画素を分割する処理に適合した補正が可能な補間信号の生成方法が示されていない。
【0007】
従来技術のひとつである特開2007−281720では、固体撮像素子において複数の画素の信号を混合して読み出す画素混合読み出しで得られた画像の解像度を復元する方法を示している。ここで示されている方法は、画素混合読み出しで得られた画像にDFT処理を施し、得られた周波数係数にレンズなどの撮影条件に係わる係数や画素混合の混ざり方に関する係数を乗算してから逆DFT処理を施すことによって、画素混合読み出しで得られた画像の解像度を復元するものである。
しかしこれは、隣接していない画素間の信号を混合した場合の解像度の復元方法を示しているものの、固体撮像素子の画素を分割して倍増させる処理に適した補正方法は示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−261807号公報
【特許文献2】特開2004−23384号公報
【特許文献3】特開2007−281720号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】米国特許No.5,168,375
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上述べたように、従来技術による画像信号のための補間信号生成方法では、固体撮像素子で得られた画像信号をDCTとIDCTの処理によって補間する方法と、DCTで得られた周波数係数に対して係数を乗算することでIDCTの処理で得られる画像信号に周波数補正を施す方法が示されている。また、従来技術による補間信号生成方法では、画素混合読み出しによって得られた画像信号の解像度の復元を、DFTで得られた周波数係数に対して補正係数を乗算してからIDFTの処理で実現する方法が示されている。
しかし、固体撮像素子の画素を分割して画素数を倍増させる処理に適合した周波数補正方法が示されておらず、DCTとIDCTの処理によって十分な確からしさをもつ画素数倍増後の画像信号を得ることができなかった。
【0011】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、固体撮像素子の画素を分割して画素数を倍増させる処理に適合した周波数補正が可能で、固体撮像素子で得られた画像信号を十分な確からしさをもって補間するのに適した画像信号のための補間信号生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の画像信号のための補間信号生成方法では、二次元状に配列された複数の画素で構成される画像信号から水平方向に連続するN(Nは整数)画素および垂直方向に連続するN画素で形成されるN×N画素のブロックを成す第1の画素群を抽出し、上記第1の画素群から得られる信号に直交変換を施して第1の周波数係数群を生成し、上記第1の周波数係数群に周波数補正を施して第2の周波数係数群を生成し、上記第2の周波数係数群に、上記第1の画素群における画素の間隔と比べて二分の一の間隔で信号を生成する逆直交変換を施して少なくとも上記第1の画素群に画素が存在しない第1の位置に対応する第1の信号を生成し、上記画像信号における上記第1の位置に対応する信号として上記第1の信号を用いる。このとき、上記周波数補正は、上記画像信号を構成する上記画素を分割する処理に対応する補正係数に基づくものとすればよい。
【0013】
また、本発明の画像信号のための補間信号生成方法では、二次元状に配列された複数の画素で構成される画像信号から水平方向に連続するN(Nは整数)画素および垂直方向に連続するN画素で形成されるN×N画素のブロックを成す第1の画素群を抽出し、さらに、上記第1の画素群から得られる信号に直交変換を施して第1の周波数係数群を生成する処理と、上記第1の周波数係数群に周波数補正を施して第2の周波数係数群を生成する処理と、上記第2の周波数係数群に、上記第1の画素群における画素の間隔と比べて二分の一の間隔で信号を生成する逆直交変換を施して少なくとも上記第1の画素群に画素が存在しない第1の位置に対応する第1の信号を生成する処理に対応するフィルタ演算を上記第1の画素群に対して施し、上記画像信号における上記第1の位置に対応する信号として上記第1の信号を用いることとしてもよい。このとき、上記周波数補正は、上記画像信号を構成する上記画素を分割する処理に対応する補正係数に基づくものとすればよい。
【0014】
