(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
8’’’) 本留め工程が、工程8’’)で得られた複合透光性硬質基板積層体内部に存在する未硬化の固着剤を硬化させるための光を照射し、積層枚数が増加された本留め透光性硬質基板積層体を形成する照射工程である請求項2記載の透光性硬質基板積層体の製造方法。
8’’’) 本留め工程が、工程8’’)で得られた複合透光性硬質基板積層体内部に存在する未硬化の固着剤を静置し、積層枚数が増加された本留め透光性硬質基板積層体を形成する静置工程である請求項2記載の透光性硬質基板積層体の製造方法。
7)本留め工程又は8’)本留め工程が、貼り合わせられた透光性硬質基板面に所定の圧力を印加しながら行われる請求項1〜5の何れか一項記載の透光性硬質基板積層体の製造方法。
未硬化の固着剤に紛れて存在する気泡を、形状加工を受けない位置に移動させてから7)本留め工程又は8’)本留め工程を実施する請求項1〜6の何れか一項記載の透光性硬質基板積層体の製造方法。
各透光性硬質基板の表面に位置合わせのための目印が付されており、工程4)はこれを撮像装置で撮像しながら位置調整を行うことを含む請求項1〜7の何れか一項記載の透光性硬質基板積層体の製造方法。
各透光性硬質基板の表面には板状製品の機能の一つを奏するための所定の印刷パターン及び/又はめっきパターンが付されている請求項1〜8の何れか一項記載の透光性硬質基板積層体の製造方法。
透光性硬質基板の表面には印刷パターンが形成されており、工程9)における厚み方向の分割及び工程10)における形状加工の少なくとも一方は、当該印刷パターンを切断するように実施されることを含む請求項10記載の板状製品の製造方法。
工程9)と工程10)の間に、分割された透光性硬質基板積層体を、各透光性硬質基板に挟まれた固着剤外縁の露出部分の接着力を低下させるのに必要な温度及び時間条件で、剥離剤に接触させる工程を更に含む請求項10又は11記載の板状製品の製造方法。
上側及び下側の透光性硬質基板の表面に設けられたアライメントマークを撮像する撮像ユニットと、撮像結果に基づいて上側及び下側の表面に設けられたアライメントマークの位置ずれ度合いを検出する画像処理ユニットと、検出された位置ずれ度合いに基づいて前記下側ステージ移動手段を制御する制御ユニットとを更に備えた請求項14〜17の何れか一項記載の透光性硬質基板貼り合わせ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された板ガラスの加工方法によれば、所定の形状の板ガラス製品を高い生産効率で製造することが可能となる。しかしながら、電子機器によっては、板ガラスに所望の印刷パターン(例えば、携帯電話の表示画面のデザイン)を形成することが要求される場合もあり、このような場合には印刷されるパターンについて高い位置精度(例えば許容誤差が10〜30μm程度)が要求される。
【0009】
特許文献1に記載の方法では、各素材板ガラス間に光硬化性の液状固着剤を介在させながら素材板ガラスを20枚積み重ね、次いで、積み重ねた素材板ガラスの上面から紫外線(UV光)を照射して固着剤を硬化させ、上下の各素材板ガラスが一体的に固着された素材ガラスブロックを形成している。しかしながら、このような手順では素材板ガラスを積み重ねている間は固着剤が硬化しておらず、ガラス面同士が微妙な位置ずれを起こしやすいため、高精度の位置合わせには向いていない。すなわち、特許文献1に記載の方法では高い位置精度を得るのは困難である。
【0010】
また、特許文献1にはガラスを貼り合わせる方法の発明は開示されているものの、それを実現する装置については記載されていない。工業的な量産のためにはガラスを貼り合わせることのできる装置が提供されることが望ましい。
【0011】
そこで、本発明は位置精度の向上を図ることのできる透光性硬質基板積層体の製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は当該透光性硬質基板積層体の製造方法を利用した板状製品の製造方法を提供することを別の課題とする。また、本発明は板状製品の生産効率を高めながら位置精度の向上に寄与する透光性硬質基板貼り合わせ装置を提供することを更に別の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究したところ、光硬化性の固着剤を介在させて透光性硬質基板同士を定められた位置関係で貼り合わせるときに、両透光性硬質基板間に挟まれて広がっている固着剤の外周部分のみを仮留めのために硬化させること(仮照射)が有効であることを見出した。
【0013】
仮留めされた透光性硬質基板の積層体は積み重ねていっても容易には位置ずれが生じない。一方で、透光性硬質基板同士は外周部分が接着されているに過ぎないので、仮留め後に貼り合わせの位置精度を検査し、不合格品についてはいったん剥がした後に再度仮留めを行うという手順が行いやすい。
【0014】
また、仮留めに要する時間は透光性硬質基板面に広がっている固着剤全部を硬化する場合に比べて単位面積当たりの照射エネルギーが概ね5分の1程度で済む。そのため、多数の透光性硬質基板を仮留めで積層した後に基板表面の中央付近に存在する固着剤の硬化(本留め)を実施すれば、透光性硬質基板積層体を高い位置精度及び高い生産効率で製造することも可能となる。
【0015】
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、
1)第一の透光性硬質基板を準備する工程と、
2)第二の透光性硬質基板を準備する工程と、
3)第一の透光性硬質基板の第一の面及び/又は第二の透光性硬質基板の第一の面に、(A)多官能(メタ)アクリレート、(B)単官能(メタ)アクリレート、及び(C)光重合開始剤を含有する光硬化性の固着剤を塗布する工程と、
4)第一の透光性硬質基板の第一の面と第二の透光性硬質基板の第一の面とを予め定めた面方向の位置関係で両面が平行となるように対向させる工程と、
5)前記位置関係を維持しながら、第一の透光性硬質基板の第一の面と第二の透光性硬質基板の第一の面に所定の圧力を印加して、両透光性硬質基板を貼り合わせる工程と、
6)両透光性硬質基板に挟まれて広がっている固着剤の外周部分のみを硬化するための光を照射して、仮留め透光性硬質基板積層体を形成する工程と、
7)前記仮留め透光性硬質基板積層体内部に存在する未硬化の固着剤を硬化させ、本留め透光性硬質基板積層体を形成する本留め工程と、
8)前記本留め透光性硬質基板積層体を第一の透光性硬質基板に見立てて、工程1)〜7)を少なくとも1回繰り返し、少なくとも3枚の透光性硬質基板が貼り合わせられた本留め透光性硬質基板積層体を形成する工程と
を含む透光性硬質基板積層体の製造方法である。
【0016】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の一実施形態においては、
7)本留め工程が、前記仮留め透光性硬質基板積層体内部に存在する未硬化の固着剤を硬化させるための光を照射し、本留め透光性硬質基板積層体を形成する照射工程である。
【0017】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の別の一実施形態においては、
7)本留め工程が、前記仮留め透光性硬質基板積層体内部に存在する未硬化の固着剤を硬化させるために静置し、本留め透光性硬質基板積層体を形成する静置工程である。
【0018】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、7)本留め工程における静置工程は1時間以上行われる。
【0019】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、7)本留め工程における静置工程は10〜35℃の温度環境下で行われる。
【0020】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、6)仮留め透光性硬質基板積層体を形成する工程において、両透光性硬質基板に挟まれて広がっている固着剤の外周部分に照射する光は、2〜6箇所だけをスポット照射する。
【0021】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、
6)仮留め透光性硬質基板積層体を形成する工程が、前記圧力を維持したまま、両透光性硬質基板に挟まれて広がっている固着剤の外周部分のみを硬化するための光を照射して、仮留め透光性硬質基板積層体を形成する工程である。
【0022】
本発明は別の一側面において、
1)第一の透光性硬質基板を準備する工程と、
2)第二の透光性硬質基板を準備する工程と、
3)第一の透光性硬質基板の第一の面及び/又は第二の透光性硬質基板の第一の面に、(A)多官能(メタ)アクリレート、(B)単官能(メタ)アクリレート、及び(C)光重合開始剤を含有する光硬化性の固着剤を塗布する工程と、
4)第一の透光性硬質基板の第一の面と第二の透光性硬質基板の第一の面とを予め定めた面方向の位置関係で両面が平行となるように対向させる工程と、
5)前記位置関係を維持しながら、第一の透光性硬質基板の第一の面と第二の透光性硬質基板の第一の面に所定の圧力を印加して、両透光性硬質基板を貼り合わせる工程と、
6)両透光性硬質基板に挟まれて広がっている固着剤の外周部分のみを硬化するための光を照射して、仮留め透光性硬質基板積層体を形成する工程と、
7’)前記仮留め透光性硬質基板積層体を第一の透光性硬質基板に見立てて、工程1)〜6)を少なくとも1回繰り返し、少なくとも3枚の透光性硬質基板が貼り合わせられた仮留め透光性硬質基板積層体を形成する工程と、
8’)工程7’)で得られた仮留め透光性硬質基板積層体内部に存在する未硬化の固着剤を硬化させ、本留め透光性硬質基板積層体を形成する本留め工程と、
を含む透光性硬質基板積層体の製造方法である。
【0023】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の一実施形態においては、8’) 本留め工程が、工程7’)で得られた仮留め透光性硬質基板積層体内部に存在する未硬化の固着剤を硬化させるための光を照射し、本留め透光性硬質基板積層体を形成する照射工程である。
【0024】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の別の一実施形態においては、
8’) 本留め工程が、工程7’)で得られた仮留め透光性硬質基板積層体内部に存在する未硬化の固着剤を硬化させるために静置し、本留め透光性硬質基板積層体を形成する静置工程である。
【0025】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、8’)本留め工程における静置工程は1時間以上行われる。
【0026】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、8’)本留め工程静置工程は10〜35℃の温度環境下で行われる。
【0027】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、6)仮留め透光性硬質基板積層体を形成する工程において、両透光性硬質基板に挟まれて広がっている固着剤の外周部分に照射する光は、2〜6箇所だけをスポット照射する。
【0028】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、
6)仮留め透光性硬質基板積層体を形成する工程が、前記圧力を維持したまま、両透光性硬質基板に挟まれて広がっている固着剤の外周部分のみを硬化するための光を照射して、仮留め透光性硬質基板積層体を形成する工程である。
【0029】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、
8’’)工程8’)で得られた本留め透光性硬質基板積層体を第一の透光性硬質基板に見立てて、工程1)〜6)を少なくとも1回繰り返し、複合透光性硬質基板積層体を形成する工程と、
8’’’)工程8’’)で得られた複合透光性硬質基板積層体内部に存在する未硬化の固着剤を硬化させ、積層枚数が増加された本留め透光性硬質基板積層体を形成する本留め工程と、
を更に含む。
【0030】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、
8’’’) 本留め工程が、工程8’’)で得られた複合透光性硬質基板積層体内部に存在する未硬化の固着剤を硬化させるための光を照射し、積層枚数が増加された本留め透光性硬質基板積層体を形成する照射工程である。
【0031】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、
8’’’) 本留め工程が、工程8’’)で得られた複合透光性硬質基板積層体内部に存在する未硬化の固着剤を静置し、積層枚数が増加された本留め透光性硬質基板積層体を形成する静置工程である。
【0032】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、8’’’)本留め工程における静置工程は1時間以上行われる。
【0033】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、8’’’)本留め工程における静置工程は10〜35℃の温度環境下で行われる。
