(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012716
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】乾燥粉末バンコマイシン組成物および関連する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/00 20060101AFI20161011BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20161011BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20161011BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20161011BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20161011BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20161011BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20161011BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20161011BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
A61K37/02
A61P11/00
A61P31/00
A61K9/12
A61K9/51
A61K47/18
A61K47/38
A61K47/10
A61K47/22
【請求項の数】41
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-511611(P2014-511611)
(86)(22)【出願日】2012年5月21日
(65)【公表番号】特表2014-515356(P2014-515356A)
(43)【公表日】2014年6月30日
(86)【国際出願番号】US2012038775
(87)【国際公開番号】WO2012159103
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2015年4月22日
(31)【優先権主張番号】61/487,971
(32)【優先日】2011年5月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513291447
【氏名又は名称】サヴァラ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】ロード,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウヒカイネン,ジャーコ,タネリ
(72)【発明者】
【氏名】スナイダー,ハーマン,イー.
(72)【発明者】
【氏名】ソニ,プラヴィン
(72)【発明者】
【氏名】クオ,メイ−チャン
【審査官】
石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−514664(JP,A)
【文献】
特表2003−513031(JP,A)
【文献】
特開平11−080022(JP,A)
【文献】
特開平03−193735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00−38/58
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/48
A61P 11/00
A61P 31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンコマイシンまたはその医薬上許容される塩と、ロイシンとを含む組成物であり、
ロイシンが前記組成物の約5%〜約20重量%の量で存在し、
バンコマイシンまたはその医薬上許容される塩が前記組成物の約75%〜約95重量%の量で存在し、
前記組成物が乾燥粉末であり、
前記乾燥粉末が実質的に無定形である、
組成物。
【請求項2】
前記医薬上許容される塩がバンコマイシン塩酸塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ロイシンが前記組成物の約10重量%の量で存在し、
前記バンコマイシンまたはその医薬上許容される塩が前記組成物の約90重量%の量で存在する、
請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
さらに糖質充填剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記糖質充填剤が、ラクトース、マンニトール、トレハロース、ラフィノース、およびマルトデキストリンからなる群より選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記糖質充填剤がトレハロースである、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記乾燥粉末が、約10μm以下の空気力学的質量中位径を有する粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記乾燥粉末が、約10μm以上の空気力学的質量中位径を有する粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記粒子の少なくとも95%が約10μm未満の空気力学的質量中位径を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記乾燥粉末が、約1μm以上かつ5μm以下の空気力学的質量中位径を有する粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記乾燥粉末がカプセルに封入されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記カプセルがヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記乾燥粉末が約10重量%水未満の水分量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記乾燥粉末が約7重量%水未満の水分量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記乾燥粉末が約0.4g/cm3を上回るタップ密度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記乾燥粉末が約0.4g/cm3を上回るタップ密度を有し;
バンコマイシンまたは医薬上許容されるその塩が前記組成物の約90重量%の量で存在し;かつ
ロイシンが前記組成物の約10重量%の量で存在する、
請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
1時間〜3時間の中位Tmax値を与える、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
1時間以上の中位Tmax値を与える、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
30分以上の中位Tmax値を与える、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
