特許第6012613号(P6012613)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6012613構造容積内での複合材料の多層の分布の決定
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012613
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】構造容積内での複合材料の多層の分布の決定
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/50 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
   G06F17/50 638
   G06F17/50 604H
【請求項の数】36
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-537759(P2013-537759)
(86)(22)【出願日】2011年11月1日
(65)【公表番号】特表2013-545191(P2013-545191A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】US2011058722
(87)【国際公開番号】WO2012061346
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2014年10月1日
(31)【優先権主張番号】12/916,782
(32)【優先日】2010年11月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504438288
【氏名又は名称】シーメンス プロダクト ライフサイクル マネージメント ソフトウェアー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Siemens Product Lifecycle Management Software Inc.
(74)【復代理人】
【識別番号】100165940
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 令子
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン アーレント グレイプ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ルビー
【審査官】 松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0312764(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0029807(US,A1)
【文献】 米国特許第05006990(US,A)
【文献】 米国特許第07010472(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
B32B 1/00 −43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのプロセッサによって実行される、多層構造を設計する方法であって、前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記多層構造の寸法を定める設計データを受信するステップと、
前記多層構造を形成するために、多層の少なくとも1つの層の少なくとも1つの層パラメータを定めるパラメータ・データを受信するステップと、
前記多層構造内の複数の位置のいずれか1つに配置された前記少なくとも1つの層の少なくとも1つの形状パラメータを特定する少なくとも1つの層変更ガイドを算出するステップと、
前記少なくとも1つの層を前記多層構造内で再配置する命令を受信するステップと、
再配置する前記命令および前記少なくとも1つの層変更ガイドに基づき、前記少なくとも1つの層のための層形状データを決定するステップと、
を含むプロセスステップを実行するように構成され
前記少なくとも1つの層変更ガイドは、第1のイソ輪郭と第2のイソ輪郭とを接続する線または面であり、前記第1のイソ輪郭(410a1)は、前記多層の前記少なくとも1つの層と前記多層構造の一方の表面(210)との交点によって定義される点の集合からなり、前記第2のイソ輪郭(410a2)は、前記交点によって定義される前記点に対向する、前記多層構造の他方の表面(220)上の点の集合からなる、
方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの層変更ガイドは、少なくとも1つの持続性コンピュータ可読媒体に保存された層変更ガイドデータを具える、
求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの層変更ガイドは、前記多層構造の第1表面から前記多層構造の第2表面まで垂直に延在し、複数の層厚の長さを有するように算出される、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記決定するステップは、前記少なくとも1つの層変更ガイドを用いて、前記複数の位置の各々に再配置された前記少なくとも1つの層の空間範囲を識別するステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
形状データを決定する前記ステップは、前記少なくとも1つの層変更ガイドを用いて、前記多層構造内の他の層のための少なくとも1つのドレーピング歪を識別するステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
形状データを決定する前記ステップは、前記少なくとも1つの層変更ガイドを用いて、前記少なくとも1つの層のための層形状データの少なくとも一部として再利用可能な前に算出された層形状データの一部を識別するステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記算出するステップは、
前記多層構造の外側の境界面を、少なくとも前記一方の表面(210)である第1表面部および前記他方の表面(220)である第2表面部に分割するステップと、
前記第1表面部および前記第2表面部上で、前記第1表面部と前記第2表面部との間の一定距離の点を定める複数対のイソ輪郭を特定するステップと、
をさらに含み、
各イソ輪郭は、少なくとも1つの持続性コンピュータ可読媒体に格納されたデータによって表される、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの層変更ガイドは、前記複数対のイソ輪郭のうちの1対の第1のイソ輪郭および第2のイソ輪郭を接続する面を表すデータを具える、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの層変更ガイドは、前記複数対のイソ輪郭のうちの1対の第1のイソ輪郭および第2のイソ輪郭を接続する複数の直線または複数の曲線を表すデータを具える、
請求項7に記載の方法。
【請求項10】
連続的な対のイソ輪郭の間の間隔は、それぞれの層の厚さを表し、
前記それぞれの層は、前記連続的な対のイソ輪郭の1つに関連している、
請求項7に記載の方法。
【請求項11】
1対のイソ輪郭は、前記少なくとも1つの層に対して定められる、
請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記1対のイソ輪郭の第1のイソ輪郭は、前記外面の前記第2表面部分と、前記少なくとも1つの層変更ガイドと、の第1の交点によって定められる、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記1対のイソ輪郭の第2のイソ輪郭は、前記外面の前記第1表面部分と、前記少なくとも1つの層変更ガイドと、の第2の交点によって定められ、
前記少なくとも1つの層変更ガイドは、前記第1のイソ輪郭から延在し、前記第1表面部に実質的に垂直である、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
形状データを決定する前記ステップは、前記多層構造内で再配置されたすべての層のための層形状データを、前記少なくとも1つの層の前記再配置に応答して決定するステップをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記決定するステップは、前記多層構造内の前記多層の前の分布を表す、前に算出された層形状データの一部を再利用するステップをさらに含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記決定するステップは、前記多層の少なくとも1つの少なくとも1つのドレーピング歪のため、前記多層の前記少なくとも1つのサイズの増加を算出するステップをさらに含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
すべての層の構成を表す層形状データをデータストアに提供するステップ、
および/または
前記層形状データを視覚的に表示するステップ、
をさらに含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの層のための平坦なパターン寸法データを提供するステップをさらに含み、
前記平坦なパターン寸法データは、平坦面に配置されている前記少なくとも1つの層を表し、平坦な材料シートから前記少なくとも1つの層を切断するガイドとして使用可能である、
請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記多層構造の少なくとも1つの中間面を特定しているデータおよび前記少なくとも1つの中間面に関連した少なくとも1つの特性を受信するステップをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記設計データは、コンピュータ支援図面ツールから受信される、
