特許第6012706号(P6012706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6012706生体適合性ポリカプロラクトンフマレート剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012706
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】生体適合性ポリカプロラクトンフマレート剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/08 20060101AFI20161011BHJP
   C08G 63/78 20060101ALI20161011BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20161011BHJP
   A61L 27/00 20060101ALI20161011BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20161011BHJP
【FI】
   C08G63/08ZBP
   C08G63/78
   C08L67/04
   A61L27/00 Y
   !C08L101/16
【請求項の数】48
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2014-503943(P2014-503943)
(86)(22)【出願日】2012年4月4日
(65)【公表番号】特表2014-511924(P2014-511924A)
(43)【公表日】2014年5月19日
(86)【国際出願番号】US2012032131
(87)【国際公開番号】WO2012138732
(87)【国際公開日】20121011
【審査請求日】2015年3月9日
(31)【優先権主張番号】61/473,347
(32)【優先日】2011年4月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510264187
【氏名又は名称】メイヨ フォンデーシヨン フォー メディカル エジュケーション アンド リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(72)【発明者】
【氏名】ルンゲ、マイケル、ブレット
(72)【発明者】
【氏名】ヤジェムスキ、マイケル、ジェイ
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−528909(JP,A)
【文献】 特表2008−519892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00−63/91
C08L 67/04
C08L 101/16
A61L 15/00−33/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
[化1]を有するポリマーであって、
【化1】
A1は[化2]であり、
【化2】
A2は[化3]であり
【化3】
Bは-O-X-O-であり、Xは、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、C1-C5アルキルエチレン、C1-C5アルキルトリメチレン、C1-C5アルキルテトラメチレン、および、C1-C5アルキルペンタメチレンからなる群から選択され、
Cは[化4]
【化4】
およびその幾何異性体であり、
nは、1〜50の整数である、ポリマー。
【請求項2】
前記nが、1〜20の整数である、請求項1に記載のポリマー
【請求項3】
前記nが、1〜10の整数である、請求項1に記載のポリマー。
【請求項4】
前記Xがメチルエチレンである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項5】
前記ポリマーが、5000〜15000g mol-1の数平均分子量を有している、請求項1に記載のポリマー。
【請求項6】
前記ポリマーが、1〜6の多分散性指数を有している、請求項1に記載のポリマー。
【請求項7】
請求項1に記載のポリマーと、自由ラジカル開始剤と、を含む、架橋可能な生分解性材料。
【請求項8】
前記材料が、架橋剤を含まない、請求項7に記載の材料。
【請求項9】
組織再生用足場であって、
請求項1に記載のポリマーを含む生分解性マトリックスを含む、足場。
【請求項10】
前記足場の加水分解時にジエチレングリコールが放出されない、請求項9に記載の足場。
【請求項11】
前記足場が、オートクレーブ滅菌プロセスを通じて幾何学的構造および寸法を維持する、請求項9に記載の足場。
【請求項12】
前記足場が、オートクレーブ滅菌プロセスの際に、機械的特性を一桁以内に維持する、請求項9に記載の足場。
【請求項13】
[化5]を有するポリマーであって、
【化5】
A1は[化6]であり、
【化6】
A2は[化7]であり
【化7】
A3は[化8]であり、
【化8】
Bは-O-X-O-であり、Xは、プロパネトリイル、ブタネトリイル、ペンタネトリイル、C1-C5アルキルプロパネトリイル、C1-C5アルキルブタネトリイル、および、C1-C5アルキルペンタネトリイルからなる群から選択され、
Cは[化9]
【化9】
およびその幾何異性体であり、
nは、1〜50の整数である、ポリマー(ただし、[化8]の左端が「化5」の[−O−]に結合する。)
【請求項14】
前記nが、1〜20の整数である、請求項13に記載のポリマー
【請求項15】
前記nが、1〜10の整数である、請求項13に記載のポリマー。
【請求項16】
前記Xが、プロパネトリイルである、請求項13に記載のポリマー。
【請求項17】
前記ポリマーが、5000〜15000g mol-1の数平均分子量を有している、請求項13に記載のポリマー。
【請求項18】
前記ポリマーが、1〜6の多分散性指数を有している、請求項13に記載のポリマー。
【請求項19】
請求項13に記載のポリマーと、自由ラジカル開始剤と、を含む、架橋可能な生分解性材料。
【請求項20】
前記材料が、架橋剤を含まない、請求項19に記載の材料。
【請求項21】
組織再生用足場であって、
請求項13に記載のポリマーを含む生分解性マトリックスを含む、足場。
【請求項22】
前記足場の加水分解時にジエチレングリコールが放出されない、請求項21に記載の足場。
【請求項23】
前記足場が、オートクレーブ滅菌プロセスを通じて幾何学的構造および寸法を維持する、請求項21に記載の足場。
【請求項24】
前記足場が、オートクレーブ滅菌プロセスの際に、機械的特性を一桁以内に維持する、請求項21に記載の足場。
【請求項25】
請求項1に記載のポリマーと、請求項13に記載のポリマーと、を配合したものを含む、組織再生用足場。
【請求項26】
請求項1に記載のポリマーが前記足場の20〜80重量%であり、請求項13に記載のポリマーが前記足場の20〜80重量%である、請求項25に記載の足場。
【請求項27】
請求項1に記載のポリマーが前記足場の40〜60重量%であり、請求項13に記載のポリマーが前記足場の40〜60重量%である、請求項25に記載の足場。
【請求項28】
請求項1に記載にポリマーにおけるXがメチルエチレンである、請求項25に記載の足場。
【請求項29】
請求項1に記載のポリマーが5000〜15000g mol-1の数平均分子量を有している、請求項25に記載の足場。
【請求項30】
請求項1に記載のポリマーが1〜6の多分散性指数を有している、請求項25に記載の足場。
【請求項31】
請求項13に記載のポリマーにおけるXがプロパネトリイルである、請求項25に記載の足場。
【請求項32】
