(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本実施形態に係るカッター装置およびこのカッター装置を搭載したプリンタ装置を、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は本実施形態に係るプリンタ装置45の要部を示す構成図である。なお、このプリンタでは、図の右側から左側に向けて用紙が搬送されるので、以下の説明においては、図中右側を上流側、左側を下流側とする。
【0011】
プリンタ装置45は、装置本体の筐体であるプリンタ下カバー48に対し、プリンタ上カバー46が支軸47を回動中心として開閉可能に取り付けられている。
【0012】
ラベル用紙52は、一方の面に印字面52−1を、印字面の裏面である他方の面に物品に貼り付ける際に物品に接着する糊面52−2を有しており、印字面52−1が外側になる様に巻軸51に巻回されており、この巻軸51はプリンタ装置45に回転自在に支持されている。巻回されたラベル用紙52は、その搬送方向下流側にあるフィードローラ53と、このフィードローラ53に対し、用紙搬送路58を挟んで対向配置されているアイドラローラ54との挟持により下流側に搬送される。なおこのフィードローラ53とアイドラローラ54は用紙搬送路58に沿って複数対設けられている。
【0013】
フィードローラ53の下流側にはサーマル印字ヘッド55が設けられており、このサーマル印字ヘッド55に対し用紙搬送路58を挟んでプラテンローラ56が対向配置されている。これらサーマル印字ヘッド55とプラテンローラ56にて印字部57を構成しており、印字部57にてラベル用紙52の印字面52−1に印字をおこなう。
【0014】
印字部57の下流側にはカッター装置10が配置されている。このカッター装置10は固定刃11と可動刃12を有しており、カッター装置10に挿入されてきたラベル用紙52を固定刃11に向けて可動刃12を、後述する移動機構によりスライド移動させることで切断する。
【0015】
さらにカッター装置10の下流側には、所定の印字が完了しカッター装置10にて切断されたラベル用紙52をプリンタ装置45より外部に排出するための用紙排出口59が設けられている。またプリンタ下カバー48における用紙排出口59の下方には、切断されたラベル用紙52を保持する排出テーブル49が設けられている。
【0016】
またプリンタ装置45のプリンタ上カバー46には表示部50が設けられている。この表示部50はLCD等の液晶ディスプレイであり、ラベル用紙52の紙詰まりや用紙切れ等のエラー表示やプリンタ装置45の状態表示を行なう機能を有している。
【0017】
次に
図2にて、本実施形態に係るプリンタ装置45の制御回路構成を説明するブロック図を示す。この制御部91は、ラベル用紙搬送、印字、ラベル用紙切断、ラベル用紙排出およびプリンタ装置の状況表示の各制御をおこなう。
【0018】
制御部91は、ホストコンピュータ100との連係および各種の制御の実行をおこなう、例えば、マイクロコンピュータで構成されている。制御部91の中央処理装置(MPU)92は、プログラムに従って、ラベル用紙搬送制御、印字制御、ラベル用紙切断制御、ラベル用紙排出制御等の各種の制御や演算をおこなう。
【0019】
また制御部91には、MPU92で実行する制御プログラムや制御または演算途上のデータ等を格納する主記憶手段としてROM93およびRAM94が設置されている。
ROM93は制御プログラムやテーブル等を持つ読出し専用メモリであり、RAM94は演算途上のデータ等を格納する随時書込みメモリである。
【0020】
また、制御部91には、ホストコンピュータ100からの各種の入力データの取込みや、ホストコンピュータ100への制御部91の制御出力の取出しをおこなう入出力ユニット(I/O)95が設けられている。このI/O95は、MPU92、ROM93およびRAM94とバスを通じて接続されている。
【0021】
また、I/O95には制御出力を取り出すための手段として、第1、第2、第3、および第4のドライバ96、97、98、99が接続されている。
【0022】
第1のドライバ96は印字部57へ必要な駆動出力を供給する。第2のドライバ97はフィードローラ53へ必要な駆動出力を供給する。第3のドライバ98はカッター装置10への駆動出力を供給する。第4のドライバ99は表示部50に各種表示を行わせる表示駆動出力を供給する。
【0023】
ラベル用紙52に対して印字部57にて印字をおこなう際、プラテンローラ56は、ドライバ96を介して、MPU92の印字指令手段としての制御出力に基づき図示しないモータにより印字動作と同期して回転駆動される。サーマル印字ヘッド55は、ホストコンピュータ100からの印字データに基づいて発熱し、ラベル用紙52の印字面52−1に印字をおこなう。
【0024】
制御部91のMPU92は、ドライバ97を介して、フィードローラ53の回転及び停止駆動をおこなう。
【0025】
制御部91のMPU92は、ドライバ98を介して、カッター装置10を駆動させ、ラベル用紙52を切断する。