6時間以下の中位Tmax値を与える、請求項16に記載の組成物。
【請求項21】
約n×620ng/mL[式中、nは0.01〜10の値であり、バンコマイシンの用量が80mgである場合に、nは1である]の約50%〜約150%の範囲内にあるバンコマイシンの平均最大血漿中濃度(Cmax)を与える、請求項16に記載の組成物。
【請求項22】
6時間を上回る中位t1/2値を与える、請求項16に記載の組成物。
【請求項23】
約8時間の中位t1/2値を与える、請求項16に記載の組成物。
【請求項24】
前記乾燥粉末組成物が40%以上の送達効率を与える、請求項16に記載の組成物。
【請求項25】
前記乾燥粉末組成物が60%以上の送達効率を与える、請求項16に記載の組成物。
【請求項26】
前記乾燥粉末組成物が40%以上の絶対的バイオアベイラビリティを与える、請求項16に記載の組成物。
【請求項27】
前記バンコマイシンまたは前記医薬上許容されるその塩が前記乾燥粉末組成物中に約80mgの量で存在し、前記乾燥粉末組成物が
約620ng/mLの約50%〜約150%の範囲内にあるバンコマイシンの平均最大血漿中濃度(Cmax);
約6,250ng時/mLの約50%〜約150%の範囲内にある平均AUC0−24h値;および
約0.75時間〜約3時間の範囲内にある中位Tmax値
を与え、前記バンコマイシンの最大血漿中濃度、前記AUC0−24h値、および前記Tmax値が、前記乾燥粉末組成物の単回経肺投与後に測定される、請求項16に記載の組成物。
【請求項28】
前記バンコマイシンまたは前記医薬上許容されるその塩が前記乾燥粉末組成物中に約n×80mgの量で存在し、前記乾燥粉末組成物が
約n×620ng/mLの約50%〜約150%の範囲内にあるバンコマイシンの平均最大血漿中濃度(Cmax);
約n×6,250ng時/mLの約50%〜約150%の範囲内にある平均AUC0−24h値;および
約0.5〜約6時間の範囲内にある中位Tmax値
を与え、前記バンコマイシンの最大血漿中濃度、前記AUC0−24h値、および前記Tmax値が、前記乾燥粉末組成物の単回経肺投与後に測定され、
nが0.01〜10の値である、請求項16に記載の組成物。
【請求項29】
前記バンコマイシンまたは前記医薬上許容されるその塩が前記乾燥粉末組成物中に約n×80mgの量で存在し、前記乾燥粉末組成物が
約n×620ng/mLの約50%〜約150%の範囲内にあるバンコマイシンの平均最大血漿中濃度(Cmax);
約n×6,250ng時/mLの約50%〜約150%の範囲内にある平均AUC0−24h値;および
約0.5〜約6時間の範囲内にある中位Tmax値
を与え、前記バンコマイシンの最大血漿中濃度、前記AUC0−24h値、および前記Tmax値が、前記乾燥粉末組成物の単回経肺投与後に測定され、
nが0.01〜10の値である、請求項16に記載の組成物。
【請求項30】
バンコマイシンまたはその医薬上許容される塩と疎水性アミノ酸とを含む水性組成物を噴霧乾燥して乾燥粉末組成物を形成させることを含む方法であって、
ロイシンが前記水性組成物の約5%〜約20重量%の量で存在し、
バンコマイシンまたはその医薬上許容される塩が前記水性組成物の約75%〜約95重量%の量で存在する、
方法。
【請求項31】
前記乾燥粉末組成物が実質的に無定形である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
バンコマイシンまたはその医薬上許容される塩を含む前記水性組成物が少なくとも1重量%水の固形分を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
バンコマイシンまたはその医薬上許容される塩を含む前記水性組成物が少なくとも2重量%水の固形分を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
バンコマイシンまたはその医薬上許容される塩を含む前記水性組成物が少なくとも4重量%水の固形分を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
30分以上の中位Tmax値を与える、請求項1に記載の組成物。
【請求項36】
6時間以下の中位Tmax値を与える、請求項1に記載の組成物。
【請求項37】
約n×620ng/mL[式中、nは0.01〜10の値であり、バンコマイシンの用量が80mgである場合に、nは1である]の約50%〜約150%の範囲内にあるバンコマイシンの平均最大血漿中濃度(Cmax)を与える、請求項1に記載の組成物。
【請求項38】
6時間を上回る中位t1/2値を与える、請求項1に記載の組成物。
【請求項39】
前記乾燥粉末組成物が40%以上の送達効率を与える、請求項1に記載の組成物。
【請求項40】
前記乾燥粉末組成物が40%以上の絶対的バイオアベイラビリティを与える、請求項1に記載の組成物。
【請求項41】
前記バンコマイシンまたは前記医薬上許容されるその塩が前記乾燥粉末組成物中に約n×80mgの量で存在し、前記乾燥粉末組成物が
約n×620ng/mLの約50%〜約150%の範囲内にあるバンコマイシンの平均最大血漿中濃度(Cmax);
約n×6,250ng時/mLの約50%〜約150%の範囲内にある平均AUC0−24h値;および
約0.5〜約6時間の範囲内にある中位Tmax値
を与え、前記バンコマイシンの最大血漿中濃度、前記AUC0−24h値、および前記Tmax値が、乾燥粉末組成物の単回経肺投与後に測定され、
nが0.01〜10の値である、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照により本明細書に組み込まれる、2011年5月19日に出願された米国特許出願第61/487,971号に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
バンコマイシンは、グラム陽性細菌によって引き起こされる感染症の予防および処置に使用される糖ペプチド抗生物質である。バンコマイシンは、次式の化合物に対応する国際一般名(INN)である。
【0003】
【化1】
【0004】
バンコマイシンはグラム陽性細菌における適正な細胞壁合成を阻害することによって作用すると提唱されている。より具体的に述べると、バンコマイシンは、グラム陽性細胞壁の主要構造構成要素を形成するペプチドグリカンマトリックスへのN−アセチルムラミン酸(NAM)およびN−アセチルグルコサミン(NAG)グリカンサブユニットの組み込みを妨げると考えられている。NAM/NAGペプチドの末端D−アラニル−D−アラニン部分へのバンコマイシンの結合は、ペプチドグリカンマトリックスへのそれらの組み込みを妨げる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バンコマイシンは、全身療法用に静脈内投与されると共に、偽膜性大腸炎の処置においては経口投与されてきた。またバンコマイシンは、上下気道のさまざまな感染症の処置にも、霧化されたエアロゾルの形で適応外使用されてきた。しかし、承認薬の適応外での使用は、安全性と効力が研究されていないこと、および/または適当な用量が与えられないかもしれないことから、患者を危険にさらす可能性がある。さらにまた、霧化による送達は長ければ20分を要する場合もあり、これは患者にとってかなりの負担である。現在、市販の乾燥粉末吸入可能型のバンコマイシンは知られていない。
【0006】
本開示は、概して、乾燥粉末組成物ならびにそのような組成物の投与および調製方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態において、本開示は、乾燥粉末である、バンコマイシンまたはその医薬上許容される塩を含む組成物を提供する。
