特許第6012635号(P6012635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6012635サンプル中のテストステロンの存在または量を決定するための方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012635
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】サンプル中のテストステロンの存在または量を決定するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20060101AFI20161011BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20161011BHJP
   G01N 30/46 20060101ALI20161011BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20161011BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20161011BHJP
   G01N 33/74 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   G01N27/62 V
   G01N30/88 E
   G01N30/88 101C
   G01N30/88 101K
   G01N30/46 E
   G01N30/72 C
   G01N30/26 A
   G01N27/62 X
   G01N33/74
【請求項の数】24
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-552732(P2013-552732)
(86)(22)【出願日】2012年2月7日
(65)【公表番号】特表2014-507657(P2014-507657A)
(43)【公表日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】US2012024153
(87)【国際公開番号】WO2012109250
(87)【国際公開日】20120816
【審査請求日】2015年1月8日
(31)【優先権主張番号】61/440,282
(32)【優先日】2011年2月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511172461
【氏名又は名称】ラボラトリー コーポレイション オブ アメリカ ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】グラント, ラッセル フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】クローフォード, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラー, ドナルド ウォルト
(72)【発明者】
【氏名】カーティン, ウィリアム
【審査官】 伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0040256(US,A1)
【文献】 特開2007−024822(JP,A)
【文献】 Jiongwei Pan et.al., "Automatic Supported Liquid Extraction (SLE) Coupled with HILIC-MS/MS:An Application to Method Development and Validation of Erlotinib in Human Plasma",Pharmaceutics,2010年,2(2),105-118
【文献】 Lee Williams,Extraction of Benzodiazepines from Various Matrices using Supported Liquid Extraction(SLE) and LC-MS/MS Analysis,Biotage,2009年,http://data.biotage.co.jp/pdf/poster/10446_soft_3_benzo.pdf#search=%27SLE+benzodiazopine%27
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/62
G01N 30/26 − 30/88
G01N 33/48 − 33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的サンプル中のテストステロンの存在または量を決定するための方法であって、該方法は、
(a)テストステロンを含む生物学的サンプルを提供する工程;
(b)支持液体抽出を用いて該生物学的サンプルを部分的に精製して、テストステロンを含む部分的に精製された生物学的サンプルを提供する工程;
(c)液体クロマトグラフィーを用いて、該部分的に精製された生物学的サンプル中のテストステロンを他の成分からクロマトグラフィーで分離する工程;および
(d)質量分析によって、該クロマトグラフィーで分離したテストステロンを分析して、該生物学的サンプル中のテストステロンの存在または量を決定する工程
を含み、
該支持液体抽出を用いて該生物学的サンプルを部分的に精製する工程は、有機水不混和性溶媒システムで溶出することを含み、該有機水不混和性溶媒システムは、ヘキサン、オクタノール、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、ペンタン、N−ヘプタン、ベンゼン、n−塩化ブチル、ブタノール、およびこれらの2つまたはそれより多くの混合物からなる群より選択される溶媒を含む、方法。
【請求項2】
前記部分的に精製する工程(b)が、質量分析によるテストステロンの前記分析に干渉する成分を除去することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
質量分析によるテストステロンの前記分析に干渉する前記成分が、コルチゾン、コルチゾール、21−デスオキシコルチゾール、コルチコステロン、11−デスオキシコルチゾール、トリアムシノロンアセトニド、テトラヒドロコルチゾール、テトラヒドロ−コルチゾン、DHEA、17a−ヒドロキシプロゲステロン、エピテステロン、ジヒドロアンドロステロン、5a−アンドロスタン−3a−オール−17−オン、5b−プレグナン−3a−17a−20a−トリオール、エチオコラン−3a−ジオール、またはプレグナンジオールのうちの1つまたはそれより多くを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記部分的に精製する工程(b)が、珪藻土および有機水不混和性溶媒システムでの支持液体抽出を用いることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記有機水不混和性溶媒システムが、ある量の極性溶媒をさらに含み、該極性溶媒が、メタノール、アセトン、アセトニトリル、イソプロパノール、ジエチルエーテルまたはメチル−tert−ブチルエーテルである、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記部分的に精製する工程(b)が、自動化様式で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記部分的に精製する工程(b)が、手動で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
液体クロマトグラフィーを用いることが、分析液体クロマトグラフィーを用いることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
分析液体クロマトグラフィーを用いることが、逆相カラムを用いることを含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
液体クロマトグラフィーを用いることが、少なくとも1つのカラムを用いることを含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
