(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012723
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】銅めっきする方法
(51)【国際特許分類】
C25D 3/38 20060101AFI20161011BHJP
C25D 5/34 20060101ALI20161011BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20161011BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20161011BHJP
H01L 23/522 20060101ALI20161011BHJP
H01L 21/288 20060101ALI20161011BHJP
C25D 7/12 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
C25D3/38 101
C25D5/34
H01L21/88 J
H01L21/288 E
C25D7/12
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-516238(P2014-516238)
(86)(22)【出願日】2012年5月7日
(65)【公表番号】特表2014-523485(P2014-523485A)
(43)【公表日】2014年9月11日
(86)【国際出願番号】EP2012058377
(87)【国際公開番号】WO2012175249
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2015年5月1日
(31)【優先権主張番号】11171055.4
(32)【優先日】2011年6月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】300081877
【氏名又は名称】アトテツク・ドイチユラント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Atotech Deutschland GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ディアク ローデ
(72)【発明者】
【氏名】ベアント レルフス
(72)【発明者】
【氏名】樋口 純
【審査官】
國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−185381(JP,A)
【文献】
特公昭49−034887(JP,B1)
【文献】
特開2003−147572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/00 − 7/12
H01L 21/288
H01L 21/3205
H01L 21/768
H01L 23/522
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅を用いて、プリント回路基板又はIC基板中の微細構造を充填するため、あるいはリセス構造を充填するための、めっき浴中で銅めっきする方法であって、
該基板を、銅めっき前及び/又は銅めっき中にレベラー添加剤と接触させ、かつ該レベラー添加剤が、式(I)
【化1】
[式中、Yは、−(CH
2)−であり;
nは、1〜3にわたり;
R
1及びR
2は、水素及び線状及び分枝鎖状のC
1〜C
4アルキルから独立して選択され、
R
3は、水素、線状及び分枝鎖状のC
1〜C
4アルキル、リチウム、ナトリウム、カリウム及びアンモニウムから選択され;
Aは、非置換トリアゾール及び非置換テトラゾールから選択されるヘテロ環部分である]による分子から選択される、銅めっきする方法。
【請求項2】
(A)該基板を、
(i)少なくとも1種の銅イオン源、
(ii)少なくとも1種の酸及び
(iii)式(I)による少なくとも1種のレベラー添加剤
を含んでなる水性の酸性銅めっき浴と接触させる工程
及び
(B)電流を該基板に適用する工程
を含んでなる、請求項1記載の銅めっきする方法。
【請求項3】
(A1)該基板を、
(i)少なくとも1種の酸及び
(ii)式(I)による少なくとも1種のレベラー添加剤
を含んでなる水性前処理組成物と接触させる工程、
(A2)該基板を、水性の酸性銅めっき浴と接触させる工程及び
(B)電流を該基板に適用する工程
