(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
更に、前記第1シンボロジー(20)を前記航空機シンボル(34,36)に対して、前記現在のピッチ姿勢が、前記目標ピッチ姿勢に対して変化するときに移動させることを含み、前記第1シンボロジー(20)は前記航空機シンボル(34,36)に、前記現在のピッチ姿勢が前記目標ピッチ姿勢に等しくなる場合に一致する、請求項3に記載の方法。
更に、前記第2シンボロジー(22)を前記第1シンボロジー(20)に対して、前記現在の推力が、前記目標推力に対して変化するときに、かつ前記現在のピッチ姿勢が一定に保持されるときに移動させることを含み、前記第2シンボロジー(22)は前記第1シンボロジー(20)に、前記現在の推力が前記目標推力に等しくなる場合に一致する、請求項5に記載の方法。
更に、前記第1及び第2シンボロジーを結合させる垂直方向ライン(30)を、前記第1及び第2シンボロジーが互いに一致しない場合に表示することを含み、前記ライン(30)の長さは、前記現在の推力と前記目標推力との前記差に応じて変化する、請求項6に記載の方法。
更に、前記第2シンボロジーを前記第1シンボロジー(22)に対して、前記現在の推力が、前記目標推力に対して変化するときに移動させることを含み、前記第2シンボロジー(20)は前記第1シンボロジーに、前記現在の推力が前記目標推力に等しくなる場合に一致する、請求項8に記載の方法。
更に、前記第1及び第2シンボロジーを結合させる垂直方向ライン(30)を、前記第1及び第2シンボロジーが互いに一致しない場合に表示することを含み、前記ラインの長さは、前記現在の推力と前記目標推力との差に応じて変化する、請求項9に記載の方法。
情報を航空機パイロットに対して、実際の飛行中に、または模擬飛行中に表示するシステムであって、コックピットディスプレイ(16)と、前記コックピットディスプレイを制御するコンピュータシステムと、を備え、前記コンピュータシステムをプログラムして以下の操作:
前記コックピットディスプレイ(16)に指示して、航空機の構成部分を表わす航空機シンボル(34,36)を表示させる操作、
前記コックピットディスプレイに指示して、前記航空機シンボル(34,36)を基準とする位置を有する地平線インジケータ(18)を、前記位置が現在のピッチ姿勢に応じて変化するように表示させる操作、
表示モードを、少なくとも現在のスロットルレバー角に応じて決定する操作、
目標ピッチ姿勢を、少なくとも決定された前記表示モード、現在の高度、及び現在の機体重量に応じて決定する操作、及び
前記コックピットディスプレイに指示して、前記目標ピッチ姿勢を表わす第1シンボロジー(20)を、表示される前記第1シンボロジー(20)が、前記航空機シンボル(34,36)を基準とする位置を有し、該位置が、前記現在のピッチ姿勢と前記目標ピッチ姿勢との差に応じて変化するように表示させる操作を実行する、システム。
前記コンピュータシステムを更にプログラムして、前記コックピットディスプレイ(16)に表示される前記第1シンボロジー(20)を、前記航空機シンボル(34,36)に対して、前記現在のピッチ姿勢が、前記目標ピッチ姿勢に対して変化するときに移動させ、前記第1シンボロジーは前記航空機シンボルに、前記現在のピッチ姿勢が前記目標ピッチ姿勢に等しくなる場合に一致する、請求項13に記載のシステム。
前記コンピュータシステムを更にプログラムして、前記第2シンボロジー(22)を前記第1シンボロジー(20)に対して前記コックピットディスプレイ上で、前記現在の推力が、前記目標推力に対して変化するときに、かつ前記現在のピッチ姿勢が一定に保持されるときに移動させ、前記第2シンボロジーは前記第1シンボロジーに、前記現在の推力が前記目標推力に等しくなる場合に一致する、請求項15に記載のシステム。
前記コンピュータシステムを更にプログラムして、前記コックピットディスプレイに指示することにより、前記第1及び第2シンボロジーを結合させる垂直方向ライン(30)を、前記第1及び第2シンボロジーが互いに一致しない場合に表示させ、前記ラインの長さは、前記現在の推力と前記目標推力との差に応じて変化する、請求項16に記載のシステム。
情報を航空機パイロットに対して、実際の飛行中に、または模擬飛行中に表示するシステムであって、コックピットディスプレイと、前記コックピットディスプレイを制御するコンピュータシステムと、を備え、前記コンピュータシステムをプログラムして以下の操作:
前記コックピットディスプレイに指示して、航空機の構成部分を表わす航空機シンボル(34,36)を表示させる操作、
前記コックピットディスプレイに指示して、前記航空機シンボルを基準とする位置を有する地平線インジケータ(18)を、前記位置が現在のピッチ姿勢に応じて変化するように表示させる操作、
表示モードを、少なくとも現在のスロットルレバー角に応じて決定する操作、
前記コックピットディスプレイに指示して、現在の推力を表わす第1シンボロジー(22)を表示させる操作、
目標ピッチ姿勢を、少なくとも決定された前記表示モード、現在の高度、及び現在の機体重量に応じて決定する操作、
目標推力を、少なくとも決定された前記表示モード、前記現在の高度、及び前記現在の機体重量に応じて決定する操作、及び
前記コックピットディスプレイに指示して、目標ピッチ姿勢を表わす第2シンボロジー(20)を、表示される前記第2シンボロジー(20)が、前記第1シンボロジーを基準とする位置を有し、該位置が、前記現在の推力と前記目標推力との差に応じて変化するように表示させる操作を実行する、システム。
前記コンピュータシステムを更にプログラムして、前記第2シンボロジー(20)を前記第1シンボロジー(22)に対して前記コックピットディスプレイ上で、前記現在の推力が、前記目標推力に対して変化するときに移動させ、前記第2シンボロジーは前記第1シンボロジーに、前記現在の推力が前記目標推力に等しくなる場合に一致する、請求項18に記載のシステム。
前記コンピュータシステムを更にプログラムして、前記コックピットディスプレイに指示することにより、前記第1及び第2シンボロジーを結合させる垂直方向ライン(30)を、前記第1及び第2シンボロジーが互いに一致しない場合に表示させ、前記ラインの長さは、前記現在の推力と前記目標推力との差に応じて変化する、請求項19に記載のシステム。
【背景技術】
【0002】
最新の民間航空機は、エアデータの可用性及び完全性に対する要求が益々強くなっている。エアデータは、飛行中の航空機の周りの航空機の大気状態を表わしている。このエアデータは、パイロットが及びオンボードシステムが利用することにより、航空機に関する操縦判断を下し、そして制御操作を行なう。このエアデータは、例えばピトー圧または総圧、静圧、迎角、横滑り角、及び他の適切なエアデータを含む。この種類のデータを測定するために使用される従来のセンサは、周囲状態または他の状態、或いは事象によって悪影響を受ける可能性がある。例えば、氷または他の異物によって、総圧を測定するために使用されるピトー管による正確な圧力測定が妨げられる虞がある。
