特許第6012618号(P6012618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6012618真空ラミネート加工によって電子的装置と接着剤を含む複合体を製造するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012618
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】真空ラミネート加工によって電子的装置と接着剤を含む複合体を製造するための装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/48 20060101AFI20161011BHJP
   H01L 31/042 20140101ALI20161011BHJP
   B29C 65/40 20060101ALI20161011BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20161011BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20161011BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20161011BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   B29C65/48
   H01L31/04 500
   B29C65/40
   H05B33/04
   H05B33/10
   H05B33/14 A
   H01L21/56 J
【請求項の数】21
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2013-542432(P2013-542432)
(86)(22)【出願日】2011年11月3日
(65)【公表番号】特表2014-509266(P2014-509266A)
(43)【公表日】2014年4月17日
(86)【国際出願番号】EP2011069301
(87)【国際公開番号】WO2012076262
(87)【国際公開日】20120614
【審査請求日】2014年10月30日
(31)【優先権主張番号】102010062823.9
(32)【優先日】2010年12月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509120403
【氏名又は名称】テーザ・ソシエタス・ヨーロピア
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】カイテ−テルゲンビュシャー・クラウス
(72)【発明者】
【氏名】グリュナウアー・ユーディト
(72)【発明者】
【氏名】エリンガー・ヤン
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−298115(JP,A)
【文献】 特開2003−191328(JP,A)
【文献】 特開2010−074165(JP,A)
【文献】 特開昭59−229310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/40
B29C 65/48
H01L 21/56
H01L 31/042
H01L 51/50
H05B 33/04
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土台上での電子的装置がシート状の材料として提供され、
感圧接着性または熱溶融接着性の平坦構造物がシート状の材料として、またはシート状の支持土台上に配置された個々の平坦なダイカットとして、提供され、
両方のシート状の材料が、ロール間隙を共に形成しているロール対により真空ボックス内に送り込まれ、同時に真空ボックスがロールにより密封され、
両方のシート状の材料が、ロール対によりロール間隙内に送り込まれ、ロール間隙内では感圧接着性または熱溶融接着性の平坦構造物と、土台上での電子的装置とのラミネート加工が真空中で行われ、
生じたラミネートが、ラミネートロールのロール間隙を通って真空ボックスから送り出される装置であって、
土台のうち電子的装置のカプセル化すべき領域を取り巻く面が、少なくとも1種の接着剤を含む平坦構造物と真空中で接触され、それに基づいて複合体が製造されることを特徴とする、上記装置。
【請求項2】
土台上での前記電子的装置が複数の個々の電子的装置の形にある、請求項1記載の装置。
【請求項3】
感圧接着性または熱溶融接着性の前記平坦構造物が連続的な平坦物面である、請求項1記載の装置。
【請求項4】
土台のうち前記電子的装置のカプセル化すべき領域を取り巻く面が、前記面および電子的装置のカプセル化すべき領域である、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記接着剤が感圧接着剤である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記接着剤が熱溶融型接着剤である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
真空が、800mbar以下の低減された周囲圧力である、請求項1〜6のいずれか1つに記載の装置。
【請求項8】
真空が200mbar未満の圧力である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記真空が50mbar未満の圧力である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記真空が100〜200mbarの間の圧力である、請求項7記載の装置。
【請求項11】
平坦構造物が電子的装置上にラミネート加工される真空中でその真空が、電子的装置および/または土台上で部分的に生成される、請求項1〜10のいずれか1つに記載の装置。
【請求項12】
前記真空が、2つのロールの間の、ラミネート加工が行われる間隙内で生成される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記真空が、2つのロールの間の、ラミネート加工が行われる間隙内で真空シャフトによって生成される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
土台上での電子的装置がシート状の材料として提供され、
感圧接着性または熱溶融接着性の平坦構造物がシート状の材料として、またはラミネート加工後に電子的装置を完全に包み込む個々の平坦なダイカットとして、提供され、
両方のシート状の材料が連続的に合わせられ、
感圧接着性または熱溶融接着性の平坦構造物と、土台上での電子的装置とのラミネート加工が真空中で行われる、請求項1〜13のいずれか1つに記載の装置。
【請求項15】
土台上での前記電子的装置がシート状の材料として、複数の個々の電子的装置の形において提供される、請求項14記載の装置。
【請求項16】
感圧接着性または熱溶融接着性の前記平坦構造物が、連続した面として提供される、請求項14記載の装置。
【請求項17】
ラミネート加工が、ロールと、平らなプレートまたはベルトまたはさらなるロールとの間隙内で行われる、請求項1〜16のいずれか1つに記載の装置。
【請求項18】
ラミネート加工が、2つのロールの間隙内で行われる、請求項17記載の装置。
【請求項19】
電子構成物の製造で、その電子構成物内で活性層としての小分子または蒸着させた金属もしくは金属化合物を利用する際に使用される真空方法と組み合わせられる、請求項1〜18のいずれか1つに記載の装置。
【請求項20】
電子的装置に、感圧接着性の平坦構造物をその前のステップと同じプロセス真空中で施すことによって、接触の前に薄層カプセル化を施す、請求項1〜19のいずれか1つに記載の装置。
【請求項21】
ロールがエラストマーから製造されているかまたはエラストマーの上張りを備えており、これによりロールがその表面で室温で50未満のショアA硬度を有する、請求項1〜20のいずれか1つに記載の装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子的装置のカプセル化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(光)電子的装置は、市販製品においてますます頻繁に使用されており、または市場への導入間近にある。このような装置には、無機電子構造物または有機電子構造物、例えば有機半導体、有機金属半導体、またはポリマー半導体が含まれ、またはそれらの組合せも含まれる(以下、まとめて有機電子的装置と言う)。これらの装置および製品は、所望の用途に応じて剛性にまたは柔軟に形成されるが、柔軟な装置に対する需要が次第に増している。このような装置の製造は、例えば凸版印刷、凹版印刷、スクリーン印刷、平版印刷のような、または熱転写印刷、インクジェット印刷、もしくはデジタル印刷などのいわゆる「ノンインパクトプリンティング」のような印刷方法によっても行われる。しかし例えば化学気相成長(CVD)、物理気相成長(PVD)、プラズマ促進化学もしくは物理気相成長法(PECVD)、スパッタリング、(プラズマ)エッチング、または蒸着のような真空方法もよく使用されており、その際、構造化は一般的にマスクによって行われる。
【0003】
以下、光電子的装置および有機電子的装置を共に電子的装置と言う。
【0004】
すでに市販されている、またはその市場可能性が注目されている(光)電子的用途に関する例としては、ここでは電気泳動もしくはエレクトロクロミックを用いた構成物もしくはディスプレイ、表示装置およびディスプレイ装置における有機発光ダイオードもしくはポリマー発光ダイオード(OLEDもしくはPLED)、または照明として挙げればエレクトロルミネセンスランプ、発光電気化学セル(LEEC)、有機太陽電池、好ましくは色素太陽電池もしくはポリマー太陽電池、無機太陽電池、好ましくは特にケイ素、ゲルマニウム、銅、インジウム、およびセレンをベースとする薄層太陽電池、有機電界効果トランジスタ、有機スイッチング素子、有機光増幅器、有機レーザダイオード、有機センサもしくは無機センサ、またはさらに有機もしくは無機ベースのRFIDトランスポンダを挙げることができる。
【0005】
無機および/または有機の(光)電子機器の分野、ただしとりわけ有機(光)電子機器および無機薄層太陽電池の分野における(光)電子的装置の十分な耐用期間および機能を実現するための技術的な課題は、その中に内包されたコンポーネントを浸透物から保護することである。この浸透物とは、多種の低分子有機化合物または低分子無機化合物、特に水蒸気および酸素であり得る。
【0006】
浸透とは、物質(浸透物)が固体を貫通するまたは固体中を動き回る現象のことである。この推進力は濃度勾配である。浸透性は浸透測定によって調べられる。
【0007】
無機および/または有機の(光)電子機器の分野における、とりわけ有機原料を使用する場合の多くの(光)電子的装置は、水蒸気からも酸素からも影響を受けやすく、その際、多くの装置に関しては、水または水蒸気の侵入がより大きな問題としてランク付けされる。したがって電子的装置の耐用期間中はカプセル化による保護が不可欠であり、というのもそうしなければ、使用期間中に性能が低下していくからである。つまり、例えば構成要素の酸化により、例えばエレクトロルミネセンスランプ(ELランプ)もしくは有機発光ダイオード(OLED)のような発光装置の場合は光力が、電気泳動ディスプレイ(EPディスプレイ)の場合にはコントラストが、または太陽電池の場合には効率が、非常に短い期間内に著しく低下する可能性がある。