【0034】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、工程5)はロールプレスにより実施する。
【0035】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、前記外周部分は板状製品の一部を形成しないマージン領域に存在する。
【0036】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、本留め工程が、貼り合わせられた透光性硬質基板面に所定の圧力を印加しながら行われる。
【0037】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、未硬化の固着剤に紛れて存在する気泡を、形状加工を受けない位置に移動させてから本留め工程を実施する。
【0038】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、各透光性硬質基板の表面に位置合わせのための目印が付されており、工程4)はこれを撮像装置で撮像しながら位置調整を行うことを含む。
【0039】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、各透光性硬質基板の表面には透光性硬質基板製品の機能の一つを奏するための所定の印刷パターン及び/又はめっきパターンが付されている。
【0040】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、前記固着剤は粒状物質を含有する。
【0041】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、工程6)における光の照射量は、365nmの受光器を使用した積算照度計で測定して、光の照射量が1mJ/cm
2〜500mJ/cm
2の範囲である。
【0042】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、透光性硬質基板が板ガラスである。
【0043】
本発明は更に別の一側面において、
9)上記の透光性硬質基板積層体の製造方法を用いて得られた透光性硬質基板積層体を厚み方向に分割し、所望の数の分割された透光性硬質基板積層体を形成する工程と、
10)分割された透光性硬質基板積層体それぞれに対して所望の形状加工を行う工程と、
11)形状加工後の透光性硬質基板積層体を加熱することで貼り合わせられていた透光性硬質基板同士を剥離し、複数の板状製品を形成する工程と、
を含む板状製品の製造方法である。
【0044】
本発明に係る板状製品の製造方法の一実施形態においては、透光性硬質基板の表面には印刷パターンが形成されており、工程9)における厚み方向の分割及び工程10)における形状加工の少なくとも一方は、当該印刷パターンを切断するように実施されることを含む。
【0045】
本発明に係る板状製品の製造方法の別の一実施形態においては、工程9)と工程10)の間に、分割された透光性硬質基板積層体を、各透光性硬質基板に挟まれた固着剤外縁の露出部分の接着力を低下させるのに必要な温度及び時間条件で、剥離剤に接触させる工程を更に含む。
【0046】
本発明に係る板状製品の製造方法の更に別の一実施形態においては、剥離剤が溶剤、酸化剤、及び界面活性剤から選択される一種又は二種以上を含有する。
【0047】
本発明に係る板状製品の製造方法の更に別の一実施形態においては、剥離剤が水、アルコール類、酸化剤、及び界面活性剤から選択される一種又は二種以上を含有する。
【0048】
本発明に係る板状製品の製造方法の更に別の一実施形態においては、剥離剤が水とアルコール類と界面活性剤を30〜50:30〜50:5〜20の質量比で含有する。
【0049】
本発明に係る板状製品の製造方法の更に別の一実施形態においては、剥離剤がベンジルアルコールを含有する。
【0050】
本発明に係る板状製品の製造方法の更に別の一実施形態においては、剥離剤がアニオン系界面活性剤を含有する。
【0051】
本発明に係る板状製品の製造方法の更に別の一実施形態においては、剥離剤がスルホン酸型界面活性剤を含有する。
【0052】
本発明に係る板状製品の製造方法の更に別の一実施形態においては、剥離剤の液温が50℃以下であり、剥離剤に接触させる時間が1〜20分である。
【0053】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、(A)多官能(メタ)アクリレートが、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマー及び/又は2官能(メタ)アクリレートモノマーを含有する。
【0054】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、(B)単官能(メタ)アクリレートが、フェノールエチレンオキサイド2モル変性(メタ)アクリレート、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種以上を含有する。
【0055】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、(B)単官能(メタ)アクリレートが、フェノールエチレンオキサイド2モル変性(メタ)アクリレート及び2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレートを含有する。
【0056】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、(B)単官能(メタ)アクリレートが、フェノールエチレンオキサイド2モル変性(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートを含有する。
【0057】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、前記固着剤が二剤型の組成物であり、第一剤に少なくとも(F)有機過酸化物を含有し、第二剤に少なくとも(G)分解促進剤を含有する。
【0058】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の更に別の一実施形態においては、複数の工程を並行して実施する。
【0059】
本発明は更に別の一側面において、
上側の透光性硬質基板を真空吸着するための吸引孔を有し、上側の透光性硬質基板を保持するための上側ステージと、
上側ステージをZ軸方向に移動させることのできるプレスユニットと、
前記吸引孔に吸引力を与える吸引ユニットと、
下側の透光性硬質基板を保持するための下側ステージと、
下側ステージをX軸方向、Y軸方向及びθ軸方向に移動させる手段と、
上側の透光性硬質基板の下面及び下側の透光性硬質基板の上面のいずれか又は両方に、(A)多官能(メタ)アクリレート、(B)単官能(メタ)アクリレート、及び(C)光重合開始剤を含有する光硬化性の固着剤を塗布するための手段と、
両透光性硬質基板の貼り合わせ面の外周部分に向かって光を照射できる位置に配列された光照射部と、
を備えた透光性硬質基板貼り合わせ装置である。
【0060】
本発明に係る透光性硬質基板貼り合わせ装置の一実施形態においては、光照射部は外周部分の2〜6箇所だけをスポット照射するように配列されている。
【0061】
本発明に係る透光性硬質基板貼り合わせ装置の別の一実施形態においては、光照射部は上側ステージの下面に、保持される透光性硬質基板の外周に沿って配列され、下方向に光を照射する。
【0062】
本発明に係る透光性硬質基板貼り合わせ装置の更に別の一実施形態においては、光照射部をこのように配列することで、透光性硬質基板の外周部分に存在する固着剤に選択的に光を照射することができる。光は上側の透光性硬質基板に照射されるので、下側の透光性硬質基板(一枚の透光性硬質基板でも二枚以上の透光性硬質基板積層体でもよい)に対して上側の透光性硬質基板一枚ずつ積層する場合に特に有効である。
【0063】
本発明に係る透光性硬質基板貼り合わせ装置の更に別の一実施形態においては、光照射部は下側ステージの上面に、保持される透光性硬質基板の外周に沿って配列され、上方向に光を照射する。
【0064】
光照射部をこのように配列することで、同様に透光性硬質基板の外周部分に存在する固着剤に選択的に光を照射することができる。光は下側の透光性硬質基板に照射されるので、上側の透光性硬質基板(一枚の透光性硬質基板でも二枚以上の透光性硬質基板積層体でもよい)に対して下側の透光性硬質基板一枚ずつ積層する場合に有効である。この場合、貼り合わせた後の透光性硬質基板積層体を取り出さずに上側ステージに保持すれば、次に積層する透光性硬質基板を下側ステージから供給することで連続的に透光性硬質基板を積層することが可能となる。
【0065】
本発明に係る透光性硬質基板貼り合わせ装置の更に別の一実施形態においては、光照射部は貼り合わせられる両透光性硬質基板の外周側面を取り囲むように配列され、外周側面に向かって光を照射する。
【0066】
この場合も、同様に透光性硬質基板の外周部分に存在する固着剤に選択的に光を照射することができる。外周側面に向かって照射された光のエネルギーは接着剤によって吸収されるため、透光性硬質基板の中央付近にまで光が到達することはない。また、光照射部をZ軸方向に移動可能にすることで、光照射部を貼り合わせ面の高さに追随させることができる。そのため、上側の透光性硬質基板に対して下側の透光性硬質基板一枚ずつ積層する場合、及び、下側の透光性硬質基板に対して上側の透光性硬質基板一枚ずつ積層する場合の何れにも適用できる。貼り合わせた後の透光性硬質基板積層体を取り出さずに上側ステージに保持すれば、次に積層する透光性硬質基板を下側ステージから供給することで連続的に透光性硬質基板を積層することも可能である。
【0067】
本発明に係る透光性硬質基板貼り合わせ装置の更に別の一実施形態においては、上側及び下側の透光性硬質基板の表面に設けられたアライメントマークを撮像する撮像ユニットと、撮像結果に基づいて上側及び下側の表面に設けられたアライメントマークの位置ずれ度合いを検出する画像処理ユニットと、検出された位置ずれ度合いに基づいて前記下側ステージ移動手段を制御する制御ユニットとを更に備える。
【0068】
撮像ユニットを用いて透光性硬質基板同士の位置関係を微調整することで、より高い位置精度で基板を積層することができる。そのため、透光性硬質基板表面に印刷パターンやめっきパターンが付されている場合など高い位置精度が要求される場合においても対応が可能である。
【0069】
本発明に係る透光性硬質基板貼り合わせ装置の更に別の一実施形態においては、光照射部が光を照射する前記外周部分は、板状製品の一部を形成しないマージン領域である。
【0070】
マージン領域に選択的に光照射する場合、板状製品を構成する部分の基板は仮留めのための光照射を受けずに済む。そのため、後に本照射するとき当該部分の光照射履歴を均一にすることができ、固着剤の歪みに追随した基板の歪みが抑制できるという利点がある。
【0071】
本発明に係る透光性硬質基板貼り合わせ装置の更に別の一実施形態においては、上側ステージ及び/又は下側ステージに保持される透光性硬質基板は2枚以上の透光性硬質基板の積層体である。
【0072】
本発明で貼り合わせる上側及び/又は下側の透光性硬質基板を2枚以上の透光性硬質基板からなる積層体とすることで、3枚以上の基板積層体を製造することができる。
【0073】
本発明に係る透光性硬質基板貼り合わせ装置の更に別の一実施形態においては、固着剤を塗布するための手段は、粒状物質を含有する固着剤を塗布する。
【0074】
固着剤が粒状物質を含有することで、固着剤の厚みを一定にすることができるため、加工精度が向上する。また、固着剤成分と粒状物質の線膨張係数の違いにより、後に剥離するときの剥離性も向上する。
【0075】
本発明に係る透光性硬質基板貼り合わせ装置の更に別の一実施形態においては、透光性硬質基板が板ガラスである。
【0076】
本発明に係る透光性硬質基板貼り合わせ装置の更に別の一実施形態においては、(A)多官能(メタ)アクリレートが、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマー及び/又は2官能(メタ)アクリレートモノマーを含有する。
【0077】
本発明に係る透光性硬質基板貼り合わせ装置の更に別の一実施形態においては、(B)単官能(メタ)アクリレートが、フェノールエチレンオキサイド2モル変性(メタ)アクリレート、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種以上を含有する。
【0078】
本発明に係る透光性硬質基板貼り合わせ装置の更に別の一実施形態においては、(B)単官能(メタ)アクリレートが、フェノールエチレンオキサイド2モル変性(メタ)アクリレート及び2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレートを含有する。
【0079】
本発明に係る透光性硬質基板貼り合わせ装置の更に別の一実施形態においては、(B)単官能(メタ)アクリレートが、フェノールエチレンオキサイド2モル変性(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートを含有する。
【0080】
本発明に係る透光性硬質基板貼り合わせ装置の更に別の一実施形態においては、前記固着剤は二剤型の組成物であり、第一剤に少なくとも(F)有機過酸化物を含有し、第二剤に少なくとも(G)分解促進剤を含有する。
