(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012617
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】押出成形可能なウレタン剥離コーティング
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20161011BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20161011BHJP
C09D 129/04 20060101ALI20161011BHJP
C09D 123/36 20060101ALI20161011BHJP
C09J 7/02 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
C09K3/00 R
C09D175/04
C09D129/04
C09D123/36
C09J7/02 Z
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-542067(P2013-542067)
(86)(22)【出願日】2011年11月28日
(65)【公表番号】特表2014-504314(P2014-504314A)
(43)【公表日】2014年2月20日
(86)【国際出願番号】US2011062174
(87)【国際公開番号】WO2012074890
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年11月6日
(31)【優先権主張番号】61/419,363
(32)【優先日】2010年12月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ユ
(72)【発明者】
【氏名】ユスト, デイヴィッド ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ワン, レイ
(72)【発明者】
【氏名】エムスランダー, ジェフリー オー.
(72)【発明者】
【氏名】ディジオ, ジェームズ ピー.
【審査官】
安藤 達也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−043655(JP,A)
【文献】
特開平01−308473(JP,A)
【文献】
特開昭55−142096(JP,A)
【文献】
特開2005−146080(JP,A)
【文献】
特開2004−360156(JP,A)
【文献】
特開2006−036882(JP,A)
【文献】
特開2007−204640(JP,A)
【文献】
特開2000−303019(JP,A)
【文献】
米国特許第05525375(US,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00397622(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D1/00〜C09D201/10
B32B1/00〜B32B43/00
C09J1/00〜C09J201/10
C09K3/00
C08L1/00〜C08L101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性ヒドロキシル基を含有するポリビニルポリマー及び脂肪族イソシアネートから誘導されるウレタンポリマーを含む剥離剤と、
担体ポリマーであって、前記担体ポリマーの50重量%超が非オレフィン性ポリマーである担体ポリマーと、
を含むブレンドを含み、
前記活性ヒドロキシル基を含有するポリビニルポリマーが、エチレンビニルアルコールコポリマーであり、
前記非オレフィン性ポリマーがポリウレタンを含む、剥離材料。
【請求項2】
(i)活性ヒドロキシル基を含有するポリビニルポリマー及び脂肪族イソシアネートから誘導されるウレタンポリマーを含む剥離剤、及び、(ii)担体ポリマーであって、前記担体ポリマーの50重量%超が非オレフィン性ポリマーである担体ポリマー、を含むブレンドを含む剥離コーティングと、
前記剥離コーティングの少なくとも1つの主表面と密接している接着剤と、
を含み、
前記活性ヒドロキシル基を含有するポリビニルポリマーが、エチレンビニルアルコールコポリマーであり、
前記非オレフィン性ポリマーがポリウレタンを含む、物品。
【請求項3】
(i)活性ヒドロキシル基を含有するポリビニルポリマー及び脂肪族イソシアネートから誘導されるウレタンポリマー、及び、(ii)担体ポリマーであって、前記担体ポリマーの50重量%超が非オレフィン性ポリマーである、担体ポリマー、を含む組成物をブレンドすることと、
ブレンドを押出成形又は鋳造して、シートを形成することと、