【0008】
無機および/または有機の(光)電子機器の場合、特に有機(光)電子機器では、酸素および/または水蒸気のような浸透物に対する浸透バリアとなる柔軟な接着溶液に対する特別な需要がある。それだけでなく、このような(光)電子的装置に対しては多くのさらなる要求がある。したがって柔軟な接着溶液は、2つの土台の間の優れた付着を達成するだけでなく、それに加えて高いせん断強度および剥離強度、化学耐性、耐老朽化性、高い透明性、簡単な加工性、ならびに高い柔軟性および曲げ性のような特性を満たさなければならない。
【0009】
それゆえ従来技術に基づいて一般的に行われている手法では、水蒸気および酸素を透過しない2つの土台の間に電子的装置を据える。その後、縁を封止する。柔軟でない構成物にはガラスまたは金属土台が用いられ、これらの土台は高い浸透バリアを提供するが、機械的負荷に対しては非常に脆弱である。さらにこれらの土台は装置全体の厚さを比較的大きくする。金属土台の場合はこれに加えて透明でない。これに対し柔軟な装置には、多層状に実施できる平坦な土台、例えば透明または不透明なフィルムが用いられる。これに関しては、様々なポリマーからの組合せも、無機層もしくは有機層も使用することができる。このような平坦な土台の使用は、柔軟で極めて薄い構成を可能にする。その際、多様な用途に対し、例えばフィルム、織布、不織布、および紙、またはそれらからの組合せのような非常に様々な土台が考えられる。
【0010】
できるだけ優れた封止を達成するためには、特殊なバリア接着剤が使用される。(光)電子部品を封止するための優れた接着剤は、酸素および特に水蒸気に対する低い浸透性を有しており、装置への十分な付着性を有しており、かつ装置の表面をうまく流れることができる。装置への付着性が低いと界面でのバリア作用が低下し、これにより接着剤の特性に関係なく酸素および水蒸気の侵入が可能となる。接着剤と土台の間の接触が徹底されている場合にのみ、接着剤の特性が、接着剤のバリア作用に対する決定的な要因となる。
【0011】
バリア作用を特徴づけるには、一般的に酸素透過率OTR(Oxygen Transmission Rate)および水蒸気透過率WVTR(Water Vapor Transmission Rate)を提示する。それぞれの透過率は、特定の温度および分圧条件ならびに場合によっては相対湿度のようなさらなる測定条件の下で薄膜を通り抜ける酸素または水蒸気の面積当りおよび時間当りの流量を示す。これらの値が低ければ低いほど、それぞれの材料はカプセル化のためにより適している。浸透性の提示は、単にWVTRまたはOTRに関する値に基づくだけでなく、常に、例えば材料の厚さなどのような、浸透の平均経路長に関するデータまたはある特定の経路長に基づく規格化も含んでいる。
【0012】
浸透性Pは、気体および/または液体に対する物体の透過性に関する尺度である。低いP値は優れたバリア作用を示す。浸透性Pは、定常条件下での、特定の浸透経路長、分圧、および温度における、規定の材料および規定の浸透物に関する特異的な値である。浸透性Pは、拡散項Dおよび溶解度項Sの積で表わされる。すなわち、
P=D×S
【0013】
溶解度項Sは、ここでは浸透物に対するバリア接着剤の親和力を表わしている。水蒸気の場合は、例えば疎水性材料によって低いS値が達成される。拡散項Dは、バリア材料中での浸透物の可動性に関する尺度であり、分子の可動性または自由体積のような特性に直接的に左右される。強架橋された材料または高結晶質の材料ではしばしば比較的低いD値が達成される。しかしながら高結晶質の材料は一般的にあまり透明ではなく、比較的強い架橋は柔軟性を相対的に低くする。浸透性Pは、通常は分子の可動性が増すとともに上昇し、例えば温度が上昇する場合またはガラス転移点を超える場合にも上昇する。
【0014】
接着剤のバリア作用を高めるための手法は、水蒸気および酸素の透過性への影響に関して、特に両方のパラメータDおよびSを考慮しなければならない。これらの化学的特性に加え、浸透性への物理的な影響の効果、特に平均浸透経路長および界面特性(接着剤の表面流動挙動、付着性)も考慮に入れなければならない。理想的なバリア接着剤は、土台に非常に良好に付着するとともに、D値もS値も低い。
【0015】
低い溶解度項Sだけでは、優れたバリア特性を達成するためにはたいていの場合は不十分である。これに関する古典的な例は、特にシロキサンエラストマーである。この材料は極めて疎水性であるが(小さな溶解度項)、その自由に回転可能なSi−O結合(大きな拡散項)により、水蒸気および酸素に対するバリア作用は比較的低い。つまり優れたバリア作用のためには、溶解度項Sと拡散項Dの適切なバランスが必要である。
【0016】
このために、これまではとりわけエポキシドをベースとした液体接着材料および付着剤が使用されてきた(WO98/21287A1(特許文献1)、US4,051,195A(特許文献2)、US4,552,604A(特許文献3))。これらは強架橋により低い拡散項Dを示す。その主な使用分野は、剛性の装置の縁を貼り付けることであるが、中程度に柔軟な装置にも使用される。硬化は熱または紫外線によって行われる。硬化により生じる収縮のため、硬化の際に接着剤と土台の間にテンションがかかり、さらにこのテンションが層間剥離を引き起こし得るので、面全体を貼り付けることはほとんど不可能である。
【0017】
この液体接着材料の使用は一連の欠点を伴う。低分子成分(VOC−揮発性有機化合物)は、装置のうちの影響を受けやすい電子構造物を損傷させる可能性があり、生産中の取扱いを困難にする可能性がある。この接着材料は、装置のそれぞれの個々の構成要素に手間をかけて施さなければならない。正確な位置決めを保証するためには、高価なディスペンサおよび固定機構を調達する必要がある。加えてこの種の塗布は、高速で連続的なプロセスの妨げとなり、その後で必要なラミネート加工ステップ中も、低い粘性ゆえ、狭い制限範囲内での規定の層厚および貼付幅の達成が困難となる可能性がある。
【0018】
さらに、このような強架橋される接着材料は、硬化後には僅かな柔軟性しか示さない。熱架橋系の使用は低い温度範囲では制限され、または2成分系の場合は可使時間、つまりゲル化が起こるまでの処理時間によって制限される。高い温度範囲内、および特に長い反応時間の場合もまた、影響を受けやすい(光)電子構造物が、この種の系の使用可能性を制限する。(光)電子構造物に対する最高使用可能温度は時には60℃でしかない。なぜならこの温度を超えるとすでに事前損傷が生じる可能性があるからである。特に、有機電子機器を内包しており、かつ透明なポリマーフィルムにより、またはポリマーフィルムおよび無機層から成る複合体によりカプセル化された柔軟な装置は、使用の可能性を狭く制限する。これは、大きな圧力でのラミネート加工ステップにも当てはまることである。より良い保持性を達成するためには、ここでは温度負荷が掛かるステップをなくすこと、および比較的低い圧力でラミネート加工することが好ましい。
【0019】
最近では、熱硬化可能な液体接着材料の代わりに、放射線硬化型接着材料も度々使用されるようになっている(US2004/0225025A1(特許文献4))。放射線硬化型接着材料を使用することで、電子的装置に長期間持続する熱負荷が掛かることは回避される。ただし、一般的には紫外線だけでなくIR線も非常に高い割合で放出されるので、照射により装置は短期的に部分的に加熱される。上で挙げたVOC、収縮、層間剥離、および低い柔軟性のような液体接着材料のその他の欠点も解決されないままである。光開始剤または増感剤に由来する追加的な揮発性成分または分解生成物により問題が生じる可能性がある。それに加え、装置はUV光透過性でなければならない。
【0020】
特に有機電子機器の構成要素や使用されるポリマーの多くは、しばしばUV負荷に対して影響を受けやすいので、比較的長期にわたる屋外使用は、さらなる追加的な保護措置、例えばさらなるカバーフィルムなしでは不可能である。このカバーフィルムは、UV硬化型接着剤系の場合、UV硬化後に初めて施すことができ、これは製造の複雑さをさらに高め、装置の厚みをさらに大きくする。
【0021】
US2006/0100299A1(特許文献5)は、電子的装置をカプセル化するためのUV硬化可能な感圧接着テープを開示している。この感圧接着テープは、軟化点が60℃超のポリマーと、軟化点が30℃未満の重合性エポキシ樹脂と、光開始剤との組合せをベースとする接着剤を含んでいる。このポリマーは、ポリウレタン、ポリイソブチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリレート、またはポリエステル、ただし特にアクリレートであり得る。さらに、接着樹脂、可塑剤、または充填剤が含まれる。
【0022】
アクリレート系接着剤は、紫外線および様々な化学物質に対する非常に優れた耐性を有しているが、異なる下地に対する接着力のバラツキが非常に大きい。ガラスまたは金属のような極性の下地への接着力は非常に高いのに対し、例えばポリエチレンまたはポリプロピレンのような非極性の下地への接着力はどちらかといえば低い。この場合は、界面で拡散する危険が特に大きい。加えてこの接着剤は非常に極性が強く、これは、特に水蒸気の拡散を、後からの架橋にもかかわらず助長する。重合性エポキシ樹脂の使用により、この傾向はさらに強化される。
【0023】
US2006/0100299A1(特許文献5)に記載されている感圧接着剤としての実施形態は、簡単な適用という利点を有しているが、同様に、含まれる光開始剤によって生じ得る分解生成物、構成物の必然的なUV透過性、および硬化後の柔軟性の低下という欠点がある。これに加え、感圧接着性および特に凝集性を得るためにはエポキシ樹脂または別の架橋剤の割合が少ないことが必須であることから、液体接着剤よりはるかに低い架橋密度しか達成できない。
【0024】
液体接着材料とは異なり、感圧接着テープは一般的に、比較的高分子のポリマーゆえ、表面によく濡れ、かつ付着するためには、ある程度の時間、十分な圧力、および粘性部分と弾性部分の適切なバランスを必要とする。
【0025】
WO2007/087281A1(特許文献6)は、電子的用途、特にOLEDのための、ポリイソブチレン(PIB)をベースとする透明で柔軟な感圧接着テープを開示している。ここでは、分子量が500,000g/mol超のポリイソブチレンおよび水素化環状樹脂が使用される。任意選択で、光重合性樹脂および光開始剤を使用することができる。
【0026】
ポリイソブチレンをベースとする接着剤は、その低い極性により、水蒸気に対する優れたバリア性を示すが、高い分子量の場合でさえ凝集性が比較的低く、このため温度が上昇すると、しばしば低いせん断強度を示す。低分子成分の割合を任意に減少させることは、付着性を明らかに低下させ、界面浸透性を上昇させるので不可能である。この接着剤の凝集性が非常に低いゆえに必要な、高い割合での機能性樹脂の使用は、他方で接着剤の極性を再び上昇させ、したがって溶解度項を大きくする。
【0027】
さらに、スチレンブロックコポリマー、可能な限り水素化されたスチレンブロックコポリマー、および相応に水素化された樹脂をベースとするバリア接着剤が記載されており、つまりDE102008047964A1(特許文献7)に記載されている。
【0028】
ブロックコポリマー内で少なくとも2つのドメインが形成されることにより、追加的に、室温での非常に優れた凝集性と同時にバリア特性の改善が得られる。
【0029】
