【実施例】
【0108】
実施例1
シゾキトリウムタンパク質発現ベクターpSchizEの構築
a.p07074#6の構築:
pSP73ベクター(Promega、acc#X65333)を、XbaIおよびリョクトウヌクレアーゼにより消化し、次いで、精製し、ライゲートし、ベクターp070604#3を作出した。次いで、p070604#3を、SphI、HpaI、およびリョクトウヌクレアーゼによりさらに消化し、次いで、精製し、再ライゲートし、ベクターp070704#6を作出した。
b.pSchiz1の構築:
WO02/083869に開示されたようなpTUBzeo11-2ベクターを、BamHIにより消化し、シゾキトリウムαチューブリンプロモーター、ble遺伝子、およびSV40ターミネーター領域を含有している1122塩基対(bp)の断片を放出させた。この断片をゲル精製し、予めBamHIにより消化されたベクターpYES2/CT(Invitrogen)へライゲートした。次いで、得られた構築物を、αチューブリンプロモーターを含有している540bpの断片を放出させるため、SmaI、SphI、およびリョクトウヌクレアーゼにより消化した。断片を、予めBamHI、SmaI、およびリョクトウリガーゼにより消化されたpUC19(Genbankアクセッション番号L09137)へライゲートし、pSchiz1を作出した。
【0109】
c.pSchiz2の構築:
別の反応において、ライゲーションのためのNcoIおよびPciIの制限部位(イタリック体で示される)を組み入れられた以下のプライマーを使用して、pTUBzeo11-2からSV40ターミネーターをコードするアンプリコンを生成するため、PCRを使用した。
【0110】
得られたアンプリコンを、NcoIおよびPciIにより消化し、付着末端を露出させた。次いで、この265bp断片を予めNcoIにより消化されたpSchiz1へライゲートした。pSchiz2と命名された得られたプラスミドは、αチューブリンプロモーター、それに続くSV40ターミネーターを含有していた。
【0111】
d.pSchiz3の構築:
別の反応において、いずれかの末端にSmaI部位(イタリック体で示される)を付加するために設計された以下のプライマーを使用して、pYES2/CTからマルチクローニング部位(MCS)を増幅するため、PCRを使用した。
【0112】
次いで、得られたMCSアンプリコンを、SmaIにより消化し、予めNcoIおよびリョクトウヌクレアーゼにより消化されたpSchiz2へライゲートした。pSchiz3と命名された得られたベクターは、αチューブリンプロモーター、SV40ターミネーター、およびpYES2/CT MCSを含有していた。
【0113】
e.pSchiz0.5#4の構築
αチューブリンプロモーター、pYES2/CT MCS、およびSV40ターミネーター領域からなるMCSカセットをコードするアンプリコンを生成するため、以下のプライマーおよび鋳型としてのpSchiz3を用いたPCRを使用した。
【0114】
これらのプライマーは、MCSカセットアンプリコンの末端にBglIIおよびSalIの制限部位(イタリック体で示される)を付加するために設計された。得られたPCR断片を、BglIIおよびSalIにより消化し、予めBglIIおよびSalIにより消化されたp070704#6へライゲートし、pSchiz0.5#4を生成した。
【0115】
f.pSchizEの構築
米国特許第7,001,772号に記載されるようなベクターpMON50203を鋳型として使用して、ALS遺伝子(そのプロモーター領域およびターミネーター領域を含む)をコードする4776bpのアンプリコンを生成するため、PCRを使用した。NdeIおよびBglIIの制限部位(イタリック体で示される)を含有している以下のプライマーを、このPCR反応のために使用した。
【0116】
次いで、得られたALSアンプリコンをBglIIおよびNdeIにより消化した。pSchiz0.5#4を、BglIIおよびNdeIにより同様に消化し、より大きな3171bpのバンドをゲル精製し、精製されたALS PCRアンプリコンにライゲートした。pSchizEと命名された得られたベクターを、配列決定により確証したところ、それは、ALS遺伝子(プロモーター領域およびターミネーター領域を含む)、それに続くシゾキトリウムαチューブリンプロモーター、pYES2/CT MCS、およびSV40ターミネーター領域を含有している発現カセットを含有していた(
図5を参照のこと)。
【0117】
実施例2
シゾキトリウムタンパク質発現ベクターpSchiz-sGの構築
eGFPの発現および分泌は、pSchiz-sGを使用して達成された(
図6を参照のこと)。このプラスミドは、pCO0001とも命名され、2008年11月18日にAmerican Type Culture Collection,Patent Depository(10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110-2209)に寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-9617を与えられた。このベクターは、(i)シゾキトリウムαチューブリンプロモーター配列、それに続く(ii)eGFPをコードする配列に融合した、成熟トランスポータータンパク質のN末端部分の断片が付着しているシゾキトリウムNa/Piトランスポーターシグナル配列(SEQ ID NO:15)をコードする配列、それに続く(iii)MCSの残りおよび(iv)SV40ターミネーター領域を含有している。このベクターは、選択可能マーカーとしてシゾキトリウムALS遺伝子も含有している。ベクターは、下記のように構築された。
【0118】
シグナルペプチドをコードするために選ばれた配列(SEQ ID NO:2)は、シゾキトリウムESTライブラリーから単離されたNa/Piトランスポーターに由来した。eGFPを含有しているプラスミドpPha-T1-eGFP(Apt et al.,J.Cell Sci.115:4061-4069(2002))およびシグナル配列を付加するために設計された三つのプライマーを使用したPCRにより、シグナルペプチドおよびeGFPをコードするヌクレオチド配列を融合させた。一次PCR反応は、鋳型としてのeGfp含有プラスミド、eGfpの3'末の小さなプライマー(以下にイタリック体で示されるSpeI部位を含有しているプライマーsec.Gfp3'Spe)、ならびにeGfpの5'末およびシグナル配列の3'末に隣接している100bpのプライマー(プライマーsec.Gfp5'1b,sec)を利用した。プライマー配列は以下の通りであった。
【0119】
二次PCR反応においては、一次PCRのアンプリコン産物を鋳型として使用した。シグナル配列の残りが組み入れられた第2の100bpの5'プライマー(sec.Gfp5'Bam)と共に、同じ3'プライマーを使用した。第2の5'プライマー配列は、BamHI部位(以下にイタリック体で示される)を含有しており、以下の通りであった。
【0120】
この二次PCR反応から得られたPCR産物は、クローニングのためのBamHIおよびSpeIの部位を含有していた。
【0121】
二次PCR反応のアンプリコンおよびpSchizEの両方を、BamHIおよびSpeIにより消化し、相互にライゲートし、ベクターpSchiz-sGを作出した。
【0122】
実施例3
シゾキトリウムタンパク質発現ベクターpSchiz-sGrの構築
pSchiz-sGrベクターは、αチューブリンプロモーター、ER保留シグナルをコードする配列を含むeGFPヌクレオチド配列、SV40ターミネーター領域、および変異型ALS選択可能マーカーを含む。
【0123】
一般的なER保留シグナルアミノ酸配列HDELを戻し翻訳し、この保留シグナルをコードする配列(SEQ ID NO:14)を、実施例2からのpSchiz-sGを鋳型として使用したPCRにより、eGFPと融合させた。オリゴヌクレオチドプライマーは、一方のプライマーには、終止コドン(文字囲で示される)とインフレームのHDELコーディング配列(以下のss.eGfpHELD3'RVプライマー配列の下線部の逆相補鎖)+BamHI部位(イタリック体で示される)を含み、他方のプライマーにはEcoRV部位(イタリック体)を含むように設計された。
【0124】
得られたPCR産物を、BamHIおよびEcoRVにより消化し、BamHIおよびEcoRVにより(実施例1に記載された)pSchizEを消化することにより得られた、より大きな断片にライゲートした。得られたベクターを、pSchiz-sGrと命名した(
図7を参照のこと)。
【0125】
実施例4
シゾキトリウムタンパク質発現ベクターpSchiz-cGの構築
