特許第6012574号(P6012574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6012574スクロール部材およびスクロール式流体機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012574
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】スクロール部材およびスクロール式流体機械
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20161011BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   F04C18/02 311T
   F04C29/00 U
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-201439(P2013-201439)
(22)【出願日】2013年9月27日
(65)【公開番号】特開2015-68208(P2015-68208A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年4月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000207791
【氏名又は名称】大豊工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147810
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 浩
(72)【発明者】
【氏名】金光 博
(72)【発明者】
【氏名】秋月 政憲
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−051783(JP,A)
【文献】 特開昭58−091388(JP,A)
【文献】 特開2001−342979(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0063989(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡板、および当該鏡板から他のスクロール部材に向けて設けられた渦巻状の羽根を有する基材と、
前記基材上に形成された樹脂層と、
前記樹脂層の表面に形成された複数の溝と
を有するスクロール部材。
【請求項2】
前記溝の幅は、前記複数の溝のうち隣り合う溝同士の間隔と同じか、当該間隔より小さい
ことを特徴とする請求項1に記載のスクロール部材。
【請求項3】
前記溝は、前記羽根に沿った方向以外の方向に沿って形成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のスクロール部材。
【請求項4】
前記溝は、螺旋状に形成されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のスクロール部材。
【請求項5】
前記溝の深さは、前記複数の溝のうち隣り合う溝同士の間隔より小さい
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のスクロール部材。
【請求項6】
前記溝は、当該溝が形成された面と隣り合う他の面に形成された他の溝と繋がるように形成されている
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のスクロール部材。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のスクロール部材と、
前記スクロール部材と噛み合わせて相対的に回転することにより当該スクロール部材とともに形成する空間の容積を増減させる他のスクロール部材と
を有するスクロール式流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロール部材を用いた流体機械のシール性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
渦巻状に形成された羽根を有するスクロール部材を用いた流体機械は、例えば自動車用空調機(空気調和機)などに用いられている。自動車用空調機で用いられるスクロール圧縮機は、互いの羽根を噛み合わせた2つのスクロール部材のうち、一方を他方に対して相対的に回転させることで、冷媒を圧縮する。スクロール圧縮機では、スクロール部材の羽根や鏡板が互いに接触しながら移動するので、いわゆる摺動摩擦によるエネルギー損失が問題となる。
【0003】
