(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、アルコキシプロピルエステルを内部電子供与体として有するプロ触媒組成物を提供する。アルコキシプロピルエステルは、触媒選択性を向上させる。
【0015】
一実施形態では、触媒組成物が提供される。触媒組成物は、プロ触媒組成物、助触媒、および外部電子供与体を含む。プロ触媒組成物は、マグネシウム部分とチタン部分とアルコキシプロピルエステルとの組合せである。プロ触媒組成物は、プロ触媒組成物の総重量に対して6.5wt%超のアルコキシプロピルエステルを含有する。
【0016】
プロ触媒前駆体
プロ触媒組成物は、アルコキシプロピルエステル(内部電子供与体)の存在下での、プロ触媒前駆体とハロゲン化剤との間の複数回(2回、3回またはそれ以上)の接触によって形成される。プロ触媒前駆体は、マグネシウムを含有し、また、マグネシウム部分化合物(MagMo)、混合マグネシウムチタン化合物(MagTi)または安息香酸エステル含有塩化マグネシウム化合物(BenMag)であってもよい。一実施形態では、プロ触媒前駆体は、マグネシウム部分(「MagMo」)前駆体である。「MagMo前駆体」は、マグネシウムを唯一の金属成分として含有する。MagMo前駆体は、マグネシウム部分を含む。適切なマグネシウム部分の非限定的な例としては、無水塩化マグネシウムおよび/またはそのアルコール付加物、マグネシウムアルコキシドもしくはアリールオキシド、混合マグネシウムアルコキシハロゲン化物、および/または炭酸化マグネシウムジアルコキシドもしくはアリールオキシドが挙げられる。1つの実施形態では、MagMo前駆体は、マグネシウムジ(C
1〜4)アルコキシドである。さらなる実施形態では、MagMo前駆体は、ジエトキシマグネシウムである。
【0017】
一実施形態では、プロ触媒前駆体は、混合マグネシウム/チタン化合物(「MagTi」)である。「MagTi前駆体」は、式Mg
dTi(OR
e)
fX
gを有し、式中、R
eは、1個から14個の炭素原子を有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素ラジカルまたはCOR’(ここで、R’は、1個から14個の炭素原子を有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素ラジカルである)であり;各OR
e基は、同一であるかまたは異なり;Xは独立に、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくは塩素であり;dは、0.5から56または2から4であり;fは、2から116または5から15であり;gは、0.5から116または1から3である。MagTi前駆体は、その調製で使用した前駆体反応媒体からアルコールを除去することによる、制御された沈殿によって調製される。一実施形態では、反応媒体は、芳香族液体、例えば、塩素化芳香族化合物またはクロロベンゼンと、アルカノール、特にエタノールとの混合物を含む。適切なハロゲン化剤としては、四臭化チタン、四塩化チタンまたは三塩化チタン、特に四塩化チタンが挙げられる。ハロゲン化に使用した溶液からアルカノールを除去することにより、所望の形態および表面積を有する固体前駆体が沈殿する。さらなる実施形態では、得られたプロ触媒前駆体は、粒度が本質的に均一である複数の粒子である。
【0018】
一実施形態では、プロ触媒前駆体は、安息香酸エステル含有塩化マグネシウム物質である。本明細書で使用する場合、「安息香酸エステル含有塩化マグネシウム」(「BenMag」)は、安息香酸エステル内部電子供与体を含有する、プロ触媒(すなわち、ハロゲン化されたプロ触媒前駆体)であり得る。BenMag物質はまた、ハロゲン化チタンなどのチタン部分を含むこともできる。安息香酸エステル内部供与体は、不安定であり、プロ触媒および/または触媒の合成中に、他の電子供与体に置きかえられ得る。適切な安息香酸エステル基の非限定的な例としては、安息香酸エチル、安息香酸メチル、p−メトキシ安息香酸エチル、p−エトキシ安息香酸メチル、p−エトキシ安息香酸エチル、p−クロロ安息香酸エチルが挙げられる。1つの実施形態では、安息香酸エステル基は、安息香酸エチルである。適切なBenMagプロ触媒前駆体の非限定的な例としては、The Dow Chemical Company、Midland、Michiganから入手可能な商品名SHAC(商標)103およびSHAC(商標)310というプロ触媒が挙げられる。一実施形態では、BenMagプロ触媒前駆体は、安息香酸エステル化合物の存在下での、任意のプロ触媒前駆体(すなわち、MagMo前駆体またはMagTi前駆体)のハロゲン化の生成物であってもよい。
【0019】
プロ触媒組成物
本開示は、方法を提供する。一実施形態では、プロ触媒組成物を製造するための方法が提供され、この方法は、プロ触媒前駆体を、アルコキシプロピルエステルおよびハロゲン化剤と接触させるステップを含む。プロ触媒前駆体としては、安息香酸エステル含有塩化マグネシウム(BenMagプロ触媒前駆体)が挙げられる。この方法は、マグネシウム部分とチタン部分とアルコキシプロピルエステルを含む内部電子供与体とを含むプロ触媒組成物を形成するステップを含む。
【0020】
プロ触媒前駆体は、プロ触媒組成物を形成するために、アルコキシプロピルエステルの存在下で、ハロゲン化剤と、2回、3回またはそれ以上接触させる。アルコキシプロピルエステルは、内部電子供与体である。本明細書で使用する場合、「内部電子供与体」(または「IED」)は、プロ触媒組成物の形成中に添加される、そうでなければ形成される化合物であって、得られたプロ触媒組成物に存在する1種または複数の金属に少なくとも1対の電子を供与する化合物である。特定の理論に縛られることを望むものではないが、ハロゲン化(およびチタン化)の間、内部電子供与体は、(1)活性部位の形成を調節し、それにより、触媒の立体選択性を高め、(2)マグネシウムベースの担体上のチタンの位置を調節し、(3)マグネシウム部分およびチタン部分の、各ハロゲン化物への転化を容易にし、(4)転化中に、ハロゲン化マグネシウム担体の結晶子径を調節すると考えられる。したがって、内部電子供与体を与えることによって、立体選択性が高められたプロ触媒組成物がもたらされる。内部電子供与体は、1種、2種またはそれ以上のアルコキシプロピルエステルである。
【0021】
プロ触媒合成の場面における「接触させること」、「接触」または「接触ステップ」は、プロ触媒前駆体/中間体、(任意選択のチタン化剤を有する)ハロゲン化剤、アルコキシプロピルエステルおよび溶媒を含有する、(場合により加熱した)反応混合物において起こる化学反応である。「接触ステップ」の反応生成物は、アルコキシプロピルエステル(内部電子供与体)と複合体を形成した、マグネシウム部分、チタン部分の組み合わせである、プロ触媒組成物(またはプロ触媒中間体)である。
【0022】
ハロゲン化(またはハロゲン化すること)は、ハロゲン化剤によって起こる。本明細書で使用する場合、「ハロゲン化剤」は、プロ触媒前駆体(またはプロ触媒中間体)を、ハロゲン化物形態に転化させる化合物である。本明細書で使用する場合、「チタン化剤」は、触媒的に活性なチタン種をもたらす化合物である。ハロゲン化およびチタン化は、プロ触媒前駆体に存在するマグネシウム部分を、ハロゲン化マグネシウム担体に転化させ、その上に、(ハロゲン化チタンなどの)チタン部分が堆積される。
【0023】
一実施形態では、ハロゲン化剤は、式Ti(OR
e)
fX
hを有するハロゲン化チタンであり、式中、R
eおよびXは、上述の通り定義され、fは、0から3の整数であり、hは、1から4の整数であり、f+hは4である。このように、ハロゲン化チタンは、ハロゲン化剤であると同時にチタン化剤である。さらなる実施形態では、ハロゲン化チタンは、TiCl
