(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フレーム部材には、前記軸線方向の第一側において前記アウターパネルの内側表面と対面するフレーム表面のうち、前記軸線方向において前記ボルト頭部の第二側の面と非対向となる外側領域に、前記アウターパネルの内側表面に当接するよう突出し、前記狭圧状態で組み付けられた際には弾性的につぶされた状態となって該アウターパネルを支持する突起部が形成されている請求項1に記載の車両用ドアハンドル装置。
前記抜け止め部は、前記軸線方向の第二側から第一側に向かう前記ナットの前記貫通穴への挿通を弾性変形を伴う形で受け入れるとともに、挿通後には弾性復帰して当該ナットの該軸線方向の第二側への抜けを妨げる弾性片である請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両用ドアハンドル装置。
前記回転阻止部は、前記フレーム部材の貫通穴内に配置されたナットを前記軸線周りに回転させる際に、その回転方向において該貫通穴内の内壁面に当接することによりその回転を阻止する前記ナットの外周の壁部である請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両用ドアハンドル装置。
前記ナット挿通部の外周面と前記フレーム部材の貫通穴の内周面とが密着固定されており、その密着固定状態は、前記ナット挿通部の外周面に対する前記貫通穴の内周面の溶着によって固定された状態であり、
溶着前の前記貫通穴には、溶着時に溶融した樹脂を受け入れる逃がし部として、挿通された前記ナット挿通部の外周面との間に、前記軸線に沿って延出形成される第一の空隙と、前記アウターパネルの内側表面を臨むよう前記軸線方向外向きに延出形成される第二の空隙のいずれか又は双方が形成されている請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の車両用ドアハンドル装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両用ドアハンドル装置1は、車両ドアに取り付けられ、ハンドル部材20への引き起こし操作によって前記車両ドアを施開錠する車両用ドアハンドル装置であって、全体として細長形状をなし、その長手方向が車両の前後方向Aを向くように、車両ドアのアウターパネル2に固定される。車両用ドアハンドル装置1は、アウターパネル2に固定された樹脂製のフレーム部材10と、そのフレーム部材10に支持されて車両ドアの開閉の際に使用者に把持される樹脂製のハンドル部材20と、フレーム部材10をアウターパネル2に固定するための金属製のフレーム固定部材3とを備えている。
【0010】
フレーム部材10は、
図1及び
図2に示すように、車両前後方向Aに長い細長形状に形成されるとともに、フレーム固定部材3によりアウターパネル2の裏面(車両室内側となる内側表面)に固定されている。フレーム部材10の一端には、ハンドル部材20の一端に形成されたアーム部21を回動可能に支持する支持部11aが形成される一方、フレーム部材10の他端には、ハンドル部材20の他端に形成された屈曲部22の移動をガイドするガイド部11bが形成されている。フレーム部材10には、支持部11aとガイド部11bとの間の部分が車内側に若干凹んだ凹部12として形成されている。このため、凹部12とハンドル部材20との間には、空間13が設けられることになり、使用者は、その空間13に指を廻してハンドル部材20を把持できるようになっている。
【0011】
ハンドル部材20は、フレーム部材10と同様に車両前後方向Aに長い細長形状に形成され、フレーム部材10よりも車外側でアウターパネル2の表面(車外側となる外側表面)に露出する形で設けられている。ハンドル部材20の一端には、フレーム部材10の支持部11aに支持されるアーム部21が形成されている。アーム部21は、アウターパネル2に形成された開口2aを通して車両室外側から車両室内側へと導かれ、車両上下方向(
図1の紙面垂直方向)に向いた回動支点B回りに回動可能に支持部11aに支持されている。これにより、ハンドル部材20は、車両ドアから遠ざかる方向C1及びその逆方向C2に往復変位が可能とされている。厳密には、ハンドル部材20は、回動支点B回りに所定角度の範囲内で回動可能とされ、その回動可能の範囲内で方向C1−C2間で往復変位が可能となっている。