比較対照として、蛍光タンパク質が細胞質に蓄積するような様式で、eGFPを発現するpSchiz-cGベクターを構築した。pSchiz-cGプラスミドは、シゾキトリウムOrfCプロモーター、eGFPをコードするポリヌクレオチド配列、SV40ターミネーター領域、および変異型シゾキトリウムALS選択可能マーカーを含む。
【0126】
まず、シゾキトリウムORFC上流の2000bpの配列を、シゾキトリウムsp.ATCC20888のゲノムDNAから、以下のプライマーを用いてPCR増幅した。
【0127】
prREZ15プライマーおよびprREZ16プライマーは、それぞれ、KpnI配列およびBamHI配列(イタリック体)を含有していた。得られたアンプリコンを、BamHIおよびKpnIにより消化し、ゲル精製した。
【0128】
次に、シゾキトリウムORFC下流の1985bpの配列を、シゾキトリウムsp.ATCC20888のゲノムDNAから、以下のプライマーを用いてPCR増幅した。
【0129】
prREZ17プライマーおよびprREZ18プライマーは、それぞれ、BamHI配列およびXbaI配列(イタリック体)を含有していた。得られたアンプリコンを、BamHIおよびXbaIにより消化し、ゲル精製した。
【0130】
次に、ベクターpBluescript SK(+)(Stratagene、acc#X52328)を、KpnIおよびXbaIにより消化し、ゲル精製した。このベクターおよび上で生成された二つのアンプリコンを、全て同時にライゲートし、ベクターpREZ22を作製した。
【0131】
次いで、ベクターpSchizE(実施例1)を、BamHIにより消化し、リョクトウヌクレアーゼにより処理し、カラム精製し、XbaIにより消化し、次いで、ゲル精製した。次いで、以下のプライマーを用いたPCRを、(鋳型pPha-T1-eGFPを使用して)eGFPコーディング領域を含有しているアンプリコンを生成するため、実施した。
【0132】
次いで、このアンプリコンをXbaIにより消化し、上記のpSchizEの断片にライゲートし、ベクターpSchizE-eGFPを作出した。
【0133】
次いで、ORFCのプロモーターをコードするアンプリコンを生成するため、鋳型としてpREZ22を用いたPCRを使用した。各々、KpnI制限配列(イタリック体で示される)を含有している以下のプライマーを、このPCRのために使用した。
【0134】
次いで、このアンプリコンをKpnIにより消化した。次いで、pSchizE-eGFPベクターもKpnIにより消化し、2個の断片を生成した。より大きい断片(7554bp)を、ゲル精製し、上記のKpnI消化されたアンプリコンにライゲートし、シゾキトリウムORFCプロモーター配列、それに続くeGFP配列およびSV40ターミネーター領域を含有しているpSchiz-cGベクター(
図8を参照のこと)を作製した。
【0135】
実施例5
シゾキトリウムの形質転換およびその後のタンパク質発現
他に示されない限り、全てのベクターおよび構築物を、特定の培養規模にとって適切なQiagenキット(Valencia,CA)を使用したプラスミド精製のため、大腸菌UltraMax DH5-α FT化学処理コンピテントセル(Invitrogen,Carlsbad,CA)において繁殖させた。
【0136】
シゾキトリウムsp.ATCC番号20888の培養物を、10g/Lグルコース、0.8g/L (NH
4)
2SO
4、5g/L Na
2SO
4、2g/L MgSO
4・7H
2O、0.5g/L KH
2PO
4、0.5g/L KCl、0.1g/L CaCl
2・2H
2O、0.1M MES(pH6.0)、0.1%PB26金属、および0.1%PB26ビタミン(v/v)からなるM2B培地で増殖させた。PB26ビタミンは、50mg/mLビタミンB12、100μg/mLチアミン、および100μg/mLパントテン酸Caからなっていた。PB26金属は、pH4.5に調整されており、3g/L FeSO
4・7H
2O、1g/L MnCl
2・4H
2O、800mg/mL ZnSO
4・7H
2O、20mg/mL CoCl
2・6H
2O、10mg/mL Na
2MoO
4・2H
2O、600mg/mL CuSO
4・5H
2O、および800mg/mL NiSO
4・6H
2Oからなっていた。PB26ストック溶液は別々に濾過滅菌され、加圧減菌の後、ブロスへ添加された。グルコース、KH
2PO
4、およびCaCl
2・2H
2Oは、塩沈殿および炭水化物カラメル化を防止するため、混合する前に、各々、ブロス成分の残りとは別に加圧減菌された。全ての培地成分が、Sigma Chemical(St.Louis,MO)から購入された。シゾキトリウムの培養物を対数期まで増殖させ、ベクターpSchiz-E1(実施例1)、pSchiz-sG(実施例2)、pSchiz-sGr(実施例3)、またはpSchiz-cG(実施例4)を使用して、Biolistic(商標)particle bombarder(BioRad,Hercules,CA)により形質転換した。Biolistic(商標)形質転換法は、以前に記載されたのと本質的に同一であった(Apt et al.,J.Cell.Sci.115(Pt 21):4061-9(1996)および米国特許第7,001,772号を参照のこと)。20g/L寒天(VWR,West Chester,PA)、10μg/mL Sulfometuron methyl(SMM)(Chem Service,Westchester,PA)を含有している固形M2B培地で、27℃での2〜6日間のインキュベーションの後、一次形質転換体を選択した。全ての一次形質転換体を、SMMを含む新鮮なM2Bプレートへ手動で移した。
【0137】
一次形質転換体コロニーを、蛍光顕微鏡検および光学顕微鏡検により分析した。50mLのM2B-SMM液体培地に接種するためにも、一次形質転換体コロニーを使用した。2〜5日間の27℃でのインキュベーションの後、15分間の5500×gでの遠心分離により培養物を採集した。Centriprep(商標)重力式コンセントレーター(Millipore,Billerica,MA)を使用して、無細胞上清を100倍濃縮し、細胞ペレットを水で洗浄し、液体窒素で凍結させた後、ペレット重量の2倍の(50mMリン酸ナトリウム(pH7.4)、1mM EDTA、5%グリセロール、および1mM新鮮フェニルメチルスルホニルフルオリドからなる)溶解緩衝液およびペレット重量の2倍の0.5mmガラスビーズ(Sigma,St.Louis,MO)に再懸濁させた。次いで、細胞ペレット混合物を、3時間(h)、最大スピードで、マルチチューブボルテックスミキサー(VWR,Westchester,PA)で4℃でボルテックスすることにより溶解した。次いで、細胞溶解物を4℃で10分間5500×gで遠心分離した。上清を保持し、4℃で10分間5500×gで再遠心分離した。得られた上清を、本明細書において、「無細胞抽出物」として定義する。無細胞上清および無細胞抽出物の両方のタンパク質を、Bradfordアッセイキット(Sigma,St.Louis,MO)により定量化し、4〜12%ポリアクリルアミドBis-Trisゲル(Bio-Rad,Hercules,CA)へ負荷する前に、製造業者の説明(Bio-Rad,Hercules,CA)に従い、XT試料緩衝液との混合物として煮沸した。
【0138】
SDS-PAGEゲルを、クーマシー色素により染色するか、またはウエスタンブロッティングによりPVDFへ転写した。ブロッティングの後、PVDF膜を、トリス緩衝生理食塩水(TBS)(Sigma,St.Louis,MO)により濯ぎ、2時間室温で5%無脂肪粉乳(NFDM)を含むTBSにより処理した。関心対象のタンパク質に特異的な一次抗体を、製造業者の説明に従い、5%NFDM-TBSで希釈した。必要な場合には、この溶液を除去し、一次抗体に特異的なアルカリホスファターゼ標識二次抗体が添加された新鮮な5%NFDM-TBSと交換した。二次抗体を使用しない場合には、一次抗体がアルカリホスファターゼにより標識されていた。次いで、抗体により処理されたPVDFを、TBSにより濯ぎ、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-リン酸/ニトロブルーテトラゾリウム溶液(BCIP/NBT)(KPL,Gaithersburg,MD)により処理した。
【0139】
図9に示されるように、pSchizGrにより形質転換されたシゾキトリウムは、ERにおけるeGFP局在を示したが(
図10も参照のこと)、pSchizcGにより形質転換されたシゾキトリウムは、細胞質全体にeGFPを提示した。pSchizE(空ベクター対照)により形質転換されたシゾキトリウムは、eGFPの発現を提示しなかった。