を含んでなる、請求項1記載の銅めっきする方法。
【請求項4】
式(I)によるレベラー添加剤の濃度が、0.001〜100mg/lにわたる、請求項1から3までのいずれか1項記載の銅めっきする方法。
【請求項5】
少なくとも1種の該酸が、硫酸、フルオロホウ酸、リン酸及びメタンスルホン酸を含んでなる群から選択される、請求項2から4までのいずれか1項記載の銅めっきする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上へ銅を電気めっきする分野に関し、特に水性の酸性銅めっき浴組成物、銅めっき用の前処理組成物及びそれらの使用に関する。
【0002】
発明の背景
銅めっき用の前処理組成物及び銅の電解析出用の水性の酸性めっき浴は、プリント回路基板及びIC基板の製造に使用され、その際に、トレンチ、スルーホール(TH)、ブラインドマイクロビア(BMV)及びピラーバンプのような微細構造が、銅を用いて、充填されるか又はビルドアップする必要がある。銅のそのような電解析出のその他の用途は、半導体基板中及び半導体基板上での、リセス構造、例えばシリコン貫通ビア(TSV)のフィリング又は再配線層(RDL)及びピラーバンプの形成である。
【0003】
前処理組成物中及び/又は酸性銅めっき浴中に存在する有機レベラー添加剤は、該基板表面上へ吸着され、その上への該銅析出に影響を及ぼす。
【0004】
EP 1 249 861 A2の特許出願公開明細書には、半導体基板上への銅析出用の前処理組成物が開示されている。該前処理組成物は、有機スルフィド又はジスルフィド添加剤及び任意にレベラー添加剤、例えばフェナジンアゾ染料を含んでなる。
【0005】
JP 2001-152387 Aの特許出願公開公報には、銅めっきする方法が開示され、その際に、該基板を、(i)塩化物イオン、界面活性剤及び含窒素有機化合物の群から選択される添加剤を含有する前処理組成物中に浸漬し、(ii)すすぎ、かつ(iii)界面活性剤を含まないめっき浴から銅を析出させる。
【0006】
US 2,758,076の特許明細書には、5−アミノ−2−メルカプト−ベンゾイミダゾールを含んでなる酸性銅めっき浴が開示されている。そのようなめっき浴から誘導される銅析出物は、極めて光沢があり、微粒状であり、軟らかく、かつレベリング性が良好である。
【0007】
EP 1 069 211 A2の特許出願公開明細書には、Nを含有する五員の及びNを含有する六員のヘテロ環分子、例えば5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール及び4−アミノ−5−(4´−ピリジル)−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオールから選択される低分子量レベラー添加剤を含んでなる、酸性銅めっき浴が開示されている。
【0008】
しかしながら、前処理組成物中及び/又は酸性銅めっき浴中でのそのようなレベラー添加剤は、最先端のプリント回路基板、IC基板の製造及び半導体基板のメタライゼーションにおける現在の及び将来の要件を満たすには適していない。プリント回路基板及びIC基板中のBMVは、銅で、完全にかつ単にコンフォーマルにではなく、充填される必要がある。BMVフィリング用の典型的な要件は、例えば次の通りである:完全に充填されたBMVを得ること、その一方で10〜15μm以下の銅を、隣接した平面基板領域上へ析出させ、かつ同時に充填BMVの外側表面上に0〜5μm以下のディンプルを生じること。
【0009】
半導体ウェーハのメタライゼーションにおいて、TSVフィリングは、銅での完全でボイドフリーのフィリングをもたらさなければならず、その一方で隣接した平面領域上への過剰めっきされた銅は、ビア直径の1/5以下で生じなければならない。
【0010】
酸性銅めっき浴の使用中に、レベラー添加剤は、分解生成物を形成する傾向があり、それらの生成物はそのようなめっき浴の寿命を低下させる。
【0011】
更に、銅析出中にレベラー添加剤又はそれらの分解生成物が該銅析出物中へ混入することは、析出された銅の延性のような機械的性質に不利な影響を及ぼす。
【0012】
前処理組成物中でのレベラー添加剤の利用は依然として、そのような問題を解決しない。特に、前処理組成物中で使用されるそのようなレベラー添加剤のレべリング及びTSVフィリング特性は、プリント回路基板、IC基板の技術水準の製造及び半導体メタライゼーションにおける要件に適合するには十分ではない。
【0013】
発明の課題
