(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012715
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】熱可塑性誘導溶接装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/32 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
B29C65/32
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-511371(P2014-511371)
(86)(22)【出願日】2012年4月16日
(65)【公表番号】特表2014-513641(P2014-513641A)
(43)【公表日】2014年6月5日
(86)【国際出願番号】US2012033794
(87)【国際公開番号】WO2012158293
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2015年2月12日
(31)【優先権主張番号】13/109,061
(32)【優先日】2011年5月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】マトスン, マーク アール.
(72)【発明者】
【氏名】ネグレイ, マーク エー.
(72)【発明者】
【氏名】ゲレン, ウィリアム ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ミラー, ロバート ジェー.
【審査官】
大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特表平06−509293(JP,A)
【文献】
米国特許第06040563(US,A)
【文献】
特開平09−129429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性溶接ツール(101)と、
前記熱可塑性溶接ツール(101)内の少なくとも1つのツーリング表面(103)と、
前記熱可塑性溶接ツール(101)内の、前記少なくとも1つのツーリング表面(103)をほぼ取り囲む磁気誘導コイル(102)と、
前記熱可塑性溶接ツール(101)内の前記少なくとも1つのツーリング表面(103)上の少なくとも1つのスマートサセプタ(116)と、
前記少なくとも1つのツーリング表面(103)に埋め込まれた強磁性材料と
を含む熱可塑性溶接装置(100)であって、
前記磁気誘導コイル(102)は、前記少なくとも1つのスマートサセプタ(116)の面に対して概ね平行に配向する磁束場(122)を生成するように適合される、
熱可塑性の溶接装置(100)。
【請求項2】
熱可塑性溶接ツール(101)と、
前記熱可塑性溶接ツール(101)内の少なくとも1つのツーリング表面(103)と、
前記熱可塑性溶接ツール(101)内の、前記少なくとも1つのツーリング表面(103)をほぼ取り囲む磁気誘導コイル(102)と、
前記熱可塑性溶接ツール内(101)の前記少なくとも1つのツーリング表面(103)上の少なくとも1つのスマートサセプタ(116)と、
前記少なくとも1つのツーリング表面(103)内の非導電性材料(104)と、
前記非導電性材料(104)に隣接する前記少なくとも1つのツーリング表面(103)に埋め込まれた強磁性材料とを含む、熱可塑性溶接装置(100)であって、
前記磁気誘導コイル(102)は、前記少なくとも1つのスマートサセプタ(116)の面に対して概ね平行に配向する磁束場(122)を生成するように適合される、
熱可塑性の溶接装置(100)。
【請求項3】
前記非導電性材料(104)はエラストマ材料(132)を含む、請求項2に記載の装置(100)。
【請求項4】
前記強磁性材料はフェライト粉末(108)を含む、請求項2に記載の装置(100)。
【請求項5】
前記フェライト粉末(108)が前記スマートサセプタ(116)の面並びに第1(112)及び第2(113)の複合パーツの面に対して平行な平面内に分配される、請求項4に記載の装置(100)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのスマートサセプタ(116)はモリパーマロイを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項7】
前記強磁性材料が、前記非導電性材料(104)の各側面上の前記少なくとも1つのツーリング表面(103)に埋め込まれている、請求項2から5のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項8】