また、本発明の画像信号の補間信号生成方法において上記直交変換は離散コサイン変換とし、上記逆直交変換は逆離散コサイン変換とすることができる。
さらに上記補正係数は、上記画像信号における上記画素の間隔を2dx、上記画素において入射する光を信号に変換する範囲の一方向における割合をa(1/2<a<1)、画像信号の空間周波数をfとしたとき2a/{1+(2a-1)・cos(2π・f・dx)}に対応するよう、設定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の画像信号のための補間信号生成方法によれば、固体撮像素子の画素を分割して画素数を倍増させる処理に適合した周波数補正が可能となる。この結果、固体撮像素子で得られた画像信号を画素数が倍増された表示装置で表示する場合にも、画素数が2倍である固体撮像素子から得られるべき信号に近い画像信号が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は本発明の画像信号のための補間信号生成方法の実施の形態を示す図である。(実施例1)
図2図2は本発明の画像信号のための補間信号生成方法に用いるブロック抽出回路の構成の一例を示す図である。
図3図3はDCT処理に用いる画素のブロックを示す図である。
図4図4は固体撮像素子の画素を分割する方法を示す図である。
図5図5は画素の大きさが1/2で画素数が2倍である画像信号を1倍の画素の画像信号に変換したときの周波数応答を示す図である。
図6図6はDCTとIDCTの処理によって画素の大きさが1/2で画素数が2倍である画像信号に復元するときの周波数補正係数を示す図である。
図7図7は本発明の画像信号のための補間信号生成方法の他の実施の形態を示す図である。(実施例2)
図8図8は固体撮像素子の画素の開口率が100%より小さい場合において、画素を分割したときの状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明による画像信号のための補間信号生成方法を適用した画像装置の第1の実施の形態を示す構成図である。図1において1の部分は撮像装置である。撮像装置1では、レンズを含む光学系101でとらえた画像を固体撮像素子102で電気信号に変換し、これをカラー信号プロセッサ103でカラーの三原色であるR(赤)信号、G(緑)信号、B(青)信号の3チャンネルの画像信号に変換する。ここで、R信号、G信号、B信号は、それぞれ固体撮像素子102の各画素に対応するすべてのサンプリング位置での信号を持つように生成されるものとする。
【0019】
また、図1において2は補間信号生成装置である。補間信号生成装置2では、撮像装置1から得られたR信号、G信号、B信号が、それぞれブロック抽出回路201に加えられる。ブロック抽出回路201は、入力信号からDCTに必要なたとえば水平方向8画素、垂直方向8画素のブロックを構成する合計64画素の信号を抽出して同時に出力する。ブロック抽出回路201から得られた64画素の信号はDCT処理回路202に加えられてDCT処理が施され、水平方向8周波数、垂直方向8周波数のマトリクスを成す周波数係数群に変換される。
DCT処理回路202で得られた周波数係数群は周波数補正回路203に加えられ、各周波数係数に固体撮像素子の画素を分割する処理に適合した補正係数が乗じられる。周波数補正回路203から得られた周波数補正後の周波数係数群はIDCT処理回路204に加えられ、DCT処理回路202に加えられた元の画素の間隔に比して1/2の間隔で信号を生成するIDCT処理が施される。これによって、元の画素の間に補間信号が生成されて水平方向、垂直方向とも画素が2倍に増加された信号が得られる。さらにIDCT処理回路204から得られた信号は、メモリを用いた並べ換え回路205で水平方向・垂直方向の画素数が固体撮像素子102の2倍である表示装置に対応した画像信号に変換される。
並べ換え回路205から得られた画像信号は、補間信号生成装置2につながる図には示さない後段の表示装置あるいは伝送装置に送られる。
【0020】
ここで、補間信号生成装置2の動作を、特に周波数補正回路203での補正係数に重点を置いて、図を用いて詳しく説明する。ここでは撮像装置1のカラー信号プロセッサ103から出力されたG信号、R信号、B信号にそれぞれ同様の処理を施すものとして、G信号を処理する1チャンネル分のみ説明する。
【0021】