ゆえに、本発明の課題は、TSVフィリング、再配線層の析出又はピラーバンプ形成のような、プリント回路基板及びIC基板製造並びに半導体基板のメタライゼーションの分野における前記の用途のための要件を満たす、銅の電解析出のための前処理組成物及び/又は水性の銅の酸性めっき浴を提供することである。
【0014】
発明の要約
この課題は、めっき浴中で銅めっきする方法により解決され、その際に、該基板を、レベラー添加剤と、銅めっき前及び/又は銅めっき中に接触させ、かつ該レベラー添加剤が、式(I)による分子から選択される:
【化1】
【0015】
Yは、−(NR
4)−、−(CH
2)−、−O−及び−S−からなる群から選択され、かつnは、0〜6にわたる。
【0016】
R
1及びR
2は、水素及び線状及び分枝鎖状のC
1〜C
4アルキルから独立して選択される。好ましくは、R
1及びR
2は、水素、メチル及びエチルからなる群から選択される。最も好ましくは、R
1及びR
2は、同じであり、かつ水素、メチル及びエチルからなる群から選択される。
【0017】
R
3は、水素、線状及び分枝鎖状のC
1〜C
4アルキル、リチウム、ナトリウム、カリウム及びアンモニウムから選択される。
【0018】
該ヘテロ環部分Aは、非置換トリアゾール及び非置換テトラゾールから選択される。
【0019】
R
4は、水素及び線状及び分枝鎖状のC
1〜C
4アルキルからなる群から選択される。
【0020】
該水性前処理組成物中及び/又は該酸性銅めっき浴中に存在する式(I)による有機レベラー添加剤は、該基板表面上へ吸着され、その上への該銅析出に影響を及ぼす。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】例1(比較)から得られた充填BMVの光学顕微鏡写真。
【
図2】例2(本発明)から得られた充填BMVの光学顕微鏡写真。
【
図3】例7(比較)から得られた銅充填TSVの光学顕微鏡写真。
【
図4】例8(比較)から得られた銅充填TSVの光学顕微鏡写真。
【
図5】例9(本発明)から得られた銅充填TSVの光学顕微鏡写真。
【
図6】例10(比較)から得られた銅充填TSVの光学顕微鏡写真。
【
図7】例11(本発明)から得られた銅充填BMVの光学顕微鏡写真。
【0022】
発明の詳細な説明
本発明によるレベラー添加剤は、式(I)による分子から選択される:
【化2】
【0023】
Yは、−(NR
4)−、−(CH
2)−、−O−及び−S−からなる群から選択され、nは、0〜6にわたり、かつAは、非置換のヘテロ環部分である。
【0024】
Yが−(NR
4)−、−O−及び−S−から選択される場合には、nは、好ましくは1〜6にわたる。
【0025】
R
1及びR
2は、水素及び線状及び分枝鎖状のC
1〜C
4アルキルから独立して選択される。好ましくは、R
1及びR
2は、水素、メチル及びエチルからなる群から選択される。最も好ましくは、R
1及びR
2は、同じであり、かつ水素、メチル及びエチルからなる群から選択される。
【0026】
R
3は、水素、線状及び分枝鎖状のC
1〜C
4アルキル、リチウム、ナトリウム、カリウム及びアンモニウムから選択される。
【0027】
R
4は、水素及び線状及び分枝鎖状のC
1〜C
4アルキルからなる群から選択される。
【0028】
該ヘテロ環部分Aは、非置換トリアゾール及び非置換テトラゾールから選択される。
【0029】
‘非置換’という用語は、水素、該ヘテロ環部分Aに結合された1個の
【化3】
部分及び1個の−SR
3部分以外の置換基を有しないものとして、本明細書では定義される。
【0030】
該−SR
3及び
【化4】
部分は独立して、該ヘテロ環部分Aの炭素原子又は窒素原子のいずれかに結合されていてよい。
【0031】
より好ましくは、該−SR
3部分は、該ヘテロ環部分Aの炭素原子に結合されている。
【0032】
本発明の一実施態様において、Yが、−(NR
4)−、−O−及び−S−から選択される場合に、nは、1〜6にわたる。
【0033】
本発明の好ましい実施態様において、Yは、−(CH
2)−及び−(NR
4)−からなる群から選択され、nは、1〜3にわたり、かつR
4は、水素、メチル及びエチルから選択される。
【0034】
本発明の一実施態様において、該基板を、式(I)によるレベラー添加剤を含んでなる水性前処理組成物と接触させる。
【0035】
該水性前処理組成物中の式(I)による少なくとも1種のレベラー添加剤の濃度は、0.001mg/l〜100mg/l、より好ましくは0.005mg/l〜約10mg/l及び最も好ましくは0.01mg/l〜1mg/lにわたる。