【0012】
ハンドル部材20の他端には、その長手方向に対してフレーム部材10側に略直角に屈曲した屈曲部22が形成されている。屈曲部22は、フレーム部材10に形成されたガイド部11bに嵌められている。そして、屈曲部22がガイド部11bにガイドされる形で、ハンドル部材20は方向C1−C2間で往復変位するようになっている。屈曲部22の先端には、屈曲部22に対して屈曲した先端部23が形成されている。先端部23は、その変位に連動して車両ドアを開状態にしたり閉状態にするロック装置(図示しない)に接続される。具体的には、ハンドル部材20(先端部23)が車両ドアから離れる方向C1に変位した場合、ロック装置によって車両ドアが開状態にされる一方、ハンドル部材20(先端部23)が逆方向C2に変位した場合、ロック装置によって車両ドアが閉状態にされる。
【0013】
次に、アウターパネル2に対するフレーム部材10の固定方法について説明する。
【0014】
フレーム部材10は、
図1に示すように、凹部12の一端(支持部11aに近い側の端部)が締結部14をなすフレーム固定部材3によりアウターパネル2に固定される。フレーム固定部材3は、相互間で螺合する金属製のボルト30及び金属製のナット40で構成される。締結部14には、
図3に示すように、フレーム部材10の裏面(車室内側となる内側表面)15と表面(車外側となる外側表面)16との間を貫通する貫通穴17が形成されている。
【0015】
貫通穴17は、ナット40が嵌合して配置される嵌合穴である。本実施形態の貫通穴17は、同軸で互いの径が異なる小径穴18及び大径穴19から構成されている。それら2つの穴18,19のうちフレーム部材10の表面16側に形成された小径穴18は、後述するナット40のナット挿通部41を挿通可能で、該ナット挿通部41と断面が略同形状をなす穴部であり、裏面側に形成された大径穴19は、後述するナット40のナット頭部42を挿通可能で、該ナット頭部42と断面が略同形状をなす穴部である。
【0016】
ナット40は、貫通穴17内に挿通され、同軸をなして配置されるナット挿通部41と、ナット挿通部41の車両室内側から貫通穴17の軸線Dに対し外向き(軸線Dに直交する側)に広がるナット頭部(フランジ部)42と、を有するとともに、ナット挿通部41からナット頭部42にかけて直線状に貫通する雌ねじ穴43が形成されている。ナット挿通部41は、貫通穴17の軸線Dの延出方向(軸線方向ともいう)のうち車外側(第一側)の端面46がアウターパネル2の車両室内側となる裏面(内側表面)25に対し当接する形で配置される。ナット頭部42は、軸線Dの延出方向の車外側(第一側)に向かってフレーム部材10に対し当接する形で配置される。
【0017】
また、ナット40は、フレーム部材10に対する軸線Dの周りの回転を阻止する回転阻止部を有する。本実施形態の回転阻止部は、フレーム部材10の貫通穴17内に配置されたナット40を軸線Dの周りに回転させる際に、その順逆双方の回転方向において該貫通穴17内の内壁面に当接して回転阻止する外周壁部44(
図2参照)である。つまり、貫通穴17の形状に対するナット40の形状によって、ナット40の軸線Dの周りの回転が阻止されている。具体的にいえば、本実施形態のナット挿通部41は、軸線Dの垂直断面が略楕円形状となる楕円柱状に形成され、略楕円形状の垂直断面の長径方向両側の外周壁部44が回転阻止部の主部として機能する。一方、フレーム部材10の貫通穴17(小径穴18)は、当該壁部44に対し上記回転方向において当接するよう形成されており、本実施形態においては、ナット挿通部41を挿通可能で、かつ同形状(ここでは上記楕円柱状)の内部空間を形成している。
【0018】
なお、本実施形態における上記略楕円形状とは、通常の楕円形状でもよいが、ここでは互いに対向する平行な2辺の同一側の端部同士をそれぞれ同一径の円弧で結んだ形状である。
【0019】