そこで、摺動摩擦によるエネルギー損失を減少させる工夫がなされている。例えば特許文献1には、段付き部を有する固定スクロール部材及び旋回スクロール部材を備えたスクロール圧縮機において、少なくともどちらかの各スクロール部材の段付き部の凸側先端に、上縁の外挿線に対して低く形成された面取り部を有するように構成したスクロール圧縮機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−364560公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記面取り部を設けたとしても、部材間のクリアランスが大きいと流体が漏れるため効率が下がることがあり、また、熱膨張によって部材間のクリアランスが小さくなっても部材同士の摩耗やかじりなどが生じることがある。
【0006】
本発明の目的は、スクロール部材を用いた流体機械のシール性を向上させるとともに、耐摩耗性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明に係るスクロール部材は、鏡板、および当該鏡板から他のスクロール部材に向けて設けられた渦巻状の羽根を有する基材と、前記基材上に形成された樹脂層と、前記樹脂層の表面に形成された複数の溝とを有する。
【0008】
好ましくは、前記溝の幅は、前記複数の溝のうち隣り合う溝同士の間隔と同じか、当該間隔より小さいとよい。
また、好ましくは、前記溝は、前記羽根に沿った方向以外の方向に沿って形成されているとよい。
また、好ましくは、前記溝は、螺旋状に形成されているとよい。
また、好ましくは、前記溝の深さは、前記複数の溝のうち隣り合う溝同士の間隔より小さいとよい。
また、好ましくは、前記溝は、当該溝が形成された面と隣り合う他の面に形成された他の溝と繋がるように形成されているとよい。
【0009】
また、本発明に係るスクロール式流体機械は、上述のスクロール部材と、前記スクロール部材と噛み合わせて相対的に回転することにより当該スクロール部材とともに形成する空間の容積を増減させる他のスクロール部材とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スクロール部材を用いた流体機械のシール性を向上させるとともに、耐摩耗性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本願発明の一実施形態におけるスクロール圧縮機の構造を示す断面図。
図2】可動スクロール部材の接触面を説明するための断面図。
図3図2における樹脂層を拡大した断面図。
図4】可動スクロール部材の隣り合う2面に形成される溝を示した斜視図。
図5】可動スクロール部材において溝が形成される方向を説明するための図。
図6】鏡板の中心である軸と異なる軸を中心に形成された溝を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.実施形態
1−1.スクロール圧縮機の構造
図1は、本願発明の一実施形態におけるスクロール圧縮機1の構造を示す断面図である。スクロール圧縮機1は、自動車用空調機に適用される圧縮機であり、自動車のエンジン(図示略)に固定されたハウジング2と、ハウジング2内に回転可能に設けられた回転軸3と、回転軸3によって回転する可動スクロール部材4と、ハウジング2の内部に固定された固定スクロール部材5とを有する。ハウジング2の内部は、可動スクロール部材4と固定スクロール部材5とが位置する圧縮室S1と、固定スクロール部材5よりも図示右方側に形成された排出室S2とに区画され、圧縮室S1には冷媒などのガスを吸入させるための図示しない吸入孔が、排出室S2には冷媒などのガスを排出する図示しない排出孔がそれぞれ設けられている。
【0013】
軸心が水平方向に伸びている回転軸3は、エンジンの駆動力を受ける小径部3aと、これに同軸上で直結された大径部3b及びクランクピン3cとを有し、小径部3a及び大径部3bからなる回転軸3に対して偏心した位置に設けられたクランクピン3cが可動スクロール部材4に回転力を伝達する。したがって、小径部3aをエンジンによって駆動すると、大径部3bが小径部3aと同軸上で回転し、これによりクランクピン3cが小径部3a及び大径部3bに対して偏心した位置で公転するとともに、可動スクロール部材4が固定スクロール部材5に対して公転する。ここで、「公転」とは、或る部材が、他の部材の内部にある軸の周りを回転することを意味する。
【0014】
これらの要素のうち、大径部3bは第1軸受6(すなわち、軸本体軸受)により支持されている。すなわち、大径部3bを囲むリング状の部材が第1軸受6である。そしてクランクピン3cと可動スクロール部材4との間には、回転軸3の回転を可動スクロール部材4に伝達するための偏心ブシュ7が設けられており、この偏心ブシュ7はクランクピン3cを支持する内周面部7aと、可動スクロール部材4と摺動する外周面部7bとを備え、内周面部7aと外周面部7bとは互いに偏心した位置に設けられている。
【0015】
可動スクロール部材4及び固定スクロール部材5は、それぞれ所定の直径(例えば150mm)の円盤状の鏡板4a、5aと、この鏡板4a、5aから相互の鏡板4a、5aに向けて設けられた羽根4b、5bとを備えている。図1の紙面に直交する方向の断面図ではこれら羽根4b、5bは渦巻状の圧縮室S1を形成している。すなわち、圧縮室S1はこれら鏡板4a、5a及び羽根4b、5bによって囲まれた空間である。
【0016】