図11に示されるように、pSchiz-sGにより形質転換されたシゾキトリウムについては、無細胞上清試料(即ち、細胞外)にも無細胞抽出物にもeGFPが検出された。pSchiz-sGrにより形質転換されたシゾキトリウムは、無細胞抽出物にeGFPを含有し、より少ない程度に、無細胞上清にも含有していた。最後に、pSchizcGにより形質転換されたシゾキトリウムは、ほぼ排他的に無細胞抽出物にeGFPを含有していた。
【0140】
実施例6
Sec1シグナルペプチドの同定
シゾキトリウムのゲノム配列は、当技術分野の標準的な技術を使用して、以前に生成され、組み立てられ、BLAST検索のためにフォーマットされた。窒素過剰(N-replete)条件の下で増殖したシゾキトリウムの培養物から、上清を濃縮し、SDS-PAGEで実行した。主要な分泌型タンパク質バンドをゲルから切り出し、アミノ酸配列決定のために使用した。入手されたアミノ酸配列のシゾキトリウムゲノムとのBLAST比較(アルゴリズム−tBLASTn、低複雑度フィルタリング−オフ、期待値−1000、行列−PAM30、ギャップなしのアラインメント(Ungapped Alignment)−オン)により、対応するORFが同定された。ORFの5'部分を、SignalPアルゴリズムを使用して分析した。例えば、Bendsten et al.,J,Mol.Biol.340:783-795(2004);Nielsen and Krogh,Proc.Int.Conf.Intell.Syst.Mol.Biol.6:122-130(1998);Nielsen et al.,Protein Engineering 12:3-9(1999);Emanuelsson et al.,Nature Protocols 2:953-971(2007)を参照のこと。Sec1タンパク質の5'領域が、この分析により、分泌シグナルとして同定された。
図12(SEQ ID NO:37を含む)および
図13(SEQ ID NO:38)を参照のこと。
【0141】
実施例7
シゾキトリウムベクターpSchiz-Cptの構築
pSchiz-Cptベクターは、OrfCプロモーターおよびOrfCターミネーターならびにALS選択可能マーカーを含有している。簡単に説明すると、このベクターは、まずpSchizEプラスミドをKpnI/XbaIにより消化し、得られた6.89kbの断片をゲル精製することにより構築された。この消化は、pSchizEプラスミドからのチューブリンプロモーターおよびポリリンカーの大部分の除去ももたらした;ALSコーディング配列は完全なままであった。得られた6.8kbのSchizE骨格へ、シゾキトリウムOrfCの上流の2kbの配列+シゾキトリウムOrfCの下流の2kbの配列を含有しており、BamHI部位が上流セグメントと下流セグメントとを分離している4kbのKpnI/XbaI断片をライゲートした。4kbのKpnI/XbaI断片は、プラスミドpREZ22(実施例4を参照のこと)から切り出された。6.8kbのpSchizE骨格と4kbのKpnI/XbaI断片とのライゲーションにより、pSchiz-Cptを得た。
【0142】
実施例8
シゾキトリウムタンパク質発現ベクターpSchizCpt-s1eGFPの構築
pSchizCpt-s1eGFPプラスミドは、シゾキトリウムOrfCプロモーター、eGFPをコードする配列に先行するSec1シグナル配列、ならびにOrfCターミネーターおよび変異型シゾキトリウムALS選択可能マーカー配列を含む。
図14を参照のこと。このプラスミドは、pCL0001とも命名され、2008年11月18日にAmerican Type Culture Collection,Patent Depository(10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110-2209)に寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-9615を与えられた。
【0143】
実施例9
発酵槽におけるシゾキトリウムによるeGFPの発現および分泌
シゾキトリウムの細胞を、実施例5に記載されたようにして、pSchizCpt-s1eGFP(実施例8を参照のこと)により形質転換した。SMMに対して耐性の細胞株を、M2B寒天プレートで単離し、振とうフラスコ内の(10μg/ml SMMを含有している)M2B液体培養物へ移し、150rpmで振とうしながら27.5℃でインキュベートした。72〜168hの培養の後、培養物を、遠心分離(10分間5000×g)により採集し、CentriprepコンセントレーターおよびMicroconコンセントレーター(MWCO 10000)を使用して、無細胞上清を濃縮した(およそ250倍)。試料(1〜7μl)を、SDS-PAGEで実行し、分離されたタンパク質をPVDF膜に移した。ブロッキングされ洗浄された膜を、ウサギ抗eGFP IgG(Biovision)により探索し、アルカリホスファターゼ標識ヤギ抗ウサギIgG(fc)(Promega)による探索およびBCIP/NBT試薬による処理により、反応性のタンパク質バンドを可視化した。最も多量のeGFPを発現する細胞株を選択した。
【0144】
高産生細胞株のうちの一つを、2.0L(ワーキング容量)の発酵槽で培養した。整流装置付きの接種フラスコは、150mlのHD1培地を含有しており、200rpmで振とうしながら24〜48h、29.5℃でインキュベートされた。接種培養物を、以下のものを含有している発酵槽に接種するために使用した:50g/Lグルコース、13.62g/L Na
2SO
4、0.72g/L K
2SO
4、0.56g/L KCl、2.27g/L MgSO
4・7H
2O、1.8g/L KH
2PO
4、17.5g/L (NH
4)
2SO
4、0.19g/L CaCl
2・2H
2O、51.5mg FeSO
4・7H
2O、3.1g/L MnCl
2・4H
2O、6.2g/L ZnSO
4・7H
2O、0.04mg CoCl
2・6H
2O、0.04mg Na
2MoO
4、2.07g/L CuSO
4・5H
2O、2.07g/L NiSO
4・6H
2O、9.75mgチアミン、0.16mgビタミンB12、および3.33mgパントテン酸カルシウム。培養の間、温度は29.5℃であり、dO
2%は20%に制御され、グルコース濃度は、初期レベルがこの範囲に入った後、15〜20g/Lに維持され、pHは6.5に維持された。試料は、分析のため、間隔を置いて、無菌的に取り出された。
【0145】
(0.5〜5.0μgの全タンパク質を含有している)無細胞上清の未濃縮試料を、SDS-PAGEにより分離し、タンパク質をPVDF膜に移した。ブロッキングされ洗浄された膜を、上記のように、分泌型eGFPについて探索した。
図15を参照のこと。
【0146】
実施例10
シゾキトリウムタンパク質発現ベクターpSchizCpt-s1κbhの構築
pSchizCpt-s1κbhプラスミドは、シゾキトリウムOrfCプロモーター、IgGκサブユニットをコードするポリヌクレオチド配列に先行するSec1シグナル配列、ならびにOrfCターミネーター領域および変異型シゾキトリウムALS選択可能マーカー配列を含む(
図16を参照のこと)。この発現ベクターは以下のように作成された:
【0147】
5'Sec1分泌シグナル配列を含む、
図42のコドン使用頻度表を使用してBlue Heron Biotechnologiesにより対応するアミノ酸配列から作製されたIgGのκ鎖をコードする再合成(コドン最適化)された遺伝子を、プラスミドpSchiz-CptのorfCプロモーターとorfCターミネーターとの間にクローニングした。簡単に説明すると、ベクターpSchiz-Cptを、酵素の製造業者の説明(New England Biolabs)に従い、BamHIおよびアルカリホスファターゼにより消化した。BglII(NEB)により消化され、以下のプライマー:
およびSec1シグナルペプチドのためのポリヌクレオチド配列、それに続くκポリヌクレオチド配列(SEQ ID NO:41)を含有している合成最適化DNA分子を保有しているBlue Heron Biotechnologiesにより提供された鋳型を使用して作出されたアンプリコンに、これをライゲートした。得られた細菌形質転換体コロニーを、発現のため適切に整列したベクターインサートについてスクリーニングした。(pSchizCPT-s1κbhと名付けられた)1個のクローンを、さらなる分析、配列の確認、およびシゾキトリウムの形質転換のために選び出した。
【0148】
実施例11
シゾキトリウムによる抗体サブユニットκの発現および分泌
形質転換体細胞株の生成