補間信号生成装置2では、撮像装置1のカラー信号プロセッサ103から加えられたG信号がブロック抽出回路201に加えられ、水平方向8画素、垂直方向8画素のブロックを成す64画素の信号が同時に得られるよう抽出される。ブロック抽出回路201の一例は、図2に示すように入力信号を1水平走査期間だけ遅延させる1H遅延回路301を7段にわたって直列に接続することで垂直方向8画素の信号を同時に得て、さらに入力信号と各1H遅延回路の出力を1画素分遅延する1画素遅延回路302で7段にわたって遅延させて水平方向8画素の信号を同時に得るようにすればよいことは周知の技術である。
こうして抽出されたブロックを成す64画素の一例を図3に示す。図において垂直方向の位置をiであらわし、水平方向の位置をjであらわすものとし、図の左上端がi=0,j=0に対応する画素X(0,0)とする。また、ブロックの各画素の位置に記したx(0,0)、x(0,1)などは、対応する各画素から得られる信号の大きさを示すものとする。
【0022】
ブロック抽出回路201から得られた1ブロック分の画素の信号はDCT処理回路202に加えられ、つぎの(1)式であらわされる周知の離散コサイン変換が施されて垂直方向8周波数(u=0,1,2,…,7)、水平方向8周波数(v=0,1,2,…,7)のブロックを成す合計64の周波数係数群に変換される。ここで、垂直の周波数u、水平の周波数vに対応する周波数係数をF(u,v)とする。また、ここではN=8とする。
【0023】
【数1】
【0024】
DCT処理回路202で得られた周波数係数群は周波数補正回路203に加えられ、固体撮像素子の画素を分割する処理に適合した周波数補正が施される。次に、ここで施される周波数補正について説明する。
【0025】
図4(a)に固体撮像素子における水平方向・垂直方向に隣り合う4画素の一例を示す。ここでは、撮像面に入射したほとんどの光が画素での光電荷の生成に利用される、画素の開口率が100%に近い場合を想定する。100%に近い開口率は、撮像面を配線のない裏面側に置いた裏面照射型の固体撮像素子や、各画素に集光のためのマイクロレンズを組み合わせた固体撮像素子で実現可能である。
図4(a)において、画素X(n,m)、画素X(n,m+1)、画素X(n+1,m)、画素X(n+1,m+1)で蓄積された光電荷の信号は、それぞれその中心であるA,B,C,Dの位置で得られた信号x(n,m)、x(n,m+1)、x(n+1,m)、x(n+1,m+1)として固体撮像素子から出力される。
【0026】
図4(a)に示した画素を、水平方向と垂直方向に画素数が2倍になるよう分割するにあたって、A,B,C,Dの位置で得られる信号と、その中間の位置で得られる信号を生成するように分割する方法は、図4(b)に示すとおりである。すなわち、大きさが元の画素の半分で、A,B,C,Dを中心とする画素と、その中間に位置して元の画素の境界に中心を置く画素に分割するものである。
【0027】
図4(b)において、A,B,C,Dを中心とする画素をそれぞれX2(2n,2m)、X2(2n,2(m+1))、X2(2(n+1),2m)、X2(2(n+1),2(m+1))とすると、たとえばAとBの間の画素をX2(2n,2m+1)、AとCの間の画素をX2(2n+1,2m)などとなる。同様にして、もとの画素の中心に対応する画素とその周辺の位置に対応する画素を想定したとき、図4(b)に示すとおりたとえばAを中心とする画素X2(2n,2m)の左上方の画素がX2(2n-1,2m-1)、上方の画素がX2(2n-1,2m)、右上方の画素がX2(2n-1,2m+1)、左方の画素がX2(2n,2m-1)、右方の画素がX2(2n,2m+1)、左下方の画素がX2(2n+1,2m-1)、下方の画素がX2(2n+1,2m)、そして右下方の画素がX2(2n+1,2m+1)となる。
【0028】
図4(a)と図4(b)の比較から、画素X(n,m)は画素X2(2n,2m)を全て包含し、上下左右に隣接する画素X2(2n-1,2m)、X2(2n,2m-1)、X2(2n,2m+1)、X2(2n+1,2m)を半分だけ含み、斜め方向にある画素X2(2n-1,2m-1)、X2(2n-1,2m+1)、X2(2n+1,2m-1)、X2(2n+1,2m+1)を1/4だけ含むことがわかる。この結果、これらの画素から得られる信号x2(2n,2m)、x2(2n-1,2m-1)、x2(2n-1,2m)、x2(2n-1,2m+1)、x2(2n,2m-1)、x2(2n-1,2m+1)、x2(2n+1,2m-1)、x2(2n+1,2m)、およびx2(2n+1,2m+1)を用いると、画素X(n,m)で得られる信号x(n,m)はつぎの(2)式であらわされるものとなる。
【0029】