第1(112)及び第2(113)の複合パーツを供給することと、
前記第1(112)及び第2(113)の複合パーツの間にスマートサセプタ(116)を配置することと、
前記スマートサセプタ(116)の面に対して平行関係に磁束場(122)を生成することと
を含む熱可塑性溶接の方法であって、
前記スマートサセプタ(116)の面に対して平行関係に磁束場(122)を生成することは、非導電性材料(104)を前記第1の複合パーツ(112)に接触するように配置することと、少なくとも1つのフェライト材料を前記非導電性材料(104)の隣に供給することとを含む、方法。
【請求項9】
前記非導電性材料(104)はエラストマ材料(132)を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記フェライト材料は、フェライト粉末(108)を含む請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記フェライト粉末(108)を含む前記フェライト材料を供給することは、
前記ファライト粉末(108)を前記スマートサセプタ(116)の面並びに前記第1(112)及び第2(113)の複合パーツの面に対して平行な平面内に分配することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1(112)及び第2(113)の複合パーツの間にスマートサセプタ(116)を前記配置することは、前記第1(112)及び第2(114)の複合パーツの間にモリパーマアロイを配置することを含む、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1(112)及び第2(113)の複合パーツに対してツーリング力を適用することにより、溶接加圧力を供給することをさらに含む、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して熱可塑性誘導溶接の技法に関する。具体的には、本発明は、誘導磁場が、溶接された複合パーツの面に対して平行に配向し、及び各複合パーツの間のジョイントに均一加熱を集中させ、パーツの加熱を防止する又は最小限に留める、熱可塑性溶接装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化有機樹脂マトリックス複合材は、高い強度対重量比、高い剛性対重量比、及び所望の疲労特性を有しており、航空宇宙への適用において人気が高まっている。したがって、複合材料は、航空機の構成部品の製造にますます使われるようになっている。
【0003】
航空宇宙及び他の応用分野において、複合構造物の接合に様々な技法が用いられている。これらの締結技法には、機械締結、接着、及び熱可塑性溶接が含まれる。熱可塑性溶接は、熱可塑性複合部品を高速、最小限の手間、及び行うとしても最低限の前処理で接合する能力を備え、他の締結技法を上回る多くの利点を有する。溶接界面層(サセプタ及びサセプタを覆う又は挟む周囲の熱可塑性樹脂)も、機械締結で必要なシムに同時に取って代わることができる。したがって、複合溶接には、安価で手に届く接合技法となる望みがある。
【0004】
熱可塑性及び熱硬化性複合パーツの熱可塑性溶接では、各複合パーツの間のサセプタが加熱され、次いでパーツの樹脂が加熱されて溶解される。溶解した樹脂は、各パーツの間の溶接界面層においてホットメルト接着剤として機能する。その後冷却されると、樹脂は各複合パーツを互いに固化し、固定する。
【0005】
熱可塑性溶接では、各複合パーツの間の溶接界面層をできるだけ均一に加熱することが望ましい。熱可塑性複合材の誘導溶接を利用するためには、熱均一性及び熱の繰返し性、並びにこれらの許容可能な熱均一性条件を満たすために許容可能なツーリング及びパラメータを開発するのに必要な時間量が主な障害であった。誘導パラメータ及びヒートシンクを有するツーリングが使用される適用例においてパラメータの開発に広範囲な実験が行われている。しかし、このような熱均一性の問題のゆえに、熱可塑性溶接工程が選択されないことが多い。
【0006】
したがって、誘導磁場を溶接される複合パーツの面に対して平行に配向して複合パーツの間のジョイントに均一加熱を集中させることによりパーツの加熱を防止する又は最小限に留める熱可塑性溶接装置及び方法が必要とされる。
【発明の概要】
【0007】
本開示は概して熱可塑性溶接装置を対象としている。熱可塑性溶接装置の例示的実施形態は、熱可塑性溶接ツールと、熱可塑性溶接ツール内の少なくとも1つのツーリング表面と、熱可塑性溶接ツール内の、少なくとも1つのツーリング表面をほぼ取り囲む磁気誘導コイルと、少なくとも1つのツーリング表面における熱可塑性溶接ツール内の少なくとも1つのスマートサセプタとを含む。磁気誘導コイルは、少なくとも1つのスマートサセプタの面に対して概して平行に配向する磁束場を生成するように適合される。