液体クロマトグラフィーを用いることが、2つまたはそれより多くの液体クロマトグラフィーカラムを並列に用いることを含み、該2つまたはそれより多くの液体クロマトグラフィーカラムが、単一の質量分析計に直列に連結されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
2つまたはそれより多くの液体クロマトグラフィーカラムを並列に用いることが、前記部分的に精製された生物学的サンプルを、時間をずらして該2つまたはそれより多くの液体クロマトグラフィーカラムに導入することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記分析する工程(d)が、エレクトロスプレーイオン化、大気圧化学イオン化、および大気圧光イオン化からなる群より選択されるイオン化技術用いて、テストステロンをイオン化することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記分析する工程(d)が、四重極質量分析計を用いて、テストステロンを検出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記四重極質量分析計が、三連四重極質量分析計である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記分析する工程(d)が、第1の四重極においてインタクトなテストステロンイオンを検出すること、第2の四重極においてインタクトなテストステロンイオンをフラグメント化して、1つまたはそれより多くのテストステロンフラグメントイオンを生じること、および第3の四重極において該1つまたはそれより多くのテストステロンフラグメントイオンを検出することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記分析する工程(d)が、前記生物学的サンプル中のテストステロンの量を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記生物学的サンプルが、内部標準を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記内部標準が、安定な同位体標識テストステロンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記内部標準が、13C−標識テストステロンである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記内部標準が、2,3,4−13C−標識テストステロンである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
生物学的サンプル中のテストステロンの量を決定するための方法であって、該方法は、
(a)テストステロンを含む生物学的サンプルを含む、生物学的サンプルを提供する工程;
(b)支持液体抽出を用いて該生物学的サンプルを部分的に精製して、テストステロンを含む部分的に精製された生物学的サンプルを提供する工程;
(c)逆相液体クロマトグラフィーを用いて、該部分的に精製された生物学的サンプル中のテストステロンを他の成分からクロマトグラフィーで分離する工程;および
(d)質量分析によって、該クロマトグラフィーで分離したテストステロンを分析して、該生物学的サンプル中のテストステロンの量を決定する工程
を含み、
該支持液体抽出を用いて該生物学的サンプルを部分的に精製する工程は、有機水不混和性溶媒システムで溶出することを含み、該有機水不混和性溶媒システムは、ヘキサン、オクタノール、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、ペンタン、N−ヘプタン、ベンゼン、n−塩化ブチル、ブタノール、およびこれらの2つまたはそれより多くの混合物からなる群より選択される溶媒を含む、方法。
【請求項23】
異常なテストステロンレベルに関連する疾患または状態を診断するために有用な報告を作成する方法であって、該方法は、
(a)テストステロンを含む生物学的サンプルを含む、生物学的サンプルを提供する工程;
(b)支持液体抽出を用いて該生物学的サンプルを部分的に精製して、テストステロンを含む部分的に精製された生物学的サンプルを提供する工程;
(c)液体クロマトグラフィーを用いて、該部分的に精製された生物学的サンプル中のテストステロンを他の成分からクロマトグラフィーで分離する工程;
(d)質量分析によって、該クロマトグラフィーで分離したテストステロンを分析して、該生物学的サンプル中のテストステロンの量を決定する工程;および
(e)該生物学的サンプル中のテストステロンの濃度を列挙する報告を作成する工程
を含み、
該支持液体抽出を用いて該生物学的サンプルを部分的に精製する工程は、有機水不混和性溶媒システムで溶出することを含み、該有機水不混和性溶媒システムは、ヘキサン、オクタノール、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、ペンタン、N−ヘプタン、ベンゼン、n−塩化ブチル、ブタノール、およびこれらの2つまたはそれより多くの混合物からなる群より選択される溶媒を含む、方法。
【請求項24】
生物学的サンプル中のテストステロンの存在または量を決定するためのシステムであって、該システムは、
(a)支持液体抽出を用いて生物学的サンプルを部分的に精製するための場所であって、該生物学的サンプルはテストステロンを含む、場所;
(b)液体クロマトグラフィーを用いて、該部分的に精製された生物学的サンプル中のテストステロンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するための場所;および
(c)質量分析によって、該クロマトグラフィーで分離したテストステロンを分析して、該生物学的サンプル中のテストステロンの存在または量を決定するための場所
を含み、
該支持液体抽出を用いて該生物学的サンプルを部分的に精製することは、有機水不混和性溶媒システムで溶出することを含み、該有機水不混和性溶媒システムは、ヘキサン、オクタノール、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、ペンタン、N−ヘプタン、ベンゼン、n−塩化ブチル、ブタノール、およびこれらの2つまたはそれより多くの混合物からなる群より選択される溶媒を含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2011年2月7日に出願された、米国仮特許出願第61/440,282号の優先権の利益を主張し、上記米国仮特許出願第61/440,282号は、本明細書に完全に示されているかのように、参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、サンプル中のバイオマーカーの存在または量を決定するための方法およびシステムを提供する。特に、本発明は、液体クロマトグラフィーおよび質量分析を用いて、サンプル中のテストステロンを分析するための方法およびシステムを提供する。
【背景技術】
【0003】
ホルモン、ビタミン、および/または代謝産物のようなバイオマーカーを、複数の疾患の臨床的診断のために、および内分泌学における内因性バイオマーカーとして使用し得る。テストステロンのようなステロイドホルモンは、重要なホルモンの種類である。テストステロンは、男性2次性徴を発現および維持し、そして精子の増殖および発達を促進する。
【0004】
副腎および性腺がテストステロンを合成する。酵素ブロックによる先天性副腎過形成症を有する患者において、レベルが上昇し得、それはコルチゾールの産生を減少させ、そしてアンドロゲン経路に対する前駆体レベルを増加させる。テストステロンは、多毛症を有する女性においても上昇し得る。卵巣は、これらの患者においてこのホルモンの重要な供給源であり得る。テストステロンは、精巣における産生のために、通常女性および小児よりも成人男性においてはるかに高い。男性におけるレベルは、性機能低下状態において減少し得る。
【0005】