【0008】
もう一つの実施形態において、本開示は、バンコマイシンまたはその医薬上許容される塩を含む乾燥粉末組成物を経肺投与によって対象に投与することを含む方法も提供する。
【0009】
さらにもう一つの実施形態において、本開示は、バンコマイシンまたはその医薬上許容される塩と疎水性アミノ酸とを含む水性組成物を、乾燥粉末組成物が形成されるように噴霧乾燥することを含む方法を提供する。
【0010】
本発明の特徴および利点は当業者には明白になるであろう。当業者は数多くの変更を加えることができるが、そのような変更は本発明の本旨に含まれる。
【0011】
本開示のいくつかの具体的な実施形態例は、ひとつには、以下の説明と添付の図面を参照することによって理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】アンダーセンカスケードインパクター(Andersen Cascade Impactor)とモノドーズ(Monodose)RS01モデル7吸入器とを使って測定された乾燥粉末バンコマイシン組成物(ロットSA010)の空気力学的粒子径分布を表すグラフである。
【
図2】ファストスクリーニングインパクター(fast screening impactor)とモノドーズRS01モデル7吸入器とを使って測定された乾燥粉末バンコマイシン組成物(ロットSA002、SA006、SA007、SA008およびSA009)の送達効率に対するロイシン含量の効果を表すグラフである。噴出量(%)は、吸入器を出る乾燥粉末中の薬物の量を、カプセル中に存在する乾燥粉末中の薬物の初期量の百分率として表したものである。微細粒子画分(%)は、5μm未満の空気力学的サイズを有する乾燥粉末中の薬物の量を、噴出量の百分率として表したものである。送達効率(%)は、5μm未満の空気力学的直径を有する乾燥粉末中の薬物の量を、カプセル中の薬物の初期量の百分率として表したものである。
【
図3】走査型電子顕微鏡を使って得られた実験室規模の乾燥粉末バンコマイシン粒子(ロットSA010)の画像である。
【
図4】アンダーセンカスケードインパクターとモノドーズRS01モデル7吸入器とを使って測定された、25℃および相対湿度(RH)60%で最長6ヶ月間にわたって貯蔵した乾燥粉末バンコマイシン組成物(ロットSA010)の空気力学的粒子径分布を表すグラフである。
【
図5】最長6ヶ月間にわたる3つの異なる安定性条件下での、モノドーズRS01モデル7吸入器を使った10回連続作動の噴出量含量均一性を、±20%のFDAドラフトガイダンスの仕様限度と比較して表したグラフである(ロットSA010)。
【
図6】ネクストジェネレーションインパクター(Next Generation Impactor)を試用し、100L/分で2.4秒間(4Lに相当)にわたって試験した、3つのモノドーズRS01モデル7吸入器から測定された、本開示の乾燥粉末バンコマイシン組成物(ロットG−11−26−1)の空気力学的粒子径分布を表すグラフである。
【
図7】ロットG−11−26−1について100L/分で2.4秒間(4Lに相当)にわたって試験した10個のモノドーズRS01モデル7吸入器間での噴出量含量均一性を表すグラフである。±20%および±25%はFDAドラフトガイダンスの限度を表す。
【
図8】50℃で4週間の本開示の乾燥粉末バンコマイシン組成物の化学安定性に対するトレハロース濃度の効果を表すグラフである。
【
図9】10%ロイシンを含有する乾燥粉末バンコマイシン組成物の2つのロットの比較を表すグラフである。一方はAPI変更も工程変更も含まず(ロットSA010)、他方は、より純粋なAPI源を有し、窒素下で加工され、光から保護するための事前措置が講じられ、粉末組成物中の含水量が低かった(ロットG−11−026−1)。
【
図10】走査型電子顕微鏡を使って得られたパイロット規模の乾燥粉末バンコマイシン粒子(ロット19SA01.HQ00005)の画像である。
【
図11】バンコマイシン乾燥粉末組成物(ロットG−11−026−1)の1回量投与後またはバンコマイシンの静脈内投与後の時間の関数としての血漿中濃度を表すグラフ(片対数)である(吸入バンコマイシン用量16mg、丸;吸入バンコマイシン用量32mg、三角;吸入バンコマイシン用量80mg、四角;静脈内注入60分間で250mg、丸と実線)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示にはさまざまな変更および代替的形態の余地があるが、具体的実施形態例を図面に示し、本明細書においてさらに詳しく説明する。ただし、具体的実施形態例の説明は、本発明を、開示する特定の形態に限定しようとするものではなく、それどころか、この開示は、添付の特許請求の範囲によって部分的に例示する変更態様および均等物のすべてをカバーするものであると理解すべきである。
【0014】
本開示は、概して、乾燥粉末バンコマイシン組成物ならびにそのような組成物の投与および調製方法に関する。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、対象における細菌感染症を処置および/または防止するのに有効な量で、対象に経肺投与によって投与することができる。本開示の組成物の有効量の投与は、対象の気道および/または肺の細菌感染症を伴う肺炎、嚢胞性線維症、気管支拡張症、または他の慢性肺疾患を患っている対象において、グラム陽性細菌感染症を処置するのに、とりわけ有用でありうる。
【0015】
一実施形態において、本開示の組成物は、バンコマイシンまたはその医薬上許容される塩を含む乾燥粉末である。本明細書において使用する用語バンコマイシンは、バンコマイシンの類似体および誘導体を包含する。本明細書において使用する用語「乾燥」は、組成物が、吸入装置において粒子が容易に分散してエアロゾルを形成するような水分量を有することを意味する。いくつかの実施形態において、この水分量は、約10重量%水未満(below about 10% by weight water)、約7重量%水未満、約5重量%水未満または約3重量%水未満でありうる。さらにまた、本明細書において使用する用語「粉末」は、粒子が肺に到達して上下気道への侵入を許すように、吸入装置における容易な分散とそれに続く対象による吸入とが可能な微細分散固体粒子からなる組成物を意味する。したがって粉末は「吸入性」であると言われる。いくつかの実施形態において、本開示の乾燥粉末組成物は、約0.4g/cm
3を上回る、約0.45g/cm
3を上回る、または約0.5g/cm
3を上回るタップ密度を有しうる。この開示に含まれる説明では主にバンコマイシンが使用されるであろうが、本開示は、一定のグラム陽性感染症を処置するために、他の任意の糖ペプチド抗生物質(例えばバンコマイシン、テイコプラニン、テラバンシン、ブレオマイシン、ラモプラニン、およびデカプラニン)ならびにその誘導体および類似体などを使って実施しうることを理解すべきである。
【0016】
一定の具体的実施形態において、本開示の乾燥粉末組成物は、組成物の約90重量%の量で存在するバンコマイシンまたはその医薬上許容される塩を含み、粉末は約0.4g/cm