また、上記回転阻止部をなすナット40の外周壁部44は、貫通穴17内にナット挿通部41だけでなくナット頭部42も挿通される構成であれば、ナット挿通部41だけでなく、ナット頭部42に形成されていてもよい。この場合の貫通穴17(大径穴19)も、ナット頭部42の外周壁部44に対し上記順逆双方の回転方向において当接するよう形成されることになる。
【0020】
また、ナット40は、フレーム部材10からの軸線Dの延出方向の車両室内側(第二側)への抜けを阻止する抜け止め部を有する。本実施形態の抜け止め部は、外周面を形成する外周壁部44のうち、フレーム部材10の貫通穴17の内周面に対し、接着、熱溶着、圧入等の所定の手法によって密着固定状態とされた壁部44である。なお、当該密着固定状態をなす壁部44は、上記回転阻止部としての機能も果たしている。
【0021】
本実施形態のナット挿通部41の上記密着固定状態は、ナット挿通部41の外周面に対し、貫通穴17の内周面側が溶着して固定された状態である。溶着前の貫通穴17は、
図4に示すように、熱溶着時に溶融した樹脂を受け入れる逃がし部71,72を予め含んで形成されている。熱溶着時に熱で溶融した樹脂は、逃がし部71,72に進入し、熱溶着後、進入した樹脂がそのまま硬化して、これらの逃がし部71,72に樹脂が充填された状態となって、内部のナット挿通部41に密着して固定される(
図5参照)。逃がし部71,72は、貫通穴17の内周面と、該貫通穴17に挿通されたナット挿通部41の外周面との間に、軸線Dに沿って延出形成される第一の空隙71と、アウターパネル2の内側表面25を臨むよう、軸線Dの延出方向に対し外向きに、当該内側表面25に沿って延出形成される第二の空隙72とである。本実施形態においては、双方の空隙71,72が互いに連通する形で形成されている。
【0022】
なお、逃がし部71,72は、第一及び第二の空隙71,72のいずれかでもよいし、それらが連通していなくてもよい。
【0023】
ボルト30は、貫通穴17に挿通配置されたナット40において軸線Dの延出方向の車外側(第一側)からその逆の車両室内側(第二側)に向かって貫通する雌ねじ穴43内に、外周面の雄ねじ部33を螺合させる形でねじ込まれるボルト軸部31と、そのボルト軸部31がアウターパネル2を車外側に貫通した先で、軸線Dに対し外向きに広がって、アウターパネル2の車外側となる外側表面26に対し軸線Dの延出方向の車両室内側(第二側)に向かって当接するボルト頭部32と、ボルト軸部31の車両室内側(第二側)の端面において雌ねじ穴43内に雄ねじ部33が螺合するようねじ込むための所定の冶具と係合する冶具用係合部(凹凸面)34と、を有する。
【0024】
アウターパネル2には、
図2に示すように、ボルト軸部31が配置される貫通部2bが形成されている。本実施形態におけるアウターパネル2の貫通部2bは、貫通方向(軸線Dの延出方向)だけでなく、該貫通方向に対し直交する予め定められた受入方向Cからボルト軸部31を収容可能となるよう、当該受入方向C側が開放された切欠き部2bとして形成されている。ボルト30は、切欠き部2bの受入方向Cの奥側に当接して配置されるとともに、その当接配置状態において、貫通方向(軸線Dの延出方向)と受入方向C(
図2参照)に直交する方向の両側にも当接して挟まれることにより、位置決めされた状態となっている。
【0025】
また、ボルト頭部32は、
図6に示すように、軸線Dの垂直断面が円形状となる形で形成され、アウターパネル2の表面(外側表面)26に対し、所定のラップ量で重なり合う形で当接して配置される。ボルト頭部32を被うように樹脂製のパッド50(
図1参照)が当てられており、ボルト30の先端面が車外側から見えないようになっている(
図2参照)。他方、ナット挿通部41は、車外側(第一側)の端面46がアウターパネル2の車両室内側となる裏面(内側表面)25に対し、所定のラップ量で重なり合う形で当接して配置される。軸線Dの延出方向において、ボルト頭部32のアウターパネル2に対するボルト当接領域(円形領域)32bは、ナット挿通部41の端面46のアウターパネル2に対するナット当接領域(略楕円形領域)42bと重なるだけでなく、軸線Dに対する第一の直交方向D1(ここでは車両上下方向)においてナット当接領域42bよりも内側となるよう狭く形成され、かつ軸線Dと第一の直交方向D2(ここでは車両前後方向)の双方に直交する第二の直交方向D2においてナット当接領域42bよりも外側に達するよう広く形成される。これにより、金属製のボルト30と金属製のナット40によって、金属製のアウターパネル2が確実かつ安定的に挟み込まれる。