【発明の効果】
【0081】
本発明によれば、高い位置精度で透光性硬質基板積層体を製造することができる。これにより、高い寸法精度で板状製品を工業的に製造することができるようになる。本発明は例えば表示素子の保護ガラスを量産する方法に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0083】
<第一の実施形態>
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の第一実施形態においては、
1)第一の透光性硬質基板を準備する工程と、
2)第二の透光性硬質基板を準備する工程と、
3)第一の透光性硬質基板の第一の面及び/又は第二の透光性硬質基板の第一の面に、(A)多官能(メタ)アクリレート、(B)単官能(メタ)アクリレート、及び(C)光重合開始剤を含有する光硬化性の固着剤を塗布する工程と、
4)第一の透光性硬質基板の第一の面と第二の透光性硬質基板の第一の面とを予め定めた面方向の位置関係で両面が平行となるように対向させる工程と、
5)前記位置関係を維持しながら、第一の透光性硬質基板の第一の面と第二の透光性硬質基板の第一の面に所定の圧力を印加して、両透光性硬質基板を貼り合わせる工程と、
6)両透光性硬質基板に挟まれて広がっている固着剤の外周部分のみを硬化するための光を照射して、仮留め透光性硬質基板積層体を形成する工程と、
7)前記仮留め透光性硬質基板積層体内部に存在する未硬化の固着剤を硬化させ、本留め透光性硬質基板積層体を形成する本留め工程と、
8)前記本留め透光性硬質基板積層体を第一の透光性硬質基板に見立てて、工程1)〜7)を少なくとも1回繰り返し、少なくとも3枚の透光性硬質基板が貼り合わせられた本留め透光性硬質基板積層体を形成する工程と、
が実行される。
【0084】
工程(1)及び工程(2)では、加工対象となる透光性硬質基板を準備する。透光性硬質基板としては、特に制限はないが、板ガラス(素材板ガラス、透明導電膜付きガラス基板、電極や回路が形成されたガラス基板等)、サファイア基板、石英基板、プラスチック基板、フッ化マグネシウム基板などが挙げられる。ガラスとして、強化ガラスも挙げられる。透光性硬質基板の大きさに特に制限はないが、典型的には10000〜250000mm
2程度の面積を有し、0.1〜2mm程度の厚みを有する。各透光性硬質基板は同じサイズであるのが一般的である。限定的ではないが、各透光性硬質基板の表面には板状製品の機能の一つを奏するための所定の印刷パターンやめっきパターンを付すことができる。印刷パターンの例としては携帯電話の表示画面のデザイン、めっきパターンの例としてはクロムめっきパターンが施されているロータリーエンコーダーが挙げられる。
【0085】
工程(3)では、第一の透光性硬質基板の第一の面及び/又は第二の透光性硬質基板の第一の面に光硬化性の固着剤を塗布する。光硬化性の固着剤は紫外線等の光を照射することで硬化し、高温に加熱すると軟化する固着剤であり、各種の固着剤が知られている。本発明に使用する光硬化性の固着剤としては、公知の任意のものが使用でき特に制限はない。光硬化性の固着剤はいずれか一方の透光性硬質基板の貼り合わせ面に塗布すればよいが、接着性を向上する観点からは両方の透光性硬質基板の貼り合わせ面に塗布することが好ましい。
【0086】
本発明に好適に使用される光硬化性の固着剤としては、(A)多官能(メタ)アクリレート、(B)単官能(メタ)アクリレート、及び(C)光重合開始剤を含有する接着性組成物が挙げられる。
【0087】
(A)多官能(メタ)アクリレートとしては、オリゴマー/ポリマー末端又は側鎖に2個以上(メタ)アクロイル化された多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーや、2個以上の(メタ)アクロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーを使用することができる。例えば、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーとしては、1,2-ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本曹達社製「TE−2000」、「TEA−1000」)、その水素添加物(例えば、日本曹達社製「TEAI−1000」)、1,4−ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、大阪有機化学社製「BAC−45」)、ポリイソプレン末端(メタ)アクリレート、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本合成化学社製「UV−2000B」、「UV−3000B」、「UV−7000B」、根上工業社製「KHP−11」、「KHP−17」)、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本合成化学社製「UV−3700B」、「UV−6100B」)、又はビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、などが挙げられる。
【0088】
これらの中では、効果が大きい点で、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリート及び/又はポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリートがより好ましい。
【0089】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーの重量平均分子量は、7000〜60000が好ましく、13000〜40000がより好ましい。重量平均分子量は、GPCシステム(東ソ−社製 SC−8010)等を使用し、市販の標準ポリスチレンで検量線を作成して求めた。
【0090】
2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリストールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、又は2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。これらの中では、効果が大きい点で、1,6−ヘキサジオールジ(メタ)アクリレート及び/又はジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレートが好ましく、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0091】
3官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイキシエチル]イソシアヌレート等が挙げられる。
【0092】
4官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとしては、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、又はジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0093】
多官能(メタ)アクリレートの中では、効果が大きい点で、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマー及び/又は2官能(メタ)アクリレートモノマーを含有することが好ましく、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーと2官能(メタ)アクリレートモノマーを併用することがより好ましい。
【0094】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーと2官能(メタ)アクリレートモノマーを併用する場合の含有割合は、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーと2官能(メタ)アクリレートモノマーの合計100質量部中、質量比で、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマー:2官能(メタ)アクリレートモノマー=10〜90:90〜10が好ましく、25〜75:75〜25がより好ましく、40〜65:60〜35が最も好ましい。
【0095】
(B)単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エトキシカルボニルメチル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、フェノール(エチレンオキサイド2モル変性)(メタ)アクリレート、フェノール(エチレンオキサイド4モル変性)(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキサイド4モル変性)(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキサイド8モル変性)(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(プロピレンオキサイド2.5モル変性)(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性フタル酸(メタ)アクリレ−ト、エチレンオキシド変性コハク酸(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、β−(メタ)アクロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、n−(メタ)アクリロイルオキシアルキルヘキサヒドロフタルイミド、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0096】
単官能(メタ)アクリレートの中では、効果が大きい点で、フェノールエチレンオキサイド2モル変性(メタ)アクリレート、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種以上が好ましい。フェノールエチレンオキサイド2モル変性(メタ)アクリレートと、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート及び/又は2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートとを併用することがより好ましい。
【0097】
フェノールエチレンオキサイド2モル変性(メタ)アクリレートと、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート及び/又は2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートとを併用する場合の含有割合は、フェノールエチレンオキサイド2モル変性(メタ)アクリレート、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートの合計100質量部中、質量比で、フェノールエチレンオキサイド2モル変性(メタ)アクリレート:2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート及び/又は2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート=5〜80:95〜20が好ましく、15〜60:85〜40がより好ましく、20〜40:70〜60が最も好ましい。
【0098】
(A)多官能(メタ)アクリレートと(B)単官能(メタ)アクリレートの配合比としては、(A):(B)=5:95〜95:5(質量部)であることが好ましい。5質量部以上であれば初期の接着性が低下する恐れもなく、95質量部以下であれば、剥離性が確保できる。硬化した固着剤は温水に浸漬することでフィルム状に剥離する。(B)単官能(メタ)アクリレートの含有量は、(A)及び(B)の合計量100質量部中、40〜80質量部がさらに好ましい。
【0099】