【0003】
ピトー管は、流速を測定するために使用される圧力測定器である。測定される圧力は、空気の滞留圧(stagnation pressure)であり、この滞留圧は、総圧(total pressure)とも表記される。静圧は、本ビークルの高度における大気圧であり、そして総圧は、静圧、及びビークルの前進速度に起因する衝突圧の合計である。この測定値を胴体の側面の取り入れ口センサを用いて測定される静圧測定値と一緒に使用して、衝突圧を特定することができる。次に、この衝突圧を使用して航空機の対気速度を計算することができる。
【0004】
信号処理回路は、これらの圧力センサから供給される圧力信号に基づいて、種々の飛行関連パラメータを表わす信号を求め、そして供給する。幾つかの用途では、センサ群及び関連する処理回路をパッケージ化することにより、エアデータモジュールと表記することができるモジュールに一体化することができる。
【0005】
エアデータシステムは、航空機に対気速度、高度、及び垂直速度情報を提供する。エアデータが信頼できない、または不調になった状態が生じる場合、航空機乗組員に間違った矛盾する情報が与えられて、搭乗員が航空機を、安全ではなくなる可能性のある操縦状態にしてしまう。
【0006】
信頼できない、または不調になったエアデータ(高度及び/又は対気速度)システム事象が、民間航空機に生じると、航空機乗組員が不調を認識することができず、そして/または安全な飛行状態を不調後に維持することができないので、事故に繋がってしまう。これらの信頼できないエアデータ事象は、火山灰、氷粒子、鳥、または昆虫を含む気流の中での飛行、航空機が飛行可能状態に正しく修復されなかった整備作業(例えば、テープが空気取り入れ口から剥がされなかった)、または他の不具合の結果として起こってしまう。これらの事象が夜間に、外部目視基準が無い状態で起こると、飛行に欠かせない計器が利用できないか、または計器に誤差が生じているので、空中姿勢を保つことが困難な状況を更に悪化させる。
【0007】
パイロットが、エアデータが信頼できないことを認識する場合、パイロットの(パイロットの飛行訓練全般に立ち戻った)訓練では、パイロットはピッチ及び出力で飛行する必要がある。すなわち、特定の垂直速度を達成する(これらの不調に際して誤差が生じている)ために操縦桿を引く(または、押す)操作からピッチ(航空機が機首を地平線に対して上げる、または下げる際の機首の高さ)及び出力設定の検討に移行する。パイロットは、ピッチ/出力の何れの組み合わせが適切であるか、そして何れの組み合わせが不適切であるかについての考え方を持っている。例えば、航空機が機首を地平線に対して地面に向かって下げて、航空機の推力レベルが高い場合、搭載計器が何を表示しているかどうかに関係なく、航空機は、加速している必要がある。これらの計器に誤差が生じていて、安全を確保する必要があることが認識されると、判明するピッチ/出力状態は、航空機が急降下状態に突入しないようにするために、または失速の原因となる急激な機首上げ状態に突入しないようにするために極めて重要である。
【0008】
特許文献1(米国特許出願公開第2010/0100260A1号)には、主エアデータを別の(すなわち、合成)エアデータと比較して、主エアデータが、操縦を航空機に関して行なう際に信頼できるかどうかについて判断するためのモニタが開示されている。当該出願に対する優先権を主張する特許出願を出願するためには、参照による組み込みを認めない国では、本開示に、図面(
図8参照)及び米国特許出願公開第2010/0100260A1号から直接引用される関連する記載説明を取り込んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の説明では、異なる図面の同様の構成要素に同じ参照番号が付されている図面を参照することとする。
【0018】
最新の航空機は通常、エアデータシステム及び慣性座標系を備えている。エアデータシステムが、対気速度、迎角、温度及び気圧高度データを提供するのに対し、慣性座標系は、姿勢、飛行経路ベクトル、対地速度、及び位置データを提供する。このデータの全てが、フライトコントロールシステムの入力信号管理プラットフォームに送信される。フライトコントロールシステムの入力信号管理プラットフォームに送信される。フライトコントロールシステムは、主フライトコントロールコンピュータ/機能及び自動操縦コンピュータ/機能を備える。主フライトコントロールコンピュータ及び自動操縦コンピュータは、個別の入力信号管理プラットフォームを有することができる。最新の航空機は更に、ディスプレイコンピュータを備え、ディスプレイコンピュータは、コックピットディスプレイを制御して、利用データをパイロットに対して表示する。
【0019】
幾つかの現行の航空機に関するエアデータ情報は、例えば2つのARINC706エアデータコンピュータ(ADCs)から供給される。これらのコンピュータは、従来のピトー管及び空気取り入れ口(static ports)に、航空機全体に張り巡らされる空気管を介して接続される。特定のスタンバイエアデータ計測器、及び航空機の尾翼部分に格納される主フライトコントロールモジュールを含む他のシステムもまた、ピトー管/空気取り入れ管に接続される。
【0020】
従来のエアデータシステムは、このエアデータシステムがフライトコントロールの分野の当業者には良く知られているのでこれらの図面には図示されていない。当業者であれば、例えばエアデータコンピュータが、空気取り入れ口の圧力データ及び冷却用空気(ram air)の圧力データを空気取り入れ口及びピトー管から採取し、そしてこのようなデータを用いて航空機の高度、対気速度、及び上昇または降下速度を求める過程を認識しているであろう。
【0021】
前に説明したように、エアデータは、パイロット及びオンボードシステムが利用することにより、航空機に関する操縦判断及び制御操作を行なう。このエアデータは、例えばピトー圧または総圧、静圧、迎角、横滑り角、及び他の適切なエアデータを含むことができる。この種類のデータを測定するために使用される従来のセンサは、周囲状態または他の状態、或いは事象によって悪影響を受ける可能性がある。エアデータが信頼できない、または不調になった状態が生じると、航空機乗組員に間違った矛盾する情報が与えられて、搭乗員が航空機を、安全ではなくなる可能性のある最悪の操縦状態にしてしまう。
【0022】
図1は、信頼できない、または不調になったエアデータ(高度及び/又は対気速度)システム事象が発生すると、ピッチ及び出力関連ガイダンス指示及び飛行経路情報を表示するシステムの構成要素群を示している。当該システムは、パイロットが手動で作動させるか、またはコンピュータが実行する監視機能によって自動的に作動させることができる。
【0023】