内分泌学における内因性バイオマーカーの臨床診断試験に関する必要条件は、高い感受性および特異性のアッセイ、少ないサンプル体積を分析する能力(例えば小児科のサンプル容積は、約200μL未満に限定され得る)、および疾患状態、例えば内分泌障害を正確に診断するために、複数の分析物をスクリーニングする能力を含み得る。歴史的に、ラジオイムノアッセイ(RIA)および酵素結合イムノアッセイ(ELISA)法が、そのような臨床診断試験において使用されてきた。しかし、RIAおよびEIAのようなイムノアッセイ法(IA)では、低い処理量、特異性に関して特別な調製を必要とし得る抗体交差反応性、および低い拡張可能性に悩むことがある。また、RIAによる内因性バイオマーカーの分析は、個々のマーカーそれぞれの分析のために複数の連続希釈を必要とし得、それはサンプル容積を標準化するために複数の調整を行う必要性、および/または複数の別々の試験の必要性を引き起こし得る。また、イムノアッセイ試験は、特に、各サンプル中の複数のバイオマーカーの分析を実行できない。単一のアッセイにおける複数の分析物の分析は、サイズが小さいサンプルの使用を可能にし得、それはサンプルあたりの感受性および効率が増加したアッセイを生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、内因性バイオマーカーの測定のために、ならびにRIAより高い感受性および高い処理量を提供する方法のために使用し得る分析技術を開発する必要性が存在する。しかし最近まで、誘導体化を伴うGC−MSまたはLC−MS/MSしか、少ないサンプル容積において成功しなかった。従って、当該分野において、困難な誘導体化プロセスを必要とせずに、許容可能なレベルの検出限界を提供し得る、内分泌学における臨床診断のための内因性バイオマーカーを分析するためのLC−MS/MS技術に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
少なくとも1つの局面において、本発明は、サンプル中のテストステロンの存在または量を決定するための方法を提供する:その方法は、以下を含む:(a)テストステロンを含むサンプルを提供すること;(b)支持液体抽出を用いてサンプルを部分的に精製し、それによってテストステロンを含む部分的に精製されたサンプルを提供すること;(c)液体クロマトグラフィーを用いて、部分的に精製されたサンプル中のテストステロンを他の成分からクロマトグラフィーで分離すること;および(d)質量分析によって、クロマトグラフィーで分離したテストステロンを分析して、サンプル中のテストステロンの存在または量を決定すること。これらの方法のさらなる実施態様を、下記で詳細に説明する。
【0008】
別の局面において、本発明は、生物学的サンプル中のテストステロンの量を決定するための方法を提供し、その方法は以下を含む:(a)サンプルを提供すること(そのサンプルはテストステロンを含む生物学的サンプルを含む);(b)支持液体抽出を用いてサンプルを部分的に精製し、それによってテストステロンを含む部分的に精製されたサンプルを提供すること;(c)逆相液体クロマトグラフィーを用いて、部分的に精製されたサンプル中のテストステロンを他の成分からクロマトグラフィーで分離すること;および(d)質量分析によって、クロマトグラフィーで分離したテストステロンを分析して、その生物学的サンプル中のテストステロンの量を決定すること。これらの方法のさらなる実施態様を、下記で詳細に説明する。
【0009】
別の局面において、本発明は、異常なテストステロンレベルに関連する疾患または状態を診断するために有用な報告を作成する方法を提供し、その方法は以下を含む:(a)サンプルを提供すること(そのサンプルはテストステロンを含む生物学的サンプルを含む);(b)支持液体抽出を用いてサンプルを部分的に精製し、テストステロンを含む部分的に精製されたサンプルを提供すること;(c)液体クロマトグラフィーを用いて、部分的に精製されたサンプル中のテストステロンを他の成分からクロマトグラフィーで分離すること;(d)質量分析によって、クロマトグラフィーで分離したテストステロンを分析して、その生物学的サンプル中のテストステロンの量を決定すること;および(e)その生物学的サンプル中のテストステロンの濃度を列挙する報告を作成すること。これらの方法のさらなる実施態様を、下記で詳細に説明する。
【0010】
別の局面において、本発明は、サンプル中のテストステロンの存在または量を決定するためのシステムを提供し、そのシステムは以下を含む:(a)支持液体抽出を用いて部分的にサンプルを精製するための場所(station)(そのサンプルはテストステロンを含む);(b)液体クロマトグラフィーを用いて、部分的に精製したサンプル中のテストステロンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するための場所;および(c)質量分析によって、クロマトグラフィーで分離したテストステロンを分析して、サンプル中のテストステロンの存在または量を決定するための場所。これらの方法のさらなる実施態様を、下記で詳細に説明する。
【0011】
本発明のさらなる局面を、下記で詳細に説明する。
【0012】
図面の簡単な説明
該当なし
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明は、本発明の様々な局面および実施態様を列挙する。特定の実施態様が本発明の範囲を規定することを意図しない。むしろ、本実施態様は、少なくとも本発明の範囲に含まれる様々な方法およびシステムの限定的ではない例を提供するのみである。その説明は、当業者の視点から読まれるべきである;従って当業者に周知の情報は、必ずしも含まれていない。
【0014】
様々な省略を本出願において使用し得る。全てではないにしてもほとんどの例において、そのような省略の意味は当業者に公知である。これらの省略は、以下の省略を含み、その意味が提供される。
【0015】
【表1】
定義
他に示さなければ、以下の用語は、以下の意味を有するように理解される。
【0016】
本明細書中で使用する場合、「a」、「an」および「the」という用語は、他に具体的に示されなければ、1つまたはそれより多くを指し得る。
【0017】
本明細書中で使用する場合、「バイオマーカー」という用語は、生物の生理学的状態についての生物学的情報を提供し得る任意の生体分子である。ある実施態様において、バイオマーカーの存在または欠如が、有益であり得る。他の実施態様において、バイオマーカーのレベルが、有益であり得る。バイオマーカーは、テストステロンのようなホルモン、またはホルモンの代謝産物であり得る。
【0018】
本出願を通して、「約」という用語は、その値が、その値を決定するために採用したデバイス、方法に固有の誤差変動、または研究対象の間に存在する変動を含むことを示すために使用する。
【0019】
本明細書中で使用する場合、「被験体」、「個人」、および「患者」という用語を、交換可能に使用する。これらの用語の使用は、医師のような医療専門家とのいかなる種類の関係も意味しない。
【0020】
本明細書中で使用する場合、「液体クロマトグラフィー」または「LC」という語句を、サンプル中の1つまたはそれより多くの分子または分析物の、該サンプル中の他の分析物からの分離のためのプロセスを指して使用する。液体は、微細な(finely divided)物質のカラムを通って均一に移動するので、LCは、液体溶液の1つまたはそれより多くの分析物の減速を含む。その減速は、1つまたはそれより多くの固定相と移動相との間での、混合物の成分の分布に起因する。LCは、例えば逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む。
【0021】
本明細書中で使用する場合、「分離する」または「精製する」等の用語は、必ずしもサンプルマトリックスからの関心のある分析物以外の全ての物質の除去を指して使用しない。代わりに、いくつかの実施態様において、その用語を、サンプルマトリックス中に存在する1つまたはそれより多くの他の成分に対して相対的に、関心のある1つまたはそれより多くの分析物の量を富化させる手順を指して使用する。いくつかの実施態様において、「分離」または「精製」を、例えば質量分析による分析物の検出に干渉し得る、1つまたはそれより多くの成分をサンプルから除去するか、またはその量を減少させるために使用し得る。
【0022】