請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記設計データは、前記多層構造の容積を定める、
請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの層パラメータは、厚みと、材料組成と、繊維パターンと、繊維方向と、から選択される要素を具える、
請求項1に記載の方法。
【請求項23】
コンピュータ実行可能命令が記憶された持続性コンピュータ記憶媒体であって、前記コンピュータ実行可能命令は、実行時に、多層構造を設計するためのプロセスステップを装置に実行させ、前記プロセスステップは、
前記多層構造の外側の境界面を、少なくとも、前記多層構造の一方の表面(210)である第1表面部および前記多層構造の他方の表面(220)である第2表面部に分割するステップと、
少なくとも1つの層変更ガイドを表すデータを算出するステップと、
を具え、
前記少なくとも1つの層変更ガイドは、第1のイソ輪郭と第2のイソ輪郭とを接続する線または面であり、前記第1のイソ輪郭(410a1)は、前記多層の前記少なくとも1つの層と前記一方の表面(210)との交点によって定義される点の集合からなり、前記第2のイソ輪郭(410a2)は、前記交点によって定義される前記点に対向する、前記他方の表面(220)上の点の集合からなり、 記少なくとも1つの層変更ガイドは、前記多層構造の少なくとも1つの層の複数の形状パラメータを特定し、
前記複数の形状パラメータの各々は、前記多層構造内の前記少なくとも1つの層の複数の位置の1つに対応し、
前記プロセスステップは、前記第1表面部および前記第2表面部上の複数対のイソ輪郭を表すデータを定めるステップを具え
記装置は、少なくとも1つの製造された記憶装置にアクセスするように構成された少なくとも1つのプロセッサを具え、前記多層構造は、複合材料の複数の層を具え、
前記プロセスステップは、
前記少なくとも1つの層を前記多層構造内で再配置する命令を受信するステップと、
再配置する前記命令および前記少なくとも1つの層変更ガイドに基づいて、前記再配置された少なくとも1つの層のための層形状データを決定するステップと、
を含む、
コンピュータ記憶媒体。
【請求項24】
各層変更ガイドは、各対のイソ輪郭の対応するイソ輪郭の間に配置される、
請求項23に記載のコンピュータ記憶媒体。
【請求項25】
前記決定するステップは、ドレーピング歪のため、前記少なくとも1つの層のサイズの増加を算出するステップをさらに含む、
請求項23に記載のコンピュータ記憶媒体。
【請求項26】
前記多層構造内で再配置されたすべての層のための層形状データを、前記少なくとも1つの層の前記再配置に応答して、少なくとも1つの層変更ガイドを用いて決定するプロセスステップを実行するように前記装置を構成するコンピュータ実行可能命令をさらに具える、
請求項23に記載のコンピュータ記憶媒体。
【請求項27】
前記決定するステップは、前記複数の層の前の分布を表す、前に算出された層形状データの一部を再利用するステップをさらに含む、
請求項26に記載のコンピュータ記憶媒体。
【請求項28】
アプリケーション・プログラミング・インタフェースを、コンピュータ支援設計ツールと関連して前記プロセスステップを実行するために提供するコンピュータ実行可能命令をさらに具える、
請求項23に記載のコンピュータ記憶媒体。
【請求項29】
プロセスステップを実行するように前記装置を構成するコンピュータ実行可能命令をさらに具え、前記プロセスステップは、
コンピュータ支援設計ツールから、前記多層構造の寸法を定めている設計データを受信するステップと、
前記複数の層の各々の少なくとも1つの層パラメータを定めているパラメータ・データを受信するステップと、
を具える、
請求項23に記載のコンピュータ記憶媒体。
【請求項30】
プロセスステップを実行するように前記装置を構成するコンピュータ実行可能命令をさらに具え、前記プロセスステップは、
前記少なくとも1つの層の構成を表す層形状データをデータストアに提供するステップ、
および/または
前記層形状データを視覚的に表示するステップ、
を含む、
請求項29に記載のコンピュータ記憶媒体。
【請求項31】
前記少なくとも1つの層のための平坦なパターン寸法データを提供するプロセスステップを実行するように前記装置を構成するコンピュータ実行可能命令をさらに具え、
前記平坦なパターン寸法データは、平坦面に配置されている前記少なくとも1つの層を表し、平坦な材料シートから前記少なくとも1つの層を切断するガイドとして使用可能である、
請求項29に記載のコンピュータ記憶媒体。
【請求項32】
複合材料の複数の層を具える多層構造を設計する方法であって、
前記方法は、プロセスステップを実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを有する多層設計ツールによって実行され、前記プロセスステップは、
前記多層構造を表す形状を、複数のサブボリュームに分割するステップと、
前記複数のサブボリュームの各々にして、複数の層変更ガイドを算出するステップと、
を含み、
前記各層変更ガイドは、第1のイソ輪郭と第2のイソ輪郭とを接続する線または面であり、前記第1のイソ輪郭(410a1)は、前記多層の前記少なくとも1つの層と前記多層構造の一方の表面(210)との交点によって定義される点の集合からなり、前記第2のイソ輪郭(410a2)は、前記交点によって定義される前記点に対向する、前記多層構造の他方の表面(220)上の点の集合からなり、
前記プロセスステップは、
選択された層を前記複数のサブボリュームの1つの中で再配置する命令を受信するステップと、
前記選択された層の前記再配置に応答して、前記複数のサブボリュームの前記1つの中で移動するすべての層のための層形状データを決定するステップと、
を含み、
前記決定するステップは、再配置する前記命令および前記移動する層に関連する層変更ガイドに基づくものであり、
前記多層設計ツールの前記少なくとも1つのプロセッサは、少なくとも1つの記憶媒体と通信し、
前記層変更ガイドは、前記多層構造内で移動するそれぞれの層の空間範囲を定める方法。
【請求項33】
前記決定するステップは、前記複数のサブボリュームの前記1つの中での層の前の分布順序を表す、前に算出された層形状データの一部を再利用するステップをさらに含む、
請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記決定するステップは、移動する前記層の少なくともいくつかの層のドレーピング歪のため、前記層の前記少なくともいくつかの層のサイズの増加を算出するステップをさらに含む、
請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記複数のサブボリュームの前記1つの中のすべての層の構成を表す層形状データをデータストアに提供するステップ、
および/または、
前記層形状データを視覚的に示すステップ、
をさらに含む、
請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記選択された層のための平坦なパターン寸法データを提供するステップをさらに含み、
前記平坦なパターン寸法データは、平坦面に配置されている前記選択された層の寸法を表し、平坦な材料シートから前記選択された層を切断するガイドとして使用可能である、
請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の多層、例えば、複合材料の多層から製作される構造を設計するための方法と装置に関するものである。より詳しくは、本発明は、材料の多層の分布を決定し、構造容積を充填することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、自動車、航空宇宙、風力エネルギー、海洋船および防衛技術における多くの製品は、多層複合材料から製作された構造を含みうる。適切に設計および製作されると、多層複合構造は、従来法、例えば、部品を曲げ、機械加工し、固定することによって、または、単一の材料から構造を機械加工することによって製作された構造より性能が優れる。多層複合構造は、従来法によって製作される構造よりも、優れた耐久性および強度重量比を提供することができる。複合構造は、特定の用途次第では、従来の構造より付加的な利点を提供することができる。なぜなら、複合構造は特定の用途の特定の要求に応ずるように変更可能なためである。
【0003】
複合材料の多層を具える構造を設計および製作することは、工学的挑戦を提起しうる。現在のコンピュータ支援設計(CAD)ツールは、寸法データを提供し、構造の従来の設計および製造において支援する、例えば、寸法データを有するレンダリングを提供し、部品の加工を導くようによく調整されている。しかしながら、CADツールは、複合材料の多層から構造の製作を導くためにデータを提供するようには調整されていない。
【0004】