請求項13に記載のポリマーが5000〜15000g mol-1の数平均分子量を有している、請求項25に記載の足場。
【請求項33】
請求項13に記載のポリマーが1〜6の多分散性指数を有している、請求項25に記載の足場。
【請求項34】
前記足場が、オートクレーブ滅菌プロセスを通じて幾何学的構造および寸法を維持する、請求項25に記載の足場。
【請求項35】
前記足場が、オートクレーブ滅菌プロセスの際に、機械的特性を一桁以内に維持する、請求項25に記載の足場。
【請求項36】
(a)カプロラクトンとアルカンポリオールとを反応させてポリカプロラクトン前駆体を製造するステップと、
(b)前記ポリカプロラクトン前駆体とフマル酸またはその塩を反応させるステップと、
を含むポリマーの製造方法
【請求項37】
前記ステップ(b)が、前記ポリカプロラクトン前駆体とフマリルクロライドとを反応させることを含む、請求項36に記載のポリマーの製造方法
【請求項38】
前記アルカンポリオールが、C2-C5アルカンポリオールからなる群から選択される、請求項36に記載のポリマーの製造方法
【請求項39】
前記アルカンポリオールが、任意の生体適合性C2-C5ポリオールからなる群から選択される、請求項36に記載のポリマーの製造方法
【請求項40】
前記アルカンポリオールが、C2-C5アルカンジオールからなる群から選択される、請求項36に記載のポリマーの製造方法
【請求項41】
前記アルカンポリオールが、1,2プロパンジオールである、請求項36に記載のポリマーの製造方法
【請求項42】
前記アルカンポリオールが、C2-C5アルカントリオールからなる群から選択される、請求項36に記載のポリマーの製造方法
【請求項43】
前記アルカンポリオールが、グリセロールである、請求項36に記載のポリマーの製造方法
【請求項44】
前記ポリカプロラクトン前駆体が、1000〜5000g mol-1の数平均分子量を有している、請求項36に記載のポリマーの製造方法
【請求項45】
前記ポリカプロラクトン前駆体が、1000〜3000g mol-1の数平均分子量を有している、請求項36に記載のポリマーの製造方法
【請求項46】
前記ポリカプロラクトン前駆体が、1500〜2500g mol-1の数平均分子量を有している、請求項36に記載のポリマーの製造方法
【請求項47】
前記ポリマーが、前記ポリカプロラクトン前駆体を分離する、2つの個別の反応を含む製造方法によって製造される、請求項36に記載のポリマーの製造方法
【請求項48】
前記ポリカプロラクトン前駆体および前記ポリマーの両方が、前記ポリカプロラクトン前駆体を分離することなく、一つの反応容器において製造される、請求項36に記載のポリマーの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2011年4月8日付で提出された米国仮出願第61/473,347号に基づく優先権を主張する。その米国仮出願の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[連邦政府支援研究に関する陳述]
本発明は、国立衛生研究所によって授与されたNIH / NIAMS AR056950および(MRMC)W81XWH -08-2-0034下で政府の支援を受けてなされた。政府は本発明について一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、組織工学のための生体適合性の足場用材料として有用なポリカプロラクトンフマレートポリマーの合成に関する。
【背景技術】
【0004】
ポリカプロラクトンフマレート(PCLF)は分節神経欠損の修復、および骨代替の両方を含む組織工学用途のための有望な材料であることが証明されたポリカプロラクトン(PCL)の架橋性誘導体である。PCLFは、以前は分子量530、1200、または2000 g mol-1のポリカプロラクトンエーテルジオールとフマリルクロライドとの縮合重合により合成された。以前の研究から、Mn2000 g mol-1のPCLエーテル字オールから合成されたPCLFは、Mn7,000〜18,000 g mol-1のPCLFを生成し、PCL530または1250から合成されたその他のPCLF製剤よりも最も好ましい材料特性を有することが知られている。したがって、PCL2000から合成されたPCLFは、分節神経欠損を修復するための神経導管(nerve conduit)の製造に用いられてきた。これらPCLF神経導管は、1センチメートルのラット坐骨神経欠損モデル全体の堅牢な神経再生をサポートすることが知られ、将来の臨床試験が期待されている。
【0005】
臨床試験の準備として、ポリカプロラクトンフマ足場(scaffold)から放出された潜在的な分解生成物を分析した。この分解研究から、ジエチレングリコール(また、2 - ヒドロキシエチルエーテルとしても知られる)(DEG)が、加水分解時に、以前に研究したポリカプロラクトンフマレートからの分解生成物の一つとして放出され得ることが分かった。ジエチレングリコールの放出は、それが毒素であると報告されていて、ポリカプロラクトンエーテルジオールから形成されたポリカプロラクトンフマレート組成物の約5%を構成する(その量は、米国食品薬庁の上限を超える値である)ことから、問題である。
したがって、分解中全くジエチレングリコールまたは他の望ましくない副産物を放出しない生体適合性ポリカプロラクトンフマレート製剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
ポリカプロラクトンフマレート足場の分解におけるジエチレングリコールの供給源がポリカプロラクトンフマレートの製造に使用されたポリ化プロラクトンエーテルジオールであることが分かった。この分解副産物の放出を回避するために、線形ポリカプロラクトンジオールまたは分岐ポリカプロラクトントリオールを使用して新しいポリカプロラクトンフマレート組成物を合成した。ポリカプロラクトンジオールの一例は、1,2プロパンジオール(PPD)から合成された。ポリカプロラクトントリオールの一例は、グリセロール(GLY)から合成された。これらの生体適合性アルコールは、ポリカプロラクトン重合用の開始剤としては使用することができる。
【0007】
1,2プロパンジオール及びグリセロールの両方を使用してポリカプロラクトン、及び、その後のポリカプロラクトンフマレートを製造することできるものの、それによって得られたポリマー組織(polymeric architecture)は異なる。1,2プロパンジオールは、ポリカプロラクトンフマレートの合成における前駆体として使用される線形ポリカプロラクトンジオールを生成するが、グリセロールは、分岐ポリカプロラクトンフマレート組織を生み出す三分岐ポリカプロラクトン構造を生成する。ポリマー組織におけるこうした差異は、次に、熱特性、結晶特性、及び、機械的特性に影響を及ぼす。
【0008】
我々は、1,2プロパンジオールから開始されたポリカプロラクトンから生成されたポリカプロラクトンフマレートが以前に研究されたポリカプロラクトンフマレートに匹敵する材料特性を示すこと、及び、ポリマー組織を有効に変えることによって材料特性が劇的に変わることを見出した。したがって、本発明は、新しいポリカプロラクトンフマレート組成物の合成及び特性評価を提供する。我々は、新しいポリカプロラクトンフマレート組成物及びその組み合わせの熱、結晶、レオロジー、及び、機械的特性を評価し、これらの材料特性に対するオートクレーブの効果を決定した。
【0009】
本発明のこれら及び他の要素、側面、利点は、以下の発明の詳細な説明、図面、及び、添付した特許請求の範囲に基づけばより良く理解できるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】ジエチレングリコールを用いて合成された前駆体から製造したポリカプロラクトンフマレートの化学構造を示す。