図1に示すシステムは、コンピュータ10、例えばフライトコントロールコンピュータを備え、このコンピュータ10は、エンジンデータだけでなく、フラップ位置、高度、及び機体重量を表わすデータを受信する。このようなデータをコンピュータに供給するオンボードサブシステムは、この技術分野の当業者の良く知るところである。エンジンデータは、スロットルレバー角、ターボファン出力比(turbofan power ratio:TPR)またはファン速度(N1)を含むことができ;フラップ位置は、実際のフラップ位置、または選択フラップ位置とすることができ;高度は、GPS高度、レーダ高度、気圧高度、または決定される静圧状態を含むことができ;そして機体重量は、フライトマネジメントコンピュータ(
図1に図示されていないが、
図8を参照されたい)から供給される。
【0024】
特殊シンボロジーの表示を、信頼できない、または不調になったエアデータシステム事象が発生したときに容易にするために、コンピュータ10は、ピッチ及び出力関連ガイダンス指示データを、ルックアップテーブル(LUT)12から取り出す。LUT12は、多種多様な飛行状態を表わす既知の航空機状態に対応する航空機性能データテーブルを格納する。このような図表は、上昇、巡航、降下、及び最終進入を含む種々の飛行フェーズに対応する所望のピッチ姿勢及び出力設定と、そして高度、機体重量、フラップ位置、及びエンジンデータを含む種々のパラメータと、を含む。コンピュータ10は、データをLUT12から、受信データ(すなわち、エンジンデータ、フラップ位置、高度、及び機体重量)に応じて変わるアドレスをLUT12に送信することにより取り出す。LUT12は、航空機の特定の運航状態及び飛行フェーズに対応する所望のピッチ姿勢及び出力設定を表わすデータを返す。
【0025】
1つの実施形態によれば、全地球測位システム(GPS)高度または気圧高度(正しい標高を指す場合)、機体重量、フラップ設定、大気/地上状態、及びスロットルレバー角を利用して、最大上昇推力、水平飛行推力、滑走路に向けて3度の降下角で進入する場合の推力、または緩降下飛行の状態の推力の何れかに必要な適切な目標ピッチ及び推力差を求める。この方法は、ピッチ、出力、モード、速度、及び垂直速度に関する制御を行なう(そして更に、通知を行なう)ことに注力している。
【0026】
測定エアデータを利用できない、または信頼できない(自動的に検出されるか、またはパイロットにより検出される)状況になるとLUT12から読み出される情報に基づいて、コンピュータ10は、特定の飛行フェーズに関するピッチ及び出力関連ガイダンス指示及び飛行経路情報を表わすデータをディスプレイコンピュータ14に送信する。当該データをコンピュータ10から受信すると、ディスプレイコンピュータ14は、コックピットディスプレイ、例えば主フライトディスプレイ16を制御して、これらのピッチ及び出力関連ガイダンス指示及び飛行経路情報を表わすシンボロジーを表示する。この情報は、直観的に理解できる方法で、かつ適切に、当該情報を主フライトディスプレイに表示する必要があるときに、かつ必要がある場合に合わせて正確に表示される。表示される情報は、航空機パラメータ群に応じて動的に変化する。ディスプレイコンピュータは、この技術分野では良く知られているので、ディスプレイコンピュータ14の基本動作については、本明細書では詳細に説明することはしない。ディスプレイコンピュータ14をプログラムすることにより、指示がコンピュータ10から、測定エアデータを利用することができないか、または信頼することができない場合に、またはパイロットが、信頼できないエアデータが発生していることを表わす特殊スイッチ選択を行なった場合に送信されると、特殊シンボロジーを主フライトディスプレイ16に表示するようにする。別の構成として、本明細書において開示されるフライトコントロールコンピュータ及びディスプレイコンピュータの関連機能は、単一のプロセッサ、または複数のプロセッサを有する単一のコンピュータによって実行することができる。
【0027】
1つの実施形態によれば、コンピュータ10は、機体重量、GPS高度、フラップ設定、及びスロットルレバー角を含む着信データを処理し、そして次に、主フライトディスプレイに関するモード、目標ピッチ、及び目標エンジン出力(例えば、TPR、N1など)を、LUT12を参照して決定する。当該モードは、スロットルレバー角に少なくとも部分的に基づいて決定される。スロットルレバー角は、スロットルレバーの角度位置に応じて変化し、これらのスロットルレバーは、パイロットにより手動で位置決めされるか、または自動スロットルシステムにより位置決めされる。各スロットルレバーは、最大定格推力位置とアイドル位置との間で、運動範囲をこれらの位置の間に持つようにして移動可能である。これらのスロットルレバーが、これらのスロットルレバーの最大定格推力位置にあるか、または最大定格推力位置の近傍にある場合、当該ディスプレイのモードは、最大上昇(Maximum Climb)であり;これらのスロットルレバーが、これらのスロットルレバーのアイドル位置にあるか、またはアイドル位置の近傍にある場合、当該ディスプレイのモードは、緩降下飛行(Idle Descent)であり;そしてこれらのスロットルレバーが、これらのスロットルレバーの最大定格推力位置とアイドル位置との間の運動範囲の中間位置にある場合、当該ディスプレイのモードは、水平飛行(Level Flight)モード、または滑走路に向けての3度の降下角進入(3 Degree Glideslope)(すなわち、着陸)モードの何れかである。スロットルレバー角は、スロットルレバーを動かすと生成される指示推力の変化にエンジンが応答するのが遅いので、エンジンにより生成されている実際の推力の代わりに利用される。モード間を移行する際、ある遅延時間を忠実に守り続けて、推力変化の結果として異なるモードに急激に移行する/異なるモードから急激に移行するのを防止する。
【0028】
これらのスロットルレバーは中間位置に水平飛行(Level Flight)モード中、または3度の降下角進入(3 Degree Glideslope)モード中に位置することができるので、これらの2つのモードうちの何れのモードが表示される必要があるかについて判別するためには更に別の情報が必要である。これらのフラップが、ギアを降ろした着陸状態になり、そしてスロットルレバー角が離陸限界になっていない場合には必ず、コンピュータ10は、表示モードを、3度の降下角進入(3 Degree Glideslope)モードとする必要があると判断する。逆に、ランディングギアを格納する場合、コンピュータ10は、表示するモードを水平飛行(Level Flight)モードとする必要があると判断する。
【0029】