(C)光重合開始剤は、可視光線や紫外線の活性光線により増感させて樹脂組成物の光硬化を促進するために配合するものであり、公知の各種光重合開始剤が使用可能である。具体的にはベンゾフェノン又はその誘導体;ベンジル又はその誘導体;アントラキノン又はその誘導体;ベンゾイン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン誘導体;ジエトキシアセトフェノン、4−t−ブチルトリクロロアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体;2−ジメチルアミノエチルベンゾエート;p−ジメチルアミノエチルベンゾエート;ジフェニルジスルフィド;チオキサントン又はその誘導体;カンファーキノン;7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボン酸、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボキシ−2−ブロモエチルエステル、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボキシ−2−メチルエステル、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボン酸クロライド等のカンファーキノン誘導体;2−メチル−1−[4-(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のα−アミノアルキルフェノン誘導体;ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジエトキシフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド誘導体、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル及び/又はオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル等が挙げられる。光重合開始剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、効果が大きい点で、1ベンジルジメチルケタール、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル及びオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステルからなる群のうちの1種又は2種以上が好ましい。
【0100】
(C)光重合開始剤の含有量は、(A)及び(B)の合計100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.1〜25質量部がより好ましく、0.5〜10質量部が最も好ましい。0.1質量部以上であれば、硬化促進の効果が確実に得られるし、20質量部以下で充分な硬化速度を得ることができる。(C)成分を1質量部以上添加することは、光照射量に依存なく硬化可能となり、さらに組成物の硬化体の架橋度が高くなり、切削加工時に位置ずれ等を起こさなくなる点や剥離性が向上する点で、さらに好ましい。
【0101】
光硬化性固着剤は、固着剤の成分(A)、(B)及び(C)に溶解しない粒状物質(D)を含有するのが好ましい。これにより、硬化後の組成物が一定の厚みを保持できるため、加工精度が向上する。さらに、接着性組成物の硬化体と粒状物質(D)の線膨張係数が異なることから、前記接着剤組成物を用いて透光性硬質基板を貼り合わせた後に剥離する際の剥離性が向上する。
【0102】
粒状物質(D)の材質としては、一般的に使用される有機粒子、又は無機粒子いずれでもかまわない。具体的には、有機粒子としては、ポリエチレン粒子、ポリプロピレン粒子、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子などが挙げられる。無機粒子としてはガラス、シリカ、アルミナ、チタンなどセラミック粒子が挙げられる。
【0103】
粒状物質(D)は、加工精度の向上、つまり接着剤の膜厚の制御の観点から球状であることが好ましい。粒状物質(D)のレーザー法による平均粒径は20〜200μmの範囲にあることが好ましい。前記粒状物質の平均粒径が20μm未満であると剥離性に劣り、200μm以上であると仮固定した部材の加工時にずれを生じ易く、寸法精度面で劣る。剥離性と寸法精度の観点からより好ましい平均粒径(D50)は35μm〜150μmであり、更に好ましくは50μm〜120μmである。粒径分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定される。
【0104】
粒状物質(D)の使用量は、接着性、加工精度、剥離性の観点から、(A)及び(B)の合計量100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましく、0.05〜10質量部がより好ましく、0.1〜6質量部が最も好ましく、0.2〜2質量部が更に好ましい。
【0105】
光硬化性固着剤には、貯蔵安定性向上のため重合禁止剤(E)を添加することができる。重合禁止剤としては、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ジターシャリーブチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジターシャリーブチル−p−ベンゾキノン、ピクリン酸、クエン酸、フェノチアジン、ターシャリーブチルカテコール、2−ブチル−4−ヒドロキシアニソール及び2,6−ジターシャリーブチル−p−クレゾール等が挙げられる。
【0106】
重合禁止剤(E)の使用量は、(A)及び(B)の合計量100質量部に対して、0.001〜3質量部が好ましく、0.01〜2質量部がより好ましい。0.001質量部以上であれば、貯蔵安定性が確保されるし、3質量部以下であれば、良好な接着性が得られ、未硬化になることもない。
【0107】
光硬化性固着剤は(F)有機過酸化物と(G)分解促進剤を含有しても良い。これにより透光性硬質基板に光が透過しない印刷パターンが意匠性の点から施されていたとしても硬化性が確実に得られる。
【0108】
印刷パターン、特に黒色の印刷パターンが施されている場合、透光性硬質基板の表面に光照射してもその裏側にある固着剤へ光が到達しにくい。そのため、印刷パターンの裏側に存在する光硬化性固着剤は硬化しにくい。
図19に、印刷パターンの例を示す。このような場合、透光性硬質基板積層体に対して後述する工程(9)や工程(10)を実施して印刷パターンを切断すると、高い寸法精度が得られなかったり、チッピングが発生しやすかったりするという問題が生じる。また、未硬化の接着剤組成物が残留することで、アルカリ溶液等の洗浄剤を用いた長い洗浄処理工程が必要となる。しかしながら、(F)有機過酸化物と(G)分解促進剤を含有する固着剤を使用すれば、光を照射しなくても静置するだけで硬化が進展するので、印刷パターンの裏側に存在する固着剤が硬化可能となる。
【0109】
そのため、本留め工程が静置工程である場合、(F)有機過酸化物と(G)分解促進剤を含有することにより、光を照射することなく硬化可能となるので、未硬化の固着剤が印刷パターンの裏側に残留し、加工性が悪化するという問題がなくなる。なお、静置工程によって本留め工程を実施する場合は、十分に硬化するまでに1時間以上必要であり、好ましくは4時間以上必要であるが、当該工程を夜間に実施することで翌朝には次工程を実施することができる。そのため、硬化時間が長い点は実質的なデメリットにはならない。また、静置工程は10〜35℃程度、好ましくは15〜30℃の温度環境下で実施すればよく、加熱は不要である。加熱すると硬化速度は上昇するが、いったん硬化した固着剤が加熱時間に応じて軟化する可能性があるので、逆に時間管理が難しくなる。
【0110】
このように、(F)有機過酸化物と(G)分解促進剤を含有する光硬化性固着剤を使用し、工程6)は光照射によって固着剤の外周部のみを硬化させ、工程7)は静置により固着剤全体を硬化させるという組み合わせを採用することで、印刷パターンが透光性硬質基板に付されている場合においても、チッピングを防止しながら高い位置精度が得られる。
【0111】
(F)有機過酸化物としては、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、クミルパーオキシネオデカノエイト、ヘキシルパーオキシビバレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシビバレート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ターシャリーブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート等のアルキルパーオキシエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−ターシャリーブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート及びジアリルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシカーボネート類、ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類、ジキュミルパーオキサイド、t−ブチルキュミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、クメンハイドロパーオキサイド、テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類等が挙げられる。これらの中では、アルキルパーオキシエステル類及び/又はハイドロパーオキサイド類が好ましく、ハイドロパーオキサイド類がより好ましく、クメンハイドロパーオキサイドが最も好ましい。
【0112】
(F)有機過酸化物の使用量は、(A)及び(B)の合計量100質量部に対して、0.05〜5質量部が好ましく、1〜3質量部がより好ましい。1質量部以上であれば、硬化性が確実に得られるし、3質量部以下であれば十分な貯蔵安定性が得られ、皮膚刺激性が低くなる。
【0113】
(G)分解促進剤としては、有機過酸化物の分解を促進する分解促進剤が好ましい。(G)有機過酸化物の分解を促進する分解促進剤としては、以下が挙げられる。
有機過酸化物としてハイドロパーオキサイド類やケトンパーオキサイド類のものを使用する場合、分解促進剤としては、有機酸金属塩や有機金属キレート等が挙げられる。有機酸金属塩や有機金属キレートとしては、例えば、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸マンガン、オクテン酸コバルト、オクテン酸銅、オクテン酸マンガン、オクチル酸コバルト、銅アセチルアセトネート、チタンアセチルアセトネート、マンガンアセチルアセトネート、クロムアセチルアセトネート、鉄アセチルアセトネート、バナジルアセチルアセトネート及びコバルトアセチルアセトネート等が挙げられる。これらの中では、オクチル酸コバルト及び/又はバナジルアセチルアセトネートが好ましく、オクチル酸コバルトが最も好ましい。その他の分解促進剤としては、チオ尿素誘導体類、メルカプトベンゾイミダゾール、アミン類等が挙げられる。これらの(G)分解促進剤は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0114】
(G)分解促進剤の使用量は、(A)及び(B)の合計100質量部に対して、0.05〜5質量部が好ましく、0.3〜3質量部がより好ましい。0.3質量部以上であれば、硬化性が確実に得られるし、3質量部以下であれば十分な貯蔵安定性が得られる。
【0115】
(F)有機過酸化物と(G)分解促進剤を含有する固着剤は典型的には、二剤型の組成物として提供される。二剤型については、固着剤の必須成分全てを貯蔵中は混合せず、固着剤を第一剤及び第二剤に分けて貯蔵することが好ましい。この場合、両剤を同時に又は別々に部材に塗布して接触、硬化することにより、二剤型の固着剤として使用できる。二剤型の固着剤として使用する場合、第一剤が少なくとも(F)有機過酸化物を含有し、第二剤が少なくとも(G)分解促進剤を含有することが好ましい。(C)光重合開始剤は、第一剤及び第二剤のいずれか一方又は両方に含有して良い。本発明は、二剤の混合のみによっても組成物を硬化させることができる。
【0116】
光硬化性固着剤は、有機系熱膨張性粒子を含有してもよい。これにより、剥離性の向上といった効果が確実に得られる。
【0117】
工程(4)では、第一の透光性硬質基板の第一の面と第二の透光性硬質基板の第一の面とを予め定めた面方向の位置関係で両面が平行となるように対向させる。一般には、面方向に両透光性硬質基板がぴったりと重なるように対向させる。これを実施する手段としては、透光性硬質基板の移動方向を拘束して一定の位置に移動させるためのガイドレールや枠を利用することが考えられる。より精度の高い位置決めが要求される場合には、位置決め機構を有する貼り合わせ装置により行うことが好ましい。高精度の位置決めのためには、各透光性硬質基板の表面に位置合わせのための目印を付し、これを撮像装置で撮像しながら位置調整を行うことのできる貼り合わせ装置を使用することがより好ましい。両透光性硬質基板を貼り合わせた後に位置ずれの修正を行うと、固着剤が貼り合わせ面から漏れ出したり、基板表面にキズがついたりするおそれがあることから、位置ずれの修正は貼り合わせの前に実行することが望ましい。
【0118】
工程(5)では、工程(4)で定めた位置関係を維持しながら、第一の透光性硬質基板の第一の面と第二の透光性硬質基板の第一の面に所定の圧力を印加して、貼り合わせ面に固着剤が広がるように貼り合わせる。積層精度の観点から、固着剤は貼り合わせ面に一定の厚みで全体に広がっていることが好ましい。工程(5)は後述するような透光性硬質基板貼り合わせ装置を使用して行うこともできるが、ロールプレスにより行うこともできる。
図18にはロールプレスの原理を示す模式図を示してある。
【0119】
塗布された固着剤の量が少なすぎると貼り合わせ面の全体に固着剤が広がらず、貼り合わせ面に気泡が発生する原因となる。気泡が発生すると位置精度が低下してしまう。塗布された固着剤の量が多すぎると固着剤が貼り合わせ面の隙間から漏出する。固着剤が多少漏出しても拭き取ればよく、大きな問題ではないが、その量が多いと固着剤が無駄になる。