所望により、前記シートを加熱することと、
前記シート上に接着剤を塗布して、接着性物品を形成することと、
を含み、
前記活性ヒドロキシル基を含有するポリビニルポリマーが、エチレンビニルアルコールコポリマーであり、
前記非オレフィン性ポリマーがポリウレタンを含む、接着性物品を作製する方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
[0001]ビニルアルコール及びイソシアネートから誘導されるウレタンポリマーを含む剥離材料を調製する方法、並びに非オレフィン性担体ポリマーが説明される。
【0002】
[背景]
[0002]従来、剥離ライナー、即ち粘着力の弱い裏材(LAB、即ち粘着テープの裏側コーティング)などの剥離層は、フィルム又は紙などの基材への剥離剤溶液のコーティング及び乾燥によって形成された。しかしながら、近年では、ポリオレフィンをブレンドした剥離剤を通常含む剥離層が押出成形される、溶剤を含まない選択に向かう傾向がある。
【0003】
[0003]シリコン化合物は、ポリオレフィン樹脂と混合した場合、剥離剤として特に有効である。しかしながら、シリコン化合物は、粘着シートの粘着表面上に移動する場合がある可能性があり、使用されると、電子部品において電気的接触の不良などの有害な影響を生じさせる場合がある。更に、自動車の塗装の前に表面保護被膜として使用された場合、塗装プロセスにおいて、「クレーター/フィッシュアイ」の原因となり得る。これらの理由により、非シリコン系剥離剤が望ましい。
【0004】
[0004]米国特許第7,193,028号(Kaifuら)は、剥離剤が脂肪族イソシアネート及びエチレン/ビニルアルコールコポリマーの反応生成物を含む、非シリコン系剥離剤の調製を説明する。次いで、この剥離剤は、使用のために基材の上にコーティングされる。
【0005】
[0005]米国特許第6,146,756号(Ausenら)は、剥離成分と反応するグラフト部位を有する主鎖ポリマーを含む、非シリコン系のホットメルトプロセス可能な剥離材料の調製を説明する。一実施形態では、これらの剥離材料は、オレフィン含有ポリマーとブレンドされてもよい。
【0006】
[概要]
[0006]押出成形可能であり、かつ改善された安定性などの性能及び/又はリサイクル可能性などの使用に関する利点をもたらすことができる剥離材料を製造することが望まれる。
【0007】
[0007]一態様では、剥離材料は、活性ヒドロキシル基及び脂肪族イソシアネートを含有するポリビニルポリマーから誘導されるウレタンポリマーを含む剥離剤、並びに担体ポリマーであって、担体ポリマーの50重量%超が非オレフィン性である担体ポリマー、を含むブレンドを含んで提供される。
【0008】
[0008]一実施形態では、担体ポリマーは、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ナイロン、及びポリイミドのうちの少なくとも1つから選択される。
【0009】
[0009]別の態様では、(i)活性ヒドロキシル基及び脂肪族イソシアネートを含有するポリビニルポリマーから誘導されるウレタンポリマー、及び担体ポリマーの50重量%超が非オレフィン性である担体ポリマーを含む剥離剤を含むブレンド、並びに(ii)剥離シートの少なくとも1つの主表面と密接している接着剤、を含む剥離材料を含む物品が提供される。
【0010】
[0010]更に別の態様では、活性ヒドロキシル基及び脂肪族イソシアネートを含有するポリビニルポリマーから誘導されるウレタンポリマー、並びに担体ポリマーであって、担体ポリマーの50重量%超が非オレフィン性である担体ポリマー、を含む組成物をブレンドすること、このブレンドを押出成形又は鋳造して、シートを形成すること、所望によりこのシートを加熱すること、並びにこのシート上に接着剤を塗布して、粘着性物品を形成すること、を含む、粘着性物品を作製する方法が提供される。
【0011】
[0011]上記の概要は、各実施形態を説明することを目的とするものではない。本発明の1つ以上の実施形態の詳細を以下の説明文においても記載する。その他の特徴、目的、及び利点は、特許明細書及び特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】[0012]本開示による、ロール状構造の粘着性物品の側面図の概略図。
【
図2】[0013]本開示による粘着性物品の拡大断面図。
【0013】
[詳細な説明]
[0014]本明細書において使用するところの用語、
「a」、「an」、及び「the」は互換可能に使用され、1又はそれよりも多くを意味する。
【0014】
「及び/又は」は、記載される事例の一方又は両方が起こり得ることを示すために使用され、例えば、A及び/又はBは、(A及びB)と(A又はB)とを含む。