【0026】
アウターパネル2は、上述したナット40(雌ねじ穴43)とボルト30(雄ねじ部33)との螺合により、ナット挿通部41の車外側(第一側)の端面46とボルト頭部32とに狭圧状態で組み付けられる。
【0027】
なお、フレーム部材10には、軸線Dの延出方向の車外側(第一側)においてアウターパネル2の内側表面25と対面するフレーム表面16から、該アウターパネル2の内側表面25に当接するよう突出する突起部60が形成されている。突起部60は、上記狭圧状態でアウターパネル2が組み付けられた際には、
図5に示すように、弾性的につぶされた状態となって該アウターパネル2を支持する。本実施形態の突起部60は、アウターパネル2の内側表面25と対面するフレーム表面16のうち、軸線Dの延出方向においてボルト頭部32の車両室内側(第二側)の面と非対向となる外側領域に、軸線Dの周りに複数形成されている。具体的にいえば、
図6に示すように、突起部60は、フレーム表面16において軸線Dを挟んだ両側(ここでは上記第一の直交方向D1(車両上下方向)の両側)において、互いに平行をなす直線状のリブとして形成される。なお、本実施形態においては双方の突起部(リブ)60に挟まれた、フレーム部材10とアウターパネル2との間の隙間は、上記逃がし部72として利用される。
【0028】
ここで、アウターパネル2に対するフレーム部材10の固定手順について説明する。なお、下記の手順以外の方法で固定されてもよい。
【0029】
図7に示すように、まずは、アウターパネル2の貫通部2bとフレーム部材10の貫通穴17に対し、ボルト30を挿通して配置する。なお、ボルト30は、貫通部2bに対し受入方向Cから進入させる形で配置してもよく、貫通部2b内に配置された状態のボルト30を、フレーム部材10を近づける形で貫通穴17に挿通させてもよい。また、ボルト30は、アウターパネル2の貫通部2bとフレーム部材10の貫通穴17の位置を合わせた上で、車外側から双方に挿入して配置してもよい。
【0030】
次いで、そのボルト30に対し、フレーム部材10の裏面15側(車両室内側)に位置するナット40を螺合させていく。この螺合は、ボルト軸部31の車両室内側に露出する先端面に形成された冶具用係合部(凹凸面)34に対し、所定の治具(図示なし)を係合させて、軸線Dの周りに回転させることにより進行する。この螺合によってナット40がボルト30に接近していくと、ナット40は、軸線Dの車両室内側から貫通穴17内に進入する。このとき、ナット40のナット挿通部41は、貫通穴17(小径穴18)内に進入するにあたって、進入可能な姿勢が定められているため、姿勢を進入可能に合わせた上で進入させることになる。この螺合により、最終的には、アウターパネル2がナット挿通部41の端面46とボルト頭部32の裏面に当接して狭圧された固定状態となる。ナット40とフレーム部材10の固定(ここでは圧入)は、その後に行われる。
【0031】
別の手順としては、
図8に示すように、フレーム部材10の貫通穴17に先にナット40を車両室内側から嵌め込んでおき、その上で、アウターパネル2に対しフレーム部材10及びナット40を、貫通部2bと雌ねじ穴43とを位置合わせした状態で当接させ、ボルト30を、貫通部2bを通過させる形で雌ねじ穴43に螺合させていく、という手順である。この場合、ボルト30を螺合させる前に、ナット40とフレーム部材10の固定(例えば熱溶着)を先に行っておけば、ナット40の位置ずれが生じないため、ボルト30の螺合作業(締結作業)が容易になるという利点が得られる。なお、ナット40とフレーム部材10の固定は、本実施形態においては熱溶着とされているが、例えば接着剤や圧入を用いた他の方法によるものでもよい。
【0032】
なお、車両用ドアハンドル装置1を車両ドアに取り付けるにあたっては、本実施形態のボルト30とは別のボルトやタッピングスクリュー等のようなねじ部材のねじ込みを、本実施形態のボルト30のように車両室内側から行う場合がある。例えば
図1のタッピングスクリュー301は、車両室内側から車外側に向かってねじ込まれ、ナット302に対しねじ込まれる。この場合のタッピングスクリュー301は、