【0036】
該水性前処理組成物は更に、少なくとも1種の酸を含んでなる。
【0037】
該水性前処理組成物は、≦2、より好ましくは≦1のpH値を有する。
【0038】
少なくとも1種の該酸源は、硫酸、フルオロホウ酸、リン酸及びメタンスルホン酸を含んでなる群から選択され、かつ20g/l〜400g/l、より好ましくは50g/l〜300g/lの濃度で添加される。
【0039】
該水性前処理組成物は好ましくは更に、少なくとも1種のアクセラレータ−ブライトナー添加剤を含有する。少なくとも1種の該アクセラレータ−ブライトナー添加剤は、有機のチオール化合物、スルフィド化合物、ジスルフィド化合物及びポリスルフィド化合物を含んでなる群から選択される。好ましいアクセラレータ−ブライトナー添加剤は、3−(ベンズチアゾリル−2−チオ)−プロピルスルホン酸、3−メルカプトプロパン−1−スルホン酸、エチレンジチオジプロピルスルホン酸、ビス−(p−スルホフェニル)−ジスルフィド、ビス−(ω−スルホブチル)−ジスルフィド、ビス−(ω−スルホヒドロキシプロピル)−ジスルフィド、ビス−(ω−スルホプロピル)−ジスルフィド、ビス−(ω−スルホプロピル)−スルフィド、メチル−(ω−スルホプロピル)−ジスルフィド、メチル−(ω−スルホプロピル)−トリスルフィド、O−エチル−ジチオカルボン酸−S−(ω−スルホプロピル)−エステル、チオグリコール酸、チオリン酸−O−エチル−ビス−(ω−スルホプロピル)−エステル、チオリン酸−トリス−(ω−スルホプロピル)−エステル及びそれらの相応する塩を含んでなる群から選択される。該水性前処理組成物中に存在する全てのアクセラレータ−ブライトナー添加剤の濃度は、0.01mg/l〜100mg/l、より好ましくは0.05mg/l〜10mg/lにわたる。
【0040】
任意に、該水性前処理組成物は、式(I)による少なくとも1種のレベラー添加剤に加えて、含窒素有機化合物、例えばポリエチレンイミン、アルコキシル化ポリエチレンイミン、アルコキシル化カプロラクタム及びそれらのポリマー、ジエチレントリアミン及びヘキサメチレンテトラミン、有機染料、例えばヤヌスグリーンB、ビスマルクブラウンY及びアシッドバイオレット7、含硫黄アミノ酸、例えばシステイン、フェナジニウム塩及びそれらの誘導体を含んでなる群から選択される、少なくとも1種の更なるレベラー添加剤を含有する。好ましい任意の該更なるレベラー添加剤は、含窒素有機化合物から選択される。前記の任意のレベラー添加剤化合物は、該水性前処理組成物に、0.1mg/l〜100mg/lの量で添加される。
【0041】
該水性前処理組成物は、更に、少なくとも1種のキャリア−サプレッサー添加剤を含有してよい。少なくとも1種の任意の該キャリア−サプレッサー添加剤は、通常、ポリアルキレングリコール化合物であり、かつポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ステアリン酸ポリグリコールエステル、アルコキシル化ナフトール、オレイン酸ポリグリコールエステル、ステアリルアルコールポリグリコールエーテル、ノニルフェノールポリグリコールエーテル、オクタノールポリアルキレングリコールエーテル、オクタンジオール−ビス−(ポリアルキレングリコールエーテル)、ポリ(エチレングリコール−ran−プロピレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)を含んでなる群から選択される。該水性前処理組成物中の前記の任意のキャリア−サプレッサー添加剤の濃度は、0.005g/l〜20g/l、より好ましくは0.01g/l〜5g/lにわたる。
【0042】
該水性前処理組成物は、更に、少なくとも1種のハロゲン化物イオン源、好ましくは塩化物イオン源を、20mg/l〜200mg/l、より好ましくは30mg/l〜60mg/lの量で含有してよい。
【0043】
該水性前処理組成物は更に、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤又は非イオン界面活性剤であってよい、少なくとも1種の湿潤剤を含有してよい。非イオン界面活性剤が好ましい。適用可能な湿潤剤及びそれらの濃度は、先行技術から知られている。
【0044】
該基板は、該水性前処理組成物と、1分〜25分間、より好ましくは3分〜15分間、接触される。接触中に、該水性前処理組成物の温度は、15℃〜80℃、より好ましくは20℃〜60℃の範囲内に維持される。