アドオン・ツールが開発され、CADツールの能力を拡張した結果、複合構造を設計するために使用可能である。マサチューセッツのウォルサムにあるVistagy社は、製品FiberSIM(登録商標)のようないくつかのアドオンにツールを提供することにより、繊維複合多層設計機能をCADソフトウェア・パッケージに追加することができる。この種のアドオン・ツールは、設計技師によってCADツールと連動して用いられ、考案された多層構造を商品に開発するのを容易にする。しかしながら、この種のツールでさえ、多層複合構造の設計は、困難であり、計算的に時間がかかりうる。概して、各層のサイズおよび異なるサイズの層の構造容積内での分布は予め分かっていない。しばしば、層は、連続した試行錯誤設計において分布し、データは、試行ごとに再計算される。満足できる層分布が識別される前に、多数の繰り返しが必要となりうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者は、例えば複合材料から製造される多層構造を設計することが挑戦的であると認めた。なぜなら、製作される3次元構造内で複合材料の多層の分布を決定する作業は、時間がかかるためである。構造を充填するための層を定めるのに使用される現在の方法は、手動であり、大きなCADをモデル化する技能を必要とし、相当な量のコンピュータ記憶および高性能のコンピュータを必要とする。さらに、現在の方法は、エラーが発生しやすく、正確かつ再現可能な結果をもたらさないおそれがある。発明者は、多数の層が必要とされ、構造の形状が簡単でなく、構造に関する1つ以上の設計制約または性能制約が存在する場合、どのように構造容積が多層で充填されるかを決定することが非常に困難であると認識する。発明者は、多層設計に関連する問題点を解消するために、設計構造内での複合材料の多層の分布を決定するのを支援するための方法および装置を考案した。設計段階で、構造内で層を効率的に分布し、並び替えることができる計算方法が開発される。層の並べ替えまたは「シャッフル」を実行し、特定の設計制約および/または性能制約を満足することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
特定の実施形態では、層変更ガイドは考察された複合構造のために定められ、イソ輪郭(isocountour)は構造物の2つの表面上で計算される。層変更ガイドは、一方の表面上のイソ輪郭から他方の表面上の対応するまたは対となるイソ輪郭まで延在することができる。層変更ガイドを用いて、構造を充填する多層スタック内で移動または再配置される任意の層のサイズおよび形状を概算することができる。方法および装置は、構造内の各層の寸法および構成を表す出力層構成データを提供することができ、多層のその他の分布を迅速に提供することができる。いくつかの実施形態において、「平坦なパターン」データは、平坦な材料シートから各々の層を切断するのをガイドするために提供される。各種実施形態において、方法および装置は、CADツールと連動して用いられる。
【0007】
例示的実施形態において、少なくとも1つのプロセッサによって実行される、多層構造を設計する方法が提供され、少なくとも1つのプロセッサは、(a)多層構造の寸法を定める設計データを受信するステップと、(b)多層構造を形成するために、多層の少なくとも1つの層の少なくとも1つの層パラメータを定めるパラメータ・データを受信するステップと、(c)少なくとも1つの層変更ガイドを算出するステップと、を含むプロセスステップを実行するように構成され、層変更ガイドは、多層構造内の複数の位置のいずれか1つに配置された少なくとも1つの層の少なくとも1つの構成パラメータを識別する。プロセッサは、(d)少なくとも1つの層を多層構造内で再配置する命令を受信するステップと、(e)再配置する命令および少なくとも1つの層変更ガイドに基づき、少なくとも1つの層のための層構成データを決定するステップと、を実行するようにさらに構成されている。層構成データは、層の3次元形状または面を表す、少なくとも1つの製造されたデータ記憶デバイスに格納されたデータを具えることができる。
【0008】
発明の実施形態は、コンピュータ実行可能命令によってエンコードされる持続性コンピュータ記憶媒体をさらに含み、コンピュータ実行可能命令は、実行時に、多層構造を設計するためのプロセスステップを実行するように装置を構成する。装置によって実行されるプロセスステップは、多層構造の外側の境界面を、少なくとも第1表面部および第2表面部に分割するステップと、少なくとも1つの層変更ガイドを表すデータを算出するステップと、を具え、少なくとも1つの層変更ガイドは、第1表面部から第2表面部まで延在する。少なくとも1つの層変更ガイドは、多層構造の少なくとも1つの層の複数の構成パラメータを識別し、複数の構成パラメータの各々は、多層構造内の少なくとも1つの層の複数の位置の1つに対応する。装置によって実行されるプロセスステップは、第1表面部および第2表面部上の複数対のイソ輪郭を表すデータを定めるステップをさらに具え、第1表面部上の各イソ輪郭は、第2表面部上の対応するイソ輪郭に関連し、各対は、第1表面部と第2表面部との間の一定距離の点を定める。装置によって実行されるさらなるプロセスステップは、多層構造内の少なくとも1つの層の複数の可能な位置の任意の1つ以上のために、少なくとも1つの層の3次元形状を算出するステップをさらに含むことができる。各種実施形態において、プロセスステップを実行する装置は、少なくとも1つの持続性記憶媒体にアクセスするように構成される少なくとも1つのプロセッサを具え、多層構造は、複合材料の複数の層を具えることができる。
【0009】
さらなる実施形態は、複合材料の複数の層を具える多層構造を設計する方法を含み、この方法では、複合構造が複数のサブボリュームに分割される。方法は、少なくとも1つの記憶媒体と通信可能な、少なくとも1つのプロセッサを有する多層設計ツールによって実行可能である。プロセッサは、(a)多層構造を表す形状を、複数のサブボリュームに分割するステップと、(b)複数のサブボリュームの各々にして、複数の層変更ガイドを算出するステップと、を含むプロセスステップを実行するように構成され、各層変更ガイドは、多層構造の1つの層と関連している。少なくとも1つのプロセッサは、選択された層を複数のサブボリュームの1つの中で再配置する命令を受信するステップと、選択された層の再配置に応答して、複数のサブボリュームの1つの中で移動するすべての層のための層構成データを決定するステップと、を実行するようにさらに構成可能である。決定するステップは、多層構造内で層の前の分布のために計算された層構成データを再利用するステップをさらに含むことができる。
【0010】
上述した本発明の概要は、添付の図面に関連して考察される以下の説明からより完全に理解されうる。
【0011】
当業者は、本願明細書および図面が、単なる例示目的のためであるということを理解するであろう。いくつかの例では、本発明の理解を容易にするために、本発明の各種態様は、誇張、単純化、縮小または拡大されて示されているということを理解されたい。図面の要素の数は、本発明の実施形態において使用される要素の数より多くてもよいし少なくてもよい。図面は必ずしも同一の縮尺ではなく、教示の原理を例示することに重点が置かれている。全図面にわたって、類似の参照符号は、概して、類似の特徴、機能的に類似および/または構造的に類似の要素を表す。図面は、いかなる形であれ本発明の教示の範囲を制限することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】複合材料の多層から製作される構造の断面正面図を示す。図示の構造100は目的を教示するためだけに選択され、設計用に考察される構造は任意の形状とすることができる。
図1B図1Aの構造の平面図を示す。
図2A】複合材料の多層で充填された、図1Aの複合構造の正面図を示す。この描写は、多層が、第2表面220で開始し第1表面210に向かって充填するように構造内に配置されたことを示す。
図2B図1Aの複合構造の正面図を示し、多層が、第1表面210で開始し第2表面220に向かって充填するように構造内に配置されている。図2Aおよび図2Bの層の配置は、複合材料が構造100の製作中に「レイドアップ(上方に並べる)される」方法の代表例とすることができる。
図2C】設計規則が設計構造のために特定されえた実施形態を示す。例えば、特定の特性を有する中間面255が特定可能である。加えて、最大の層250aおよび2番目に大きい層250bは、構造物の外表面に沿って位置するように特定可能である。
図3A】多層設計ツール310が動作可能なシステムの実施形態を示す。多層設計ツールは、図6の方法ステップを実行するように構成可能である。
図3B】多層設計ツール310の実施形態をさらに詳細に示す。
図4A】イソ輪郭410a1,410a2〜410f1,410f2および層変更ガイド420a〜420fを示す。
図4B】構造の表面上に定められるイソ輪郭410a1を示す。
図4C】構造405内の層変更ガイド422の実施形態を示し、層450が構造内で異なる位置に配置される場合の層の寸法および構成の変形例を示す。
図5】多層構造100の2層が多層スタック内で移動した実施形態を示す。(図2Aと比較すると)上層のドレーピング歪も示されている。
図6】イソ輪郭および層変更ガイドを用いて多層構造を設計する方法の実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の特徴および効果は、図面を参照しながら以下に述べる詳細な説明からより明らかになる。
【0014】
概要
簡単に言うと、本発明の実施形態は、設計および製作される構造を充填するために、例えば複合材料または任意の適切な変形可能および/または適合した材料のような多層の分布および多層のための層構成データを決定するための方法および装置に関するものである。構造は、製造された製品のコンポーネント、例えば、自動車用のドアパネル、航空機用の空気力学的な支持ストラット、ジェット用のカウリングまたは構造パネル、風力タービンのブレードとすることができる。各種実施形態において、構造は、決定された分布に従って、複合材料の多層で充填されるべき容積を含む。各層は薄くすることができるので、設計された構造の容積を充填するために、大多数の層が必要である。各種実施形態において、設計制約および/または性能制約は、構造に関連し、これらの制約は、構造を製作するための層分布の決定に関与することができる。少なくとも1つのプロセッサを具える多層設計ツールは、設計規則および/または性能制約に従って構造を充填するための多層の分布を決定するために、後述するプロセスステップを実行するように構成可能である。
