【実施例1】
【0018】
図1は本発明による画像信号のための補間信号生成方法を適用した画像装置の第1の実施の形態を示す構成図である。
図1において1の部分は撮像装置である。撮像装置1では、レンズを含む光学系101でとらえた画像を固体撮像素子102で電気信号に変換し、これをカラー信号プロセッサ103でカラーの三原色であるR(赤)信号、G(緑)信号、B(青)信号の3チャンネルの画像信号に変換する。ここで、R信号、G信号、B信号は、それぞれ固体撮像素子102の各画素に対応するすべてのサンプリング位置での信号を持つように生成されるものとする。
【0019】
また、
図1において2は補間信号生成装置である。補間信号生成装置2では、撮像装置1から得られたR信号、G信号、B信号が、それぞれブロック抽出回路201に加えられる。ブロック抽出回路201は、入力信号からDCTに必要なたとえば水平方向8画素、垂直方向8画素のブロックを構成する合計64画素の信号を抽出して同時に出力する。ブロック抽出回路201から得られた64画素の信号はDCT処理回路202に加えられてDCT処理が施され、水平方向8周波数、垂直方向8周波数のマトリクスを成す周波数係数群に変換される。
DCT処理回路202で得られた周波数係数群は周波数補正回路203に加えられ、各周波数係数に固体撮像素子の画素を分割する処理に適合した補正係数が乗じられる。周波数補正回路203から得られた周波数補正後の周波数係数群はIDCT処理回路204に加えられ、DCT処理回路202に加えられた元の画素の間隔に比して1/2の間隔で信号を生成するIDCT処理が施される。これによって、元の画素の間に補間信号が生成されて水平方向、垂直方向とも画素が2倍に増加された信号が得られる。さらにIDCT処理回路204から得られた信号は、メモリを用いた並べ換え回路205で水平方向・垂直方向の画素数が固体撮像素子102の2倍である表示装置に対応した画像信号に変換される。
並べ換え回路205から得られた画像信号は、補間信号生成装置2につながる図には示さない後段の表示装置あるいは伝送装置に送られる。
【0020】
ここで、補間信号生成装置2の動作を、特に周波数補正回路203での補正係数に重点を置いて、図を用いて詳しく説明する。ここでは撮像装置1のカラー信号プロセッサ103から出力されたG信号、R信号、B信号にそれぞれ同様の処理を施すものとして、G信号を処理する1チャンネル分のみ説明する。
【0021】
補間信号生成装置2では、撮像装置1のカラー信号プロセッサ103から加えられたG信号がブロック抽出回路201に加えられ、水平方向8画素、垂直方向8画素のブロックを成す64画素の信号が同時に得られるよう抽出される。ブロック抽出回路201の一例は、
図2に示すように入力信号を1水平走査期間だけ遅延させる1H遅延回路301を7段にわたって直列に接続することで垂直方向8画素の信号を同時に得て、さらに入力信号と各1H遅延回路の出力を1画素分遅延する1画素遅延回路302で7段にわたって遅延させて水平方向8画素の信号を同時に得るようにすればよいことは周知の技術である。
こうして抽出されたブロックを成す64画素の一例を
図3に示す。図において垂直方向の位置をiであらわし、水平方向の位置をjであらわすものとし、図の左上端がi=0,j=0に対応する画素X(0,0)とする。また、ブロックの各画素の位置に記したx(0,0)、x(0,1)などは、対応する各画素から得られる信号の大きさを示すものとする。
【0022】
ブロック抽出回路201から得られた1ブロック分の画素の信号はDCT処理回路202に加えられ、つぎの(1)式であらわされる周知の離散コサイン変換が施されて垂直方向8周波数(u=0,1,2,…,7)、水平方向8周波数(v=0,1,2,…,7)のブロックを成す合計64の周波数係数群に変換される。ここで、垂直の周波数u、水平の周波数vに対応する周波数係数をF(u,v)とする。また、ここではN=8とする。
【0023】
【数1】
【0024】
DCT処理回路202で得られた周波数係数群は周波数補正回路203に加えられ、固体撮像素子の画素を分割する処理に適合した周波数補正が施される。次に、ここで施される周波数補正について説明する。
【0025】
図4(a)に固体撮像素子における水平方向・垂直方向に隣り合う4画素の一例を示す。ここでは、撮像面に入射したほとんどの光が画素での光電荷の生成に利用される、画素の開口率が100%に近い場合を想定する。100%に近い開口率は、撮像面を配線のない裏面側に置いた裏面照射型の固体撮像素子や、各画素に集光のためのマイクロレンズを組み合わせた固体撮像素子で実現可能である。