【0045】
該基板は、該水性前処理組成物と、例えば噴霧又は浸漬により、接触されてよい。本明細書に記載された方法は、常用の浸漬タンク技術において(垂直加工)又はコンベアー搬送式機械中で(水平加工)、実施されてよい。半導体基板のためには、めっきすべき該基板の前処理を真空中で実施してよい。
【0046】
次に、該基板は、水ですすがれ、水性の酸性銅めっき浴と接触される。酸性銅めっき浴の種類は、特定のタイプの酸性銅めっき浴に限定されない。電流は、めっき目的のために該基板に適用される。
【0047】
好ましくは、該水性の酸性銅めっき浴は、式(I)によるレベラー添加剤を含有しない。銅めっき浴及び銅の電解析出のためのプロセスパラメータは、当工業界において公知であり、かつ当業者が本発明による方法に適用及び適合させることができる。
【0048】
本発明の他の実施態様において、該基板を、式(I)によるレベラー添加剤を含んでなる水性の酸性銅めっき浴組成物と接触させる。
【0049】
該水性の酸性銅めっき浴中の式(I)による少なくとも1種のレベラー添加剤の濃度は、0.001mg/l〜100mg/l、より好ましくは0.005mg/l〜約10mg/l及び最も好ましくは0.01mg/l〜1mg/lにわたる。
【0050】
該水性の酸性銅めっき浴組成物は、≦2、より好ましくは≦1のpH値を有する。
【0051】
該水性の酸性銅めっき浴は更に、硫酸銅及びアルキルスルホン酸銅、例えばメタンスルホン酸銅を含んでなる群から好ましくは選択される、少なくとも1種の銅イオン源を含有する。該銅イオン濃度は通常、15g/l〜75g/lにわたる。
【0052】
該水性の酸性銅めっき浴は更に、硫酸、フルオロホウ酸、リン酸及びメタンスルホン酸を含んでなる群から好ましくは選択され、かつ通常、20g/l〜400g/l、より好ましくは50g/l〜300g/lの濃度で添加される、少なくとも1種の酸源を含有する。
【0053】
任意に、該水性の酸性銅めっき浴は、式(I)による少なくとも1種のレベラー添加剤に加えて、含窒素有機化合物、例えばポリエチレンイミン、アルコキシル化ポリエチレンイミン、アルコキシル化カプロラクタム及びそれらのポリマー、ジエチレントリアミン及びヘキサメチレンテトラミン、有機染料、例えばヤヌスグリーンB、ビスマルクブラウンY及びアシッドバイオレット7、含硫黄アミノ酸、例えばシステイン、フェナジニウム塩及びそれらの誘導体を含んでなる群から選択される、少なくとも1種の更なるレベラー添加剤を含有する。好ましい該更なるレベラー添加剤は、含窒素有機化合物から選択される。前記の任意のレベラー添加剤化合物は、該水性の酸性銅めっき浴に、0.1mg/l〜100mg/lの量で添加される。
【0054】
該水性の酸性銅めっき浴は更に、有機のチオール化合物、スルフィド化合物、ジスルフィド化合物及びポリスルフィド化合物を含んでなる群から選択される、少なくとも1種のアクセラレータ−ブライトナー添加剤を含有してよい。好ましいアクセラレータ−ブライトナー添加剤は、3−(ベンズチアゾリル−2−チオ)−プロピルスルホン酸、3−メルカプトプロパン−1−スルホン酸、エチレンジチオジプロピルスルホン酸、ビス−(p−スルホフェニル)−ジスルフィド、ビス−(ω−スルホブチル)−ジスルフィド、ビス−(ω−スルホヒドロキシプロピル)−ジスルフィド、ビス−(ω−スルホプロピル)−ジスルフィド、ビス−(ω−スルホプロピル)−スルフィド、メチル−(ω−スルホプロピル)−ジスルフィド、メチル−(ω−スルホプロピル)−トリスルフィド、O−エチル−ジチオカルボン酸−S−(ω−スルホプロピル)−エステル、チオグリコール酸、チオリン酸−O−エチル−ビス−(ω−スルホプロピル)−エステル、チオリン酸−トリス−(ω−スルホプロピル)−エステル及びそれらの相応する塩を含んでなる群から選択される。該水性の酸性銅浴組成物中に任意に存在する全てのアクセラレータ−ブライトナー添加剤の濃度は、0.01mg/l〜100mg/l、より好ましくは0.05mg/l〜10mg/lにわたる。
【0055】