【0015】
[0015]更に本明細書においては、端点によって表わされる範囲には、その範囲内に含まれる全ての数値が含まれる(例えば、1〜10には、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98などが含まれる)。
【0016】
[0016]更に本明細書においては、「少なくとも1」の記載には、1以上の全ての数値が含まれる(例えば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100など)。
【0017】
[0017]本明細書で使用されるとき、「剥離材料」は、剥離コーティングに形成されることができる組成物を意味する。
【0018】
[0018]「剥離コーティング」は、接着剤と剥離コーティングとの間の界面で実質的に分離を生じることができるように、感圧性接着剤(PSA)などの接着剤に対して低い粘着力を呈する要素、好ましくはフィルムを意味する。テープ用途においては、剥離コーティングは「低粘着性裏材」又はLABと呼ばれることが多い。LABは、一般的に、約50N/dm未満の剥離力の値を有し、テープがテープ自体の上に巻きつけられ、使用にはテープロールの巻きをほどくことが必要とされる粘着テープのロールに使用することができる。剥離コーティングは、ラベル又は医療用包帯(dressing bandages)などその他の粘着性物品にも「ライナー」として使用することができ、この場合、粘着性物品は、一般にロール状構造物に対してシート状構造物として供給される。ライナー用途のために使用される剥離コーティングは、一般的に約5N/dm未満の剥離力の値を有する。
【0019】
[0019]本開示は、剥離剤及び非オレフィン性担体ポリマーのブレンドを含む剥離材料を目的とする。
【0020】
[0020]本開示の剥離剤は、脂肪族イソシアネートと活性ヒドロキシル基を含有するポリビニルポリマーとの反応により調製される。
【0021】
[0021]本開示で使用される脂肪族イソシアネートの脂肪族基は、特に限定はされず、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、などを含んでもよい。脂肪族基は、分枝鎖状であってもよいが、直鎖状脂肪族基がより好ましい。脂肪族基は、少なくとも8、10、又は更には12の炭素を含み得る。通常、脂肪族基は、30以下、25以下、又は更には20以下の炭素原子を含む。
【0022】
[0022]例示的な脂肪族イソシアネートには、モノアルキルイソシアネート、例えばオクチルイソシアネート又はドデシルイソシアネート(ラウリルイソシアネート)又はオクタデシルイソシアネート(ステアリルイソシアネート)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0023】
[0023]脂肪族イソシアネートは、単独で、又は2つ以上の組み合わせで使用されてもよい。
【0024】
[0024]活性ヒドロキシル基を含有するポリビニルポリマーは、例えば、エチレンビニルアルコールコポリマーであってよい。
【0025】
[0025]活性ヒドロキシル基を含有するポリビニルポリマーは、特に限定はされず、一般に10000〜500000グラム/モルの重量平均分子量を有する。本開示で使用されるポリビニルポリマーは、100〜3,000、好ましくは150〜2,000の重合度、及び50〜100%、好ましくは60〜100%のけん化度を有する。ポリビニールアルコールポリマーの市販の例としては、Nippon Synthetic Chemical Industry Co.,Ltd.によって生産される「GOHSENOL」、及びEval Compary of Americaによって生産される「EVAL」の商品名で入手可能なものが挙げられる。
【0026】
[0026]一実施形態では、脂肪族イソシアネートとビニルアルコールポリマーとの反応は、溶媒を含まない。
【0027】
[0027]脂肪族イソシアネートのビニルアルコールポリマーに対する割合は、特には制限されないが、脂肪族イソシアネートは、一般にビニルアルコールポリマーのヒドロキシル基に対して0.5〜1.5当量、又は0.6〜1.1当量である。
【0028】
[0028]脂肪族イソシアネートのポリビニルポリマーとの反応は、日本国特許第55−142096号(Kumagaiら)、米国特許第5,990,238号(DiZioら)及び米国特許第6,146,756号(Ausenら)に更に記載される。
【0029】
[0029]本開示では、剥離剤は、剥離材料を形成するために、担体ポリマーとブレンドされる。本開示の担体ポリマーは、非オレフィン系のポリマーである。この担体ポリマーは、エラストマー、熱可塑性エラストマー、プラスチックであってよい。
【0030】
