(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような共重合比率のノルボルネンとエチレン(オレフィン)とからなる環状オレフィン系フィルムは、耐熱性や透明性等は優れるものの、成形流動性が悪くゲルが発生しやすい性質を有するため、表面の平滑性が劣る低品質な基材フィルムとなりやすい問題があった。したがって、精密化・高精細化の要求が高いハイグレードなIT機器のタッチセンサ用透明電極フィルムには適用できない問題があった。また、グレードによっては耐薬品性が劣る場合もあった。
【0005】
とくに、透明電極や引き回し回路40をフォトリソグラフィー法とエッチング法とでパターン化してタッチセンサを製造する場合において、基材フィルムの凹凸はパターン精度低下の原因になり、耐薬品性不足は基材フィルム劣化の原因になっていた。本発明では、基材フィルムとして特定の環構造の水素化開環メタセシス重合体を主成分とする環状オレフィン系基材フィルムを選択することにより、上記問題を解決した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の第一の特徴構成は、少なくとも基材フィルムと透明電極とを備えるタッチセンサであって、該基材フィルムは水素化開環メタセシス重合体を主成分とし、前記透明電極はフォトリソグラフィー法およびエッチング法からパターニングされたことを特徴とするタッチセンサである。また、本発明の第二の特徴構成は、前記基材フィルムが、式(1)の置換基R↓1とR↓2がつながった環構造の水素化開環メタセシス重合体を主成分とすることを特徴とするタッチセンサである。
【0007】
また、本発明の第三の特徴構成は、前記水素化開環メタセシス重合体が、式(2)の水素化開環メタセシス重合体と式(3)の水素化開環メタセシス重合体との共重合体とからなることを特徴とするタッチセンサである。また、本発明の第四の特徴構成は、前記式(2)の水素化開環メタセシス重合体のアルキル置換基R↓3、R↓4がともに水素からなり、前記(3)式の水素化開環メタセシス重合体との共重合比率が重量比40:60〜99:1からなることを特徴とするタッチセンサである。
【0008】
また、本発明の第五の特徴構成は、前記透明電極が、非結晶または低結晶の金属酸化物により形成され、透明電極のパターン形成後に、遠赤外線またはプラズマの照射により該金属酸化物の結晶化を促進させたタッチセンサである。
【0009】
また、本発明の第六の特徴構成は、前記透明電極の一部上に導体金属からなる引き回し回路が形成され、該引き回し回路の一部が外気に露出した状態で構成され、該引き回し回路の外気に露出した箇所が集積回路チップを実装するか又は外部回路へ接続するための接続端子となっており、該露出したままの接続端子上に脱着が容易な保護シートが被覆されていることを特徴とするタッチセンサである。
【0010】
また、本発明の第七の特徴構成は、前記透明電極の周囲3方向に額縁部が存在せず、残り1方向の額縁部を除く基体シート全面がセンシング可能なタッチスクリーン部となることを特徴とするタッチセンサである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第一の特徴構成によれば、本発明のタッチセンサは少なくとも基材フィルムと透明電極とを備えるタッチセンサであって、該基材フィルムは水素化開環メタセシス重合体を主成分とし、前記透明電極はフォトリソグラフィー法およびエッチング法からパターニングされたことを特徴とする。また、本発明の第二の特徴構成によれば、本発明のタッチセンサは前記基材フィルムが、式(1)の置換基R↓1とR↓2がつながった環構造の水素化開環メタセシス重合体を主成分とすることを特徴とする。したがって、高精細なパターンのタッチセンサを生産性良くかつ基材フィルムの劣化なく製造できる効果がある。
【0012】
また、本発明の第三の特徴構成によれば、本発明のタッチセンサは、水素化開環メタセシス重合体が、式(2)の水素化開環メタセシス重合体と式(3)の水素化開環メタセシス重合体との共重合体とからなることを特徴とする。また、本発明の第四の特徴構成によれば、前記式(2)の水素化開環メタセシス重合体のアルキル置換基R↓3、R↓4がともに水素からなり、前記(3)式の水素化開環メタセシス重合体との共重合比率が重量比40:60〜99:1からなることを特徴とする。したがって、高精細なパターンのタッチセンサを生産性良くかつ基材フィルムの劣化なく製造でき、かつ視認性および耐熱性に優れたタッチセンサを製造できる効果がある。
【0013】