【0015】
複合構造を表す設計データは、多層設計ツールに入れられ、あるいは、またはコンピュータ支援設計(CAD)ツールで作成され、アプリケーション・プログラミング・インタフェースを介して多層設計ツールに提供される。多層設計ツールは、構造の寸法および形状を定めている設計データを受信し、考察された構造を充填するために用いられる各層の少なくとも1つのパラメータを定めている層データをさらに受信することができる。多層設計ツールは、設計データおよび層データを用いて、イソ輪郭および構造用の層変更ガイドを算出することができる。各種実施形態において、イソ輪郭は、構造の外表面上で定められる。イソ輪郭は、イソ輪郭に対応する層の境界を特定することができる。層変更ガイドは、いくつかの実施形態ではイソ輪郭から決定され、いくつかの実施形態ではイソ輪郭に依存して算出されうる。層が構造内で移動するまたはシャッフルされるとき、層変更ガイドを用いて、層または層寸法の境界を特定することができる。また、層変更ガイドを用いて、多層構造内で1つ以上の層構成データを決定することができる。
【0016】
一度第1層の分布が構造に対して決定されると、層変更ガイドは、多層スタック内で1つ以上の層を移動するために多層設計ツールにより用いられ、新たな層構成を算出する際の援助として役立つ。1つ以上の層をシャッフルすることから生じた新たな層構成は、本願明細書において記載されている方法ステップを使用して、直ちに算出可能である。さらに、前の層構成算出からのデータは、再利用され、新たな層分布のための層構成データを得るために用いられる。以下、本発明の詳細およびさらなる態様を説明する。
【0017】
課題の説明
図1Aおよび図1Bは、複合材料の多層を用いて設計および製作される構造100の実施形態を表し、図1Aおよび図1Bを導入として参照する。構造100は、空気力学的または流体力学的なストラット(strut)とすることができる。複合構造は、任意の3次元形状を有し、複数の寸法および/または形状データによって特徴づけられうる。例えば、構造100の特定の寸法が特定され、曲率データおよび/または方程式が与えられ、これら全ては3次元構造を規定する。図1の例では、構造は、図1Aに示すように、断面(XZ平面)において翼形状を有し、図1Bに示すように、構造のY方向の長さに沿って拡張された長方形の形状を有する。断面形状は、任意の方法で構造の長さに沿って変化しうる。さらに、複合構造100は、Y方向の長さに沿ってツイストおよび/またはカーブすることもできる。
【0018】
本願明細書において「複合構造」という用語は、複合材料または多層構造を充填するための形状に変形および/または順応可能な任意の適切な材料の多層を用いて設計および製作される構造を意味するものとして用いられる。図1の構造は、目的を教示するためだけに選択される。実際には、構造は、任意の形状を有することができる。複合構造の層は、同じ構成でなくてもよい。例えば、何層かは、第1の構成および厚みの複合材料であり、何層かは、第2の構成および同一または異なる厚みの複合材料でもよい。複数の実施形態において、複合構造は、複合層(例えば、ポリマー/繊維組成の層)および非複合層(例えば、ポリマーまたは金属シートの層)の混合を含むことができる。
【0019】
伝統的な製造方法では、構造100は、固体の材料片から製造されうる、例えば材料の固体ブロックから機械加工されうる。しかしながら、この種の方法は、多層複合が提供可能な利点、例えば、強度重量比の改善、耐久性、無駄の減少および性能特性の適合を利用しない。多層複合が従来の製造プロセスに対して多数の改良を提供することができるが、多層設計および製造は、依然として、いくつかの工学的挑戦、例えば、材料の選択、層特性、層寸法および複合構造内の層の分布を提起しうる。図2Aは、構造100内で分布する層の一例を示す。図面を単純化するために、図面には複数の層250a〜250fしか示していない。実際には、複合構造は10層または100層から構成され、層特性は、構造全体にわたって異なってもよい。
【0020】
完成構造100における複合材料の各層は、例えば、硬化した樹脂に埋められた高強力繊維を具えることができる。複合材料のための他の適切な組成物は、要素(ガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、セラミック・マトリックス、エポキシ、ポリエステル、乾燥織り繊維、予備含浸織り繊維、注入織り繊維)の任意の1つ以上を具え、本発明の範囲を制限することなく用いられる。例えば、構造の製作中、樹脂は硬化しない、または、存在しなくてもよい。例えば、樹脂は液体またはゲルの形態とすることができ、硬化剤は層が構造内に配置された後に追加される。場合によっては、若干のファブリックを構造内に配置した後、樹脂および硬化剤を配置することもできる。いくつかの実施形態では、樹脂および硬化剤は、予め混合されファブリックとともに存在する、または、その後適用されるが、構造を硬化するために、例えば、約5分から約24時間の間の硬化時間を必要とする。樹脂/硬化剤の混合物がその後構造に適用されるとき、混合物は圧力下または真空下で多層構造内に入れられうる。繊維は、ガラス系繊維、ケブラー、炭素繊維または他の任意の類似材料とすることができ、硬化樹脂は、エポキシ系樹脂、ポリマー、ガラス/ポリマーまたは炭素繊維/ポリマー複合材料とすることができる。いくつかの実施形態では、炭素繊維または炭素繊維/ポリマー複合材料は、カーボンナノチューブを具える。構造100が製作されるとき、構造100は「レイアップ」プロセスで組み立てられ、このレイアッププロセスでは、各層は、構造に対して連続して配置および追加される。場合によっては、構造の部分は複合材料の多層とともにレイドアップされ、その後その部分はともに接着されてもよい。
【0021】
様々な種類の材料および複合構造が利用できる組立て方法を考慮すると、複合材料の多層から構造100を製造することが、完成品に関する設計および性能仕様を満足する際の著しく大きな柔軟性を提供可能であるということを認識されたい。複合構造の曲げ特性および機械的特性は、例えば、ファブリックの方向、ファブリックの織り、ファブリックの種類および/または構造内の各層内の樹脂タイプを選択することによって調整可能である。さらに、層が構造100内で構成および/または分布される方法は、複合構造の曲げ特性および機械的特性に影響を及ぼしうる。
【0022】
図2Aおよび図2Bは、構造100内の複合材料の多層250a〜250fの他の分布を示す。図2Aおよび図2Bは、図1Aに対応する断面図を示し、層250a〜250fがページ内外に延在することはいうまでもない。図2Aに示すように、層250a〜250fは、構造100内に配置され、第2表面220から第1表面210まで構造の容積を充填する。これは、例えば、複合構造が製作される方法と類似することができる。第1層250aは、モールドに最初に配置され、第2層250bは、第1層の上に配置され、その後同様である。あるいは、図2Bに示すように、層250a〜250fは、第1表面210で開始し、第2表面220に向かって層を「レイアップして」配置される。例えば、モールドは、図2Bに示すように反対にすることができる。図2Aおよび図2Bから、容積がどのように充填されるかに依存して層の構成が異なることが分かる。
【0023】
図2Aおよび図2Bに示された層分布の各々は、同じ複合構造の異なる機械特性および性能特性を生ずる場合がある。例えば、図2Aに示される層分布は、主に平坦な層構成を呈する。層のこの分布は、構造100の長さ(Y)に沿って、Z方向により大きな柔軟性を提供することができる。(例えば、多くの書類が全て平坦に位置していると、それらを曲げることはより容易である。)図2Aの複合構造では、より小さい層が集合しているため、第1表面210に沿う機械的強度はより低く、表面に沿って多層端が存在しているため、第1表面210はより粗い。表面が濡れている、すなわち、気流または流体の流れにさらされる場合、凸凹の第1表面210は望ましくない。材料応力または剪断が構造の第1表面210に沿って集中される場合、上面の近くにより小さい層を分布することは望ましくない。図2Bの層の分布は、Z方向により高い曲げ剛性を提供するとともに(カーブしている多くの書類を曲げることはより困難である)、第1表面210に沿った機械的強度はより大きく、第1表面210はより滑らかである。他の層分布、例えばより小さい層がより大きい層内で散在する分布により、異なる機械特性および性能特性を得ることができる。例えば、図2Cは、2枚の最大の層250a、250bが外側の表面上に存在するように特定される分布を示す。加えて、中間面255は、中立面、すなわち、複合構造が、その長さに沿って曲げられるとき、圧縮応力下のすべての点および引張応力下のすべての点の間の面であるように特定されうる。したがって、設計技師は、特定の設計および性能規則または制約を満たすように、複合構造内の層分布を選択することができる。
【0024】
多層複合が、設計ニーズを満たすように構造の機械的特性および性能を変える見通しを提供するが、結果は複合構造を設計する複雑さに関するコストである。例えば、各層は、厚み、横方向の大きさ、位置、繊維組成、繊維パターンまたは織り方、樹脂組成等において変化しうる。これらのパラメータの可変性は、時間短縮可能であり(time-intensive)、手動の設計作業およびコンピュータを利用した設計作業の両方が可能となりうる。
【0025】
イソ輪郭および層変更ガイドを用いた、多層を有する複合構造の充填
多層設計のための従来のコンピュータを利用した方法を考慮して、発明者は、複合構造内の層分布を決定するのに用いることができる効率的な数値的方法および装置を開発した。加えて、発明者は、次の分布を決定する際に、前の層分布計算からのデータを再利用する方法を開発した。データの再利用は、「無駄になる」データ、すなわち、反復的な設計プロセスの間、1つの実験的分布のために算出され、解が設計基準を満たすことができないので放棄されるデータに関連する時間を著しく減少することができる。図3A図3B図4A図4Cおよび図5を参照して、多層設計のための本発明の方法を説明する。ただし、図面が例示目的のためだけであって、いかなる形であれ記載されている方法を制限する意図はないということを認識されたい。