【0120】
貼り合わせる際の圧力も固着剤の広がりに関係する。そのため、固着剤の量に加えて貼り合わせ圧力を適切に調整することが望まれる。これを実現する手段として、透光性硬質基板同士を貼り合わせるときの圧力を制御する機能が付いた貼り合わせ装置を使用する方法が考えられる。貼り合わせるときの圧力は、上記を考慮しながら適宜設定すればよいが、例えば5g/cm
2〜50g/cm
2、典型的には10g/cm
2〜30g/cm
2とすることができる。
【0121】
更に、固着剤の厚み自体を制御することも考えられる。厚みの制御方法としては、先述したように固着剤に粒状物質を混ぜる方法が挙げられるほか、透光性硬質基板同士を貼り合わせるときの透光性硬質基板の高さを制御する機能が付いた貼り合わせ装置を使用する方法が考えられる。
【0122】
工程(6)では、両透光性硬質基板に挟まれて広がっている固着剤の外周部分のみを硬化するための光を照射して、仮留め透光性硬質基板積層体を形成する。工程(6)は、基板を加圧しながら(例えば、工程(5)における圧力を維持したまま)実施してもよく、基板無加圧で実施してもよい。
光を固着剤の外周部分全体に向けて照射することで固着剤は外周部分のみが環状に硬化し、両透光性硬質基板を比較的弱い力で貼り合わせることができ、透光性硬質基板を積層していく際の位置ずれの防止機能を果たすことができる。
【0123】
貼り合わせた透光性硬質基板が容易に位置ずれを起こさないという目的に照らせば、外周部分はある程度幅をもった領域とすべきであるが、過度に内部にまで照射すると位置ずれを起こさない程度の仮留めという目的が減殺されるとともに、照射時間も長くなるので生産効率が低下する。典型的には、LEDユニット16によって照射する外周部分は5〜25mm、より典型的には7〜17mm程度の幅である。また、光を照射する外周部分は、板状製品の一部を形成しないマージン領域に存在することが好ましい。後に本照射するときに板状製品を形成する部分の光照射履歴を均一にすることができ、固着剤の歪みが抑制される。この結果、当該部分の基板が歪むのも抑制できる。
【0124】
内部の固着剤は硬化されずに流動性を保持しているが、外周部の固着剤が硬化しているので両透光性硬質基板の隙間から漏れ出すことはない。照射する光の波長は使用する固着剤の特性に応じて適宜変更すればよいが、例えばマイクロ波、赤外線、可視光、紫外線、X線、γ線、電子線等を照射することができる。簡便に使用でき、比較的高エネルギーをもつことから一般的には照射光は紫外線である。このように、本発明において、光とは可視光のみならず、幅広い波長領域を包含する電磁波(エネルギー線)を指す。
【0125】
照射する光は透光性硬質基板を仮留めするのに必要な程度の照射量でよく、365nmの受光器を使用した積算照度計で測定して、一般に1〜500mJ/cm
2、典型的には50〜450mJ/cm
2、より典型的には200〜400mJ/cm
2とすることができる。照射時間としては一般に1〜120秒、典型的には2〜60秒程度であり、好ましくは15秒〜45秒程度である。光の照射を貼り合わせの圧力を維持したまま実行することで、硬化歪みを抑えて固着剤の厚みを制御し、透光性硬質基板の積層精度を高めることができる。
【0126】
前述したように、工程(6)において、両透光性硬質基板に挟まれて広がっている固着剤の外周部分に照射する光は、外周部分全体にわたって照射しなくても、2〜6箇所だけをスポット照射するだけでも、十分に高い位置精度が得られる。スポット照射する箇所はタクトタイムの短縮の観点から少なく、位置精度の観点からは多くすべきであるが、両者のバランスを考慮すると、透光性硬質基板の各角部に1箇所スポット照射するとして2箇所以上とするのが好ましく、四隅とするのがより好ましい。スポット照射するときの照射量は、365nmの受光器を使用した積算照度計で測定して、一般に1〜5000mJ/cm
2、典型的には10〜2000mJ/cm
2、より典型的には50〜1000mJ/cm
2とすることができる。
【0127】
本留め工程(7)では、仮留め透光性硬質基板積層体内部に存在する未硬化の固着剤を硬化させる。本留め工程(7)としては、仮留め透光性硬質基板積層体内部に存在する未硬化の固着剤を硬化させるための光を照射し、本留め透光性硬質基板積層体を形成する照射工程が挙げられる。本留め透光性硬質基板積層体を形成する前の仮留め透光性硬質基板積層体を製造した時点で積層精度を検査できるので、不具合発生時の補修が容易になるという利点がある。仮留め透光性硬質基板積層体内部に存在する未硬化の固着剤を硬化させるために、仮留め透光性硬質基板の貼り合わせ面全体に光を照射すればよい。外周部分の固着剤は既に硬化しているため、必ずしも外周部分に光を照射する必要はない。むしろ、固着剤の硬化状態を均一化するためには、貼り合わせ面の間に挟まれて存在する固着剤全体の照射履歴を均一化することが好ましい。
【0128】
このためには、仮留め時に光を照射されていない内部領域に選択的に光を照射する方法がある。光の照射時に透光性硬質基板の外周部分を、紫外線が透過しない材料でマスキングすることも考えられる。また、貼り合わせの位置精度を高めるために、貼り合わせられた透光性硬質基板面に所定の圧力を印加しながら行うのが好ましい。圧力を印可することで、固着剤の硬化収縮により基板のZ軸方向に反りが発生し、パターンがずれたり、真空吸着できなかったりするといった問題を防ぐことが可能となる。印加する圧力は透光性硬質基板の強度を考慮しながら適宜設定すればよいが、例えば5g/cm
2〜50g/cm
2、典型的には10g/cm
2〜30g/cm
2とすることができる。
【0129】
本留め工程(7)で照射する光の照射量は、365nmの受光器を使用した積算照度計で測定して、一般に30〜4000mJ/cm
2、典型的には100〜3000mJ/cm
2であり、より典型的には300〜2500mJ/cm
2、好ましくは1000〜2000mJ/cm
2である。照射時間としては一般に0.1〜120秒、典型的には1〜30秒、より典型的には10〜20秒程度である。
【0130】
本留め工程(7)としては、仮留め透光性硬質基板積層体内部に存在する未硬化の固着剤を硬化させるために、光照射することなく静置し、本留め透光性硬質基板積層体を形成する静置工程も挙げられる。これにより、上述した、未硬化の固着剤が印刷パターンの裏側に残留し、加工性が悪化するという問題が解消する。静置工程を実施する場合は、硬化がゆっくりと進展するため硬化収縮が生じにくいので、基板を加圧しながら実施する必要はない。本静置工程の静置温度は10℃〜35℃が好ましく、15℃〜30℃がより好ましく20℃〜28℃が尚更一層好ましい。また、本静置工程の静置時間は静置温度にも因るが1時間以上が好ましく、1時間〜24時間がより好ましく、2時間〜16時間が更により好ましく、4時間〜12時間が尚更一層好ましい。
【0131】
工程(7)の前に、未硬化の固着剤に紛れて存在する気泡を、形状加工を受けない位置に移動させておくことが好ましい。これは以下の理由による。仮留め時には固着剤層に気泡が入り込むことがある。気泡が存在する状態で本照射を行った場合、固着剤の硬化により、気泡はその位置に固定化される。この気泡が、切断加工や外形加工や孔開け加工といった形状加工を受ける位置、換言すれば直接加工ツール(ブレードや砥石)が触れる場所に該当すると、チッピングが発生してしまう。そこで、本照射前に予め気泡を、形状加工を受けない位置に移動させておくことで、チッピングの発生を予防できる。移動させる手段としては、手や棒で基板を押圧して気泡を移動させる方法がある。
【0132】
工程(8)では、工程(7)で得られた本留め透光性硬質基板積層体を第一の透光性硬質基板に見立てて、工程(1)〜(7)を少なくとも1回繰り返す。これにより、少なくとも3枚の透光性硬質基板が貼り合わせられた本留め透光性硬質基板積層体が得られる。板状製品の生産効率向上の観点からは、10枚以上の透光性硬質基板、典型的には10〜30枚の透光性硬質基板が積層された透光性硬質基板積層体を製造することが望ましい。
【0133】
<第二の実施形態>
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の第二実施形態においては、
1)第一の透光性硬質基板を準備する工程と、
2)第二の透光性硬質基板を準備する工程と、
3)第一の透光性硬質基板の第一の面及び/又は第二の透光性硬質基板の第一の面に、(A)多官能(メタ)アクリレート、(B)単官能(メタ)アクリレート、及び(C)光重合開始剤を含有する光硬化性の固着剤を塗布する工程と、
4)第一の透光性硬質基板の第一の面と第二の透光性硬質基板の第一の面とを予め定めた面方向の位置関係で両面が平行となるように対向させる工程と、
5)前記位置関係を維持しながら、第一の透光性硬質基板の第一の面と第二の透光性硬質基板の第一の面に所定の圧力を印加して、両透光性硬質基板を貼り合わせる工程と、
6)両透光性硬質基板に挟まれて広がっている固着剤の外周部分のみを硬化するための光を照射して、仮留め透光性硬質基板積層体を形成する工程と、
7’)前記仮留め透光性硬質基板積層体を第一の透光性硬質基板に見立てて、工程1)〜6)を少なくとも1回繰り返し、少なくとも3枚の透光性硬質基板が貼り合わせられた仮留め透光性硬質基板積層体を形成する工程と、
8’)工程7’)で得られた仮留め透光性硬質基板積層体内部に存在する未硬化の固着剤を硬化させ、本留め透光性硬質基板積層体を形成する本留め工程と、
が実行される。
【0134】
工程(1)〜(6)までは第一実施形態と同様の手順で行われる。
【0135】
工程(6)の後、本実施形態では、前記仮留め透光性硬質基板積層体を第一の透光性硬質基板に見立てて、工程(1)〜(6)を少なくとも1回繰り返し、少なくとも3枚の透光性硬質基板が貼り合わせられた仮留め透光性硬質基板積層体を形成する工程(7’)を実施する。第一実施形態では、2枚の透光性硬質基板が積層された仮留め透光性硬質基板積層体とした後にすぐ本照射して本留め透光性硬質基板積層体としていた。すなわち仮照射が終わるたびに本照射を行っていた。第二実施形態では仮留め透光性硬質基板積層体とした後にすぐに本照射せず、工程(1)〜(6)を繰り返すことで、多数の透光性硬質基板からなる仮留め積層体を作製する。
【0136】
その後、工程(8’)では、得られた仮留め透光性硬質基板積層体内部に存在する未硬化の固着剤を硬化させ、本留め透光性硬質基板積層体を形成する。
本留め工程(8’)としては、得られた仮留め透光性硬質基板積層体内部に存在する未硬化の固着剤を硬化させるための光を照射し、本留め透光性硬質基板積層体を形成する本照射工程(8’)が挙げられる。多数の透光性硬質基板からなる仮留め積層体に対して本照射を一回行うため、多数の透光性硬質基板からなる本留め透光性硬質基板積層体を製造するのに必要な本照射の回数を減らすことができ、生産効率が向上する。ただし、あまり多くの透光性硬質基板から構成される仮留め積層体とすると、本照射時に内部の固着剤にまで紫外線が届かず、固着剤の硬化が不十分となりやすいので、仮留め積層体は多くても5枚の透光性硬質基板で構成することが好ましい。工程(8’)も、貼り合わせの位置精度を高めるために、工程(7)と同様に、貼り合わせられた透光性硬質基板面に所定の圧力を印加しながら行うのが好ましい。また、工程(7)のところで述べたのと同様の理由から、工程(8’)の前に、未硬化の固着剤に紛れて存在する気泡を、形状加工を受けない位置に移動させておくことが好ましい。
【0137】
本留め工程(8’)としては、本留め工程(7)と同様に、得られた仮留め透光性硬質基板積層体内部に存在する未硬化の固着剤を光照射することなく静置し、本留め透光性硬質基板積層体を形成する静置工程も挙げられる。
【0138】
<第三の実施形態>
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の第三の実施形態においては、工程(1)〜(8’)までは第二実施形態と同様の手順で行われ、その後に、
8’’)工程8’)で得られた本留め透光性硬質基板積層体を第一の透光性硬質基板に見立てて、工程(1)〜(6)を少なくとも1回繰り返し、複合透光性硬質基板積層体を形成する工程と、
8’’’)工程8’’)で得られた複合透光性硬質基板積層体内部に存在する未硬化の固着剤を硬化させ、積層枚数が増加された本留め透光性硬質基板積層体を形成する本留め工程と、
を更に含む。
【0139】
8’’’) 本留め工程としては、工程(8’’)で得られた複合透光性硬質基板積層体内部に存在する未硬化の固着剤を硬化させるための光を照射し、積層枚数が増加された本留め透光性硬質基板積層体を形成する照射工程が挙げられる。
【0140】
本実施形態では、本留め透光性硬質基板積層体に対して更に透光性硬質基板を積層していくことで、積層枚数が増加した本留め透光性硬質基板積層体を製造する。前述したように、仮留め積層体を構成する透光性硬質基板の枚数には限界があるので、ある程度の枚数に達した仮留め積層体は本留めを行って本留め透光性硬質基板積層体とする必要がある。
しかしながら、本留め透光性硬質基板積層体に対して透光性硬質基板の貼り合わせ及び仮照射を繰り返し、ある程度の枚数に達した時点で本留めするという手順で透光性硬質基板を積層していくことで、本照射の回数は減らしながら多数の透光性硬質基板で構成される本留め透光性硬質基板積層体を製造することができる。工程(8’’’)も、貼り合わせの位置精度を高めるために、工程(7)と同様に、貼り合わせられた透光性硬質基板面に所定の圧力を印加しながら行うのが好ましい。また、工程(7)のところで述べたのと同様の理由から、工程(8’’’)の前に、未硬化の固着剤に紛れて存在する気泡を、形状加工を受けない位置に移動させておくことが好ましい。