また、可動スクロール部材4における鏡板4aには、羽根4bとは反対側の面にリング状のボス4cが形成され、このボス4cの内周面に設けられた第2軸受8(すなわち、偏心軸軸受)がクランクピン3cを回転可能に支持している。したがって、第2軸受8が可動スクロール部材4と一体になって回転軸3の周りを公転すると、偏心ブシュ7の外周面部7bが第2軸受8の内面と摺動する。さらに、可動スクロール部材4の鏡板4aとハウジング2との間には、可動スクロール部材4が、自身の内部を通る軸であってクランクピン3cを通る軸の周りを自転することを防止する機構が設けられている。ここで、「自転」とは、或る部材が、その部材の内部にある軸の周りを回転することを意味する。固定スクロール部材5はハウジング2に固定されており、鏡板5aの中央には圧縮室S1から排出室S2へ冷媒を流入させるための孔5cが設けられ、この孔5cは薄板状のリード弁10により開閉される。
【0017】
この構成を有するスクロール圧縮機1によれば、回転軸3の小径部3aがエンジンの駆動力によって回転すると、クランクピン3c及び偏心ブシュ7によって可動スクロール部材4には回転力が作用する。このとき、可動スクロール部材4は自転が規制されているため、その姿勢を維持したまま回転軸3を中心に公転運動することとなる。そして、圧縮室S1では可動スクロール部材4及び固定スクロール部材5の羽根4b、5bが相対移動して、ハウジング2に形成された吸気口から冷媒が吸入される。続いて、可動スクロール部材4の回転運動に伴って圧縮室S1の容積が減少するため、圧縮室S1に吸入された冷媒は圧縮される。圧縮された冷媒は、羽根4b、5bの相対移動によって圧縮室S1の中央へと移動し、固定スクロール部材5の鏡板5aに形成された孔5c及びリード弁10を通過して排出室S2へと流入し、その後、ハウジング2に設けられた排出孔より排出される。
【0018】
1−2.可動スクロール部材の構造
可動スクロール部材4は、鏡板4aと、この鏡板4aから固定スクロール部材5に向けて設けられた羽根4bと、この羽根4bと反対側の面に設けられたボス4cを有する。このうち、鏡板4aと羽根4bとが上述した固定スクロール部材5と接触して、圧縮室S1が形成される。可動スクロール部材4のうち、固定スクロール部材5と接触する部位は、鏡板4aの羽根4bが設けられている側の面である底面40aと、羽根4bの渦巻形状において内側に向いた面である内側面41bと、その渦巻形状において外側に向いた面である外側面42b、および固定スクロール部材5に向いた面である端面40bである。
【0019】
端面40bは、上述した固定スクロール部材5における底面に当たる部位に接触し、底面40aは、固定スクロール部材5における端面に当たる部位に接触する。また、内側面41bは、上述した固定スクロール部材5における外側面に当たる部位に接触し、外側面42bは、固定スクロール部材5における内側面に当たる部位に接触する。
【0020】
1−3.可動スクロール部材の接触面に設けられた樹脂層
図2は、可動スクロール部材4の接触面を説明するための断面図である。図2には、図1における領域R2を拡大した断面図が示されている。可動スクロール部材4は、アルミダイキャストで形成された基材L0と、この基材L0の上に設けられた樹脂層L1を有する。樹脂層L1は、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、これら樹脂のジイソシアネート変性、BPDA変性、スルホン変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド、エラストマーのいずれか1種以上をバインダー樹脂として含有する。また、樹脂層L1は、グラファイト、カーボン、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン、窒化ホウ素、二硫化タングステン、フッ素系樹脂、軟質金属(例えばSn、Biなど)のいずれか1種以上を固体潤滑剤として含有する。なお、基材L0は、鋳鉄で形成されてもよいし、アルミニウム、ステンレス鋼など各種の材料に対して、焼結、鍛造、切削、プレス、溶接などの各種の加工処理を施すことで形成されてもよい。また、基材L0はセラミック製であってもよい。
【0021】
樹脂層L1は、上述した固体潤滑剤をバインダー樹脂に分散させて調整した塗布液を、アルミダイキャスト製の基材L0の上に塗布して形成する。樹脂層L1の形成には、スプレー法、ロール転写法、タンブリング法、浸漬法、はけ塗り法、印刷法などの方法を用いてもよい。
【0022】
また、樹脂層L1は、可動スクロール部材4のうち固定スクロール部材5と接触する部位(接触面)に形成されている。例えば図2に示す例では、可動スクロール部材4のうち、端面40bに樹脂層L1が形成されている。
【0023】
1−4.樹脂層に形成される溝
樹脂層L1の表面には複数の溝Cが形成されている。図3は、図2における樹脂層L1を拡大した断面図である。図3(a)に示すように、樹脂層L1の表面には複数の溝Cが形成されている。溝Cの断面は、深い位置ほど幅が狭くなり底に近づくほど幅の変化が急になるU字ないし半円に似た形状である。なお、図3は溝Cの伸びる方向(溝Cの接線方向、例えば、図6に示す矢印D6の方向)に直行する断面(例えば、図6に示す面F6)を表している。また、図3に示す樹脂層L1の断面図は説明を簡略にするため概略を示したものであり、実際の樹脂層L1よりも図中における縦方向を拡張して描いている。