【0026】
図3Aは、多層設計ツール310が動作しうるコンピューティング環境の実施形態を示す。多層設計ツール310は、少なくとも1つのプロセッサ(図示せず)、例えば、パーソナル・コンピュータまたはワークステーションのプロセッサを含むことができる。少なくとも1つのプロセッサは、コンピュータに対するローカルとすることもできるし、ローカル・エリア・ネットワークまたはワイド・エリア・ネットワークで分散することもできる。多層設計ツール310は、データ記憶装置320およびアプリケーション・プログラミング・インタフェース(API)330と通信することができる。API330は、コンピュータ支援設計(CAD)ツール340と多層設計ツール310との間でのデータ交換用インタフェースを提供することができる。典型的な実施形態では、多層設計ツール310は、API330を介して、CADツール340と連動して動作するように構成される。複合構造を表す設計データは、CADツール340で定められ、さらなる処理のための多層設計ツール310にエクスポートされうる。多層設計ツール310からのデータ出力は、表示、記憶、出力および/または付加的な処理のために、CADツール340に再び供給されうる。データ記憶装置320は、持続性記憶媒体を具え、単一の記憶装置または複数のタイプ、例えば、キャッシュ、RAM、ROM、SRAM、DRAMなどの多数分散型記憶装置とすることができる。データ記憶装置320は、コンピュータ実行可能命令および/または多層設計ツール310、API330およびCADツール340の1つまたは任意の組合せのためのデータを格納することができる。各種実施形態では、多層設計ツール310は、少なくとも1つのプロセッサに、後述するように多層構造内の層分布を決定するための本発明のプロセスステップを実行するコンピュータ実行可能命令を具える。
【0027】
図3Bは、多層設計ツール310の実施形態の詳細をブロック図で示す。多層設計ツール310は、少なくとも3種類の入力データを受信するように構成可能である。多層設計ツールは、さらなるデータ、例えば設計および/または性能制約(図示せず)を受信するようにさらに構成可能である。第1のタイプの入力データは、構造データまたは容積定義データ301を具えることができる。容積定義データ301は、複合構造の寸法および形状を定めるのに必要な任意のデータを含むことができる。例えば、容積定義データ301は、複合構造のサイズおよび形状を定める距離測定値および/または方程式を含むことができる。容積定義データ301は、例えば、構造のための適切な設計が得られるCADツール340から受信される、または、データ収納部320から、または、ユーザ入力から直接受信される。
【0028】
第2のタイプの入力データは、層特性データ302を具えることができる。このデータは、複合構造の容積を充填するために用いられる複合材料の多層を表す。このデータとしては、複合構造を形成する際に用いられる各層の厚み、層を作製する際に用いられるファブリックのタイプ、ファブリックの織り、構造が埋め込まれるマトリックスのタイプ、例えば、ポリマーまたは樹脂タイプ、ガラス/ポリマーまたは炭素/ポリマー混合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。層特性データ302は、CADツール340から、データ収納部320から、および/またはユーザ入力から受信することもできる。
【0029】
第3のタイプの入力データは、充填方向データ303を具えることができる。このデータは、CADツール340から、データ収納部320から、および/またはユーザ入力から受信され、複合構造容積が複合材料の多層で充填される方向を定める。図2A図2Cを再度参照して、構造100は、様々な方向において充填可能である。例えば、充填方向データ303は、図2Bに示すように第1の外面210から出発して、または、図2Aに示すように第2の外面220から出発して容積を充填するというコンピュータ可読命令を具えることができる。いくつかの実施形態では、充填方向データ303は、図2Cに示すように2つの外面から出発し中間面255に向かって、または、中間面255から出発し、1つ以上の外面に向かって、容積を充填するというコンピュータ可読命令を具えることができる。
【0030】
多層設計ツール310は、イソ輪郭計算機312、層変更ガイド計算機314および層構成計算機316をさらに具えることができ、各々は、直接または間接的に互いに通信可能である。これらのコンポーネントは、構造シミュレータ318とさらに通信可能である。これらのコンポーネントの各々は、ソフトウェア、ハードウェアまたはそれらの組み合わせで実施可能である。動作中、イソ輪郭計算機312は、受信された入力データ301〜303に基づいて、複合構造の少なくとも2つの表面のためのイソ輪郭410a1,410a2〜410f1,410f2(図4Aを参照)の対を算出することができる。層変更ガイド計算機314は、イソ輪郭情報を用いて、層変更ガイド420a〜420fを決定し、層変更ガイドをイソ輪郭と独立して算出することもできるし、あるいは、層変更ガイドをイソ輪郭に依存して算出することもできる。構造シミュレータ318は、構造内の層の選択された順序のために、複合構造を数値的にシミュレーションすることができ、層構成計算機316は、複合構造内の各層のための構成データを決定することができる。構成データは、構造内の各層の寸法および形状を表すことができる。例えば、構成データは、複合構造内で成形されるような層によって定義される面を表すことができる。構成データは、各層のための「平坦なパターン」データを含むこともできる。平坦なパターン・データを用いて、平坦な材料シートから各層の切断をガイドすることができるので、切断された平坦なパターンは、複合構造内の層のシミュレーションされた構成に正確に一致することができる。いくつかの実施形態では、層構成データ380は、例えば、表示用のCADツール、補助データ記憶装置またはプロセッサに出力として提供され、または、層切断ツールに入力されるデータとして提供される。
【0031】
より詳細には、複合構造の第1の充填に関連して上述した通り、イソ輪郭計算機312は、イソ輪郭410a1,410a2〜410f1,410f2の対を生成することができる。構造の第1の充填のために複合構造内で層を分布する方法は、進歩的なオフセットの方法を利用するステップを含むことができる。この方法では、第1層、例えば、図2Aの層250aは、構造の容積内で最初に配置されるので、構造の第1端部から構造の第2端部まで延在する。次に、寸法および構成データは、層ごとに算出される。第2層250bは、第1層250aに隣接して配置されて、設計構造100の両端まで延在する。このように、層は連続して追加され、構造を充填する。構造が層で充填された後、設計は設計制約の遵守のために点検されうる。
【0032】
進歩的なオフセットの方法による第1の充填は、複合構造を設計する際の第1の通過点としてしばしば適切であるが、概して、充填方向終わりで、小さい層が集中してしまう。これは、構造が第2表面220から第1表面210まで充填される図2Aに見られる。小さい層の集中は、結果として、構造を局所的に弱めることになりうる。しばしば、スタック内で小さい層の集中を減らすことが必要である。これは、第1の充填の後層のスタック内で1つ以上の層を移動する必要がある、または、1つ以上の層のための1つ以上の目標位置を選択する必要がある。
【0033】
典型的であるが、非限定的な実施形態として、図2Aおよび図4A図4Bを参照して、層250a〜250fが第2表面220から第1表面210まで構造100内で最初に充填されると、イソ輪郭対が発生しうる。本実施形態では、図2Aに示すように、第1層250aは第2表面220に沿って配置されるので、第1層250aは第2表面220に沿って延在する。層の厚みのため、第1層250aは、第2表面220から層の厚みに実質的に等しい距離のところで第1表面210と交差する。第1層250aと第1表面210との交点は、中心点を定め、1対のイソ輪郭410a1、410a2の第1のイソ輪郭410a1を定めるために用いることができる(図4B参照)。1対のイソ輪郭410a1、410a2の第2のイソ輪郭410a2は、第2表面220上の中心点によって定義され、その中心点は、第1表面210上のイソ輪郭410a1から層の厚みに実質的に等しい距離のところにあり、その距離は、第2表面220に垂直かつ第1表面210上のイソ曲線410a1と交差している線に沿って測定される。各層250a〜250fは、複合構造に追加されるので、1対のイソ輪郭はこの手順の後、算出可能である。一方の表面上のイソ輪郭は、他の表面から一定距離でオフセットし、この一定距離は、イソ輪郭の間に配置される層の累積的な厚みに対応するということを認識されたい。典型的な実施形態では、イソ輪郭の算出は、複合構造の設計の間、定義済みの容積に基づいて1回発生する。
【0034】
特定の実施形態では、イソ輪郭を用いて、層変更ガイド計算機314により、層変更ガイド420a〜420fを算出することができる。図4Aに示すように、層変更ガイド計算機314は、複数対のイソ輪郭を接続している面を具える層変更ガイドを生成することができる。いくつかの実施形態では、層変更ガイド420a〜420fの各々は、1対のイソ輪郭を接続し、イソ輪郭に沿って分布する最短距離の線を具える。線の集合は、1対のイソ輪郭を接続している最小面積の面を表すことができ、線の点を含む連続境界に適切な近似値を提供することができる。いくつかの実施形態では、層変更ガイドは、図4Cに示すように、湾曲面422、すなわちイソ輪郭を接続する曲線の集合を具えることができる。特定の実施形態において、層変更ガイド420a〜420fは、複合構造の設計の間、1度だけ算出される。いくつかの実施形態では、層変更ガイドは、複合構造の設計段階の間、2回以上算出されてもよい。