4であり、ハロゲン化は、TiCl
4によるプロ触媒前駆体の塩素化によって起こる。塩素化(およびチタン化)は、ジクロロベンゼン、o−クロロトルエン、クロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、キシレン、オクタンまたは1,1,2−トリクロロエタンなどの、塩素化または非塩素化芳香族または脂肪族液体の存在下で行われる。さらに別の実施形態では、ハロゲン化およびチタン化は、40〜60体積パーセントのハロゲン化剤、例えば、TiCl
4を含む、ハロゲン化剤と塩素化芳香族液体との混合物を使用することにより行われる。
【0024】
一実施形態では、該方法は、反応混合物にアルコキシプロピルエステルを添加する前に、安息香酸エステル含有塩化マグネシウムプロ触媒前駆体をハロゲン化剤で前もってハロゲン化するステップを含む。ハロゲン化剤は、TiCl
4であってもよい。
【0025】
一実施形態では、プロ触媒組成物は、参照により本明細書にその内容全体が組み込まれている、2010年12月21日出願の、同時係属中の米国特許出願第12/974,548号(代理人参照番号第70317号)に記載されている1つまたは複数の方法による複数回の接触ステップによって製造される。アルコキシプロピルエステルを有するプロ触媒組成物は、6.5wt%超または10wt%超から15wt%のアルコキシプロピルエステルを含有する。重量パーセントは、プロ触媒組成物の総重量に基づく。
【0026】
本出願人は、驚くべきことに、アルコキシプロピルエステルを有するプロ触媒組成物が、従来のアルコキシアルキルエステル含有プロ触媒と比較すると、意外にも、選択性が向上したプロ触媒組成物をもたらすことを発見した。6.5wt%超のアルコキシプロピルエステルを有する本プロ触媒組成物は、有利なことに、従来のアルコキシアルキルエステル含有プロ触媒よりも多くアルコキシアルキルエステル(すなわち、アルコキシプロピルエステル)を含有する。本プロ触媒組成物は、フタル酸エステルを含まないが、フタル酸エステル含有プロ触媒組成物と比較すると、同一のまたは向上した選択性および/もしくは触媒活性、水素応答、ならびに/またはポリマーの融点を示す。これらの向上により、本プロ触媒組成物が、ポリマーの商業生産に適したものになる。
【0027】
加えて、本プロ触媒組成物は、より少量の塩化チタンを含有し、その塩化チタンは、フォルマントポリマー中で、より低いレベルの残留金属および/または残留ハロゲン化物になり得る。残留金属および/または残留ハロゲン化物は、例えば、キャパシタフィルムなどの、ポリマーの多くの最終用途において有害である。
【0028】
アルコキシプロピルエステルは下記の構造(I)を有する。
【0030】
R、R
1、R
2、R
3およびR
4は、同一であるかまたは異なる。Rは、無置換脂肪族C
3〜C
20第二級アルキル基、置換脂肪族C
3〜C
20第二級アルキル基、無置換C
2〜C
20アルケニル基および置換C
2〜C
20アルケニル基から選択される。R
1は、無置換C
1〜C
20第一級アルキル基、置換C
1〜C
20第一級アルキル基およびC
2〜C
20アルケニル基から選択される。R
2〜R
4のそれぞれは、水素、無置換C
1〜C
20第一級アルキル基、置換C
1〜C
20第一級アルキル基、C
2〜C
20アルケニル基およびそれらの組合せから選択される。
【0031】
一実施形態では、RおよびR
1〜R
4のそれぞれは、以下の構造(II)を有する置換/無置換C
2〜C
20アルケン基から選択される。
C(H)=C(R
11)(R
12) (II)
【0032】
R
11およびR
12は、同一であるかまたは異なる。R
11およびR
12のそれぞれは、水素およびC
1〜C
18ヒドロカルビル基から選択される。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「ヒドロカルビル」または「炭化水素」は、分岐または非分岐、飽和または不飽和、環式、多環式、縮合または非環式種およびそれらの組み合わせを含む、水素原子および炭素原子のみを含有する置換基である。ヒドロカルビル基の非限定的な例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、アルキルアリール基およびアルキニル基が挙げられる。
【0034】
本明細書で使用する場合、用語「置換ヒドロカルビル」または「置換炭化水素」は、1つまたは複数の非ヒドロカルビル置換基で置換されているヒドロカルビル基である。非ヒドロカルビル置換基の非限定的な例は、ヘテロ原子である。本明細書で使用する場合、「ヘテロ原子」は、炭素または水素以外の原子である。ヘテロ原子は、周期表のIV族、V族、VI族およびVII族からの非炭素原子であり得る。ヘテロ原子の非限定的な例としては、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、N、O、P、B、SおよびSiが挙げられる。置換ヒドロカルビル基としては、ハロヒドロカルビル基およびケイ素含有ヒドロカルビル基も挙げられる。本明細書で使用する場合、用語「ハロヒドロカルビル」基は、1つまたは複数のハロゲン原子で置換されているヒドロカルビル基である。
【0035】
一実施形態では、アルコキシプロピルエステルは、3−メトキシプロピルイソブチレートである。
【0036】
一実施形態では、マグネシウム部分は、塩化マグネシウムである。チタン部分は、塩化チタンである。
【0037】
得られたプロ触媒組成物は、約1.0wt%、約1.5wt%または約2.0wt%から、約6.0%、約5.5wt%または約5.0wt%のチタン含有率を有する。固体プロ触媒組成物におけるチタンとマグネシウムとの重量比は、適切には、約1:3から約1:160の間、約1:4から約1:50の間、または約1:6から1:30の間である。アルコキシプロピルエステルは、アルコキシプロピルエステルとマグネシウムとのモル比が、約0.005:1から約1:1、または約0.01:1から約0.4:1で、プロ触媒組成物に存在し得る。重量パーセントは、プロ触媒組成物の総重量に基づく。
【0038】
プロ触媒組成物は、本明細書に開示する2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0039】
触媒組成物
本開示は、触媒組成物を提供する。一実施形態では、触媒組成物は、6.5wt%超のアルコキシプロピルエステルを含有するプロ触媒組成物、助触媒、および外部電子供与体を含む。プロ触媒組成物は、上に開示した構造(I)〜(II)を含有する前述のプロ触媒組成物のいずれかであってもよい。
【0040】
本明細書で使用する場合、「助触媒」は、プロ触媒を活性な重合触媒に転化することができる物質である。助触媒としては、アルミニウム、リチウム、亜鉛、スズ、カドミウム、ベリリウム、マグネシウムの水素化物、アルキルまたはアリール、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。一実施形態において、助触媒は、式R
nAlX
3−nで表されるヒドロカルビルアルミニウム化合物であり、式中、n=1、2または3、Rはアルキルであり、Xはハロゲン化物またはアルコキシドである。一実施形態では、助触媒は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムおよびトリ−n−ヘキシルアルミニウムから選択される。
【0041】