【0008】
幾つかの実施形態では、熱可塑性溶接装置は、熱可塑性溶接ツールと、熱可塑性溶接ツール内の少なくとも1つのツーリングスペースと、少なくとも1つのツーリングスペース内の少なくとも1つのツーリング表面と、熱可塑性溶接ツール内の、少なくとも1つのツーリング表面をほぼ取り囲む磁気誘導コイルと、ツーリング表面上の第1の複合パーツと、第1の複合パーツ上の少なくとも1つのスマートサセプタと、少なくとも1つのスマートサセプタ上の第2の複合パーツとを含み得る。磁気誘導コイルは、少なくとも1つのスマートサセプタの面に対して概して平行に配向する磁束場を生成するように適合される。
【0009】
本開示は概して熱可塑性溶接方法をさらに対象としている。熱可塑性溶接方法の例示的実施形態は、第1及び第2の複合パーツを提供することと、第1及び第2の複合パーツの間にスマートサセプタを配置することと、スマートサセプタの面に対して平行関係に磁束場を生成することとを含む。
【0010】
本発明のさらなる実施形態には、
A.熱可塑性溶接装置であって、
熱可塑性溶接ツールと、
前記熱可塑性溶接ツール内の少なくとも1つのツーリングスペースと、
前記少なくとも1つのツールスペース内の少なくとも1つのツーリング表面と、
熱可塑性溶接ツール内の、及び少なくとも1つのツーリング表面をほぼ取り囲む磁気誘導コイルと、
前記ツーリング表面上の第1の複合パーツと、
前記第1の複合パーツ上の少なくとも1つのスマートサセプタと、
前記少なくとも1つのスマートサセプタ上の第2の複合パーツと
を含み、
前記磁気誘導コイルは前記少なくとも1つのスマートサセプタの面に対してほぼ平行に配向する磁束場を生成するように適合されている、熱可塑性溶接装置。
B.前記少なくとも1つのスマートサセプタはモリパーマロイを含む、段落Aに記載の装置。
C.前記少なくとも1つのツーリング表面に埋め込まれた強磁性材料をさらに含む、段落Aに記載の装置。
D.前記少なくとも1つのツーリング表面に非導電性材料をさらに含む、段落Aに記載の装置。
E.前記非導電性材料はエラストマ材料を含む、段落Dに記載の装置。
F.前記非導電性材料の隣の前記少なくとも1つのツーリング表面に埋め込まれた強磁性材料をさらに含む、段落Dに記載の装置。
G.前記強磁性材料は、前記非導電性材料の各側面上の前記少なくとも1つのツーリング表面に埋め込まれている、段落Fに記載の装置。
H.前記強磁性材料はフェライト粉末を含む、段落Fに記載の装置。
が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、熱可塑性溶接装置の例示的適用例における該装置の例示的実施形態の断面図である。
【
図2】
図2は、熱可塑性溶接装置の例示的実施形態の一部の断面図であって、パーツを互いに熱可塑性溶接するにあたって、隣接する複合パーツの間のスマートサセプタに対する磁束場の平行配向を拡大して示している。
【
図3】
図3は、
図2に示された複合パーツ及びスマートサセプタの拡大断面図である。
【
図4】
図4は、熱可塑性溶接装置の代替的な適用例における、該装置の例示的実施形態の断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示された複合パーツ及びスマートサセプタの拡大断面図である。
【
図6】
図6は、熱可塑性溶接方法の例示的実施形態のフロー図である。
【
図7】
図7は、航空機の製造及び保守方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明は本来単なる代表例であり、説明した実施形態又は適用並びに説明した実施形態の使用を制限することを意図していない。本明細書で使用しているように、「代表的」又は「例示的」という語は、「実施例、事例、又は説明としての役割を果たすこと」を意味する。本明細書で「代表的」又は「例示的」と記載されている実装態様は、必ずしも他の実装態様よりも好適な又は有利なものとして理解する必要はない。以下に説明する実装態様はすべて、当業者が本発明を実施できるように提供される代表的な実装態様であり、請求の範囲を限定することを意図していない。さらに、先述の技術分野、技術背景、発明の概要、及び以下の詳細な説明で明示的又は暗示的に提示される任意の理論によって束縛されることは意図していない。
【0013】
図1〜3を参照するに、熱可塑性溶接装置の例示的実施形態は、概して参照番号100で示されている。熱可塑性溶接装置100は、熱可塑性溶接ツール101を含み得る。幾つかの実施形態では、熱可塑性溶接ツール101はキャスタブルセラミックツールであってもよい。補強ロッド105は、ガラス繊維であってもよく、熱可塑性溶接ツール101を通って延伸することができる。