【0035】
典型的であるが非限定的な他の実施形態において、層変更ガイド420a〜420fは、イソ輪郭の前に算出されることができる。例えば、層変更ガイド420a〜420fは、規則に従って発生することができ、例えば、各層変更ガイドは、第1表面から垂直に延在し、第2表面で終端することができる。第1表面は、上面または底面とすることができる。図4Aに関して、第1表面は、下側表面220または上側表面210とすることができる。層変更ガイド420a〜420fの第2の制約は、層変更ガイド420a〜420fが層厚の整数倍で延在するということであり、例えば、それらの長さは、層厚の1、2、3、4倍等である。いくつかの実施形態において、例えば、層厚が複合構造内で変化する場合、層変更ガイドの長さは層厚の累計で測定可能である。いくつかの実施形態では、層変更ガイドの方向はユーザによって特定可能であり、例えば、層変更ガイドは、ユーザによって特定された方向と平行とすることができる。特定方向は、一方向でもよいし、異なる方向(例えば、複合構造内での位置に応じて変化する複数の方向)の混合でもよい。いくつかの実施形態では、複合構造は、プロペラブレードで発生するように、その長さに沿ってツイスト可能である。この種の構造において、層変更ガイドは、構造の長さに沿う並進方向の変化を表している構造の長さに沿う方向で変化することができる。さらに他の実施形態では、図4Cに示すように、層変更ガイド420a〜420fは、曲線をなすものとすることもできる。いくつかの実施形態において、曲線の層変更ガイド420a〜420fは、複合構造の対向する各表面に対して垂直に構成可能である。この種の実施において、層変更ガイドの曲率は、各表面の曲率に基づいて決定可能である。例えば、層変更ガイドは、第2表面より大きな曲率を有する第1表面により近い領域において、より多くの曲率を与えられる。イソ輪郭は、各層変更ガイドに依存して算出される、または、層変更ガイドが420a〜420fの決定後に算出される。
【0036】
層変更ガイド420a〜420fは、上述した面または線を表すデータ構造を具えることができる。例えば、層変更ガイドは、少なくとも1つの製造されたメモリ装置(例えばデータ記憶装置320)に保存される複数のデータ・ポイントを具えることができ、複数のデータ・ポイントは、イソ輪郭の対を接続している、または、複合構造の第1表面から第2表面まで延在している3次元表面を定める。あるいは、層変更ガイドは、製造されたメモリ装置に保存される複数のデータ・ポイントを具えることができ、複数のデータ・ポイントは、イソ輪郭の対を接続している、または、複合構造の第1表面から第2表面まで延在している複数の線を定める。いくつかの実施形態において、層変更ガイド420a〜420fは、少なくとも1つのメモリ装置に格納され、数式を定めているデータを具えることができる。数式を用いて、層変更ガイドの少なくとも一部を生成する、例えば、イソ輪郭の対を接続している、または、複合構造の第1表面から第2表面まで延在している面または線の少なくとも一部を生成することができる。いくつかの実施形態では、層変更ガイド420a〜420fは、少なくとも1つのメモリ装置に格納されたデータ・ポイントおよび数式の組合せを具えることができる。層変更ガイドは、少なくとも1つの持続性コンピュータ可読媒体に格納されるデータとすることができる。同様に、イソ輪郭410a〜410fは、少なくとも1つの製造されたメモリ装置に格納されたデータ・ポイントおよび/または数式を具えることができる。
【0037】
イソ輪郭および層変更ガイドの計算後または計算中に、層構成計算機316は、層構成データを生成することができる。層構成データは、多層スタック内の各層の形状およびサイズを表すデータを具える。層構成計算機316は、層が通過する空間の位置を定める3次元データ・ポイント、例えば、x,y,zデータ・ポイントのアレイを生成することができる。データ・ポイントは、層を表す微細なメッシュまたは粗いメッシュ上に分布可能である。層構成計算機316は、3次元データ・ポイント間の層部分の形状を補間するために用いられる機能をさらに生成することができる。特定の実施形態において、層構成計算機316は、上述した通り、各層のための「平坦なパターン」データを生成する。層構成計算機316によって生成されたデータは、構造シミュレータ318に供給される、および/または、層構成データ380として出力されうる。各種実施形態では、層構成データ380は、次の検索および使用のために、データ記憶装置320に供給される。
【0038】
構造シミュレータ318は、層構成計算機316、イソ輪郭計算機312、層変更ガイド計算機314およびデータ記憶装置320の一部または全部からデータを受信することができる。受信されたデータを用いて、シミュレーションされた多層複合構造を生成することができる。いくつかの実施形態では、構造シミュレータ318は、データをCADツール340にエクスポートし、複合構造のグラフィック・シミュレーションを表示することができる。いくつかの実施形態では、構造シミュレータ318は、受信データを処理する、または、受信データをさらなる処理のために提供し、構造の使用中の条件をシミュレーションすることができる。例えば、機械の負荷、嵌合部分、設計制約準拠、流体力学および/または空気力学の分析は、構造シミュレータ318によって、または、構造シミュレータ318により提供されるデータに関する少なくとも1つの他のプロセッサによって実行可能である。
【0039】
多層250a〜250fによる複合構造の第1の充填の後、構造内の1つ以上の層を移動し、例えば、設計制約または指定された性能特性を満足する必要がある。1つ以上の層を移動する必要性は、シミュレーションされた構造の分析から明白になりうる。
【0040】
各種実施形態では、層変更ガイド420a〜420fを用いて、多層のスタック内で移動するときの層の範囲を決定するとともに、層の形状の変更を決定することができる。図4Aを参照して、スタック内で移動する層のサイズおよび構成における変化を決定するための層変更ガイドの使用を、より明らかにすることができる。例えば、容積の「第1充填」の間、層変更ガイド420a〜420fおよびイソ輪郭410a〜410fは、図2に記載したとおりに算出可能である。図4Aに示すように、少なくとも1つの層、例えば層250eを、第1表面部分210の近くの位置から第2表面部220の近くの位置まで移動することが望ましい。「移動」という用語は、この文脈において、比喩的に使われ、多層スタック内の異なる位置で同じ大きさの層を示すまたは選択することを意味する。図4Aを参照すると、層250eは、取り除かれ(但し、参考のために図面に示されている)、同様の大きさの層250e’が、図示されるように異なる位置で示されてる。次に、層250e’のための構成データが算出可能である。
【0041】
図4Aを参照して例を説明すると、層変更ガイド420eを計算過程で用いて、層250e’のための構成データを決定し、同様に、小さい層250eの再配置によって影響を受ける他の層、例えば、層250a’のための構成データを決定する。上述した実施形態にて説明したように、第1の充填の間、層変更ガイドは、多層スタックの層ごとに定められおよび/または算出される。例えば、層変更ガイド420eは、層250eのために算出される。一度特定の設計容積のために算出されると、たとえ層が多層スタック内でシャッフルされても、層変更ガイド420a〜420fは変化することができない。この例では、層変更ガイド420eを用いて、多層スタック内の任意の高さに位置する層250eと同様の大きさの層の空間範囲または外側の境界を少なくとも決定する。図示した実施形態では、層変更ガイド420eは、非平行な側面または線を有するので、層250eのサイズは、スタック内で再配置されるとき変化する。第2表面220の近くに位置するとき、少なくとも層250e’のサイズは、第1表面210の近くに位置するときの層250eのサイズと異なる。再配置された層の形状もまた異なりうる。層のサイズおよび形状におけるこの種の変化は、例えば、図4Cに示されるような複雑な構造においてより明らかになりうる。任意の層が複合層のスタック内で移動またはシャッフルするとき、層変更ガイドを用いて、その任意の層のサイズまたは範囲を決定することができる。
【0042】
層変更ガイド420a〜420fを用いて、多層スタック内の他の層の形状の変更を決定することもできる。図4Aを再度参照すると、層250a’は、層250e’に従って曲がらなければならないので、ドレーピング歪をピックアップする。層変更ガイドを、層構成データの計算において用いて、ドレーピング歪を、多層スタック内の1つ以上の層の再配置に影響される層に割り当てることができる。例えば、図4Aを参照して、所定の充填方向(例えば、表面220から表面210へ)に対して、層Lは、2Nドレーピング歪に割り当てられ、Nは、層変更ガイドに関連する層の数であり、この層変更ガイドは、層Lのための層変更ガイドの境界内にあり、層充填順序において初期または前の位置へ再配置される。層変更ガイドを用いて、層がピックアップするドレーピング歪の数、および、ドレーピング歪が層内のどこで発生するかを決定する。
【0043】
層変更ガイド420a〜420fを用いることのさらなる利点は、前の算出からの層構成データを再利用し、多層構造内で再配置される層の形状を決定することができる点である。図2Aおよび図4Aを参照すると、データの再利用が理解されうる。層250eが、例えば、第2表面220に沿った異なる位置へ「移動する」場合、層変更ガイド420eによって境界付けられた層250e’のためのデータは、再計算される必要はない。この領域のためのデータは、層250e’によって現在占領されている領域を、以前占領していた層250aのために前に算出された層構成データから入手可能である。したがって、層構成計算機316は、再配置された層250e’のための層構成データを算出する際、層変更ガイド420eによって境界付けられた層250aのためのデータの一部を単に再利用または複製すればよい。