LUT12は、各飛行フェーズに関するそれぞれのデータテーブルを備える。データ(適正なピッチ及び出力設定)の提供源は通常、広い範囲の飛行状態に関する性能データを作成することができる航空機製造業者である。この同じ性能データを利用して、Quick Reference Handbook(簡易参照ハンドブック)の“Flight with Unreliable Airspeed(対気速度が信頼できない飛行)”の節に記載される簡易テーブルを作成する。本明細書において開示されるフライトコントロールシステムは、既存の図表を作成するために使用されるものと同じ航空機性能データを利用するが、その理由は、パイロットが実施する必要がある基本作業が、現在の航空機におけるものと同じである:すなわち、パイロットは、既知の/安全なピッチ及び出力設定で飛行する必要があるからである。
【0030】
コンピュータ10は、飛行フェーズを確認した後、コンピュータ10は、LUT12の対応するデータテーブルをルックアップする。LUT12から読み出されるデータは、以下の項目:水平飛行に関するピッチ/出力状態、緩降下飛行(Idle Descent)に関するピッチ、最大上昇(Maximum Climb)に関するピッチ、または3度の降下角進入(3 Degree Glideslope)に関するピッチ/出力のうちの任意の項目を含むことができる。コンピュータ10は、モード及び所望のピッチ/出力を表わすデータをディスプレイコンピュータ14に送信し、このディスプレイコンピュータ14が今度は、主フライトディスプレイ16を制御して、当該モード及び所望のピッチ/出力を表わすシンボロジーを表示する。更に詳細には、主フライトディスプレイ16は、ピッチ目標を、地平線インジケータを基準として表わす特徴マーク(以後、“pitch tic marks(ピッチ特徴マーク)”と表記する)を表示する。これらのピッチ特徴マーク20は、
図2〜7に見ることができる(以下に詳細に説明する)。主フライトディスプレイ16は更に、加算される、または減算される必要がある推力、すなわち推力差を表わす動的垂直方向ラインを表示することができる。推力差を表わすこれらの動的ライン30は、
図5〜7に見ることができる(以下に詳細に説明する)ように、ピッチ特徴マーク20の上方または下方に延び、そして可変推力特徴マーク22で終端する。
【0031】
次に、本明細書において開示される実施形態に従って表示される種々のシンボロジーについて、
図2〜7を参照して説明することとし、
図2〜7の各図は、主フライトディスプレイのピッチ姿勢インジケータのスクリーンショットである。従来の主フライトディスプレイの姿勢インジケータは、航空機のピッチ及びロール特性、及び地平線に対する航空機の方位に関する情報をパイロットに提供する。任意であるが、失速余裕、滑走路図、フライトディレクタ(群)、及びILSローカライザ、及びグライドパス(着陸進入経路)“指針”のような他の情報は、姿勢インジケータに表示することができる。表示情報は、必要に応じて、動的に更新することができる。従来の主フライトディスプレイは更に、姿勢インジケータの左側及び右側のそれぞれに普通、表示される対気速度インジケータ及び高度インジケータ(
図2〜7には図示されず)を備える。
【0032】
図2は、主エアデータシステムが故障したか、または信頼できず、そしてディスプレイが最大上昇推力モードになっている場合の姿勢インジケータの状態を表わす例示的なスクリーンショットである。ディスプレイコンピュータは、主フライトディスプレイを制御して、2対のピッチ特徴マーク20を表示する。この例では、これらのピッチ特徴マーク20は、地平線を指示する水平ライン18(以後、“地平線インジケータ”と表記する)の上方の同じ高さにある姿勢インジケータの左側境界及び右側境界の近傍に配置される。各組のピッチ特徴マーク20は、1対の相互に平行な短い水平ラインを含む。垂直方向に等間隔に配置される姿勢インジケータの中心部分に現われ、かつ異なる長さの短い水平ライン群32は、それぞれの組のピッチ角を示す目盛を形成する。姿勢インジケータの中心にある微小方形34が、航空機の機首を表わしているのに対し、中心方形34の両側にあるL字形シンボル36は、航空機の翼を表わしている。シンボル34及び36は常に表示され、そして固定されている、すなわち姿勢インジケータ上を移動することがないのに対し、ピッチ角目盛ライン32及び地平線インジケータは、航空機のピッチ角が変化すると一斉に移動する。
【0033】
地平線インジケータ18が
図2のシンボル36及び34に一致するということは、航空機の現在のピッチ角がゼロであることを示している。これらのピッチ特徴マーク20は、最大上昇を表わす目標ピッチ設定に対応するピッチ姿勢の位置に配置される。最大上昇角度が望ましい場合、航空機のピッチ角を大きくして(例えば、エレベータを上げることにより)、目標ピッチ設定に合わせることができる。本明細書において開示されるシンボロジーは、航空機のピッチ角が上げ方向に大きくなるときのピッチ角の変化に動的に応答するので、これらのピッチ特徴マーク20は、下方に向かって移動して、翼シンボル36に一致するようになる。地平線インジケータ18及び目盛ライン32もまた、これらのピッチ特徴マーク20とともに移動する。
【0034】
図形シンボルの他に、関連する英数字ラベルを、主フライトディスプレイの姿勢インジケータに表示することができる。このようなラベルから得られる情報は、飛行フェーズまたは表示モードと、そして速度または垂直速度が、ピッチ角が目標ピッチ角に達し、かつ推力が目標推力レベルに達するときに採る値の推定値と、を含むことができる。これらのラベルは、モード認識に関するスロットルレバーの変化量に応じて変化する。各ラベルは、それぞれの組のピッチ特徴マークの近傍に表示され、そしてそれぞれの組のピッチ特徴マークとともに移動する。例えば、
図2に示すように、飛行フェーズまたは推力モードを表わすラベル“MAX CLIMB”が、姿勢インジケータの左手側のピッチ特徴マーク20の右上側に、かつピッチ特徴マーク20に近接して表示されるのに対し、ラベル“V/S 3900”は、右手側のピッチ特徴マーク20の左上側に、かつピッチ特徴マーク20に近接して表示される。これによって、パイロットに対して、航空機がMAX CLIMB(最大上昇)モードになっていて、かつ航空機の垂直方向推定速度が、ピッチ角が目標ピッチ角に達するときに3900フィート/分になることを通知することができる。目標ピッチ設定は、スロットルレバー角が、当該モード(この場合は、Maximum Climbモード)に関して指定される限界内に収まっている限り、地平線インジケータに対して変化しない。
【0035】
図3は、主エアデータシステムが不調になるか、または信頼できず、そして航空機がMaximum Climb(最大上昇)モードになっている場合の姿勢インジケータの状態を示す例示的なスクリーンショットである。ディスプレイコンピュータは、主フライトディスプレイを制御して、2対のピッチ特徴マーク20を表示する。