本明細書中で使用する場合、「質量分析」または「MS」分析という用語は、サンプル中の分子の同定および/または定量のための技術を指す。MSは、サンプル中の分子のイオン化、荷電分子の形成;荷電分子のその質量電荷比による分離;およびその荷電分子の検出を含む。MSは、サンプル中の分子の定性的および定量的検出の両方を可能にする。その分子を、当業者に公知のあらゆる適当な手段によって、イオン化および検出し得る。「タンデム質量分析」または「MS/MS」という語句を、本明細書中で、サンプル中の分子の同定および/または定量のための技術を指して使用し、ここでは、複数回の質量分析を、1つを超える質量分析計を用いて同時に、または単一の質量分析計を用いて逐次的に行う。本明細書中で使用する場合、「質量分析計」は、分子をイオン化し、荷電分子を検出するための手段を含む装置である。
【0023】
本明細書中で使用される場合、「エレクトロスプレーイオン化」または「ESI」は、分子のフラグメント化を回避しながら、サンプル中の分子をイオン化するために、質量分析において使用される技術を指す。そのサンプルを、エレクトロスプレーによって、細かいエアロゾルに分散する。そのサンプルを、典型的には溶媒、通常水と混合した揮発性有機化合物(例えばメタノールまたはアセトニトリル)と混合する。次いでそのエアロゾルを、キャピラリーによって質量分析計に移し、それを荷電した液滴からのさらなる溶媒の蒸発を補助するために加熱し得る。
【0024】
本明細書中で使用する場合、「四重極分析器」は、MSにおいて使用される質量分析計の型である。それは、お互い高度に平行に設置された4本(2組)の丸棒からなる。その四重極分析器は、その質量電荷比に基づいてサンプルの荷電粒子を組織化するデバイスの構成要素である。当業者は、四重極分析器を用いることは、結果の特異性の増加を引き起こし得ることを理解する。1組の棒を陽性電位に設定し、そして他のセットの棒を陰性電位に設定する。検出されるために、イオンは、整列した棒に隣接し、かつ平行な軌道経路の中心を通らなければならない。その四重極が、所定の振幅の直流および高周波電圧で操作される場合、所定の質量電荷比のイオンのみが共鳴し、四重極を通過するための安定な軌道を有し、検出される。本明細書中で使用する場合、「陽イオンモード」は、その質量分析計によって陽性に荷電したイオンが検出されるモードを指し、そして「陰イオンモード」は、その質量分析計によって陰性に荷電したイオンが検出されるモードを指す。「選択イオンモニタリング」または「SIM」に関して、直流の振幅および高周波電圧を、特定の質量のみを観察するように設定する。
【0025】
本明細書中で使用する場合、「分析カラム」という用語は、テストサンプルマトリックスの成分の分離を行うために十分なクロマトグラフプレートを有する、クロマトグラフィーカラムを指す。好ましくは、分析カラムから溶出した成分を、関心のある分析物の存在または量の決定を可能にするような方法で分離する。いくつかの実施態様において、その分析カラムは、約5μmの平均直径を有する粒子を含む。いくつかの実施態様において、その分析カラムは、フェニル‐ヘキシル官能化分析カラムのような、官能化シリカまたはポリマー‐シリカハイブリッド、またはポリマー性粒子もしくはモノリスシリカ固定相である。
【0026】
分析カラムを、「抽出カラム」と区別し得、これは、典型的には、保持された物質を、保持されなかった物質から分離または抽出して、さらなる精製または分析のための「精製」サンプルを得るために使用する。いくつかの実施態様において、その抽出カラムは、Poroshell SBC−18カラムのような、官能化シリカまたはポリマー‐シリカハイブリッド、またはポリマー性粒子もしくはモノリスシリカ固定相である。
【0027】
「ハートカッティング」という用語は、クロマトグラムにおいて関心のある領域を選択し、そしてその関心のある領域に溶出するその分析物を、第2の分離、例えば2次元における分離に供することを指す。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「溶血」という用語は、赤血球膜を破壊することを指し、それはヘモグロビンおよび他の細胞内容物の血漿または血清への放出を引き起こし、そして「脂肪血症の」という用語は、血中の過剰な脂肪または脂質を指す。
【0029】
テストステロンの存在または量を決定する方法
少なくとも1つの局面において、本発明は、サンプル中のテストステロンの存在または量を決定するための方法を提供し、ここでその方法は以下を含む:(a)テストステロンを含むサンプルを提供すること、(b)支持液体抽出を用いて、サンプルを部分的に精製し、それによってテストステロンを含む部分的に精製されたサンプルを提供すること;(c)液体クロマトグラフィーを用いて、部分的に精製されたサンプル中のテストステロンを他の成分からクロマトグラフィーで分離すること;および(d)質量分析によってクロマトグラフィーで分離したテストステロンを分析し、サンプル中のテストステロンの存在または量を決定すること。
【0030】
これらの方法は、テストステロンを含むサンプルを提供することを含む。この文脈において、「提供する」という用語は、広く解釈される。その用語は、生物学的サンプルを提供した被験体のみを指すことを意図しない。例えば、サンプルを抽出および/またはクロマトグラフィーによる精製のために調製するので、例えば、オフサイトの臨床検査室の技師が、サンプルを「提供する」と言い得る。
【0031】
そのサンプルは、いかなる特定のサンプルの型にも限定されない。そのサンプルはテストステロンを含むが、一般的に、他の成分も含む。いくつかの実施態様において、そのサンプルは、抽出および/またはクロマトグラフィーによる精製のために処理および調製されているサンプルである。そのような処理は、続く精製工程の有効性を最適化するために有用であり得る。そのような処理方法は、当業者に周知である。
【0032】
本発明はいかなる特定のサンプル操作の手段にも限定されない。いくつかの実施態様において、抽出および/またはクロマトグラフィーによる精製の前に、サンプルを2つまたはそれより多くの画分に分離することが有用であり得る。そのような実施態様のいくつかにおいて、2つまたはそれより多くのそのような画分を、例えば特定のカラム化学に関して、分離の感度または選択性を改善することを助けるために、異なって調製し得る。いくつかの実施態様において、その方法は、複数の液体クロマトグラフィーシステムに繰り返し注入するための単一のサンプルを調製することを含む。
【0033】
本発明は、いかなる特定のサンプルサイズにも限定されない。いくつかの実施態様において、そのサンプルは生物学的サンプルを含む。そのような実施態様において、そのサンプルはまた、溶媒、緩衝液、抗凝固剤等のような、他の成分を含み得る。サンプルが生物学的サンプルを含む実施態様において、その生物学的サンプルは、全血、血漿、血清、尿、脳脊髄液、組織ホモジネート、唾液、羊水、胆汁、粘液、腹膜液、またはリンパ液の1つまたはそれより多くであり得る。
【0034】
さらに、サンプル中のテストステロンは、テストステロンのいかなる特定の形式にも限定されない。例えば、テストステロンは、炭素、酸素、および水素原子を含む。これらの原子はそれぞれ、天然に存在する同位体を有する。従って、サンプル中のテストステロンのいくらかの量は、1つまたはそれより多くのそのような天然に存在する同位体を有し得る。その用語はまた、もし存在するなら、陽イオン性および陰イオン性形式(例えば塩形式)を含む。対照的に、本明細書は、質量分析によるテストステロンの分析の議論において、テストステロンイオン(またはイオン化テストステロン)に特異的に言及する。下記で説明するそのような例において、イオン化テストステロンのみが言及される。
【0035】
その方法はさらに、支持液体抽出(SLE)を用いて、サンプルを部分的に精製することを含む。上記で述べたように、そのサンプルは、テストステロンおよび1つまたはそれより多くの溶媒に加えて、様々な他の成分を含み得る。従って、サンプルの部分的な精製は、テストステロンを含む部分的に精製されたサンプルを提供する。いくつかの実施態様において、1つまたはそれより多くの様々な他の成分の濃度を除去し、このことは、その部分的に精製されたサンプルにおいて、テストステロンの濃度と比較してその濃度が低減されたことを意味する。従って、「除去する」または「除去」という用語は、必ずしも成分の完全な除去を意味しない。除去された成分のいくらかの量が、その部分的に精製されたサンプル中に依然として存在し得るが、テストステロンの濃度と比較したその濃度は、抽出前のサンプル中の濃度より低い。いくつかの実施態様において、その部分的に精製されたサンプル中の、テストステロンの濃度に対する除去した成分の相対的な濃度は、抽出前のサンプル中のテストステロンに対するその相対的な濃度の、90%以下、または75%以下、または50%以下、または33%以下、または25%以下、または10%以下、または5%以下、または1%以下である。
