(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012565
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】光電気複合型コネクタ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/42 20060101AFI20161011BHJP
H01R 13/46 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
G02B6/42
H01R13/46 D
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-177666(P2013-177666)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-45787(P2015-45787A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2015年4月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【弁理士】
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】佐野 義昭
(72)【発明者】
【氏名】船津 章
【審査官】
奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−088571(JP,A)
【文献】
特開2013−101408(JP,A)
【文献】
特開2006−030868(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/052748(WO,A1)
【文献】
特開2009−198603(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0211798(US,A1)
【文献】
特開平05−278238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00− 6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを収容することができるハウジングを備えた光電気複合型コネクタであって、
前記ハウジング内のスペースを上下に仕切る仕切部材を有し、
前記光ファイバは、前記ハウジングの前後方向における一の側において前記ハウジング内に取り込まれるようになっており、
前記仕切部材によって仕切られた前記ハウジング内の一のスペースに、前記ハウジングの前記一の側に位置する前記光ファイバの少なくとも一部が湾曲された状態で収容され、前記仕切部材によって仕切られた前記ハウジング内の他のスペースに、前記一のスペースに収容された少なくとも一部以外の前記光ファイバの湾曲部の一部であって、前記ハウジング内の一のスペースに収容された前記光ファイバの湾曲部に対して前記ハウジングの前記一の側とは前記ハウジングの前後方向において反対側に位置する前記光ファイバの他の少なくとも一部が収容されており、
前記一のスペースに収容された、前記光ファイバの少なくとも一部と、前記他のスペースに収容された、前記光ファイバの他の少なくとも一部が、前記ハウジングの左右側の内壁と前記仕切部材の左右側の縁との間に形成された隙間を通じて連続しており、
前記光電気複合型コネクタは更に、
前記光ファイバの一端に接続された光電気変換モジュールと、
前記仕切部材の前記他のスペース側であって前記ハウジングの前後方向において前記隙間に対応する位置に設けられた、前記光電気変換モジュールと電気的に接続され得る接続コネクタと、
を備えることを特徴とする光電気複合型コネクタ。
【請求項2】
前記光ファイバの少なくとも一部が、前記一のスペースに設けられた巻付け部に巻き付けられている請求項1に記載の光電気複合型コネクタ。
【請求項3】
前記接続コネクタは、前記光ファイバの他の少なくとも一部よりも、前記一の側に近い側に配置されている請求項1又は2に記載の光電気複合型コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電気複合型コネクタ、特に、光ファイバの余長部分を収容することができるハウジングを備えた光電気複合型コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