シゾキトリウムsp.ATCC20888を、24h、27℃で50mlのM2B培地を含有している250mlの振とうフラスコで培養した。吸光度を600nmで測定し、1の吸光度値を有する培養物1mlと等価な容量を、5分間8,000×gで遠心分離した。細胞ペレットを100μlのM2Bに懸濁させ、M2B寒天プレート上の直径2cmの円内に播種した。
【0149】
播種されたシゾキトリウム細胞を含有しているプレートの区域に、1100Psiの圧力で、(XbaIにより直鎖化された)pSchizCptS1κによりコーティングされたM10ビーズを撃ち込んだ。
【0150】
撃ち込みの後、M2Bプレートを27℃で16hインキュベートし、シゾキトリウムが播種されたプレートの中心で増殖中のコロニーを選び出し、10μg/ml SMMを含有しているM2Bプレート上に播種した。24〜72hの後、20個のコロニーを選び出し、25ml培養管内の10mg/ml SMMを含有している5ml M2Bへ接種した。培養管を、72h、135rpmで27℃でインキュベートした。
【0151】
κ発現の検出
上記からの最も不明瞭な振とうフラスコ培養物のうちの10を、発現分析のために選択した。250mlフラスコ内の10μg/ml SMMを含有している50mlのM2Bに、試験管培養物からの0.5mlを接種した。培養物を、24時間135rpmで振とうしながら27℃でインキュベートし、その後、細胞ペレットおよび無細胞上清を10分間の5500×gでの遠心分離により分離した。
【0152】
細胞ペレットを40ml dH
2Oに懸濁させ、10分間5500×gで遠心分離し、次いで、その湿重量の2倍の抽出緩衝液に懸濁させた。ペレット湿重量の2倍のガラスビーズを添加し、チューブを4℃で3時間振とうした。得られた細胞ホモジネートを、10分間5000×gで遠心分離し、上清を無細胞抽出物として保持した。
【0153】
無細胞上清を、10000MWのカットオフを有するCentriprepコンセントレーターおよびMicroconコンセントレーター(Amicon)を使用して、およそ50mlから>200μlへと濃縮した。
【0154】
選択された各形質転換体についてタンパク質(無細胞抽出物および濃縮された無細胞上清)3μgを、およそ45分間(色素前線がゲルの下端からちょうど流れ出すまで)、200VでMOPSランニング緩衝液を用いて4〜12%Bis Tris SDS PAGE(xt criterion,BioRad)で実行した。タンパク質バンドを、90分間、70Vで、Nupage転写緩衝液を使用してPVDF膜に転写した。膜を5%(w/v)粉乳を含む0.1%トゥイーン20含有TBSによりブロッキングし、アルカリホスファターゼ標識抗ヒトκIgG(Sigma)を使用したウエスタンブロットを介して、抗体サブユニットκの局在位置を決定した。陽性バンドをBCIP/NBTホスファターゼ基質(KPL)により可視化した。
【0155】
抗体サブユニットκは、主に、上記のように培養された振とうフラスコ培養物からの無細胞上清に明白に検出可能であった(
図17を参照のこと)。真正κ標準物と識別不可能なMWを有するκタンパク質の無細胞上清への出現は、κサブユニットが分泌され、適切な翻訳後修飾(Sec1分泌シグナルの切断)を受けることと一致していた。
【0156】
実施例12
発酵槽におけるシゾキトリウムによる抗体サブユニットκの発現
培養
最も多量の細胞外κサブユニットを発現すると考えられた二つのクローン(1および3)を、2.0L(ワーキング容量)の発酵槽で培養した。整流装置付き接種フラスコは、150mlのHD1培地を含有しており、200rpmで振とうしながら24〜48時間29.5℃でインキュベートされた。接種培養物を、以下のものを含有している発酵槽に接種するために使用した:50g/Lグルコース、13.62g/L Na
2SO
4、0.72g/L K
2SO
4、0.56g/L KCl、2.27g/L MgSO
4・7H
2O、1.8g/L KH
2PO
4、17.5g/L (NH
4)
2SO
4、0.19g/L CaCl
2・2H
2O、51.5mg FeSO
4・7H
2O、3.1g/L MnCl
2・4H
2O、6.2g/L ZnSO
4・7H
2O、0.04mg CoCl
2・6H
2O、0.04mg Na
2MoO
4、2.07g/L CuSO
4・5H
2O、2.07g/L NiSO
4・6H
2O、9.75mgチアミン、0.16mgビタミンB12、および3.33mgパントテン酸カルシウム。培養の間、温度は29.5℃であり、dO
2%は20%に制御され、グルコース濃度は、初期レベルがこの範囲に入った後、15〜20g/Lの間に維持され、pHは6.5に維持された。試料は、分析のため、間隔を置いて無菌的に取り出された。
【0157】
κ発現の検出
無細胞上清を濃縮することなく分析し、タンパク質標準物としてBSAを用いたBradford(Sigma Bradford Reagent)の方法を使用して、全タンパク質を決定した。上記の振とうフラスコ培養物について記載されたのと同様に、κサブユニット発現を確認するためのウエスタン分析を実施した。
【0158】
κ発現の定量化は、いずれも製造業者の説明に従って、Human Kappa-B+F Elisa Quantification Kit(Bethyl Laboratories Inc.)およびFluoro Omegaプレートリーダ(BMG Labtech)を使用して実施された。
図18を参照のこと。
【0159】
実施例13
pAB0011発現ベクターの構築
2015bp長のアンプリコンを作出するため、シゾキトリウムsp.ATCC20888から抽出されたgDNAを鋳型として使用して、以下のプライマーを用いて、PCRを実施した:
【0160】
アンプリコンをゲル精製し、以下のプライマーを用いたその後のPCRのための鋳型として使用した:
【0161】
得られた1017bpのアンプリコンを精製し、KpnIおよびBamHIにより消化し、予め精製されKpnIおよびBamHIにより消化されたpSchiz-CPT(+)-s1GFP(6h)にライゲートした。ライゲーション産物を大腸菌を形質転換するために使用し、得られたコロニーからプラスミドを精製し、制限消化によりスクリーニングした。予想される制限消化パターンを有し、60Sロングプロモーターを含む一つのプラスミドクローン(#4.1)を、サンガー配列決定により確証し、シゾキトリウムの形質転換のためpAB0011と名付けた。
図24を参照のこと。ベクターpAB0011は、2008年11月18日にAmerican Type Culture Collection,Patent Depository(10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110-2209)に寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-9614を与えられた。
【0162】
実施例14
pAB0018発現ベクターの構築
2268bp長のアンプリコンを作出するため、シゾキトリウムsp.ATCC20888から抽出されたgDNAを鋳型として使用して、以下のプライマーを用いて、PCRを実施した:
【0163】
このアンプリコンをゲル精製し、以下のプライマーを用いたその後のPCRのための鋳型として使用した:
【0164】
得られた1060bpのアンプリコンを精製し、KpnIおよびBamHIにより消化し、予め精製されKpnIおよびBamHIにより消化されたpSchiz-CPT(+)-s1GFP(6h)にライゲートした。ライゲーション産物を大腸菌を形質転換するために使用し、得られたコロニーからプラスミドを精製し、制限消化によりスクリーニングした。予想される制限消化パターンを有し、EF-1ロングプロモーターを含有している一つのプラスミドクローン(#6.1)を、サンガー配列決定により確証し、シゾキトリウムの形質転換のためpAB0018と名付けた。
図25を参照のこと。ベクターpAB0018は、2008年11月18日にAmerican Type Culture Collection,Patent Depository(10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110-2209)に寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-9616を与えられた。
【0165】
実施例15
pAB0022発現ベクターの構築