【0024】
溝Cは、塗布などによって基材L0上に最初に形成された樹脂層の表面に沿って切削工具の刃先を移動させて形成される。溝Cの幅wは、溝Cの伸びる方向に直交する断面における溝Cの幅であり、上記断面において溝Cの両端部を結んだ線分の長さである。溝Cの間隔pは、隣り合う2つの溝C同士の間隔であり、溝Cの伸びる方向に直交する断面においてこれら溝Cの中心同士を結んだ線分の長さである。山部Bの幅aは、溝Cの伸びる方向に直交する断面において、その溝Cと、その溝Cの隣に形成された溝Cとの間で切削されていない部分の長さである。
【0025】
溝Cの幅wは、溝Cの間隔pと同じか間隔pよりも小さい(w≦p)。図3(a)に示す例において、溝Cの幅wは、溝C同士の間隔pと同じである。この場合、樹脂層の元の表面は削られて無くなっているか、隣り合う溝C同士の間に形成される山部Bの先端のみとなっている。この先端が尖り、固定スクロール部材5と接触する面積が小さくなるため、スクロール部材同士の摩擦抵抗が低下する。また、固定スクロール部材5と接触する山部Bは、先端が尖っているため弾性変形を起こしやすく、弾性変形した山部Bと固定スクロール部材5との間に油膜が形成されやすいため、接触部分のシール性が向上する。図3(b)に示す例において、溝Cの幅wは、溝C同士の間隔pよりも小さい。山部Bは、溝C同士の間で幅aの平坦な先端を有する。この場合、山部Bは加工によって形成してもよいし、摩耗によって形成されてもよい。山部Bは、樹脂層形成時の表層で形成されていてもよい。また、幅aは幅wよりも小さい(a<w)ことが望ましい。幅aを幅wよりも小さくすることにより、固定スクロール部材5と接触して弾性変形した山部Bによって溝Cが完全に埋まってしまうことがない。つまり、山部Bが溝Cに向かって弾性変形したとしても、溝Cがオイルなどの潤滑剤を保持するので、スクロール圧縮機1のシール性および耐摩耗性は向上する。
【0026】
切削工具の刃先の軌跡は、直線状でもよいし、或る軸を中心とした円弧状でもよいし、軸を中心とした螺旋状でもよい。なお、螺旋状に溝Cを形成する場合には、いずれかの軸を中心に上述した切削工具を回転させつつ、その軸から離していけばよい。また、上述した間隔pは、例えば0.1〜0.15mmである。
【0027】
また、溝Cの深さdは、隣り合う溝C同士の間隔pよりも小さい(d<p)ことが望ましい。この場合、隣り合う溝C同士の間に形成される山部Bは、溝Cの深さdに相当する高さよりも、間隔pに相当する裾部分の幅の方が長くなるから、図3における横方向の力に対して比較的頑丈な形状となる。深さdは、例えば、1〜20μmである。
そして、樹脂層L1を基材L0の上に形成し、その樹脂層L1の表面に溝Cを形成するため、可動スクロール部材4は、シール材を保持する必要がなく、シール材を保持するための保持部を設ける必要がない。
【0028】
2.変形例
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
2−1.樹脂層を設ける部材
上述した実施形態において、表面に溝Cを形成した樹脂層L1は、可動スクロール部材4に設けられたが、固定スクロール部材5に設けられてもよい。要するに樹脂層L1は、鏡板と、その鏡板から他のスクロール部材に向けて設けられた渦巻状の羽根とを有する基材上に形成されればよい。ただし、可動スクロール部材4と固定スクロール部材5とが接触する接触面において、両方にそれぞれ溝Cを形成した樹脂層L1が設けられるのではなく、いずれか一方に設けられることが望ましい。特に、各スクロール部材の接触面のうち、一方の接触面に、溝Cを形成した樹脂層L1を設けている場合には、他方の接触面には樹脂層L1を設けないことが望ましい。また、溝Cは、接触面の全てに設けられる必要はなく、少なくとも一部に形成されていればよい。
【0029】
2−2.スクロール部材が適用される流体機械、装置
上述した実施形態において、スクロール圧縮機1は自動車用空調機に適用されていたが、例えば、鉄道用、住宅用、建物用など、自動車用以外の空調機に適用されてもよい。また、スクロール圧縮機1は、冷凍機、冷蔵装置などに適用されてもよいし、水温調節、恒温槽、恒湿槽、塗装設備、粉体輸送装置、食品加工装置、空気分離装置など各種装置に用いられてもよい。
また、上述した実施形態において、可動スクロール部材4はスクロール圧縮機1に適用されていたが、送風機、膨張機、スーパーチャージャー、発電機など、各種のスクロール式の流体機械に適用されてもよい。例えば、膨張機に適用する場合、可動スクロール部材4を固定スクロール部材5に対して上述した公転方向と逆の方向に公転させればよい。これによりガスは、上述した流入方向とは逆の方向に、これらスクロール部材によって囲われる空間に流入し膨張して排出される。要するに、スクロール部材は、互いに噛み合わせて、一方を他方に対して相対的に公転させることにより、ともに形成する空間の容積を増減させる部材であればよい。