光電気複合型コネクタのような光コネクタにおいて、光ファイバは、通常、コネクタ内で十分な余長部分をもって使用される。光ファイバはガラス繊維であることから屈曲に弱く、従って、このような余長部分を設けることにより、光ファイバと機器との間の接続の安定性が確保できるからである。しかしながら、余長部分があまりに長いと、光電気複合型コネクタの内部における配線設計が複雑になってしまうため、余長部分は切除されてしまうのが一般的である。とはいうものの、一旦切除してしまった余長部分を再び戻すことは不可能であるから、使用環境の変化に柔軟に対応可能とするといった意味では、ハウジングに余長部分を収容できるといった特別の事情が存在する場合にはむしろ、積極的に余長部分を確保しておくことが望ましい。上記の特別の事情が存在する場合として、例えば、ハウジングにある程度の大きさを確保する場合がある。光電気複合型コネクタは一般に非常に小さく、これに合わせてハウジングを小さくすると使い勝手が悪くなる。このため、ユーザからの要望等に応じて、ハウジングにある程度の大きさを確保することがあり、このような場合に、光ファイバの余長部分を収容するためのスペースが生まれることがある。
【0003】
図11に、光ファイバの余長部分を収容することができるハウジングを有した従来の光電気複合型コネクタの一例を示す。
図11の(a)は、この従来のコネクタの側断面図、(b)は、その平断面図である。この光電気複合コネクタ100は、回路基板108と、この回路基板108の上に設けた副基板115上の光電変換部109や配線117、これら回路基板108やその上の各種機器を収容することができるハウジング111、更に、外部機器接続用の電気ピン105を備える。光電変換部109には、光ケーブル104から引き出されてハウジング111内に湾曲部112cを有して配線された光ファイバ102が光学的に接続されており、ハウジング111は、この光電変換部109を収容する第1の収容体119の他、第2の収容体120を有する。光ファイバ102は、第1の収容体119を経て第2の収容体120に導入され、湾曲部112cでその向きを反転させて光電変換部109に向かって配線される。更に、湾曲部112cを曲げ弾性力に抗して挟んで保持できるように、第2の収容体120は、一対の側板部120d、120eを有している。
【0004】
この従来構成では、光ファイバ102の余長部分113は、回路基板108の一方の側、特に、副基板115や各種機器が設けられた上側に設けることとされており、その一方で、回路基板108の他方の側、即ち、副基板115や各種機器が設けられた下側の、比較的大きな空間には、光ファイバ102の余長部分113は全く配置されていない。尚、回路基板108の下側に現れている線は電線103を示しているのであって、光ファイバ102を示すものではなく、回路基板108の下側に、光ファイバは存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−88571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明はこのような従来技術における問題点を解決するためになされたものであり、配線設計を複雑にすることなく、光ファイバの余長部分を収容することができるハウジングを備えた光電気複合型コネクタを提供することを目的とする。また、光電気複合型コネクタの内部空間を有効活用することができる光電気複合型コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光ファイバを収容することができるハウジングを備えた光電気複合型コネクタであって、前記ハウジング内のスペースを
上下に仕切る仕切部材を有し、前記光ファイバは、前記ハウジングの
前後方向における一の側において前記ハウジング内に取り込まれるようになっており、前記仕切部材によって仕切られた前記ハウジング内の一のスペースに、前記ハウジングの
前記一の側に位置する前記光ファイバの少なくとも一部が湾曲された状態で収容され、前記仕切部材によって仕切られた前記ハウジング内の他のスペースに、前記一のスペースに収容された少なくとも一部以外の前記光ファイバの湾曲部の一部であって、前記ハウジング内の一のスペースに収容された前記光ファイバの湾曲部に対して前記ハウジングの
前記一の側とは