図4(a)において、画素X(n,m)、画素X(n,m+1)、画素X(n+1,m)、画素X(n+1,m+1)で蓄積された光電荷の信号は、それぞれその中心であるA,B,C,Dの位置で得られた信号x(n,m)、x(n,m+1)、x(n+1,m)、x(n+1,m+1)として固体撮像素子から出力される。
【0026】
図4(a)に示した画素を、水平方向と垂直方向に画素数が2倍になるよう分割するにあたって、A,B,C,Dの位置で得られる信号と、その中間の位置で得られる信号を生成するように分割する方法は、
図4(b)に示すとおりである。すなわち、大きさが元の画素の半分で、A,B,C,Dを中心とする画素と、その中間に位置して元の画素の境界に中心を置く画素に分割するものである。
【0027】
図4(b)において、A,B,C,Dを中心とする画素をそれぞれX2(2n,2m)、X2(2n,2(m+1))、X2(2(n+1),2m)、X2(2(n+1),2(m+1))とすると、たとえばAとBの間の画素をX2(2n,2m+1)、AとCの間の画素をX2(2n+1,2m)などとなる。同様にして、もとの画素の中心に対応する画素とその周辺の位置に対応する画素を想定したとき、
図4(b)に示すとおりたとえばAを中心とする画素X2(2n,2m)の左上方の画素がX2(2n-1,2m-1)、上方の画素がX2(2n-1,2m)、右上方の画素がX2(2n-1,2m+1)、左方の画素がX2(2n,2m-1)、右方の画素がX2(2n,2m+1)、左下方の画素がX2(2n+1,2m-1)、下方の画素がX2(2n+1,2m)、そして右下方の画素がX2(2n+1,2m+1)となる。
【0028】
図4(a)と
図4(b)の比較から、画素X(n,m)は画素X2(2n,2m)を全て包含し、上下左右に隣接する画素X2(2n-1,2m)、X2(2n,2m-1)、X2(2n,2m+1)、X2(2n+1,2m)を半分だけ含み、斜め方向にある画素X2(2n-1,2m-1)、X2(2n-1,2m+1)、X2(2n+1,2m-1)、X2(2n+1,2m+1)を1/4だけ含むことがわかる。この結果、これらの画素から得られる信号x2(2n,2m)、x2(2n-1,2m-1)、x2(2n-1,2m)、x2(2n-1,2m+1)、x2(2n,2m-1)、x2(2n-1,2m+1)、x2(2n+1,2m-1)、x2(2n+1,2m)、およびx2(2n+1,2m+1)を用いると、画素X(n,m)で得られる信号x(n,m)はつぎの(2)式であらわされるものとなる。
【0029】
x(n,m)=x2(2n,2m)
+{x2(2n-1,2m)+x2(2n,2m-1)+x2(2n,2m+1)+ x2(2n+1,2m)}×1/2
+{x2(2n-1,2m-1)+x2(2n-1,2m+1)+x2(2n+1,2m-1)+x2(2n+1,2m+1)}×1/4
(2)
【0030】
ここで、画素の信号x2(2n,2m)が水平方向のみに正弦波状に変化するつぎの(3)式の関係であるとき、(2)式はつぎの(4)式となる。ここで、fは任意の周波数であり、dxは補間後の画素の間隔である。
x2(2n,2m)=exp(j2π・f・2m・dx) (3)
x(n,m)=exp(j2π・f・2m・dx)
+{ exp(j2π・f・2m・dx)+ exp(j2π・f・(2m-1)・dx)
+ exp(j2π・f・(2m+1)・dx)+ exp(j2π・f・2m・dx)} ×1/2
+{ exp(j2π・f・(2m-1)・dx)+ exp(j2π・f・(2m+1)・dx)
+ exp(j2π・f・(2m-1)・dx)+ exp(j2π・f・(2m+1)・dx)} ×1/4
=2・exp(j2π・f・2m・dx)・{1+exp(-j2π・f・dx)/2+ exp(j2π・f・dx)/2}
(4)
【0031】
さらに(4)式にexp(jx)=cos(x)+jsin(x)を適用すると、つぎの(5)式となる。
x(n,m)=4・exp(j2π・f・2m・dx)・1/2・{1+cos(2π・f・dx )} (5)
【0032】
(5)式の右辺前半のexp(j2π・f・2m・dx)は振幅が一定で正弦波状に変化する原信号をあらわす部分であり、後半の1/2・{1+cos(2π・f・dx )}が水平方向の画素の大きさが1/2で画素数が2倍であるときの信号に対する画素の大きさを2倍にして画素数を半減させた元の画素による信号の周波数応答をあらわす部分である。換言すれば、後半の逆数の2/{1+cos(2π・f・dx )}は、元の画素で得られる信号に対する画素を分割して大きさを1/2に、画素数を2倍にしたときの信号の周波数応答をあらわす。