該水性の酸性銅めっき浴は更に、通常、ポリアルキレングリコール化合物であり、かつポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ステアリン酸ポリグリコールエステル、アルコキシル化ナフトール、オレイン酸ポリグリコールエステル、ステアリルアルコールポリグリコールエーテル、ノニルフェノールポリグリコールエーテル、オクタノールポリアルキレングリコールエーテル、オクタンジオール−ビス−(ポリアルキレングリコールエーテル)、ポリ(エチレングリコール−ran−プロピレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)を含んでなる群から選択される、少なくとも1種のキャリア−サプレッサー添加剤を含有してよい。前記キャリア−サプレッサー添加剤の濃度は、0.005g/l〜20g/l、より好ましくは0.01g/l〜5g/lにわたる。
【0056】
該水性の酸性銅めっき浴は任意に更に、少なくとも1種のハロゲン化物イオン源、好ましくは塩化物イオン源を、20mg/l〜200mg/l、より好ましくは30mg/l〜60mg/lの量で含有する。
【0057】
該水性の酸性銅めっき浴は、本発明による方法において15℃〜50℃の温度範囲で、より好ましくは25℃〜40℃の範囲内で、電流を該基板に適用することにより操作される。0.01A/dm
2〜12A/dm
2、より好ましくは0.1A/dm
2〜7A/dm
2のカソード電流密度範囲が適用される。
【0058】
本発明の更に他の実施態様において、該水性の酸性銅めっき浴から銅でコーティングすべき該基板は、該酸性銅めっき浴中への浸漬前に水性前処理組成物中に浸漬される。前記水性前処理組成物は、式(I)による少なくとも1種のレベラー添加剤を含んでなり、その際に前記水性前処理組成物は、銅イオンを含有しない。任意に、該基板は、前記水性前処理組成物中に浸漬した後に、水ですすがれる。
【実施例】
【0059】
本発明は、次の限定されない例を参照することにより説明される。
【0060】
銅での十分なBMVフィリングは、該銅析出物が、いわゆるディンプル(該BMVの先端での銅表面のくぼみ)を有しないか又はほぼ有しないことを意味する。従って、十分に充填されたBMVの該銅表面は、できる限り平坦である。
【0061】
不十分なBMVフィリングは、該銅析出物の凹状構造により、すなわちディンプルにより特徴付けられる。銅充填ビア中のボイドも不十分である。
【0062】
方法(例1〜6):
装置:容積1.8lを有するGarnellセル、ポンプを有する浴撹拌、空気注入なし、可溶性銅アノード。
【0063】
Cu
2+イオン45g/l(硫酸銅として添加)、硫酸150g/l、Cl
-イオン50mg/l、Fe
2+イオン100mg/l、キャリア−サプレッサー添加剤としてポリエチレングリコール300mg/l及びアクセラレータ−ブライトナー添加剤としてビス−(ナトリウムスルホプロピル)−ジスルフィド(SPS)0.5mg/lを含んでなる銅浴原液を使用した。該レベラー添加剤を前記原液に添加した。
【0064】
銅めっきのためのパラメータ:セル電流2A、めっき時間67分、更なる調査のために使用された試験基板の領域での銅層厚 約18〜20μm、全ての実験前に2Aで90分のダミー基板めっき。
【0065】
例1〜6を通じて使用された試験基板レイアウトは、例えば100×80μm、120×80μm、150×80μm、150×60μmの寸法を有するブラインドマイクロビア及びトレンチ構造を含んでなる。
【0066】
例1(比較)
0.3mg/lの濃度の3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾールを、該レベラー添加剤として、該水性の酸性めっき浴に添加した。銅めっき後のBMVの断面を光学顕微鏡で調べた。前記レベラー添加剤のBMVフィリング特性は十分ではない(
図1)。
【0067】
例2(比較)
0.3mg/lの濃度の5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール(EP 1 069 211 A2)を、該レベラー添加剤として添加した。銅めっき後のBMVの断面を光学顕微鏡で調べた。前記レベラー添加剤のBMVフィリング特性は不十分である。
【0068】
例3(比較)
0.3mg/lの濃度の4−アミノ−5−(4´−ピリジル)−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール(EP 1 069 211 A2)を、該レベラー添加剤として添加した。銅めっき後のBMVの断面を光学顕微鏡で調べた。前記レベラー添加剤のBMVフィリング特性は不十分である。
【0069】
例4(本発明)
0.3mg/lの濃度の1−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−1H−テトラゾール−5−チオールを、該レベラー添加剤として、該めっき浴に添加した。銅めっき後のBMVの断面を光学顕微鏡で調べた。前記レベラー添加剤のBMVフィリング特性は十分である(