前記ハウジングの前後方向において反対側に位置する前記光ファイバの他の少なくとも一部が収容されており、
前記一のスペースに収容された、前記光ファイバの少なくとも一部と、前記他のスペースに収容された、前記光ファイバの他の少なくとも一部が、前記ハウジングの左右側の内壁と前記仕切部材の左右側の縁との間に形成された隙間を通じて連続しており、前記光電気複合型コネクタは更に、前記光ファイバの一端に接続された光電気変換モジュールと、前記仕切部材の前記他のスペース側
であって前記ハウジングの前後方向において前記隙間に対応する位置に設けられた、前記光電気変換モジュールと電気的に接続され得る接続コネクタと、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、仕切部材を利用して、ハウジングの内部を一のスペースと他のスペースとに明確に区分し、配線設計と光ファイバの収容部分とを明確に区別することにより、配線設計を複雑にすることなく、光ファイバの余長部分を収容することができる。また、光電気変換モジュールと電気コネクタを介して、光ファイバと光電気複合型コネクタを接続することにより、それらを直に接続する場合に比べて、接続作業或いは組立作業を容易にすることができる。
【0008】
上記光電気複合型コネクタにおいて、前記仕切部材は、前記光ファイバの前記湾曲部が形成する面と並列に前記ハウジング内のスペースを仕切るのが好ましい。
基板の向きを、光ファイバの湾曲部が形成する面と並列にすることにより、湾曲部を収容するためのスペースをより小さくすることができ、ハウジングの内部空間を有効活用することができる。
【0010】
前記隙間は、前記仕切部材の仕切り方向において、前記光電気複合型コネクタ
と相手コネクタとの嵌合側以外の側に設けられているのが好ましい。
このような側に隙間を設けることにより、光電気複合型コネクタと相手コネクタとの嵌合を妨げることなく、一のスペースと他のスペースとの間で、光ファイバを連続した状態とすることができる。
【0011】
上記光電気複合型コネクタにおいて、
前記光ファイバの少なくとも一部が、前記一のスペースに設けられた巻付け部に巻き付けられていてもよい。
巻付け部を設けることにより、光ファイバを容易に収容することができる。
また、上記光電気複合型コネクタにおいて、前記接続コネクタは、前記光ファイバの他の少なくとも一部よりも、前記一の側に近い側に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によれば、配線設計を複雑にすることなく、光ファイバの余長部分を収容することができるハウジングを備えた光電気複合型コネクタが提供される。また、光電気複合型コネクタの内部空間を有効活用することができる光電気複合型コネクタが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】光ケーブルが接続された本発明による光電気複合コネクタの斜視図である。
【
図2】光電気複合コネクタと相手側コネクタを示す斜視図と中心線断面図である。
【
図3】
図1の光電気複合コネクタから蓋を取り除いた状態を示す斜視図である。
【
図5】
図1の光電気複合コネクタの横断面図である。
【
図7】
図3の光電気複合コネクタから更に基板を取り除いた状態を示す斜視図である。
【
図8】固定金具が横向きに固定された光電気複合型コネクタの斜視図である。
【
図9】光電気複合コネクタの組立方法を説明する図である。
【
図10】光電気複合コネクタの組立方法を説明する図である。
【
図11】余長部分を収容することができるハウジングを有した従来の光電気複合型コネクタの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照しつつ、本発明の好適な一つの実施形態による光電気複合型コネクタについて説明する。
【0015】
図1に、本発明による光電気複合コネクタ1の斜視図を示し、更に、
図2に、この光電気複合コネクタ1を接続相手である電気コネクタ2とともに、斜視図(
図2の(a))と中心線断面図(