また、本発明の第五の特徴構成によれば、本発明のタッチセンサは、前記透明電極が、非結晶または低結晶の金属酸化物により形成され、透明電極のパターン形成後に、遠赤外線またはプラズマの照射により該金属酸化物の結晶化を促進させたことを特徴とする。したがって、パターン形成時はエッチングがしやすい非結晶または低結晶の金属酸化物で構成されるため、エッチング工程での基材フィルムへの負荷が軽減され、生産性良くタッチセンサを製造できる効果がある。また、パターン形成後の結晶化により透明電極の導電性が向上するため、タッチ感度の良いタッチセンサを製造できる効果がある。
【0014】
また、本発明の第六の特徴構成によれば、本発明のタッチセンサは、前記透明電極の一部上に導体金属からなる引き回し回路が形成され、該引き回し回路の一部が外気に露出した状態で構成され、該引き回し回路の外気に露出した箇所が集積回路チップを実装するか又は外部回路へ接続するための接続端子となっており、該露出したままの接続端子上に脱着が容易な保護シートが被覆されていることを特徴とする。したがって、応答速度が速く、接続端子界面付近で発生しやすい接触抵抗のばらつきや抵抗値の上昇の問題が発生しない効果がある。また、導体金属が露出したままの構成であっても錆たり腐食して接続不良となる不具合は発生しないという効果がある。
【0015】
また、本発明の第七の特徴構成によれば、本発明のタッチセンサは、前記透明電極の周囲3方向に額縁部が存在せず、残り1方向の額縁部を除く基材フィルム全面がセンシング可能なタッチスクリーン部となることを特徴とする。したがって、タッチ入力が可能な領域が拡大し、ディスプレイ画面に表示できるアイテムを多くすることができる効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るタッチセンサの実施形態を図面に基づいて説明する。本発明のタッチセンサ100は、少なくとも基材フィルム10上に透明電極20が備えられ(
図1)、前記透明電極20はフォトリソグラフィー法およびエッチング法からパターニングされたことを特徴とする(
図2、
図3)。
【0017】
基材フィルム10は、水素化開環メタセシス重合体、その中でも式(1)の置換基R↓1とR↓2がつながった環構造の水素化開環メタセシス重合体を主成分とする環状ポリオレフィン系ポリマーのフィルムであり、置換基R↓1とR↓2がつながった環構造の水素化開環メタセシス重合体の例としては、式(2)の水素化開環メタセシス重合体や式(3)の水素化開環メタセシス重合体などが挙げられる。該重合体の重量平均分子量は、13,000〜95,000程度が好ましい。
【0018】
これらの置換基R↓1とR↓2がつながった環構造の水素化開環メタセシス重合体は結晶化度が低いポリマーで、一般的に置換基R↓1とR↓2がつながっていない水素化開環メタセシス重合体に比べて透明性が高いという特長を有する。ガラス転移温度は、式(2)の水素化開環メタセシス重合体で150〜160℃くらい、式(3)の水素化開環メタセシス重合体で100℃くらいである。式(2)の水素化開環メタセシス重合体は、アルキル置換基R↓3やR↓4の炭素数が多いほど透明性はさらに向上するが、ガラス転移温度は低下する傾向にある。したがって、アルキル置換基を適宜選択して必要とする透明性および耐熱性等に応じたポリマーを選択するとよい。
【0019】
これらの重合体は、例えばジシクロペンタジエン類を出発原料に、熱分解してシクロペンタジエン類を生成し、該シクロペンタジエン類とオレフィンとのディールスアルダー法によって中間体であるモノマーノンボルネン類を生成し、該モノマーノンボルネン類をメタセシス反応触媒下で開環メタセシス重合して開環メタセシス重合体を生成し、水素化触媒を用いて該開環メタセシス重合体の二重結合を水素化して生成するとよい。
【0020】
また、該式(2)の水素化開環メタセシス重合体と式(3)の水素化開環メタセシス重合体とは、共重合体の基材フィルムにすることもできる。すなわち、該共重合体の共重合比率を操作することによって、前記アルキル置換基の選択以上の広範囲に渡る所望の透明性および耐熱性の基材フィルムにすることができる。
【0021】
たとえば、式(2)の水素化開環メタセシス重合体のアルキル置換基R↓3、R↓4がともに水素からなる重合体を用い、式(2)の水素化開環メタセシス重合体:式(3)の水素化開環メタセシス重合体の共重合比率が、重量比40:60で共重合した場合には、ガラス転移温度は120℃くらいであり、重量比99:1で共重合した場合には、ガラス転移温度は155℃くらいとなる。
【0022】