3を上回るタップ密度を有し、さらに、組成物の約10重量%の量でロイシンを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、本開示の乾燥粉末組成物は、空気力学的質量中位径(MMAD)(カスケードインパクションを使って測定されるもの)によって定義される直径が約10ミクロン(μm)以下の平均粒子径を有する粒子を含みうる。いくつかの実施形態では、粒子の少なくとも95%が約10μm未満のMMADを有する。いくつかの実施形態では、直径が約7μm以下でありうる。別の実施形態では、直径が約5μm以下でありうる。一定の具体的実施形態において、直径は約0.5μm〜約5μm、特に約1μm〜約3μmでありうる。直径が約10μm以下の平均粒子径を有する粒子を含む本開示の乾燥粉末組成物は、経口吸入装置による送達にとりわけ有用でありうる。
【0018】
別の実施形態において、本開示の乾燥粉末組成物は、MMAD(カスケードインパクションを使って測定されるもの)によって定義される直径が約10μm以上の平均粒子径を有する粒子を含みうる。いくつかの実施形態では、粒子の少なくとも95%が、約10μmを上回るMMADを有する。一定の具体的実施形態では、粒子径が直径約10μm〜約50μm、特に約20μm〜約40μmでありうる。直径が約10μm以上の平均粒子径を有する粒子を含む本開示の乾燥粉末組成物は、経鼻送達にとりわけ有用でありうる。
【0019】
いくつかの実施形態において、粒子は中空でありうる。いくつかの実施形態において、粒子は多孔性でありうる。いくつかの実施形態において、粒子はスフェロイド状の分布を有することができ、それは比較的均一でありうる。いくつかの実施形態では、微生物活性によって測定されるバンコマイシン力価が、製剤化されていない薬物と比較して、実質上変化しない(すなわち薬物の5%以内)。
【0020】
本開示における使用に適したバンコマイシンまたはその医薬上許容される塩は、一般に、さまざまな販売業者から入手することができる。バンコマイシンの適切な医薬上許容される塩の例には、バンコマイシン塩酸塩、バンコマイシン硫酸塩などがあるが、これらに限るわけではない。
【0021】
いくつかの実施形態では、バンコマイシンまたはその医薬上許容される塩に加えて、本開示の組成物は、1つまたは複数の添加剤をさらに含みうる。適切な添加剤の一例として疎水性アミノ酸が挙げられる。そのような疎水性アミノ酸には、トリプトファン、チロシン、ロイシン、トリロイシンおよびフェニルアラニンを含めることができるが、これらに限るわけではない。いくつかの実施形態では、組成物の物理的安定性および/または分散性を改良し、バンコマイシンまたは医薬上許容されるその塩の化学安定性を改良し、かつ/またはバンコマイシンおよびその塩の苦味を遮蔽することによって組成物の味を改変し、かつ/または組成物が肺から体循環に吸収される速度を改変する(例えば加速または減速する)ために、本開示の組成物に疎水性アミノ酸を含めることが望ましいであろう。いかなる特定理論にも束縛されることは望まないが、現時点では、疎水性アミノ酸添加物は粒子の表面にとどまって、粒子を水分と光から保護し、それによって製剤の安定性を増加させると考えられている。
【0022】
適切な添加剤のもう一つの例として糖質充填剤が挙げられる。そのような糖質充填剤には、ラクトース、マンニトール、トレハロース、ラフィノース、およびマルトデキストリンを含めることができるが、これらに限るわけではない。いくつかの実施形態では、組成物の物理的安定性を改良するために、本開示の組成物に糖質充填剤を含めることが望ましいであろう。さらにまた、いくつかの実施形態では、糖質充填剤が、バンコマイシンまたはその医薬上許容される塩の化学安定性も改良しうる。当業者に知られている他の添加剤も含めることができる。
【0023】
一般に、本開示の組成物における使用に適した添加剤は、組成物の約50重量%以下、組成物の30重量%以下、または組成物の10重量%以下の量で含めることができる。別の実施形態では、本開示の組成物における使用に適した添加剤を、組成物の約10重量%〜約30重量%の量で含めることができる。別の実施形態では、本開示の組成物における使用に適した添加剤を、組成物の約10重量%〜約20重量%の量で含めることができる。
【0024】
本開示の組成物は、さらに、医薬上許容される補助物質または佐剤、例えば限定するわけではないが、pH調節・緩衝剤および/または張性調節剤、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどを含んでもよい。ロイシンにはpHも調整するという二重の利益がある。同様に、本開示の組成物は、例えばマイクロスフェア、マイクロカプセル、ナノ粒子などといった、医薬上許容される担体および賦形剤を含有しうる。
【0025】
一定の実施形態では、乾燥粉末組成物を再構成することができ、その結果生じる再構成時の粉末は、3.0を上回る、好ましくは3.5を上回る、最も好ましくは4.0を上回るpHを有しうる。
【0026】
先に述べたように、有効量の乾燥粉末バンコマイシン組成物の投与は、例えば限定するわけではないが、グラム陽性細菌感染症を伴う肺炎および嚢胞性線維症、および/またはバンコマイシンもしくはその誘導体に対して感受性の細菌または他の病原体による気道および/または肺実質のコロニー形成などといった状態の症状を軽減しかつ/または前記状態を患っている対象を処置するのに、とりわけ有用でありうる。他の状態には、気管支炎、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、細気管支炎、閉塞性細気管支炎、閉塞性細気管支炎性器質化肺炎(BOOP)、任意の原因の肺炎、例えば限定するわけではないが、市中感染性肺炎、院内肺炎および人工呼吸器関連肺炎(VAP)などを含めることができるが、これらに限るわけではない。グラム陽性細菌感染症の例として、肺炎レンサ球菌、およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌を含む黄色ブドウ球菌を挙げることができるが、これらに限るわけではない。
【0027】
当業者には理解されるであろうとおり、特定の状態または疾患状況を処置するのに必要な有効量は、病原体、個体、状態、処置の長さ、処置の規則正しさ、使用するバンコマイシンのタイプ、その他の因子に依存するであろうが、当業者であれば容易に決定することができる。患者は、適当な量の組成物を吸入することによって、望ましい投薬を達成することができる。
【0028】
本開示の乾燥粉末組成物は、粒子が肺に到達して上下気道への侵入を許すように、乾燥粉末組成物の固体粒子が対象によって吸入されうる限り、任意の手段によって対象に送達することができる。一定の実施形態において、本開示の乾燥粉末組成物は、適切な投薬量受器内に十分な量の乾燥粉末を入れることによって、対象に送達することができる。適切な投薬量受器には、リザーバー装置(例えば1回分より多い用量を含有する装置であって、装置自体が用量を計量するもの)または工場で計量済みの投与装置(factory-metered dose devices)(例えば各用量が単一単位または複数単位に含まれている装置)に使用されるものが含まれる。ある例において、適切なリザーバー装置は、エアロゾルを形成させるためのガス流への分散による乾燥粉末組成物のエアロゾル化と、次に、そうして生じさせたエアロゾルを、処置を必要とする対象が引き続いて吸入するために取り付けられたマウスピースから送達することとを可能にするための、適切な吸入装置内に適合する投薬量受器を有しうる。そのような投薬量受器には、当技術分野で知られている、組成物を封入する任意の容器、例えばゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはプラスチックカプセルなどであって、切り取るか穴を開けることができる除去可能な部分または本体を持ち、乾燥粉末組成物の(例えば容器内に向けられたガス流および遠心力による)分散を可能にするものが含まれる。