適切なヒドロカルビルアルミニウム化合物の非限定的な例は、以下のものである:メチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ジエチルアルミニウムエトキシド、塩化ジイソブチルアルミニウム、テトラエチルジアルミノキサン、テトライソブチルジアルミノキサン、塩化ジエチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、二塩化メチルアルミニウム、塩化ジメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジ−n−ヘキシルアルミニウム、二水素化イソブチルアルミニウム、二水素化n−ヘキシルアルミニウム、ジイソブチルヘキシルアルミニウム、イソブチルジヘキシルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリ−n−デシルアルミニウム、トリ−n−ドデシルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウムおよび水素化ジ−n−ヘキシルアルミニウム。
【0042】
一実施形態では、助触媒はトリエチルアルミニウムである。アルミニウムとチタンとのモル比は、約5:1から約500:1、約10:1から約200:1、約15:1から約150:1または約20:1から約100:1である。別の実施形態では、アルミニウムとチタンとのモル比は、約45:1である。
【0043】
本明細書で使用する場合、「外部電子供与体」(または「EED」)は、プロ触媒形成に関係なく添加される化合物であり、また、金属原子に電子対を供与できる少なくとも1つの官能基を含む。特定の理論に縛られるものではないが、触媒組成物に1つまたは複数の外部電子供与体を与えることは、フォルマントポリマーの以下の特性、つまり、立体規則性(すなわち、キシレン可溶性材料)のレベル、分子量(すなわち、メルトフロー)、分子量分布(MWD)および/または融点に影響を及ぼすと考えられる。
【0044】
一実施形態では、EEDは、一般式(III)
SiR
m(OR’)
4−m (III)
を有するケイ素化合物である。
【0045】
式中、Rは、それぞれの出現において独立に、水素;または、1つまたは複数の14族、15族、16族もしくは17族のヘテロ原子を含有する1つまたは複数の置換基で場合により置換された、ヒドロカルビル基もしくはアミノ基である。Rは、水素およびハロゲンを数に入れない、20個までの原子を含有する。R’は、C
1〜20アルキル基であり、mは、0、1、2または3である。一実施形態では、Rは、C
1〜20直鎖アルキル、C
6〜12アリール、アラルキルもしくはアルキルアリール、C
3〜12シクロアルキル、C
3〜12分岐アルキルまたはC
2〜12環式アミノ基であり、R’は、C
1〜4アルキルであり、mは、0、1または2である。
【0046】
一実施形態では、ケイ素化合物は、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン(MChDMS)またはn−プロピルトリメトキシシラン(NPTMS)およびそれらの任意の組み合わせである。一実施形態では、シリコン化合物は、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、t−ブチルイソプロピルジメトキシシラン、シクロペンチルピロリジノジメトキシシラン、ビス(ピロリジノ)ジメトキシシラン、ビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシランおよびそれらの任意の組合せである。
【0047】
混合外部電子供与体
一実施形態では、本触媒組成物は、混合外部電子供与体(M−EED)を含む。本明細書で使用する場合、「混合外部電子供与体」(「M−EED」)は、以下の構成成分、すなわち、(i)第1の選択性制御剤(SCA1)、(ii)第2の選択性制御剤(SCA2)および(iii)活性制限剤(ALA)のうちの少なくとも2つを含む。
【0048】
SCA1および/またはSCA2に適した化合物の非限定的な例としては、ケイ素化合物、例えば、アルコキシシラン;エーテルおよびポリエーテル、例えば、アルキル−、シクロアルキル−、アリール−、混合アルキル/アリール−、混合アルキル/シクロアルキル−および/または混合シクロアルキル/アリール−エーテルおよび/またはポリエーテル;エステルおよびポリエステル、特に、芳香族モノカルボン酸または芳香族ジカルボン酸などのモノカルボン酸またはジカルボン酸のアルキルエステル、シクロアルキルエステルおよび/またはアリールエステル;そのようなエステルまたはポリエステルのアルキル−またはシクロアルキル−エーテル誘導体またはチオエーテル誘導体、例えば、芳香族モノカルボン酸または芳香族ジカルボン酸のアルキルエステルまたはアルキルジエステルのアルキルエーテル誘導体;ならびに前述のもののすべての15族または16族ヘテロ原子置換誘導体;ならびにアミン化合物、例えば、環式、脂肪族または芳香族アミン、特に、ピペリジン化合物、ピロール化合物またはピリジン化合物が挙げられ、前述のSCAのすべては、合計2個から60個の炭素を含有し、任意のアルキル基またはアルキレン基中に1個から20個の炭素、任意のシクロアルキル基またはシクロアルキレン基中に3個から20個の炭素、および任意のアリール基またはアリーレン基中に6個から20個の炭素を含有する。
【0049】
一実施形態では、SCA1および/またはSCA2は、上に開示した構造(III)を有するシラン組成物である。
【0050】
一実施形態では、SCA1は、ジメトキシシランである。ジメトキシシランとしては、ケイ素原子に直接結合した、少なくとも1つの第二級アルキル基および/または第二級アミノ基を有する、ジメトキシシランを挙げることができる。適切なジメトキシシランの非限定的な例としては、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、t−ブチルイソプロピルジメトキシシラン、シクロペンチルピロリジノジメトキシシラン、ビス(ピロリジノ)ジメトキシシラン、ビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、および前述のものの任意の組合せが挙げられる。さらなる実施形態では、SCA1は、ジシクロペンチルジメトキシシランである。
【0051】
一実施形態では、SCA2は、ジエトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシシラン、2つの直鎖アルキル基を含有するジメトキシシラン、2つのアルケニル基を含有するジメトキシシランから選択されるケイ素化合物、ジエーテル、ジアルコキシベンゼン、およびそれらの任意の組合せである。
【0052】