そして、それらの中間の重量比50:50で共重合した場合にはガラス転移温度は130℃くらいであり、重量比70:30で共重合した場合にはガラス転移温度は140℃くらいとなり、少なくとも重量比40:60から重量比99:1の範囲内では共重合比率とガラス転移温度に比例関係がある。したがって、該共重合比率を操作することによって所望のガラス転移温度の共重合体の基材フィルムにすることができる。
【0023】
従来技術として記載したノルボルネンとエチレンとの環状オレフィン系共重合体でも、その共重合比率を操作することで透明性やガラス転移温度を操作することは可能であるが、本発明の共重合体からなる基材フィルムの方がゲルの発生が少なく、製造される基材フィルムの光学特性や平滑性にすぐれている。とくに共重合比率が重量比50:50〜70:30(すなわち、ガラス転移温度が130℃〜140℃)の範囲の共重合体は、この点で非常に良好な基材フィルム10となる。なお、前記ガラス転移温度は、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定器(株式会社島津製作所製DSC−60)により測定した値である。
【0024】
平滑性にすぐれる本発明の基材フィルム10は、フォトリソグラフィーのような非常に高精細なパターンで透明電極20を形成する際の基材フィルムに適している。したがって、精密化・高精細化の要求が高いハイグレードなIT機器用途のタッチセンサにも適用できる。また、本発明の基材フィルム10は、濃塩酸や強アルカリなどの薬品に対しても優れた耐性を有する。よって、透明電極20をパターン化する際に用いるエッチング液に対して劣化・変色するようなことはなく、エッチングする際の基材フィルムとしても適している。
【0025】
また、本発明の基材フィルム10は、厚み150μmにおいて630nmにおけるリタデーション値が20nm未満となり、低複屈折率特性を有する光学等方性のフィルムとなる。したがって、本発明の基材フィルム10を用いたタッチセンサ100は、基材フィルムとしてポリエステル系樹脂フィルムなどを用いたタッチセンサで発生するようなブラックアウトがなく、偏光サングラスを掛けた状態でも操作ができるタッチセンサとなる。とくに、基材フィルム10を第三または第四の特徴構成のような共重合体で構成すれば、複屈折率特性をより低くすることができる。
【0026】
また、本発明の基材フィルム10は、式(1)などに示したように水素化開環メタセシス重合体中に極性基がないため、優れた防水性および防湿性を有し、背後への水分の侵入をブロックする性質も有する。したがって、タッチセンサ100の背後に設けられるディスプレイパネル、その中でもとくに水分が弱点である有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイパネルを保護する効果も有している。
【0027】
基材フィルム10の製造方法としては、押出成形、インフレーション成形、カレンダー成形、キャスト成形などが挙げられる。厚みはとくに制限はなく、2mm以下で適宜選択するとよい。本発明の基材フィルム10は従来の環状オレフィン系ポリマーからなる基材フィルムよりも透明性が高く、ディスプレイ画面の視認性が優れたタッチセンサにすることができる。とくに、短波長領域ではアクリルフィルムやポリカーボネートフィルムを超える光線透過率を有している。
【0028】
なお、本発明の基材フィルム10は適宜延伸加工してもよい。延伸加工とは、基材フィルムにある程度の加熱をしながら一軸方向または二軸方向に引っ張る加工のことである。延伸加工の方法としては、ロール延伸法、テンタークリップ延伸法、圧延法等が挙げられる。延伸方向は通常フィルムの送り方向や幅方向、すなわち縦延伸や横延伸に延伸するのが一般的であるが、斜め方向に延伸加工しても構わない。斜め方向に延伸加工する方法としては、基材フィルム10の両端部を把持具によって把持し、把持具を移動させながら基材フィルム10を搬送するとともに、基材フィルム10の搬送方向を途中で変えることにより、斜め方向に延伸加工する方法が挙げられる。
【0029】
ポリエステル系樹脂フィルムなどでは延伸加工すると結晶化が起こるが、本発明の基材フィルム10では、縦延伸や横延伸に延伸加工しても結晶化がほとんど起こらず透明性はほとんど変化しない。そして、本発明の基材フィルム10に対して上記のような方法で斜め延伸を行うと、斜め延伸後のフィルムの配向角のバラツキを低減することができ、光学異方性を有する長尺の位相差フィルムにすることもできる。
【0030】
前出の有機ELパネルでは、タッチセンサ100の表面から入射した外部光線が、透明電極20と有機ELパネルの発光層とを透過して内部の金属電極で反射することがあり、視認性が問題となる。その問題を回避するため、有機ELパネルの手前には一般的に直線偏光フィルムと位相差フィルムとからなる円偏光板が配置される。タッチセンサ100の基材フィルム10が光学異方性を有する位相差フィルムで構成されていれば、タッチセンサ100を直線偏光フィルムと有機ELパネルとの間に設けることにより、前記円偏光板のうち位相差フィルムが不要となり、タッチセンサ100を搭載した商品の軽量化・薄膜化に寄与できる効果がある。
