(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012622
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】ホスホマイシン医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/665 20060101AFI20161011BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20161011BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20161011BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20161011BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
A61K31/665
A61K47/18
A61K9/14
A61P13/02 105
A61P31/04
【請求項の数】13
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-545445(P2013-545445)
(86)(22)【出願日】2011年12月19日
(65)【公表番号】特表2014-500301(P2014-500301A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】ES2011000366
(87)【国際公開番号】WO2012085304
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2014年11月25日
(31)【優先権主張番号】P201001613
(32)【優先日】2010年12月24日
(33)【優先権主張国】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】513157028
【氏名又は名称】アラファルマ グループ, エセ.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ピコルネイ ダルデール, カルロス
【審査官】
山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−067682(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01747781(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/665
A61K 9/00−9/72
A61K 47/00−47/48
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ホスホマイシントロメタモール、
b)グリシン及び
c)任意成分の他の医薬的に許容可能な賦形剤
を含有し、糖及び糖アルコールを実質的に含まないことを特徴とする経口投与のための安定な固形ホスホマイシン医薬組成物。
【請求項2】
少なくとも医薬的に許容可能な甘味料を更に含有することを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
甘味料がスクラロース、 アセサルフェーム、アスパルテーム、サッカリン、アリターム、シクラメート、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、タウマチン及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
甘味料がスクラロースであることを特徴とする請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
他の医薬的に許容可能な賦形剤、例えば流動促進剤、結合剤、香味料又はそれらの混合物を含有することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
組成物の全重量に対する重量によって表して、
a)30%から99.9%のホスホマイシントロメタモール、
b)0.1から70%のグリシン、及び
c)組成物を100%の全重量にするのに十分な量の任意成分の他の医薬的に許容可能な賦形剤
を含有することを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
組成物の全重量に対する重量によって表して、
a)約63%のホスホマイシントロメタモール、
b)約32%のグリシン、及び
c)組成物の100%の全重量にするのに十分な量の任意成分の他の医薬的に許容可能な賦形剤
を含有することを特徴とする請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
組成物の全重量に対する重量によって表して、
a)30%から99.9%のホスホマイシントロメタモール、
b)0.1から70%のグリシン、
c)0.0から5.0%の甘味料、及び
d)組成物の100%の全重量にするのに十分な量の任意成分の他の医薬的に許容可能な賦形剤
を含有することを特徴とする請求項6又は7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
組成物の全重量に対する重量によって表して、
a)約63%のホスホマイシントロメタモール、
b)約32%のグリシン、
c)約1.3%のスクラロース、
d)約0.1%の二酸化珪素
e)約2.2%のポリビニルピロリドン、及び
f)約1.4%のレモン香味料
を含有することを特徴とする請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
溶液のための粉末又は顆粒であることを特徴とする請求項1から9の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
溶液のための粉末又は顆粒が水に可溶性であることを特徴とする請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
下部尿路の単純性急性感染症の治療又は予防のための医薬の製造における、請求項1から11の何れか一項に記載の経口投与のための安定なホスホマイシン固形医薬組成物の使用。
【請求項13】
下部尿路の単純性急性感染症の治療又は予防のための、請求項1から11の何れか一項に記載の経口投与のための安定なホスホマイシン固形医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗生物質ホスホマイシンの経口投与のための安定な医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化学名がモノ(2−アンモニウム−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)(2R,cis)−(3−メチルオキシラニル)ホスホネートであるホスホマイシントロメタモールは、下部尿路の単純性急性感染症の予防と治療に効能がある抗生物質である。
経口投与のための幾つかのホスホマイシントロメタモール医薬組成物が従来技術において開示されている。
【0003】
スペイン特許出願ES495870(Zambon, S.p.a.)は、ホスホマイシントロメタモール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ラクトース、二酸化チタン、オレンジ香味料及びスクロースを含む小袋形態の経口投与のための組成物を記載している。この組成物中のスクロース含有量は、活性物質の用量に応じて、組成物の全重量に対する重量で表して56から76%の間で変化する。