[0030]例示的な非オレフィン系ポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリアミド(ナイロンなど)、ポリイミド、及びそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、担体ポリマーは、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリイミド、及びそれらの組み合わせから本質的になる。これらから本質的になるとは、担体ポリマーが、主としてポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリイミド、又はそれらの組み合わせから成り立っていることを意味するが、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリイミド、又はそれらの組み合わせからなるが、10%未満、5%未満、1%未満、又は更には0.1%未満の量で、あるいはポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリイミド、又はそれらの組み合わせの所望のバルク特性が変わらないままである限り、少量の他のポリマーも存在してもよい。
【0031】
[0031]非オレフィン系ポリマーは、その改善された化学的耐性(例えば、有機溶媒に対する)、そのリサイクルされる能力、その改善されたテンタビリティ(tenterability)(即ち、引き伸ばされる能力)、及びより高い熱安定性(そのより高いガラス転移温度及びより高い融点からもたらされる)ゆえに、オレフィン系ポリマーよりも有利である場合がある。例えば、担体ポリマーの軟化温度が低い場合(一部のオレフィン系ポリマーの場合など)、剥離コーティング中の、接着剤に接触するこれらのポリマーは、50〜70℃の温度を使用する熱老化実験におけるような、周囲より高い温度に曝露されたときに粘着力の増大を示す場合がある。これは、かかるポリマーが、LABの剥離ライナーの剥離コーティングにおいて実用的に使用されるのを妨げる可能性がある。
【0032】
[0032]一実施形態では、担体ポリマーは、少量(換言すれば、50%未満、25%未満、10%未満、5%未満、又は更には2%未満)のオレフィン系ポリマーを含む。一実施形態では、担体ポリマーは、オレフィン系ポリマーを実質的に含まない。オレフィン系ポリマーを実質的に含まないとは、担体ポリマーが、1%未満、0.5%未満、又は更には0.1%未満のオレフィン性ポリマーを含むことを意味する。オレフィン系ポリマーのかかる例としては、エチレン/ビニルコポリマー、変性エチレン/酢酸ビニルコポリマー、及び/又はポリオレフィン(例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン)が挙げられる。
【0033】
[0033]一実施形態では、担体ポリマーは、少量(換言すれば、50%未満、25%未満、10%未満、5%未満、又は更には2%未満)のポリ塩化ビニルポリマーを含む。一実施形態では、担体ポリマーは、ポリ塩化ビニルポリマーを実質的に含まない(換言すれば、%未満、0.5未満、又は更には0.1%未満)。
【0034】
[0034]剥離剤と担体ポリマーとのブレンドを調製するために、任意の適切な方法を使用することができる。剥離剤と担体ポリマーとをブレンドすることは、これらのポリマーの実質的に均質な分散をもたらす任意の方法により行うことができる。例えば、剥離剤及び担体ポリマーは、溶融ブレンド、溶媒ブレンド、又は任意の適切な物理的手段によりブレンドすることができる。
【0035】
[0035]本開示による剥離材料は、剥離剤及び担体ポリマーに加えて、必要に応じて様々な添加剤を含有してもよい。消泡剤、増粘剤、界面活性剤、潤滑剤、有機粒子、無機粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、別のポリマー化合物、及び架橋剤などの添加剤が、本開示の目的を損なわない範囲で含有されてよい。
【0036】
[0036]本開示の剥離材料を得るために、好ましくは押出成形機を使用して調製されるが、任意の適切な反応器を使用することができる。剥離材料は、様々な形態で押出成形することができる。例えば、剥離材料は、後続の基材へのホットメルト用途のために、引き続きペレット形状に形成することができるストランドに形成されてもよい。あるいは、剥離剤は、剥離コーティングの形態で押出成形されてもよい。この実施形態では、剥離材料は、所望により、1つ以上の材料と共押出成形されてよい。例えば、剥離材料は、支持層(例えば、裏材の材料)、並びに所望される場合は、結合層及び/又は粘着性材料と共押出成形することができる。
【0037】