図2の(b))で示す。光電気複合コネクタ1は、光ケーブル10の一端に固定した状態で使用され、光信号を処理することができるが、光電気複合コネクタ1の接続相手は、光コネクタではなく電気コネクタである。電気コネクタ2は、基板3に設置した状態で使用され、コネクタ2との実際の嵌合時には、光電気複合型コネクタ1の先端側に一部突出させた状態で設けたコネクタ嵌合部46が、基板3に直立した電気コネクタ2の嵌合穴4に挿入される。光信号と電気信号の変換は、光電気複合型コネクタ1で行う。光ケーブル10を通じて光電気複合コネクタ1で受信された光信号は、光電気複合コネクタ1において電気信号に変換された後に、電気コネクタ2へ送信され、或いは、電気コネクタ2を通じて光電気複合コネクタ1で受信された電気信号は、光電気複合コネクタ1において光信号に変換された後に、光ケーブル10へ送信される。
【0016】
図3に、
図1の光電気複合コネクタ1から蓋45を取り除いた状態を斜視図で示し、更に、
図4に、
図1のA−A線断面図を、
図5に、
図1の光電気複合コネクタ1の横断面図を、
図6に、
図1のB−B線断面図を、それぞれ示す。蓋45は、光電気複合コネクタ1と電気コネクタ2との嵌合方向(
図3の矢印「ア」方向)に沿って、光電気複合コネクタ1に対してスライド移動させることによって、光電気複合コネクタ1のハウジング20に着脱自在に取り付けることができる。ハウジング20に取り付けられた際、蓋45の一部は、上述したコネクタ嵌合部46の一部を形成し得る。また、蓋45を光電気複合コネクタ1に対してスライド移動させたとき、基板50の先端部51は、コネクタ嵌合部46に挿入され、その下側に収容空間58を残した状態で、コネクタ嵌合部46の天井側内壁に位置決めされる。基板50の先端部51裏面には、複数の電気パッド57(便宜上、点線で示す)が所定ピッチで一列に配列されている。図面上明らかではないが、これらの電気パッド57は、光ケーブル10の各光ファイバ11に対応して設けられており、光ファイバ11の光信号に対応する電気信号の伝達を行う。光電気複合コネクタ1と電気コネクタ2(
図2参照)との嵌合時には、光電気複合コネクタ1のコネクタ嵌合部46が、電気コネクタ2の嵌合穴4(
図2の(b)参照)に挿入されるとともに、光電気複合コネクタ1のコネクタ嵌合部46に設けた収容空間58に、電気コネクタ2の基部5(
図2の(b)参照)が収容される。このとき、基板50の先端部51裏面に設けた電気パッド57(接触部)が、電気コネクタ2に設けた対応する相手側端子6の接点7と電気的に接続され、光電気複合コネクタ1と電気コネクタ2(
図2参照)との間の電気通信が可能となる。
【0017】
図4によく示されるように、蓋45をハウジング20に取り付けたとき、蓋45の嵌合側に設けた前側突出部48と、ハウジング20の嵌合側に設けた前側突出部23が対応し、また、蓋45の光ケーブル10側に設けた後側突出部49と、ハウジング20の嵌合側に設けた後側突出部39が対応する。これにより、蓋45をハウジング20に対して位置決めするとともにハウジング20の収容空間を閉じる。ハウジング20からの蓋45の抜け落ちを防ぐため、
図5によく示されるように、蓋45の外壁にロック突部47を、ハウジング20の内壁に対応ロック突部37を、それぞれ設けて、蓋45とハウジング20をロック可能としてある。尚、光コネクタ1における信号状態を確認できるように、
図6に示すように、ハウジング20の外部から一部視認可能な状態で、基板50の後端側に導光板40を設けてもよい。導光板40を通じて外部に光を発するようにして、光電気複合コネクタ1における信号の伝達状態をユーザに知らせることもできる。
【0018】
ハウジング20内のスペースは、その内部に設置された基板50によって、上段スペース33と下段スペース34に仕切られている。下段スペース34には、主に、光ケーブル10から取り出された光ファイバ11の少なくとも一部(後述する
図7乃至10に示す湾曲部15)、換言すれば、光ファイバ11の余長部分が収容され、一方、上段スペース33には、主に、下段スペース34に収容された部分(湾曲部15)以外の、光ファイバ11の他の一部17や、光ファイバ11の一端に接続された光電気変換モジュール14、更に、基板50に固定された、光電気変換モジュール14と接続され得る接続コネクタ54が収容される。
【0019】
ハウジング20の内部において、基板50の中央付近は、ハウジング20のケーブル抑え部26の上面に載置され、その後端側55は、ハウジング20の基板載置部24に載置される。基板50の先端部51は、既に説明したように、コネクタ嵌合部46に挿入されて支持される。基板50の幅方向は、ハウジング20の基板位置決め突起25によって規制されるとともに、コネクタ嵌合部46に、基板50の先端部51が挿入、配置されることにより位置決めされるようになっている。