x(n,m)=x2(2n,2m)

+{x2(2n-1,2m)+x2(2n,2m-1)+x2(2n,2m+1)+ x2(2n+1,2m)}×1/2

+{x2(2n-1,2m-1)+x2(2n-1,2m+1)+x2(2n+1,2m-1)+x2(2n+1,2m+1)}×1/4

(2)
【0030】
ここで、画素の信号x2(2n,2m)が水平方向のみに正弦波状に変化するつぎの(3)式の関係であるとき、(2)式はつぎの(4)式となる。ここで、fは任意の周波数であり、dxは補間後の画素の間隔である。

x2(2n,2m)=exp(j2π・f・2m・dx) (3)

x(n,m)=exp(j2π・f・2m・dx)

+{ exp(j2π・f・2m・dx)+ exp(j2π・f・(2m-1)・dx)

+ exp(j2π・f・(2m+1)・dx)+ exp(j2π・f・2m・dx)} ×1/2

+{ exp(j2π・f・(2m-1)・dx)+ exp(j2π・f・(2m+1)・dx)

+ exp(j2π・f・(2m-1)・dx)+ exp(j2π・f・(2m+1)・dx)} ×1/4

=2・exp(j2π・f・2m・dx)・{1+exp(-j2π・f・dx)/2+ exp(j2π・f・dx)/2}

(4)
【0031】
さらに(4)式にexp(jx)=cos(x)+jsin(x)を適用すると、つぎの(5)式となる。

x(n,m)=4・exp(j2π・f・2m・dx)・1/2・{1+cos(2π・f・dx )} (5)
【0032】
(5)式の右辺前半のexp(j2π・f・2m・dx)は振幅が一定で正弦波状に変化する原信号をあらわす部分であり、後半の1/2・{1+cos(2π・f・dx )}が水平方向の画素の大きさが1/2で画素数が2倍であるときの信号に対する画素の大きさを2倍にして画素数を半減させた元の画素による信号の周波数応答をあらわす部分である。換言すれば、後半の逆数の2/{1+cos(2π・f・dx )}は、元の画素で得られる信号に対する画素を分割して大きさを1/2に、画素数を2倍にしたときの信号の周波数応答をあらわす。
1/2・{1+cos(2π・f・dx )}であらわされる周波数応答は図5に示すとおりであり、元の画素のサンプリング周波数である1/2dxで零となり、ナイキスト周波数である1/4dxで1/2となる。なお、ナイキスト周波数である1/4dx は、(1)式の水平周波数vではv=8に対応する。したがって、水平周波数v であらわす周波数応答R(v)はつぎの(6)式となる。