【0031】
なお、本発明の基材フィルム10は単層のフィルムであってもよいし、複数の層が積層されたフィルムであってもよい。また、表面の濡れ性及び接着性を向上させるためにフレーム処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、イトロ処理、プライマー処理、化学薬品処理などの表面改質処理を行ってもよい。コロナ放電処理及び紫外線照射処理は、空気中、窒素ガス中、希ガス中等で行うことができる。
【0032】
また、本発明の基材フィルム10上には、傷付き防止のために電離放射線硬化性樹脂組成物などを含むハードコート層60を設けてもよい(
図1)。そして、ハードコート層60には直径が1μm〜5μm程度のアクリル、シリコーン、スチレンなどの樹脂または無機シリカなどからなる球状粒子を含有させてもよい。また、基材フィルム10と透明電極20との間や基材フィルム10とハードコート層60との間にウレタン樹脂などからなる屈折率調整層50を設けてもよい(
図1)。
【0033】
透明電極20は、タッチセンサ100に入力した動作を検知するためのセンシング機能を果たす電極であり、センシングによって検知された電気信号は引き回し回路40を通じて制御用の集積回路チップや外部の制御回路へと伝達される。透明電極20の材質としては、金属酸化物からなる透明導電膜、極細線の導体繊維を含有させた透明導電膜、目視で確認できない程度の細線からなる透明導電膜、有機物からなる透明導電膜透明導電膜などが挙げられる。
【0034】
金属酸化物からなる透明導電膜の例としては、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化カドミウム、インジウムスズ酸化物(ITO)などからなる透明導電膜が挙げられる。製膜方法としては、DCマグネトロンスパッタ法、RFスパッタ法、パルススパッタ法などの種々のスパッタリング法のほか、真空蒸着法、イオンプレーティング法、鍍金法などが挙げられる。また、溶媒に溶解または分散させて液体状態にし、スプレーやディップコーティングした後に溶媒を飛散させて形成する方法でも構わない。厚みは10〜800nm程度とするのが好ましい。
【0035】
極細線の導体繊維を含有させた透明導電膜の例としては、銅、白金、金、銀、ニッケル等からなる金属ナノワイヤやシリコンナノワイヤ、カーボンナノチューブを含有させた透明導電膜が挙げられる。光学特性および電気特性の観点から該極細線の導体繊維の直径は0.3〜100nm、長さは1〜100μm程度の寸法の導体繊維が好ましく、バインダー中に分散・連結されて二次元ネットワークが形成される膜に形成されることによって導電性が発揮される。
【0036】
目視で確認できない程度の細線からなる透明導電膜の例としては、銀、銅、パラジウムなどの導体金属を線幅0.5〜7μm程度、開口率(単位面積あたりの導体金属パターンが形成されない比率)90〜99%の格子状またはハニカム状にパターン化した透明導電膜等が挙げられる。製膜方法としては、電解または無電解のメッキ法のほか、真空蒸着法や拡散転写法などにより形成する方法が挙げられる。厚みは0.5〜30μm程度とするのが好ましい。
【0037】
有機物からなる透明導電膜の例としては、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)などのチオフェン系導電ポリマーやグラフェン等からなる透明導電膜が挙げられる。チオフェン系導電ポリマーからなる透明導電膜の製膜方法としては、前出の汎用印刷や塗装、各種コーターにより形成する方法が挙げられ、厚みは1〜30μm程度とするのが好ましい。グラフェンからなる透明導電膜の製膜方法としては、CVD法やプラズマCVD法などによって0.5〜100nmの薄膜で形成するのが好ましい。
【0038】
とくに、金属酸化物からなる透明導電膜では、一般的には結晶化した金属酸化物層に対してパターン形成するのが通常であるが、そのような結晶化した金属酸化物層はエッチング法による除去がしにくく高精細なパターンにしにくいため、高精細なパターンを必要とする用途にはあまり向いていない。一方、非結晶または低結晶の金属酸化物層はそのままの状態では抵抗値が高くてセンシングの検出精度や検出感度が弱くなる場合もある。
【0039】