図3は、航空機のピッチ姿勢が、Maximum Climb(最大上昇)を表わす目標ピッチ設定に等しくなる例における姿勢インジケータの外観を示している。この例では、ピッチ特徴マーク20及び翼シンボル36が一致しており(すなわち、ディスプレイ上で同じ高さにある)、これによって、パイロットに対して、航空機が目標ピッチ角になっていることを通知することができる。地平線インジケータ18は、翼シンボルの下方の高さに表示され、これによって、パイロットに対して、航空機が機首を地平線に対して上げていることを通知することができる。
【0036】
図2及び3は、ピッチ角が目標ピッチ角よりも小さい(
図2参照)、または目標ピッチ角に等しい(
図3参照)場合に、ラベルがピッチ特徴マーク20よりも僅かに高い位置に配置される例を示している。逆に、ピッチ角が目標ピッチ角よりも大きい例では、ラベルは、ピッチ特徴マークよりも僅かに低い位置に配置される。1つのこのような例を
図4に示す。
【0037】
図4は、主エアデータシステムが故障したか、または信頼できず、そして航空機がIdle Descent(緩降下飛行)モードになっている場合の姿勢インジケータの状態を示す例示的なスクリーンショットである。この場合も同じように、ディスプレイコンピュータは、主フライトディスプレイを制御して、2対のピッチ特徴マーク20を表示する。この例では、ピッチ特徴マーク20は、姿勢インジケータの左側境界及び右側境界の近傍に、かつ地平線インジケータ18より下方の同じ高さに配置される。地平線インジケータ18が
図4のシンボル36に一致していることにより、この場合も同じように、パイロットに対して、航空機の現在のピッチ角がゼロであることを通知することができる。この例では、ピッチ特徴マーク20は、Idle Descent(緩降下飛行)モードを表わす目標ピッチ設定に対応するピッチ姿勢になるように配置される。この例では、航空機のピッチ角を小さくして(例えば、エレベータを下げることにより)、目標ピッチ設定に合わせる必要がある。このシンボロジーは、ピッチ角の変化に応じて動的に変化する、すなわち航空機のピッチ角が下げ方向に小さくなると、ピッチ特徴マーク20は、上方に向かって移動して翼シンボル36に一致するようになる。地平線インジケータ18及び目盛ライン32も、これらのピッチ特徴マーク20とともに移動することになる。
【0038】
図4に示すように、表示モードを示すラベル“IDLE DES”が、姿勢インジケータの左手側のピッチ特徴マーク20の右下側に、かつ近傍に表示されるのに対し、ラベル“IV/S−1600”は、右手側のピッチ特徴マーク20の左下側に、かつ近傍に表示される。これによって、パイロットに対して、航空機がIdle Descent(緩降下飛行)モードであり、かつ航空機の垂直方向推定速度が、目標ピッチ角になるときに約1600フィート/分になることを通知することができる。目標ピッチ設定は、スロットルレバー角が、“Idle descent mode(緩降下飛行モード)”を表わす限界内に収まっている限り、地平線インジケータに対して変化しない。
【0039】
1つの実施形態によれば、これらのピッチ特徴マークは、以下の入力:GPS高度、スロットルレバー角、機体重量、及びフラップ設定に応じて変化するように表示される。別の実施形態によれば、主フライトディスプレイは更に、可変推力特徴マーク22を表示し、これらの可変推力特徴マーク22は、
図5〜7に示すように、これらのピッチ特徴マーク20に、それぞれの動的垂直方向ライン30で結合される。これらの可変推力特徴マーク22は、以下の入力:GPS高度、スロットルレバー角、機体重量、フラップ設定、及び現在の推力に応じて変化するように表示される。これらの可変推力特徴マーク22の位置、及びこれらの動的垂直方向ライン30の長さは、現在の推力が変化するにつれて変化する。これらの可変推力特徴マークは、航空機が、Level Flight thrust(水平飛行推力)モードまたは−3 Degree Glideslope(滑走路に向けての3度の降下角進入)モードの何れかのモードになっているときにのみ表示される。一方の側の可変推力特徴マーク22と、同じ側の一対のピッチ特徴マーク20の間の中間点との間の距離は、現在の推力と目標推力との差(以後、“thrust differential(推力差)”と表記する)を示している。更に詳細には、可変推力特徴マーク22が、関連するピッチ特徴マーク群20の上に位置する場合、推力差の図形表示は、現在の推力から減算して目標推力に達するために必要となる推力の大きさを示しており;逆に、可変推力特徴マーク22が、関連するピッチ特徴マーク群20の下に位置する場合、推力差の図形表示は、現在の推力に加算して目標推力に達するために必要となる推力の大きさを示している。推力差の図形表示を拡大縮小することにより、ロールインジケータ及びスリップ/スキッドインジケータ(すなわち、ディスプレイの最上部の三角形及び矩形)と重なることがないようにする。特徴マーク位置及び推力差をフィルタ処理して、航空機乗組員が、動いている目標を過度に制御する危険を低くする。更に詳細には、TPR(ターボファン出力比)を、GPS高度と気圧高度の関係を利用して推定する際の精度が低くなる結果、TPR推力差スライダを遅くして、ゼロ誤差が約±5TPR範囲に収まることを示すことにより、1TPRの精度にはどうせ収まらない可能性のある目標値からのズレをゼロにしようと試みる際の振れを過剰に制御することがないようにする。
【0040】
図5は、主エアデータシステムが故障したか、または信頼できず、そして航空機が−3 Degree Glideslope(滑走路に向けての3度の降下角進入)モードになっている場合の姿勢インジケータの状態を示す例示的なスクリーンショットである。この場合も同じように、ディスプレイコンピュータは、主フライトディスプレイを制御して、2対のピッチ特徴マーク20を左手側及び右手側に表示する。この例では、これらのピッチ特徴マーク20は、姿勢インジケータの左側境界及び右側境界の近傍に、かつ地平線インジケータ18より上方の同じ高さに配置される。地平線インジケータ18が
図5のシンボル34及び36に一致していることにより、この場合も同じように、パイロットに、航空機の現在のピッチ角がゼロであることを通知することができる。この例では、これらのピッチ特徴マーク20は、3度の緩降下飛行を表わす目標ピッチ設定に対応するピッチ姿勢の位置に配置される。この例では、パイロットに与えられるガイダンスによって、航空機のピッチ角を大きくして目標ピッチ設定に合わせる必要があることを通知することができる。
【0041】
図5に示すように、表示モードであることを示すラベル“−3 DEGREE”が、姿勢インジケータの右手側のピッチ特徴マーク20の左上側に、かつ近傍に表示されるのに対し、ラベル“180 KTS”は、左手側のピッチ特徴マーク20の右上側に、かつ近傍に表示される。これによって、パイロットに対して、航空機が−3 Degree Glideslope(滑走路に向けての3度の降下角進入)モードになっていて、かつ航空機の推定速度が、航空機が目標ピッチ角及び目標推力に達するときに180ノットになることを通知することができる。