図2)。
【0070】
例5(本発明)
0.3mg/lの濃度の1−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−トリアゾール−5−チオールを、該レベラー添加剤として、該めっき浴に添加した。銅めっき後のBMVの断面を光学顕微鏡で調べた。前記レベラー添加剤のBMVフィリング特性は十分である。
【0071】
例6(比較)
0.3mg/lの濃度の1−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−ジアゾール−5−チオールを、該レベラー添加剤として、該めっき浴に添加した。銅めっき後のBMVの断面を光学顕微鏡で調べた。前記レベラー添加剤のBMVフィリング特性は十分である。
【0072】
方法及びプロセスフロー(例7〜10):
20×100μmの寸法を有するTSV構造を有するシリコン基板を、最初に脱イオン水中に浸漬し、次いで例7〜10による水性前処理組成物中に10分間浸漬し、脱イオン水ですすぎ、次いで電解銅めっきにかけた。
【0073】
硫酸銅、硫酸、アクセラレータ−ブライトナー添加剤、式(I)による分子ではないレベラー添加剤、キャリア−サプレッサー添加剤及び塩化物イオンを含んでなる銅めっき浴を、工程(iii)における電解銅めっきに使用した。該めっきパラメータは、0.1A/dm
2で120分、引き続き0.2A/dm
2で60分であった。
めっき装置:Nexxめっきツール。
【0074】
例7(比較)
該シリコン基板を、銅めっき前に、アクセラレータ−ブライトナー添加剤としてビス−(ω−スルホプロピル)−ジスルフィド4mg/lからなり、かつレベラー添加剤なしの水性前処理組成物中に10分間浸漬した。銅めっき後の切断した断面のTSVの顕微鏡写真は、大きなボイドを示す(
図3)。
【0075】
例8(比較)
該シリコン基板を、式(I)による分子ではないレベラー添加剤50mg/l及びアクセラレータ−ブライトナー添加剤としてビス−(ω−スルホプロピル)−ジスルフィド4mg/lからなる水性前処理組成物中に10分間浸漬し、水ですすぎ、次いで銅めっきにかけた。銅めっき後の切断した断面のTSVの顕微鏡写真はディンプルを示す。従って、該ビアフィリングは不十分である(
図4)。
【0076】
例9(本発明)
該シリコン基板を、式(I)によるレベラー添加剤として1−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−1H−テトラゾール−5−チオール50mg/l及びアクセラレータ−ブライトナー添加剤としてビス−(ω−スルホプロピル)−ジスルフィド4mg/lを含んでなる前処理組成物中に10分間浸漬し、水ですすぎ、次いで銅めっきにかけた。銅めっき後の切断した断面のTSVの顕微鏡写真はボイドフリーであり、かつ該ビアフィリングは十分である(
図5)。
【0077】
例10(比較)
該シリコン基板を、レベラー添加剤として1−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−ジアゾール−5−チオール50mg/l及びアクセラレータ−ブライトナー添加剤としてビス−(ω−スルホプロピル)−ジスルフィド4mg/lからなる水性前処理組成物中に10分間浸漬し、水ですすぎ、次いで銅めっきにかけた。銅めっき後の切断した断面のTSVの顕微鏡写真はボイドフリーであり、かつ該ビアフィリングは十分である(
図6)。
【0078】
例11(本発明)
無電解銅の層でコーティングしたブラインドマイクロビア(直径:85μm、深さ:50μm)を含んでなる基板を、レベラー添加剤として1−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−テトラゾール−5−チオール50mg/l、アクセラレータ−ブライトナー添加剤としてビス−(ω−スルホプロピル)−ジスルフィド4mg/l及び硫酸からなる水性前処理組成物中に10分間浸漬し、水ですすぎ、次いで、例7〜10に記載されたのと同じ銅めっき浴組成物を用いて銅めっきにかけた。適用された電流密度は1.0A/dm
2であった。銅めっき後の切断した断面のBMVの顕微鏡写真は、ボイドフリーであり、3.4μmのディンプル及び7.1μmの該基板表面の頂部での銅層厚を示す(
図7)。従って、十分なBMVフィリングのための要件が達成される。