シゾキトリウム培養物の無細胞上清を、SDS-PAGEにより分析し、これから、Sec1p(Sec1タンパク質)と名付けられた単一のタンパク質バンドを、均質になるまで精製するために選択した。このタンパク質のペプチド断片配列を質量分析技術を使用して同定し、BLASTアルゴリズム(tBLASTn、ギャップなしのアラインメント、低複雑度フィルタリングオフ、期待値=10000、行列=PAM30)(ftp://ncbi.nlm.nih.gov/blast)を使用して、シゾキトリウム全ゲノム配列の概念的翻訳に相関させた。ペプチド配列全てをコードする一つのオープンリーディングフレームを同定し、Sec1g(Sec1遺伝子)と名付けた。開始ATGの上流の推定プロモーター配列も同定し合成した(Blue Heron Biotechnologies)。合成Sec1gプロモーターを含有しているベクターを、以下のプライマーを用いたPCRのために鋳型として使用した:
【0166】
得られた1438bpのアンプリコンを精製し、KpnIおよびBamHIにより消化し、予め精製されKpnIおよびBamHIにより消化されたpSchiz-CPT(+)-s1GFP(6h)にライゲートした。ライゲーション産物を大腸菌を形質転換するために使用し、得られたコロニーからプラスミドを精製し制限消化によりスクリーニングした。予想される制限消化パターンを有し、Sec1プロモーターを含有している一つのプラスミドクローン(#8.1)を、サンガー配列決定により確証し、シゾキトリウムの形質転換のためpAB0022と名付けた。
図26を参照のこと。ベクターpAB0022は、2008年11月18日にAmerican Type Culture Collection,Patent Depository(10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110-2209)に寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-9613を与えられた。
【0167】
実施例16
異種遺伝子の転写
伸長因子1(EF1)および60Sリボソーム単位をコードする遺伝子のためのプロモーターを、シゾキトリウムにおける異種遺伝子の転写のためのプロモーターとして選択した。シゾキトリウムのゲノム配列を検索し、両遺伝子について発表されている配列と相同性を示す遺伝子を同定した。各プロモーターについて二つのバージョン(一つはショート、一つはロング)を、PCRを介してクローニングした。
【0168】
SEC1遺伝子の発現を駆動するプロモーターも、シゾキトリウムにおける異種遺伝子の転写のためのプロモーターとして選択した。SEC1遺伝子はシゾキトリウム培養物で今までのところ同定された唯一のネイティブ分泌型グリコシル化タンパク質をコードするため、このプロモーターは、分泌型グリコシル化タンパク質の産生のために最も適している増殖期へと異種タンパク質の発現を合わせることができた。
【0169】
S1eGFP構築物を含有しているベクターcpt(+)(即ち、OrfCプロモーターにより発現が駆動される、N末端にSEC1分泌シグナルを含むeGFP遺伝子−ベクターCL0001)を、OrfCプロモーターを切り出し、この要素を以下の配列のうちの一つに交換するために修飾した:
EF1プロモーター(ショートバージョン)=ベクターAB0015由来のEF1-S
EF1プロモーター(ロングバージョン)=ベクターAB0018由来のEF1-L
60Sプロモーター(ショートバージョン)=ベクターAB0010由来の60S-S
60Sプロモーター(ロングバージョン)=ベクターAB0011由来の60S-L
SEC1プロモーター=ベクターAB0022由来のSec1
【0170】
シゾキトリウムsp.20888を、以前に記載されたような微粒子銃を介して五つのベクターの各々により形質転換した。各形質転換について10個の生存可能細胞株を、分析のため、ランダムに選択した。CL0001による形質転換を、五つのベクターの各々について対照として実施した。CL0001による形質転換については、5個の生存可能細胞株を、分析のため、ランダムに選択した。
【0171】
形質転換体細胞株を、200rpmで連続的に振とうしながら29.5℃で72h、50ml M2Bを含有している250ml振とうフラスコで培養した。バイオマスを、10分間の5000×gでの遠心分離により除去し、無細胞上清をCentriprepコンセントレーター(MWCO 10000)を使用して、およそ1mlへと濃縮した。無細胞上清試料のタンパク質濃度を、Bradfordの方法を使用して測定した。
【0172】
無細胞上清のアリコートを、還元条件下でSDSアクリルアミドゲル(XT Criterion)で分離し、分離されたタンパク質バンドをPVDF膜に転写した。eGFPをAP標識抗eGFP抗体を使用して検出し、NCIP/NBT試薬を使用して可視化した。
【0173】
eGFPを発現し分泌する細胞株を決定するため、最大量の濃縮上清(7μl)を各レーンで分離した(表1)。eGFP発現のレベルは、プロモーター間で変動し、個々のプロモーターについても細胞株間で変動したが、(比較された6つのプロモーターについて分析された55の細胞株のうち)33の細胞株が、eGFPを発現することが示された(示されないデータ)。
【0174】
(表1)検出可能な量の分泌型eGFPを発現する各形質転換からの細胞株の数
【0175】
全ての細胞株が分泌型eGFPを発現したのではなかったが、少なくとも、細胞株のおよそ半分は、検出可能なレベルのeGFPを産生し、各プロモーターはeGFPの発現を指図することができた。
【0176】
eGFPを発現し分泌することが見出された細胞株を、相対的なプロモーター強度を比較するため、さらに分析した。eGFPを発現することが決定された各培養物の無細胞上清からのタンパク質を、SDSアクリルアミドゲルに負荷し、各レーン1μgにノーマライズした。タンパク質を電気泳動により分離し、分離されたタンパク質をPVDF膜に転写し、上記のように、AP標識抗eGFP抗体を使用して、eGFPについて探索した。
図27を参照のこと。eGFPについての一次スクリーニングにおいて負荷された上清タンパク質の量は、
図27を生成した実験において使用された量のおよそ10倍であった。従って、実験のために負荷されたタンパク質レベルにおいては、いくつかの試料について検出レベル未満であったため、異種eGFPタンパク質は、
図27の全てのレーンにおいて明白ではない。1μgタンパク質/レーンの負荷で、OrfCプロモーターからの分泌型eGFPの発現は、検出可能な範囲未満であった。しかしながら、その他のプロモーターの全てにより駆動されたeGFPの発現/分泌は、生成された細胞株のうちの少なくともいくつかにおいて検出可能であった。これは、選択されたプロモーターEF1、60S、およびSEC1が、全て、OrfCプロモーターと比較して「強力な」プロモーターであったことを証明した。特に、EF1-L形質転換体からのある種の細胞株における分泌型eGFPの発現は、その他のプロモーター構築物のいずれよりも明白に大きく、このことから、このプロモーターが試験されたプロモーターの中で最も強力であることが示された。
【0177】
EF1-Lプロモーターの強度の確認は、蛍光顕微鏡検の下で、典型的なOrfC形質転換体CL0001-4と比較して、EF1-L形質転換体細胞株AB0018-9およびAB0018-10における発現を観察することにより、入手された。
図28を参照のこと。CL0001-4細胞株は、中程度の蛍光(Fluo:ISO 200 1.1 sec panes)を示したが、AB0018-9細胞株およびAB0018-10細胞株は、細胞内eGFPの実質的な蓄積を示す明白な蛍光を示した。
【0178】
実施例17
シゾキトリウムにおけるグリコシル化プロファイル
ネイティブシゾキトリウムタンパク質のN-グリコシル化を決定した。シゾキトリウムは、哺乳動物および昆虫のグリコシル化経路と共通の工程を共有することが見出され、酵母に特徴的な過マンノシル化経路を利用することは観察されなかった。
図29および
図30は、シゾキトリウム分泌型タンパク質の質量分析により検出されたグリカン構造を示す。特に、特徴的なピークは、m/z1580のGlcNAc
2Man
5、m/z1785のGlcNAc
2Man
6、およびm/z1991のGlcNAc
2Man
7について観察された。
【0179】
実施例18
電気穿孔によるシゾキトリウムの形質転換
シゾキトリウムsp.ATCC20888細胞を、29℃で48h、200rpmのシェーカー上で、M50-20培地(米国公開第2008/0022422号を参照のこと)で増殖させた。細胞を新鮮な培地で100倍希釈し、一夜増殖させた。細胞を遠心分離し、2 OD
600単位の最終濃度で、1Mマンニトールおよび10mM CaCl