[0037]押出成形された剥離材料の厚さは、かなり広い範囲内で異なり得る。例えば、コーティングの厚さは、0.1マイクロメートル(又はそれ未満)(μm)から所望の厚さまで異なり得る。好ましくは、剥離層は、厚さ約1μm未満である。剥離材料が支持層の上に押出成形された後で、剥離コーティングされたフィルムを順応させる(orienting)ことによって、塗布された剥離コーティングの厚さを、著しく減少させることができる。
【0038】
[0038]一実施形態では、剥離材料は、押出成形の後、引き伸ばされて(又は順応させて)、結果として薄く(例えば、500、200、100、50、又は更には25nm)、均一な(即ち、10%、5%、2%、1%、又は更には0.5%の変動率のクロスウェブ)フィルムをもたらすことができる。これは、中でもコストを低減するのに有利であり得る。
【0039】
[0039]本開示の剥離材料は、一般に、例えば、シート、繊維、又は成形された物であり得る、固体支持体上の剥離コーティングとして使用することができる。好ましい支持材料の1つのタイプは、テープ、ラベル、包帯など、粘着性コーティングされた物品(例えば、感圧性の粘着性コーティングされた物品)のために使用されるものである。剥離材料は、適切な可撓性の又は柔軟性のない支持材料の少なくとも1つの主表面(通常は表面全体)の少なくとも一部に塗布されてよい。有用な可撓性支持材料としては、紙、プラスチックフィルム、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、酢酸セルロースなどが挙げられる。
【0040】
[0040]支持材料は、合成繊維若しくは綿などの天然材料、又はそれらのブレンドのより糸で形成された織布であることもできる。あるいは、支持材料は、合成繊維若しくは天然繊維、又はそれらのブレンドのエアレイドウェブなどの不織布であってもよい。加えて、適切な支持材料は、金属、箔、又はセラミックシート材料から形成することができる。支持材料への剥離コーティングの付着を補助するために、当該技術分野において既知の下塗り塗料を利用することができる。
【0041】
[0041]剥離材料が支持層と共押出成形された場合、又はポリマー支持層上に押出成形コーティングされた場合、用途によっては、順応させ剥離コーティングされた基材を形成するために、剥離コーティングの押出成形後に支持層が少なくとも1つの方向に順応できるのが好ましい場合がある。かかる順応可能なフィルムは、当該技術分野において既知である。本明細書で使用されるとき、「順応させた」という用語は、結晶融点より低い温度で引き伸ばすことによってポリマーを強化することを意味する。
【0042】
[0042]ホットメルト処理可能な結合層を使用して、例えば、共押出成形された剥離材料と裏材との層間接着を改善することができる。有用な結合層の例としては、変性エチレン/酢酸ビニルコポリマー(例えば、米国デラウェア州ウィルミントンのDuPont Chemical Co.から「BYNEL CXA 1123」の商品名で入手可能)、マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン/アクリル酸コポリマー、及び他の材料が挙げられる。
【0043】
[0043]本開示の剥離材料を含む粘着性コーティングされた物品を調製する場合、任意の適切な接着剤を使用することができる。本開示の剥離材料を含有する物品の調製において有用な接着剤としては、溶媒コーティングされた接着剤系、水性接着剤系、ホットメルト処理可能な接着剤系、及び放射線活性化接着剤系が挙げられる。一実施形態において、接着剤は感圧性接着剤である。感圧性接着剤は、指でかけられるより小さい圧力で接着し、かつ永久的に粘着性であり得る。感圧性接着剤は、下塗り塗料、粘着性付与剤、可塑剤などとともに使用することができる。感圧性接着剤は、好ましくはその通常の乾燥状態において十分に粘着性があり、その意図される使用に対する所望の粘着力、凝集力、引き伸ばし性、弾性、及び強度の平衡状態を有する。当業者は、多様な感圧性接着剤を配合する方法を理解している。例示的な接着剤としては、ゴム(天然ゴム、ブチルゴム、及びシリコーンゴムなど)、ニトリル、アクリレート、(アクリル酸及びアクリルアミドなどのモノマー)、スチレンブロックコポリマー(スチレンブタジエンスチレン、スチレンイソプレンスチレン、スチレンブタジエンランダム、スチレンエチレン/ブチレンスチレン、及びスチレンエチレン/プロピレンなど)、ポリウレタン、ポリイソブチレン、オレフィン系接着剤(オレフィンブロックコポリマーなど)、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0044】