【0044】
加えて、移動する層250a’のための大部分の層構成データは、層構成データの第1の算出からも入手可能である。層250aは、部分的には、層250bの一部の前の位置へ移動する。図4Aでは、変化した層は、層250a’として示される。図面から分かるように、層変更ガイド420eによって大体境界付けられた前の層250bのための層構成データは、層250a’のためのデータの一部として再利用可能である。層250a’のためのデータの他の部分は、層変更ガイド420eおよび420aによって境界付けられた領域間に、層250aのために前に算出された構成データを実質的に具える。層変更ガイド420eのところで、層250a’は、ドレーピング歪をピックアップする。ドレーピング歪は、ダブルの湾曲形状を表す1つ以上の選択されたドレーピング歪データセットを具えることができる。1つ以上の選択されたドレーピング歪データセットは、層250a’のための層構成データを算出する際、層250bおよび250aのために前に算出された構成データから、再利用されたデータにスプライス可能である。スプライシングは、スプライシングの近くで、層250bおよび250aのために前に算出された構成データの一部を置き換えることができるので、スプライシングは、不連続または突然の移行にならない。図4Aに示される例において、2つのドレーピング歪データセットを用いることができ、1つは、左側に見られるように、層250e’の上部で上方に曲がるためのものであり、もう1つは、右側に見られるように、層250e’の上部から下方に曲がるためのものである。いくつかの実施形態において、ドレーピング歪データセットの鏡対称バージョンが、「上方に曲がる」歪および「下方に曲がる」歪のために用いられうる。
【0045】
図4Aから、層250a’が、再配置された層250e’を乗り越えて上方に曲がり、その後、下方に曲がるとき、ドレーピング歪を被ることがわかる。ドレーピング歪は、1回以上この種の歪を被る層ごとに、層構成データにおいて算出され、かつ、構成可能である。例えば、N層上で歪められた任意の層は、2Nドレーピング歪を構成する層構成データ内に含まれうる。図5は、構造100のための層の並べ替えを示し、層250b’は、8つのドレーピング歪を被る。ドレーピング歪は、歪められた層が曲がる層の厚みと比例することができ、それぞれの量を層の寸法に加えて、ドレーピング歪を構成することができる。上述したように、層変更ガイド420a〜420fを用いて、どこでドレーピング歪が複合構造内の層に加えられなければならないかを決定することができる。
【0046】
上述した層構成算出の説明を考慮して、多層を有する複合構造の第1の充填の間に算出される大部分の層構成データは、1つ以上の層が層のスタック内で移動するとき、続く層構成算出に再生利用可能であるということを認識されたい。前に算出された層構成データを再利用することは、設計段階での計算効率を大幅に向上させることができるとともに、計算時間を減らすことができる。例示的実施形態において、層は、複合構造の第1の充填の間、識別可能であり(例えば、図2Aにおいて、下から層に1、2、3、4、5、6と番号付与したと仮定)、層の並べ替えは、層識別のシャッフルされた順序を多層設計ツール310に提供することによって実施可能である(例えば、図5において、下から、1、5、3、4、6、2となる)。層変更ガイドを用いて、スタック内で移動するときの各層の空間範囲、および、層がドレーピング歪をピックアップするか否かを識別し、それにより、新たな層順序における各層のための新たな層境界をゼロから算出する必要を除去する。層変更ガイドを用いて、並べ替えられた層用の層構成データを決定するために、再利用可能な前の層分布の前の層のための層構成データの部分を識別し、それにより、新たな層順序における各層のための層構成データをゼロから算出する必要を除去する。
【0047】
いくつかの実施形態では、構造は、複数のサブボリュームにさらに分割可能である。例えば、図4Cに示すようなより複雑な構造は、多数のサブボリュームに分割可能である。各サブボリュームは、本願明細書に記載されている方法に従って個別に処理可能である。層変更ガイドおよびイソ輪郭は、各サブボリュームのために計算可能である。層は、各サブボリューム内で充填され、並べ替えられる。多層設計ツール340は、サブボリュームの1つの中で少なくとも1つの層を再配置する命令を受信するように構成され、識別されたサブボリューム内で層を並べ替え、並べ替えられた層のための層構成データを決定するように構成されうる。いくつかの実施形態において、多層設計ツール340は、各サブボリュームのための層構成データを独立して計算するように構成可能である。構造をサブボリュームに分割することおよび次の計算は、複雑な構造のための層構成の決定を容易にすることができる。
【0048】
複雑な形
容積を複合材料の層で充填するステップは、より複雑な形状の構造を充填するステップを含むこともできる。例えば、容積の充填は、自己交差している(self-intersecting)層になる場合があり、自己交差している層は、第1表面(例えば、下部表面)から容積の一端周辺および第2表面(例えば、上部表面)を覆うことによって、第1表面および第2表面の少なくとも一部をカバーする。そのような場合、層は、自己交差し、第1表面または第2表面の一方で短縮する必要がありうる。イソ輪郭は、「トリムカーブ」を提供し、第1表面または第2表面上の層の短縮を導くことができる。いくつかの実施形態において、この種のトリミングが第1表面または第2表面上で起こるか否か交互に入れ替えることができ、これは、第1表面または第2表面のイソ輪郭を用いて層をトリミングするか否か、交互に入れ替えることによって達成可能である。
【0049】
層の複雑な再編成が発生するさらなる実施形態が存在しうる。例えば、単一の層は複数回覆われ、または、多層は一度覆われ、その結果、1つ以上の層は、他の層の部分に重なることができる。層の覆いは、層が後続の再構成に接続されるようにイソ輪郭を抑制または可能にすることによって実行可能である。
【0050】
方法の実施形態
図6のフロー図は、複合構造のための多層の分布を決定する方法700の実施形態を示す。方法は、上述した多層設計ツール310として動作するように構成された少なくとも1つのプロセッサによって実行可能である。複合構造を充填するために多層の分布を決定する方法の実施形態は、持続性コンピュータ読み取り可能な媒体にエンコードされるコンピュータ実行可能命令を具えることができる。
【0051】
実施形態の方法700は、設計データを受信するステップ710を含むことができる。設計データは、構造データ、層特性および設計規則を含むことができるが、これらに限定されることはない。構造データは、複合構造のサイズおよび形状を定めることができる。層特性は、構造を充填する際に用いられる層の各々を特徴づける上述した少なくとも1つ以上パラメータを含むことができる。設計規則は、1つの充填方向、あるいは、構造が複数のサブボリュームに分割されるときは複数の充填方向を含むことができ、構造内の特定の層の位置(例えば、大きい層、小さい層、特定の複合材料の層などの位置)を特定している規則、複合構造の所望の機械的特性、および/または、構造の所望の空気力学的または流体力学的な特性をさらに含むことができる。設計規則は、複合構造の中間面および中間面に関連する少なくとも1つの特性を特定することができる。各種実施形態において、少なくとも一部の設計データは、CADツール340から受信可能710である。
【0052】
方法700は、イソ輪郭を決定するステップ715と、複合構造用の少なくとも1つの層変更ガイドを算出するステップ720と、を含むことができる。図4Aおよび図4Bに関連して、イソ輪郭および構造用の層変更ガイドを決定する実施形態は、上述されている。特定の実施形態では、イソ輪郭対が算出され、イソ輪郭対を用いて、イソ輪郭対ごとに層変更ガイドが算出される。あるいは、層変更ガイドが算出され、層変更ガイドを用いてイソ輪郭対が算出される。さらに、層変更ガイドおよびイソ輪郭対は、互いに依存して算出可能である。多層スタックの層ごとに算出される1つの層変更ガイドが存在し、各層変更ガイドは、多層構造内の複数の位置に配置されるそれぞれの層の寸法を識別することができる。いくつかの実施形態では、多層変更ガイド(例えば、イソ輪郭対に関連し、各層のために算出される複数の最短距離の直線または曲線)が存在しうる。イソ輪郭を決定するステップ715および少なくとも1つの層変更ガイドを算出するステップ720は、複合構造の外面を第1部分210および第2部分220に分割するステップを含むことができる。
【0053】
方法700は、複合構造内で分布した層の各々のための層構成データを計算するステップ730をさらに含むことができる。層構成データは、各層の寸法および形状を表すことができ、加えて、上述したとおり、「平坦なパターン」の寸法を含む。イソ輪郭を決定するステップ715と、層変更ガイドを算出するステップ720と、層構成データを計算するステップ730と、は、複合材料の多層を有する複合構造の第1の充填の間か後に実行可能である。第1の充填は、進歩的なオフセットの方法に従って行われ、または、容積を充填するのに適した任意の方法で行われうる。層構成データを計算するステップ730は、多層複合構造を設計する過程において複数回実行可能である。層構成データを計算するステップ730は、新しい層構成データの算出における援助としてイソ輪郭および層変更ガイドを使用するステップと、構造内の層の前の分布を表す、前に算出された層構成データの少なくとも一部を再利用するステップと、を含むことができる。層構成データを計算するステップ730は、層のドレーピング歪のため少なくとも1つの層のサイズの増加を算出するステップをさらに含むことができる。