図1B】ポリカプロラクトン(PCLDEG)およびポリカプロラクトンフマレート(PCLDEG)のH NMRを示す。ここで、PCLFDEGが、ジエチレングリコール(PCLDEG)から合成されたポリカプロラクトン前駆体ポリマーとフマリルクロライドを反応させることによって生成された図1Aのようなポリカプロラクトンフマレートポリマーである。
図2】PCLF PPD及びPCLFグリセロールの合成スキームを示す。ここで、POCLF PPDは、1,2プロパンジオールから合成されたポリカプロラクトン前駆体ポリマーとフマリルクロライドとを反応させることによって精製されたポリカプロラクトンフマレートポリマーであり、PCLFグリセロールは、グリセロールから合成されたポリカプロラクトン前駆体ポリマーとフマリルクロライドとを反応させることによって生成されたポリカプロラクトンフマレートポリマーである。
図3】1,2プロパンジオールから合成されたポリカプロラクトン前駆体ポリマー(PCLPPD)、グリセロールから合成されたポリカプロラクトン前駆体ポリマー(PCLGLY)、およびジエチレングリコールから合成されたポリカプロラクトン前駆体ポリマー(PCLDEG)のGPCトレース(trace)を示す。
図4】PCLPPD、PCLGLY、PCLF、PCLFPPD及びPCLFGLYのH NMRを示す。
図5】異なるPCLF組成物の加熱および冷却トレース(痕跡)を示す示差走査熱量測定を示す。
図6A】架橋PCLF足場の温度の上昇に伴う熱分解を示す熱重量分析を示す。
図6B】架橋PCLF足場の温度の上昇に伴う熱分解を示す熱重量分析を示す。
図7】塩化メチレン中PCLF足場の膨潤率を示す。膨潤率(swelling ratio)は、式(Ws-Wd)Wdによって決定される。ここで、Wsは膨潤重量、Wdは乾燥重量である。
図8A】異なるPCLF組成物の応力-ひずみ曲線を示す。
図8B】異なるPCLF組成物の引張および曲げ率(flexural modulus)を示す。
図9A】異なるPCLF組成物に対する%ひずみ(%strain)のレオロジー測定(値)を示す。
図9B】異なるPCLF組成物に対する振動ストレス(oscillating stress)のレオロジー測定(値)を示す。
図9C】異なるPCLF組成物に対する貯蔵率(storage modulus)のレオロジー測定(値)を示す。
図9D】異なるPCLF組成物に対する損失率(loss modulus)のレオロジー測定(値)を示す。
図9E】異なるPCLF組成物に対し、周波数の関数としてtanδのレオロジー測定(値)を示す。
図9F】異なるPCLF組成物に対し、加えられた10kPaの応力でのPCLFフィルムのクリープおよび回復のレオロジー測定(値)を示す。
図10A】オートクレーブ滅菌後の異なるPCLF組成物に対し、貯蔵率のレオロジー測定(値)を示す。
図10B】オートクレーブ滅菌後の異なるPCLF組成物に対し、損失率のレオロジー測定(値)を示す。
図10C】オートクレーブ滅菌後の異なるPCLF組成物に対し、周波数の関数としてtanδのレオロジー測定(値)を示す。
図10D】オートクレー部滅菌後の異なるPCLF組成物に対し、10kPaの応力が与えられたときのPCLFフィルムのクリープおよび回復のレオロジー測定(値)を示す。
図11】PC12細胞付着および形状を示す。MTS分析は、24時間後に付着した細胞の数を示す。
図11A】PC12細胞付着および形状を示す。MTS分析は、24時間後に付着した細胞の数を示す。蛍光顕微鏡による、PCLFPPD100についての24時間後のPC12細胞の形状を示す。
図11B】PC12細胞付着および形状を示す。MTS分析は、24時間後に付着した細胞の数を示す。蛍光顕微鏡による、PCLFPPD75PCLFGLY25についての24時間後のPC12細胞の形状を示す。
図11C】PC12細胞付着および形状を示す。MTS分析は、24時間後に付着した細胞の数を示す。蛍光顕微鏡による、PCLFPPD50PCLFGLY50についての24時間後のPC12細胞の形状を示す。
図11D】PC12細胞付着および形状を示す。MTS分析は、24時間後に付着した細胞の数を示す。蛍光顕微鏡による、PCLFPPD25PCLFGLY75についての24時間後のPC12細胞の形状を示す。
図11E】PC12細胞付着および形状を示す。MTS分析は、24時間後に付着した細胞の数を示す。蛍光顕微鏡による、PCLFGLY100についての24時間後のPC12細胞の形状を示す。
図11F】PC12細胞付着および形状を示す。MTS分析は、24時間後に付着した細胞の数を示す。蛍光顕微鏡による、PCLFDEGについての24時間後のPC12細胞の形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に使用する用語「生体適合性(biocompatible)」材料は、重度またはエスカレートする応答とは対照的に、専ら軽度の、しばしば一過性の移植応答のみを刺激するものである。本明細書に使用する用語「生分解性(biodegradable)」材料は、生体内の正常な生理学的条件下で、代謝または排泄することができる成分に分解するものである。本明細書に使用する用語「生体吸収性(bioresorbable)」材料は、身体の化学的/生物学的作用に基づいて、一定期間にわたって分解するものである。「注入可能な(injectable)」とは、コポリマーが、医療注射器を介してある部位に送達され得ることを意味する。「自己架橋(self-crosslinkable)」とは、本発明に係るポリマーの感応木と本発明に係る同じポリマー又は別のポリマーの官能基環の架橋を形成する架橋剤なしに、本発明に係るポリマーの官能基が、本発明に係る同一又は別のポリマーの官能基と架橋し得ることを意味する。
【0012】
用語「数平均分子量(number average molecular weight)」(Mn)は、ポリマーサンプル内にある総モルの総重量を存在する総モル数で割ったものである(MniNiMiiNi)。数平均分子量は様々な方法によって求めることができるが(使用された方法によって結果が若干異なる)、ゲル浸透クロマトグラフィー又は末端基分析を用いるのが便利である。本明細書に使用する「重量平均分子量(weight average molecular weight)」は、MwiNiMi2/ iNiMiとして定義される。重量平均分子量(Mw)は様々な方法によって求めることができるが(使用された方法によって結果が若干異なる)、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いるのが便利である。本明細書に使用する用語「多分散性(polydispersity)」または「多分散性指数(polydispersity index)」(PDI)は、材料の「重量平均分子量」をその「水平均分子量」で割った比率(Mw/Mn)を言う。
【0013】
1つの実施例において、本発明は、以下の式(I)を有するポリマー([化1])である。
【0014】
【化1】
【0015】
A1は[化2]であり、
【化2】
【0016】
A2は[化3]であり
【化3】
【0017】
Bは-O-X-O-であり、Xは、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、C1-C5アルキルエチレン、C1-C5アルキルトリメチレン、C1-C5アルキルテトラメチレン、および、C1-C5アルキルペンタメチレンからなる群から選択され、
Cは[化4]
【化4】
およびその幾何異性体であり、
nは、1〜50の整数である。
【0018】