【0026】
制御部91のMPU92は、ドライバ99を介して、表示部50に、プリンタ装置45の各種情報、エラー等を表示する。
【0027】
以下に、プリンタ装置45の構成図および動作を、
図3乃至
図9にて説明する。
【0028】
図3にカッター装置10の固定刃11を示す。固定刃11は板状の部材であり、刃先11−1が設けられていると共に、ラベル用紙52を切断した際に糊面52−2の糊が刃先11−1に付着することを防ぐ為に、固定刃11に糊を落とし込む糊溜まり用の溝11−2を設けてある。この糊溜まり用の溝11−2は固定刃11の表面に対して0.5mmほどの深さで削られている(
図5参照)。
【0029】
図4にカッター装置10の可動刃12を示す。可動刃12は板状の部材であり、刃先12−1が設けられていると共に、ラベル用紙52を切断した際に糊面52−2の糊が刃先12−1に付着することを防ぐ為に、可動刃12に糊を落とし込む糊溜まり用の溝12−2を設けてある。この糊溜まり用の溝12−2は、糊溜まり用の溝11−2同様、可動刃12の表面に対して0.5mmほどの深さで削られている。
【0030】
固定刃11と可動刃12は、糊溜まり用の溝は一方の面のみに設けてあり、糊溜まり用の溝11−2を設けてある面側と糊溜まり用の溝12−2を設けてある面側とが
図5にて簡略的に示す様に接触する状態にて使用される。
図6は固定刃11及び可動刃12が離れている位置でのカッター装置10の固定刃11及び可動刃12の斜視図であり、
図7はカッター装置10の移動機構の構成例を示す図である。
【0031】
図3、
図4、
図6および
図7に示すように、カッター装置10は、直線状の刃先11−1を有する固定刃11と、固定刃11との間でラベル用紙52を挟んで切断する直線状の刃先12−1を有する可動刃12と、この可動刃12を、可動刃12及び固定刃11間の噛み合い位置へ動かす移動機構15とを備えている。
【0032】
固定刃11はカッター筐体60の底壁上に固定されている。可動刃12はラベル用紙52の搬送方向D1及びこれに直交するラベル用紙52の幅方向D2の双方に直交する刃スライド方向D3の上流側に向かって傾斜している。搬送方向D1とはラベル用紙52が送り出される方向を指す。刃スライド方向D3とは可動刃12が断裁時に移動する一方向を指す。可動刃12は刃先12−1を持つ刃部が形成されている。可動刃12は更にこの刃部を持つ刃体に連続する根元部21と、これらの刃体及び根元部21の中央に設けられた枢軸22とを備えている。この枢軸22に移動機構15から刃スライド方向D3及びその反対方向への力が加えられるようになっている。可動刃12はカッター筐体60の底壁上において刃スライド方向D3及び刃スライド方向D3の上流側に往復スライド可能にされている。
【0033】
移動機構15は、固定刃11の刃先11−1及び可動刃12の刃先12−1によるラベル用紙52の切断位置を切断幅方向D2に移動させる。
【0034】
図7(a)、
図7(b)にそれぞれカッター筐体60内に一体化された移動機構15の下側、上側の各構成物品を明記した要部構成図を示す。移動機構15は一例として、カッター筐体60の底壁に設けられたガイド孔61と、それぞれこのガイド孔61の縁によりガイドされ可動刃12の根元部21に下向きに突設された2本のガイドピン62、63(
図6に図示)と、往復動可能なこの可動刃12に対して軸支された枢軸22と、この枢軸22に係合する1つのねじりコイルばね24と、枢軸22に係合するリンクアーム25とを備えている。
【0035】
ガイド孔61は幅方向で中央に位置し刃スライド方向D3に細長い。可動刃12は、これらのガイド孔61及び2本のガイドピン62、63によって刃スライド方向D3にガイドされる。枢軸22はねじりコイルばね24が係止される胴部と、リンクアーム25が係止される胴部とを有する。ねじりコイルばね24は切断幅方向D2に並設された2箇所の巻線部24a、24bと、これらの巻線部24a、24bの向かい合う端どうしを連結し、刃スライド方向D3に突出して枢軸22に係合する押圧部24cとを備えている。これらの巻線部24a、24b及び押圧部24cは一本の線材から成る。巻線部24a、24bの連結端と反対側の各端はカッター筐体60に対して固定されている。押圧部24cは可動刃12を固定刃11に向けて付勢し、この可動刃12をカッター筐体60の底壁面上に押さえ付けるように付勢している。リンクアーム25の一端は枢軸26によりカッター筐体60の底壁上に軸受け支持されている。リンクアーム25はこの一端から他端に向かって中間部に長孔27を設け、他端部には別の長孔28を設けている。長孔27は枢軸22の先端部を摺動自在に挿通させている。
【0036】
また、カッター筐体60は