【0036】
本発明は、除去される成分のいかなる特定の型にも限定されない。いくつかの実施態様において、1つまたはそれより多くの除去される成分は、質量分析によるテストステロンの分析に干渉し得る化合物である。その理由は、例えば、その化合物がテストステロンと同様の質量を有し得るから、またはフラグメント化の際に、テストステロンのフラグメント化によって産生される1つまたはそれより多くのフラグメントと同じ質量を有する1つまたはそれより多くのフラグメントイオンを産生するからである。そのような化合物は、コルチゾン、コルチゾール、21−デスオキシコルチゾール、コルチコステロン、11−デスオキシコルチゾール、トリアムシノロンアセトニド、テトラヒドロコルチゾール、テトラヒドロ−コルチゾン、DHEA、17a−ヒドロキシプロゲステロン、エピテステロン、ジヒドロアンドロステロン、5a−アンドロスタン−3a−オール−17−オン、5b−プレグナン−3a−17a−20a−トリオール、エチオコラン−3a−ジオール、およびプレグナンジオールを含むがこれに限らない。
【0037】
本発明は、SLEを行ういかなる特定の方法にも限定されない。いくつかの実施態様において、そのサンプルを不活性な固相物質に吸収させる。様々なそのような物質を使用し得る。いくつかの実施態様において、そのサンプルを珪藻土に吸収させる。そのサンプルを次いで有機水不混和性溶媒システムと接触させる。そのような溶媒システムは、当該分野で周知である。その有機水不混和性溶媒システムは、酢酸エチル、ヘキサン、トルエン、オクタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、ペンタン、N−ヘプタン、ベンゼン、n−塩化ブチル、ブタノール、塩化メチレン、およびあらゆる2つまたはそれより多くの前述のものの混合物を含むがこれに限らない。いくつかの実施態様において、その有機水不混和性溶媒システムはまた、いくらかの量の1つまたはそれより多くの極性溶媒を含み得る。そのような実施態様において、極性溶媒の量は、その溶媒システムが一般的に水不混和性のままであることを保証するために十分低くなければならない。そのような実施態様において使用するために適当な極性溶媒は、メタノール、アセトン、アセトニトリル、イソプロパノール、ジエチルエーテルまたはメチル−t−ブチルエーテルを含むがこれに限らない。いくつかの実施態様において、SLEにおいて使用する有機水不混和性溶媒は、ジクロロメタンおよびヘキサンの混合物を含む。
【0038】
そのSLEを、そのためにデザインされたあらゆる適当な装置を用いて行い得る。適当な装置は、プレートおよびカラムを含むがこれに限らない。いくつかの実施態様において、そのSLEは、1つまたはそれより多くのプレートを採用する。そのような実施態様のいくつかにおいて、そのSLEは、96ウェルプレートのような複数のウェルを有するプレートを採用する。そのようなプレートは市販で入手可能である。さらに、そのSLEを、手動で、または自動化様式で行い得る。さらに、その部分的な精製工程を、いくつかの実施態様において、抽出を促進するためにSLE装置に機械的な作動を適用することによって達成し得る。そのような機械的な作動は、攪拌、振動等を含み得る。
【0039】
本発明のいくつかの実施態様において、クロマトグラフィー分離の前に、その部分的に精製したサンプルに、1つまたはそれより多くの処理工程を行い得る。例えば、いくつかの実施態様において、その部分的に精製したサンプルを蒸発させる。次いで、生じた残渣を、溶媒システム中で再構成する。あらゆる適当な溶媒システムを、そのテストステロンを含む残渣を再構成するために使用し得る。いくつかの実施態様において、その溶媒システムは、クロマトグラフィー分離と適合性の溶媒システムである。いくつかの実施態様において、再構成のための溶媒システムは、水、メタノール、またはその混合物を含むがこれに限らない。
【0040】
その方法は、液体クロマトグラフィーを用いてテストステロンをクロマトグラフィーで分離することを含む。本発明は、液体クロマトグラフィーを行ういかなる特定の方法にも限定されない。一般的に、そのクロマトグラフィー分離工程は、少なくとも1つの液体クロマトグラフィー(LC)カラムを使用することを含む。いくつかの実施態様において、2つまたはそれより多く、または3つまたはそれより多く、または4つまたはそれより多くのLCカラムのような、複数のLCカラムを使用する。そのような実施態様のいくつかにおいて、2、3、4、5、6、8、または10個のLCカラムを使用する。そのような実施態様のいくつかにおいて、2つまたはそれより多くのこれらのLCカラムを、お互いに平行に配置し、そして同じ質量分析計と直列に連結する。
【0041】
本発明は、カラムのいかなる特定の型にも限定されない。テストステロンの分離に適当なあらゆるカラムを使用し得る。いくつかの実施態様において、1つまたはそれより多くの分析カラムを使用する。そのような実施態様のいくつかにおいて、1つまたはそれより多くの逆相カラムを使用する。いくつかの実施態様において、その方法は、2つまたはそれより多くの逆相カラムを並列に採用し、それを同じ質量分析計と直列に連結する。
【0042】
さらに、本発明は、いかなる特定の移動相にも限定されない。その移動相が、特定のLCカラムで使用するために、およびそのLCカラムでテストステロンをクロマトグラフィーで分離するために適当である限り、あらゆる適当な移動相を使用し得る。いくつかの実施態様において、その移動相は、極性溶媒システムである。その極性溶媒システムは、水、メタノール、アセトニトリル、または2つまたはそれより多くの前述のものの混合物を含むがこれに限らない、1つまたはそれより多くの極性溶媒を含み得る。そのような実施態様のいくつかにおいて、その移動相は、2つまたはそれより多くの溶媒の相対的な比が経時的に変動するような、勾配を採用する。
【0043】
上記で述べたように、例えば処理量を改善するために、2つまたはそれより多くのLCカラム(例えば逆相カラム)を、並列に使用し、そして同じ質量分析計と直列に連結し得る。そのような実施態様のいくつかにおいて、テストステロンを含むサンプル(すなわち、例えば蒸発および再構成後の部分的に精製されたサンプル)を、異なる時間に2つまたはそれより多くのLCカラムに導入する。いくつかの実施態様において、テストサンプルの2つまたはそれより多くのLCカラムへの導入は時間をずらして行い、このことは、サンプルの2つまたはそれより多くのLCカラムへの導入を分離する、前もって決定した時間間隔が存在することを意味する。適当な時間間隔を、溶出時間、カラム化学、および1つまたはそれより多くの他のLCカラムから溶出されたテストステロンの分析との干渉を回避するための潜在的な必要性を含む、様々な因子に基づいて選択し得る。
【0044】
本発明のいくつかの実施態様において、別のLCカラムを、他のカラムと直列に置き得る。例えば、いくつかの実施態様において、適当なガードカラムを採用し得る。当業者は、本方法において使用するための適当なガードカラムを選択し得る。いくつかの実施態様において、ガードカラムを、他のLCカラムと並列に置き、そしてガードカラムおよびLCカラムはどちらも逆相カラムである。並列に動作する2つまたはそれより多くのシリーズのカラムが存在するように、2つまたはそれより多くのカラムのそのようなシリーズをまた並列に配置し得、ここで各シリーズは2つまたはそれより多くのカラムを含む。
【0045】
その方法は、質量分析によって、クロマトグラフィーで分離したテストステロンを分析して、テストステロンの存在または量を決定することを含む。いくつかの実施態様において、2つまたはそれより多くのLCカラムから、同じ質量分析計に入る。いくつかのさらなる実施態様において、3つまたはそれより多くのLCカラムから、同じ質量分析計に入る。いくつかの実施態様において、その質量分析計は、組み合わせたLC−MSシステムの一部である。
【0046】
