特許第6012724号(P6012724)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フイルメニツヒ ソシエテ アノニムの特許一覧

<>
  • 特許6012724-ポリ尿素マイクロカプセルの製造方法 図000023
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012724
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】ポリ尿素マイクロカプセルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/14 20060101AFI20161011BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20161011BHJP
   A61K 8/11 20060101ALI20161011BHJP
   A61K 8/84 20060101ALI20161011BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20161011BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20161011BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20161011BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20161011BHJP
   A61Q 9/02 20060101ALI20161011BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20161011BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   B01J13/14
   A61L9/01 Q
   A61K8/11
   A61K8/84
   A61Q5/12
   A61Q5/02
   A61Q19/10
   A61Q15/00
   A61Q9/02
   A61Q13/00 102
   C08G18/32
【請求項の数】10
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-517530(P2014-517530)
(86)(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公表番号】特表2014-526954(P2014-526954A)
(43)【公表日】2014年10月9日
(86)【国際出願番号】EP2012051572
(87)【国際公開番号】WO2013000587
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2014年10月27日
(31)【優先権主張番号】11171696.5
(32)【優先日】2011年6月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】クロディ ベルゥアル ドレヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ダミアン ベルティエ
(72)【発明者】
【氏名】マルレーヌ ジャクモン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ ピション
(72)【発明者】
【氏名】ソニア ゴドフルワ
(72)【発明者】
【氏名】アルノー ストリュイゥ
(72)【発明者】
【氏名】マガリ ラトゥレール
(72)【発明者】
【氏名】エステル ラサ
【審査官】 岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−528285(JP,A)
【文献】 特開平03−296754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/14
A61K 8/11
A61K 8/84
A61L 9/01
A61Q 5/02
A61Q 5/12
A61Q 9/02
A61Q 13/00
A61Q 15/00
A61Q 19/10
C08G 18/32
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも2つのイソシアネート官能基を含む少なくとも1種のポリイソシアネートを香料に溶かして溶液を形成させるステップと、
b)ステップa)で得られた前記溶液に、乳化剤またはコロイド安定剤の水溶液を加えるステップと、
c)ステップb)で得られた前記混合物に、前記ポリイソシアネートと一緒になってポリ尿素壁を形成する3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールを加えて、マイクロカプセルスラリーを形成させるステップと
を含む、ポリ尿素マイクロカプセルの製造方法であって、
アミノ酸を少しも加えることなくその方法を実施することを条件とし、
前記少なくとも1種のポリイソシアネートが、少なくとも1種の脂肪族ポリイソシアネートと少なくとも1種の芳香族ポリイソシアネートとの混合物の形であり、その両方とも少なくとも2つのイソシアネート官能基を含み、
前記脂肪族ポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、イソホロンジイソシアネートの三量体およびヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットからなる群から選択され、かつ
前記芳香族ポリイソシアネートが、トルエンジイソシアネートのポリイソシアヌレート、トルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物およびキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物からなる群から選択される、ポリ尿素マイクロカプセルの製造方法。
【請求項2】
前記脂肪族ポリイソシアネートおよび前記芳香族ポリイソシアネートが、80:20〜10:90の各成分間モル比で使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脂肪族ポリイソシアネートおよび前記芳香族ポリイソシアネートが、60:40〜20:80の各成分間モル比で使用されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
25〜60%の量の香料が使用され、こうした百分率が前記得られたマイクロカプセルスラリーの全質量に対する質量で定義されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリイソシアネートが少なくとも3つのイソシアネート官能基を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