【0004】
他のスペイン特許出願ES2020790(Zambon Group, S.p.a.)は、ホスホマイシントロメタモール、サッカリン、香味料及びスクロースを含む顆粒を開示している。この組成物中のスクロース含有量は、組成物の全重量に対する重量で表して28%を含有する。
【0005】
スペイン特許出願ES2224869(Zambon Group, S.p.a.)はホスホマイシントロメタモール医薬組成物を安定化させるためのある種の塩基性化合物の使用を開示している。実施例に記載された幾つかの組成物はまた組成物の全重量に対する重量で表して16%から22%の間のスクロースの使用を述べている。
【0006】
スペイン特許出願ES2244333(Simbec Iberica, S.L.)は、ホスホマイシントロメタモール、マンニトール及び/又はキシリトール、並びにアセサルフェーム、アスパルテーム、サッカリン、アリターム及び/又はシクラメートを含む群から選択される人工甘味料を含有する医薬組成物を開示している。マンニトール及び/又はキシリトールの含有量は組成物の全重量に対する重量で表して20−40%を含む。
【0007】
ホスホマイシントロメタモール医薬組成物におけるスクロース、フルクトース又はグルコース糖のある種の糖の存在は、トロメタモールアミン又は組成物に存在する任意の他の第一級アミノ基とかかる糖のアルデヒド基との間の反応のため望ましくない着色を生じうる。更に、これらの糖の存在は、得られた医薬組成物を糖尿病患者への投与に適していないものにする。
【0008】
他方、糖誘導体、例えば糖アルコール、特にキシリトール、マンニトール、ソルビトール又はそれらの混合物を含有する医薬組成物が腸の問題、例えば望ましくない緩下作用又は腹部ガスを生じうることは当該技術分野においてよく知られている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ホスホマイシントロメタモール、グリシン、場合によっては他の医薬的に許容可能な賦形剤を含有し、スクロース、フルクトース、グルコース、キシリトール、マンニトール、ソルビトール又はそれらの混合物等の糖及び糖アルコールを実質的に含まないことを特徴とする経口投与のための安定な固形ホスホマイシン医薬組成物に関する。
「実質的に含まない」なる用語は、糖又は糖アルコール含有量が存在しないか又は非常に低く、本発明のホスホマイシン医薬組成物が尚も着色から安定であり、糖尿病に適しており、腸の問題を生じないことであることが理解される。
【0010】
グリシンは欧州薬局方6.0によれば5.9と6.4の間のpH値を有している中性アミノ酸である。グリシンは側鎖を有していない;グリシンはキラル中心のない独特のアミノ酸である。
【0011】
このアミノ酸は、苦いか酸味のある他のアミノ酸とは異なり、僅かに甘い味を有しており、経口投与医薬組成物において希釈剤として使用されるのに適している。更に、その構造にアルデヒド基がないので、アミンとのメイラード反応による着色が避けられ、着色から安定な組成物を得ることが可能になる。同時に、グリシンを含有する医薬組成物は、如何なる血糖反応も生じないので糖尿病患者に対して如何なるリスクも与えず、望ましくない緩下作用又は腹部ガスのような消化器系の問題を生じせしめない。
【0012】
グリシンの量は、ホスホマイシントロメタモール固形経口医薬組成物を得るために、当該技術分野における通常の既知の方法によって当業者が容易に決定できる。一般に、ホスホマイシン医薬組成物に存在するグリシンの量は組成物の全重量に対する重量によって表して0.1%から70%を含みうる。好ましくは、グリシンの量は、組成物の全重量に対する重量で20から50%を含む。
【0013】
場合によっては、このホスホマイシントロメタモール医薬組成物はその嗜好性を改善するために一又は複数の甘味料を含有する。好ましくは、甘味料は、スクラロース、アセサルフェーム、アスパルテーム、サッカリン、アリターム、シクラメート、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、タウマチン及びそれらの混合物を含む群から選択される。
より好ましくは、ホスホマイシントロメタモール及びグリシンを含有する医薬組成物の嗜好性を改善するために使用される甘味料はスクラロースである。この化合物は、スクロース(蔗糖)の300から1000倍甘く、他の人工甘味料の後味特性を有しておらず、生物によって吸収されず、毒性の問題を提起しない。
【0014】
医薬組成物へのスクラロースの添加は、僅かな量のかかる甘味料を使用してより良い味を得ることを可能にする。この発明のホスホマイシントロメタモール及びグリシン医薬組成物は、組成物の全重量に対する重量によって表して、0.0から5.0%のスクラロース、好ましくは1.0から2.0%を含有しうる。
【0015】
好ましい実施態様では、ホスホマイシン医薬組成物は溶液のための粉末又は顆粒の形態で提供される。より好ましくは、溶液のための粉末又は顆粒は溶液のための単一の投薬袋に含められる。
場合によっては、ホスホマイシン医薬組成物は、経口投与固形組成物を得るため、特に溶液の粉末又は顆粒の形態の医薬組成物を得るために、製薬産業において通常の医薬的に許容可能な賦形剤の一又は複数を更に含有する。
【0016】
好ましくは、これらの賦形剤は、流動促進剤、例えば珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、二酸化珪素、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、タルク、セルロース、スターチ又はそれらの混合物;結合剤、例えば微結晶性セルロース、アルファ化スターチ、コポビドン、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、水素化植物油又はそれらの混合物;及び/又は香味料、例えばオレンジ、タンジェリン、レモン、ラズベリー、イチゴ又はココナッツを含む群から選択される。
より好ましくは、本発明の医薬組成物は、流動促進剤として二酸化珪素、結合剤としてポリビニルピロリドン、及びレモン香味料を更に含有する。
【0017】
この発明の医薬組成物は、遊離酸として表して1.0から4.0gのホスホマイシンに相当する1.9から7.5gのホスホマイシントロメタモールを一般に含む。好ましくは、組成物は、遊離酸として表して2.0から3.0gのホスホマイシンに相当する3.8gから5.6gのホスホマイシントロメタモールを含む。
過去に述べられている活性成分の量は組成物の全重量に対する重量で30%から99.9%の間に相当する。好ましくは、ホスホマイシントロメタモールの含有量は組成物の全重量に対する重量で50%から80%の間である。
【0018】
この発明の経口投与のための安定なホスホマイシン固形医薬組成物は、下部尿路の単純性急性感染症の治療又は予防のための医薬の製造に対して使用することができる。
更に、この発明の経口投与のための安定なホスホマイシン固形医薬組成物は、下部尿路の単純性急性感染症の治療又は予防に使用することができる。
【0019】
この発明のホスホマイシン医薬組成物は、当業者に広く知られた方法により、特に混合及び/又は造粒法により、得ることができる。
【実施例】
【0020】
実施例:溶液のための粉末又は顆粒
成分は均一に混合され、場合によっては当該技術分野において通常の既知の方法によって顆粒化される。得られた固形物は酸形態の2.0g又は3.0gのホスホマイシンに等価な量を含む袋で投与される。
【0021】
ホスホマイシントロメタモール 63%
グリシン 32%
スクラロース 1.3%
レモン香味料 1.4%
二酸化珪素 0.1%
ポリビニルピロリドン 2.2%
計 100%