SCA2に適したケイ素化合物の非限定的な例としては、ジメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、n−オクチルメチルジメトキシシラン、n−オクタデシルメチルジメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、2−クロロエチルメチルジメトキシシラン、アリルジメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルジメトキシシラン、n−プロピルメチルジメトキシシラン、クロロメチルメチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ビニル(クロロメチル)ジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、1−(トリエトキシシリル)−2−(ジエトキシメチルシリル)エタン、n−オクチルメチルジエトキシシラン、オクタエトキシ−1,3,5−トリシラペンタン、n−オクタデシルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−ヒドロキシ−4−(3−メチルジエトキシシリルプロポキシ)ジフェニルケトン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、ドデシルメチルジエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、1,1−ジエトキシ−1−シラシクロペンタ−3−エン、クロロメチルメチルジエトキシシラン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、(メタクリロキシメチル)メチルジエトキシシラン、1,2−ビス(メチルジエトキシシリル)エタン、およびジイソブチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ブテニルトリエトキシシラン、(トリエトキシシリル)シクロヘキサン、O−(ビニルオキシブチル)−N−トリエトキシシリルプロピルカルバメート、10−ウンデセニルトリメトキシシラン、n−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロール、N−[5−(トリメトキシシリル)−2−アザ−1−オキソペンチル]カプロラクタム、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、トリエトキシシリルウンデカナールエチレングリコールアセタール、(S)−N−トリエトキシシリルプロピル−O−メントカルバメート、トリエトキシシリルプロピルエチルカルバメート、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、(3−トリエトキシシリルプロピル)−t−ブチルカルバメート、スチリルエチルトリメトキシシラン、2−(4−ピリジルエチル)トリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、(S)−N−1−フェニルエチル−N’−トリエトキシシリルプロピル尿素、(R)−N−1−フェニルエチル−N’−トリエトキシシリルプロピル尿素、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、7−オクテニルトリメトキシシラン、S−(オクタノイル)メルカプトプロピルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−メトキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、およびO−(メタクリロキシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピル)カルバメート、テトラメトキシシランおよび/またはテトラエトキシシランが挙げられる。
【0053】
一実施形態では、SCA2は、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジ−n−ブチル−ジメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ブタ−3−エニルトリエトキシシラン、1−(トリエトキシシリル)−2−ペンテン、(トリエトキシシリル)シクロヘキサン、および前述のものの任意の組合せであってもよい。
【0054】
一実施形態では、SCA2は、2つの直鎖アルキル基を含有するジメトキシシラン、2つのアルケニル基または水素を含有するジメトキシシラン(ここで、1つまたは複数の水素原子は、ハロゲンにより置換されていてもよい)、およびそれらの任意の組合せから選択される。
【0055】
一実施形態では、SCA2は、ジエーテル、ジエーテルの二量体、ジアルコキシベンゼン、ジアルコキシベンゼンのディマー(dimmer)、直鎖炭化水素基により連結されているジアルコキシベンゼン、およびそれらの任意の組合せであってもよい。以下に記述するALAのためのジエーテルが、SCA2のジエーテルの非限定的な例として同様に適用されることに留意する。
【0056】
M−EEDは、活性制限剤(ALA)を含むことができる。本明細書で使用する場合、「活性制限剤」は、高温での触媒活性、すなわち、約100℃より高い温度の重合条件での重合反応器内における触媒活性を低下させる材料である。ALAを与えることにより、自己制限性触媒組成物がもたらされる。本明細書で使用する場合、「自己制限性」触媒組成物は、約100℃よりも高い温度で、活性の低下を示す触媒組成物である。言い換えると、「自己制限性」は、反応温度が通常80℃より低い通常の重合条件下での触媒活性と比較して、反応温度が100℃超に上がった場合に、触媒活性が大幅に低下することである。加えて、実用標準として、通常の処理条件で行う流動床気相重合などの重合方法が、ポリマー粒子の凝集に関するリスクを減らしながら、その床を停止させて、結果として崩壊させることができる場合、触媒組成物は「自己制限性」であると言う。
【0057】
ALAは、芳香族エステルまたはその誘導体、脂肪族エステルまたはその誘導体、ジエーテル、ポリ(アルキレングリコール)エステル、およびそれらの組合せであってもよい。適切な芳香族エステルの非限定的な例としては、芳香族モノカルボン酸のC
1〜10アルキルまたはシクロアルキルエステルが挙げられる。それの適切な置換誘導体としては、1つまたは複数の14族、15族または16族のヘテロ原子、特に、酸素を含有する1つまたは複数の置換基で、芳香族環(複数可)またはエステル基の両方において置換されている化合物が挙げられる。そのような置換基の例としては、(ポリ)アルキルエーテル基、シクロアルキルエーテル基、アリールエーテル基、アラルキルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ジアルキルアミン基、ジアリールアミン基、ジアラルキルアミン基およびトリアルキルシラン基が挙げられる。芳香族カルボン酸エステルは、安息香酸のC
1〜20ヒドロカルビルエステル(ここで、ヒドロカルビル基は、置換されていないか、1つまたは複数の14族、15族または16族ヘテロ原子含有置換基で置換されている)、およびそのC
1〜20(ポリ)ヒドロカルビルエーテル誘導体、または安息香酸C
1〜4アルキルおよびそのC
1〜4環アルキル化誘導体、または安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、p−メトキシ安息香酸メチル、p−エトキシ安息香酸メチル、p−メトキシ安息香酸エチル、およびp−エトキシ安息香酸エチルであってもよい。一実施形態では、芳香族カルボン酸エステルは、p−エトキシ安息香酸エチルである。
【0058】
一実施形態では、ALAは、脂肪族エステルである。脂肪族エステルは、C
4〜30脂肪族酸エステルであってもよく、モノまたはポリ(2つ以上)エステルであってもよく、直鎖または分岐であってもよく、飽和または不飽和であってもよく、それらの任意の組合せであってもよい。C
4〜30脂肪酸エステルはまた、1つまたは複数の14族、15族または16族ヘテロ原子含有置換基で置換されていてもよい。適切なC
4〜30脂肪族酸エステルの非限定的な例としては、脂肪族C
4〜30モノカルボン酸のC
1〜20アルキルエステル、脂肪族C
8〜20モノカルボン酸のC
1〜20アルキルエステル、脂肪族C
4〜20モノカルボン酸およびジカルボン酸のC
1〜4アリルモノおよびジエステル、脂肪族C
8〜20モノカルボン酸およびジカルボン酸のC
1〜4アルキルエステル、ならびにC
2〜100(ポリ)グリコールまたはC
2〜100(ポリ)グリコールエーテルのC
4〜20モノまたはポリカルボン酸エステル誘導体が挙げられる。さらなる実施形態では、C