加えて、従来技術からはバリア特性のない感圧接着剤が知られており(WO03/065470A1(特許文献8))、この感圧接着剤は、電子構成物において転写式接着剤として使用される。この接着剤は機能性充填剤を含んでおり、この機能性充填剤は、構成物内で酸素または水蒸気と反応する。これにより構成物内でのスカベンジャーの簡単な適用が可能である。外部に対して構成物を封止するためには、透過性の低いさらなる付着剤を使用する。
【0030】
ポリイソブチレンをベースとする感圧接着剤も、水素化スチレンブロックコポリマーをベースとする感圧接着剤も重大な欠点を抱えている。バリア層を備えた2枚のフィルム、例えば有機太陽電池などに用いることができるSiOxコーティングを備えた2枚のPETフィルムを貼り合わせた場合に、湿気および熱の中で貯蔵すると激しい気泡形成が引き起こされる。フィルムおよび/または接着剤を事前に乾燥しても、この気泡形成を阻止することはできない。この挙動は、感圧接着剤を電子的装置の面全体にラミネート加工する場合に特に不利である。なぜなら浸透バリアが不十分なだけでなく、光学的欠陥も生じるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】WO98/21287A1
【特許文献2】US4,051,195A
【特許文献3】US4,552,604A
【特許文献4】US2004/0225025A1
【特許文献5】US2006/0100299A1
【特許文献6】WO2007/087281A1
【特許文献7】DE102008047964A1
【特許文献8】WO03/065470A1
【特許文献9】DE102008060113A1
【特許文献10】EP1311559B1
【特許文献11】EP1475424A1
【特許文献12】EP1956063A2
【特許文献13】US2007/0135552A1
【特許文献14】WO02/026908A1
【非特許文献】
【0032】
【非特許文献1】Helmut Greifの本「Technologie der Extrusion」Carl Hanser出版、2004
【非特許文献2】A. G. Erlatら、「47th Annual Technical Conference Proceedings−Society of Vacuum Coaters」、2004、654〜659頁
【非特許文献3】M. E. Grossら「46th Annual Technical Conference Proceedings−Society of Vacuum Coaters」、2003、89〜92頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
本発明の課題は、電子的装置を損傷させず、既に存在する製造プロセスにうまく組み込むことができ、かつ同時に優れたカプセル化が達成される、浸透物、特に水蒸気および酸素に対する電子的装置のカプセル化のための改善された方法を提供することである。さらに、カプセル化複合体における境界層をより密封的に製造することで電子的装置の耐用期間を延長し、ならびに特に電子的装置を覆う貼付部での光学的欠陥の危険を減らすことも意図される。
【課題を解決するための手段】
【0034】
この課題は、請求項1に記載されているような方法によって解決される。従属請求項の対象は、有利な形態および変形形態ならびに本発明による方法を実施するための装置である。
【0035】
ゆえに請求項1は、電子的装置が土台上で提供される、浸透物に対する電子的装置のカプセル化方法であって、ただし、土台のうち電子的装置のカプセル化すべき領域を取り巻く面が、好ましくはこの面および電子的装置のカプセル化すべき領域が、少なくとも1種の接着剤を含む平坦構造物と真空中で接触され、好ましくはラミネート加工により複合体が製造される方法に関する。
【0036】
これに関し、電子的装置全体が真空中に存在する必要はない。部分的に、電子的装置のうち少なくとも、実際に接触およびラミネート加工が行われる領域が真空中にあれば十分である。
【0037】
接着剤は、好ましくは感圧接着剤、つまり粘弾性剤であり、これは室温での乾燥状態で永続的に接着性および接着能力を維持している。軽い押圧力により即座にほぼすべての土台に接着する。
【0038】
接着剤は、(熱)溶融型接着剤、つまり室温では固体で、実質的に水および溶剤を含まない接着材料であってもよく、この接着材料は、貼り付けるべき部分と融体状態で接触させ、つなぎ合わせると、冷却時に固化しながら物理的に凝固する。(熱)溶融型接着剤は水および溶剤をまったく含まないことが好ましい。
【0039】
本発明によれば真空とは、800mbar以下の低減された周囲圧力のことである。好ましいのは、200mbar未満、特に50mbar未満の圧力を用いることである。なぜならこの場合に特に優れたラミネート品質を達成できるからである。
【0040】
特に有利なのは100〜200mbarの間の圧力である。なぜならこの場合に、優れたラミネート品質と、真空の生成および維持のための技術的手間との間の適度な妥協点が存在するからである。
【0041】
本発明に基づく、例えば700〜800mbarの間の「比較的高い圧力領域」は、負圧生成のための技術的手間を少なく保ち得るという利点を有している。
【0042】
さらなる有利な一実施形態では、ラミネート加工場所の地理的高さを上げることにより真空が生成される。好ましいのは海抜3000〜4000mの間の高さである。なぜならここでは十分にインフラが整った生産場所を見つけることができ、そのうえ人が快適に生活できるからである。例としてここではラパス(ボリビア)およびラサ(中国)のような都市を挙げておく。
【0043】
試験方法の一部として電子部品の耐用期間をシミュレートする、本発明による方法に基づいてカプセル化されたカルシウム面は、意外にも、高圧下で、つまり大気圧の数倍の圧力下で、つまり真空ではないところでラミネート加工した複合体より長い耐用期間を示す。これらのラミネートの光学的品質に差はなく、両方の構成物とも顕微鏡下でさえも気泡は認められない。
【0044】
最初に層複合体を大気圧下で組み立て、その後、積層した状態で真空中に入れる既知の真空ラミネート加工方法とは異なり、本方法では層を合わせる前に既に真空を生成する。これは、特に感圧接着材料を使用する場合に、従来の方法では不可避的に存在する接触部位でも気泡が混入しないという利点を有している。
【0045】
さらに有利なのは、本方法を、例えば電子構成物を製造するために使用するさらなる真空方法と、例えばそのような電子構成物内で活性層としての小分子または蒸着させた金属もしくは金属化合物を利用する際に、組み合わせることである。本発明に基づく方法では、このような構成物のカプセル化を、中間換気の必要なくプロセス真空中でそのまま行うことができる。
【0046】
意外なことに、大気圧下でのラミネート加工および高いラミネート圧力(この場合、ラミネート圧力は大気圧よりかなり大きかった)での比較例ではたとえ顕微鏡下で気泡が認められなかったとしても湿気および熱の中では非常に活発に気泡形成が起こったにもかかわらず、本発明に基づく方法により湿気および熱の中での気泡形成を回避できることが分かった。つまり意外にも真空の効果は、ラミネート圧力を上げることでは補えないのである。
【0047】
本方法の有利な一実施形態では、真空を密閉されたチャンバ内で生成するのではなく、電子的装置および/または土台上の一部でしか、例えばロールラミネート加工のニップ内でしか生成しない。これに関しては例えば、平坦フィルムの押出技術において押出成形されたフィルムを冷却ロールに当てがうために使用されるようないわゆる真空ボックス(真空シャフト(Vakuumschacht))を使用することができる(例えばHelmut Greifの本「Technologie der Extrusion」Carl Hanser出版、2004(非特許文献1)を参照)。これにより真空が1本のライン上でだけ生成される。この場合、局所的に真空を提供するために技術的手間があまりかからないことが有利である。意外なことにこの真空でも、カプセル化品質を改善し、湿気および熱の中での接着剤の気泡形成を阻止するには既に十分であることが分かった。
【0048】
本方法のさらなる有利な一実施形態では、真空ラミネート加工がロール・ツー・ロール方法の中で実施される。この場合、土台上での電子的装置がシート状の材料として提供され、このシート状の材料は、その場合、例えば複数の個々の電子的装置を含むことができる。感圧接着性または熱溶融接着性の平坦構造物も、有利にはシート状の材料として、例えば、シート状の支持土台上に配置された均一な平坦な材料または個々のダイカットとして、提供される。この場合は真空ラミネート加工が連続的に行われる。これは、例えば巻付部および繰出部が中に配置されているか、またはシート状の材料が入るおよび出るための相応のゲートを有している真空チャンバ内で行うことができる。ただしこれに関して有利なのは真空ボックスなどによる部分的な真空生成である。ロール・ツー・ロール方法を利用することの利点は、このような連続的な方法の比較的高い生産性および経済性にある。
【0049】
少なくとも1つのロールが複合体を製造するための力をもたらすロールラミネート加工プロセスの使用も特に有利である。この場合、反力は例えば平らなプレート、ベルト(Gurtband)、またはさらなるロールによってもたらすことができる。この実施形態に関しては、場合によってはまだ存在している残留気体量を狙い通りに一方向に追い出し、これにより複合体の品質が改善されることが有利である。
【0050】
特に有利な一実施形態では2つのラミネートロールを使用する。
【0051】
ロールと対向部材の接触ラインに沿った好ましいラミネート力は、使用する接着剤に左右され、ロールラミネートプロセスの場合は0.5〜100N/cmの間である。特に感圧接着剤の場合は、高い圧力により表面流動が改善されるので5〜50N/cmの範囲が好ましい。熱溶融型接着剤の場合は、その際に無制御の接着剤流出の危険が低い0.5N/cm〜2N/cmの範囲が好ましい。
【0052】
ラミネート圧力は一般的には0.01MPa〜5MPaが好ましい。感圧接着剤の場合は、高い圧力により表面流動が改善されるので0.5MPa〜5MPaの範囲が好ましい。熱可塑性の熱溶融型接着剤の場合は、その際に無制御の接着剤流出の危険が低い0.01〜0.5MPaの範囲が好ましい。
【0053】
部分的な真空生成の場合も、できるだけ低い気圧を達成するため、真空ボックスとラミネートロールを組み合わせた装置を使用することが有利である。このような装置は図3に例示的に示しており、これによって本発明に基づくものとして特許請求される。
【0054】
この装置は、できるだけ良好に密封されるように最適化されている。シート状の土台1上で提供される電子的装置2、ならびにシート状の感圧接着性もしくは熱溶融接着性の平坦構造物3が入るところでは、一緒に動くロール7による密封が行われており、ロール7の方は、真空ボックス6内部でのパッキンの接触または隙間の最小化により密封されている。出口ではラミネートロール4と41の間のラミネート間隙自体が密封部として働く。
【0055】
有利な一実施形態では、密封ロールおよび/またはラミネートロールがエラストマーから製造されているかまたはエラストマーの上張りを備えている。これは密封すべき面への良好な接触を可能にする。ロール表面は室温で50未満のショアA硬度を有することが好ましい(DIN53505−A、試験時間3秒)。これによりロール表面は、入っていくもしくは出ていく平坦構造物の厚さに柔軟に適応することができ、かつシートがもうロールを覆っていない縁領域でもなお十分な密封を達成することができる。
【0056】