そこで本発明では、まず非結晶または低結晶の金属酸化物による透明導電膜を形成し、透明電極20のパターン形成後に、遠赤外線またはプラズマの照射により該金属酸化物の結晶化を促進させるようにした。このようにすることにより、パターン形成時はエッチングがしやすい非結晶または低結晶の金属酸化物で構成されるため、透明電極20が高精細なパターンからなるタッチセンサ100を生産性良く製造できる。そして、パターン形成後は、結晶化により透明電極の導電性が向上しタッチ感度の良いタッチセンサ100となる。
【0040】
なお、「非結晶または低結晶」とは、完全に非晶質であるものに限られず少量の結晶成分を有している場合のものも含むことを意味する。したがって本発明では、X線解析のプロファイルを採り、結晶化を示す明確なX線解析強度のピークが見られない場合は勿論のこと、仮に該ピークが少し見られた場合でも、透明電極20が形成されたタッチセンサ100を濃度5重量%の塩酸に15分間浸漬した後、水洗・乾燥し、15mm↑2間の端子間抵抗を測定した場合に端子間抵抗が10倍以上に上昇するような場合は「非結晶または低結晶」と定義する。充分に結晶化された金属酸化物膜であれば上記の条件での塩酸浸漬でも皮膜が侵されることは少なく、端子間抵抗がそのように大幅増大することはないからである。
【0041】
透明電極20をパターン化する手段は、高精細のパターン化が必要なためフォトリソグラフィーによる方法を用いる。すなわち、フォトレジスト層70を透明導電膜21上の全面に塗布し、パターン化させたい箇所を露光して硬化させ未硬化部分を除去しパターン化する方法(
図2)や、その逆の除去したい箇所を露光して軟化させ軟化した部分のフォトレジスト層70を除去する方法(
図3)である。そして該フォトレジスト層70をパターン化した後は、該フォトレジスト層70の載っていない箇所の透明導電膜21をエッチングにより除去し、フォトレジスト層70を剥離除去して透明電極20が形成される(
図2、
図3)。
【0042】
フォトレジスト層70の材質としてはビニル系、アクリル系、ウレタン系、アルキッド系、エポキシ系、ポリエステル系、セルロース系などの樹脂が挙げられ、厚みは1〜50μm程度が好ましい。フォトレジスト層70の形成方法は、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、などの通常印刷法の他、塗装や各種コーターでのコート法でも構わない。また、上記透明導電膜をエッチングするためのエッチング液としては塩化第二鉄水溶液のほか、高濃度の塩酸、硝酸、硫酸などの強酸性水溶液や苛性ソーダ、苛性カリなどの強アルカリ性水溶液などが挙げられる。
【0043】
以上の方法によって形成される透明電極20は単層であっても複数層であってもよく、複数層の場合には基材フィルム10の両方の面に設けてもよいし、複数の基材フィルム10の各々に透明電極20をそれぞれ一層ずつ設けておき、それらの透明電極20の形成面を同じ側にして積層した構造にしてもよい。
【0044】
そして、透明電極20の周囲の外枠額縁部には、一般的に引き回し回路40が形成され、引き回し回路40の一部は外気に露出した接続端子45となっており、該接続端子45を通じて透明電極20で検出した電気信号は高速かつ円滑に集積回路チップや外部回路へ伝達される。高速に伝達する目的から、引き回し回路40は高導電性の金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、パラジウムなどの導体金属から構成するのが好ましく、接触抵抗値の上昇を避けるために引き回し回路40の導体金属がそのまま外気に露出した状態の接続端子45に直接集積回路チップを実装したり、外部回路と接続するのが好ましい。
【0045】
しかし、引き回し回路40の導体金属がそのまま外気に露出した状態であると腐食や錆が発生するので、接続端子45上には脱着が容易な保護シート46を被覆するのが好ましい(
図1)。脱着が容易な保護シート46としては、温度40℃、相対湿度90%の雰囲気内での24時間の水蒸気透過度が5g/m
2以内の水蒸気バリア性を有し、JIS−K−6854に規定される180度剥離試験法において剥離速度20mm/秒で25mm幅あたり10〜500g重の仮接着性を有するものが好ましい。なお、接続端子45の導体金属には不動態化処理(パッシベーション処理)をしてもよい。
【0046】
また、引き回し回路40を透明電極20の周囲の外枠額縁部に形成せず、1方向にのみ形成するようにしてもよい(
図4)。すなわち、透明電極20の周囲3方向には額縁部が存在せず、残り1方向にのみ額縁部47が存在するように回路設計する。そのようにすれば、残り1方向にのみ存在する額縁部47を除く基材フィルム10の全面がタッチ入力できる領域のタッチセンサ100にすることができる。