4〜30脂肪族酸エステルは、ミリスチン酸イソプロピルおよび/またはセバシン酸ジ−n−ブチルであってもよい。
【0059】
一実施形態では、ALAは、ミリスチン酸イソプロピルである。
【0060】
一実施形態では、ALAは、ジエーテルである。ジエーテルは、以下の式によって示されるジアルキルジエーテルであってもよい:
【0062】
式中、R
1およびR
2が水素原子であってもよいという条件で、R
1〜R
4は互いに独立に、20個までの炭素原子を有するアルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、それらは、場合により、14族、15族、16族または17族ヘテロ原子を含有し得る。適切なジアルキルエーテル化合物の非限定的な例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、2,2−ジメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジエチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−エチル−2−n−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−n−プロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジメチル−1,3−ジエトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−n−プロピル−2−シクロヘキシル−1,3−ジエトキシプロパン、および9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンが挙げられる。さらなる実施形態では、ジアルキルエーテル化合物は、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパンである。
【0063】
一実施形態では、ALAは、ポリ(アルキレングリコール)エステルである。適切なポリ(アルキレングリコール)エステルの非限定的な例としては、ポリ(アルキレングリコール)一または二酢酸エステル、ポリ(アルキレングリコール)モノまたはジミリスチン酸エステル、ポリ(アルキレングリコール)モノまたはジラウリン酸エステル、ポリ(アルキレングリコール)モノまたはジオレイン酸エステル、三酢酸グリセリル、C
2〜40脂肪族カルボン酸のグリセリルトリエステル、およびそれらの任意の組合せが挙げられる。一実施形態では、ポリ(アルキレングリコール)エステルのポリ(アルキレングリコール)部分は、ポリ(エチレングリコール)である。
【0064】
一実施形態では、アルミニウムとALAとのモル比は、1.4〜85:1、2.0〜50:1または4〜30:1であってもよい。1つより多いカルボキシレート基を含有するALAについて、すべてのカルボキシレート基は、有効な構成成分であるとみなす。例えば、2つのカルボキシレート官能基を含有するセバケート分子(sebacate molecule)は、2つの有効な機能分子を有するとみなす。
【0065】
一実施形態では、M−EEDは、ALAとしてのミリスチン酸イソプロピルと、SCA1としてのジシクロペンチルジメトキシシランと、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチル−ジメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ブタ−3−エニルトリエトキシシラン、1−(トリエトキシシリル)−2−ペンテン、(トリエトキシシリル)シクロヘキサン、テトラエトキシシラン、1−エトキシ−2−(6−(2−エトキシフェノキシ)ヘキシルオキシ)ベンゼン、1−エトキシ−2−n−ペントキシベンゼンおよびそれらの任意の組合せから選択されるSCA2とを含む。
【0066】
一実施形態では、M−EEDは、SCA1としてのジシクロペンチルジメトキシシラン、SCA2としてのテトラエトキシシランおよびALAとしてのミリスチン酸イソプロピルを含む。
【0067】
一実施形態では、M−EEDは、SCA1としてのジシクロペンチルジメトキシシラン、SCA2としてのn−プロピルトリエトキシシランおよびALAとしてのミリスチン酸イソプロピルを含む。
【0068】
本触媒組成物は、本明細書に開示した2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0069】
一実施形態では、重合方法が提供される。その重合方法は、重合条件下で、重合反応器内で、プロピレンおよび場合により少なくとも1種の他のオレフィンを、触媒組成物と接触させるステップを含む。触媒組成物は、本明細書に開示する任意の触媒組成物であってもよく、アルコキシプロピルエステルを有するプロ触媒組成物、助触媒、外部電子供与体または混合外部電子供与体(M−EED)を含む。アルコキシプロピルエステルを有するプロ触媒組成物は、6.5wt%超のアルコキシプロピルエステルを含む。その重合方法はまた、4g/10分より高いメルトフローレートを有するプロピレン系ポリマーを形成するステップも含む。プロピレン系ポリマーは、アルコキシプロピルエステルを含有する。
【0070】
一実施形態では、触媒組成物は、活性制限剤(ALA)と第1の選択性制御剤(SCA1)と第2の選択性制御剤(SCA2)とから構成される混合外部電子供与体(M−EED)を含んでいてもよく、または含んでいなくてもよい。重合方法は、アルコキシプロピルエステルを含有し、4g/10分より高い、または5g/10分より高い、または6g/10分より高い、または10g/10分より高い、または25g/10分より高い、または50g/10分より高い、または75g/10分より高い、または100g/10分より高いメルトフローレートから、2000g/10分、または1000g/10分、または500g/10分、または400g/10分、または200g/10分までのメルトフローレートを有するプロピレン系ポリマーを形成するステップを含む。
【0071】
一実施形態では、重合方法により、3.5から6.0のPDIを有するプロピレン系ポリマーが製造される。
【0072】
一実施形態では、本触媒組成物は、(i)上に開示した構造(III)、SCA1またはSCA2から選択される選択性制御剤と、(ii)活性制限剤(ALA)とのSCA/ALA混合物を含む。適切なSCA/ALA混合物の非限定的な例としては、ジシクロペンチルジメトキシシランとミリスチン酸イソプロピル;ジシクロペンチルジメトキシシランとポリ(エチレングリコール)ラウリン酸エステル;ジイソプロピルジメトキシシランとミリスチン酸イソプロピル;メチルシクロヘキシルジメトキシシランとミリスチン酸イソプロピル;メチルシクロヘキシルジメトキシシランと4−エトキシ安息香酸エチル;n−プロピルトリメトキシシランとミリスチン酸イソプロピル;およびそれらの組合せが挙げられる。
【0073】
重合方法は、重合反応器内で、プロピレンおよび場合により少なくとも1種の他のオレフィンを、触媒組成物と接触させるステップを含む。1種または複数のオレフィンモノマーを、プロピレンと共に重合反応器に入れ、触媒と反応させて、ポリマー、コポリマー(または、ポリマー粒子の流動床)を形成することができる。適切なオレフィンモノマーの非限定的な例としては、エチレン、C
4〜20α−オレフィン、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなど;C
4〜20ジオレフィン、例えば、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、ノルボルナジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)およびジシクロペンタジエン;C