好ましい一実施形態では、少なくとも1つのロールが非付着特性を有している。これは感圧接着剤を使用する場合に有利であり、これにより感圧接着剤が接触するロールに貼り付かない。非付着性材料としては、例えばシリコーンエラストマーを使用することができる。
【0057】
ラミネートロール4および41を覆っている真空ボックス側面は、ラミネートロールに対し、隙間の最小化またはパッキンの接触によって密封されている。ここでは、および密封ロール7の場合も、隙間は0.1mm未満、特に0.01mm未満が有利である。なぜならこれにより比較的高い密封性が達成されるからである。この範囲内の隙間は、非常に狭い製造公差により、または装置の的確な、領域ごとに異なる温度調節による様々な線膨張の活用により達成することができる。さらに、外部気圧により少なくとも部分的に開き、それによって生じる真空ボックス内部への空気流によりこの開きが保たれるパッキンを使用することができる。このようなパッキンは、例えば真空ボックス内部へと曲げられたリップパッキンとして実施することができる。このリップパッキンの曲げ剛性に応じて、流入する大気により、大なり小なり隙間が形成される。
【0058】
パッキンの接触により密封が実施される場合、有利なのは、このパッキンの表面がロール材料に対して低い摩擦係数を有しており、したがってロールの回転に必要な力をできるだけ低く保てる場合である。これは、パッキンが特に外側に曲げられたリップパッキンとして実施される場合、このパッキンが気圧により密封面に押圧されるので有利である。
【0059】
前述の密封システムまたは当業者に知られている密封システムを組み合わせても実施することができる。
【0060】
本明細書の意味における浸透物とは、装置または部品、特に電子的もしくは光電子的装置またはこれに対応する部品内に侵入することができ、かつここでは特に機能障害を引き起こす可能性のあるような化学物質(例えば原子、イオン、分子、...)のことである。この侵入は、例えばハウジングまたは被覆体自体を通って起こることもあり得るが、特にハウジングもしくは被覆体内の開口部を通って、または継目部位、貼付部位、溶接部位、もしくはそれに類する部位を通って起こることもあり得る。この意味におけるハウジングまたは被覆体とは、影響を受けやすい部品を完全にまたは部分的に取り囲んでおり、その機械的機能だけでなく、特に、影響を受けやすい部品を保護するために設けられている部品のことである。
【0061】
本明細書の意味における浸透物とは、特に低分子の有機または無機の化合物、例えば水素(H)であり、とりわけ酸素(O)および水(HO)である。浸透物は、特に気体状または蒸気の形で存在することができる。
【0062】
本願の導入部分における実施形態は、これによって援用される。
【0063】
本発明はまず、前述の欠点にもかかわらず、本発明に基づく方法により、感圧接着剤に関してこれまで述べた欠点が生じる感圧接着剤も電子的装置をカプセル化するために使用できるという知見に基づいている。これまで欠点を有していた接着剤の群には、特に、化学的に未架橋状態でのせん断接着破壊温度(SAFT)が100℃未満の感圧接着剤および熱溶融型接着剤が含まれる。これに属するのはとりわけ、例えばWO2007/087281A1(特許文献6)またはDE102008060113A1(特許文献9)に記載されているようなポリイソブチレン(PIB)をベースとする感圧接着剤、主としてビニル芳香族類によって構成されたポリマーブロック(Aブロック)と、主として1,3−ジエンの重合によって構成されたポリマーブロック(Bブロック)とを含むブロックコポリマーをベースとする感圧接着剤、ならびに例えばDE102008047964A1(特許文献7)に記載されているような部分結晶性ポリオレフィンをベースとする感圧接着剤である。
【0064】
さらに好ましいのは、土台上での電子的装置が平坦構造物により完全に包み込まれており、したがって平坦構造物が、電子的装置の少なくとも片面、例えば上面、および4つの細長い面を覆っていることである。
【0065】
こうすると電子的装置と平坦構造物との間に中空空間が生じず、これは、例えば望ましくない屈折による光損失の低下を意味する。特に完全に包み込む場合に、気泡試験において非常に不利な光学的欠陥を示すであろうような感圧接着剤および熱溶融型接着剤も、本発明に基づく方法により使用できるようになる。
【0066】
電子的装置を包み込む平坦構造物を使用する場合、土台上で電子的装置が完成してからはじめて平坦構造物をラミネート加工することが必然的である。しかしダイカットとして供給され、電子構成物を枠状に包み込む平坦要素を使用する場合も、ラミネート加工と、カプセル化を最終的に完成させるカバーの施与との間に行われるさらなる製造プロセスにより、例えば用いられる放射線、プラズマ、熱エネルギー、または(化学反応性)物質により接着剤が損傷または汚染されないためには、最初に電子構成物を完全に製造することが有利である。
【0067】
(光)電子構成物のカプセル化に特に有利なのは、本発明による方法の際に感圧接着剤が、適用の最中または後で加熱される場合である。これにより感圧接着剤は、より表面を流れやすくなり、したがって(光)電子的装置もしくはその土台と感圧接着剤との間の界面での浸透を低減させることができる。その際の温度は、表面流動を相応に促進するためには、好ましくは30℃超、さらに好ましくは50℃超であることが望ましい。ただし、(光)電子的装置を損傷させないよう、高すぎる温度を選択しないことが望ましい。温度はできるだけ120℃未満にするべきである。最適な温度範囲は50℃〜100℃の間の温度であることが分かった。例えば超音波加熱または誘導加熱のような相応の局所的な加熱方法により電子構成物の過度な加熱を回避できる場合には、例えば最高250℃のより高い温度も有利である。なぜならより高い温度では、例えば浸透バリアを高めるための架橋反応をより容易に実施できるからである。
【0068】
浸透物に対する電子的装置のカプセル化方法の好ましい形態では、熱溶融型接着剤または感圧接着剤を接着テープの形で提供することができる。この種の提供形態は、感圧接着剤の特に簡単かつ均一な適用を可能にする。
【0069】
この場合、「接着テープ」という一般的な表現は、一実施形態では、片面または両面に感圧接着剤が施された支持体材料を含んでいる。この支持体材料は、全ての平坦な構造物、例えば2次元に延びたフィルムまたはフィルム切片、延びた長さおよび限られた幅を有するテープ、テープ切片、ダイカット、多層構成物、およびその類似物を含む。
さらに「平坦構造物」または「接着テープ」という表現には、いわゆる「転写式接着テープ」、つまり支持体のない接着テープも含まれる。転写式接着テープの場合、例えば適用前の感圧接着剤は、剥離層を備えかつ/または抗付着特性を有する柔軟なライナーの上またはライナーの間に施されている。適用するためには、存在していればまず第1のライナーを取り除き、そして接着剤を適用し、その後、第2のライナーを取り除く。したがってこの感圧接着剤は、(光)電子的装置内の2つの表面を結合するために直接的に使用することができる。熱溶融型接着剤の場合、転写式接着テープは、例えば熱溶融型接着剤自体しか含まなくてよいが、1枚もしくは2枚の追加的なライナーを含んでいてもよい。
【0070】
その際、接着テープの様々な用途のために、例えばフィルム、織布、不織布、および紙のような非常に様々な支持体を接着剤と組み合わせることができる。接着テープの支持体材料として、ここではポリマーフィルム、複合フィルム、または有機層および/もしくは無機層を備えたフィルムもしくは複合フィルムを使用することが好ましい。このようなフィルム/複合フィルムは、フィルム製造に使用されるすべての一般的に流通しているプラスチックから成ることができ、これに限定されないが例として挙げるとすれば、ポリエチレン、ポリプロピレン、特に1軸延伸もしくは2軸延伸により生成された配向ポリプロピレン(OPP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルスルホン(PES)、またはポリイミド(PI)である。
【0071】
加えて支持体は、有機または無機のコーティングまたは層と組み合わせることができる。これは例えば塗装、印刷、蒸着、スパッタリング、共押出し、またはラミネート加工のような通常の方法によって行うことができる。これに限定されないが例として挙げるとすれば、ここでは例えばケイ素およびアルミニウムの酸化物もしくは窒化物、酸化インジウムスズ(ITO)、またはゾルゲルコーティングである。
【0072】
これらのフィルム/複合フィルム、特にポリマーフィルムは、酸素および水蒸気に対する浸透バリアを有することが特に好ましく、その際この浸透バリアは、包装分野に対する要求を上回る(WVTR<10−1g/(md)、OTR<10−1cm/(m
bar))。
【0073】
酸素(OTR)および水蒸気(WVTR)に関する浸透性の決定は、DIN53380の第3部またはASTM F−1249に基づいて行われる。
【0074】
酸素透過性は、23℃および相対湿度50%で測定される。水蒸気透過性は、37.5℃および相対湿度90%で決定される。結果は、50μmのフィルム厚で規格化される。
【0075】
さらにフィルム/複合フィルムは、好ましい形態では透明に形成することができ、したがってこのような接着用品の構成全体も透明に形成される。その際「透明性」とは、光の可視領域での平均透過率が少なくとも75%、好ましくは90%より高いことを意味する。
【0076】
支持体を備えた感圧接着テープとしての実施形態の場合、構成物全体の最大透過率は、さらに、使用される支持体の種類および構成物の種類に左右される。
【0077】
本方法の特定の一実施形態では、電子的装置の要求に応じて、熱溶融型接着剤または感圧接着剤の弾性特性および粘性特性ならびにそのバリア作用を、事後の架橋ステップにより追加的に変化させることもできる。これは、(光)電子的装置に適応させて、熱によっても電磁放射線によっても行うことができ、しかし好ましくは紫外線、電子放射線、またはガンマ放射線によって行うことができる。それにより、バリア作用も接着強度も、(光)電子構成物内に施された後に上昇させることができる。ただしその際、熱溶融型接着剤または感圧接着剤の高い柔軟性は維持され続けるのが好ましい。
【0078】
さらに好ましいのは、特定の実施形態ではスペクトルの可視光(約400nm〜800nmの波長領域)内で透明な熱溶融型接着剤または感圧接着剤を使用することである。ただしこの領域は、例えば太陽電池の場合など特定の用途のためには、規定のUV領域またはIR領域へも広げることができる。可視スペクトルの好ましい領域内での所望の透明性は、特に無色の接着樹脂を使用することで達成することができる。したがって、このような感圧接着剤は、電子構造物を覆う面全体での使用にも適している。面全体を貼り付けることは、電子構造物がほぼ中心に配置される場合、縁封止に比べ、浸透物が構造物に達する前に浸透物が面全体にくまなく拡散しなければならないという利点を提供する。これにより浸透経路が明らかに延長される。浸透経路は透過性に反比例するので、この実施形態におき、例えば液体接着材料による縁封止に比べて延長された浸透経路は、総合的なバリア性に良い影響を及ぼす。
【0079】
接着剤としては、主としてビニル芳香族類、好ましくはスチレンによって構成されたポリマーブロック(Aブロック)と、主として1,3−ジエンの重合、好ましくはブタジエン、イソプレン、または両方のモノマーから成る混合物の重合によって構成されたポリマーブロック(Bブロック)とを含むブロックコポリマーをベースとする接着剤を使用することが好ましい。このBブロックは一般的に低い極性を示す。Bブロックとしてはホモポリマーブロックもコポリマーブロックも利用できることが好ましい。
【0080】