【0014】
熱可塑性溶接ツール101は、少なくとも1つのツーリング表面103を有するツーリングスペース106を含み得る。磁気誘導コイル102は、熱可塑性溶接ツール101を通って延伸することができる。磁気誘導コイル102は、ツーリングスペース106の両側に配置することができ、ツーリング表面103をほぼ取り囲む又は包むことができる。
【0015】
非導電性材料104(
図2)は、ツーリング表面103の概して下部又は隣接部に配置することができる。幾つかの実施形態では、非導電性材料104はエラストマ材料であってもよい。フェライト粉末108などのフェライト材料は、例えば限定しないが、熱可塑性溶接ツール101の1つの側面上に埋め込むことができ、好ましくは非導電性材料104の各側面上に埋め込むことができる。フェライト粉末108は、スマートサセプタ116の面と、第1の複合パーツ112及び第2の複合パーツ113のそれぞれの面とにほぼ平行な面に分配することができる。
【0016】
熱可塑性溶接装置100の適用例では、熱可塑性溶接ツール101のツーリングスペース106内のツーリング表面103上に第1の複合パーツ112が配置される。スマートサセプタ116は、第1の複合パーツ112上に配置される。スマートサセプタ116は、例えば限定しないが、モリパーマロイなどの高熱伝導性を有する導電性の磁性金属であってもよい。第2の複合パーツ113は、スマートサセプタ116上に配置される。幾つかの適用例では、テープ118を第2の複合パーツ113の端部に適用して、第1の複合パーツ112、スマートサセプタ116及び第2の複合パーツ113によって画定された溶接ジョイント上にガスシールを形成することができる。ツーリング表面103に真空が引かれ、内部ガス圧120が第2の複合パーツ113に対して加圧力を加えることにより、第1の複合パーツ112と第2の複合パーツ113との間のスマートサセプタ116が圧縮される。
【0017】
図1に示すように、磁気誘電コイル102は、第1の複合パーツ112及び第2の複合パーツ113をほぼ包む磁束場122を生成する。幾つかの適用例では、磁束場122は、10アンペアの励起エネルギーを伴う80kHzフィールドであり得る。スマートサセプタ116の高透磁率により、磁束場122の磁束線123はスマートサセプタ116に流れ込む。フェライト粉末108は、磁束場122を集束させ、第1の複合パーツ112及び第2の複合パーツ113に磁束場122が漏洩することを排除する。したがって、
図3に示すように、磁束場122の磁束線123は、埋め込まれたフェライト粉末108及びスマートサセプタ116を通って最も抵抗の少ない磁路を辿る。その結果、磁束場122はスマートサセプタ116内で熱反応を維持し、スパートサセプタ116はそのキュリー点まで加熱される。スマートサセプタ116は、第1の複合パーツ112と第2の複合パーツ113との間の溶接界面における樹脂を加熱し溶解する。磁束場122の磁束線123は、全体を取り囲み、及びスパートサセプタ116の面に平行に配向するため、第1の複合パーツ112及び第2の複合パーツ113の加熱は最小限となり、加熱は、複合パーツ112と第2の複合パーツ113との間の溶接界面に集束、集中又は局所化される。次いで磁気誘導コイル102が停止され、第1の複合パーツ112及び第2の複合パーツ113の冷却が可能となる。溶接界面で溶解した樹脂は固化し、第1の複合パーツ112と第2の複合パーツ113との間で接着を形成する。次いで、第1の複合パーツ112及び第2の複合パーツ113を含む複合構造を熱可塑性溶接ツール101から取り外すことができる。
【0018】
当業者であれば、0.006インチ厚のモリパーマロイのスマートサセプタ116は、華氏670〜680度の温度域内の平衡温度を有する80kHzの磁束場122にさらされたとき、約3分で室温から華氏約670度にまで加熱されることが可能であることを理解するであろう。グラファイト/エポキシ複合パーツ112、113は、同じ磁束場122にさらされたとき、著しく熱くなることはない。この特徴により、熱可塑性複合溶接には薄くて本質的に制御されたサセプタ材料の使用が可能となり、均一又は正確な加熱及び繰返し可能な処理が促進される。
【0019】
次に
図4及び
図5を参照するに、熱可塑性溶接装置100aの代替的な適用例における、該装置の例示的実施形態の断面図が示されている。熱可塑性溶接装置100aの適用例では、複数のスマートサセプタ138を、パーツの間の溶接界面の所望の位置に応じて、熱可塑性溶接ツール101内に選択されたインターバルで、第1の複合パーツ134と第2の複合パーツ135との間に配置することができる。エラストマ材料132などの非導電性材料は、例えば限定しないが、第1の複合パーツ134及び第2の複合パーツ135のそれぞれに隣接して延在することができる。フェライト材料130は、熱可塑性溶接ツール101内のエラストマ材料132のほぼ各側面上に供給することができる。フェライト材料130は、スマートサセプタ108の面と第1の複合パーツ134及び第2の複合パーツ135のそれぞれの面とにほぼ平行な面内に配向することができる。したがって、磁気誘導コイル102が励磁されると、磁束場122(