本発明は、質量分析計のいかなる特定の型にも限定されない。あらゆる適当な質量分析計を使用し得る。いくつかの実施態様において、その方法は、タンデム質量分析計を採用する。そのような実施態様のいくつかにおいて、テストステロンの分析は、テストステロンのイオン化、イオン化テストステロンの分析、テストステロンイオンの2つまたはそれより多くのフラグメントイオンへのフラグメント化、およびフラグメントイオンの分析を含み得る。本発明は、いかなる特定のイオン化方法を用いる質量分析計にも限定されない。あらゆる適当なイオン化を使用し得る。適当なイオン化方法は、光イオン化、エレクトロスプレーイオン化、大気圧化学イオン化、および電子捕獲イオン化を含むがこれに限らない。そしてフラグメント化を採用する実施態様において、あらゆる適当なフラグメント化技術を使用し得る。適当な技術は、衝突誘起解離、電子捕獲解離、電子伝達解離、赤外多光子解離、放射解離、電子脱離解離、および表面誘起解離を含むがこれに限らない。
【0047】
いくつかの実施態様において、そのタンデム質量分析計はMDS−Sciex API5000三連四重極質量分析計である。いくつかの実施態様において、そのタンデム質量分析計は、大気圧イオン化源を有し、そしてその分析工程は、光イオン化、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、大気圧化学イオン化(APCI)、電子捕獲イオン化、電子イオン化、高速原子衝撃/液体2次イオン化(FAB/LSI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、電界イオン化、電界脱離、サーモスプレー/プラズマスプレーイオン化、および粒子ビームイオン化からなる群より選択されるイオン化方法を含む。そのイオン化方法は、陽イオンモードまたは陰イオンモードであり得る。その分析工程はまた、多重反応モニタリングまたは選択イオンモニタリング(SIM)を含み得、そして2つまたはそれより多くの生体分子を同時に、または逐次的に分析する。いくつかの実施態様において、その分析工程は、四重極分析計を使用する。いくつかの実施態様において、その質量分析計は、三連四重極質量分析計である。
【0048】
いくつかの実施態様において、その方法は、内部標準を使用することを含む。そのような実施態様において、その内部標準を、クロマトグラフィー分離工程の前に、あらゆる適当な点で導入し得る。あらゆる適当な内部標準を使用し得る。いくつかの実施態様において、その内部標準は、安定な同位体標識テストステロンである。そのような実施態様のいくつかにおいて、その内部標準を炭素13および/または重水素によって標識する。いくつかの実施態様において、その内部標準は、2,3,4−13C−標識テストステロンである。
【0049】
いくつかの実施態様において、テストステロンの量を決定する必要はない。いくつかの実施態様において、その方法を、サンプル中のテストステロンの存在または欠如を決定するために使用し得る。他の実施態様において、その方法を、サンプル中のテストステロンの量を決定するために使用する。例えば、いくつかの実施態様および/または局面において、本発明は、生物学的サンプル中のテストステロンの量を決定するための方法を提供し、その方法は以下を含む:(a)サンプルを提供すること(そのサンプルはテストステロンを含む生物学的サンプルを含む);(b)支持液体抽出を用いてサンプルを部分的に精製し、それによってテストステロンを含む部分的に精製されたサンプルを提供すること;(c)逆相液体クロマトグラフィーを用いて、部分的に精製されたサンプル中のテストステロンを他の成分からクロマトグラフィーで分離すること;および(d)質量分析によって、クロマトグラフィーで分離したテストステロンを分析して、その生物学的サンプル中のテストステロンの量を決定すること。
【0050】
いくつかの実施態様において、その方法は、いかなる検出の下限および/または上限にも限定されない。いくつかの実施態様において、その方法を、2.5ng/dLから5000ng/dL、または5ng/dLから5000ng/dL、または10ng/dLから5000ng/dL、または2.5ng/dLから2000ng/dLの範囲の濃度で、サンプル(例えば生物学的サンプルを含むサンプル)中のテストステロンを測定するために使用し得る。
【0051】
報告を作成する方法
少なくとも1つの局面において、本発明は、被験体におけるテストステロンの異常なレベルと関連する疾患または状態を診断するための報告を作成するための方法を提供し、その方法は以下を含む:(a)サンプルを提供すること(そのサンプルはテストステロンを含む生物学的サンプルを含む);(b)支持液体抽出を用いてサンプルを部分的に精製して、テストステロンを含む部分的に精製されたサンプルを提供すること;(c)液体クロマトグラフィーを用いて、部分的に精製されたサンプル中のテストステロンを他の成分からクロマトグラフィーで分離すること;(d)質量分析によって、クロマトグラフィーで分離されたテストステロンを分析して、その生物学的サンプル中のテストステロンの量を決定すること;および(e)その生物学的サンプル中のテストステロンの濃度を列挙する報告を作成すること。
【0052】
工程(e)を除く全ての工程の特徴および実施態様を、すぐ上で説明している。上記で述べたように、その方法は、1つを超えるカラム、例えば同じ質量分析計と直列に連結された並列な2つまたはそれより多くのカラムを採用し得る。
【0053】
その方法はさらに、サンプル中の少なくとも1つのテストステロンの量を列挙する報告を作成することを含む。いくつかの実施態様において、この情報を、その生物学的サンプル中のテストステロンの濃度を決定するために使用し得る。そのような情報から、被験体が異常に高いかまたは低い量のテストステロンを有するか否かを評価し得る。
【0054】
そのような情報は、被験体における異常なレベルのテストステロンと関連し得る1つまたはそれより多くの疾患または障害を診断するために有用であり得る。そのような疾患または状態は、当該分野において周知である。そのような疾患または状態は、先天性副腎過形成症、多毛症、および様々な性機能亢進状態を含むがこれに限らない。
【0055】
生体分子を分析するためのシステム
別の局面において、本発明は、サンプル中のテストステロンの存在または量を決定するためのシステムを提供し、そのシステムは以下を含む:(a)支持液体抽出を用いてサンプルを部分的に精製するための場所(そのサンプルはテストステロンを含む);(b)液体クロマトグラフィーを使用して、その部分的に精製されたサンプル中のテストステロンを他の成分からクロマトグラフィーで分離するための場所;および(c)質量分析によって、クロマトグラフィーで分離したテストステロンを分析して、そのサンプル中のテストステロンの存在または量を決定するための場所。
【0056】
そのようなシステムは、テストステロンを分析する方法に関して上記で説明したものに類似の、様々な実施態様および下位実施態様(subembodiments)を含み得る。
【0057】
これらのシステムは、様々な場所(station)を含む。本明細書中で使用される場合、「場所」という用語は、広く定義され、そして列挙された方法を行うために適当なあらゆる適当な装置または装置の集合を含む。その場所は、お互いに関して、いかなる特定の方法においても一体として連結または設置される必要はない。本発明は、お互いに関して、該場所のあらゆる適当な配置を含む。例えば、その場所は同じ空間にある必要すらない。しかし、いくつかの実施態様において、その場所は、一体となったユニットにおいてお互いに連結される。
【実施例】
【0058】
以下の実施例は、ここで開示される主題の代表的な実施態様を実施するために当業者にガイダンスを提供するために含まれる。本開示および一般的なレベルの当該分野における技術を考慮して、当業者は、以下の実施例は、例証のみが意図され、そして本開示の主題の範囲から離れることなく、多くの変更、修飾、および変化を採用し得ることを認識し得る。
【0059】
実施例1:テストステロンの分析
13Cテストステロンを、血清アリコートに加えて、各サンプルからのテストステロンの収集に関して評価および補正する。テストステロンを緩衝液で1:1に希釈し、そして次いでSLE+プレートに加える。テストステロンを、ヘキサンおよびジクロロメタンの混合物で、血清および血漿サンプルから抽出する。サンプルを蒸発させ、そしてメタノール/水溶液で再構成する。次いでサンプルをLC−MS/MSシステムに注入する。陽イオン大気圧化学イオン化モードで操作する、MDS−Sciex API5000三連四重極質量分析計を、検出のために使用する。分析物および内部標準の定量を、選択反応モニタリングモード(SRM)で行う。各サンプル中の個々の分析物の逆算量を、2.5から5000ng/dLまで、木炭処理(charcoal stripped)血清へ公知の量の精製分析物を加えることによって産生した検量線から決定する。