AブロックおよびBブロックから生じるブロックコポリマーは、同じまたは異なるBブロックを含むことができ、このBブロックは、部分的、選択的、または完全に水素化することができる。ブロックコポリマーは直鎖A−B−A構造を有することができる。放射型ブロックコポリマーならびに星型および直鎖型のマルチブロックコポリマーも使用可能である。さらなる成分としてA−B二元ブロックコポリマーが存在してもよい。ビニル芳香族類およびイソブチレンのブロックコポリマーも、本発明に基づいて使用することができる。前述のポリマーはすべて、単独で利用してもよく、または相互に混合して利用してもよい。
【0081】
上述のブロックAおよびブロックBのほかに少なくとも1つのさらなるブロックを含む例えばA−B−Cブロックコポリマーのようなブロックコポリマーも使用可能である。
【0082】
上に挙げたBブロックを、室温より高いガラス転移温度を有する例えばポリメチルメタクリレートのような、別の化学的性質のAブロックと共に使用することも考えられる。
【0083】
有利な一実施形態では、ブロックコポリマーが、10重量%〜35重量%の割合でポリビニル芳香族類を含んでいる。
【0084】
さらなる好ましい一形態では、感圧接着剤全体に対するビニル芳香族系ブロックコポリマーの割合が、合計で少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%、さらに好ましくは少なくとも45重量%である。ビニル芳香族系ブロックコポリマーの割合が少な過ぎると、感圧接着剤の凝集性が比較的低くなる。感圧接着剤全体に対するビニル芳香族系ブロックコポリマーの最大割合は、合計で最大80重量%、好ましくは最大70重量%である。ビニル芳香族系ブロックコポリマーの割合が高過ぎると今度は、感圧接着剤がほとんど感圧接着性でなくなってしまう。
【0085】
その際、用いられたブロックコポリマーの少なくとも一部は、酸または酸無水物により変性されており、この変性は、主に、不飽和のモノカルボン酸およびポリカルボン酸または、不飽和のモノカルボン酸無水物およびポリカルボン酸無水物、例えばフマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アクリル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、または無水シトラコン酸、好ましくは無水マレイン酸のラジカルグラフト共重合によって行われる。酸または酸無水物の割合は、ブロックコポリマー全体に対して0.5重量%〜4重量%の間であることが好ましい。
【0086】
これらのエラストマーの架橋は、様々なやり方で行うことができる。
【0087】
一つには、酸基または酸無水物基を、架橋剤、例えば様々なアミンまたはエポキシ樹脂と反応させることができる。
【0088】
その際、アミンとしては、第一級アミンおよび第二級アミンを使用することができ、しかしアミドも、および窒素に直接結合した水素を1つ有するようなその他の窒素含有化合物も使用することができる。
【0089】
エポキシ樹脂には、一般的には、1つの分子につき複数のエポキシド基を有するモノマー化合物もオリゴマー化合物も含まれる。これは、グリシドエステルまたはエピクロルヒドリンと、ビスフェノールAまたはビスフェノールF、またはビスフェノールAまたはビスフェノールFからの混合物との反応生成物であり得る。同様にエピクロルヒドリンと、フェノールおよびホルムアルデヒドからの反応生成物との反応により得られたエポキシドノボラック樹脂も使用することができる。エポキシ樹脂のための希釈剤として用いられる、複数のエポキシド末端基を有するモノマー化合物も使用することができる。弾性に変性されたエポキシ樹脂も、またはエポキシドにより変性されたエラストマー、例えばエポキシド化スチレンブロックコポリマー、例えばDaicel社のEpofriendも使用可能である。
【0090】
エポキシ樹脂の例は、Ciba Geigy社のAralditeTM6010、CY−281TM、ECNTM1273、ECNTM1280、MY720、RD−2、Dow Chemicals社のDERTM331、732、736、DENTM432、Shell Chemicals社のEponTM812、825、826、828、830など、同様にShell Chemicals社のHPTTM1071、1079、Bakelite AG社のBakeliteTM EPR161、166、172、191、194などである。
【0091】
市販の脂肪族エポキシ樹脂は、Union Carbide Corp.社のERL−4206、4221、4201、4289、または0400のようなビニルシクロヘキサンジオキシドなどである。
【0092】
弾性化エラストマーは、Noveon社からHycarの名称で入手可能である。
【0093】
エポキシド希釈剤、複数のエポキシド基を有するモノマー化合物は、例えばBakelite AG社のBakeliteTM EPD KR、EPD Z8、EPD HD、EPD WFなど、またはUCCP社のPolypoxTM R9、R12、R15、R19、R20などである。
【0094】
これらの反応の際、通常は促進剤も使用される。促進剤は、例えば第三級アミンまたは変性されたホスフィン、例えばトリフェニルホスフィンの群から選ぶことができる。
【0095】
アミンとの反応がしばしば既に室温で起こる一方で、エポキシ樹脂による架橋は一般的により高い温度で進行する。
【0096】
架橋の第2の可能性は、金属キレートを介して行われる。
【0097】
無水マレイン酸により変性されたブロックコポリマーの、金属キレートによる架橋は、EP1311559B1(特許文献10)から知られており、この文献では、ブロックコポリマー混合物の凝集性の上昇が記載されている。しかしながら(光)電子構成物内での使用には言及していない。
【0098】
金属キレートの金属は、第2主族、第3主族、第4主族、および第5主族の金属、ならびに遷移金属であり得る。特に適しているのは、例えばアルミニウム、スズ、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、マンガン、鉄、コバルト、およびセリウムである。特に好ましいのはアルミニウムおよびチタンである。
【0099】
キレート架橋には、下式で表現し得る様々な金属キレートを使用することができる。
【0100】
(RO)M(XRY)
式中、
Mは、上述のような金属であり、
は、アルキル基またはアリール基、例えばメチル、エチル、ブチル、イソプロピル、またはベンジルであり、
nは、0または0より大きい整数であり、
XおよびYは、酸素または窒素であり、これらはそれぞれRと二重結合によっても結合することができ、
は、XとYをつなぐアルキレン基であり、このアルキレン基は分枝していてもよく、または鎖中に酸素もしくは別のヘテロ原子を含むこともでき、
mは、整数であり、ただし少なくとも1である。
【0101】
好ましいキレート配位子は、以下の化合物、すなわちトリエタノールアミン、2,4−ペンタンジオン、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、または乳酸の反応から生じるようなキレート配位子である。
【0102】
特に好ましい架橋剤は、アルミニウムアセチルアセトナートおよびチタニルアセチルアセトナートである。その際、最適な架橋を達成するためには、酸基もしくは酸無水物基とアセチルアセトナート基の比率を、ほぼ当量比に選択することが望ましく、その際、架橋剤が少し過剰な方が好ましいことが分かった。
【0103】
しかし、無水物基とアセチルアセトナート基の比率は様々に変化させることができ、その際、十分な架橋のためには、両方の基のどちらも、モル比での過剰が5倍を超えないことが望ましい。
【0104】
意外にも、キレートにより架橋され、酸または酸無水物により変性されたビニル芳香族系ブロックコポリマーを含む感圧接着剤も、非常に低い水蒸気透過性または酸素透過性を示す。このことは、酸無水物および金属キレートのような極性成分を含む感圧接着剤では予測できないことだった。
【0105】
さらに好ましい形態では、付着性を所望通りに高めるために、感圧接着剤が少なくとも一種のビニル芳香族系ブロックコポリマーのほかに、少なくとも一種の接着樹脂を含んでいる。この接着樹脂は、ブロックコポリマーのエラストマーブロックと相溶性であることが望ましい。
【0106】
感圧接着剤において、接着性付与剤としては、例えば、ロジンおよびロジン誘導体をベースとする非水素化または部分的もしくは完全に水素化された樹脂、ジシクロペンタジエンの水素化ポリマー、C、C/C、またはCモノマー流をベースとする非水素化または部分的、選択的、もしくは完全に水素化された炭化水素樹脂、α−ピネンおよび/またはss−ピネンおよび/またはδ−リモネンをベースとするポリテルペン樹脂、好ましくは純粋なCおよびC芳香族類の水素化ポリマーを使用することができる。前述の接着樹脂は、単独で使用することも、混合して使用することも可能である。その際、室温で固体の樹脂も液体の樹脂も使用することができる。高い耐老朽化性およびUV安定性を保証するためには、水素化度が少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の水素化樹脂が好ましい。
【0107】
さらに、30℃より高いDACP値(ジアセトンアルコール曇り点)および50℃より高いMMAP値(混合メチルシクロヘキサンアニリン点)、特に37℃より高いDACP値および60℃より高いMMAP値を有する非極性樹脂が好ましい。DACP値およびMMAP値は、それぞれ特定の溶剤中での溶解度を示す(DACPは重量部が1:1のキシレンおよび4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンから成る溶剤混合物、MMAPは重量部が1:2のメチルシクロヘキサンおよびアニリンから成る溶剤混合物)。この範囲を選択することにより、特に高い浸透バリアが、とりわけ水蒸気に対して達成される。
【0108】
さらに好ましいのは、95℃超、特に100℃超の軟化温度(環/球式:DIN EN ISO 4625に基づく決定)を有する樹脂である。この選択により、特に高い浸透バリアが、とりわけ酸素に対して達成される。
【0109】
軟化点とは、ガラス、非晶質ポリマー、または部分結晶性ポリマーがガラス状の硬質弾性状態から軟質状態へと移行する温度(または温度範囲)のことである。対応する物質の軟化点での硬度低下は、例えば、荷重をかけながら物質試料に載っている物体が、軟化点に達すると物質試料にめり込むことによって明らかになる。軟化点は、原理的にはガラス転移温度より高く、ただし大抵のポリマーではポリマーが完全に液状に移行する温度より明らかに低い。
【0110】
これに対し、接着力の上昇を達成すべき場合には、特に、95℃未満、とりわけ90℃未満の軟化温度を有する樹脂が好ましい。
【0111】
さらなる添加剤として利用できるのは、典型的には、
・可塑剤、例えば可塑化オイル、または低分子ポリブテンなどの低分子液体ポリマー
・一次酸化防止剤、例えば立体障害フェノール
・二次酸化防止剤、例えばホスファイトまたはチオエーテル
・プロセス安定化剤、例えばC−ラジカルスカベンジャー
・光保護剤、例えばUV吸収剤または立体障害アミン
・加工助剤
・末端ブロック強化樹脂、ならびに