図2は、カプロラクトンをアルカンポリオール(例えば、1,2―プロパンジオール)と反応させてポリカプロラクトン前駆体を製造し、そのポリカプロラクトン前駆体をフマル酸又はその塩と反応させる、本発明の一つの実施形態を合成する方法を示す。好ましい実施形態では、nは1〜20、より好ましくは、1〜10の整数である。別の好ましい実施形態では、Xはメチルエチレンである。
【0019】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、5000〜15000 g mol-1の数平均分子量を有するか、または、ポリマーは、1〜6の多分散性指数を有する。
【0020】
別の非限定的な例示的実施形態において、本発明は、上述したような式(I)を有するポリマーおよびフリーラジカル開始剤を含有する、架橋性、生分解性材料である。いくつかの実施形態では、該材料は架橋剤を含まない。
【0021】
別の非限定的な例示的実施形態において、本発明は、上述したような式(I)を有するポリマーを含む生分解性マトリックスを含む足場である。いくつかの実施形態では、ジエチレングリコールが該足場の加水分解中に放出されない。他の実施形態では、該足場はオートクレーブ滅菌プロセスを通じて、その幾何学的構造及び寸法を維持するか、該足場は、オートクレーブ滅菌処理中に1桁分(an order of magnitude)内の機械的特性を維持する。
【0022】
別の非限定的な実施例では、本発明は、式(II)を有するポリマー([化5])である。
【0023】
【化5】
【0024】
A1は[化6]であり、
【化6】
【0025】
A2は[化7]であり
【化7】
【0026】
A3は[化8]であり、
【化8】
【0027】
Bは-O-X-O-であり、Xは、プロパネトリイル(propanetriyl)、ブタネトリイル(butanetriyl)、ペンタネトリイル(pentanetriyl)、C1-C5アルキルプロパネトリイル(C1-C5 alkyl propanetriyl)、C1-C5アルキルブタネトリイル(C1-C5 alkyl butanetriyl)、および、C1-C5アルキルペンタネトリイル(C1-C5 alkyl pentanetriyl)からなる群から選択され、
Cは[化9]
【化9】
およびその幾何異性体であり、
nは、1〜50の整数である。
【0028】
図2は、カプロラクトンをアルカンポリオール(例えば、グリセロール)と反応させてポリカプロラクトン前駆体を製造し、そのポリカプロラクトン前駆体をフマル酸又はその塩と反応させる、本発明の一つの実施形態を合成する方法を示す。好ましい実施形態では、nは1〜20、より好ましくは、1〜10の整数である。別の好ましい実施形態では、Xはプロパントリイル(propanetriyl)である。
【0029】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、5000〜15000 g mol-1の数平均分子量を有するか、または、ポリマーは、1〜6の多分散性指数を有する。
【0030】
別の非限定的な例示的実施形態において、本発明は、上述したような式(II)を有するポリマーおよびフリーラジカル開始剤を含有する、架橋性、生分解性材料である。いくつかの実施形態では、該材料は架橋剤を含まない。
【0031】
別の非限定的な例示的実施形態において、本発明は、上述したような式(I)を有するポリマーを含む生分解性マトリックスを含む足場である。いくつかの実施形態では、ジエチレングリコールが該足場の加水分解中に放出されない。他の実施形態では、該足場はオートクレーブ滅菌プロセスを通じて、その幾何学的構造及び寸法を維持するか、該足場は、オートクレーブ滅菌処理中に1桁分(an order of magnitude)内の機械的特性を維持する。
【0032】
別の非限定的な例示的実施形態において、本発明は、組織再生のための足場である。足場は、上述した式(I)のポリマー及び式(II)のポリマー)のブレンド(blend)を含む。好ましい実施形態において、足場は20重量%〜80重量%の式(I)のポリマーおよび20重量%〜80重量%の式(II)のポリマーを含む。より好ましい実施形態では、足場は40重量%〜60重量%の式(I)のポリマーおよび40重量%〜60重量%の式(II)のポリマーを含む。
【0033】
いくつかの実施態様において、式(I)のポリマーは、メチルエチレンであり、式(II)のポリマー(II)はプロパントリエル(propanetriyl)であるか、または、式(I)又は(II)のポリマーは、5000〜15000 g mol-1の数平均分子量を有するか、あるいは、1〜6の多分散性指数を有する。いくつかの実施形態において、足場はオートクレーブ滅菌プロセスを通じて、その幾何学的構造及び寸法を維持するか、または、該足場は、オートクレーブ滅菌処理中に1桁分(an order of magnitude)内の機械的特性を維持する。
【0034】
別の非限定的な例示的実施形態において、本発明は、カプロラクトンをアルカンポリオールと反応させてポリカプロラクトン前駆体を製造し、そのポリカプロラクトン前駆体をフマル酸又はその塩と反応させることを含むプロセスによって製造されたポリマーである。一実施形態では、ポリカプロラクトン前駆体をフマリルクロライド(fumaryl chloride)と反応させる。
【0035】
カプロラクトン前駆体を合成する際に使用するアルカンポリオールは、好ましくは2〜5個の炭素原子を有するアルカンポリオールであることが好ましい。好ましくは、アルカンポリオールは、生体適合性のC2-5ポリオールである。
【0036】
非限定的な例としては、(i)アルカン、例えば、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1、4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオールおよび1,5-ペンタンジオール、および、(ii)アルカントリオール、例えば、グリセロール(1,2,3-プロパントリオール)を含む。カプロラクトン対アルカンポリオールの適切なモル比は、1:1〜50:1、より好ましくは10:1〜30:1、より好ましくは15:1〜25:1である。好ましくは、アルカンポリオールは、生体適合性のC2-5ポリオールである。
【0037】
いくつかの実施形態において、カプロラクトン前駆体は、1,000〜5,000 g mol-1、好ましくは、1,000〜3,000 g mol-1又は1,500〜2,500 g mol-1数の水平均分子量を有している。そのポリマーは、ポリカプロラクトン前駆体を分離するか、または、ポリカプロラクトン前駆体の分離なしに一つの反応器でポリカプロラクトン前駆体およびポリマーを製造する、2つの個別の反応を含んだプロセスによって製造することができる。
【0038】
本発明の対象であるポリカプロラクトンフマレートは、ポリカプロラクトンフマレートの分子量に応じて、摂氏50〜70度の融点を有する吸収性および半結晶性ポリマーとして提供され得る。その融点より上では、ポリカプロラクトンフマレートが、物理的にポロゲン、開始剤、架橋剤、促進剤、希釈剤、発泡剤、緩衝剤、阻害剤触媒(inhibitor catalyst)、成長因子、粒状および繊維状の補強材、および、安定剤(以上、遊離型又はカプセル化された形態)等他の調剤成分と混合され得る自由流動性液体となり、(ポリカプロラクトンフマレートは)生体組織の再生に用いられる足場を作成するようシリンジにより注入され得る。融点以下、例えば、人間の生物学的な温度である37℃(98.6°F)では、ポリカプロラクトンフマレートは固体となり、物理的、化学的架橋によって硬化し得る。
【0039】