1/2・{1+cos(2π・f・dx )}であらわされる周波数応答は
図5に示すとおりであり、元の画素のサンプリング周波数である1/2dxで零となり、ナイキスト周波数である1/4dxで1/2となる。なお、ナイキスト周波数である1/4dx は、(1)式の水平周波数vではv=8に対応する。したがって、水平周波数v であらわす周波数応答R(v)はつぎの(6)式となる。
R(v)=1/2・{1+cos(2π・v/32dx・dx)}
=1/2・{1+cos(π・v/16)} (6)
【0033】
このとき周波数補正回路203で、DCT処理回路202で得られた周波数係数群の各々に、周波数応答R(v)の逆数2/{1+cos(π・v/16)}が乗算されれば、水平方向の画素の大きさが1/2で画素数が2倍である画像信号を1倍の画素の画像信号に置き換える課程で生じた周波数特性の劣化を補正できる。
上記の説明では水平方向の処理を例に取ったが、垂直方向に関しても同様である。こうして(6)式のR(v)と垂直方向に拡張したときのR(u)を乗算して求めたR(u,v)の逆数として求めた周波数補正のための係数を
図6に示す。
図6において水平方向v、垂直方向uは周波数をあらわし、各周波数位置に記した値が当該周波数での周波数係数に対して乗ずべき補正係数である。すなわち、
図1に示す補間信号生成装置2において周波数補正回路203は、DCT処理回路202から得られた水平方向8周波数、垂直方向8周波数のブロックを成す周波数係数群の各々に、
図6に示す補正係数をそれぞれ対応する周波数ごとに乗算すればよい。
その後、周波数補正回路203から得られた周波数補正後の周波数係数群F2(u,v)をIDCT処理回路204に加え、元の画像信号に比べて画素の間隔が1/2である信号を生成する。すなわち、次の(7)式においてi、jにそれぞれ零から2N-1までを入れてx2(i,j)を求めれば、画素の大きさが1/2で、画素数が2倍である固体撮像素子から本来得られるべき信号に近い信号が得られる。
【0034】
【数2】
【0035】
こうしてIDCT処理回路204から得られた信号は、水平方向および垂直方向の画素数が元の画像信号の2倍となるので、メモリを用いた並べ換え回路205によって走査線の補間等が施されて補間信号生成装置2から出力される。
【実施例2】
【0036】
図7は本発明による画像信号のための補間信号生成方法を用いた画像装置の第2の実施の形態を示す構成図である。
図7において撮像装置1は、
図1に示した第1の実施の形態と同一のものであり、同一の動作を行うものとする。
また、
図7における補間信号生成装置4では、撮像装置1のカラー信号プロセッサ103から得られたR信号、G信号、B信号を、それぞれ
図1における補間信号生成装置2と同様、ブロック抽出回路201に加える。ブロック抽出回路201で、たとえば水平方向8画素、垂直方向8画素のブロックを成す合計64画素の信号が同時に得られるよう、メモリを用いて抽出されることも
図1における補間信号生成装置2と同様である。これに対して、補間信号生成装置4ではブロック抽出回路201から得られた64画素の信号はフィルタ処理回路206に加えられる。
【0037】
前述の特開2004−23384に示されているように、画素の補間をDCTとIDCTの処理で行うときには、補間信号は元の画素の信号を1次結合して得られることから、DCT処理の対象となるブロックの各画素に対して2次元のフィルタ処理を施せばよい。
図1に示した補間信号生成装置2における周波数補正回路203は、DCT処理回路202から得られた水平方向8周波数、垂直方向8周波数のブロックを成す周波数係数群の各々に、
図6に示す補正係数をそれぞれ対応する周波数ごとに乗算するものであるから、補間信号が元の画素の信号を1次結合して得られることに変わりはない。そこで、フィルタ処理回路206は、
図1に示した補間信号生成装置2においてDCT処理回路202,周波数補正回路203、IDCT処理回路204の処理で生成される一つの信号に対して対応する一つのフィルタ処理機能を備えるものとすればよい。これによってフィルタ処理回路206からは、
図1においてIDCT処理回路204から得られるものと同一の信号が得られるようにできる。