そのような容器は、1980年10月14日に発行された米国特許第4,227,522号;1980年3月11日に発行された米国特許第4,192,309号;および1978年8月8日に発行された米国特許第4,105,027号に示されているものなどによって例示される。適切な容器には、グラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithKline)のベントリン・ロタヘラー(Ventolin Rotahaler)ブランド粉末吸入器またはファイソン(Fisons)のスピンヘラー(Spinhaler)ブランド粉末吸入器と併せて使用されるものも含まれる。優れた防湿層を提供するもう一つの適切な1回量容器は、アルミニウム箔プラスチック積層物から形成される。粉末組成物は、成形可能な箔の凹みに重量でまたは体積で充填され、被覆用の箔−プラスチック積層物で密封される。粉末吸入装置と共に使用するためのそのような容器は、米国特許第4,778,054号に記載されており、グラクソ・スミスクラインのディスクヘラー(Diskhaler)と共に使用されている(米国特許第4,627,432号;同第4,811,731号;および同第5,035,237号)。これらの参考文献はすべて参照により本明細書に組み込まれる。別の実施形態では、本開示の乾燥粉末組成物を、気管チューブを通して対象に送達することができる。
【0029】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、バンコマイシンまたはその塩と医薬上許容される担体との水性混合物を、吸入性乾燥粉末組成物を与えるのに十分な条件下で噴霧乾燥することによって、調製することができる。いくつかの実施形態では、乾燥粉末組成物が実質的に無定形である。
【0030】
一般論として、噴霧乾燥は、バンコマイシンまたはその塩と担体との均質な水性混合物をノズル(例えば二流体ノズル)、回転円板または均等な装置を通して熱ガス流中に導入することで溶液を微粒化し、それによって微細液滴を形成させ、次にその微細液滴を熱ガス流中に混合するプロセスである。水性混合物は、溶液、懸濁液、スラリーなどでありうるが、混合物中の構成要素の、そして最終的には粉末化された組成物の、均一な分布を保証するために、均質であるべきである。好ましくは水性混合物は溶液である。いくつかの実施形態において、水性混合物は、少なくとも1重量%水の固形分(a solids content of at least 1% by weight water)を有しうる。別の実施形態において、水性混合物は、少なくとも2重量%水の固形分を有しうる。別の実施形態において、水性混合物は、少なくとも4重量%水の固形分を有しうる。溶媒(一般的には水は)、液滴から容易に蒸発して、直径1〜5μmの粒子を有する微細乾燥粉末を生じる。
【0031】
いくつかの実施形態において、噴霧乾燥は、吸入性である粒子径、低い水分量および容易なエアロゾル化を可能にする特徴を有する均質な構成の実質的に無定形の粉末をもたらす条件下で行われる。いくつかの実施形態において、結果として生じる粉末の粒子径は、質量の約95%を超える部分が、約10μm以下の直径を有する粒子になるようなものである。
【0032】
噴霧プロセスには、回転微粒化、加圧微粒化および二流体微粒化などといった噴霧方法を使用することができる。適切な装置の例は、米国特許第6,372,258号に開示されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
あるいは、国際公開第91/16038号(この文献の開示は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている凍結乾燥およびジェットミリングなどといった、他のプロセスによって乾燥粉末組成物を調製することもできる。
【0034】
本開示の乾燥粉末バンコマイシン組成物の、例えば貯蔵性および安定性などを改良するには、いくつかの製剤戦略および加工戦略が役立ちうる。一定の実施形態では、使用するバンコマイシンを、より高純度のものになるように選択することができる。別の実施形態では、バンコマイシンの酸化を避けるための措置を講じることができる。例えば、組成物の加工および包装を窒素下で行うことができる。同様に、いくつかの実施形態では、直接光への曝露が最小限に抑えられるように、加工および包装を行うことができる。そのような工程は光によるバンコマイシンの分解を減少させうる。いくつかの実施形態では、組成物中の水分の量を減少させるための措置を講じることができる。そのような工程は、バンコマイシンの加水分解、脱アミド、および酸化を避けるのに役立ちうる。上述のように、糖質充填剤を組成物に加えてもよく、これも化学安定性を改良しうる。
【0035】
さらにまた、本開示の乾燥粉末バンコマイシン組成物は多くの有利な特性を有するが、一定の実施形態において、とりわけ有利な特性の一つは、本組成物が、肺内で持続的に高濃度のバンコマイシンを与え、それによって標的病原体の最小阻害濃度を超えている時間を増加させうるので、バンコマイシンなどの時間依存性殺細菌抗生物質の抗細菌効力にとって有利な薬物動態プロファイルを有しうることである。
【0036】
例えば、一定の実施形態において、対象への乾燥粉末バンコマイシン組成物の投与後に、対象の血漿中レベルがそれぞれのバンコマイシンの最大濃度に達するのに必要な時間(T
max)の中位値は、約30分以上、約1時間以上、または約6時間以下でありうる。いくつかの実施形態において、T
maxは約1時間〜約3時間でありうる。同様に、一定の実施形態において、血漿中レベルがバンコマイシンの総最大濃度の半分まで減少するのに必要な時間(t
1/2)の中位値は、6時間を上回りうる。いくつかの実施形態において、t
1/2は約8時間でありうる。
【0037】
一定の実施形態において、対象への乾燥粉末バンコマイシン組成物の投与後、バンコマイシンの平均最大血漿中濃度(C
max)は、約n×620ng/mL[式中、nは、掛けるべき係数を表し、0.01〜10の値であることができ、n=1の場合、用量は80mgである]の約50%〜約150%の範囲内にありうる。
【0038】
バンコマイシンまたは医薬上許容されるその塩が約80mgの量で存在する一特定実施形態において、乾燥粉末組成物は、単回経肺投与後の測定で、約620ng/mLの約50%〜約150%の範囲内にあるバンコマイシンの平均最大血漿中濃度、約6,250ng時/mLの約50%〜約150%の範囲内にある平均AUC
0−24h、および約0.75時間〜3時間の範囲内にある中位T
max値を与えうる。当業者には理解されるであろうとおり、80mgより低いまたは高い濃度のバンコマイシンを含有する乾燥粉末組成物については、上記の範囲を、その用量により、正比例的に調節することができる。したがって一定の実施形態において、本開示は、バンコマイシンまたは医薬上許容されるその塩が約n×80mgの量で乾燥粉末組成物中に存在し、乾燥粉末組成物が、約n×620ng/mLの約50%〜約150%の範囲内にあるバンコマイシンの平均最大血漿中濃度(C
max);約n×6,250ng時/mLの約50%〜約150%の範囲内にある平均AUC
0−24h値;および約0.5時間〜約6時間の範囲内にある中位T
max値を与える組成物(ここで、バンコマイシンの最大血漿中濃度、AUC
0−24h値、およびT
max値は、乾燥粉末組成物の単回経肺投与後に測定され、nは、掛けるべき係数を表し、0.01〜10の値でありうる)も提供する。
【0039】