物理的架橋は、ポリカプロラクトンフマレート鎖のポリカプロラクトン分節の部分結晶化によって起こり得る。化学的架橋は、好適な開始剤、促進剤、または架橋剤の存在下で、ポリカプロラクトンフマレート鎖のフマレート基の二重結合を架橋することによって起こり得る。しかし、この材料は、架橋剤が必要ないように、自己架橋性であり得る。物理的および化学的な架橋の程度は、ポリカプロラクトンの分子量、ポリカプロラクトンフママクロマーの分子量、及びポリカプロラクトンフママクロマーにおけるポリカプロラクトンフに対するフマレート(フマレート対ポリカプロラクトン)の比率によって独立に制御することができる。ポリカプロラクトンフママクロマーの分解挙動はまた、ポリカプロラクトンの分子量、ポリカプロラクトンフママクロマーの分子量、及びポリカプロラクトンフママクロマーにおけるポリカプロラクトンに対するフマレートの比率によって制御することができる。
【0040】
本発明に係る生体適合性、生体吸収性ポリカプロラクトンフマレート生体材料は、50〜70℃の融点、30〜40℃の硬化点を有し得る。このユニークな特性によって、前記生体材料は、骨格再建のための注入可能な、in-situ硬化性足場の作製に適合される。本発明の用途は、注入可能な生体吸収性合成骨代替、または、制御分解挙動を有する注入可能な生体吸収性骨セメントであり得る。あるいは、ポリカプロラクトンフマレート生体材料は、その後、体内に移植される足場を製造するための金型に注入することができる。
【0041】
なお、本発明は、これまで特定の実施形態および実施例に関連して説明されたが、本発明が必ずしもこれに限定されないこと、および、その他の多数の実施形態、実施例、用途、修正が添付の特許請求の範囲に含まれることが、当業者に理解できるだろう。本発明の様々な特徴および利点は、以下の特許請求の範囲に記載されている。
【実施例】
【0042】
以下の実施例は本発明をさらに説明するために提示されており、決して本発明を限定するものではない。
【0043】
I.方法
A.材料
全ての化学物質および試薬は、特に言及されない限り、利用可能な最高純度でフィッシャー(Fisher)社又はアルドリッチ(Aldrich)社から入手し、使用した。ε-カプロラクトンを100℃にて真空下で蒸留し、使用するまで窒素雰囲気下で保存した。フマリルクロライドは、使用前に蒸留した。
【0044】
B.ポリカプロラクトンの合成
すず(II)エチルヘキサン酸(Tin(II)ethylhexanoate)(2.08g、0.005モル)および1、2プロパンジオール(9.8g、0.128モル)を攪拌棒でシュレンフラスコ(Schlenk flask)に加えた。フラスコをポンプダウン(pump down)し、N2で3回埋め戻し、N下でε−カプロラクトンを加えた。反応容器を140℃の油浴に1時間放置し、次いで室温まで冷却した。冷却によって溶融したポリマーが固体化し、塩化メチレン中に溶解させて、石油エーテル中に沈殿させた。沈殿したポリマーを60℃で真空乾燥し、そのまま使用した。
【0045】
C.ポリカプロラクトンフマレートの合成
炭酸カリウム(18.0g、0.13モル)を、還流冷却器(reflux condenser)を備えた三つ口フラスコに添加し、N2でパージした(purge)。ポリカプロラクトンジオール(225g、0.11モル)を600mlの塩化メチレン中に溶解し、フラスコに添加した。20mLの塩化メチレンに溶解した、新たに蒸留したフマリルクロライド(17.2g、0.11モル)を反応容器に滴下し、12時間加熱還流した。次いで、反応物をろ過して、K2CO3を除去し、石油エーテル中に沈殿させた。ポリマーを乾燥し、そのまま使用した。
【0046】
D.ポリカプロラクトンおよびポリカプロラクトンフマレートのワンポット合成
以前に乾燥シュレンクフラスコに、スズ(II)エチルヘキサン酸(0.406g、0.001モル)を加え、その後1,2 -プロパンジオール(3.81g、0.05モル)を加えた。シュレンクフラスコを1 mmHgに排気し、Nで3回埋め戻した。カプロラクトン(103g、0.9モル)を容器に添加し、その容器を140℃で40分間加熱し、次いで60℃に冷却した。この時点でのGPC分析は、カプロラクトンの重合が完了したことを示す。300mLのテトラヒドロフランをシュレンクフラスコに添加し、反応をさらに23℃に冷却した。K2CO3をシュレンクフラスコに添加しに添加してから、フマリルクロライド(7.23g、0.0473モル)を滴下した。反応混合物を23℃で20時間攪拌した。溶液を400 mLのテトラヒドロフランで希釈し、溶液を静かに注いで(decant)K2CO3から分離してから、水100mLを添加した。溶液を1時間撹拌し、次いでMgSO4上で乾燥させた。MgSO4を用いてテトラヒドロフランの大部分を蒸発させ、ポリマーを塩化メチレンに溶解した。塩化メチレン層は、MgSO4を用いて乾燥し、ろ過し、その後、蒸発させた。ポリマーを石油エーテル中に沈殿させ、乾燥させ、そして、そのまま使用した。
【0047】
E.ポリマーの特性評価
ポリマーの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。GPCシステムは、ウォーターズ2410屈折率検出器、515 HPLCポンプ、および717プラスオートサンプラー(Plus autosampler)と、スチラゲル(Styragel)HR4Eカラムで構成されていた。THFを溶離液(eluent)として使用した(1mL /分)。ポリスチレン標準を使用して、MnおよびPDIを決定した。1H NMRスペクトルは、CDCl3中の300MHバリアン(Varian)NMR上に記録した。
【0048】
F.足場の作製
ポリカプロラクトンフマレート(PCLF)(3.0 g)を1mLの塩化メチレンに溶解した。光開始剤イルガキュア(Irgacure)819アシルホスフィンオキシド(acyl-phosphine oxide)(0.3g)を3mLの塩化メチレンに溶解させ、300μLをPCLFに添加した。混合物を穏やかに(gently)加熱し、均質な溶液を確保するためにボルテックスした。混合物は、フィルム、および、チューブ作製用のガラス型に注いだ。その金型(ガラス型)は0.5mmだけ分離された二つのガラス板で構成されていた。ポリマー混合物を含む金型をUVチャンバーに入れ、架橋を誘導するために、315〜380 nmで1時間照射した。
【0049】
G. PCLF分解
PCLF足場を、1MのNaOHを含有するD2Oで37℃にて分解させた。
【0050】
H.オートクレーブ滅菌
予め形成されたフィルム又はチューブ足場を、滅菌パウチ内にパッケージし、23 psi、125℃で25分間オートクレーブした。
【0051】
I.熱分析
熱重量分析(Thermogravimetric analysis;TGA)は、TAインストルメントQ500熱分析計(thermal analyzer)上で行った。流動窒素下で、サンプルを室温から800℃まで5℃/分の速度で加熱した。動的な走査熱量測定(DSC)は、TAインストルメントQ1000示差走査熱量計上で行った。サンプル間の同じ熱履歴を確実にするために、サンプルに対して窒素雰囲気下で加熱−冷却−加熱サイクルを行った。サンプルを室温から100℃まで加熱し、その後、−80℃に冷却し、その後、5℃/分の速度で150℃まで加熱した。
【0052】
J.機械試験