・場合によっては、好ましくはエラストマー性質のさらなるポリマー;これに対応して利用可能なエラストマーに含まれるのは、なかでも純粋な炭化水素をベースとするようなエラストマー、例えば天然のもしくは合成されたポリイソプレンもしくはポリブタジエンのような不飽和ポリジエン、化学的に実質的に飽和状態のエラストマー、例えば飽和エチレンプロピレンコポリマー、α−オレフィンコポリマー、ポリイソブチレン、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ならびに化学的に官能化された炭化水素、例えばハロゲン含有の、アクリレート含有の、アリル含有の、もしくはビニルエーテル含有のポリオレフィンである。
【0112】
本発明の一実施形態では、感圧接着剤が充填剤も含んでおり、これに限定されないが例として挙げるとすれば、アルミニウムの、ケイ素の、ジルコニウムの、チタンの、スズの、亜鉛の、鉄の、もしくはアルカリ(土類)金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、窒化物、ハロゲン化物、炭化物、または酸化物化合物/水酸化物化合物/ハロゲン化物化合物混合物である。ここでは基本的にアルミナであり、例えば酸化アルミニウム、ベーマイト、バイヤライト、ギブサイト、ダイアスポア、およびその類似物である。とりわけ適しているのは層状ケイ酸塩、例えばベントナイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ヘクトライト、カオリナイト、ベーマイト、雲母、バーミキュライト、またはそれらの混合物である。しかしカーボンブラック、または炭素のさらなる変態、例えばカーボンナノチューブも使用することができる。
【0113】
ビニル芳香族系ブロックコポリマーをベースとする好ましい接着剤だけでなく、ポリイソブチレン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタンをベースとする当業者に知られている接着剤を使用することもできる。
【0114】
好ましい接着剤のさらなる一群は、熱活性化性接着剤である。
【0115】
少なくとも1種の熱活性化接着性の接着剤として、原理的にはすべての通常の熱活性化接着性の接着剤系を使用することができる。熱活性化接着性の接着剤は、原理的に2つのカテゴリー、すなわち熱可塑性で熱活性化接着性の接着剤(溶融型接着材料)と、反応性で熱活性化接着性の接着剤(反応性接着材料)とに分類することができる。この区分には、両方のカテゴリーに分類できるような接着剤、つまり反応性で熱可塑性で熱活性化接着性の接着剤(反応性溶融型接着材料)も含まれる。
【0116】
熱可塑性接着剤は、加熱すると可逆的に軟化し、冷却中に再び凝固するポリマーをベースとする。これとは異なり、反応性で熱活性化接着性の接着剤は反応性成分を含んでいる。この反応性成分は「反応性樹脂」とも呼ばれ、その中では加熱により架橋プロセスが開始し、この架橋プロセスは、架橋反応の終了後に、圧力下でも持続的に安定した結合を保証する。好ましくは、このような熱可塑性接着剤は弾性成分、例えば合成ニトリルゴムも含んでいる。このような弾性成分はその高い流動粘度により、熱活性化接着性の接着剤に圧力下でも非常に高い寸法安定性を付与する。
【0117】
以下では、単に具体例として幾つかの典型的な、本発明に関して特に有利なことが分かった熱活性化接着性の接着剤系を説明する。
【0118】
すなわち、熱可塑性で熱活性化接着性の接着剤は熱可塑性ベースポリマーを含んでいる。このベースポリマーは、小さな押圧力でも既に優れた流動挙動を示し、したがって持続的な貼付の保持性にとって重要な最終的な接着力が短い押圧時間内に生じ、すなわち粗いまたはその他の不向きな下地にも迅速に貼り付くことができる。熱可塑性で熱活性化接着性の接着剤としては、従来技術から知られているすべての熱可塑性接着剤を使用することができる。
【0119】
模範的な組成は、例えばEP1475424A1(特許文献11)に記載されている。つまり、熱可塑性接着剤は、例えば以下の成分、すなわちポリオレフィン、エチレンビニルアセテートコポリマー、エチレンエチルアクリレートコポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、またはブタジエンスチレンブロックコポリマーの1種もしくは複数を含むことができるか、またはそれどころかこれらの成分から成ることができる。特に、例えばガラス製の貼付土台に貼り付けるような特殊な使用分野に特に適したさらなる熱可塑性接着剤がEP1956063A2(特許文献12)に記載されている。好ましくは、レオロジー添加剤によって、例えば焼成シリカ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、および/または混合成分としてのさらなるポリマーの添加によって溶融粘度が高められた熱可塑性接着剤が使用される。
【0120】
これに対し、反応性で熱活性化接着性の接着剤は、エラストマー性ベースポリマーおよび変性樹脂を含むことが有利であり、変性樹脂は接着樹脂および/または反応性樹脂を含んでいる。エラストマー性ベースポリマーの使用により、秀でた寸法安定性を示す接着層を得ることができる。反応性で熱活性化接着性の接着剤としては、それぞれの具体的な用途に応じ、従来技術から知られているすべての熱活性化接着性の接着剤を使用することができる。
【0121】
これにはニトリルゴムまたはその誘導体、例えばニトリルブタジエンゴムを、またはこれらのベースポリマーの混合物(ブレンド)をベースとする反応性で熱活性化接着性のフィルムなども含まれており、このフィルムはさらに、例えばフェノール樹脂のような反応性樹脂を含んでいる。このような製品は、例えばtesa8401の名称で市場で入手可能である。ニトリルゴムはその高い流動粘度により、熱活性化接着性のフィルムに顕著な寸法安定性を付与し、これにより架橋反応の実施後にはプラスチック表面での高い接着力を実現することができる。
【0122】
もちろんほかの反応性で熱活性化接着性の接着剤、例えば貼付可能なポリマーを50〜95重量%の質量分率で、および1種のエポキシ樹脂または複数のエポキシ樹脂から成る混合物を5〜50重量%の質量分率で含んでいる接着剤も使用することができる。これに関し貼付可能なポリマーは、一般式CH=C(R)(COOR)(式中、RはHおよびCHを含む群から選択された残基であり、RはHおよび1〜30個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状のアルキル鎖を含む群から選択された残基である)のアクリル酸化合物および/またはメタクリル酸化合物40〜94重量%と、少なくとも1個の酸性基、特にカルボン酸基および/またはスルホン酸基および/またはホスホン酸基を有する第1の共重合可能なビニルモノマー5〜30重量%と、少なくとも1個のエポキシド基または酸無水物官能基を有する第2の共重合可能なビニルモノマー1〜10重量%と、第1の共重合可能なビニルモノマーの官能基および第2の共重合可能なビニルモノマーの官能基とは異なる、少なくとも1個の官能基を有する第3の共重合可能なビニルモノマー0〜20重量%とを含むことが有利である。このような接着剤は、迅速な活性化による貼付を可能にし、その際、短時間で既に最終的な接着力に達し、これにより全体としては、非極性下地への良好な付着結合を保証する。
【0123】
特別な利点を提供する、さらなる使用可能な反応性で熱活性化接着性の接着剤は、アクリレート含有のブロックコポリマー40〜98重量%と、樹脂成分2〜50重量%と、硬化剤成分0〜10重量%とを含んでいる。樹脂成分は、接着力を上げる(接着性を付与する)エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、およびフェノール樹脂を含む群から選択された1種または複数の樹脂を含んでいる。硬化剤成分は、樹脂成分の樹脂を架橋するために使用される。このような調合は、ポリマー中での強い物理的架橋により、全体として貼付の負荷耐性を損なうことなく、全体厚の大きな接着層を得られるという特別な利点を提供する。これによりこの接着層は下地での凸凹をならすのに特に適している。そのうえこのような接着剤は優れた耐老朽化性を示し、かつ僅かな脱ガス挙動しか示さず、これは電子機器分野での多くの貼付で非常に望ましいことである。
【0124】
好ましくは、感圧接着剤の充填剤としてナノスケールのおよび/または透明な充填剤が使用される。ここでは、充填剤が少なくとも一つの次元で最大限の延びが約100nm、好ましくは約10nmである場合に、その充填剤をナノスケールと呼ぶ。特に好ましいのは、小板状の晶子構造および高いアスペクト比を有する塊状で透明な充填剤が、均質な分布で使用されることである。小板状の晶子構造および100を大きく超えるアスペクト比を有する充填剤は、一般的に数nmの厚さしか有さないが、晶子の長さもしくは幅は最大数μmであり得る。このような充填剤もナノ粒子と呼ぶ。加えて、充填剤の、寸法の小さな粒子状の形態は、感圧接着剤の透明な形態のために特に有利である。
【0125】
接着材料マトリクス中で、前述の充填剤によりラビリンス状の構造を構成することにより、例えば酸素および水蒸気の拡散経路は、酸素および水蒸気が接着材料層を通り抜けて浸透することを減少させるように延長される。結合剤マトリクス中でのこの充填剤の分散性が改善されるように、この充填剤の表面を有機化合物により変性することができる。このような充填剤の使用自体は、例えばUS2007/0135552A1(特許文献13)およびWO02/026908A1(特許文献14)から知られている。
【0126】
本発明のさらなる有利な一実施形態では、酸素および/または水蒸気と特別なやり方で相互作用し得る充填剤も使用される。この場合、(光)電子的装置内に侵入する酸素または水蒸気は、この充填剤と化学的または物理的に結合される。この充填剤は「ゲッター」、「スカベンジャー」、「乾燥剤」、または「吸収剤」とも呼ばれる。このような充填剤には、これに限定されないが例として挙げるとすれば、酸化性金属と、金属および遷移金属のハロゲン化物、塩、ケイ酸塩、酸化物、水酸化物、硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩と、過塩素酸塩と、活性炭およびその変種とが含まれる。例として、塩化コバルト、塩化カルシウム、臭化カルシウム、塩化リチウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、二酸化ケイ素(シリカゲル)、酸化アルミニウム(活性アルミニウム)、硫酸カルシウム、硫酸銅、亜ジチオン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ベントナイト、モンモリロナイト、珪藻土、ゼオライト、およびアルカリ(土類)金属の酸化物、例えば酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化鉄、および酸化マグネシウム、またはカーボンナノチューブも挙げられる。さらに有機吸収剤も使用することができ、例えばポリオレフィンコポリマー、ポリアミドコポリマー、PETコポリエステルであり、またはハイブリッドポリマーをベースとしたさらなる吸収剤であり、たいていは例えばコバルトのような触媒と組み合わせて使用される。さらなる有機吸収剤は、例えば弱架橋されたポリアクリル酸、アスコルベート、グルコース、没食子酸、または不飽和油脂である。
【0127】
バリア作用に関する充填剤のできるだけ優れた有効性を達成するためには、充填剤の割合が少なくなり過ぎないようにするべきである。この割合は、好ましくは少なくとも5重量%、さらに好ましくは少なくとも10重量%、およびとりわけ好ましくは少なくとも15重量%である。典型的には、感圧接着剤の接着力を著しく低下させ過ぎない、または他の特性を損なうことのない、できるだけ高い割合で充填剤を使用する。したがってこの割合は、一形態では最大95重量%、好ましくは最大70重量%、さらに好ましくは最大50重量%である。