いくつかの実施形態において、本開示の乾燥粉末バンコマイシン組成物は、40%以上の送達効率を与えうる。別の実施形態では、本開示の乾燥粉末バンコマイシン組成物は、60%以上の送達効率を与えうる。送達効率(%)は、5μm未満の空気力学的直径を有する乾燥粉末の量を、カプセル中の乾燥粉末の初期量の百分率として表したものである。送達効率は、噴出量(%)(すなわち吸入器を出る乾燥粉末の量をカプセル中に存在する乾燥粉末の初期量の百分率として表したもの)に、微細粒子画分(%)(すなわち吸入性量または5μm以下の空気力学的質量中位径(MMAD)を有する乾燥粉末の量を噴出量の百分率として表したもの)を掛けたものである。
【0040】
いくつかの実施形態において、本開示の乾燥粉末バンコマイシン組成物は、40%以上の絶対的バイオアベイラビリティを与えうる。絶対的バイオアベイラビリティは、バンコマイシン組成物投与後のバンコマイシンのAUC
0−infを、静脈内投与後のバンコマイシンのAUC
0−infで割り、用量について調節したものとして算出される。
【0041】
本発明のより良い理解が容易になるように、いくつかの実施形態の一定の局面の例を以下に記載する。決して、以下の実施例が本発明の範囲全体を限定または規定すると解釈してはならない。
【0042】
(実施例1)
乾燥粉末バンコマイシン組成物は、ブーヒ(Buchi)実験室用噴霧乾燥器により、高収率(75〜95%)かつ2つの異なるバッチサイズ(1gおよび20g)で、純度の損失を伴わずに生産された。これらの粉末は非常に高い送達効率とロット間での一貫性を示した。
【0043】
20gバッチについての全空気力学的粒子径分布を
図1に図示するが、これは、粒子径分布の大部分が5μm未満であること、およびかなりの比率(約59%)が肺深部送達を予示する超微細粒子画分(3μm)内にあることを示している。
【0044】
初期の研究により、バンコマイシン粉末の噴出量含量均一性は、エアロゾル量含量均一性に関するFDAドラフトガイダンスの仕様を容易に満たすことが明らかになった。これは、過去10年間、肺薬物送達産業が直面してきた最大の難題の一つであった。仕様書は、ラベル表示の±20%の範囲外にあるものが、10回の作動のうち1回を上回ってはならず、ラベル表示の±25%の範囲外になる作動があってはならないと述べている。
【0045】
いくつかの実施形態では、少量のロイシンの添加によって、乾燥粉末バンコマイシン組成物の送達効率を改良することができる(
図2)。バンコマイシン粉末へのロイシンの添加は粉末の含水量と空気力学的質量中位径を有意に低下させる。加えて、ロイシンの添加は、より生理的に許容されうるpH値を有する粉末をもたらす。粉末の含水量、粒子径および再構成時のpHに対するロイシン濃度の効果については下記表1を参照されたい。
【0047】
乾燥粉末バンコマイシン組成物の一例を製造するためのプロトコール
溶液調製
バッチ処方の一例を表2に含める。ロイシンの標的質量をビーカーに量り取る。必要な質量の脱イオン水を加え、磁気撹拌子を使って混合する。次に、バンコマイシン塩酸塩を加え、その溶液を、見かけ上透明になるまで1.0〜1.5時間撹拌する。供給材料溶液は噴霧乾燥の直前に調製する。溶液濃度は約4%w/w総溶解固形分である。
【0049】
加工手順
高効率サイクロンを有する卓上噴霧乾燥システム(ブーヒ・モデル191)を使って、粉末を生成させ、収集する。19gバッチサイズの場合は、粉末を、4回のサイクロン粉末収集イベントにわけてプロセス流から回収する方が好都合である。脱イオン水を使って平衡乾燥条件を確立する。定常運転が得られたら、ノズル投入口を供給材料溶液に切り替える。溶液を、溶液の四分の一が利用されるまで乾燥器に供給した後、システムを清掃するために約5分間にわたってノズルを水に戻す。次に、収集器の取り替えが可能なように乾燥器を瞬間的に停止し、直ちに再始動させ、水でラインアウトしてから、溶液の供給を再開する。
【0050】
充填済みの収集器は、室内の湿気への曝露を最小限に抑えるために、取り外したら素速く蓋をする。次に各収集器を、低湿度乾燥グローブボックス内で個別のガラス製試料バイアルに移し、バイアルの全セットを乾燥剤と共にアルミニウムパウチに包装して、ヒートシールする。
【0051】
図3に、ロットSA010からのバンコマイシン−ロイシン粉末製剤の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図示する。
【0052】
乾燥粉末バンコマイシン組成物の安定性
ロットSA010で行った6ヶ月安定性試験からの結果は、エアロゾル粒子径分布が時間と共に変化しないことを示している(
図4)。同様に、噴出量も変化せず、平均の±20%というFDAドラフトガイダンスの限度内にとどまっている(
図5)。この初期研究からの化学安定性により、冷蔵貯蔵を必要とするであろう組成物が予想された。
【0053】
(実施例2)
上述のように、いくつかの実施形態では、噴霧乾燥法を使って本開示の乾燥粉末バンコマイシン組成物を調製することができる。そのような方法は、非常に効率的であり、優れたバッチ間一貫性を示すことが判明している。
【0054】
下記表3に、噴霧乾燥法を使って調製された25g〜100gの範囲にわたるバッチサイズに関する収率、一次粒子径および含水量データを示す。X
10、X
50およびX
90は、分布の10%、50%および90%がそれより小さい質量直径の粒子である。ND=未決定。
【0055】
また、ロットG−11−26−1に関する全空気力学的粒子径分布を
図6に含めるが、これは、粒子径分布の大部分が5μm未満であること(85%)、およびかなりの比率(約70%)が肺深部送達を予示する超微細粒子画分(<3μm)内にあることを示している。
【0057】
図7は、ロットG−11−26−1に関する噴出量含量均一性が、エアロゾル用量含量均一性に関するFDAドラフトガイダンスの仕様(すなわち、ラベル表示の±20%の範囲外にあるものが、10回の作動のうち1回を上回ってはならず、ラベル表示の±25%の範囲外になる作動があってはならない)を満たしていることを示している。
【0058】
安定性
ロットG−11−026−1に関する6ヶ月安定性試験の要約を表4に含める。
【0060】
(実施例3)
バンコマイシン−ロイシン製剤に糖質充填剤を含めた。この製剤の化学安定性を50℃で4週間調べた。
図8は、糖質充填剤(例えばトレハロース)の添加によって本開示の乾燥粉末バンコマイシン組成物の化学安定性を改良できることを示している。
【0061】
10%ロイシンを含有するバンコマイシン組成物の2つのロットを比較した。一方のロットは工程変更を含まず(ロットSA010)、他方は、窒素下で加工され、光から保護され、水分から保護された(ロットG−11−026−1)。
図9に示すとおり、これらの変更は、バンコマイシンの分解を有意に遅延させた。実際、データの外挿により、組成物は少なくとも2年間は室温安定であることが示唆される。
【0062】
(実施例4)
粉末生産プロセスを、実験室規模からパイロット規模の設備へとスケールアップすることに成功した。このプロセスでは、1日あたり最大1,000gの粉末を、純度の損失を伴わずに、高い収率(75%)で生産することができる。
【0063】
図10に、ニーロ・モバイル・マイナー(Niro Mobile Minor)「2000」噴霧乾燥器で製作された1,000gロット(ロット19SA01.HQ00005)からの粒子のSEM像を図示する。
【0064】
下記表5に、2つのスケールアップロットからの粉末試験データを示す。表6には、ロット19SA01.HQ00002について、対応する最終製品試験結果を示す。
【0067】
(実施例5)