機械試験(mechanical testing)は、TAインストルメントダイナミックメカニカルアナライザー2980上で行った。材料の三点曲げ特性を分析するために、円筒ジオメトリ足場をTAインストルメントDMA 2980三点曲げクランプ上に設け、そして、0.02の予圧力(preload force)を印加した。1.0 N/分のランプ力(ramping force)を、材料破壊または18 Nを達成するまで、印加した。サンプルの曲げ弾性率を、37℃での一晩の平衡化後の室温で、および、オートクレーブ後の室温で測定した。TAインストルメントの共通分析ソフトウェアを使用して、すべての材料につき5%歪みで該材料の曲げ弾性率を確認した。延伸および引張測定では、PCLFフィルムが2.1mmの直径を有する犬用の骨の形状に切断した。予め50℃に加熱した後に、サンプルの半分を室温での水浴中に放置し、サンプの半分を37℃の水浴中に放置した。各足場は、TAインストルメントのダイナミックメカニカルアナライザー(DMA)2980張力クランプ(tension clamp)上に設けた。サンプル上に加えられた力は、0.02ニュートン(N)で開始し、18.0 N又は材料の破壊点(failure point)に到達するまで1.0 N /分の速度で上げた。続いて、足場の引張係数(tensile modulus)は、ストレス/歪み曲線の線状部分の傾きを測定することによって決定した。
【0053】
K.レオメトリー
架橋PCLFポリマーフィルムの線形粘弾性特性は、ねじり動的機械分析装置(TAインストルメントのAR2000レオメータ)を使用して測定した。線形粘弾性領域は、1Hzの周波数で歪掃引(strain sweep)を用いて決定した。0.05%の歪みおよび振動応力10kPaは、全てのポリマーに対して該線形粘弾性領域内にあることが分かり、全てのさらにレオメトリー測定に使用された。0.1〜628.3rad/sの周波数掃引(frequency sweep)は、ストレージ(G’)と損失(G”)係数を測定するために使用された。
【0054】
L.PC12細胞を用いたインビトロ研究
10%熱不活性化ウマ血清、5%加熱不活化ウシ胎児血清および0.5%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDMEM培地をPC12細胞培地のために用いた。PCLF複合材料を、前述のように直径1.0cmのディスク状に作製し、70%エタノールで滅菌して、そのまま使用した。PCLF足場から滲出する(浸出する)残留出発物質の毒性は、非接触法を用いて評価した。PC12細胞を、トランスウェル(transwell)中に含有されたポリマー材料を添加する前に、24時間20,000細胞数/cmの密度で12−ウェルプレートにシード(seed)した。PC21細胞をポリマー材料の存在下で1日培養し、その後、MTS分析で細胞数を定量し、そのトランスウェルを、細胞を含有するウェルに移してから更に3〜7日培養した。
【0055】
異なるポリマー材料に対するPC12細胞の応答(response)を調べるために、1.0cmのディスクを24−ウェルプレートに放置した。足場を70%エタノール水溶液中で30分間滅菌した後、滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)ですすいだ。オートクレーブ処理済み医療グレードシリコンチューブを前記ウェルに挿入して、ポリマーディスクの表面積を直径0.95cm(表面積0.71cm)に制限した。ウェルは培地を充填し、残りの不純物を除去するために12時間インキュベートした。PC12細胞を30,000細胞数/cmの密度でプレートした。実験は、神経成長因子(NGF:50ng/mL)を補充した培地を用いて行った。
【0056】
細胞生存率(cell viability)をMTS(プロメガ、マジソン、WL)アッセイを用いて決定した。まず、0.5 mLのトリプシンを各ウェルに加え、吸引し、10分間インキュベーターに入れた。次いで、0.5mLの培地を各ウェルに添加し、細胞を穏やかにセルスクレイパー(cell scraper)で表面から除去した。その後培地および細胞を新しいウェルに移し、0.1mLのMTS(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム)試薬を各ウェルに添加し、37℃で2時間インキュベートした。吸光度はモレキュラーデバイスのスペクトルマックスプレートリーダー(Molecular Devices spectra max plate reader)上で、490nmで測定した。
【0057】
細胞形態を蛍光顕微鏡で画像化した。ポリマー足場上のPC 12細胞を25分間、PBS中の2%パラホルムアルデヒドに固定し、次いでPBSで3回洗浄した。細胞を3分間、0.1%トリトン100X界面活性剤に浸透させ、次いで1時間PBS中の10%ウマ血清中でインキュベートした。細胞を1時間、PBS中の5%ウマ血清中1%ロジウムファロイジン(rhodium phalloidin)で染色し、次いでPBSで3回洗浄した。核はガラスカバースリップ上に装着する直前にDAPI(4’、6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)で染色した。サンプルを、LSM 510倒立型共焦点顕微鏡上で画像化し、368及び488nmでの励起波長で画像化した。図11、11A、11B、11C、11D、11E、および11Fを参照(PC12細胞付着(cell attachment)および形態を示す)。
【0058】
II.結果
A.ポリカプロラクトンおよびポリカプロラクトンフマレートポリマーの合成
ポリカプロラクトン前駆体ポリマーは、モノマー:開始剤の比率19:1で、1,2プロパンジオールまたはグリセロール開始剤から合成した。この比率は、エチレングリコール(DEG)から合成された市販されるポリカプロラクトンエーテルジオールに類似した分子量を有するポリカプロラクトンを合成するために、選択したものである。ポリカプロラクトン前駆体をGPCによって分析して、同様の分子量を確認した。
【0059】
1,2プロパンジオールから合成されたポリカプロラクトン前駆体ポリマー(PCLPPD)とフマリルクロライトを反応させて、一方のポリカプロラクトンフマレートポリマー(PCLFPPD)を生成した。グリセロールから合成されたポリカプロラクトン前駆体ポリマー(PCLGLY)とフマリルクロライトを反応させて、別のポリカプロラクトンフマレートポリマー(PCLFGLY)を生成した。ジエチレングリコールから合成されたポリカプロラクトン前駆体ポリマー(PCLDEG)とフマリルクロライトを反応させて、更に別のポリカプロラクトンフマレートポリマー(PCLFDEG)を生成した。図2は、PCLFPPDおよびPCLFGLYの合成スキームを示す。
【0060】
図3は、ポリカプロラクトンポリマーのGPCごレース(trace)がすべて対称的であり、ほぼ同一であることを示す。GPCによって決定されたポリカプロラクトン分子量を下記表1に示す。合成されたPCL、および市販PCLの分子量は非常に類似しているが、それはすべてのカプロラクトンがPCL合成に消費されたことを示す。
【0061】
【表1】
【0062】
ポリカプロラクトンポリマーのH NMRに存在する端末CH2-OH 基を使用した末端基分析(end group analysis)によれば、ポリカプロラクトン分子量は2000 g mol-1の所望のMnに非常に類似している。開始剤の部(moiety)に関連した1H NMRのプロトンは、ポリカプロラクトン合成後に可視化され、PCLGLYについては3.3および3.8から4.15、4.28、および5.25にシフトし、PCLPPDについては3.5および3.8から4.15および5.15にシフトするが、それは、第一級及び第二級アルコールの両方からポリカプロラクトンの開始(initiation)がPPD及びGLY開始剤上で起こることを示す。GPCおよび末端基分析によって決定された分子量間の不一致は、GPC較正曲線を生成するためのポリスチレン標準(polystyrene standard)を使用することによって引き起こされる。
【0063】
PCLGLY上のアルコール数の増加および異なる組織(構造)に基づいて、反応時間が変わった。PCLPPDとの反応は12時間還流させたが、PCLGLYを使用した反応をGPCによってモニターし、典型的な反応時間は5時間であった。すべてのPCLF構造は、この研究において、10〜12kgmol-1の類似した分子量を有していた。しかし、PCLFGLYは2.9のより広いPDIを有していた。