【0042】
更に、
図5は、一対の可変推力特徴マーク22を表示しており、これらの可変推力特徴マーク22はそれぞれ、対応するピッチ特徴マーク20に、それぞれの垂直方向ライン30で結合される。これらの可変推力特徴マーク22は、それぞれのピッチ特徴マーク20の上方に位置するので、推力特徴マーク22の頂点から、同じ側の関連するピッチ特徴マーク群20の間の中間点までの距離によって、パイロットに対して、現在の推力から減算して目標推力を達成するために必要となる推力の大きさを通知することができる。パイロットが、推力を減少させると(例示のために、ピッチは変化していないと仮定する)、これらの可変推力特徴マーク22は下方に移動し(対応するピッチ特徴マークに近づく)、そして動的垂直方向ライン30は、現在の推力が目標推力に等しくなるまで長さを減少させ、これらの可変推力特徴マーク22は、姿勢インジケータのそれぞれの側の関連するピッチ特徴マーク群20の間に表示される。これによって、パイロットに対して、推力設定が正しいことを通知することができる。
【0043】
図6は、主エアデータシステムが故障したか、または信頼できず、そして航空機がLevel Flight(水平飛行)モードになっている場合の姿勢インジケータの状態を示すために同様のシンボロジーを用いる様子を示している。この場合も同じように、ディスプレイコンピュータは、主フライトディスプレイを制御して、2対のピッチ特徴マーク20を左手側及び右手側に表示する。この例では、これらのピッチ特徴マーク20は、姿勢インジケータの左側境界及び右側境界の近傍に、かつ地平線インジケータ18より上方の同じ高さに配置される。地平線インジケータ18が
図5のシンボル34及び36に一致していることにより、この場合も同じように、パイロットに対して、航空機の現在のピッチ角がゼロであることを通知することができる。この例では、これらのピッチ特徴マーク20は、Level Flight(水平飛行)を表わす目標ピッチ設定に対応するピッチ姿勢の位置に配置される。この例では、パイロットに与えられるガイダンスによって、航空機のピッチ角を大きくして目標ピッチ設定に合わせる必要があることを通知することができる。
【0044】
図6に示すように、表示モードを示すラベル“LVL FLIGHT”が、姿勢インジケータの右手側のピッチ特徴マーク20の左上側に、かつ近傍に表示されるのに対し、ラベル“260 KTS”は、左手側のピッチ特徴マーク20の右上側に、かつ近傍に表示される。これによって、パイロットに対して、航空機がLevel Flight thrust(水平飛行推力)モードになっていて、かつ航空機の推定速度が、航空機が目標ピッチ角及び目標推力に達するときに260ノットになることを通知することができる。
【0045】
更に、
図6は、一対の可変推力特徴マーク22を表示しており、これらの可変推力特徴マーク22はそれぞれ、対応するピッチ特徴マーク20に、それぞれの垂直方向ライン30で結合される。これらの可変推力特徴マーク22は、それぞれのピッチ特徴マーク20の下方に位置するので、推力特徴マーク22の頂点から、同じ側の関連するピッチ特徴マーク群20の間の中間点(これらの中間点は、
図6の水平破線で結ばれる)までの距離によって、パイロットに対して、現在の推力に加算して目標推力を達成するために必要となる推力の大きさを通知することができる。パイロットが、推力を増加させると(例示のために、ピッチは変化していないと仮定する)、これらの可変推力特徴マーク22は上方に移動し(対応するピッチ特徴マークに近づく)、そして動的垂直方向ライン30は、現在の推力が目標推力に等しくなり、これらの可変推力特徴マーク22が、姿勢インジケータのそれぞれの側の関連するピッチ特徴マーク群20の間に表示されるまで長さを減少させることになる。この場合も同じように、これによって、パイロットに対して、推力設定が正しいことを通知することができる。
【0046】
図6では、反対方向を指している矢頭が垂直方向ラインの両端に位置している状態の垂直方向ライン24がピッチ差(可変)の絶対値を表わしているのに対し、反対方向を指している矢頭が垂直方向ラインの両端に位置している状態の垂直方向ライン26は、推力差(可変)の絶対値を表わしている。垂直方向ライン24及び26、及び水平破線は、実際のディスプレイの一部ではなく、シンボル20,22,及び30で表わされる差分を示す図形シンボルである。
【0047】
図7は、主エアデータシステムが故障したか、または信頼できず、そして航空機がLevel Flight(水平飛行)モードになっている場合の姿勢インジケータの状態を示すために同様のシンボロジーを用いる様子を示している。
図7は
図6とは、目標速度が、“260KTS”ではなく、“240KTS”であることを通知する必要がある点で異なっている。
図7は更に、
図6に示すように、目標推力が現在の推力よりも大きいというのではなく、目標推力が現在の推力よりも小さくて、パイロットに対して、推力を減少させる必要があることを通知することができる点で異なっている。つまり、
図6が、ピッチ及び推力を大きくする必要がある状況を示しているのに対し、
図7は、ピッチを大きくし、かつ推力を減少させる必要がある状況を示している。
【0048】
パイロットは、モードがLevel Flight(水平飛行)モードまたは−3 Degree Glideslope(滑走路に向けての3度の降下角進入)モードである場合に推力を、どの程度加算すべきか、または減算すべきかについて認識する必要がある状態になると、コンピュータ10(
図1参照)は、以下の情報:(1)現在の推力(これは、それぞれN1またはTPR、エンジンRPMまたは圧力パラメータである可能性が最も高い);(2)目標推力(“thrust for level flight(水平飛行に要する推力)”に関するテーブル中のN1またはTPR値);及び(3)これらの2つの推力の差を必要とする。これは、ピッチ特徴マーク群の上方または下方に延びる動的(すなわち、動いている)ラインを表示するために使用される推力差である。例えば、航空機が、エアデータ不調が起きたときに、スロットルレバーが中間位置の近傍にある状態で飛行していると仮定する。次に、当該システムは、水平飛行モードを表わすシンボル群を表示する。コンピュータは、6度のピッチ目標が必要であると判断する。適切な指示に応答して、ディスプレイコンピュータ14は、主フライトディスプレイ16に指示して、2対のピッチ特徴マークを表示させて所望のピッチ姿勢を通知することができる。次に、コンピュータ10は、55のN1エンジン値が必要であることを突き止める。コンピュータ10は、エンジンの現在のN1値が76であることを通知する情報を受信する。従って、推力差は+21N1である。当該数値を用いて、シンボル22を、