【0128】
さらに、充填剤ができるだけ細かく分布し、かつ表面積ができるだけ大きいことが有利である。これは、より高い効率およびより高い積載能力を可能にし、特にナノスケールの充填剤によって達成される。
【0129】
大気圧下でのラミネート加工とは異なり、ビニル芳香族系ブロックコポリマーまたはポリイソブチレンをベースとする架橋されていない接着剤でも、追加的にバリア層を備えた2枚のポリエステルフィルムを貼り合わせた場合に、85℃および相対湿度85%で貯蔵しても気泡が現れない。
【0130】
好ましい一実施形態では、熱溶融型接着剤または感圧接着剤は、揮発性有機化合物(VOC)を、VDA277に基づく測定で接着剤1グラムにつき炭素50μg以下しか含まず、特に10μgC/g以下しか含まない。これは、電子構成物の有機材料、ならびに場合によっては存在する機能層、例えば酸化インジウムスズなどの透明で導電性の金属酸化物層、もしくは真性導電性ポリマーから成る機能層との適合性を改善するという利点を有している。さらに、脱ガスが僅かであれば真空をより容易に生成することができる。
【0131】
熱溶融型接着剤または感圧接着剤は、電子的装置の面全体を貼り付けるために使用することができるか、または然るべき処理をした後で、感圧接着剤もしくは感圧接着テープからダイカット、ロール、もしくはその他の成形体を製造することができる。感圧接着剤/感圧接着テープの然るべきダイカットおよび成形体は、その後、好ましくは貼り付けるべき土台に、例えば電子的装置の縁取りまたは境界画定として貼り付けられる。ダイカットまたは成形体の形状の選択に制限はなく、電子的装置の種類に応じて選択される。全体が平坦なラミネート加工が可能であることは、液体接着材料に比べて、浸透物の横からの侵入による浸透経路長が延長されることにより、接着剤のバリア特性に関する利点となる。なぜなら浸透経路長は、浸透に対して反比例的に作用するからである。
【0132】
感圧接着剤が支持体を備えた平坦な構造物の形で提供される場合、この支持体の厚さは、好ましくは約1μm〜約350μmの範囲内、さらに好ましくは約4μm〜約250μmの間、および特に好ましくは約12μm〜約150μmの間であることが好ましい。最適な厚さは、電子的装置、最終用途、および感圧接着剤の実施形態の種類に応じて決まる。1〜12μmの範囲内の非常に薄い支持体は、全体厚を薄くしなければならない電子構成物で使用され、ただしこれは構成物内に組み込むための手間を増大させる。150〜350μmの間の非常に厚い支持体は、支持体による浸透バリアの増強および構成物の剛性が極めて重要な場合に使用される。支持体により保護作用が高められる一方で、構成物の柔軟性は低下する。たいていの電子構成物に対しては、12〜150μmの間の好ましい範囲が、カプセル化の解決策としての最適な妥協点である。
【0133】
以下に、本発明のさらなる詳細、目的、特徴、および利点を、好ましい例示的実施形態に基づきさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0134】
図1】真空チャンバ内で実施される本発明による方法を示す図である。
図2】真空ボックスを用いた部分的な真空生成での本発明による方法を示す図である。
図3】本発明による方法が連続的な一変形形態において用いられ、ただし、真空が同様に本発明による装置で部分的に生成されることを示す図である。
図4】カプセル化された(光)電子的装置の一形態を示す図である。
図5】カルシウム試験を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0135】
図示した全ての例示的実施形態では、接着剤の適用が接着テープ3の形で行われている。これは原理的には、支持体を備えた両面感圧接着テープ、または転写式接着テープであり得る。ここでは転写式接着テープとしての形態が選択されている。
【0136】
転写式接着テープとしての、または平坦な構造物上にコーティングされて存在する接着剤の厚さは、好ましくは約1μm〜約150μmの間、さらに好ましくは約5μm〜約75μmの間、および特に好ましくは約12μm〜50μmの間である。50μm〜150μmの間の大きな層厚は、土台への付着性の改善および/または電子構成物内での緩衝作用を達成すべき場合に用いられる。ただしこの場合は浸透断面積の増大という欠点がある。1μm〜12μmの間の小さな層厚は、浸透断面積、したがって横からの浸透、および電子構成物の全体厚を減少させる。ただしこれは、土台への付着性を低下させる。厚さの特に好ましい範囲内では、接着剤の薄い厚さと、その結果としての、浸透を減少させる小さな浸透断面積と、十分に付着する結合を生み出すための十分に厚い接着剤膜との間での優れた妥協が見られる。最適な厚さは、電子構成物、最終用途、感圧接着剤の実施形態の種類、および場合によっては平坦な土台に応じて決まる。
【0137】
本方法の好ましい一実施形態では、土台上の電子的装置は、接着剤を含む平坦構造物を真空中で接触させる前に、その真空自体により製造される。電子機器のための多くの製造プロセスは、例えば電極または電気活性層を堆積または構造化するために真空堆積方法または構造化方法を必要とする。ここでは例として、いわゆる小分子から成る有機発光ダイオードを挙げることができる。この場合、その後で、理想的には幾何的に分離されているプロセスゾーン内で、その前のステップと同じプロセス真空中で感圧接着性の平坦構造物を施すことができ、したがってその合間での気体接触(例えば空気、保護ガス)による電子的装置の表面の汚染またはそれどころか機能的な損傷が起こり得ないことが有利である。
【0138】
本方法の好ましい一実施形態では、土台上の電子的装置に、接着剤を含む平坦構造物を接触させる前に、薄層カプセル化を施す。この方法は一般的に真空中で実施され、例えば米国のVitexのような会社により提供されている。この場合、感圧接着性の平坦構造物をその前のステップと同じプロセス真空中で施すことができ、したがってその合間での気体接触(例えば空気、保護ガス)による表面の汚染が起こり得ないことが有利である。
【0139】
図4はカプセル化された電子的装置の一形態を示している。ここでもまた、土台1上に配置されており、かつ土台1によって下からカプセル化されている電子構造物2が示されている。電子構造物の上および側面で、感圧接着剤3が面全体に配置されている。したがって電子構造物2は上および側面では感圧接着剤3によってカプセル化される。その後、感圧接着剤3上にカバー9が施される。このカバー9は、既に感圧接着剤3によりバリアが提供されているので、必ずしも高いバリア要求を満たす必要はない。カバー9は、例えば単に機械的な保護機能を果たすだけでよく、ただしこのカバーをさらに浸透バリアとして設けてもよい。
【0140】
図4に関し、これが概略図であることを指摘しておく。この図からは、特に、感圧接着剤3がここでは、また好ましくは、それぞれ均一な層厚で塗布されていることが明白ではない。つまり電子構造物への移行部では、図でそう見えるような鋭いエッジが形成されるのではなく、移行部は境界がはっきりせず、そしてむしろ、気体で満たされたまたは満たされていない小さな領域が残り得る。しかしながら場合によっては、特に真空下で適用が実施される場合は下地に適合させることもできる。さらに、感圧接着剤は局所的に異なる強さで圧迫されるため、流動プロセスによってエッジ構造部での高さの差をある程度ならすことができる。図示した寸法も原寸に比例しているわけではなく、むしろわかりやすい表現だけを目的としたものである。特に電子構造物自体は一般的には比較的平べったく形成されている(しばしば1μm厚未満)。
【0141】

浸透性
酸素(OTR)および水蒸気(WVTR)に関する浸透性の決定は、DIN53380の第3部またはASTM F−1249に基づいて行われた。これに関しては、支持体材料を含めない層厚が50μmの接着剤で測定した。酸素透過性に関しては23℃および相対湿度50%で測定した。水蒸気透過性は37.5℃および相対湿度90%で決定した。
【0142】
耐用期間試験
電子構成物の耐用期間を決定するための尺度としてカルシウム試験を採用した。この試験は図5に示されている。このために真空中で、20×20mmの大きさの薄いカルシウム層23をガラスプレート21上に堆積させ、その後、窒素雰囲気下で貯蔵する。カルシウム層23の厚さは約100nmである。カルシウム層23をカプセル化するために、試験すべき接着剤22および支持体材料としての薄いガラス板24(35μm、Schott社)を備えた接着テープ(26×26mm)を使用する。安定化のため、薄いガラス板は、50μm厚の光学的に非常に透明なアクリレート感圧接着剤の転写式接着テープ25により、100μm厚のPETフィルム26とラミネート加工されていた。接着剤22がすべての側で3mmはみ出ている縁(A−A)を設けながらカルシウム面23をカバーするように、接着剤22をガラスプレート21上に適用する。非透過性のガラス支持体24により、感圧接着剤を通る浸透だけが確定される。
【0143】
この試験は、例えばA. G. Erlatら、「47th Annual Technical Conference Proceedings−Society of Vacuum Coaters」、2004、654〜659頁(非特許文献1)、およびM. E. Grossら「46thAnnual Technical Conference Proceedings−Society of Vacuum Coaters」、2003、89〜92頁(非特許文献2)に記載されているような、カルシウムと水蒸気および酸素との反応に基づいている。この場合、水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムへの変化によって増大するカルシウム層の光透過性が監視される。この変化は、上述の試験構成の場合は縁から起こり、したがってカルシウム面の可視面積が減少していく。カルシウム面の面積が半減するまでの時間を耐用期間と言う。測定条件として、60℃および相対湿度90%が選択される。サンプルは、感圧接着剤を25μmの層厚で面全体に気泡なく貼り付けられた。測定値(単位はh)は、3回の個別の測定からの平均値として示した。
【0144】
気泡試験
転写式接着テープを、無機バリア層を備えた厚さ25μmのPETバリアフィルム(ASTM F−1249およびDIN53380の第3部および上述の条件に対応したWVTR=8×10−2g/m・dおよびOTR=6×10−2cm/m・d・bar)に貼り付け、下記の方法に対応して室温(23℃)でラミネート加工する。続いて接着剤の第2の面を同じフィルムを用いて同様に下記のようにラミネート加工し、その際、シリコーン被覆されたPETフィルムは予め取り除いておく。24時間の養生期間の後、準備したサンプルを85℃および相対湿度85%で20時間貯蔵する。この複合体内で気泡が発生するかどうか、およびいつ発生するかを調べ、cm当たりの気泡の数および気泡の平均サイズを決定する。最初の気泡が出現するまでの期間を記録する。
【0145】
接着力
接着力の決定は以下のように実施した。すなわち、規定の被接着下地としてスチール面、ポリエステル面(PET)、およびポリエチレン面(PE)を用いた。試験すべき貼付可能な平坦要素を幅20mmおよび長さ約25cmに裁断し、把持区間を設け、その直後に4kgのスチールローラを用いて10m/minの送りで、それぞれ選択された被接着下地に5回押しつけた。その後すぐ、貼付可能な平坦要素を、引張試験機(Zwick社)を用いて180°の角度で被接着下地から剥ぎ取り、このために室温で必要な力を測定した。測定値(単位はN/cm)は、3回の個別の測定からの平均値として示した。