【0064】
B.熱転移および結晶特性の特性評価
新たな架橋ポリカプロラクトンフマレート足場の材料特性を研究するために、0〜100重量%のPCLFGLY、および、PCLFPPDの組成物を作製した。熱、膨潤、機械的、およびレオロジー特性を評価し、以前に研究したPCLFDEGと比較した。図5は、PCLFの熱転移(thermal transition)を測定するために使用される示差走査熱量測定(DSC)からの加熱と冷却のトレース(trace)を示す。Tm、TC、Tg、△Hm、△Hc、および%結晶化度を分析した結果を表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
表2のポリマー組成物において、PCLFDEGは100重量%のPCLFDEGであり、PCLFPPD100は100重量%のPCLFPPDであり、PCLFPPD75PCLFGLY25は75重量%のPCLFPPD及び25重量%のPCLFGLYであり、PCLFPPD50PCLFGLY50は50重量%のPCLFPPD及び50重量%のPCLFGLYであり、PCLFPPD25PCLFGLY75は25重量%のPCLFPPD及び75重量%のPCLFGLYであり、PCLFGLYは100重量%のPCLFGLYである。
【0067】
DSCデータによれば、PCLFPPDは、PCLFDEGに非常に類似した熱および結晶特性を示す。PCLFDEGに比べて、PCLFGLYは、37.2℃〜22.4℃のより低いTm、31.2%〜24.5%の減少された結晶化度、および42.1〜33.1J/gの減少された△Hmを有している。表2はまた、Tm、Tc、ΔHm、ΔHc,、および%結晶化度がPCLFPPDPCLFGLYブレンド組成物の選択によって変われることを示す。図6は、様々なPCLF足場の熱分解を示す。すべての足場の分解開始(onset of composition)は、約200℃で起こる。これは、ポリマーがオートクレーブにおいて通常使用される121℃〜134℃の温度において熱的に安定していることを示す。
【0068】
C.膨潤比(swelling ratio)
架橋ポリマーフィルムの膨潤比は、相対的な架橋密度の指標である。材料がより高度に架橋されればされるほど、シータ溶媒中に置かれたときに膨潤はより少なくなる。図7は、架橋ポリカプロラクトンフマレートの膨潤比におけるわずかな相違を示す。PCLFDEGは最も高い膨潤率を有しているが、それは、最も架橋密度が低いことを示す。興味深いことに、PCLFPPDおよびPCLFGLYの両方は、より高い架橋密度を示す同様の低い膨潤比を有しているが、PCLFPPD50PDLFGLY50は、(PCLFDEG)同様の膨潤比を有している。
【0069】
D.機械的特性
ポリマー足場内の結晶領域の存在およびパーセントは足場機械的特性に大きく影響を与え、通常、結晶化度が増加するにつれて材料の機械的強度が増加する。PCLFGLY、PCLFPPD、および、PCLFLDEGの結晶特性の相違に基づいて、曲げ率や引張率を測定した。図8Aは、延伸モード(stretching mode)におけるPCLF材料の応力ひずみ(stress strain)プロットを示す。この応力ひずみプロットによれば、ポリマー材料は明らかに異なる性質を有している。PCLFDEG、および任意の量のPCLFPPDを含有する製剤は、20%未満の低ひずみにおいて可逆弾性特性(reversible elastic properties)を有するゴムのような性質を示す。PCLFGLY100応力ひずみ曲線は、低い応力下で高いひずみを持つエラストマー材料に似ている。5%ひずみにおける引張及び曲げ率の測定結果を図8Bに示す。PCLFDEGは それぞれ88 ± 13および67±10 MPaの引張および曲げ率(曲げ弾性率)を示す。PCLFPPDは若干減少された率、55 ± 4および47±8を示すが、PCLFGLYはそれぞれ有意に低い引張および曲げ率4 ± 1および7 ± 1 MPaを示す。PCLFGLY及びPCLFPPDブレンドの率は、PCLFPPDのパーセントが増加するにつれて増加した。
【0070】
E.レオロジー特性
レオロジーは、異なるポリカプロラクトンフマレート材料とそのブレンドの粘弾性特性を分析するために使用された。周波数スイープ(frequency sweep)およびクリープ(creep)実験は、貯蔵および損失率(storage and loss modulus)、並びに、材料のコンプライアンスおよび回復挙動を測定するために採用した。これらのパラメータを使用して、架橋ポリカプロラクトンフマレートの粘弾性挙動に対する異なる結晶性微細構造の影響を調べるとともに、オートクレーブ滅菌後の材料の変化を評価した。PCLF材料の線形弾性領域(linear elastic region)は、1Hzの周波数において0.1〜100%ひずみのひずみスイープ(strain sweep)を実行することによって決定した。G’がひずみ(図9A)又は振動応力(図9B)から独立している線形領域は、重なる線形粘弾性領域(overlapping linear viscoelastic region)を決定するために使用された。すべての周波数掃引(frequency sweep)は0.05%ひずみにおいて行われ、保存率(storage modulus; G’)および損失率(loss modulus; G”)対周波数をすべてのPCLF組成物について図9Aおよび図9Dにて示す。G’は、生理学的に関連する37℃で測定され、すべてのPCLF材料において周波数から独立していることが示された。PCLFDEGおよびPCLFPPDはPCLF100rad/sにおいてそれぞれ最も高いG’14.7および12.4MPaを有する。G’はPCLFGLYの量が増加するにつれて減少するが、PCLFPPD25PCLFGLY75については3.7MPaまで減少し、PCLFGLY100は0.3MPaのG’を有する。その値は、他の全ての組成物よりも一桁以上低い。G”は、PCLFGLYにおいては周波数依存的な挙動を示すが、他の全てのPCLF組成物においては主に独立している。G”測定値は、G’よりも一桁分低いが、この関係を図9Eにおいてtanδとしてプロットしている。tanδは材料の弾力性(elasticity)を評価するために使用することができ、G”/G’対周波数としてプロットされる。図9Eは、すべてのPCLF材料が約0.1のtanδ値を有することを示すが、それは、G’およびG”値に差異があるにもかかわらず類似した弾性挙動を示すことを意味する。
【0071】
分岐対線形PCLF足場の材料特性における差異を更に調べるために、クリープ実験(creep experiment)を行い、コンプライアンス(compliance)と回復(recovery)特製を説明した。図9Fに示すクリープ実験は、10kPaの一定の応力が加えられたときに材料が明確に異なるコンプライアンス特徴を有することを示す。PCLFDEGおよびPCLFPPDは、0.11〜0.27%のせん断応力を示した。これらの応力は、PCLFGLY100によって得られた4.0%のせん断応力の1/36〜1/14である。
【0072】
F.オートクレーブ滅菌
滅菌は生体材料を臨床用製品にするのに重要である。オートクレーブ滅菌は、迅速、有効、かつ、FDAの認証を受けた滅菌法であるために、PCLFに対するオートクレーブプロセスの効果を調べた。スチーム存在下、123℃で23分という標準的なオートクレーブ手順を採用した。オートクレーブ滅菌が終わった直後にすべての材料は透明であったが、足場が冷めるにつれてゆっくりと不透明になった。3次元構造を維持し、足場には特に目立った変化はなかった。材料変化(material change)を決定するために、PCLF熱およびレオロジー特性を評価し、オートクレーブ処理前の特性と比較した。表3は、オートクレーブ後PCLF材料における熱転移の変化およびDSC結果を示す。