図7に示すピッチ特徴マーク群の上方に描く。パイロットがエンジン推力を戻すので、当該差分は、N1エンジン値が55に等しくなるまで徐々に小さくなる、すなわち動いているライン30は、これらのラインが消えるまで徐々に短くなる。
【0049】
可変推力特徴マーク22及び動的垂直方向ライン30は、非常に高速にリフレッシュされる(主フライトディスプレイと同じ速度で)ので、搭乗員がスロットルレバーを位置決めすることができるのは移動している標的である。例えば、公知の主フライトディスプレイでは、表示されるシンボロジーは、1秒当たり約20回の割合で継続的に更新される。
【0050】
それとは異なり、ピッチ特徴マーク群、及び対気速度/高度/垂直速度のテキスト推定値は、そのように頻繁に更新する必要はない。パイロットが或るピッチ姿勢で飛行しているときには、ピッチ目標を動的に変える必要がないので、静的ピッチ特徴マークを短期間に亘って生成するために使用される重量及び高度は静的である。これにより、パイロットがピッチ目標に厳密に、かつ一貫して追従する能力を軽減することができる。しかしながら、航空機が燃料を燃やし、そして降下すると、パイロットが飛行している際に設定すべきピッチ姿勢目標が変化することになり、そしてこれが、本明細書において開示されるシステムの種々利点のうちの1つの利点である:すなわち、当該システムは、当該更新済み重量及び高度を利用して、新規のピッチ目標を計算する。ピッチ目標は、1分当たり1回または2回の割合で更新することが望ましいので、更新は間欠的に行なわれることになり、従ってそのようであることから、ピッチ目標が極めて速く目まぐるしく変わるということがなく、長期(着陸までの飛行の残りの部分)に亘って動的に設定されたままである。
【0051】
1つの実施形態によれば、コンピュータ10(
図1参照)をプログラムしてエアデータを監視する。これは、検出される動圧値(実際値q)を合成動圧値(合成値q)と比較することにより行なうことができる。合成(すなわち、内部)動圧は、推定された揚力係数に基づいており、この揚力係数が今度は、迎角及び他の係数に応じて変化する。次に、当該合成動圧を気流中に挿入されたピトー管プローブで検出される動圧と比較する。検出された動圧が、合成動圧から閾値以上変位すると、モニタが作動して、信頼できないエアデータにフラグを立て、そして所望のピッチ姿勢及び推力差を示す新規のシンボロジーを主フライトディスプレイに提示する。
【0052】
1つの実施形態によれば、エアデータの信頼性は、合成動圧q
LIFTを、気流中に挿入されたピトー管プローブで検出される動圧(実際の動圧)と比較することにより検査することができる。合成動圧は、推定された揚力係数C
Lに基づき、次式に従って計算される:
q
LIFT=L/(C
LxS)
式中、揚力L=Wxn
Zの関係があり;Wは航空機の総重量であり;n
Zは荷重係数であり;Sは翼面積であり;そしてC
L=C
L0+ΔC
L+C
Lαxα
VANESの関係があり、式中、C
L0は迎角がゼロに等しいときの揚力係数であり、ΔC
Lは、高揚力を得られる可動翼面により生じる揚力係数の変化量であり、C
Lαは、α
VANESの関数として変化する揚力係数の勾配であり、そしてα
VANESは、迎角センサにより測定される迎角である。
【0053】
ρを航空機が飛行中に通過する空気の密度とし、そしてvを航空機の速度とした場合、動圧が1/2ρv
2に等しくなることは公知である。合成動圧を求めることができる場合、一旦、実際の動圧と合成動圧との間の不一致を示す状態が生じると、フライトコントロールコンピュータは、vの解を求め、そして航空機乗組員に、バックアップ対気速度を与えて飛行させることができる。
【0054】
この場合も同じように、これは、合成動圧、及び検出される動圧qの両方を比較することにより行なうことができる。高度が悪化する(静圧が異常になる)と、上記C
L計算を行なうことになり、そして合成qが間違った値になるので、同じモニタを作動させることにより、“bad air data(悪化エアデータ)”を検出する。任意であるが、測定対気速度または測定高度の何れかが信頼できない場合、主エアデータの全てに、間違いフラグを立てる。
【0055】
図8は、US第2010/0100260A1号から複写した図面であり、そして公知のエアデータシステム300の構成要素群を示しており、このエアデータシステム300を用いてエアデータを特定して使用することにより、制御信号を生成して航空機の操縦を制御することができる。この公知のエアデータシステム300はフライトコントロールコンピュータ302を含み、このフライトコントロールコンピュータ302は、ポジションセンサ群304、ピトー管プローブ群306、静圧センサ群308、迎角センサ群310、慣性座標系311、及びフライトマネジメントコンピュータ313と通信する。ポジションセンサ群304、ピトー管プローブ群306、静圧センサ群308、及び/又は迎角センサ群310は、冗長なプローブ群及びセンサ群とすることができる。別の表現をすると、異なるプローブ群及びセンサ群が同じ情報を提供するようにしてもよい。情報のこの冗長性を利用して、これらのセンサが測定するデータの可用性及び完全性を高めることができる。
【0056】
ポジションセンサ群304は、航空機の制御翼面及び高揚力翼面の位置を表わす翼面位置データ312を生成する。これらの制御翼面は、例えばエレベータ(昇降舵)、水平スタビライザ、エルロン(補助翼)、ラダー(方向舵)、トリムタブ(可動舵)、スポイラー(板状の可動装置)、フラップ、スラット、及び他の可動翼面を含む。ポジションセンサ群304は、これらの制御翼面を動かし、そして位置決めするために使用されるアクチュエータに接続することができる。特定の実施形態によって異なるが、任意の種類のポジションセンサを用いることができる。
【0057】
ピトー管プローブ群306は、動いている空気がピトー管プローブ内に滞留するようになるときの総圧を測定するセンサである。これらの測定の結果として、総圧データ314が生成される。ピトー管プローブ群306は、航空機の胴体に設けることができる。
【0058】
静圧センサ群308は静圧データ316を生成する。これらのセンサもまた、航空機の胴体に設けることができる。静圧センサ群308は、空気取り入れ口の形態を採ることができる。空気取り入れ口は、航空機の胴体の埋込穴(flush−mounted hole)とすることができる。
【0059】
迎角センサ群310は迎角データ318を生成する。迎角センサ群310もまた、航空機の胴体に設けることができる。迎角センサ群310は、迎角ベーンで構成されるセンサ群(attack vane sensors)を用いて実現することができる。迎角ベーンで構成されるセンサはエアデータセンサであり、このエアデータセンサでは、羽根がシャフトに取り付けられ、このシャフトは自由に回転することができる。この種類のセンサは、航空機の迎角を測定する。
【0060】
慣性座標系311は慣性データ319を生成する。慣性データ319は、荷重係数321のようなデータを含む。
【0061】