【0141】
8’’’)本留め工程としては、本留め工程(7)と同様に、工程(8’’)で得られた複合透光性硬質基板積層体内部に存在する未硬化の固着剤を静置し、積層枚数が増加された本留め透光性硬質基板積層体を形成する静置工程も挙げられる。
【0142】
本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法においては、複数の工程を並行して実施してもよい。本発明に係る透光性硬質基板積層体の製造方法の一実施形態においては、同時に透光性硬質基板積層体の作製作業を行い、一つの工程を終えた後に続いて、次の工程に製造中の透光性硬質基板を移行し一つの工程を連続して続けることにより、複数の透光性硬質基板積層体を同時に並行して製造可能になり、かつ、効率的に製造可能になる。例えば4つの透光性硬質基板積層体を同時に並行して製造するには、工程(1)〜(3)、工程(4)、工程(5)〜(6)、工程(8’)もしくは工程(8’’’)工程のそれぞれの工程で1つずつ透光性硬質基板の作製を同時に並行して行い、それぞれの工程が終わった後、続いて次の工程に移行し、一つの工程としては連続的に続けることで効率的に透光性硬質基板を作製可能となる。
【0143】
<板状製品の製造>
上記の透光性硬質基板積層体の製造方法によって得られた透光性硬質基板積層体から板状製品を製造することができる。
【0144】
まず、工程(9)において、透光性硬質基板積層体を厚み方向に分割し、所望の数の分割された透光性硬質基板積層体を形成する。分割方法は特に制限はないが、円板カッター(ダイヤモンドディスク、超硬合金ディスク)、固定砥粒式又は遊離砥粒式ワイヤソー、レーザービーム、エッチング(例:フッ酸や硫酸等を用いた化学エッチングや電解エッチング)、及び赤熱帯(ニクロム線)をそれぞれ単独で又は組み合わせて使用して、同サイズの直方体形状に分割する方法が挙げられる。エッチングは分割後の切断面の表面処理に用いることもできる。
【0145】
次に、工程(10)において、分割された透光性硬質基板積層体それぞれに対して所望の形状加工を行う。この工程では、分割された透光性硬質基板積層体毎に目的とする透光性硬質基板製品の形状に一体的に加工を行うことができるため、透光性硬質基板製品の生産速度を格段に高められるという利点がある。形状加工は公知の任意の手段によって行えばよいが、例えば回転砥石による研削、超音波振動ドリルによる孔開け、回転ブラシによる端面加工、エッチングによる孔開け、エッチングによる端面加工、エッチングによる外形加工、バーナーを用いた火炎加工等が挙げられる。加工方法はそれぞれ単独で又は組み合わせて使用することができる。エッチングは形状加工後の表面処理に用いることもできる。
【0146】
透光性硬質基板の表面に印刷パターンが形成されており、当該印刷パターンを切断するような分割加工や形状加工が行われる場合であっても、上述した静置工程によって本留め工程を実施することで、チッピングを防止しながら高い位置精度で加工可能となる。
【0147】
工程(11)では、形状加工後の透光性硬質基板積層体を加熱することで貼り合わせられていた透光性硬質基板同士を剥離し、複数の透光性硬質基板製品を形成する。加熱方法としては特に制限はないが、固着剤がフィルム状に軟化して各透光性硬質基板製品に上手く分離するため、温水に形状加工後の透光性硬質基板積層体を浸漬する方法が好ましい。好適な温水の温度は採用する固着剤によって異なるが、通常は60〜95℃程度、好ましくは80〜90℃である。
【0148】
ここで、工程(9)によって分割された透光性硬質基板積層体の端面は、透光性硬質基板31と固着剤32によって平坦な面が形成されている。この端面を回転ブラシ33等で加工すると、固着剤が障害となって各透光性硬質基板の角部が面取りされず、逆に中心部が多く削られるため(
図16)、透光性硬質基板の耐衝撃強さが不十分となる。そこで、端面加工時に各透光性硬質基板が面取りされるように分割された透光性硬質基板積層体の端面に露出している固着剤外縁の接着力を弱めておくことが好ましい。
【0149】
具体的な方法としては、工程(9)と工程(10)の間に、分割された透光性硬質基板積層体を、各透光性硬質基板に挟まれた固着剤外縁の露出部分の接着力を低下させるのに必要な温度及び時間条件で、剥離剤に接触(例:浸漬、噴霧、塗布等)させる方法が挙げられる(
図17)。
【0150】
接着力を低下させる必要があるのは外縁から内側に向かって1mm以下程度のごく僅かな領域であり、貼り合わせ面全体の接着力が低下しない程度に温度及び時間を調節することが求められる。使用する剥離剤にもよるが、液温は一般的には50℃以下であり、典型的には20℃〜40℃である。接触させる時間は一般的には30分以下とするのが通常であり、典型的には1〜20分である。剥離剤の液温を高くしすぎたり接触時間を長くしすぎたりすると貼り合わせ面内部まで接着力の低下が進行しやすくなるため注意すべきである。
【0151】
剥離剤は固着剤の接着力を低下させることのできる液体であれば特に制限はなく、使用されている固着剤の特性に応じて適宜選択すればよいが、溶剤、酸化剤、及び界面活性剤から選択される一種又は二種以上を含有するのが一般的である。
【0152】
剥離剤として溶剤及び/又は界面活性剤を使用した場合は、剥離剤に接触した固着剤は膨潤することで基板との界面に歪みが生じるので、これにより接着力が低下する。好ましくは、膨潤した固着剤をカッターなどの物理的手段で切断(切り込みを入れる)し、その後乾燥する。これにより、膨潤した固着剤が収縮するので、ブラシ等による端面加工が更に容易になる。剥離剤として酸化剤を使用した場合は、固着剤を炭化して脆化させることにより接着力が低下する。従って、溶剤及び/又は界面活性剤に更に酸化剤を併用することで、接着力を相乗的に低下させることができる。
【0153】
溶剤としては無機溶剤、有機溶剤の何れでも良いが、例えば、水、フッ化水素酸、塩酸、アルコール類(例:メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、エステル類(例:酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ノルマルプロピル、乳酸エチル、フタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル)、ケトン類(例:メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトン)、塩素系溶剤(例:塩化メチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン)、フッ素系溶剤(例:ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC))、グリコールエーテル類(例:エチレングリコールモノメチルエーテル(メチセロ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチセロ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチセロ)、ブチルカルビトール(ブチカビ)、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル(ETB)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(MMB))、アミン系溶剤(例:N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N.N−ジメチルアセトアミド(DMAC))、エーテル類(例:エチルエトキシプロピオネート(EEP)、テトラヒドロフラン(THF))、ジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられる。
【0154】
溶剤の中では典型的にアルコールを使用でき、ベンジルアルコールを好ましく使用できる。
【0155】
酸化剤としては、硫酸、硝酸、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、アシルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、ヒドロパーオキサイド、オゾン水、過塩素酸、次亜塩素酸などが挙げられる。
【0156】
界面活性剤はアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤のいずれを使用することもできる。
【0157】
アニオン性界面活性剤としては、カルボン酸型(例:脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、N−アシルサルコシン塩、N−アシルグルタミン酸塩)、硫酸エステル型(例:アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルコールエトキシサルフェート、油脂硫酸エステル塩)、スルホン酸型(例:アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸、ナフタレンスルホン酸塩−ホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリン塩)、リン酸エステル型(例:アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩)等が挙げられる。
【0158】
カチオン性界面活性剤としては、アミン塩型(例:アルキルアミンアセテート)、第4級アンモニウム塩型(例:モノアルキルアンモニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、エトキシ化アンモニウム塩)が挙げられる。
【0159】
両性界面活性剤としては、ベタイン型(例:アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン)、アルキルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0160】
非イオン性界面活性剤としては、エステル型(例:グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステル)、エーテル型(例:ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル)、エーテルエステル型(例:ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテル)、アルキルアルカノールアミド型(脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸アミドアルキレンオキサイド付加物)、アルキルポリグリコシド等が挙げられる。
【0161】
界面活性剤の中ではアニオン性界面活性剤を典型的に使用でき、スルホン酸型のアニオン性界面活性剤を好ましく使用できる。
【0162】
剥離剤は、水、アルコール類、酸化剤、及び界面活性剤から選択される一種又は二種以上を含有するのが安全面や環境面の点で好ましく、水、アルコール類、及び界面活性剤の三種類を含有するのが安全面の理由によりより好ましい。この場合、剥離剤は水とアルコール類と界面活性剤を30〜50:30〜50:5〜20の質量比で含有するのが好ましく、例えば30〜40:40〜50:10〜20の質量比で含有する。剥離剤はこれらの三種類のみで構成することもできる。
【0163】
一例として、水:ベンジルアルコール:スルホン酸型のアニオン性界面活性剤=35:50:15の質量比で混合して剥離剤を調製した。また、固着剤として後述する実施例で述べる固着剤(I)を使用して板ガラス20枚からなる板ガラス積層体を本発明に係る方法を使用して製造した。この板ガラス積層体を35℃の該剥離剤に5分浸漬し、その後、端面を回転ブラシで加工した。加工後の端面を顕微鏡で観察したところ、各板ガラスの角部が円形状に面取りされていた。一方、剥離剤に浸漬せずに端面加工した場合は、各板ガラスの角部が面取りされなかった。
【0164】
同様に、板ガラス12枚からなる板ガラス積層体を本発明に係る方法を使用して製造した。この板ガラス積層体を35℃の該剥離剤に5分浸漬し、その後、端面を回転ブラシで加工した。加工後の端面を顕微鏡で観察したところ、各板ガラスの角部が円形状に面取りされていた。一方、剥離剤に浸漬せずに端面加工した場合は、各板ガラスの角部が面取りされなかった。
【0165】
<装置構成例>
本発明に係る透光性硬質基板貼り合わせ装置の例について説明する。本発明に係る透光性硬質基板貼り合わせ装置は、基板の貼り合わせ面の外周部分のみが接着剤によって接着された仮留め透光性硬質基板積層体を製造するために使用される。基板の貼り合わせ面の間に挟まれて存在する未硬化の固着剤は、その後の工程で硬化されて透光性硬質基板は完全に貼り合わせられ、基板の貼り合わせ面全体が接着剤によって接着された本留め透光性硬質基板積層体を製造することができる。
【0166】