【0054】
方法は、層分布が決定され、層構成データが算出された後、複合構造を分析するステップ(図示せず)を含むことができる。分析するステップは、自動化、半自動化、または、手動でも可能である。例えば、分析するステップは、多層設計ツール310によって、または、設計技師によって、特定の層が設計規則に従って配置されているか否か、または、層分布が、設計規則で提供された機械的、流体力学的および/または空気力学的な仕様を満足しているか否かを検査するステップを含むことができる。
【0055】
方法700は、命令を受信するステップと、スタック内で1つ以上の層を再配置するか否かを決定するステップ750と、命令に従って並べ替えるステップ740と、をさらに含むことができる。層を再配置するための命令は、層の候補分布が設計規則または性能仕様に従わないと決定されると、ユーザ入力から、または、多層設計ツール310から受信可能である。
【0056】
1つ以上の層を再配置するための命令を受信するステップ750と、層を並べ替えるステップ740と、層構成データを計算するステップ730と、分析するステップと、は、複合構造のための設計段階の間、複数回実行可能である。例えば、設計プロセスは反復的とすることができ、適切な層分布が達成されるまで、1つ以上の層を再配置するステップおよび層構成データを再計算するステップは繰り返される。適切な層分布が得られると、例えば、複合構造が、設計規則の大部分または全部を満足する分布が得られると、方法700は、複合構造の性能をさらにシミュレーションする際に用いられる出力として、多層用の層構成データを提供するステップ760、複合構造を視認するステップ、データを格納するステップ、個々の層を切断するステップ、および/または、構造を製造するステップを含むことができる。
【0057】
ハードウェア/ソフトウェア実装
本発明の上述した実施形態は、多数の方法のいずれかで実施可能である。例えば、実施形態は、ハードウェア、ソフトウェアまたはそれらの組み合わせを用いて実施可能である。ソフトウェアで実施されるとき、ソフトウェアコードは、単一のコンピュータにおいて提供されるか複数のコンピュータに分散されるかに関係なく、任意の適切なプロセッサまたはプロセッサの集合で実行可能である。各種実施形態において、ソフトウェアは、プロセッサまたはプロセッサの集合を適応させ、実施形態の1つ以上のステップを実行する。
【0058】
さらに、コンピュータが多くの形態、例えばラックマウント式のコンピュータ、デスクトップ・コンピュータ、ラップトップ・コンピュータまたはタブレット型コンピュータのいずれかで実施可能であることを理解されたい。加えて、コンピュータは、一般にコンピュータとみなされていないが、適切な処理能力を有する装置、例えば、設計目的に適した電子機器、パーソナル携帯情報機器(PDA)、多機能電話または他の任意の適切な携帯型または固定型の電子装置において実施可能である。
【0059】
また、コンピュータは、1つ以上の入出力装置を有することができる。これらの装置を用いて、とりわけ、ユーザ・インタフェースを提示することができる。ユーザ・インタフェースを提供するために用いられる出力装置の例としては、プリンタまたは出力の視覚的表現用のディスプレイ画面、スピーカまたは出力の聴覚的表現用の他の音発生装置が挙げられる。ユーザ・インタフェースに用いられる入力装置の例としては、キーボードおよびポインティングデバイス、例えばマウス、タッチパッド、タッチスクリーン、データポートおよびディジタイザ・タブレットが挙げられる。他の例として、コンピュータは、音声認識による、または、他の可聴形式の入力情報を受信することができる。入出力装置を用いてデータを受信し、供給することができる。
【0060】
本発明の実施形態を実行するように構成されたコンピュータは、ローカル・エリア・ネットワーク、ミディアム・エリア・ネットワークまたはワイド・エリア・ネットワーク、例えばエンタープライズ・ネットワークまたはインターネットを含む任意の適切な形態の1つ以上のネットワークによって相互接続可能である。この種のネットワークは、任意の適切な技術に基づくことができ、任意の適切なプロトコルに従って動作することができ、無線ネットワーク、有線ネットワークまたは光ファイバーネットワークを含むことができる。
【0061】
本願明細書において概説される様々な方法またはプロセスは、様々なオペレーティングシステムまたはプラットフォームの任意の1つを使用する1つ以上のプロセッサ上で実行可能であるソフトウェアとしてエンコード可能である。加えて、この種のソフトウェアは、多くの適切なプログラミング言語および/またはプログラミングまたはスクリプト用ツールのいずれかを用いて記述され、さらにフレームワークまたはバーチャル・マシンで実行される実行可能な機械言語または中間コードとしてコンパイル可能である。
【0062】
この点で、本発明は、1つ以上のコンピュータまたは他のプロセッサで実行されるとき、上述した本発明の各種実施形態を実施する方法を実行する1つ以上のプログラムによってエンコードされる持続性コンピュータ可読媒体(または複数のコンピュータ可読媒体)(例えば、コンピュータ・メモリ、1つ以上のフロッピーディスク、コンパクトディスク(CD)、光ディスク、デジタルビデオディスク(DVD)、磁気テープ、フラッシュメモリ、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイまたは他の半導体装置の回路構成、他の持続性有形コンピュータ記憶媒体)として、実施可能である。コンピュータ可読媒体を移動可能とすることにより、格納されたプログラムは、1つ以上の異なるコンピュータまたは他のプロセッサ上にロードされ、上述したように様々な本発明の態様を実施することができる。本明細書において、「持続性コンピュータ可読記憶媒体」という用語は、製造(すなわち、製造物品)または機械であるとみなされうるコンピュータ可読媒体のみを含む。
【0063】
「プログラム」または「ソフトウェア」という用語は、一般的な意味で本願明細書において用いられ、コンピュータまたは他のプロセッサが上述したように様々な本発明の態様を実施するようにプログラムするために使用可能な任意のタイプのコンピュータコードまたはコンピュータ実行可能命令のセットを意味する。加えて、この実施形態の一態様によれば、実行時、本発明の方法を実行する1つ以上のコンピュータ・プログラムは、単一のコンピュータまたはプロセッサに存在する必要はなく、多くの異なるコンピュータまたはプロセッサの間で、モジュール方式で分散し、本発明の様々な態様を実施することができる点を認識されたい。
【0064】
コンピュータ実行可能命令は、多くの形で1つ以上のコンピュータまたは他の装置によって実行される例えばプログラム・モジュールとすることができる。一般的に、プログラム・モジュールは、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含み、特定のタスクを実行したり、あるいは特定の抽象的データ型を実現する。概して、プログラム・モジュールの機能は、各種実施形態における要望通りに、結合または分散可能である。
【0065】
また、データ構造は、コンピュータ可読媒体に任意の適切な形で格納可能である。説明を簡単にするために、データ構造内の位置によって関連するフィールドを有するデータ構造が示される。この種の関係は、フィールド間の関係を伝えるコンピュータ可読媒体における位置を有するフィールドに記憶を割り当てることによって同様に達成可能である。しかしながら、任意の適切な機構を用いて、データ構造のフィールドにおける情報の関係を定め、ポインタ、タグまたはデータ・エレメントの関係を定める他の機構を用いることを含む。
【0066】
本発明の様々な態様は、単独または組み合わせて用いることができ、また、上述した実施形態では特に議論されず、それゆえ、上述した明細書または図面のコンポーネントの配置への適用は、制限されないような様々な構成で用いられる。例えば、一実施形態に記載された態様は、他の実施形態に記載された態様と、任意の方法で組み合わせられる。
【0067】
また、本発明は、少なくとも一例が提供された方法として実施可能である。方法の一部として実行されるステップは、任意の適切な方法で順序付けられる。したがって、ステップが図示とは異なる順番で実行される実施形態を構成することができ、図示の実施形態では順次のステップとして示された複数のステップを、ほぼ同時に実行することもできる。例えば、連続的に示された2つ以上のステップは、並列して動作する別々の計算スレッドで実行可能である。
【0068】
特許、特許出願、記事、本、論文およびウェブ・ページを非限定的に含む、この出願で挙げられるすべての文献および類似材料は、この種の文献および類似材料の形式に関係なく、参照としてその全体が取り込まれる。取り込まれた文献および類似材料の1つ以上が、この出願の定義された用語、用語の使用、記載されている技術等と異なる、または、矛盾する場合、この出願が優先される。本願明細書で用いられるセクション見出しは、構成目的のみのためであって、いかなる形であれ記載されている内容を制限するものと解釈されてはならない。本発明の教示が各種実施形態および例と関連して記載されるが、本発明の教示がこの種の実施形態または例に限定されていることは意図していない。一方、本発明の教示は、当業者が理解できるように様々な代替物、変形例、均等物を含む。請求項は、記載がない限り、記載されている順番または要素に限定されているものとして解釈してはならない。形および細部の様々な変更が、添付の請求の範囲の精神と範囲から逸脱することなく当業者によってなされうることを理解されたい。以下の請求の範囲内のすべての実施形態およびその等価物が請求される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6