迎角センサ群310、ピトー管プローブ群306、及び静圧センサ群308からのデータは、エアデータプロセス320で使用されて、主エアデータ322及び代替エアデータ324を計算する。更に、慣性座標系311からの慣性データ319も使用して、代替エアデータ324を計算することができる。主エアデータ322は、迎角326、動圧328、及び対気速度330を含む。代替エアデータ324は、合成迎角332、合成動圧334、合成横滑り角336、及び合成対気速度330を含む。代替エアデータ324を用いて、主エアデータ322が正しいことを証明することができる。更に、代替エアデータ324は、主エアデータ322を利用することができない、または主エアデータ322が供給されない場合に利用することができる。
【0062】
これらの例では、迎角326は、迎角データ318とするか、または迎角データ318に基づいて生成することができる。動圧328及び対気速度330は、総圧データ314及び静圧データ316に基づいて計算することができる。
【0063】
合成迎角332は、翼面位置データ312、揚力340、及び動圧328を用いて計算することができる。揚力340は、エアデータプロセス320で計算される。揚力340は、総重量344及び荷重係数321を用いて計算される。この例では、総重量344は、航空機の重量推定値である。合成動圧334は、揚力340、翼面位置データ312、及び迎角データ318に基づいて計算される。揚力340は航空機の総重量344に荷重係数を乗算した値に等しくなる。この力は、3つの変数の関数である。これらの変数は、高揚力面及び制御翼面の位置、動圧、及び翼の迎角を含む。揚力340及び翼面位置データ312が判明している場合、合成動圧334は、迎角も判明している場合に計算することができ、そして合成迎角332は、動圧も判明している場合に計算することができる。合成動圧334を用いて、航空機の合成対気速度338を生成するか、または同定することができる。合成動圧334を更に用いることにより、総圧データ314及び静圧データ316が共に正しいことを証明することができる。
【0064】
図8を参照し続けると、共通モードモニタ346は、主エアデータ322を代替エアデータ324と比較する。この比較を行なって、主エアデータ322が、航空機に対する制御操作を実行するために信頼できるかどうかについて判断することができる。例えば、共通モードモニタ346は、合成迎角332を迎角326と比較することができる。この比較を行なって、迎角326を、航空機の操縦に用いることができるかどうかについて判断することができる。同様にして、動圧328を合成動圧334と比較することにより、ピトー管プローブ306または静圧センサ308に影響する虞のある不調を監視し、そして同定することができる。
【0065】
このようにして、共通モードモニタ346は、総圧データ314、静圧データ316、及び迎角データ318のような主エアデータ322をフライトコントロールコンピュータ302に供給して、制御則348に適用することにより、制御信号350を生成することができる。制御信号350で制御翼面及びエンジンのような種々の構成要素を制御することができる。モニタ347は別のモニタとすることができ、この別のモニタを、フライトコントロールコンピュータ302が利用して、例えばポジションセンサ304内のデータ、ピトー管プローブ306内のデータ、静圧センサ308内のデータ、及び迎角センサ10内のデータのような一連のセンサ内のデータを比較することができる。モニタ347は、例えばインラインモニタのような任意のモニタとすることができる。
【0066】
共通モードモニタ346及び/又はモニタ347が、エアデータプロセス320において、特定のセンサがエアデータを要求通りに供給していないと判断する場合、制御則348に、または他の航空機機能に、代替エアデータ324を使用することができる。この補助データソースは、例えばフライトコントロールコンピュータ302が使用する合成迎角332及び/又は合成動圧334とすることができる。制御則348に、または他の航空機機能に、主エアデータ322または代替エアデータ324を使用することにより、制御信号を生成して航空機の操縦を制御することができる。
【0067】
本明細書において開示されるシンボロジーは航空機乗組員に、安全な飛行状態に戻すために、または安全な飛行状態を維持するために必要なピッチ基準及び出力基準を与えることができる。新規のシンボロジーは、水平飛行を表わすピッチ/出力状態、緩降下飛行を表わすピッチ、最大上昇定格を表わすピッチ、または3度の降下角航跡を表わすピッチ/出力を示すことができる。新規のシンボロジーは、航空機乗組員に十分正確なデータを与えることにより、これらの航空機乗組員が空港に到着し、そして安全に着陸することができる。
【0068】
この設計により、ピッチ/出力に関する解決策をパイロットに対して、この解決策が:パイロットが安全な飛行を維持するためのピッチ及び出力で直ちに飛行する必要がある状況において大きな作業負荷を要するエアデータまたは迎角が不調になっている状態で最も必要になるときに、直ちに、かつ直感的に理解することができるように提示することができる。この設計では、パイロットが、これらの値を基準マニュアルに従って探し出す必要がない(従って、参照間違い、及び反応時間を低減することができる)。当該ディスプレイは、パイロットが実施する基本作業を表示する手段であり、パイロットはこの基本作業を、パイロットが正しいピッチ及び出力設定を行なっている最中に参照する必要がある計器、すなわち主フライトディスプレイにエアデータ不調が起きているときに実施する。更に、後続の飛行フェーズでは、変更されたピッチ及び出力設定(降下及び着陸を表わす)をパイロットに対して、パイロットの主計器に表示して、これまで信頼できない対気速度テーブルを手動で参照するために費やしてきた乗組員の作業負荷を軽減することができる。
【0069】
本明細書において開示されるシステム及び方法は、航空機への適用に限定されるのではなく、航空機フライトシミュレータに適用することもできる。
【0070】
本発明について、種々の実施形態を参照しながら説明してきたが、この技術分野の当業者であれば、本発明の範囲から逸脱しない限り、種々の変更を加えることができ、そして等価物を本発明の構成要素の代わりに用いることができることを理解できるであろう。更に、本発明の基本範囲から逸脱しない限り、多くの変形を加えて、特定の状況を本発明の教示に合わせることができる。従って、本発明は、本発明を実施するために想定される最良の形態として開示される特定の実施形態に限定されない。
【0071】
請求項において使用されているように、“computer system(コンピュータシステム)”という用語は、少なくとも1つのコンピュータまたはプロセッサを有し、そして2つ以上のコンピュータまたはプロセッサを有することができるシステムを包含するように広義に解釈されるべきである。