R(v)=1/2・{1+cos(2π・v/32dx・dx)}

=1/2・{1+cos(π・v/16)} (6)
【0033】
このとき周波数補正回路203で、DCT処理回路202で得られた周波数係数群の各々に、周波数応答R(v)の逆数2/{1+cos(π・v/16)}が乗算されれば、水平方向の画素の大きさが1/2で画素数が2倍である画像信号を1倍の画素の画像信号に置き換える課程で生じた周波数特性の劣化を補正できる。
上記の説明では水平方向の処理を例に取ったが、垂直方向に関しても同様である。こうして(6)式のR(v)と垂直方向に拡張したときのR(u)を乗算して求めたR(u,v)の逆数として求めた周波数補正のための係数を図6に示す。図6において水平方向v、垂直方向uは周波数をあらわし、各周波数位置に記した値が当該周波数での周波数係数に対して乗ずべき補正係数である。すなわち、図1に示す補間信号生成装置2において周波数補正回路203は、DCT処理回路202から得られた水平方向8周波数、垂直方向8周波数のブロックを成す周波数係数群の各々に、図6に示す補正係数をそれぞれ対応する周波数ごとに乗算すればよい。
その後、周波数補正回路203から得られた周波数補正後の周波数係数群F2(u,v)をIDCT処理回路204に加え、元の画像信号に比べて画素の間隔が1/2である信号を生成する。すなわち、次の(7)式においてi、jにそれぞれ零から2N-1までを入れてx2(i,j)を求めれば、画素の大きさが1/2で、画素数が2倍である固体撮像素子から本来得られるべき信号に近い信号が得られる。
【0034】
【数2】
【0035】
こうしてIDCT処理回路204から得られた信号は、水平方向および垂直方向の画素数が元の画像信号の2倍となるので、メモリを用いた並べ換え回路205によって走査線の補間等が施されて補間信号生成装置2から出力される。
【実施例2】
【0036】
図7は本発明による画像信号のための補間信号生成方法を用いた画像装置の第2の実施の形態を示す構成図である。図7において撮像装置1は、図1に示した第1の実施の形態と同一のものであり、同一の動作を行うものとする。
また、図7における補間信号生成装置4では、撮像装置1のカラー信号プロセッサ103から得られたR信号、G信号、B信号を、それぞれ図1における補間信号生成装置2と同様、ブロック抽出回路201に加える。ブロック抽出回路201で、たとえば水平方向8画素、垂直方向8画素のブロックを成す合計64画素の信号が同時に得られるよう、メモリを用いて抽出されることも図1における補間信号生成装置2と同様である。これに対して、補間信号生成装置4ではブロック抽出回路201から得られた64画素の信号はフィルタ処理回路206に加えられる。
【0037】
前述の特開2004−23384に示されているように、画素の補間をDCTとIDCTの処理で行うときには、補間信号は元の画素の信号を1次結合して得られることから、DCT処理の対象となるブロックの各画素に対して2次元のフィルタ処理を施せばよい。図1に示した補間信号生成装置2における周波数補正回路203は、DCT処理回路202から得られた水平方向8周波数、垂直方向8周波数のブロックを成す周波数係数群の各々に、図6に示す補正係数をそれぞれ対応する周波数ごとに乗算するものであるから、補間信号が元の画素の信号を1次結合して得られることに変わりはない。そこで、フィルタ処理回路206は、図1に示した補間信号生成装置2においてDCT処理回路202,周波数補正回路203、IDCT処理回路204の処理で生成される一つの信号に対して対応する一つのフィルタ処理機能を備えるものとすればよい。これによってフィルタ処理回路206からは、図1においてIDCT処理回路204から得られるものと同一の信号が得られるようにできる。
このとき、フィルタ処理回路206におけるフィルタ処理機能のためのフィルタ係数は、特開2004−23384で述べられている公知の方法で得ることができる。すなわち、IDCT処理で得るある位置の信号に対して、処理に用いるブロックを成す画素のうちのある画素の信号のみを“1”とおき、DCT処理回路202,周波数補正回路203、IDCT処理回路204の処理を施して出力を求める。このときの出力を、ある位置の信号に対するブロックを成す画素のうちの信号を”1”とおいた当該画素に対応するフィルタ係数とすればよい。
【0038】
フィルタ処理回路206で得られた信号は、図1における補間信号生成装置2でのIDCT処理回路204の出力と同様、メモリを用いた並べ換え回路205で水平方向・垂直方向の画素数が固体撮像素子102の2倍である表示装置に対応する画像信号に変換される。並べ換え回路205から得られた画像信号が、補間信号生成装置4につながる図には示さない後段の表示装置あるいは伝送装置に送られることは、図1における補間信号生成装置2と同様である。
【0039】
なお、以上の説明はG信号、R信号、B信号に同様の処理を施す場合を例にとって説明したが、カラー信号プロセッサが輝度信号と色差信号を出力する場合には輝度信号のみに適用して、色差信号には線形補間などの一般的な補間処理を施してもよい。
また、以上の説明では補間信号生成装置が撮像装置に直接接続される場合を例に取ったが、撮像装置と補間信号生成装置の間に、図には示さない伝送装置が挿入されてもよいことは明らかである。
【0040】
また、以上の説明ではDCT処理による直交変換を行うものとして説明したが、離散サイン変換、アダマール変換など他の直交変換でも同様の効果が得られることは容易に類推できる。
さらに、上記の説明は水平方向および垂直方向に画素数を倍増させる場合を例にとって説明したが、表示装置等との対応によっては、IDCT処理回路において水平方向、あるいは垂直方向のいずれか一方のみを倍増させるよう画素の信号を生成してもよい。
また、上記の説明では本発明の処理をハードウェアによって実現するものとしたが、ソフトウェアによって処理されても良いことは明らかである。
【0041】
また、上記の説明は固体撮像素子における画素の開口率が100%に近い場合を例にとって説明したが、100%を下回る場合にもその割合に対応させて(4)式における上下左右に隣接する画素の信号の割合を1/2より小さくし、斜め方向の画素の信号の割合を1/4より小さくする方向で周波数応答R(v)を求め、その逆数で周波数補正回路203の補正係数を得ればよいことは容易に類推できる。
たとえば、元の画像信号において画素の水平方向および垂直方向の幅2dxに対して90%の部分に入射する光が信号に変換されるときにあたる開口率が81%である場合、図8(a)に示すように画素の周辺からdx/10の範囲に入射した光は信号を発生しない。このとき図4(b)と同様に画素を1/2の大きさに分割すると図8(b)に示すようになり、画素X4(2n,2m)の開口率は100%とみなせるのに対して、隣接する画素X4(2n+1,2m)は垂直方向の画素の幅dxに対してdx/5の部分に入射した光は信号に変換されないので開口率は80%となる。また、斜め方向の画素X4(2n+1,2m+1)は、水平方向と垂直方向の画素の幅dxに対してそれぞれdx/5の部分に入射した光は信号に変換されないので開口率は64%である。
このとき(2)式に対応するのは次の(8)式であり、(6)式に対応する周波数応答R2(v)は次の(9)式となる。
【0042】