【0060】
検体
推奨されるサンプルは、0.3〜0.8mLの血清または血漿である。標準的なサンプリングチューブまたは分離ゲルを含むチューブを用いて血清を収集した。収集から1時間以内に、細胞から血清/血漿を取り出し、そしてプラスチック輸送チューブに移さなければならない。血清および血漿を、使用するまで−20℃で、冷凍庫で保存しなければならない。
【0061】
機器および物質
以下の供給品および装置を使用した。
【0062】
手動ピペットとチップ;クラスAホールピペットおよびフラスコ;種々のガラス試薬ビン;パラフィルム(Fisher Healthcare);Easy Pierce熱シーリングホイル(Fisher Healthcare);マルチチューブボルテックス(Fisher Scientific);Turbovapプレート蒸発器(Biotage,LLC);Thermoマニュアル熱シーラーALPS25または同等物(Thermo Scientific);96ウェルポリプロピレンディープウェルプレート(SPEware Corp.);96ウェルSLE+400プレート(Biotage,LLC);Agilent Zorbax XDB C−18 2.1X50、5μm(Krackeler Scientific);およびVacMaster−96サンプル処理マニホールドシステム(Biotage,LLC)。
【0063】
96ウェルプレート5804R遠心分離機または同等物(Eppendorf);APCIを有するAPI 5000タンデム質量分析計およびTurbo VTMイオン源(Sciex、Toronto、Canada);8 1200SL Series Binaryポンプおよび4 1200 Series減圧脱ガス装置(Thermo−Fisher、MA、USA)からなるAria Transcend TX4システム;HTS Twin PALシステムオートサンプラー(CTC Analytics AG、Switzerland);Analystバージョン1.4またはそれ以上(Applied Biosystems、CA、USA);Aria OSバージョン1.6またはそれ以上(Thermo−Fisher、MA、USA)。
【0064】
試薬
以下の試薬を使用した。
【0065】
テストステロン(USP);[13C3]−テストステロン(Isosciences);塩化メチレン(Fisher Healthcare);ヘキサン(Fisher Healthcare);メタノール(Fisher Healthcare);木炭処理ヒト血清(Golden West);プールした血清(施設内収集);エタノール(Sigma−Aldrich);ギ酸(Sigma−Aldrich);アセトニトリル(Fisher Healthcare)。
【0066】
以下の溶媒を、液体クロマトグラフィーの移動相として使用した。
【0067】
抽出溶媒(50:50 ヘキサン:塩化メチレン);メスシリンダーにおいて500mLのヘキサンを計量し、そして1Lのビンに移す。別にメスシリンダーにおいて500mLの塩化メチレンを計量し、そしてヘキサンを含む1Lのビンに加える。よく混合する。
【0068】
溶出ポンプA移動相(Millipore HO中0.1%のギ酸):999mLのType I Millipore水を計量し、そして1Lの試薬ビンに注ぐ。ドラフト内で、1mLのギ酸をMillipore HOにゆっくりと加える。よく混合する。
【0069】
溶出ポンプB移動相(アセトニトリル中0.1%のギ酸):999mLのアセトニトリルを計量し、そして1Lの試薬ビンに注ぐ。ドラフト内で、1mLのギ酸をアセトニトリルにゆっくりと加える。よく混合する。
【0070】
内部標準ストック(1mg/mL):約10mgの[13C3]−テストステロンを、化学天秤上でガラスシンチレーションバイアルに秤量する。純度に関して調整した後、適当な量のメタノールを加えて、溶液を1mg/mLの最終濃度にする。よく混合して溶解する。−20℃で保存する;ガラスシンチレーションバイアル中で少なくとも1年間安定。
【0071】
内部標準ストック溶液(10000ng/mL):1mLの[13C3]−テストステロン内部標準ストック(1mg/mL)を、100mLのクラスAメスフラスコに加え、そしてMeOHを容量まで加える。よく混合する。最終濃度は10000ng/dLである。凍結保存する(−20℃);少なくとも1年間安定。
【0072】
作業用内部標準溶液(120ng/dL):0.12mLの[13C3]−テストステロン内部標準ストック(10000ng/mL)を、1000mLのクラスAメスフラスコに加え、そして50:50 MeOH:Millipore HOを容量まで加える。よく混合する。最終濃度は120ng/dLである。同じ濃度および組成でもう1つの容積のものを調製し得る。冷蔵保存する(2〜8℃)。
【0073】
再構成溶液(1:1 メタノール:水):500mLのHPLCグレードのメタノールを、1リットルのガラス試薬ビンに加える。500mLのTypeI水を、同じビンに加える。よく混合し、そして室温で保存する。
【0074】
テストステロンシステム適合性試験溶液(SST):分析のためのバッチを投入する前に、35μLの作業用内部標準溶液(120ng/dL)を注入して、システム適合性を確立する。システム適合性の注入は、50:50 メタノール:水中120ng/dLの[13C3]−テストステロンの35μLの注入を採用する;許容基準:全ての分析物が0.05〜0.30分;292/100トランジションに関してピーク強度≧12000cps。
【0075】
針洗浄溶液1(Millipore HO中0.1%のギ酸):999mLのTypeI Millipore水を計量し、そして1Lの試薬ビンに注ぐ。ドラフト内で、1mLのギ酸をMillipore HOにゆっくりと加える。よく混合する。
【0076】
針洗浄溶液2(メタノール):1000mLのメタノールをガラスビンに移す。室温で保存する。
【0077】
較正
較正物質を調製し、そしてEsoterix Endocrinology、Calabasas、CA、USAにおいて正確性に関して試験する。バルク物質をドライアイス上でCETに運び、ここで次いでサブアリコートに分け(subaliquoted)、そして保存する。サブアリコートを−20℃で5.58年間保存する。
【0078】
較正物質の完全なセットを、各分析バッチの最初に含む。各バッチの最後3つのサンプルとして、さらにBlank+IS、LLOQおよびULOQを加えた。
【0079】
品質管理
品質管理サンプルを調製し、そしてEsoterix Endocrinology、Calabasas CA、USAにおいて範囲を確立するために試験する。バルク物質を、ドライアイス上でCETに運び、ここで次いでサブアリコートに分け、そして保存する。サブアリコートを−20℃で5.58年間保存する。
【0080】
手動の手順
バッチを調製する:標準物質、サンプルおよびコントロールを解凍および混合する。各サンプル、コントロールおよび標準物質のために12×75mmのガラス試験管のセットにラベルをつける。
【0081】
サンプルをピペットで入れる:200μLのブランク、標準物質、コントロール、およびサンプルを、適切にラベルをつけたチューブにピペットで入れる。200μLの作業用内部標準溶液を、ダブルブランク以外の各チューブにピペットで入れる。ダブルブランクに400μLのMillipore水を入れる。マルチボルテックスで1分間、チューブのラックを混合する。
【0082】
96ウェルプレートに移す:96ウェルディープウェルプレートを、VacMaster−96サンプル処理マニホールドの下半分に置く。ディープウェルプレート上のマニホールドの上部分を交換し、そしてSLE+400プレートをマニホールドの上において、ウェルが下のディープウェル収集プレートと整列するようにする。全てのサンプルを、マルチチャネルピペットまたは同等物を使用して、SLE+400 96ウェルプレートに移す。
【0083】