図1の空間300に挿入配置されるキーシリンダ(図示なし)を、フレーム部材10に締結固定するためのねじ部材である。しかしながら、本実施形態のボルト30は、ボルト頭部32に冶具用係合部が形成されるのではなく、その逆のボルト軸部31の先端に冶具用係合部34が設けられているため、ねじ込む際の回転方向が通常のボルトとは逆になる。このため、本実施形態のナット40は、他のナット(例えばナット302)とはねじ込む際の回転方向が逆となるよう雌ねじ穴43が逆ねじに形成されている。ボルト30の冶具用係合部(凹凸面)34が、他のねじ部材(例えばタッピングスクリュー301)の冶具用係合部(凹凸面)と同形状で形成されているため、双方に同じ治具を用いることができる。
【0033】
このように構成される本実施形態の車両用ドアハンドル装置1は、樹脂製のフレーム部材10を車両ドアの金属製のアウターパネル2に組み付けるにあたって、金属製のナット40がフレーム部材10の貫通穴17内に配置され、そのナット40の雌ねじ穴43と金属製のボルト30の雄ねじ部33とが螺合する。これにより、ナット40のナット頭部42とボルト30のボルト頭部32との間で、互いに密着するアウターパネル2とフレーム部材10がその密着方向において狭圧保持されるとともに、ナット頭部42とは逆のナット挿通部41の先端面46とボルト30のボルト頭部32との間で、アウターパネル2が単独で狭圧保持された状態となる。金属製のアウターパネル2が、金属製のボルト30と金属製のナット40に直接挟み込まれる形で狭圧固定される固定構造を含むため、樹脂製のフレーム部材10の樹脂クリープや熱収縮による変形によって、その狭圧力が減ることはない。
【0034】
従来の車両用ドアハンドル装置は、
図13に示すように、ボルト30’の冶具用係合部34’に対し、車両室内側から所定の冶具を係合させて軸線Dの周りに回転させることで、金属製のアウターパネル2’をフレーム部材10’に組み付ける、という作業は共通するものの、その固定構造には、金属製のアウターパネル2が金属製のボルト30と金属製のナット40に直接挟み込まれるという本発明の構造が採用されていない。従来の車両用ドアハンドル装置では、金属製のタッピングスクリュー30’と金属製のナット40’が軸線Dの延出方向において本発明とは逆向きかつ逆位置に配置され、樹脂製のフレーム部材10’の締結部14’の所定部位140’を、タッピングスクリュー30’の挿通部31’の外周の雄ねじ部33’とナット挿通部41’の内周の雌ねじ部43’との螺合によって、車両室内側のタッピングスクリュー30’の頭部32’と車外側のナット頭部42’で挟み込む構造が採用されている。また、ナット40’と貫通穴17’の間に介在する樹脂ブッシュ500’等の部品も設けられており、本発明よりも部品点数が多いという問題があった。
【0035】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、追加及び省略等の種々の変更が可能である。
【0036】
以下、本発明の他の実施形態及び変形例について説明する。なお、上記実施形態と共通の機能部や同様の機能部については詳細な説明を省略する。また、上記実施形態と下記変形例は、技術的な矛盾を生じない範囲において適宜組み合わせて実施できる。
【0037】
上記実施形態において、ナット40は、フレーム部材10の貫通穴17の内周面に対し、接着、熱溶着、圧入等の所定の手法によって密着固定状態とされることにより、貫通穴17から車両室内側(第二側)への抜けが阻止されていた。この抜け止め機能を果たす部位(抜け止め部)として、ナット40を、軸線Dの延出方向の車両室内側(第二側)から車外側(第一側)に向かうよう貫通穴17内への挿通させるに際して、弾性変形を伴う形でこれを受け入れ、かつ挿通後には弾性復帰して当該ナット40の軸線Dの方向の車両室内側(第二側)に回り込み、車両室内側(第二側)への抜けを妨げる弾性片400を、フレーム部材10に設けることができる。この場合、アウターパネル2に対するフレーム部材10の固定手順として
図8の手順を採用するにあたって、