x3(n,m)=x4(2n,2m)

+{x4(2n-1,2m)+x4(2n,2m-1)+x4(2n,2m+1)+ x4(2n+1,2m)}×2/5

+{x4(2n-1,2m-1)+x4(2n-1,2m+1)+x4(2n+1,2m-1)+x4(2n+1,2m+1)}×4/25

(8)

R2(v)=5/9・{1+4/5・cos(2π・v/32dx・dx)}

=5/9・{1+4/5・cos(π・v/16)} (9)
【0043】
以上の説明を、画素の水平方向と垂直方向の幅2dxに対して入射した光が信号に変換される部分の割合がa(aは1以下、1/2以上とする)であるときに拡げると、周波数応答R3(v)は次の(10)式となる。

R3(v)=1/2a・{1+(2a-1)・cos(2π・v/32dx・dx)}

=1/2a・{1+(2a-1)・cos(π・v/16)} (10)

このとき周波数補正回路の補正係数は、こうして求められる周波数応答の逆数に設定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように、本発明の画像信号のための補間信号生成方法によれば、固体撮像素子の画素を分割して画素数を倍増させる処理に適合した周波数補正が可能となる。この結果、固体撮像素子で得られた画像信号の画素数をDCT処理と周波数補正後の周波数係数に対するIDCT処理によって十分な確からしさをもって倍増することが可能となる。これによって、フルハイビジョンの画像信号を4Kに対応する表示装置で表示する場合にも、4Kの画像に対応する固体撮像素子で本来得られるべき画像信号に近い良好な画像信号が得られる。
【符号の説明】
【0045】
1 撮像装置
2、4 補間信号生成装置
101 光学系
102 固体撮像素子
103 カラー信号プロセッサ
201 ブロック抽出回路
202 DCT処理回路
203 周波数補正回路
204 IDCT処理回路
205 並べ換え回路
206 フィルタ処理回路
301 1H遅延回路
302 1画素遅延回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8