【0030】
2−3.溝の形成手段
上述した実施形態において、溝Cは、樹脂層の表面に沿って切削工具の刃先を移動させ、その樹脂層を削り取ることによって形成されていたが、溝Cの形成手段はこれに限られない。例えば、溝Cは、エッチングやローラーなどによって形成されてもよい。また、立体印刷などによって、基材L0や樹脂層L1の平面上に複数の山部Bを形成させることで、隣り合う山部Bに挟まれた溝Cが形成されてもよい。
【0031】
2−4.隣り合う2面に形成される溝
上述した実施形態において、樹脂層L1は、可動スクロール部材4のうち、端面40bに形成されていたが、複数の接触面に形成されてもよい。例えば、樹脂層L1は、端面40bと内側面41bとにそれぞれ形成されていてもよい。
図4は、可動スクロール部材4の隣り合う2面に形成される溝Cを示した斜視図である。端面40bおよび内側面41bは、稜線を介して互いに隣り合う。端面40bと内側面41bにはそれぞれ樹脂層L1が設けられ、これら樹脂層L1の表面にはそれぞれ溝Cが形成される。端面40bに形成された溝Cと、内側面41bに形成された溝Cとは、端面40bと内側面41bとの間の稜線において互いに繋がるように形成される。これにより、端面40bおよび内側面41bのいずれかが固定スクロール部材5の面に密着したとしても、密着した面に形成された溝Cは、他の面に形成された溝Cと繋がっているので、例えばオイルなどの潤滑剤を接触面の溝Cに保持させ易い。
【0032】
なお、端面40bに形成された溝Cと、内側面41bに形成された溝Cとは、加工方法が異なってもよい。この場合において、端面40bの溝Cおよび内側面41bの溝Cは、幅、間隔、および深さのうち少なくとも1つが異なっていてもよい。すなわち、端面40bの溝Cと内側面41bの溝Cとはすべてが1対1に繋がっていなくてもよく、複数ある溝Cのうち一部が繋がっていればよい。
【0033】
2−5.溝が形成される方向
上述した実施形態において、溝Cが形成される方向について言及していないが、溝Cが形成される方向は、羽根4bに沿った方向と異なる方向であることが望ましい。具体的に溝Cは、羽根4bの端面40bを形成する稜線を横切る方向に形成されることが望ましい。
図5は、可動スクロール部材4において溝Cが形成される方向を説明するための図である。軸O1は、鏡板4aの中心であり、かつ羽根4bと羽根5bとの接点である。羽根4bおよび羽根5bは、いずれも軸O1を中心とする円により規定されるインボリュート曲線を中心に形成されている。羽根4bの端面40bには、図3に示した樹脂層L1が設けられており、その表面には複数の溝Cが形成される。溝Cは、軸O1を中心に切削工具を回転させて形成される。なお、複数の溝Cは作図の都合により図5において不規則な間隔で描かれているが、実際には等間隔かつ隙間なく樹脂層L1の端面40bに形成されている。
【0034】
図5に示す例で、複数の溝Cは、軸O1を中心とした同心円状に形成される。これにより、溝Cは、羽根4bに沿った方向以外の方向に沿って形成される。すなわち、溝Cは、羽根4bに沿った方向と交差するいずれかの方向、つまり羽根4bの稜線を横切る方向に沿って形成されるので、端面40bが固定スクロール部材5に接触したときにも、端面40bの溝Cには、他の面の溝Cを通ってオイルなどの潤滑剤が上述した稜線を越えて流入しやすい。そして、端面40bに形成された溝Cがオイルなどの潤滑剤を保持した状態で固定スクロール部材5に接触するため、シール性および耐摩耗性が向上する。
【0035】
また、複数の溝Cは軸O1以外の軸を中心として形成されてもよい。図6は、鏡板4aの中心である軸O1と異なる軸O2を中心に切削工具を回転させて形成された溝Cを示す図である。図6においても複数の溝Cは、実際には等間隔かつ隙間なく樹脂層L1の端面40bに形成されている。このように、軸O1と異なる軸O2を中心に溝Cが形成されても溝Cが、図6に示す矢印D0の方向のように羽根4bに沿った方向ではなく、この方向と異なる方向(例えば、図6に示す矢印D6の方向)に形成されていればよく、羽根4bの稜線を横切る方向に形成されていればよい。
なお、上述の図5および図6で示した溝Cは、互いに等間隔かつ隙間なく樹脂層L1の端面40bに形成されていたが、溝C同士の間隔は等しくなくてもよく、隣り合う溝C同士に隙間があってもよい。また、溝Cは、軸O1や軸O2を中心として上述したように螺旋状に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…スクロール圧縮機、10…リード弁、2…ハウジング、3…回転軸、3a…小径部、3b…大径部、3c…クランクピン、4…可動スクロール部材、40a…底面、40b…端面、41b…内側面、42b…外側面、4a…鏡板、4b…羽根、4c…ボス、5…固定スクロール部材、5a…鏡板、5b…羽根、5c…孔、6…第1軸受、7…偏心ブシュ、7a…内周面部、7b…外周面部、8…第2軸受、B…山部、C…溝、L0…基材、L1…樹脂層、O1…軸、O2…軸、S…元の表面、S1…圧縮室、S2…排出室。
図2
図3
図4
図5
図6
図1