[0044]本開示で使用される接着剤は、押出成形可能であり得、例えばテープを形成する場合に剥離材料及び裏材材料と共押出成形されることができる。これらは、所望される場合、塗布後に架橋されてもよい。接着剤は、押出成形技法により塗布されるのが好ましいが、接着剤は、様々な他の技法により塗布されてもよい。剥離コーティングとだけ押出成形されてもよく、又は支持層及び剥離コーティングと共押出成形されてもよい。あるいは、すでに存在する表面上に押出成形されてもよい。
【0045】
[0045]本開示の剥離コーティングは、感圧性接着剤(PSA)テープのための低粘着性裏材(LAB)などの様々な形式で使用することができる。例えば、
図1に示すように、テープのロール10は、可撓性の支持層11、支持層の一方の主表面(即ち、第1の主表面)上の感圧性接着剤コーティング12、及び支持層の主表面と反対側(即ち、第2の主表面)の剥離コーティング14、を含む。剥離コーティングは、上述の剥離材料から形成される。テープは、感圧性接着剤が剥離コーティングと剥離可能に接触するように、ロール状に巻かれる。
図2は、テープ10(
図1)の一部の分解断面図である。ここで、
図2を参照すると、テープ20は、支持層21、感圧性接着剤22、及び剥離コーティング23、を含む。剥離コーティング23は、感圧性接着剤が上にコーティングされた支持材料の表面よりも、感圧性接着剤に対して低い固有接着力をもたらす。これにより、支持材料から感圧性接着剤を取り除かずに、又は移動させずに、ロールからテープの巻きをほどくことができる。別の形式は、2枚の剥離ライナーの間に感圧性接着剤のフィルムを含む移動テープであり、少なくとも一方は、上述の剥離材料と接触する。別の形式では、感圧性接着剤は、剥離材料の両方の主表面と密接している。
【0046】
[0046]一実施形態では、粘着性物品は、接着剤と剥離コーティングとの間に下塗り層を実質的に含まない。
【0047】
[0047]本開示の剥離コーティングを含む特に好ましい物品は、テープ、ラベル、巻かれた包帯、及び医療グレードのテープである。
【実施例】
【0048】
[0048]本開示の利点及び実施形態を以下の実施例によって更に例示するが、これら実施例において列挙される特定の材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。これらの実施例では、全ての比率、割合及び比は、特に断らないかぎり重量に基づいたものである。
【0049】
材料はいずれも、例えば、Sigma−Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から市販されているものか、あるいは特に断らない又は明らかでない限り、当業者には既知のものである。
【0050】
[0050]本出願及び以下の実施例では、以下の略号が使用される:g=グラム、kg=キログラム、min=分、mol=モル、cm=センチメートル、mm=ミリメートル、mL=ミリリットル、MPa=メガパスカル、L=リットル、Nm=ニュートンメートル、N/dm=ニュートン/デシメートル、及びwt=重量である。
【0051】
[0051]初期剥離及び経年剥離に対する試験方法
初期剥離試験は、本開示によって調製された剥離材料の、剥離材料が可撓性の粘着テープに積層された直後の有効性を測定した。経時剥離試験は、本開示によって調製された剥離材料の、剥離材料が可撓性の粘着テープに積層され、次いで49℃で7日間経時した後の有効性を測定した。初期剥離値又は経時剥離値は、可撓性の粘着テープを、剥離材料から、特定の角度及び除去速度で除去するために必要とされる力の定量的尺度である。この力は、1デシメートル当たりのニュートン(N/dm)で表される。別途記載しない限り、初期剥離値及び経時剥離値を測定するために使用される粘着テープは、St.Paul,MNの3M Companyから「3M SCOTCHCAL 7725−13」の商品名で市販されているアクリル接着剤を有するビニルフィルムであった。
【0052】
[0052]本開示による剥離材料の当初の剥離値及び経時剥離値を測定するために、上述の粘着テープは、剥離材料がテープの接着剤を有する側に向くように積層された。結果として得られる積層は、幅が約2.54cm、長さが約12cmの試験片に切断された。この試験片は、次いで、経時されずに直ちに試験された(初期剥離)か、又は49℃の一定温度で7日間経時されたかのいずれかであった。試験片は、試験片の剥離ライナー側に適用された幅2.54cmの二重コーティングされた粘着紙テープ(St.Paul,MNの3M Companyから「3M DOUBLE COATED PAPER TAPE 410B」の商標で市販されている)を使用して、スリップ/剥離テスター(Accord,MAのIMass,Inc.から入手したModel SP2000)の作業板に取り付けられた。2kgゴムローラーを取り付けた試験片に対して作業板上で一回転がした。次に、試験片の粘着テープを180°及び毎分2.3メートル(毎分90インチ)の速度で剥がすことにより、剥離ライナーから除去し、剥離ライナーから粘着テープを除去するために必要とされた力を5秒のデータ収集時間にわたって測定した。