本留め透光性硬質基板積層体は厚み方向に分割し、所望の数の分割された透光性硬質基板積層体を形成することができる。分割された透光性硬質基板積層体それぞれに対して所望の形状加工を行い、形状加工後の透光性硬質基板積層体を加熱(例:温水浸漬)することで貼り合わせられていた透光性硬質基板同士を剥離し、複数の板状製品を形成することができる。
【0167】
貼り合わせられる透光性硬質基板同士はそれぞれ1枚の透光性硬質基板であってもよく、2枚以上の透光性硬質基板からなる積層体であってもよい。透光性硬質基板の積層体は本発明に係る透光性硬質基板貼り合わせ装置によって製造された仮留めの透光性硬質基板積層体であってもよく、その後に本留めされた透光性硬質基板積層体であってもよい。典型的には、本発明係る透光性硬質基板貼り合わせ装置を使用することで、10〜30枚程度の透光性硬質基板が積層された透光性硬質基板積層体を製造することが意図される。
【0168】
図1は本発明に係る透光性硬質基板貼り合わせ装置の第一例を示す模式図である。透光性硬質基板貼り合わせ装置10は、架台11、上側ステージ12、プレスユニット13、吸引ユニット14、吸引孔15、LEDユニット16、下側ステージ17、下側ステージ移動手段18、サイドクランプ19、下側基板用塗布ユニット20、上側基板用塗布ユニット21、撮像ユニット22、及び電装ユニット23を備える。
【0169】
架台11は透光性硬質基板貼り合わせ装置10の各構成機器を搭載する土台部分であり、内部に電装ユニット23が配置されている。電装ユニット23はPLC(Programmable Logic Controller)により各構成機器のシーケンス制御を行う。
【0170】
上側ステージ12は、上側の透光性硬質基板25を真空吸着により保持する。そのため、上側ステージ12の下面には吸引孔15が複数開いており、吸引孔15は吸引ユニット14に配管で連結されている。
図2は、上側ステージ12の下面の模式図であり、吸引孔15の配列例が示されている。吸引ユニット14としては真空ポンプ、真空エジェクターなどが使用できる。
【0171】
上側ステージ12の上部には、上側の透光性硬質基板25を下側の透光性硬質基板24に対して押圧しながら貼り合わせるためのプレスユニット13が連結されている。プレスユニット13は上側ステージ12をZ方向(垂直方向)に移動させることのできる昇降シリンダー(図示せず)を有しており、サーボモータによって加圧力、移動速度、加圧時間、高さを制御することができる。
【0172】
上側ステージ12の下面には固着剤硬化のための紫外線を上側透光性硬質基板25に向けて照射するためのLEDユニット16が複数埋め込まれている。LEDユニット16は上側ステージ12に吸着された上側透光性硬質基板25の外周に沿うように配列される。
図2にLEDユニット16の配列状態の例を示す。LEDユニット16は一列のみならず二列以上に並列に配置することで、照射する外周部分の幅を大きくすることもできる。上述したように、LEDユニット16は、外周部分全体に亘って配列する必要はなく、部分的に(例えば四隅を)スポット照射することも可能である。
【0173】
透光性硬質基板へのLED照射時間の制御は電源のON/OFFで行われる。照射する光は透光性硬質基板を仮留めするのに必要な程度の照射量でよく、365nmの受光器を使用した積算照度計で測定して、365nmの受光器を使用した積算照度計で測定して、一般に1〜500mJ/cm
2、典型的には50〜450mJ/cm
2、より典型的には200〜400mJ/cm
2とすることができる。照射時間としては一般に1〜120秒、典型的には2〜60秒程度である。
【0174】
下側ステージ17は、下側の透光性硬質基板24を保持するとともに、プレス時に上側ステージ12からの圧力を受け止める。下側ステージ17は下側ステージ移動手段18によってX軸方向、Y軸方向及びθ軸方向に移動可能である。下側ステージ移動手段18は水平方向の旋回動を可能とするθテーブル、水平動を可能とするXテーブル及びYテーブルから構成される。これらのテーブルはモータで駆動する。下側ステージ17の上面には載置した透光性硬質基板を位置決めするためのX軸方向及びY軸方向に移動可能なモータ駆動のサイドクランプ19が設けられている。サイドクランプ19の代わりに、透光性硬質基板を所定位置に載置するための位置決めストッパーを下側ステージ17の上面に設けてもよい。この場合は、ストッパーによって透光性硬質基板が固定される位置に手作業で透光性硬質基板を載置することになる。また、透光性硬質基板の位置ずれを防止するため、上側ステージ12と同様に、下側の透光性硬質基板24も真空吸着により保持することができる。
【0175】
下側基板用塗布ユニット20は光硬化性固着剤のディスペンサー20aと、これに連結されたX軸、Y軸及びZ軸方向に移動可能なモータ駆動のロボット20bを備えており、下側の透光性硬質基板24の上面に任意のパターンで固着剤を塗布することができる。固着剤はシリンジ詰めされており、自動で定量排出される。塗布量はデジタル圧力計及び塗布速度で制御される。
【0176】
上側基板用塗布ユニット21は、上側の透光性硬質基板25が上側のステージ12に保持された状態で、上側の透光性硬質基板25の下面に向かって光硬化性固着剤を自動で塗布する。塗布量は圧力ゲージ及び塗布時間により制御される。上側基板用塗布ユニット21は上側及び下側ステージの脇に水平方向に回転可能な回転軸をもつモータ駆動のロボット21bが備えられており、塗布時には先端のロータリーノズル21aが上側ステージ12の中央付近の下方に配置され、ノズル21a先端から固着剤が塗布される。塗布が終了すると、透光性硬質基板の貼り合わせの邪魔にならないように上側及び下側ステージの脇に格納される。
【0177】
撮像ユニット22は、上側の透光性硬質基板25と下側の透光性硬質基板24の各表面に設けられている位置合わせ用のアライメントマークを、アームの先端部分の上下2箇所に取り付けられたデジタルカメラ22aで撮像する。電装ユニット23は、撮像された画像情報に基づいて、上側の透光性硬質基板25と下側の透光性硬質基板24の相対的な位置ずれ状態を検出する。検出結果に基づき、下側ステージ17の位置を下側ステージ移動手段18によってX軸方向、Y軸方向及びθ軸方向に微調整し、位置ずれを修正する動作を実行する。位置ずれの修正後、両透光性硬質基板の貼り合わせが行われる。カメラとしては、CCDやCMOSを撮像素子に使用したデジタルカメラの他、アナログカメラも使用できるが、高解像度の観点からデジタルカメラが好ましい。
【0178】
撮像ユニット22はX軸、Y軸方向のモータ駆動による移動手段22bを備えており、撮像時にはデジタルカメラ22aは、アライメントマークが視野に入る所定の位置に移動する。撮像が終了すると、デジタルカメラ22aは透光性硬質基板の貼り合わせの邪魔にならないように移動する。
【0179】
第一の例に係る透光性硬質基板貼り合わせ装置10を用いた透光性硬質基板の貼り合わせ手順について
図3〜13を参照しながら説明する。
【0180】
まず、一枚目の透光性硬質基板26を下側ステージ17に載置し、サイドクランプ19(図示せず)で所定位置に固定する(
図3)。透光性硬質基板26の下側ステージ17への載置は、手作業により行うことができるが、多数の透光性硬質基板26を専用のカセットに収納し、自動的に下側ステージ17に載置されるようにしても良い。載置された透光性硬質基板26は下側ステージ移動手段18(図示せず)によって上側ステージ12の真下に移動する(
図4)。次いで、上側ステージ12をプレスユニット13により降下させる。透光性硬質基板26を吸引孔15(図示せず)からの吸引力で真空吸着する(
図5)。吸着した透光性硬質基板26は保持されながら上側ステージ12と共に上昇し、二枚目の基板を待つ(
図6)。
【0181】
次に、二枚目の透光性硬質基板27を下側ステージ17に載置し、サイドクランプ19(図示せず)で所定位置に固定する(
図7)。二枚目の透光性硬質基板27の上面には下側基板用塗布ユニット20から所定のパターンで固着剤28が塗布される(
図8)。塗布完了後、下側ステージ17に載置した二枚目の透光性硬質基板27が上側ステージ12の真下に移動すると、撮像ユニット22のアーム先端に取り付けられているカメラでアライメントマークを撮像し、撮像結果に応じて下側ステージ17の位置を微調整し、両透光性硬質基板(26、27)の位置調整を行う(
図9)。
【0182】
位置調整後、上側基板用塗布ユニット21のアーム先端に取り付けられているノズル21aが、上側ステージ12に保持されている一枚目の基板26の中央付近に移動し、ノズル21aから固着剤29が一枚目の透光性硬質基板26の下面に塗布される(
図10)。
上側及び下側の透光性硬質基板(26、27)に固着剤(28、29)を塗布後、上側ステージ12をプレスユニット13により降下させて二枚の透光性硬質基板(26、27)を加圧して貼り合わせると、上側及び下側の透光性硬質基板に挟まれた固着剤(28、29)は加圧により透光性硬質基板全面に広がる。加圧状態を維持しながら、LEDユニット16から紫外線が透光性硬質基板の外周部に照射される(
図11)。これにより外周部にある固着剤31のみが硬化する。内部の固着剤30は硬化されずに流動性を保持しているが、外周部の固着剤31が硬化しているので両透光性硬質基板の隙間から漏れ出すことはない。
【0183】
紫外線の照射後は、上側の基板26に対する吸着を解除し、上側ステージ12のみが上昇する(
図12)。貼り合わせられた透光性硬質基板は下側ステージ17によって搬送され、元の位置に戻る(
図13)。以上の工程によって透光性硬質基板の貼り合わせが完了する。
【0184】
図14は、本発明に係る透光性硬質基板貼り合わせ装置の第二の実施形態を示す模式図である。本実施形態においては、LEDユニット16は下側ステージ17の上面に、下側の透光性硬質基板24の外周に沿って配列され、上方向に紫外線を照射する。
【0185】
図15は、本発明に係る透光性硬質基板貼り合わせ装置の第三の実施形態を示す模式図である。LEDユニット16は貼り合わせられる両透光性硬質基板の外周側面を取り囲むように配列され、外周側面に向かって紫外線を照射する。LEDユニット16はZ軸方向の移動手段を有しており、貼り合わせ面の高さに応じて最適な高さに移動可能である。
【実施例】
【0186】
<実施例1>
一例として、本発明に従い、
図1に記載の透光性硬質基板貼り合わせ装置を用いて、下記条件にて工程(1)〜(6)を実施し、仮留め透光性硬質基板積層体を製造したところ、積層精度を検査でき、不具合発生時の補修が容易になった。仮留め透光性硬質基板積層体を製造した後に、下記条件にて更に工程(7)〜(8)を実施し、本留め透光性硬質基板積層体を製造し、次いで、工程(9)〜(10)の加工を実施した。得られた透光性硬質基板積層体を工程(11)に従い剥離したところ、固着剤がフィルム状に軟化して各板状製品に上手く分離した。
【0187】
透光性硬質基板として下記板ガラスを使用した。板ガラスは、1枚の寸法が、横530mm×縦420mm×厚み0.7mmの、めっきパターンを付した板ガラスを使用した。
【0188】
固着剤(I):下記の(A)〜(E)の成分を混合して光硬化性の固着剤(I)を作製した。
【0189】
(A)多官能(メタ)アクリレートとして、日本合成社製「UV-3000B」(ウレタンアクリレート、以下「UV−3000B」と略す、重量平均分子量15000)15質量部、ジシクロペンタニルジアクリレート(日本化薬社製「KAYARADR−684」、以下「R−684」と略す)15質量部、
(B)単官能(メタ)アクリレートとして、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチルアクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−140」、以下「M−140」と略す)45質量部、フェノールエチレンオキサイド2モル変性アクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−101A」)25質量部、
(C)光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(BASF社製「IRGACURE651」、以下「BDK」と略す)10質量部、
(D)粒状物質として平均粒径100μmの球状架橋ポリスチレン粒子(ガンツ化成社製「GS−100S」)1質量部、
(E)重合禁止剤として2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)(住友化学社製「スミライザーMDP−S」、以下「MDP」と略す)0.1質量部
【0190】
工程(3)では、板ガラスの両貼り合わせ面に固着剤(I)を40gずつ塗布した。
【0191】
工程(5)では、貼り合わせるときの圧力は、20g/cm
2とし、LEDユニット16によって照射する外周部分は12mm程度の幅とした。工程(6)では、LEDユニット16によって照射する外周部分は12mm程度の幅とし、上記光硬化性接着剤を硬化させるとき、UV照射量は300mJ/cm
2(365nmの受光器による積算照度計による測定)とし、UV照射時間は30秒とし、仮留めした。工程(7)では、印加する圧力は20g/cm
2とし、光の照射量は、365nmの受光器を使用した積算照度計で測定して、2000mJ/cm