図10に示すように、ボルト30を螺合させる前に行うナット40とフレーム部材10の固定(熱溶着)に代わって、上記弾性片400を用いることができる。即ち、ナット40とフレーム部材10を固定をせずとも、ナット40を車両室内側(第二側)から弾性片400を弾性的に乗り越えるようにしてフレーム部材10の貫通穴17に押し込むことで、抜け止め状態(仮組み付け状態)とすることができる。ナット40は、貫通穴17内に配置されれば、軸線Dの周りに回転できないため、上記抜け止め状態となっていれば、ナット40とフレーム部材10が固定されていた場合と同様、ボルト30の螺合作業(締結作業)が容易になるという利点が得られる。
【0038】
上記実施形態において、貫通穴17に挿通されるナット40は、軸線Dの延出方向においてナット頭部42を車両室内側に、ナット挿通部41を車外側に位置させ、ボルト30との螺合時にナット頭部42によってフレーム部材10を車両室内側から車外側に向けて押し付けるように配置されている。このため、ナット40は、貫通穴17に対し車両室内側からナット挿通部41の先端面を先頭にして挿通される形で配置されている。ところが、貫通穴17の内周面とナット挿通部41の外周面とが密着して、熱溶着や圧入、接着等で直接固定される構成であれば、
図12に示すように、ナット40は、貫通穴17に対し、車外側から、筒状のナット挿通部41の先端面を先頭に挿通される形で配置され、軸線Dの延出方向においてナット頭部42を車外側に、ナット挿通部41を車室内側に位置させる構成とすることができる。この構成の場合、
図11に示すように、ナット頭部42と、それよりも軸線Dの延出方向において車外側に位置するボルト頭部32との間で、アウターパネル2を挟んだ狭圧保持状態とするように構成できる。これにより、ナット40に固定されたフレーム部材10は、アウターパネル2を挟む形でのボルト30との螺合によって、ナット40を介してアウターパネル2に固定された状態になる。
【0039】
また、
図11の場合、ナット40とフレーム部材10の固定が熱溶着や接着剤による接着等であれば、ナット挿通部41の外周面に対しフレーム部材10の貫通穴17の内周面を密着固定させ、さらに、ナット頭部42の車室内側の面に対しフレーム部材10の車外側の面を密着固定させることができる。向きの異なる2つの面においてナット40とフレーム部材10とが固定されるから、固定をより強固なものとすることができる。
【0040】
また、
図11の場合、ナット40とフレーム部材10を熱溶着で固定するのであれば、熱溶着時に熱で溶融する樹脂を侵入させるための逃がし部73,74を予め形成されている。これにより、熱溶着時に進入した樹脂がそのまま硬化し、逃がし部73が充填された状態(
図11の状態)となって、硬化した樹脂がナット頭部42及びナット挿通部41に密着し、双方と固定された状態となる(
図11参照)。逃がし部73,74は、貫通穴17の内周面と、該貫通穴17に挿通されたナット挿通部41の外周面との間に、軸線Dに沿って延出形成される第一の空隙73と、ナット挿通部41の先端側にて車室内側に向かうに従い軸線Dに対する直交方向に広がる形で形成され、車室内側に開放される第二の空隙74とである。本実施形態においては、双方の空隙73,74が互いに連通する形で形成されている。また、フレーム部材10はナット頭部42のナット挿通部41側の裏面45’全面と当接して位置決めされる形で配置され、その上で、車外側からの作業によって熱溶着がなされる。熱溶着後は、第三の空隙73が樹脂で充填され、かつ第三の空隙73から続く形で第四の空隙にも樹脂が充填される。
【0041】
また、
図11の場合、フレーム部材10には、軸線Dの延出方向の車外側(第一側)においてアウターパネル2の内側表面25と対面するフレーム表面16から、該アウターパネル2の内側表面25に当接するよう突出する突起部60が、ボルト頭部32の軸線Dの延出方向の厚みよりも高く突出する形で形成されている。この突起部60は、ボルト頭部32とナット頭部42による狭圧状態でアウターパネル2が組み付けられた際には、弾性的につぶされた状態となって該アウターパネル2を支持する。ここでの突起部60も、フレーム表面16において軸線Dを挟んだ両側(ここでは上記第一の直交方向D1(車両上下方向)の両側)において、互いに平行をなす直線状のリブとして形成されている。