このとき、フィルタ処理回路206におけるフィルタ処理機能のためのフィルタ係数は、特開2004−23384で述べられている公知の方法で得ることができる。すなわち、IDCT処理で得るある位置の信号に対して、処理に用いるブロックを成す画素のうちのある画素の信号のみを“1”とおき、DCT処理回路202,周波数補正回路203、IDCT処理回路204の処理を施して出力を求める。このときの出力を、ある位置の信号に対するブロックを成す画素のうちの信号を”1”とおいた当該画素に対応するフィルタ係数とすればよい。
【0038】
フィルタ処理回路206で得られた信号は、
図1における補間信号生成装置2でのIDCT処理回路204の出力と同様、メモリを用いた並べ換え回路205で水平方向・垂直方向の画素数が固体撮像素子102の2倍である表示装置に対応する画像信号に変換される。並べ換え回路205から得られた画像信号が、補間信号生成装置4につながる図には示さない後段の表示装置あるいは伝送装置に送られることは、
図1における補間信号生成装置2と同様である。
【0039】
なお、以上の説明はG信号、R信号、B信号に同様の処理を施す場合を例にとって説明したが、カラー信号プロセッサが輝度信号と色差信号を出力する場合には輝度信号のみに適用して、色差信号には線形補間などの一般的な補間処理を施してもよい。
また、以上の説明では補間信号生成装置が撮像装置に直接接続される場合を例に取ったが、撮像装置と補間信号生成装置の間に、図には示さない伝送装置が挿入されてもよいことは明らかである。
【0040】
また、以上の説明ではDCT処理による直交変換を行うものとして説明したが、離散サイン変換、アダマール変換など他の直交変換でも同様の効果が得られることは容易に類推できる。
さらに、上記の説明は水平方向および垂直方向に画素数を倍増させる場合を例にとって説明したが、表示装置等との対応によっては、IDCT処理回路において水平方向、あるいは垂直方向のいずれか一方のみを倍増させるよう画素の信号を生成してもよい。
また、上記の説明では本発明の処理をハードウェアによって実現するものとしたが、ソフトウェアによって処理されても良いことは明らかである。
【0041】
また、上記の説明は固体撮像素子における画素の開口率が100%に近い場合を例にとって説明したが、100%を下回る場合にもその割合に対応させて(4)式における上下左右に隣接する画素の信号の割合を1/2より小さくし、斜め方向の画素の信号の割合を1/4より小さくする方向で周波数応答R(v)を求め、その逆数で周波数補正回路203の補正係数を得ればよいことは容易に類推できる。
たとえば、元の画像信号において画素の水平方向および垂直方向の幅2dxに対して90%の部分に入射する光が信号に変換されるときにあたる開口率が81%である場合、
図8(a)に示すように画素の周辺からdx/10の範囲に入射した光は信号を発生しない。このとき
図4(b)と同様に画素を1/2の大きさに分割すると
図8(b)に示すようになり、画素X4(2n,2m)の開口率は100%とみなせるのに対して、隣接する画素X4(2n+1,2m)は垂直方向の画素の幅dxに対してdx/5の部分に入射した光は信号に変換されないので開口率は80%となる。また、斜め方向の画素X4(2n+1,2m+1)は、水平方向と垂直方向の画素の幅dxに対してそれぞれdx/5の部分に入射した光は信号に変換されないので開口率は64%である。
このとき(2)式に対応するのは次の(8)式であり、(6)式に対応する周波数応答R2(v)は次の(9)式となる。
【0042】
x3(n,m)=x4(2n,2m)
+{x4(2n-1,2m)+x4(2n,2m-1)+x4(2n,2m+1)+ x4(2n+1,2m)}×2/5
+{x4(2n-1,2m-1)+x4(2n-1,2m+1)+x4(2n+1,2m-1)+x4(2n+1,2m+1)}×4/25
(8)
R2(v)=5/9・{1+4/5・cos(2π・v/32dx・dx)}
=5/9・{1+4/5・cos(π・v/16)} (9)
【0043】
以上の説明を、画素の水平方向と垂直方向の幅2dxに対して入射した光が信号に変換される部分の割合がa(aは1以下、1/2以上とする)であるときに拡げると、周波数応答R3(v)は次の(10)式となる。
R3(v)=1/2a・{1+(2a-1)・cos(2π・v/32dx・dx)}
=1/2a・{1+(2a-1)・cos(π・v/16)} (10)
このとき周波数補正回路の補正係数は、こうして求められる周波数応答の逆数に設定すればよい。