2(pH5.5)に再懸濁させた。5mLの細胞を、0.25mg/mLプロテアーゼXIV(Sigma Chemical)と混合し、4h、シェーカー上でインキュベートした。細胞を、10%氷冷グリセロールにより2回洗浄し、500μLの冷10%グリセロールに再懸濁させた。90μLを、予冷された0.2cmギャップのエレクトロポレーションキュベット(Biorad 165-2086)に分注した。10μlのDNA(1〜5μg)をキュベットに添加し、穏和に混合し、氷上で維持した。200オーム(抵抗)、25μF、および0V〜500V(0.1cmキュベットギャップ距離の場合)または500V(0.2cmのキュベットギャップ距離の場合)の範囲の電位で、組換えベクターを細胞に電気穿孔した。0.5mLの培地をキュベットに直ちに添加した。次いで、細胞を4.5mLのM50-20培地に移し、シェーカー上で100rpmで2〜3hインキュベートした。細胞を遠心分離し、0.5mLの培地に再懸濁させ、(必要であれば)適切な選択を有する2〜5枚のM2Bプレートへ播種し、29℃でインキュベートした。
【0180】
表2は、異なる酵素の組み合わせによる前処理の後に生成されたシゾキトリウムsp.ATCC20888形質転換体の数を示す(300Vおよび0.1cmキュベットギャップ距離のパラメータ)。
【0181】
表3は、異なる酵素の組み合わせおよび電位による前処理の後に生成されたシゾキトリウムsp.ATCC20888形質転換体の数を示す(0.1cmキュベットギャップ距離)。
【0182】
表4は、異なる電気穿孔キュベットギャップ距離を使用して生成されたシゾキトリウムsp.ATCC20888形質転換体の数を示す。細胞は0.25mg/mLプロテアーゼXIVにより前処理された。
【0183】
表5は、異なる電気穿孔電位を使用して生成されたシゾキトリウムsp.ATCC20888形質転換体の数を示す。細胞は、0.1mg/mLカタツムリアセトン粉末+0.25mg/mLプロテアーゼXIVにより前処理された(0.1cmキュベットギャップ距離)。
【0184】
(表2)異なる酵素の組み合わせによる前処理の後に生成されたシゾキトリウム形質転換体
【0185】
(表3)異なる酵素の組み合わせおよび電位による前処理の後に生成されたシゾキトリウム形質転換体
【0186】
(表4)(0.25mg/mLプロテアーゼXIVにより前処理された)異なる電気穿孔キュベットギャップ距離を使用して生成されたシゾキトリウム形質転換体
【0187】
(表5)(0.1mg/mLカタツムリアセトン粉末+0.25mg/mLプロテアーゼXIVにより前処理された)異なる電気穿孔電位を使用して生成されたシゾキトリウム形質転換体
【0188】
実施例19
シゾキトリウムにおけるインベルターゼの発現
ベクターpAB0018をBamHIおよびNdeIにより消化し、838bp長および9879bp長の2個の断片を得た。9879bpの断片を寒天ゲルにおける標準的な電気泳動技術により分画し、市販のDNA精製キットを使用して精製し、シゾキトリウムのSec1タンパク質のネイティブ分泌シグナルをコードするポリヌクレオチド配列、それに続く、シゾキトリウムにおける発現のためにコドン最適化された、サッカロミセス・セレビシエの成熟インベルターゼタンパク質(SUC2)をコードする合成配列を含む配列(SEQ ID NO:57)にライゲートした(
図42を参照のこと)。Sec1シグナルペプチドおよびサッカロミセス・セレビシエインベルターゼタンパク質をコードする配列を含有している融合配列を、シゾキトリウムベクターpSchizに挿入し、続いて、BamHIおよびNdeIにより消化して、SEQ ID NO:57を得た。
【0189】
ライゲーション産物を、製造業者のプロトコルを使用して、市販されているコンピテントDH5α E.coliセル(Invitrogen)の株を形質転換するために使用した。得られたクローンのいくつかを繁殖させ、それらのプラスミドを抽出し、精製した。次いで、ライゲーションが、期待されたプラスミドベクターを生成したことを確認するため、これらのプラスミドを制限消化またはPCRによりスクリーニングした。SEQ ID NO:57とのライゲーションに起因する一つのそのようなプラスミドベクターを、サンガー配列決定により確証し、pCL0076(SEQ ID NO:58)と名付けた。
図31を参照のこと。
【0190】
シゾキトリウムsp.ATCC20888およびB76-32と名付けられた遺伝学的に修飾されたシゾキトリウム誘導体の培養物を、10g/Lグルコース、0.8g/L (NH
4)
2SO
4、5g/L Na
2SO
4、2g/L MgSO
4・7H
2O、0.5g/L KH
2PO
4、0.5g/L KCl、0.1g/L CaCl
2・2H
2O、0.1M MES(pH6.0)、0.1%PB26金属、および0.1%PB26ビタミン(v/v)からなるM2B培地で増殖させた。PB26ビタミンは、50mg/mLビタミンB12、100μg/mLチアミン、および100μg/mLパントテン酸Caからなっていた。PB26金属は、pH4.5に調整されており、3g/L FeSO
4・7H
2O、1g/L MnCl
2・4H
2O、800mg/mL ZnSO
4・7H
2O、20mg/mL CoCl
2・6H
2O、10mg/mL Na
2MoO
4・2H
2O、600mg/mL CuSO
4・5H
2O、および800mg/mL NiSO
4・6H
2Oからなっていた。PB26ストック溶液は、別々に濾過滅菌され、加圧減菌の後にブロスに添加された。グルコース、KH
2PO
4、およびCaCl
2・2H
2Oは、塩沈殿および炭水化物カラメル化を防止するため、混合する前に、各々、ブロス成分の残りとは別に加圧減菌された。全ての培地成分がSigma Chemical(St.Louis,MO)から購入された。株B76-32は、米国特許第7,211,418号ならびに米国特許公開第2008/0022422号および第2008/0026434号に従って操作されたシゾキトリウムsp.ATCC20888の誘導体である。
【0191】
シゾキトリウムsp.ATCC20888およびB76-32の培養物を、対数期まで増殖させ、下記のような酵素前処理を含む電気穿孔を使用して、ベクターpCL0076により形質転換した。
【0192】
酵素前処理を含む電気穿孔−細胞を30℃で2日間200rpmのシェーカー上で50mLのM50-20培地(米国公開第2008/0022422号を参照のこと)で増殖させた。細胞をM2B培地(以下のパラグラフを参照のこと)で100倍希釈し、対数増殖期中期(1.5〜2.5のOD
600)に到達するよう、一夜(16〜24h)培養した。細胞を約3000×gで5分間50mLコニカルチューブで遠心分離した。上清を除去し、細胞を2 OD
600単位の最終濃度に達するよう、適当な容量の1Mマンニトール(pH5.5)に再懸濁させた。5mLの細胞を25mL振とうフラスコへ分注し、10mM CaCl
2(1.0Mストック、濾過滅菌)および0.25mg/mLプロテアーゼXIV(10mg/mLストック、濾過滅菌;Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)を補足した。フラスコを30℃および約100rpmで4hシェーカー上でインキュベートした。プロトプラスト化の程度を決定するため、細胞を顕微鏡下でモニタリングし、単細胞を望んだ。細胞を、丸底チューブ(即ち、14mL Falcon(商標)チューブ、BD Biosciences,San Jose,CA)で、約2500×gで5分間遠心分離した。上清を除去し、細胞を5mLの氷冷10%グリセロールにより穏和に再懸濁させた。細胞を、丸底チューブで約2500×gで5分間再遠心分離した。上清を除去し、細胞を広口径ピペットチップを使用して、500μLの氷冷10%グリセロールにより穏和に再懸濁させた。90μLの細胞を、予冷されたエレクトロポレーションキュベット(Gene Pulser(登録商標)キュベット−0.1cmギャップまたは0.2cmギャップ、Bio-Rad,Hercules,CA)へ分注した。1μg〜5μgのDNA(10μL以下の容量)をキュベットに添加し、ピペットチップにより穏和に混合し、5分間氷上に置いた。細胞を、200オーム(抵抗)、25μF(キャパシタンス)、および250V(0.1cmギャップの場合)もしくは500V(0.2cmギャップ)のいずれかで電気穿孔した。0.5mLのM50-20培地をキュベットに直ちに添加した。次いで、細胞を25mL振とうフラスコ内の4.5mLのM50-20培地に移し、シェーカー上で30℃および約100rpmで2〜3hインキュベートした。細胞を丸底チューブで約2500×gで5分間遠心分離した。上清を除去し、細胞ペレットを0.5mLのM50-20培地に再懸濁させた。細胞を、(必要であれば)適切な選択を有する適切な数(2〜5枚)のM2Bプレートに播種し、30℃でインキュベートした。
【0193】