【0020】
図7は、
図3の光電気複合コネクタ1から更に基板50を取り除いた状態を示す斜視図である。光ケーブル10の光ファイバ取出口は、固定金具12によってクランプされる。クランプされた固定金具12は、ハウジング20に設けた側面視略U字状の金具保持部29に上方から挿入されることによってハウジング20に容易に固定される。金具保持部29は、1つに限らず、ハウジング20の複数位置から選択可能な状態で複数設けることができる。使用環境に応じて、適当な位置の金具保持部29を選択して使用することにより、光ケーブル10や光ファイバ11の出口方向を制御し、装置内の配線設計を容易にすることができる。例えば、
図7に示した中央位置に設けた金具保持部29Aに代えて、
図8に示した側面位置に設けた金具保持部29B(ここでは、正面から見て右側の金具保持部29B)に、固定金具12を装着することにより、光ケーブル10や光ファイバ11をハウジング20に対して横向きに固定することもできる。
【0021】
図7、8によく示されるように、光ケーブル10から取り出した光ファイバ11は、ハウジング20の光ケーブル10側に設けた導入口38から下段スペース34へ案内される。光ファイバ11がスムーズに案内されるように、導入口38の側壁はR状としておくのが好ましい。特に、
図8に示す例のように、側面位置に設けた金具保持部29Bを利用して固定金具12が装着された場合には、光ファイバ11の方向を大きく変更する必要が生じ、この結果、導入口38の側壁と衝突し易い状態となるが、この場合でも、導入口38の側壁がRを形成していれば、光ファイバ11を下段スペース34へとスムーズに案内することができる。
【0022】
光ケーブル10から取り出された光ファイバ11の少なくとも一部は、下段スペース34に湾曲された状態で収容される。光ファイバ11はガラス繊維であるため、急な曲げを形成することはできず、比較的大きな湾曲部を形成した状態で収容させる必要がある。湾曲部15を設けることにより、光ファイバ11を、より安全に、且つ、小スペースで、下段スペース34に収容することができる。
【0023】
収容作業を容易にするため、下段スペース34に円環状の巻付け部27を設けてもよい。巻付け部27の周囲には、更に、基板50を載置するためにも使用される、略L字状のケーブル抑え部26が複数、ここでは3つ設けられている。下段スペース34に案内した光ファイバ11は、接続コネクタ54に対する取付け時の作業しろを十分に確保した状態で、巻付け部27に巻き付けられ、更に、ケーブル抑え部26によって、上方から抑えられる。巻付け部27を利用することにより、湾曲部15を、よりコンパクトに、且つ、より簡単に、下段スペース34に配置することができ、更に、ケーブル抑え部26を利用することにより、湾曲部15の上段スペース33側への拡がりを防止することができる。但し、これら巻付け部27やケーブル抑え部26を使用することなく、ハウジング20の内壁22を利用して、湾曲部15を形成してもよい。尚、湾曲部15は、必ずしも、巻き付け部27に巻き付けられるような長さを必要とするものではなく、例えば、湾曲部15の弧のほんの一部と接触する程度の長さしか有しないものであっても勿論よい。
【0024】
図7、
図8に加えて、
図9、
図10、及び
図3をも参照して、光電気複合コネクタ1の組立方法を説明する。ここで
図9、
図10、及び
図3は、
図7、
図8の状態とした後の、光電気複合コネクタ1の組立工程を段階的に示したものと考えてよい。
【0025】
図7、
図8に示すように、光ファイバ11の湾曲部15を、ハウジング20に配置した後、
図9に示すように、この湾曲部15の上部に基板50を設置する。基板50が設置されることにより、ハウジング20内のスペースは、上段スペース33と下段スペース34に仕切られ、この結果、湾曲部15は、下段スペース34に収容されることになる。このように、基板50を利用して、ハウジング20の内部を上段スペース33と下段スペース34とに区分し、配線設計と光ファイバの収容部分とを明確に区分けすることにより、配線設計を複雑にすることなく、光ファイバの余長部分を収容することができる。また、基板50の向きを、光ファイバ11の湾曲部15が形成する面16と並列にすることにより、湾曲部15を収容するためのスペースをより小さくすることができ、ハウジング20の内部空間を有効活用することができる。
【0026】