18人の健常ボランティアにおける乾燥粉末バンコマイシン組成物(ロットG−11−062−1)の単回投与後に、緩慢な吸収相とそれに続く排出相とが観察された。吸入バンコマイシン組成物および静脈内バンコマイシンの1回量投与後の主要薬物動態パラメータを表7に示す。24時間にわたる対応する平均血漿中濃度曲線を
図11に示す。AUC
0−tは、線形台形公式によって算出された最終測定可能時点(24時間)までの血漿中濃度時間曲線下面積を指す。AUC
0−infは、無限大時間までの濃度時間曲線下面積を指す。C
maxはバンコマイシンの最大血漿中濃度を指し、T
maxは、バンコマイシンの最大血漿中レベルに達するのに必要な時間の量を指し、t
1/2は、片対数薬物濃度時間曲線の終末相の傾き(K
el)に関連する消失半減期を指し、0.693/K
elと計算される。
【0069】
中位T
max値はすべての用量で1時間を上回り、肺からのバンコマイシンの遅い吸収を示している。用量を増加させるとT
maxが短くなる傾向がわずかにあった(16mg:2時間(範囲1〜3時間);32mg:1.5時間(範囲1〜3時間);80mg:1.25時間(範囲1〜2時間))。観察されたT
max値は、吸入抗生物質粉末で先に公表された結果に基づく予想より、かなり高かった(トビ・パッドヘラー(TOBI Podhaler)処方情報、28mg〜112mgの範囲にわたるすべての被験用量で1時間のT
max)。バンコマイシンのC
maxは、16mg〜80mgにおいて、用量比例性が非常に高かった(R>0.95)。同様に、非常に良好な用量直線性が、異なる吸入バンコマイシン用量間で、AUC値に観察された(R>0.95)。バンコマイシン組成物とIV注入の両方を受けた各コホート内の被験者からの結果によれば、バンコマイシン組成物の投与後のバンコマイシンの絶対的バイオアベイラビリティは、平均で49%±8%であった(バンコマイシン組成物投与後のバンコマイシンのAUC
0−infを、静脈内投与後のバンコマイシンのAUC
0−infで割り、用量について調節したものとして算出)。
【0070】
異なるバンコマイシン用量レベルでのt
1/2は約8時間で非常に一貫しており、静脈内注入後に観察されるt
1/2より長かった。t
1/2の見掛けの延長は、濃度曲線の排出相中にも体循環にバンコマイシンを供給し続けた持続的な肺吸収を、さらに示唆している。
【0071】
この薬物動態プロファイルは、それが、肺内で、より持続的な高濃度のバンコマイシンを与え、それによって標的病原体の最小発育阻止濃度を超えている時間を増加させるので、バンコマイシンなどの時間依存性(かつ約1μg/mlを超える濃度においては濃度非依存性)の殺細菌抗生物質の抗細菌効力にとっては極めて有利である。
【0072】
それゆえに本発明は、上述の目的および利点、ならびにそれ本来の目的および利点を達成するのに、よく適合している。上に開示した特定実施形態は単なる例示である。というのも、本発明は、本明細書における教示内容の利益を有する、当業者には明白な、異なってはいるが均等な方法で、変更を加え、実施することができるからである。さらにまた、下記の特許請求の範囲において述べるもの以外には、本明細書に示す構成または設計の詳細への限定は意図されていない。それゆえ、上に開示した特定の例示的実施形態は、改変または変更することができ、そのような変形はすべて本発明の範囲と本旨に含まれるとみなされることは明白である。組成物および方法は、さまざまな構成要素または工程「を含む」(comprising)、「を含有する」(containing)または「を包含する」(including)という用語で説明されているが、組成物および方法は、さまざまな構成要素および工程「から実質的になる」(consist essentially of)または「からなる」(consist of)こともできる。上に開示したすべての数字および範囲は、ある程度、変動しうる。下限および上限付きの数値範囲が開示されている場合は常に、その範囲内の任意の数字およびその範囲に内包される任意の範囲も、具体的に開示されている。特に、本明細書において開示される値の範囲(「約aから約bまで」、同様に「約aからbまで」、同様に「約a〜b」の形態のもの)はいずれも、より広い値の範囲内に包含されるあらゆる数字および範囲を記載するものであると理解すべきである。また、請求項における用語は、別段の明示的かつ明確な定義が特許権者によってなされない限り、その平易な通常の意味を有する。さらに、請求項において使用される不定冠詞「a」または「an」は、本明細書では、それが前置されている要素の1つまたはそれ以上を意味すると定義される。本明細書と、参照により本明細書に組み込まれうる1つまたはそれ以上の特許その他の文書とにおいて、単語または用語の使用法に何らかの矛盾がある場合は、本明細書と合致する定義が採用されるべきである。
〔付記1〕
乾燥粉末である、バンコマイシンまたはその医薬上許容される塩を含む組成物。
〔付記2〕
前記医薬上許容される塩がバンコマイシン塩酸塩を含む、付記1に記載の組成物。
〔付記3〕
さらに疎水性アミノ酸を含む、付記1に記載の組成物。
〔付記4〕
前記疎水性アミノ酸が、トリプトファン、チロシン、ロイシン、トリロイシン、およびフェニルアラニンからなる群より選択される、付記3に記載の組成物。
〔付記5〕
前記疎水性アミノ酸がロイシンである、付記3に記載の組成物。
〔付記6〕
前記疎水性アミノ酸が前記組成物の50重量%未満の量で存在する、付記3に記載の組成物。
〔付記7〕
前記疎水性アミノ酸が前記組成物の30重量%未満の量で存在する、付記3に記載の組成物。
〔付記8〕
前記疎水性アミノ酸が前記組成物の約10%〜約20重量%の量で存在する、付記3に記載の組成物。
〔付記9〕
さらに糖質充填剤を含む、付記1に記載の組成物。
〔付記10〕
前記糖質充填剤が、ラクトース、マンニトール、トレハロース、ラフィノース、およびマルトデキストリンからなる群より選択される、付記9に記載の組成物。
〔付記11〕
前記糖質充填剤がトレハロースである、付記9に記載の組成物。
〔付記12〕
前記乾燥粉末が、約10μm以下の空気力学的質量中位径を有する粒子を含む、付記1に記載の組成物。
〔付記13〕
前記乾燥粉末が、約10μm以上の空気力学的質量中位径を有する粒子を含む、付記1に記載の組成物。
〔付記14〕
前記粒子の少なくとも95%が約10μm未満の空気力学的質量中位径を有する、付記12に記載の組成物。
〔付記15〕
前記乾燥粉末が、約1μm以上かつ5μm以下の空気力学的質量中位径を有する粒子を含む、付記1に記載の組成物。
〔付記16〕
前記乾燥粉末がカプセルに封入されている、付記1に記載の組成物。
〔付記17〕
前記カプセルがヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、付記16に記載の組成物。
〔付記18〕
前記乾燥粉末が約10重量%水未満の水分量を有する、付記1に記載の組成物。
〔付記19〕
前記乾燥粉末が約7重量%水未満の水分量を有する、付記1に記載の組成物。
〔付記20〕
前記乾燥粉末が実質的に無定形である、付記1に記載の組成物。
〔付記21〕
再構成時の粉末のpHが3.0を上回る、または3.5を上回る、または4.0を上回る、付記1に記載の組成物。
〔付記22〕
前記乾燥粉末が約0.4g/cm3を上回るタップ密度を有する、付記1に記載の組成物。
〔付記23〕
前記乾燥粉末が約0.4g/cm3を上回るタップ密度を有し;
バンコマイシンまたは医薬上許容されるその塩が前記組成物の約90重量%の量で存在し;かつ
前記組成物が、前記組成物の約10重量%の量のロイシンをさらに含む、
付記1に記載の組成物。
〔付記24〕
1時間〜3時間の中位Tmax値を与える、付記23に記載の組成物。