8〜40ビニル芳香族化合物、例えば、スチレン、o−、m−およびp−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン;ならびにハロゲン置換C
8〜40ビニル芳香族化合物、例えば、クロロスチレンおよびフルオロスチレンが挙げられる。
【0074】
一実施形態では、重合方法は、プロピレンを触媒組成物と接触させて、プロピレンホモポリマーを形成するステップを含む。
【0075】
一実施形態では、重合方法は、活性なプロピレン系ポリマーを、第1の重合反応器から第2の重合反応器に入れるステップを含む。第1の重合反応器および第2の重合反応器は、直列で稼働し、それにより、第1の重合反応器からの流出物を、第2の重合反応器に装入して、1種または複数の追加の(または異なる)オレフィンモノマーを第2の重合反応器に添加し、重合を継続して、プロピレンコポリマーまたはプロピレンインパクトコポリマーを形成する。さらなる実施形態では、第1の重合反応器および第2の重合反応器のそれぞれが、気相重合反応器である。
【0076】
本明細書で使用する場合、「重合条件」は、触媒組成物とオレフィンとの間の重合を促進して所望のポリマーを形成するのに適した、重合反応器内の温度および圧力のパラメーターである。重合方法は、1つまたは2つ以上の重合反応器において行われる、気相重合法、スラリー重合法またはバルク重合法であってもよい。したがって、重合反応器は、気相重合反応器、液相重合反応器またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0077】
重合反応器内への水素の供給は、重合条件の構成要素であると理解する。重合の間、水素は、連鎖移動剤であり、得られるポリマーの分子量(および、それに対応してメルトフローレート)に影響を与える。
【0078】
一実施形態では、重合は、液相重合により行われる。
【0079】
一実施形態では、重合は、気相重合により行われる。本明細書で使用する場合、「気相重合」は、1種または複数のモノマーを含有する上昇する流動媒体が、触媒の存在下で、流動媒体により流動状態に維持されたポリマー粒子の流動床を通過することである。「流動化」、「流動化されている」または「流動化している」は、微細なポリマー粒子の床が、上昇するガス流により吹き上げられ、撹拌される、気体−固体接触プロセスである。流動化は、粒子床の隙間を通る流体の上昇流が、粒子の重量を超える圧力差および摩擦抵抗増加を得た場合に、粒子床において起こる。したがって、「流動床」は、流動媒体の流れによって流動状態で懸濁した複数のポリマー粒子である。「流動媒体」は、1種または複数のオレフィンガス、場合によってはキャリアガス(例えば、H
2またはN
2)、および場合によっては、気相反応器を上昇する液体(例えば、炭化水素)である。
【0080】
典型的な気相重合反応器(または気相反応器)は、容器(すなわち、反応器)、流動床、分配プレート、入口管および出口管、圧縮機、循環ガス冷却器または熱交換器、ならびに生成物放出システムを含む。容器は、分配プレートよりも上に配置される、反応ゾーンおよび速度低下ゾーンを含む。流動床は、反応ゾーン内に配置される。一実施形態では、流動媒体は、プロピレンガスおよび少なくとも1種の他のガス、例えば、オレフィンならびに/またはキャリアガス、例えば、水素もしくは窒素を含む。
【0081】
一実施形態では、接触は、重合反応器に触媒組成物を供給し、その重合反応器にオレフィンを入れることによって起こる。一実施形態では、重合方法は、オレフィンを助触媒と接触させるステップを含む。助触媒は、プロ触媒組成物を重合反応器に入れる前に、プロ触媒組成物と混合する(前もって混合する)ことができる。別の実施形態では、助触媒は、プロ触媒組成物とは別個に、重合反応器に添加される。重合反応器への助触媒の別個の導入は、プロ触媒組成物の供給と同時にまたは実質的に同時に行うことができる。
【0082】
本出願人らは、驚くべきことに、かつ、予期しなかったことに、混合外部電子供与体の存在が、自己制限性であり、標準の重合条件下で、単一の重合反応器内で、剛性およびメルトフローの高いプロピレン系ポリマーを生成する触媒組成物をもたらすことを発見した。特定の理論に縛られることを望むものではないが、ALAは、過剰な熱により引き起こされる、暴走反応、ポリマーのシーティング、および/またはポリマー凝集を防止することによって、重合反応器の操作性を改善すると考えられる。SCA1およびSCA2を与えることにより、標準の水素レベルの利用で、高い剛性(すなわち、約170℃より高いT
MF)および高いMFRのプロピレン系ポリマーの形成が可能になる。
【0083】
本開示は、ポリマー組成物を提供する。そのポリマー組成物は、前述の重合方法のいずれかによって製造することができる。一実施形態では、ポリマー組成物が提供され、このポリマー組成物は、アルコキシプロピルエステルを含有するプロピレン系ポリマーを含む。そのプロピレン系ポリマーは、4g/10分より高い、または5g/10分より高い、または6g/10分より高い、または10g/10分より高い、または25g/10分より高い、または50g/10分より高い、または75g/10分より高い、または100g/10分より高いメルトフローレートから、2000g/10分、または1000g/10分、または500g/10分、または400g/10分、または200g/10分までのメルトフローレートを有する。
【0084】
一実施形態では、ポリマー組成物は、100g/10分より高いメルトフローレートを有する。
【0085】
一実施形態では、プロピレン系ポリマーは、3.5から6.0のPDIを有する。
【0086】
一実施形態では、ポリマー組成物は、プロピレンホモポリマーである。
【0087】
一実施形態では、ポリマー組成物は、プロピレンコポリマー(例えば、プロピレン/エチレンコポリマー)である。
【0088】
本重合方法は、本明細書に開示する2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0089】
定義
本明細書における元素周期表へのすべての言及は、2003年にCRC Press,Inc.が発行し、版権をもつ、元素周期表を指すものとする。また、族(複数可)へのいかなる言及も、族に番号付けするためのIUPACシステムを使用してこの元素周期表に表されている族(複数可)へのものとする。それに相反するもの、文脈から暗示されるもの、または当技術分野において慣例的なものについて言明しない限り、すべての部およびパーセントは、重量に基づく。米国特許実務のために、本明細書で参照する任意の特許、特許出願または刊行物の内容は、とりわけ合成技術、定義(本明細書に示すいずれの定義とも矛盾のない程度の)、および当技術分野における一般的知識の開示に関して、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる(または、それらに対応する米国版が、参照によりそのように組み込まれる)。
【0090】
本明細書に挙げる任意の数値範囲は、任意の低い値と任意の高い値の間に少なくとも2単位の隔たりがあることを条件として、1単位刻みで、低い値から上位値までのすべての値を含む。一例として、構成成分の量、または組成的もしくは物理的特性の値、例えば、ブレンド構成成分の量、軟化温度、メルトインデックスなどが、1と100の間であると述べている場合、例えば1、2、3などのすべての個々の値、および、例えば1から20、55から70、197から100などのすべての部分的範囲を本明細書に明確に列挙することを意図している。1未満である値について、1単位は、適宜、0.0001、0.001、0.01または0.1であるとみなす。これらは、具体的に意図することの単なる例であり、列挙されている最低値と最高値の間の数値のすべての可能な組み合わせが、本出願において明確に述べられていると考えるべきである。言い換えると、本明細書に挙げる任意の数値範囲は、規定の範囲内の任意の値または部分的範囲を含む。本明細書で論ずる数値範囲、参照メルトインデックス、メルトフローレートおよび他の特性が、列挙されている。