図7(b)に示すようなカバー64によって覆われるようになっている。移動機構15は更に、このカバー64の内面に回転可能に設けられたウォームホイール29と、このウォームホイール29を、ウォームギア30を介して回転させるモータ31とを備えている。ウォームホイール29はホイール側面上にこのウォームホイール29の回転中心から偏芯したピン32を設けている。このピン32は、カバー64がカッター筐体60の上方を覆うと、リンクアーム25の長孔28に係合する。モータ31がウォームホイール29を回すと、ピン32はこの長孔28内を摺動するし、リンクアーム25が枢軸26を回動中心として往復動する。移動機構15は枢軸22を介して可動刃12をスライドさせる。移動機構15がリンクアーム25を刃スライド方向D3の上流側へ力を与えると、ねじりコイルばね24は巻締められる。このようにして、カッター装置10は固定刃11に対して可動刃12をスライド移動させる事でラベル用紙52を切断する。
【0037】
ラベル用紙52は、印字部57にて印字面52−1に所定の印字がなされると、プラテンローラ56とサーマル印字ヘッド55の協働によりカッター装置10に対して
図1中右から左側へ搬送される。
図8に示す様に、カッター装置1のカッター筐体60には、ラベル用紙52が進入する用紙進入口65が設けられており、固定刃11及び可動刃12が離れている状態において、固定刃11及び可動刃12の間に位置する様になっている。また固定刃11及び可動刃12が離れている状態において、固定刃11の刃先11−1、可動刃12の刃先12−1のいずれか一方の刃先へカッター筐体60の外部より接触可能な刃先接触切欠部66が設けられている。なお
図8は、ラベル用紙52の搬送方向下流側から上流側に向かって見た図であり、ラベル用紙52は図中手前側から奥側に向かって搬送される。
【0038】
この刃先接触切欠部66の幅方向の長さWは使用するラベル用紙52の幅以上に設定するのが望ましい。
【0039】
この様な構成を取る事により、プリンタ装置45のユーザーは、カッター筐体60に設けられた刃先接触切欠部66を通して、カッター装置10の固定刃11の刃先11−1もしくは可動刃12の刃先12−1のいずれかに接触する事が可能となる。これにより刃先の清掃が容易におこなえるため、カッター装置の動作の安定に寄与することが出来る。
【0040】
なお
図8にて説明した第1の実施形態においては、刃先接触切欠部66は、可動刃12の刃先12−1に接触可能な形状としたが、これに限定する必要はなく、たとえば
図9に示すように刃先接触切欠部66は、可動刃11の刃先11−1に接触可能な形状としてもよい。
【0041】
しかしながら刃先11−1や刃先12−1に接触しやすくする為に、
図8や
図9に示す用紙進入口65と刃先接触切欠部66を一体として一つの開口部としてしまうと、切断されるラベル用紙52が
図8や
図9における上下方向にバタついてしまいラベル用紙52の切断に不具合を発生させる場合がある。従って
図8や
図9に示す用紙進入口65の上下方向の幅はラベル52が通過可能な幅で、なるべく狭い幅が望ましいので、用紙進入口65と刃先接触切欠部66を一体として一つの開口部としてしまうのは避けた方が良い。
【0042】
(第2の実施形態)
図10にて第2の実施形態を説明する。
【0043】
ラベル用紙52を切断する固定刃11および可動刃12のそれぞれの刃先11−1,12−1は鋭利な状態になっている。刃先接触切欠部66を大きくすると刃先の清掃は行いやすくなるものの意図しない時に刃先に接触してしまう可能性がある。
【0044】
第2の実施形態は、ラベル用紙52の用紙進入口65に対しての進入をガイドすると共に、刃先接触切欠部66を覆う事でカッター装置10の固定刃11の刃先11−1もしくは可動刃12の刃先12−1のいずれかに直接接触する事を防止する接触保護ペーパーガイド67を設けることで、意図しない時に刃先に接触してしまうのを防ぐものである。
【0045】
カッター装置10の固定刃11の刃先11−1もしくは可動刃12の刃先12−1のいずれかを清掃したい場合は、支軸68を回転中心として接触保護ペーパーガイド67を図中A方向に回動させる。これによりカッター筐体60に設けられた刃先接触切欠部66はカッター筐体60の外部に対して開放された状態となるため、刃先接触切欠部66を通してカッター装置10の固定刃11の刃先11−1もしくは可動刃12の刃先12−1のいずれかに接触する事が可能となる。これにより刃先の清掃が容易におこなえるため、カッター装置の動作の安定に寄与することが出来る。
【0046】
またラベル用紙52に印字をおこないラベルとして発行する際には、支軸68を回転中心として接触保護ペーパーガイド67を図中A方向と逆方向
に回動させる。これにより接触保護ペーパーガイド67は、ラベル用紙52の用紙進入口65に対しての進入をガイドするガイド部としての機能を有することとなる。
【0047】
また接触保護ペーパーガイド67が
図10に示す姿勢に固定されているかを検知する姿勢検知センサ69を設け、この姿勢に接触保護ペーパーガイド67が固定されていない場合はカッター装置1は稼働しないようにすると、清掃中に意図しない状態で刃が移動するといった事を防止する事が可能となる。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更をおこなうことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。