図5)は、フェライト材料130及びスマートサセプタ138を通って最も磁気抵抗の少ない経路を辿る。スマートサセプタ138は、第1の複合パーツ134及び第2の複合パーツ135を加熱することなく、第1の複合パーツ134と第2の複合パーツ135との間の溶接界面を均一に及び選択的に加熱する。冷却されると、溶接界面における溶解した樹脂が固化してパーツが互いに対して固定され、その後熱可塑性溶接ツール101から第1の複合パーツ134及び第2の複合パーツ135を含む複合構造が取り外される。
【0020】
次に
図6を参照するに、熱可塑性溶接方法の例示的実施形態のフロー
図600が示されている。ブロック602では、成形された複合パーツはネットシェイプにトリミング加工することができる。ブロック604では、熱可塑性溶接によって接合される各複合パーツの間にスマートサセプタを配置することができる。ブロック606では、熱可塑性溶接ツール内に複合パーツ及びサセプタを配置することができる。ブロック608では、ツール内の誘導コイルによって生成された磁束場が、全体を取り囲み、
スマートサセプタの面に平行に配向し、且つ接合される各複合パーツの面に平行に配向するように、ツールの磁気誘導コイルを配列することができる。ブロック610では、テープを複合パーツのジョイント端部の周りに配置することができ、ジョイントに真空を引くことができる。ブロック612では、ツーリング力を複合パーツに対して適用し、溶接加圧力を供給することができる。幾つかの実施形態では、ツーリング力は加圧ガスであってもよい。ブロック614では、誘導コイルを励磁することができる。ブロック616では、複合パーツの間の溶接界面における高分子材料が溶解して溶接部が形成される。ブロック618では、ジョイントを冷却し固化するためにコイルへの電力を停止することができ、複合構造をツールから取り外すことができる。
【0021】
次に
図7及び8を参照するに、本開示の実施形態は、
図7に示す航空機の製造及び保守方法78、及び
図8に示す航空機94に関して使用することができる。製造前の段階では、例示的な方法78は、航空機94の仕様及び設計80と、材料調達82とを含むことができる。製造段階では、航空機94のコンポーネント及びサブアセンブリの製造84と、システムインテグレーション86とが行われる。その後、航空機94は認可及び納品88を経て運航90される。顧客により運航される間に、航空機94は定期的な整備及び保守92(改造、再構成、改修なども含みうる)が予定され得る。
【0022】
方法78の各プロセスは、システムインテグレーター、第三者、及び/又はオペレーター(例えば顧客)によって実施又は実行され得る。本明細書の目的のために、システムインテグレーターは、限定しないが、任意の数の航空機メーカー、及び主要システムの下請業者を含むことができ、第三者は、限定しないが、任意の数のベンダー、下請業者、及び供給業者を含むことができ、オペレーターは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス機関などであり得る。
【0023】
図8に示すように、例示的な方法78によって製造された航空機94は、複数のシステム96及び内装100を有する機体98を含み得る。高レベルのシステム96の例には、推進システム102、電気システム104、油圧システム106、及び環境システム108のうちの一又は複数が含まれる。任意の数の他のシステムが含まれてもよい。航空宇宙産業の例を示したが、本発明の原理は、自動車産業などの他の産業にも適用しうる。
【0024】
本明細書で具現化した装置は、製造及び保守方法78の段階のうちの一又は複数で使用可能である。例えば、製造プロセス84に対応するコンポーネント又はサブアセンブリは、航空機94の運航中に製造されるコンポーネント又はサブアセンブリと同様の方法で作製又は製造されてもよい。また、一又は複数の装置の実施形態は、例えば、航空機94の組立てを実質的に効率化するか、又は航空機94のコストを削減することにより、製造段階84及び86の間に利用することができる。同様に、一又は複数の装置の実施形態を、航空機94の運航中に、例えば限定しないが、整備及び保守92に利用することができる。
【0025】
特定の例示的実施形態に関連して本発明の実施形態を説明したが、これらの特定の実施形態は説明を目的としているのであって、限定を目的とするものではなく、当業者には他の変形例も想起可能であろう。