【0091】
本明細書で使用する場合、用語「アルキル」は、分岐または非分岐、飽和または不飽和、非環式炭化水素ラジカル(ヒドロカルビル基)を指す。適切なアルキルラジカルの非限定的な例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル(または2−メチルプロピル)などが挙げられる。各アルキルは、1から20個の炭素原子を有する。
【0092】
本明細書で使用する場合、用語「アリール」は、単一の芳香族環、または一緒に縮合するか、共有結合するか、メチレン部分もしくはエチレン部分などの共通の基と結合する複数の芳香族環であり得る芳香族置換基を指す。芳香族環(複数可)としては、とりわけ、フェニル、ナフチル、アントラセニルおよびビフェニルを挙げることができる。各アリールは、1個および20個の炭素原子を有する。
【0093】
本明細書で使用する場合、「ブレンド」または「ポリマーブレンド」は、2種以上のポリマーのブレンドである。そのようなブレンドは、(分子レベルで相分離しない)混和性であっても混和性でなくてもよい。そのようなブレンドは、相分離しても相分離しなくてもよい。そのようなブレンドは、透過電子分光法、光散乱法、X線散乱法および当技術分野において公知の他の方法により決定される、1つまたは複数のドメイン構造を含有していても含有しなくてもよい。
【0094】
本明細書で使用する場合、用語「組成物」は、組成物を構成する材料の混合物、ならびに、組成物の材料から形成される反応生成物および分解生成物を含む。
【0095】
用語「含む」およびそれらの派生語は、いかなる追加の構成成分、ステップまたは手順の存在も、それらが本明細書に開示されていてもいなくても排除するものではない。いかなる疑義も避けるために、本出願の特許請求の範囲に記載されているすべての組成物は、相反するものについて言明しない限り、用語「含む」を使用することにより、いかなる添加剤、補助剤または化合物(ポリマーであってもなくても)も含むことができる。それに対して、用語「から本質的になる」は、実施可能性に本質的でないものを除いて、その用語に続く任意の列挙の範囲から、いかなる他の構成成分、ステップまたは手順も除外する。用語「からなる」は、具体的に記述または列挙されていない、いかなる構成成分、ステップまたは手順も除外する。用語「または」は、特に言明しない限り、列挙した要素を、個々にならびに任意の組み合わせで指す。
【0096】
本明細書で使用する場合、用語「エチレン系ポリマー」は、(重合可能なモノマーの総重量に対して)過半の重量パーセントの重合したエチレンモノマーを含み、少なくとも1種の重合したコモノマーを場合により含み得るポリマーを指す。
【0097】
本明細書で使用する場合、用語「インターポリマー」は、少なくとも2種の異なるタイプのモノマーの重合により調製されたポリマーを指す。したがって、総称インターポリマーは、2種の異なるモノマーから調製されたポリマーを指すのに通常用いられるコポリマー、および3種以上の異なるタイプのモノマーから調製されたポリマーを含む。
【0098】
用語「オレフィン系ポリマー」は、ポリマーの総重量に対して過半の重量パーセントのオレフィン、例えば、エチレンまたはプロピレンを、重合形態で含有するポリマーである。オレフィン系ポリマーの非限定的な例としては、エチレン系ポリマーおよびプロピレン系ポリマーが挙げられる。
【0099】
用語「ポリマー」は、同一であるかまたは異なるタイプのモノマーを重合することにより調製された高分子化合物である。「ポリマー」は、ホモポリマー、コポリマー、 ターポリマー、インターポリマーなどを含む。用語「インターポリマー」は、少なくとも2つのタイプのモノマーまたはコモノマーの重合により調製されたポリマーを意味する。インターポリマーは、それらに限られないが、コポリマー(2種の異なるタイプのモノマーまたはコモノマーから調製されたポリマーを通常指す)、ターポリマー(3種の異なるタイプのモノマーまたはコモノマーから調製されたポリマーを通常指す)、テトラポリマー(4種の異なるタイプのモノマーまたはコモノマーから調製されたポリマーを通常指す)などを含む。
【0100】
「第一級アルキル基」は、構造−CH
2R
1を有し、そこで、R
1は、水素または置換/無置換ヒドロカルビル基である。
【0101】
本明細書で使用する場合、用語「プロピレン系ポリマー」は、(重合可能なモノマーの総重量に基づいて)過半の重量パーセントの重合したプロピレンモノマーを含み、少なくとも1種の重合したコモノマーを場合により含み得るポリマーを指す。
【0102】
「第二級アルキル基」は、構造−CHR
1R
2を有し、そこで、R
1およびR
2のそれぞれは、置換/無置換ヒドロカルビル基である。
【0103】
本明細書で使用する場合、用語「置換アルキル」は、アルキルの任意の炭素に結合した1個または複数の水素原子が、ハロゲン、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシ、アミノ、ホスフィド、アルコキシ、アミノ、チオ、ニトロおよびそれらの組み合わせなどの別の基に置きかえられる、先に説明したアルキルを指す。適切な置換アルキルとしては、例えば、ベンジル、トリフルオロメチルなどが挙げられる。
【0104】
「第三級アルキル基」は、構造−CR
1R
2R
3を有し、そこで、R
1、R
2およびR
3のそれぞれは、置換/無置換ヒドロカルビル基である。
【0105】
試験方法
最終融点T
MFは、サンプル中の最も完全な結晶を融解する温度であり、アイソタクティシティーおよびポリマーの固有の結晶性の尺度と考えられる。この試験を、Ta Q100示差走査熱量計を使用して行った。サンプルを、80℃/分の速度で0℃から240℃に加熱し、同一速度で0℃に冷却し、次いで同一速度で150℃まで再び加熱し、5分間150℃に保ち、次いで1.25℃/分で150℃から180℃に加熱する。T
MFは、加熱曲線の終点でのベースラインの開始を計算することにより、この最後のサイクルから決定する。
【0106】
試験手順:
(1)高純度インジウムを標準物質として用いて、装置を較正する。
(2)50ml/分の一定の流速の窒素で、絶え間なく、装置のヘッド/セルをパージする。
(3)サンプルの調製:
1.5gの粉末サンプルを、30−G302H−18−CX Wabash Compression Molder(30トン)を使用して圧縮成形する:(a)混合物を、接触させた状態で、230℃で2分間加熱する;(b)サンプルを、同一温度下で、20トンの圧力で1分間圧縮する;(c)サンプルを45°Fに冷却し、20トンの圧力で2分間保つ;(d)サンプルを均質にするために、プラックをほぼ同一の大きさの4つに切断し、それらを積み重ね、ステップ(a)〜ステップ(c)を繰り返す。
(4)サンプルプラックからの1片のサンプルを秤量し(好ましくは、5から8mgの間)、それを、標準のアルミニウム製サンプル皿において密封する。サンプルを含有する密封皿を、装置のヘッド/セルのサンプル側に置き、空の密封皿を参照側に置く。自動サンプラーを使用する場合、数個の異なるサンプル標本を量り分け、機械を、連続処理に設定する。
(5)測定:
(i)データ保存:オフ
(ii)240.00℃まで80.00℃/分の勾配
(iii)1.00分間等温