SLE抽出:マニホールド(プレートを含む)をドラフト下におき、そしてチューブを減圧供給源に連結する。サンプルをSLE+プレートに入れるためにわずかな減圧(5mmHg)を適用し、そして次いで5〜10分間待つ。12チャネルのピペット(または同等物)を用いて、50:50のヘキサン:塩化メチレンを3回吸引し、出す。次いで900μLの抽出溶媒を、各列に加える。わずかな減圧を15〜20秒間適用し、そして次いで10分間待って抽出溶媒がディープウェルプレートに通り抜けることを可能にする。10分後、高減圧を30秒間適用し、残った抽出溶媒を、96ウェル収集プレートに入れる。
【0084】
蒸発/再構成:96ウェル収集プレートを、Turbovapプレート蒸発器に置く。約40psiおよび40℃で約20分間、または乾燥するまで、プレートを蒸発させる。各ウェルを100μLの再構成溶液(1:1のMeOH:Millipore HO)で再構成する。プレートをシールし、そして1分間簡単に混合する。5分間遠心分離する。
【0085】
LC:全てのLCシステム試薬を満たす。LCポンプに呼び水を差して、あらゆる泡を移動相系統から除去するか、または以前のアッセイ/バッチ由来の移動相を除去する(新しい移動相を作製した場合)。全てのシステムおよびオートサンプラーの準備ができたら、「開始」をクリックする。35μLのサンプルを注入する。
【0086】
自動化の手順
バッチを調製する:標準物質、サンプル、およびコントロールを解凍および混合する。標準的な操作手順NOQS−SOP−13、セクション10−手順においてアドバイスされたように、TECAN Freedom EVO装置を初期化する。
【0087】
サンプルをピペットで入れる:コンピューター/実験室作成バーコードラベルを、対応するブランク、標準物質、およびQCチューブに貼る。空の供給ラックに、バーコードチューブを以下の順番で置く:ダブルブランク、ブランク+IS、標準物質1〜8、およびダブルブランク。患者サンプルを、供給ラック1の位置12から始めて供給ラック12まで続けて加える。2セットの品質管理サンプルを、アッセイを通じて無作為に置く。注意:12×75mmサイズのチューブのみを、患者サンプルの供給チューブとして使用し得る。このサイズ以外の輸送チューブを、正しいサイズのチューブへ注ぎ入れ、そして適宜バーコードをつけなければならない。供給ラックを、TECAN Freedom EVOデッキに入れる。
【0088】
96ウェルプレートへの移動:96ディープウェルプレートをデッキに置く。8個の16×100mmのガラス試験管を、空の供給ラックの位置1〜8に置き、そしてそれぞれに作業用内部標準溶液を満たす。1つの16×100mmの試験ガラス試験管を、内部標準チューブと同じ供給ラックの位置16に置き、そしてTypeI水を満たす。内部標準およびTypeI水を含む供給ラックをデッキの適切な位置に置く。1000μLのDiTiチップが、TECAN Freedom EVOデッキに置かれていることを確認する。
【0089】
アプリケーションソフトウェアにおいて、Testosteroneスクリプトを選択する。スクリプトを開始するためにRunをクリックする。TECANはまず全てのチューブをスキャンし、そしてscan.csvファイルを作成する。プロンプトが出た場合、作成され、そしてあらゆるバーコード関連問題が訂正されたファイルをチェックする。次いでスクリプトを続けるためにOKをクリックする。TECANは、次に200μLのブランク、標準物質、患者サンプル、および品質管理サンプルを96ディープウェルプレートに加える。プロンプトが出た場合、全てのサンプルが正しくピペットで入れられたことを視覚的に確認する。サンプルが加えられなかった場合には、適切なピペットでサンプルを手動で加え得る。バッチの表紙に表記を行わなければならない。任意のサンプル容積が他のサンプルと一致しないようであるなら、バッチの表紙に記録しなければならない。OKをクリックして続ける。
【0090】
TECANは200μLのtypeI水を、1番目の96ディープウェルプレートのバイアル位置A1に加え、そして200μLの作業用内部標準溶液を、残りのバイアル位置に加える。内部標準が96ディープウェルプレートに加えられる間に、BIOMEK FX液体ハンドラーを初期化する。96ディープウェルプレートをTECAN Freedom EVO自動化ピペット操作装置から取り出し、そしてそれをBIOMEK FX自動化液体ハンドラーに置く。
【0091】
SLE抽出:SLE+プレートを、96ディープウェルプレートの上に置き、そしてそれをBIOMEK FXデッキに置く。AP200ピペットチップが適当な位置に置かれていることを確認する。アプリケーションソフトウェアにおいて、アッセイのサンプルの数に依存して、1Plate SLE Transferまたは2Plate SLE Transferスクリプトを選択する。上のツールバーの緑色のスタートボタンをクリックする。BIOMEK FXは、2工程の処理で、96ディープウェルプレートの内容物をSLE+プレートに移す前に、まずサンプルおよび内部標準を混合する。サンプルがBIOMEKによって移されない場合、サンプルを適切なウェルに移動するために注意しながら手動でそれを行うことが許容される。
【0092】
96ウェルディープウェルプレートを、VacMaster−96サンプル処理マニホールドの下半分に置く。ディープウェルプレートの上のマニホールドの上部分を交換し、そしてSLE+400プレートをマニホールドの上に置き、ウェルが下のディープウェル収集プレートと整列するようにする。マニホールド(プレートを含む)をドラフト下に置き、そしてチューブを減圧供給源に連結する。わずかな減圧(5mmHg)を適用し、サンプルをSLE+プレートに入れ、次いで5〜10分間待つ。
【0093】
12チャネルのピペット(または同等物)を用いて、50:50のヘキサン:塩化メチレンを3回吸引し、出す。次いで900μLの抽出溶媒を各列に加える。わずかな減圧を15〜20秒間適用し、そして次いで10分間待って抽出溶媒がディープウェルプレートに通り抜けることを可能にする。10分後、高減圧を30秒間適用し、残った抽出溶媒を、ディープウェル収集プレートに入れる。
【0094】
蒸発/再構成:96ウェル収集プレートを、Turbovapプレート蒸発器に置く。約40psiおよび40℃で約20分間、または乾燥するまで、プレートを蒸発させる。各ウェルを100μLの再構成溶液(1:1のMeOH:Millipore HO)で再構成する。プレートをシールし、そして1分間簡単に混合する。5分間遠心分離する。
【0095】
LC:全てのLCシステム試薬を満たす。LCポンプに呼び水を差して、泡を移動相系統から除去するか、または以前のアッセイ/バッチ由来の移動相を除去する(新しい移動相を作製した場合)。全てのシステムおよびオートサンプラーの準備ができたら、「開始」をクリックする。35μLのサンプルを注入する。
【0096】
結果の報告
血清および血漿におけるこのアッセイの単位は、デシリットルあたりのナノグラム数(ng/dL)である。
【0097】
結果を、血清および血漿サンプルに関して小数第一位として報告する。
【0098】
このアッセイの定量の下限は、2.5ng/dLである。2.5ng/dLより低い値は、<2.5ng/dLと報告する。検出の上限は、5000ng/dLである。5000ng/dLより高い値は、TypeI水で50倍まで希釈する。希釈も含めて、定量の上限は250000ng/dLである。希釈を繰返すために十分な検体が利用可能でない場合、「QNSR」の省略をつけて、>10000を入力する。この省略は、結果を実証するために十分な検体がないことを説明する。
【0099】
【表2】
男性1〜7ヶ月:レベルは最初の週に20〜50ng/dLまで急速に減少し、次いで20〜60日に60〜400ng/dL(平均=190)まで増加する。次いでレベルは7ヶ月までに<2.5〜10の思春期前の範囲に減少する。
【0100】
女性1〜7ヶ月:レベルは最初の月の間に<10ng/dLまで減少し、そして思春期までそのままである。
【0101】
【表3】
実施例2:疾病予防管理センター(CDC)のデータに関する試験結果
実施例1で説明した分析方法を使用して、テストステロンの標準化したレベルを有するCDCから得たサンプル中のテストステロンレベルを決定する(「CDCチャレンジセット」と呼ぶ)。2つの異なるCDCチャレンジセットを試験した。2セット中の10個のサンプルのそれぞれに関して、2日間の過程にわたり4つの複製を作製した。従って、報告された平均、標準偏差、およびCVは、n=4に関するものである。
【0102】
【表4】
【0103】
【表5】