【0053】
[0053]全ての剥離試験は、一定温度(23℃)及び一定相対湿度(50パーセント)の設備内で行った。それぞれの実施例に対して少なくとも3回の測定を行い、全ての測定値の平均としてデータを報告する。測定はポンド重/インチで行い、N/dmに変換した。
【0054】
【表1】
【0055】
[0054]調製用試料1
[0055]調製用試料1は、本明細書で「添加剤1」と呼ぶ以下の化合物を調製するためのプロセスを説明する。
【0056】
[0056]EVA−1及び1250mLのキシレンを5Lフラスコの中に機械的撹拌しながら入れた。混合物は、共沸的に水を取り除くために、還流するように1時間加熱された。次いで、650gのODI(2.2モルのオクタデシルイソシアネート、分子量=295.51g/mol)及び0.5gのジブチル錫ジアセテートが加えられた。混合物は、10〜14時間加熱及び還流された。高温溶液は、イソプロピルアルコール(IPA)に沈殿された。沈殿物は、120℃の炉内で乾燥された。乾燥した固体は、トルエン中で溶解され、IPAを使用して再度沈殿された。次いで、沈殿物は炉内で乾燥され、475gの添加剤1ポリマーが得られた。添加剤1ポリマーの分解温度は、熱重量分析(TGA)を介して測定した際に、220℃より高かった。
【0057】
[0057]調製用試料2
[0058]調製用試料2は、本明細書で「添加剤2」と呼ぶ以下の化合物を調製するためのプロセスを説明する。
【0058】
[0059]EVA−2及び1250mLのキシレンを5Lフラスコの中に機械的撹拌しながら入れた。混合物は、共沸的に水を取り除くために、還流するように1時間加熱された。次いで、650gのODI(2.2モル)及び0.5gのジブチル錫ジアセテートが加えられた。混合物は、10〜14時間加熱及び還流された。高温溶液は、イソプロピルアルコール(IPA)に沈殿された。沈殿物は、120℃の炉内で乾燥された。乾燥した固体は、トルエン中で溶解され、IPAから再度沈殿された。次いで、沈殿物は炉内で乾燥され、485gの添加剤2ポリマーが得られた。添加剤2ポリマーの分解温度は、熱重量分析(TGA)を介して測定した際に、220℃より高かった。
【0059】
[0060]実施例1〜12及び比較例A〜F
[0061]実施例1〜12は、担体ポリマー及び添加剤1を所定の割合でブレンドし、それらをフィルム状に押出成形することによって調製された。比較実施例A〜Fは、担体ポリマーを、いかなる添加剤も加えずに押出成形することによって調製された。実施例1〜12及び比較実施例A〜Fの押出成形は、South Hackensack,NJのC.W.Brabender Instruments製の二軸押出成形機を使用して実施された。この押出成形機は、フィードチューブ、3つの温度ゾーンのバレル、スクリーンパック、ダイアダプター、及びダイ、を装備していた。バレルの各ゾーン、並びにダイ及びダイアダプターの温度は、制御された。バレルのゾーン1、ゾーン2、及びゾーン3の温度は、実施例1〜10及び比較例A〜Eに関してそれぞれ182℃、193℃、及び193℃であり、実施例11〜12及び比較例Fに関してはそれぞれ204℃、221℃、及び221℃であった。実施例1〜12及び比較例A〜Fの全てに関して、ダイ及びダイアダプターの温度は、193℃であり、かつスクリーンパックは、40−80−40であった。実施例6以外の全ての実施例及び比較例に関して、スクリュー速度は、90rpmであり、実施例6に関しては、スクリュー速度は120rpmであった。実施例11〜12及び比較例Fに関して、フィードチューブの温度は、204℃であった。押出成形中に測定された担体ポリマー、添加剤、及び押出成形のパラメータの性質、並びに相対量は、以下で表にされる。
【0060】
【表2】
【0061】
[0062]上記したようにして得られた、実施例1〜12及び比較例A〜Fの剥離材料に関する初期及び経年剥離値を、以下の表2に示す。表2に示すように、各試料は3回試験され、平均剥離力が報告された。試験中に破断した試料は、報告された平均の結果に含まれなかった。別途記載のない限り、試験はフィルムの光沢のある側で行われた。
【0062】
【表3】
*試験は、フィルムの光沢のない側で行われた。
【0063】
[0063]本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本発明の予測可能な改変及び変更が当業者には明らかとなるであろう。本発明は、説明を目的として本出願に記載される諸実施形態に限定されるべきものではない。