(iv)0.00℃まで80.00℃/分の勾配
(v)1.00分間等温
(vi)150.00℃まで80.00℃/分の勾配
(vii)5.00分間等温
(viii)データ保存:オン
(ix)180.00℃まで1.25℃/分の勾配
(x)方法の終了
(6)計算:T
MFを、2本の線の切片によって決定する。高温のベースラインから1本の線を引く。高温側の曲線の終点に近い曲線の偏りを通らせて、別の線を引く。
【0107】
メルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238−01試験法に従って、プロピレン系ポリマーの場合、2.16kgのおもりを用いて、230℃で測定する。
【0108】
多分散指数(PDI)は、Zeichner GR, Patel PD (1981) "A comprehensive Study of Polypropylene Melt Rheology" Proc. Of the 2
ndWorld Congress of Chemical Eng., Montreal, Canadaによる方法を使用して、TA Instruments製の応力制御動的分光計(stress control dynamic spectrometer)であるAR−G2レオメーターによって測定する。ETCオーブンを使用して、温度を180℃±0.1℃に調節する。酸素および水分によってサンプルが分解するのを防ぐために、窒素を使用して、オーブン内をパージする。直径25mmのコーンとプレートサンプルホルダーとの1組を使用する。サンプルを、50mm×100mm×2mmのプラックに圧縮成形する。次いで、サンプルを、19mm四方に切断し、底部プレートの中心にのせる。上部コーンの形状は、(1)コーン角、5:42:20(度:分:I);(2)直径:25mm;(3)切頭ギャップ(truncation gap):149ミクロンである。下部プレートの形状は、25mmの円筒である。
【0109】
試験手順:
(1)コーンおよびプレート試料ホルダーを、ETCオーブン内で、180℃で2時間加熱する。次いで、ギャップを、窒素ガス雰囲気下でゼロにする。
(2)コーンを2.5mmまで上げ、サンプルを底部プレートの上にのせる。
(3)2分間の時間計測を開始する。
(4)上部コーンを直ちに下ろし、法線力を観察することによってサンプルの上に軽く置く。
(5)2分後に、上部コーンを下ろすことによって、サンプルを165ミクロンのギャップまで押し込む。
(6)法線力を観察する。法線力が0.05ニュートン未満まで下がったときに、過剰なサンプルを、スパチュラにより、コーンおよびプレートサンプルホルダーの端部から除去する。
(7)上部コーンを、149ミクロンの切頭ギャップまで再び下ろす。
(8)振動周波数掃引(oscillatory frequency sweep)試験を、以下の条件下で行う:
180℃で5分間遅延させた試験。
振動数:628.3r/sから0.1r/s。
データ収集速度:5ポイント/ディケード。
歪み:10%
(9)試験が完了したら、クロスオーバーモジュラス(crossover modulus)(Gc)を、TA Instrumentsにより提供されているRheology Advantage Data Analysisプログラムによって検出する。
(10)PDI=100,000÷Gc(Pa単位)。
【0110】
キシレン可溶分(XS)は、参照により本明細書にその内容全体が組み込まれている、米国特許第5,539,309号に記載されている、
1H NMR法を使用して測定する。
【0111】
限定するものとしてではなく、例として、本開示の実施例をこれから示す。
【実施例】
【0112】
1.プロ触媒前駆体
MagTi−1を、プロ触媒前駆体として使用する。MagTi−1は、(米国特許第6,825,146号の実施例1に従って調製される)Mg
3Ti(OEt)
8Cl
2という組成を有する混合Mg/Ti前駆体である。
【0113】
SHAC(商標)310を、プロ触媒前駆体として使用する。SHAC(商標)310は、米国特許第6,825,146号の実施例2に従って製造された、安息香酸エチルを内部電子供与体として有する安息香酸エステル含有触媒である。得られたプロ触媒組成物のそれぞれについてのチタン含有率を、表1に示す。内部供与体のピークを、GC分析からの保持時間によって特定する。
【0114】
A.第1の接触
3.00gのMagTi−1(または2.0gのSHAC(商標)310)を、機械的撹拌および底部ろ過を備えたフラスコに装入する。TiCl
4とクロロベンゼン(体積でl/l)との混合溶媒60mlを、フラスコに入れ、その後、直ちに、2.52mmolのアルコキシプロピルエステルを添加する。混合物を、15分で、115℃に加熱し、60分間、250rpmで撹拌しながら、115℃のままにして、それから、液体をろ過する。
【0115】
B.第2の接触/ハロゲン化
60mlの混合溶媒、および、場合により2.52mmolのアルコキシプロピルエステルを再び添加し、反応を、撹拌しながら、同一の所望の温度で30分間継続させて、その後にろ過する。
【0116】
C.第3の接触/ハロゲン化
第2のハロゲン化と同じ。
【0117】
最終のプロ触媒組成物を、室温で、70mlのイソオクタンで3回すすぎ、窒素流下で2時間乾燥させる。
【0118】
プロ触媒の特性を、以下の表1に記述する。重量パーセントは、プロ触媒組成物の総重量に基づく。式1の中の略記は、以下のものを示す:AE−アルコシキプロピルエステル、EtO−エトキシド。
【0119】
【表1】
【0120】
2.重合
重合は、1ガロンのオートクレーブにおいて、液体プロピレンで行う。状態調整後、反応器に、1375gのプロピレンおよび目標とした量の水素を装入し、62℃にする。0.25mmolのジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)を、0.27Mトリエチルアルミニウムイソオクタン溶液に添加し、その後、鉱油中の5.0wt%プロ触媒スラリーを添加する(実際の固体重量は、以下の表2に示す)。混合物を、室温で、前もって20分間混合し、それから、反応器に注入し、重合を開始させる。前もって混合した触媒成分を、高圧触媒注入ポンプを使用して、イソオクタンとともに反応器に勢いよく流し込む。発熱後、温度を、67℃に維持する。重合の総時間は、1時間であった。
【0121】
ポリマーのサンプルを、メルトフローレート(MFR)、キシレン可溶分(XS)、多分散指数(PDI)および最終融点(T
MF)について試験する。XSは、
1H NMR法を使用して測定する。
【0122】
触媒の性能およびポリマーの特性を、以下の表2に示す。
NM=測定せず
N/A=データなし
【0123】
【表2】
【0124】
表2からのデータは、SHAC(商標)310前駆体上で、カルボキシレート基に結合した第二級アルキル基を有するアルコキシプロピルエステル(IED37)を含有するプロ触媒を使用して、低いXSおよび良好な触媒活性が得られることを示す。カルボキシレート部分に結合した基が、フェニル基(IED30)、第一級アルキル基(IED38)および第三級アルキル基(IED39)の場合に、IEDについて高いXSが見られる。XSは、C
3リンカーでの置換基が嵩高い場合(IED41)、非常に高くなる。加えて、XSは、MagTiをプロ触媒前駆体として使用した場合もより高くなる。
【0125】
本発明は、本明細書に含まれる実施形態および例示に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲の範囲内に入る、実施形態の一部および異なる実施形態の要素の組み合わせを含む、それらの実施形態の変更形態を含むことを特に意図するものである。