2とし、照射時間は20秒とし、本留めした。工程(8)では、固着剤(I)を使用して板ガラス12枚からなる板ガラス積層体を上記手順を繰り返して製造した。工程(9)では、円板カッター(ダイヤモンドディスク)を使用し、直方体形状(横100mm×縦55mm×厚み9.6mm)に分割した。工程(10)では、回転砥石による研削、超音波振動ドリルによる孔開け、回転ブラシによる端面加工を順次行い、形状加工した。工程(11)では、この板ガラス積層体を85℃の温水に浸漬して剥離した。
【0192】
固着剤(I)の代わりに、固着剤(II)と固着剤(III)を使用しても、上記と同様の効果が得られた。
【0193】
固着剤(II):下記の(A)〜(E)の成分を混合して光硬化性の固着剤(II)を作製した。
【0194】
(A)多官能(メタ)アクリレートとして、日本合成社製「UV-3000B」(ウレタンアクリレート、以下「UV−3000B」と略す、重量平均分子量15000)20質量部、ジシクロペンタニルジアクリレート(日本化薬社製「KAYARADR−684」、以下「R−684」と略す)25質量部、
(B)単官能(メタ)アクリレートとして、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−5700」、以下「M−5700」と略す)35質量部、フェノールエチレンオキサイド2モル変性アクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−101A」)20質量部、
(C)光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(BASF社製「IRGACURE651」)、以下「BDK」と略す)10質量部、
(D)粒状物質として平均粒径100μmの球状架橋ポリスチレン粒子(ガンツ化成社製「GS−100S」)1質量部、
(E)重合禁止剤として2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)(住友化学社製「スミライザーMDP−S」、以下「MDP」と略す)0.1質量部
【0195】
固着剤(III):下記の(A)〜(G)の成分を混合して光硬化性の固着剤(III)を作製した。
【0196】
<第一剤>(A)多官能(メタ)アクリレートとして、日本合成社製「UV-3000B」(ウレタンアクリレート、以下「UV−3000B」と略す、重量平均分子量15000)15質量部、ジシクロペンタニルジアクリレート(日本化薬社製「KAYARADR−684」、以下「R−684」と略す)15質量部、
(B)単官能(メタ)アクリレートとして、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチルアクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−140」、以下「M−140」と略す)45質量部、フェノールエチレンオキサイド2モル変性アクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−101A」)25質量部、
(C)光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(BASF社製「IRGACURE651」)、以下「BDK」と略す)25質量部、
(D)粒状物質として平均粒径100μmの球状架橋ポリスチレン粒子(ガンツ化成社製「GS−100S」)1質量部、
(E)重合禁止剤として2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)(住友化学社製「スミライザーMDP−S」、以下「MDP」と略す)0.1質量部
(F)有機過酸化物としてクメンハイドロパーオキサイド(日本油脂社製「パークミルH」、以下「CHP」と略す)2質量部
<第二剤>(A)多官能(メタ)アクリレートとして、日本合成社製「UV-3000B」(ウレタンアクリレート、以下「UV−3000B」と略す、重量平均分子量15000)15質量部、ジシクロペンタニルジアクリレート(日本化薬社製「KAYARADR−684」、以下「R−684」と略す)15質量部、
(B)単官能(メタ)アクリレートとして、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチルアクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−140」、以下「M−140」と略す)45質量部、フェノールエチレンオキサイド2モル変性アクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−101A」)25質量部、
(C)光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(BASF社製「IRGACURE651」、以下「BDK」と略す)25質量部、
(D)粒状物質として平均粒径100μmの球状架橋ポリスチレン粒子(ガンツ化成社製「GS−100S」)1質量部、
(E)重合禁止剤として2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)(住友化学社製「スミライザーMDP−S」、以下「MDP」と略す)0.1質量部
(G)分解促進剤としてオクチル酸コバルト(神東塗料株式会社製「オクチル酸コバルト」、以下「Oct−Co」と略す)2質量部
【0197】
固着剤(I)と固着剤(II)と固着剤(III)の物性を表1に示した。評価方法は下記の通りである。固着剤(III)は第一剤と第二剤を等量ずつ計量し混合したものをし、評価した。
【0198】
(評価方法)
(1)引張せん断接着強さ(接着強さ):JIS K 6850に従い測定した。具体的には被着材として耐熱パイレックス(登録商標)ガラス(25mm×25mm×2.0mm)を用いた。接着部位を直径8mmとして、作製した固着剤にて、2枚の耐熱パイレックス(登録商標)ガラスを貼り合わせ、無電極放電ランプを使用したフュージョン社製硬化装置により、365nmの波長の積算光量2000mJ/cm
2の条件にて硬化させ、引張せん断接着強さ試験片を作製した。作製した試験片は、万能試験機を使用して、温度23℃、湿度50%の環境下、引張速度10mm/minで引張せん断接着強さを測定した。
(2)剥離試験(80℃温水剥離時間):上記耐熱パイレックス(登録商標)ガラスに固着剤を塗布し、支持体として青板ガラス(150mm×150mm×厚さ1.7mm)に貼り合わせた以外は上記と同様な条件で作製した固着剤を硬化させ、剥離試験体を作製した。得られた試験体を、温水(80℃)に浸漬し、耐熱パイレックス(登録商標)ガラスが剥離する時間を測定した。
(3)切断試験片10個の裏面片の欠けの最大幅、切断試験片10個の裏面片の欠けの最大幅の標準偏差:固着剤(I)と固着剤(II)と固着剤(III)をそれぞれ用いて、縦150mm×横150mm×厚さ2mmの板状耐熱パイレックス(登録商標)ガラスと、剥離試験で用いた青板ガラス(ダミーガラスとして使用)とを、上記と同様に接着硬化させた。この接着試験体の耐熱パイレックス(登録商標)ガラス部分のみをダイシング装置を使用して10mm角に切断した。切断中に耐熱パイレックス(登録商標)ガラスの脱落は発生せず、良好な加工性を示した。耐熱パイレックス(登録商標)ガラス部分のみを切断した接着試験体を80℃の温水に浸漬して剥離した。また、その剥離した切断試験片を無作為に10個取り出し、その切断試験片の裏面(固着剤で仮固定した面)の各片を、光学顕微鏡を用いて観察し、ガラスが欠けている箇所の最大幅(ガラス裏面に平行な面方向への稜線からの距離)を測定し、その平均値と標準偏差を求めた。
【0199】
【表1】
【0200】
<実施例2>
固着剤として固着剤(III)を使用し、本留め工程として静置工程を使用した。工程(7)では、静置温度は23℃とし、静置時間は4時間とした。前記以外は、実施例1と同様にした。得られた透光性硬質基板積層体を工程(11)に従い85℃の温水に浸漬して剥離したところ、固着剤がフィルム状に軟化して各板状製品に上手く分離した。
【0201】
<実施例3>
本発明に従い、固着剤(I)(又は固着剤(II))を使用し、下記条件にて工程(1)〜(6)を実施し、仮留め透光性硬質基板積層体を製造したところ、積層精度を検査でき、不具合発生時の補修が容易になった。仮留め透光性硬質基板積層体を製造した後に、下記条件にて更に工程(7)〜(8)を実施し、本留め透光性硬質基板積層体を製造し、次いで、工程(9)〜(10)の加工を実施した。得られた透光性硬質基板積層体を工程(11)に従い剥離したところ、固着剤がフィルム状に軟化して各板状製品に上手く分離した。
【0202】
透光性硬質基板として下記板ガラスを使用した。板ガラスは、1枚の寸法が、横530mm×縦420mm×厚み0.7mmの、めっきパターン及び所定の黒色印刷パターンを付した板ガラスを使用した。板ガラス1枚から120mm×60mmの板状製品を24枚取り出すことができる。また、板状製品1枚1枚に対して、長辺側の外周部に幅2mmの黒色印刷パターンが形成され、短辺側の外周部には幅18mmの黒色印刷パターンが形成されるように板ガラスに黒色印刷パターンが付されている。また、板ガラス内の板状製品にならないマージン部分は外周部15mmである。
【0203】
工程(3)では、板ガラスの両貼り合わせ面に固着剤(I)(又は固着剤(II))を40gずつ塗布した。
【0204】
工程(5)では、貼り合わせは線圧力を0.5kN/mとしロールプレスにて行った。工程(6)では、板ガラス内の板状製品にならないマージン部分の四隅にスポット径Φ8mmのUV−LED照射器を逐次照射し仮留めした。UV照射量は500mJ/cm
2(365nmの受光器による積算照度計による測定)とし、UV照射時間は2秒とした。工程(7)では、印加する圧力は20g/cm
2とし、光の照射量は、365nmの受光器を使用した積算照度計で測定して、2000mJ/cm
2とし、照射時間は20秒とし、本留めした。工程(8)では、固着剤(I)(又は固着剤(II))を使用して板ガラス12枚からなる板ガラス積層体を、上記手順を繰り返して製造した。工程(9)では、円板カッター(ダイヤモンドディスク)を使用し、直方体形状(横121mm×縦61mm×厚み9.6mm)に分割した。工程(10)では、回転砥石による研削、超音波振動ドリルによる孔開け、回転ブラシによる端面加工を順次行い、形状加工した。工程(11)では、この板ガラス積層体を85℃の温水に浸漬して剥離した。剥離後に、板状製品10個取り出し、板状製品の裏面(固着剤で仮固定した面)の各片を、光学顕微鏡を用いて観察し、ガラスが欠けている箇所の最大幅を測定し、その平均値と標準偏差を求めた。
【0205】
<実施例4>
本発明に従い、固着剤(III)を使用し、下記条件にて工程(1)〜(6)を実施し、仮留め透光性硬質基板積層体を製造したところ、積層精度を検査でき、不具合発生時の補修が容易になった。仮留め透光性硬質基板積層体を製造した後に、下記条件にて更に工程(7)〜(8)を実施し、本留め透光性硬質基板積層体を製造し、次いで、工程(9)〜(10)の加工を実施した。得られた透光性硬質基板積層体を工程(11)に従い剥離したところ、固着剤がフィルム状に軟化して各板状製品に上手く分離した。
【0206】
透光性硬質基板として下記板ガラスを使用した。板ガラスは、1枚の寸法が、横530mm×縦420mm×厚み0.7mmの、めっきパターン及び所定の黒色印刷パターンを付した板ガラスを使用した。板ガラス1枚から120mm×60mmの板状製品を24枚取り出すことができる。また、板状製品1枚1枚に対して、長辺側の外周部に幅2mmの黒色印刷パターンが形成され、短辺側の外周部には幅18mmの黒色印刷パターンが形成されるように板ガラスに黒色印刷パターンが付されている。また、板ガラス内の板状製品にならないマージン部分は外周部15mmである。
【0207】
工程(3)では、板ガラスの両貼り合わせ面に固着剤(III)を40gずつ塗布した。
【0208】
工程(5)では、貼り合わせは線圧力を0.5kN/mとしロールプレスにて行った。工程(6)では、板ガラス内の板状製品にならないマージン部分の四隅にスポット径Φ8mmのUV−LED照射器を逐次照射し仮留めした。UV照射量は500mJ/cm
2(365nmの受光器による積算照度計による測定)とし、UV照射時間は2秒とした。
工程(1)から工程(6)を繰り返し、仮留め透光性硬質基板積層体を製造した。工程(7)では、得られた仮留め透光性硬質基板積層体を静置し本留め工程とした。静置温度は23℃とし、静置時間は4時間とした。工程(8)では、固着剤(III)を使用して板ガラス12枚からなる板ガラス積層体を、上記手順を繰り返して製造した。工程(9)では、円板カッター(ダイヤモンドディスク)を使用し、直方体形状(横121mm×縦61mm×厚み9.6mm)に分割した。工程(10)では、回転砥石による研削、超音波振動ドリルによる孔開け、回転ブラシによる端面加工を順次行い、形状加工した。工程(11)では、この板ガラス積層体を85℃の温水に浸漬して剥離した。剥離後に、板状製品10個取り出し、板状製品の裏面(固着剤で仮固定した面)の各片を、光学顕微鏡を用いて観察し、ガラスが欠けている箇所の最大幅を測定し、その平均値と標準偏差を求めた。
【0209】
実施例3及び実施例4の結果を表2に示す。
【0210】
【表2】
【0211】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではなく、種々のバリエーションが可能である。