【0146】
SAFT−せん断接着破壊温度
この試験は、温度負荷下での接着テープのせん断強度を迅速検査するために用いられる。このために、試験すべき接着テープを温度調節可能なスチールプレートに接着させ、おもり(50g)で負荷をかけてせん断距離を記録する。
【0147】
測定試料の準備:
試験すべき接着テープを50μm厚のアルミニウムフィルムに接着させる。こうして準備した接着テープを10mm×50mmの大きさに裁断する。
【0148】
裁断した接着テープ試料を、研磨してアセトンで洗浄したスチール試験プレート(材料1.4301、DIN EN 10088−2、表面2R、表面粗さR30〜60nm、寸法50mm×13mm×1.5mm)に、試料の貼付面が高さ×幅=13mm×10mmであって上縁においてスチール試験プレートを2mmだけ張り出すように貼り付ける。続いて固定のため、2kgのスチールローラを10m/minの速度で6回その上で転動させる。試料を上側で面一に、距離測定センサのための支持部として役立つ安定した接着細長片で補強する。その後、より長くはみ出ている接着テープ端部が垂直に下を指すように、スチールプレートで試料を吊るす。
【0149】
測定:
測定すべき試料の下端で50gのおもりにより負荷をかける。貼り付けた試料を有するスチール試験プレートを、25℃から始めて1分につき9℃の割合で200℃の最終温度へと加熱する。
【0150】
温度および時間に応じた試料の滑り距離を距離測定センサにより観察する。最大滑り距離を1000μm(1mm)と定め、これを上回ると試験を中断し、それまでに達した温度を試験結果として示す。相対湿度は50±5%である。
【0151】
分子量決定
重量平均分子量Mは、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって決定する。溶離液として、0.1体積%のトリフルオロ酢酸を含むTHFを用いる。測定は25℃で行う。プレカラムとして、PSS−SDV、5μ、10Å、ID8.0mm×50mmを使用する。分離にはカラムPSS−SDV、5μ、10ならびに10および10をそれぞれID8.0mm×300mmで用いる。試料濃度は4g/lであり、貫流量は1分当たり1.0mlである。PMMA標準に対して測定する(μ=μm、1Å=10−10m)。
【0152】
サンプルの製造
例1〜例5での接着剤を溶液状態で製造した。このために個々の成分をトルエン中に溶解し(固形分40%)、シリコーン被覆された50μm厚のPETフィルム上にコーティングし、120℃で15分間乾燥すると、これにより単位面積当りの重量が25または50g/mの接着剤層ができた。
【0153】
【表1】
【0154】
【表2】
【0155】
【表3】
【0156】
【表4】
【0157】
【表5】
【0158】
結果
上に挙げた例の接着技術的評価のために、まずは接着力およびSAFT試験についての試験を実施した。
【0159】
【表6】
【0160】
見て分かるように、すべての例で、すべての下地への高い接着力を達成することができ、例1および3の両方で、温度上昇時の優れた耐性を達成できた。
【0161】
浸透性測定の結果を表2に示す。
【0162】
【表7】
【0163】
見て分かるように、接着剤のバリア作用は、浸透速度が低い範囲内にあり、このことからこの接着剤は特に電子構成物のカプセル化に適している。
【0164】
ラミネート加工試験
例1、例2、例4、および例5
図1に示したような方法により、真空チャンバ内で50mbarの圧力および室温でラミネート加工を実施した。このために、図1に示したエラストマーで覆われたロール(ショアA硬度40)を含む装置を真空チャンバに入れた。接着剤を有しており試験方法に応じて製造および裁断された平坦構造物を、予めラミネートロール上に固定し、縁を、土台支持体上に両面接着テープで固定した土台と接触させた。真空を生成した後、回転実施部によりラミネートロールを回転させ、ここで、土台に感圧接着剤が付着することにより、土台もろとも土台支持体がラミネートロールの下を通って引っ張られ、これにより20N/cmのラミネート力でラミネートが製造された。
【0165】
例3
100℃の温度において、Laufer社の真空加熱プレス内で、約1MPaの圧力をかけてラミネート加工を実施した。その際、試験方法に応じて製造および裁断された熱溶融接着性の平坦構造物を、圧縮可能なスペーサを使って土台の上方に約3mmの間隔をあけて配置し、残圧50mbarの真空を生成してからプレスの作動により土台と接触させた。カルシウム面を有する構成物は相応に保護ガス下で製造し、プレスにより変形可能な容器に入れて真空プレス内に入れた。この容器は外側で真空が生成されると、内包する保護ガスの超過圧により独りでに開いた。その際、保護ガスが真空吸引により取り除かれた。保護ガス容器およびスペーサは、ラミネート加工を妨害しないように設計した。
【0166】
例6〜例9
図3に示したような方法により、真空ボックス内で550mbarの圧力および約40N/cmのラミネート力でラミネート加工を実施した(ロール硬度はショアA40)。耐用期間試験用のサンプルの製造については、図3に概略的に示した装置を窒素で満たしたグローブボックス内に設置し、真空ポンプの排気流をグローブボックス内に導くことで、そこでの負圧形成を回避した。それ以外の試験用のラミネートの製造に関しては空気雰囲気で装置を稼働させた。土台と、感圧接着剤を含む平坦構造物とは、裁断物として供給した。
【0167】
比較例1、比較例2、比較例4、および比較例5
図1に対応する上述の装置により、室温において、窒素雰囲気下のグローブボックス内ないしは周囲空気で、ならびに大気圧(約1.013bar)でラミネート加工を実施した。接着剤を有する裁断された平坦構造物を予めラミネートロール上に固定し、土台支持体上に両面接着テープで固定した土台と接着させた。ラミネートロールを回転させ、ここで、土台に感圧接着剤が付着することにより、土台もろとも土台支持体がラミネートロールの下を通って引っ張られ、これにより20N/cmのラミネート力でラミネートが製造された。
【0168】
比較例3
100℃の温度において、Laufer社の真空加熱プレス内で、約1MPaの圧力をかけてラミネート加工を実施した。その際、試験方法に応じて製造および裁断された熱溶融接着性の平坦構造物を、圧縮可能なスペーサを使って土台の上方に約3mmの間隔をあけて配置し、大気圧でのプレスの作動により土台と接触させた。カルシウム面を有する構成物は相応に保護ガス下で製造し、プレスにより変形可能な容器に入れて加熱プレス内に入れた。この容器は、プレス作動時の容器の圧縮の際の超過圧により独りでに開き、したがって被検体に接触する前には大気圧が生じた。
【0169】
耐用期間試験および気泡試験の結果
【0170】
【表8】
【0171】
耐用期間試験は、例1と比較例1、例2と比較例2などのそれぞれの比較が示すように、本発明に基づく方法により耐用期間が著しく延長されることを示している。これは、接着剤による表面の濡れの改善で説明される。これによりマイクロ気泡の混入がより少なくなり、すなわち界面での浸透経路がより密封になる。
【0172】
気泡試験では明らかな改善が示されている。幾つかの比較物質はもはや14日以内にはまったく気泡形成を示さず、その他では最初の気泡形成までの期間が延長される。これも界面での、その後の気泡形成のもととなるマイクロ気泡の減少に材料している。
尚、本発明はさらに下記の実施の態様も含みます:
(1)電子的装置が土台上で提供される、浸透物に対する電子的装置のカプセル化方法であって、
土台のうち電子的装置のカプセル化すべき領域を取り巻く面が、好ましくは前記面および電子的装置のカプセル化すべき領域が、少なくとも1種の接着剤を含む平坦構造物と真空中で接触され、それに基づいて複合体が製造されることを特徴とする方法。
(2)感圧接着剤である、前記(1)に記載の方法。
(3)(熱)溶融型接着剤である、前記(1)に記載の方法。
(4)真空が、800mbar以下の低減された周囲圧力であり、好ましくは200mbar未満、特に好ましくは50mbar未満、とりわけ好ましくは100〜200mbarの間の圧力である、前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の方法。
(5)その中で平坦構造物が電子的装置上にラミネート加工される真空が、電子的装置および/または土台上で部分的に生成される、前記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の方法。
(6)真空が、2つのロールの間の、ラミネート加工が行われる間隙内で、好ましくは真空シャフトによって生成される、前記(5)に記載の方法。
(7)土台上での電子的装置がシート状の材料として、特に複数の個々の電子的装置の形において提供され、
感圧接着性または熱溶融接着性の平坦構造物がシート状の材料として、特に連続した面として、またはラミネート加工後に電子的装置を完全に包み込む個々の平坦なダイカットとして、提供され、
両方のシート状の材料が連続的に合わせられ、
感圧接着性または熱溶融接着性の平坦構造物と、土台上での電子的装置とのラミネート加工が真空中で行われる、前記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の方法。
(8)ラミネート加工が、ロールと、平らなプレートまたはベルトまたはさらなるロールとの間隙内で、好ましくは2つのロールの間隙内で行われる、前記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の方法。
(9)電子構成物の製造に使用されるさらなる真空方法と組み合わせられる、前記(1)〜(8)のいずれか1つに記載の方法。
(10)電子的装置に、接触の前に薄層カプセル化を施す、前記(1)〜(9)のいずれか1つに記載の方法。
(11)真空が、ラミネート加工場所の地理的高さを上げることにより生成される、(1)〜(10)のいずれか1つに記載の方法。
(12)土台上での電子的装置がシート状の材料として、特に複数の個々の電子的装置の形において提供され、
感圧接着性または熱溶融接着性の平坦構造物がシート状の材料として、特に連続的な平坦物面として、またはシート状の支持土台上に配置された個々の平坦なダイカットとして、提供され、
両方のシート状の材料が、ロール間隙を共に形成しているロール対により真空チャンバ内に送り込まれ、同時に真空チャンバがロールにより密封され、
両方のシート状の材料が、ロール対によりロール間隙内に送り込まれ、ロール間隙内では感圧接着性または熱溶融接着性の平坦構造物と、土台上での電子的装置とのラミネート加工が真空中で行われ、
生じたラミネートが、ラミネートロールのロール間隙を通って真空チャンバから送り出される、前記(1)〜(11)のいずれか1つに記載の方法を実施するための装置。
(13)ロールがエラストマーから製造されているかまたはエラストマーの上張りを備えており、これによりロールが、好ましくはロール表面では、室温で50未満のショアA硬度を有する、前記(9)に記載の装置。
【符号の説明】
【0173】
1 土台
2 電子構成物
3 熱溶融型接着剤または感圧溶融型接着剤を含む平坦構造物(接着テープ)
4 ラミネートロール
41 第2のラミネートロール
5 真空チャンバ
6 真空ボックス
7 密封ロール
8 土台
9 カバー
21 ガラスプレート
22 接着剤
23 カルシウム面
24 薄いガラス板
25 転写式接着テープ
26 PETフィルム
図1
図2
図3
図4
図5