形質転換体を、M2B+SMM培地での増殖のため選択するか、またはMSFM+スクロースへ播種することによるスクロースでの増殖のため直接選択した。MSFM+スクロース選択については、1〜2週後、コロニーを、新鮮なスクロース含有培地へいくつかのパスにより再播種した。インベルターゼの発現は、スクロースを唯一の炭素源として増殖したヤブレツボカビ類コロニーのための選択可能マーカーとして使用され得ることが決定された。
【0194】
以下の実験のため、一次形質転換体を、27℃で2〜6日間のインキュベーションの後、20g/L寒天(VWR,West Chester,PA)および10μg/mL SMM(Chem Service,Westchester,PA)を含有している固形M2B培地での増殖のため選択した。全ての一次形質転換体を、SMMを含む新鮮なM2Bプレートに手動で移した。1週後、コロニーを、SMMを含まないMSFMおよび5g/Lスクロースに移した。1週後、最大コロニーを、新鮮なMSFM/スクロース培地プレートに移した。スクロースで増殖するシゾキトリウムsp.ATCC20888形質転換体のうちの10個を、さらなる特徴決定のため選択し、それぞれ、1-1、1-3、1-24、3-1、3-2、3-5、3-21、4-1、4-24、および4-31と名付けた。スクロースで増殖するB76-32形質転換体のうちの9個を、さらなる特徴決定のため選択し、B76-32#2、#12、#19、326、#30、#39、#42、#56、および#61と名付けた。
【0195】
スクロースで増殖するコロニー(1-1、1-3、1-24、3-1、3-2、3-5、3-21、4-1、4-24、4-31)を、接種ループを使用してプレートから除去し、5mLのスクロース培地を含有している培養管へ移し、シェーカー上で29℃で4日間増殖させた。2mLのこの培養物を、250mlフラスコ内の50mLの培地(MSFMまたはSSFM)へ接種するために使用し、200rpmのシェーカー上で29℃で増殖させた。
【0196】
親株シゾキトリウムsp.ATCC20888の対照フラスコを、グルコース含有培地を使用する以外は同様に増殖させた。細胞を7日後に採集した。細胞を遠心分離し、50%イソプロパノール:蒸留水混合物により洗浄した。ペレット化された細胞を凍結乾燥させ、計量し、脂肪酸メチルエステル(FAME)分析を実施した。シゾキトリウムsp.ATCC20888またはB76-32のCL0076形質転換体の増殖および脂肪含有量を、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国公開第2008/0022422号に以前に記載されたような重量測定および誘導体化された油のガスクロマトグラフィによりアッセイした。結果は表6〜9に示される。形質転換体および親株の振とうフラスコ培養物からのペレットの乾燥重量および脂肪含有量が、
図32〜37に示される。
【0197】
SSFM培地:50g/Lグルコースまたはスクロース、13.6g/L Na
2SO
4、0.7g/L K
2SO
4、0.36g/L KCl、2.3g/L MgSO
4・7H
2O、0.1M MES(pH6.0)、1.2g/L (NH
4)
2SO
4、0.13g/L グルタミン酸ナトリウム、0.056g/L KH
2PO
4、および0.2g/L CaCl
2・2H
2O。ビタミンは、0.16g/LビタミンB12、9.7g/Lチアミン、および3.3g/Lパントテン酸Caからなるストックから、1mL/Lで添加された。微量金属は、pH2.5に調整された、1g/Lクエン酸、5.2g/L FeSO
4・7H
2O、1.5g/L MnCl
2・4H
2O、1.5g/L ZnSO
4・7H
2O、0.02g/L CoCl
2・6H
2O、0.02g/L Na
2MoO
4・2H
2O、1.0g/L CuSO
4・5H
2O、および1.0g/L NiSO
4・6H
2Oからなるストックから、2mL/Lで添加された。
【0198】
修飾SFM(MSFM)培地:10g/Lグルコースまたはスクロース、25.0g/L NaCl、1.0g/L KCl、0.2g/L (NH
4)
2SO
4、5g/L、5.0g/L MgSO
4・7H
2O、0.1g/L KH
2PO
4、0.3g/L CaCl
2・2H
2O、0.1M HEPES(pH7.0)、0.1%PB26金属、および0.1%PB26ビタミン(v/v)。ビタミンは、0.16g/L ビタミンB12、9.7g/Lチアミン、および3.3g/Lパントテン酸Caからなるストックから、2mL/Lで添加された。金属は、pH2.5に調整された、1g/Lクエン酸、5.2g/L FeSO
4・7H
2O、1.5g/L MnCl
2・4H
2O、1.5g/L ZnSO
4・7H
2O、0.02g/L CoCl
2・6H
2O、0.02g/L Na
2MoO
4・2H
2O、1.0g/L CuSO
4・5H
2O、および1.0g/L NiSO
4・6H
2Oからなるストックから、2mL/Lで添加された。
【0199】
表6は、グルコースを含むMSFM、フルクトースを含むMSFM、スクロースを含むMSFM、または炭素源が添加されていないMSFMで増殖したシゾキトリウムsp.ATCC20888の増殖および脂肪レベルを示す。
【0200】
表7は、グルコースを含むMSFM培地で増殖したシゾキトリウムsp.ATCC20888(対照)およびスクロースを含むMSFM培地で増殖したシゾキトリウムsp.ATCC20888形質転換細胞株についての乾燥重量および脂肪酸(%)を示す。
【0201】
表8は、グルコースを含むSSFM培地で増殖したシゾキトリウムsp.ATCC20888(対照)およびスクロースを含むSSFM培地で増殖したシゾキトリウムsp.ATCC20888形質転換細胞株についての乾燥重量および脂肪酸(%)を示す。
【0202】
表9は、グルコースを含むSSFM培地で増殖したシゾキトリウムB76-32(対照)およびスクロースを含むSSFM培地で増殖したシゾキトリウムB76-32形質転換細胞株についての乾燥重量および脂肪酸(%)を示す。
【0203】
(表6)グルコースを含むMSFM、フルクトースを含むMSFM、スクロースを含むMSFM、または炭素源が添加されていないMSFMで増殖したシゾキトリウムsp.ATCC20888の増殖および脂肪レベル
DW=乾燥重量
FA=脂肪酸
【0204】
(表7)スクロースを含むMSFM培地で増殖したシゾキトリウムsp.ATCC20888形質転換細胞株
DW=乾燥重量
FA=脂肪酸
【0205】
(表8)スクロースを含むSSFM培地で増殖したシゾキトリウムsp.ATCC20888形質転換細胞株
DW=乾燥重量
FA=脂肪酸
【0206】
(表9)スクロースを含むSSFM培地で増殖したB76-32形質転換細胞株
DW=乾燥重量
FA=脂肪酸
【0207】
イムノブロッティング−3日間SSFMで増殖した50mL振とうフラスコ培養物の無細胞上清(米国公開第2008/0022422号を参照のこと)を、培養物を5000×gで遠心分離した後、収集した。培養上清を、SDS-PAGEのために直接使用するか、または10kDaより重い全ての成分の濃縮を許容する透過膜を装備した市販されているコンセントレーターを使用して、50〜100倍濃縮した。全タンパク質濃度をBradfordアッセイ(Biorad)により測定した。次いで、標準的なイムノブロッティング法(Sambrook et al.)に従い、イムノブロット分析により、インベルターゼの発現を確証した。簡単に説明すると、タンパク質(0.625μg〜5μg)を、bis-trisゲル(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)上でのSDS-PAGEにより分離した。次いで、タンパク質をクーマシーブルー(SimplyBlue Safe Stain,Invitrogen)により染色するか、またはポリフッ化ビニリデン膜に転写し、サッカロミセス・セレビシエインベルターゼ(Sigma)の純粋調製物を注射されたウサギに由来するインベルターゼ抗血清(Open Biosystems)を用いて、インベルターゼタンパク質の存在について探索した。その後、膜を、アルカリホスファターゼとカップリングしたマウス抗ウサギ二次抗体(Promega)と共にインキュベートした。次いで、膜を、製造業者の説明(KPL,Gaithersburg,MD)に従って、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-リン酸/ニトロブルーテトラゾリウム溶液(BCIP/NBT)により処理した。一例が
図38に提示される。抗インベルターゼイムノブロットおよび対応するクーマシーブルー染色ゲルが、それぞれ、パネルAおよびBに提示される。クローン1〜3の培養上清に見られた4本の主要なバンドのうち、1本のみが抗インベルターゼ抗血清と反応することが示された。タンパク質の同一性をペプチド配列分析により確認した。