図9に示すように、基板50によってハウジング20が上段スペース33と下段スペース34に仕切られた後も、下段スペース34に収容された、光ファイバ11の湾曲部15と、上段スペース33に収容された、光ファイバ11の一部17とは、ハウジング20の内壁22と基板50の縁52との間に形成された隙間53を通じて連続状態を維持する。本実施形態では、この隙間53は、仕切部材50の仕切り方向において、光電気複合コネクタ1と相手コネクタとの嵌合側(光電気複合コネクタ1の先端側)以外の側、例えば、嵌合方向に沿った側に設けられる。仮に、隙間が、光電気複合コネクタ1と相手コネクタとの嵌合側(光電気複合コネクタ1の先端側)に設けられている場合には、ハウジング20の内部における、光電気複合コネクタ1と相手コネクタとの嵌合側の領域が、光ファイバ11によって占有されてしまうため、嵌合に支障が生じ、また、これを避けるためにコネクタが大型化するおそれがある。
図9に示すように、光電気複合コネクタ1と相手コネクタとの嵌合側以外の側に隙間53を設けることにより、光電気複合コネクタ1と相手コネクタとの嵌合を妨げることなく、容易に、上段スペース33と下段スペース34との間で、光ファイバ11を連続した状態とすることができる。尚、隙間を嵌合側に設けることは必ずしも許されないというわけではなく、コネクタ嵌合部46に挿入される基板50の先端部51に光ファイバ11が及ばないのであれば、嵌合側に設けてもよい。
【0027】
その後、
図10に示すように、隙間53から取り出された光ファイバ11は、半弧を描くように大きく湾曲させた状態で、光ファイバ11の一端に接続された光電気変換モジュール14を利用して、基板50上の接続コネクタ54に接続される。これら光電気変換モジュール14と接続コネクタ54との間の接続は電気接続である。光信号と電気信号の変換は、光電気変換モジュール14で行われる。電気接続させるため、光電気変換モジュール14は、接続コネクタ54の凹状の嵌合部64に嵌め込まれる。嵌合部64に嵌め込まれても、固定されるわけではなく、その後も自由に着脱させることができる。
【0028】
光電気変換モジュール14は、様々な光電気交換部品を備えることによって、電気・光変換機能(送信機能と捉えることもできる)と、光・電気変換機能(受信機能と捉えることもできる)の双方を有する。例えば、接続コネクタ54と光電気変換モジュール14の嵌合時には、光電気変換モジュール14に設けた光電気変換部品の働きによって、光ケーブル10を通じて伝達された光信号を電気信号に変換して、接続コネクタ54や基板50に伝達し、或いは、基板50を通じて伝達された電気信号を光信号に変換して、光ケーブル10に伝達する。
【0029】
これに対し、接続コネクタ54は、形状は多少特種なものであるものの、機能は一般的な電気コネクタと全く同じである。接続コネクタ54は、主に、枠状のレセプタクルハウジング61と、これに設置される複数の端子62、更に、ハウジング61の外部を覆うシェル63を有する。レセプタクルハウジング61は枠状に形成されており、光電気変換モジュール14を嵌め込む嵌合部64(
図9参照)を形成している。レセプタクルハウジング61に圧入固定されたレセプタクル端子62は、各々、それらの一部において嵌合部64に突出し、光電気変換モジュール14が嵌合部64に嵌め込まれた際に、光電気変換モジュール14側の対応端子74と電気的に接続され得る。
【0030】
最後に、
図3に示すように、ハウジング20に、蓋45をスライド移動させて取り付けることにより、光電気複合コネクタ1の組立完了となる。
【0031】
尚、基板50に設けた電気パッド57は、相手側の電気コネクタ2と必ずしも直接接続される必要はなく、電気パッド57に実装された他の電気コネクタを嵌合部として、これを介して、相手側の電気コネクタ2と電気接続されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
光ケーブルを接続して使用するタイプの光電気複合型コネクタに幅広く応用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 光電気複合コネクタ
10 光ケーブル
11 光ファイバ
12 固定金具
14 光電気変換モジュール
15 湾曲部
16 面
20 ハウジング
22 内壁
27 巻付け部
33 上段スペース
34 下段スペース
50 基板
52 縁
53 隙間
54 接続コネクタ