【0073】
【表3】
【0074】
ガラス転移は、0.4〜1.4℃だけ減少し、融点温度は1.6〜3.2℃増加し、結晶化温度は5.0〜16.3増加した。結晶化度(%)、△Hmおよび△Hcは、それぞれ0.8〜5.6%、1.0〜7.7J/g、および、0.6〜8.5J/g増加した。すべてのパラメータについて、PCLFGLYは、一貫してオートクレーブ滅菌処理に基づく最低の変化だけを示した。
【0075】
レオロジー測定は滅菌後1日で行い、その結果を図10A〜10Dに示す。滅菌前の特性と比べたときにすべての材料においてG’、G”、およびtan δのわずかな変化しか見られなかった。例えば、PCLFGLYのG’は、滅菌後2.6MPaから1.5MPaまで減少した。図10Dに示すように一定のせん断応力が加えられたときに、G’およびG”におけるこうした差異は増加されたコンプライアンス挙動(compliance behavior)につながった。PCLFGLYは、4%から6.2%まで増加した。いかなるPCLFもオートクレーブ滅菌プロセスの前に測定したそれらの材料挙動とは劇的に異なる材料挙動は示さなかったものの、その他のPCLF材料ではそれらのコンプライアンス挙動を変えるG’およびG”に変化があった。
【0076】
III.ディスカッション
PCLPPDは市販のPCLDEGと類似した線形ポリマー構造(linear polymer architecture)であるが、PCLGLYは、三分岐星型ポリマー(tri-branched star polymer)である。三分岐星型ポリマーは、余分の(over)分子量が同じとなるように設計されているため、個々のPCL鎖がPCLPPD又はPCLDEGよりもPCLGLYにおいてより短い。
【0077】
A.熱転移および結晶特性の特性評価
ポリマー材料の結晶性はその機械的特性に大きな影響を与える。PCLFは生理的な温度に非常に近いTmを有する半結晶性材料である。結晶領域は材料強度に多大な影響を与えるため、材料の熱的挙動を理解することは重要である。したがって、機械的特性は、PCLFが結晶質の状態であるか、無定形の状態であるかによって、大きく変わり得る。DSCデータによれば、線形PCLFPPDおよびPCLFDEGは予想した通り類似した熱特性および結晶特性を有するが、それは、ポリマー組成および組織(architecture)が総組成(物)の約5%の開始剤を除けば同じであるからである。PCLFGLYは、線形PCLFPPD又はPOCLFDEGに比べて、減少された%結晶化度およびTmを有する。こうした結晶化度における減少は分岐の影響である。ポリマー分岐(polymeric branching)だけではなく架橋密度の増加も、折り曲げ(folding)および最終的な結晶形成に必要な鎖運動(chain motion)を減少させることで結晶化プロセスを混乱させることができる。PCLGLYは、三分岐ポリマーであるが、生成されたPCLFGLYは理論的に主鎖に沿った複数の分岐点(branching point)を有する。これが結晶化度の減少の原因とみられる。分岐の結果として、個々のPCL鎖は、線形の対応物(同等物;counterpart)(9〜10モノマー単位)よりも短く(7モノマー単位)、これがまた結晶化度の減少の一因となる。しかし、同じ条件下で架橋された、1鎖あたり5〜6モノマー単位を有する、線形PCLFは31.6℃のTmおよび30%結晶化度を有することが記載されたWangらの文献によれば、この影響は少ない。文献[Wang, S.; Yaszemski, M. J.; Gruetzmacher, J. A.; Lu, L., "Photo-Crosslinked Poly(epsilon-caprolactone fumarate) Networks: Roles of Crystallinity and Crosslinking Density in Determining Mechanical Properties", Polymer (Guildf) 2008; 49:5692-99]参照。
PCLF組織(architecture)を変えることで、Tmを37℃以上又は以下に替えることができる。このため、材料が生理的な温度周辺で結晶状態であるか無定形状態でだるかは、材料特定において重要である。こうした熱転移(thermal transition)が起こるかいなかを決定するために、DSCを行い、その加熱および冷却トレースを図5に示した。
【0078】
B.レオロジー特性
レオロジーを使用して、ゲル架橋ポリマーせん断強度上の微細構造の相違(差異)の影響を調べた。周波数掃引(frequency sweep)の結果、G’及びG”がわずかな周波数依存挙動を示すPCFLGLYを除いたすべての材料において周波数依存は見られなかった。これは、すべての足場がよく順序付けられた(即ち、よく整列された)三次元構造を有するということを示す。PCLF材料間に観察されたG’の相違(差異)は、結晶化データと一致し、増加する%結晶化度、TmおよびTc転移に起因している。これは、PCLFDEGこれはPCLFDEことを意味してGとPCLFppoが最高のG 'とGその'増加パーセントPCLFGLY-C.オートクレーブ滅菌と減少を示す。
【0079】
C.オートクレーブ滅菌
臨床的に関連した滅菌プロトコールは、最初のポリマー開発の過程、インビトロ作業、および、70%アルコールを使用した簡単な滅菌で足りるインビボ研究においてもしばしば看過される、生体材料/医療機器の開発における重要なポイントである。オートクレーブは、外科機器に最も広く使われている滅菌法であるが、分解しやすい、非架橋性のポリマー材料では、オートクレーブによって、足場の幾何学的形状が破壊されるか、材料特性および最終的な装置性能が悪影響を受けることがある。PCLFが疎水性、架橋性、および、他のポリエステルよりもゆっくりと分解する(劣化する;degrading)ものであるために、PCLF特性へのオートクレーブ滅菌の効果を調べた結果、オートクレーブ滅菌に対してより回復力が強い(より柔軟である)ことが分かった。
【0080】
IV.結論
ポリカプロラクトンフマレート材料は、以前のポリカプロラクトンフマレート組成物の望ましくないジエチレングリコール成分を除去するために、1,2プロパンジオール又はグリセロールから開始された、生体適合性ポリカプロラクトン前駆体から成功裏に合成された。線形PCLFPPDポリマー足場は、PCLFDEGと同様の特性、レオロジー特性、および、機械的特性を維持するが、分岐PCLFGLYは材料の特性を変えるために使用され得る。PCLFGLYの分岐構造(branched structure)は、結晶化を破壊(分断)して%結晶化度が減少され、Tmが生理温度以下となる。これによってPCLFGLYは無定形となり、その機械的な挙動は純粋な弾性(purely elastic)というよりもエラストマー的なものに変わる。更に、これらのポリカプロラクトンフマレート材料は、材料特性にほとんど変化をもたらすことなく、オートクレーブによって滅菌され得ることが分かった。
【0081】
従って、本発明は、分解時にジエチレングリコールまたは他の望ましくない副産物を放出しない生体適合性ポリカプロラクトンフマレート製剤を提供する。
【0082】
本発明は、特定の実施形態に基づいて詳細に説明したが、当業者であれば、本発明が零時の目的で示された前述した実施形態以外によって実施できることを理解できるだろう。したがって、添付された特許請求の範囲は、この明細書に含まれた実施形態の説明に限定されない。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F