【0208】
機能アッセイ−酵素EC 3.2.1.26は、スクロースのフルクトースおよびグルコースへの加水分解を触媒するインベルターゼ型スクラーゼである。スクラーゼ活性を、スクロースからのフルクトースおよびグルコースの遊離の速度により測定した。発酵ブロス上清にスクロースを添加することにより粗くアッセイを実施し、グルコース/フルクトース含有量をHPLCにより測定した。
【0209】
シゾキトリウム株B76-32#3を、29℃で、50mL振とうフラスコにおいて、ODが約4に達するまで、(スクロースを含む)MSFMで増殖させた。細胞を、4500×gで15分間スピンし、上清中のインベルターゼ活性を測定した。変動する容量の発酵ブロスに0.1Mスクロースを添加し、最終容量を1mLに調整することにより、インベルターゼをアッセイした。反応物を3分間55℃でインキュベートした。10分間100℃で反応を終結させ、次いで、HPLCによるグルコース、フルクトース、およびスクロースの決定からなる分析まで凍結させた。HPLCは、Liu et al.,Food Sci.28:293-296(2007)に記載された方法の変法を使用して実施された。簡単に説明すると、単糖および二糖をLuna NH
2カラムを用いたHPLCを使用して分離し、RID(屈折率検出器)を使用して検出した。保持時間を標準物のものと比較することにより、同定を実施した。定量化は外部標準較正によった。スクロース濃度の関数としての反応速度が、
図39Aに示される。標準的なラインウィーバーバークプロットから、Km(33.4mM)およびVmax(6.8mMグルコース/分)を計算した。
図39Bを参照のこと。
【0210】
グリコシル化分析−上清タンパク質を、4〜12%bis-trisゲル(Invitrogen)上でのSDS-PAGEにより分離した。次いで、タンパク質をクーマシーブルー(SimplyBlue Safe Stain,Invitrogen)により染色した。染色された関心対象のタンパク質をゲルから切り出し、より小さな片(およそ1mm
3)へと切断し、色が透明になるまで、40mM重炭酸アンモニウム(AmBic)および100%アセトニトリルにより交互に脱染した。脱染されたゲルを、1h、55℃で、10mM DTTを含む40mM AmBicで再膨潤させた。DTT溶液を、55mMヨードアセトアミド(IAM)と交換し、45分間暗所でインキュベートした。インキュベーションの後、40mM AmBicおよび100%アセトニトリルにより交互に2回洗浄した。脱水したゲルを、まず、45分間、氷上で、トリプシン溶液(トリプシンを含む40mM AmBic)で再膨潤させ、タンパク質消化を37℃で一夜実施した。上清をもう一つのチューブへ移した。ペプチドおよび糖ペプチドを、20%アセトニトリルを含む5%ギ酸、50%アセトニトリルを含む5%ギ酸、次いで80%アセトニトリルを含む5%ギ酸により連続的にゲルから抽出した。試料溶液を、乾燥させ、1本のチューブへ合わせた。抽出されたトリプシン消化物を、C18 sep-pakカートリッジに通し、(塩およびSDSのような)汚染物質を除去するため、5%酢酸により洗浄した。ペプチドおよび糖ペプチドを、20%イソプロパノールを含む5%酢酸、40%イソプロパノールを含む5%酢酸、および100%イソプロパノールにより連続的に溶出させ、スピードバキューム(speed vacuum)コンセントレーターで乾燥させた。乾燥した試料を合わせ、次いで、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)により再生し、トリプシンを不活化するため、5分間100℃で加熱した。トリプシン消化物を、N-グリカンを放出するため、37℃で一夜、PNGase Fと共にインキュベートした。消化の後、試料をC18 sep-pakカートリッジに通し、炭水化物画分を5%酢酸により溶出させ、凍結乾燥により乾燥させた。放出されたN結合型オリゴ糖を、Anumula and Taylor,Anal Biochem.203:101-108(1992)の方法に基づき過メチル化し、質量分析によりプロファイリングした。質量分析は、Complex Carbohydrates Research Center(Aoki K et al.,J.Biol.Chem.282:9127-42(2007))で開発された方法に従って実施された。質量分析はNSI-LTQ/MS
nを使用することにより決定された。簡単に説明すると、過メチル化グリカンを、1mM NaOHを含む50%メタノールに溶解させ、0.4μL/分の一定の流速で装置(LTQ,Thermo Finnigan)へ直接注入した。MS分析を陽イオンモードで実施した。全イオンマッピング自動MS/MS分析(35衝突エネルギー)のため、500〜2000のm/z範囲を、前のウィンドウに2質量単位だけオーバーラップする連続的な2.8質量単位ウィンドウでスキャンした。
【0211】
グリカンを示すフラグメントイオンの存在を調査するため、全イオンマッピングを実施した。m/z500からm/z2000までの全てのMS/MSデータを採取し、生データを手動で分析した。NSI-全イオンマッピングにより入手された種のクロマトグラムおよび表は、
図40Aおよび
図40Bに示される。このクロマトグラムをスキャンフィルターにより処理した;m/z139のニュートラルロスは高マンノース型グリカンの特徴である。全イオンマッピングは、この試料が、長いマンノース鎖を有する一連の高マンノース型グリカンを含有していることを明らかにした。これらの結果は、実施例17と同一の方法論により決定されたような、ネイティブシゾキトリウム分泌型タンパク質上に検出されたN-グリカン構造に類似している(
図30を参照のこと)。
【0212】
実施例20
シゾキトリウムにおけるクロコウジカビインベルターゼの発現
ベクターpAB0018(ATCCアクセッション番号PTA-9616)を、HindIIIにより消化し、リョクトウヌクレアーゼにより処理し、精製し、次いで、KpnIによりさらに消化して、様々なサイズの4個の断片を生成した。2552bpの断片を、寒天ゲルにおける標準的な電気泳動技術により単離し、市販のDNA精製キットを使用して精製した。次いで、PmeIおよびKpnによるpAB0018の第2の消化を実施した。この消化物から6732bpの断片を単離し、精製し、2552bpの断片にライゲートした。次いで、ライゲーション産物を、製造業者のプロトコルを使用して、市販されているコンピテントDH5-α E.coliセル(Invitrogen)の株を形質転換するために使用した。ライゲーションが、期待されたプラスミド構造を生成したことを確認するため、アンピシリン耐性クローンからのプラスミドを繁殖させ、精製し、次いで、制限消化またはPCRによりスクリーニングした。一つの確証されたプラスミドをpCL0120と名付けた。
図43を参照のこと。
【0213】
真菌クロコウジカビ由来の成熟型Suc1インベルターゼタンパク質(GenBankアクセッション番号S33920)を、
図42のシゾキトリウムコドン使用頻度表を使用して、シゾキトリウムにおける発現のためにコドン最適化した(Blue Heron Biotechnology,Bothell,WAにより実施されたコドン最適化)。コドン最適化された配列を合成し、得られたポリヌクレオチド配列を、内在性シグナルペプチドの代わりにN末端リーダーとしてシゾキトリウムSec1シグナルペプチド(「Sec1 ss」)をコードするポリヌクレオチド配列と融合させた。得られた「s1Suc1」核酸配列のコーディング領域(SEQ ID NO:75)は、
図44に示される。このコドン最適化されたs1Suc1ポリヌクレオチドを、標準的な技術に従い、挿入およびライゲーションのため、5'制限部位BamHIおよび3'制限部位NdeIを使用して、ベクターpCL0120へクローニングした。得られたベクターpCL0137のプラスミドマップは、
図45に示される。野生型株シゾキトリウムsp.ATCC20888を、このベクターにより形質転換し、得られたクローンを、SMMを含有している固形SSFM培地で選択した。次いで、SMM耐性クローンを、増殖についてアッセイするため、唯一の炭素源としてスクロースを含有しているSSFM固形培地に再播種した。形質転換実験に依り、SMM耐性一次形質転換体の50%〜90%が、スクロース培地上で増殖可能であった。
【0214】
本明細書に記載された様々な局面、態様、およびオプションの全てを、全ての任意のバリエーションで組み合わせることが可能である。
【0215】
本明細書中に言及された全ての刊行物、特許、および特許出願が、あたかも、個々の刊行物、特許、または特許出願が、各々、参照により組み入れられると具体的に個々に示されたかのごとく、参照により本明細書に組み入れられる。