〔付記25〕
1時間以上の中位Tmax値を与える、付記23に記載の組成物。
〔付記26〕
30分以上の中位Tmax値を与える、付記23に記載の組成物。
〔付記27〕
6時間以下の中位Tmax値を与える、付記23に記載の組成物。
〔付記28〕
約n×620ng/mL[式中、nは0.01〜10の値であり、バンコマイシンの用量が80mgである場合に、nは1である]の約50%〜約150%の範囲内にあるバンコマイシンの平均最大血漿中濃度(Cmax)を与える、付記23に記載の組成物。
〔付記29〕
6時間を上回る中位t1/2値を与える、付記23に記載の組成物。
〔付記30〕
約8時間の中位t1/2値を与える、付記23に記載の組成物。
〔付記31〕
前記乾燥粉末組成物が40%以上の送達効率を与える、付記23に記載の組成物。
〔付記32〕
前記乾燥粉末組成物が60%以上の送達効率を与える、付記22に記載の組成物。
〔付記33〕
前記乾燥粉末組成物が40%以上の絶対的バイオアベイラビリティを与える、付記23に記載の組成物。
〔付記34〕
前記バンコマイシンまたは前記医薬上許容されるその塩が前記乾燥粉末組成物中に約80mgの量で存在し、前記乾燥粉末組成物が
約620ng/mLの約50%〜約150%の範囲内にあるバンコマイシンの平均最大血漿中濃度(Cmax);
約6,250ng時/mLの約50%〜約150%の範囲内にある平均AUC0−24h値;および
約0.75時間〜約3時間の範囲内にある中位Tmax値
を与え、前記バンコマイシンの最大血漿中濃度、前記AUC0−24h値、および前記Tmax値が、前記乾燥粉末組成物の単回経肺投与後に測定される、付記23に記載の組成物。
〔付記35〕
前記バンコマイシンまたは前記医薬上許容されるその塩が前記乾燥粉末組成物中に約n×80mgの量で存在し、前記乾燥粉末組成物が
約n×620ng/mLの約50%〜約150%の範囲内にあるバンコマイシンの平均最大血漿中濃度(Cmax);
約n×6,250ng時/mLの約50%〜約150%の範囲内にある平均AUC0−24h値;および
約0.5〜約6時間の範囲内にある中位Tmax値
を与え、前記バンコマイシンの最大血漿中濃度、前記AUC0−24h値、および前記Tmax値が、前記乾燥粉末組成物の単回経肺投与後に測定され、
nが0.01〜10の値である、付記23に記載の組成物。
〔付記36〕
バンコマイシンまたはその医薬上許容される塩を含む乾燥粉末組成物を経肺投与によって対象に投与することを含む方法。
〔付記37〕
前記対象が肺感染症または気道感染症を有する哺乳動物である、付記32に記載の方法。
〔付記38〕
前記肺感染症または気道感染症が、バンコマイシンまたはその医薬上許容される塩に対して感受性の細菌または他の病原体によって引き起こされる、付記33に記載の方法。
〔付記39〕
前記肺感染症または気道感染症がグラム陽性細菌によって引き起こされる、付記33に記載の方法。
〔付記40〕
前記グラム陽性細菌がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌である、付記35に記載の方法。
〔付記41〕
前記対象が、嚢胞性線維症、気管支拡張症、または肺炎を有する、付記33に記載の方法。
〔付記42〕
前記乾燥粉末組成物を投与するために乾燥粉末吸入器が使用される、付記33に記載の方法。
〔付記43〕
前記乾燥粉末吸入器がカプセルベースの乾燥粉末吸入器である、付記38に記載の方法。
〔付記44〕
前記カプセルベースの乾燥粉末吸入器がモノドーズ(Monodose)吸入器である、付記39に記載の方法。
〔付記45〕
前記組成物が1〜3時間の中位Tmax値を与える、付記32に記載の方法。
〔付記46〕
前記組成物が30分以上の中位Tmax値を与える、付記32に記載の方法。
〔付記47〕
前記組成物が6時間以下の中位Tmax値を与える、付記32に記載の方法。
〔付記48〕
前記組成物が、約n×620ng/mL[式中、nは0.01〜10の値であり、バンコマイシンの用量が80mgである場合に、nは1である]の約50%〜約150%の範囲内にあるバンコマイシンの平均最大血漿中濃度(Cmax)を与える、付記32に記載の方法。
〔付記49〕
前記組成物が6時間を上回る中位t1/2値を与える、付記32に記載の方法。
〔付記50〕
前記組成物が約8時間の中位t1/2値を与える、付記32に記載の方法。
〔付記51〕
前記乾燥粉末組成物が40%以上の送達効率を与える、付記32に記載の方法。
〔付記52〕
前記乾燥粉末組成物が60%以上の送達効率を与える、付記32に記載の方法。
〔付記53〕
前記乾燥粉末組成物が40%以上の絶対的バイオアベイラビリティを与える、付記32に記載の方法。
〔付記54〕
前記バンコマイシンまたは前記医薬上許容されるその塩が前記乾燥粉末組成物中に約n×80mgの量で存在し、前記乾燥粉末組成物が
約n×620ng/mLの約50%〜約150%の範囲内にあるバンコマイシンの平均最大血漿中濃度(Cmax);
約n×6,250ng時/mLの約50%〜約150%の範囲内にある平均AUC0−24h値;および
約0.5〜約6時間の範囲内にある中位Tmax値
を与え、前記バンコマイシンの最大血漿中濃度、前記AUC0−24h値、および前記Tmax値が、前記乾燥粉末組成物の単回経肺投与後に測定され、
nが0.01〜10の値である、付記23に記載の組成物。
〔付記55〕
バンコマイシンまたはその医薬上許容される塩と疎水性アミノ酸とを含む水性組成物を噴霧乾燥して乾燥粉末組成物を形成させることを含む方法。
〔付記56〕
前記乾燥粉末組成物が実質的に無定形である、付記55に記載の方法。
〔付記57〕
バンコマイシンまたはその医薬上許容される塩を含む前記水性組成物が少なくとも1重量%水の固形分を有する、付記55に記載の方法。
〔付記58〕
バンコマイシンまたはその医薬上許容される塩を含む前記水性組成物が少なくとも2重量%水の固形分を有する、付記55に記載の方法。
〔付記59〕
バンコマイシンまたはその医薬上許容される塩を含む前記水性組成物が少なくとも4重量%水の固形分を有する、付記55に記載の方法。
〔付記60〕
乾燥粉末である、バンコマイシンまたはその医薬上許容される塩を含む組成物。
〔付記61〕
30分以上の中位Tmax値を与える、付記60に記載の組成物。
〔付記62〕
6時間以下の中位Tmax値を与える、付記60に記載の組成物。
〔付記63〕
約n×620ng/mL[式中、nは0.01〜10の値であり、バンコマイシンの用量が80mgである場合に、nは1である]の約50%〜約150%の範囲内にあるバンコマイシンの平均最大血漿中濃度(Cmax)を与える、付記60に記載の組成物。
〔付記64〕
6時間を上回る中位t1/2値を与える、付記60に記載の組成物。
〔付記65〕
前記乾燥粉末組成物が40%以上の送達効率を与える、付記60に記載の組成物。
〔付記66〕
前記乾燥粉末組成物が40%以上の絶対的バイオアベイラビリティを与える、付記60に記載の組成物。
〔付記67〕
前記バンコマイシンまたは前記医薬上許容されるその塩が前記乾燥粉末組成物中に約n×80mgの量で存在し、前記乾燥粉末組成物が
約n×620ng/mLの約50%〜約150%の範囲内にあるバンコマイシンの平均最大血漿中濃度(Cmax);
約n×6,250ng時/mLの約50%〜約150%の範囲内にある平均AUC0−24h値;および
約0.5〜約6時間の範囲内にある中位Tmax値
を与え、前記バンコマイシンの最大血漿中濃度、前記AUC0−24h値、および前記Tmax値が、乾燥粉末組成物の単回経肺投与後に測定され、
nが0.01〜10の値である、付記60に記載の組成物。