脂肪族ポリイソシアネートと芳香族ポリイソシアネートとの前記混合物が、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物との混合物であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリイソシアネートを、ステップa)で得られた前記溶液の全質量に対して2〜20質量%の量だけ使用することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記コロイド安定剤が、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドとポリエチレンまたはポリプロピレンオキシドとのコポリマー、アクリルアミドとアクリル酸とのコポリマー、カチオン性ポリマーおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ポリ尿素マイクロカプセルであって、
− 少なくとも2つのイソシアネート官能基を含む少なくとも1種のポリイソシアネートと3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールとの重合による反応生成物を含む、ポリ尿素壁と、
− コロイド安定剤または乳化剤と、
− カプセル化香料と
を含み、そのようなカプセルがどんなアミノ酸も含まないことを条件とし、
前記少なくとも1種のポリイソシアネートが、少なくとも1種の脂肪族ポリイソシアネートと少なくとも1種の芳香族ポリイソシアネートとの混合物の形であり、その両方とも少なくとも2つのイソシアネート官能基を含み、
前記脂肪族ポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、イソホロンジイソシアネートの三量体およびヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットからなる群から選択され、かつ
前記芳香族ポリイソシアネートが、トルエンジイソシアネートのポリイソシアヌレート、トルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物およびキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物からなる群から選択される、前記ポリ尿素マイクロカプセル。
【請求項10】
請求項9に記載のマイクロカプセルを含む、消費者製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、ポリ尿素壁を有するマイクロカプセルを製造するための方法、ならびにマイクロカプセルそのものとそうしたマイクロカプセルを含む消費者製品に関する。
【0002】
本発明の方法では、ポリイソシアネートと一緒になって壁を形成する特定のポリアミンとして3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールを使用する。
【0003】
発明の概要および発明が解決しようとする課題
香料工業が直面している問題の1つは、その揮発性ゆえに発香性化合物によってもたらされる嗅覚面の長所が比較的急速に失われてしまうこと(特に「トップノート」が比較的急速に失われてしまうこと)にある。この問題は一般に、送達系(例えば、香料を含んでいるカプセル)を用いて対処し、香りを制御放出させる。
【0004】
ポリイソシアネートとポリアミンとの重合によって形成されるポリ尿素カプセルは、香料製造技術を含む非常に様々な技術分野で使用されるよく知られたカプセルである。グアニジンおよびグアニジン塩は、ポリアミンとしてそのようなカプセルに一般に用いられる。
【0005】
例えば、米国特許第5,635,211号明細書、米国特許公開第2006/0216509号明細書、国際公開第2007/004166号パンフレットおよび国際公開第2009/153695号パンフレットはすべて、グアニジンまたは水溶性グアニジン塩とポリイソシアネートとの反応生成物から作られた壁を有するか、またはそのような反応生成物を含んでいるマイクロカプセルを記載している。
【0006】
他のポリアミンもポリ尿素マイクロカプセルに使用される。例えば、米国特許第5,225,118号明細書は、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンおよびテトラエチレンペンタアミンの使用を開示している。
【0007】
しかし、先行技術のカプセルの芳香性能は、なおも改善を必要としている。実際、芳香製品を用いる消費者が感じる快感効果、ひいては、そのような製品の品質に対する感じ方は、カプセルの芳香性能に左右される。したがって、ホームケア製品とボディケア製品の両方を含む種々の製品において、優れた芳香性能を有するカプセルを提供するのが望ましい。
【0008】
本発明は、洗浄剤、ヘアケア製品およびボディーローションなどの製品において改善された芳香性能を有する、新規のポリ尿素マイクロカプセルを提供することにより、この問題を有利に解決する。さらに、本発明のカプセルは、消費者製品の基剤中で十分安定しており、一部の製品(例えば、ヘアコンディショナーなどのヘアケア製品)においては先行技術のグアニジン製カプセルよりもさらにいっそう安定している。我々の知る限り、この問題に対する本溶液は、どの先行技術文献にも記載されておらず、示唆さえされていない。
【0009】
課題を解決するための手段
本発明は、ポリ尿素マイクロカプセルの製造方法に関する。本発明は、カプセルそのもの、ならびに芳香組成物とそれを含んでいる芳香物品に関する。
【0010】
発明を実施するための形態
本発明の1つの対象は、
a)少なくとも2つのイソシアネート官能基を含む少なくとも1種のポリイソシアネートを香料に溶かして溶液を形成させるステップと、
b)ステップa)で得られた混合物に、乳化剤またはコロイド安定剤の水溶液を加えるステップと、
c)マイクロカプセルスラリーを形成させるために、ステップb)で得られた混合物に、ポリイソシアネートと一緒になってポリ尿素壁を形成する3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールを加えるステップと
を含む、ポリ尿素マイクロカプセルの製造方法であって、アミノ酸を少しも加えることなくその方法を実施することを条件とする、ポリ尿素マイクロカプセルの製造方法である。
【0011】
ステップa)でポリイソシアネートが溶かされる香料は、単独の芳香成分であるか、または成分の混合物(芳香組成物の形態)であってよい。どんな芳香成分でも芳香組成物でも使用できる。そのような芳香成分の具体例は、最新の文献、例えば、Perfume and Flavour Chemicals, 1969(およびもっと最近の版),by S.Arctander,Montclair N.J.(USA)、ならびに香料業界に関連したおびただしい特許および他の文献中に見いだされうる。それらは、芳香消費者製品の技術分野(すなわち、心地よい香りを消費者製品に付与する技術分野)の当業者によく知られている。
【0012】
芳香成分は、香料業界で現在使用されている溶剤に溶かすことができる。溶剤はアルコールでないものが好ましい。そのような溶剤の例には、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、Abalyn(登録商標)(Eastmanから入手できるロジン樹脂)、安息香酸ベンジル、クエン酸エチル、リモネンまたは他のテルペン類、あるいはイソパラフィンがある。好ましくは、溶剤は、疎水性が強くかつ立体障害が大きい、例えば、Abalyn(登録商標)のようなものである。好ましくは、香料は30%未満の溶剤を含む。より好ましくは、香料は、20%未満の、さらにより好ましくは10%の溶剤を含み、こうした百分率はすべて、香料の全質量に対する質量で定義される。もっとも好ましくは、香料は、基本的に溶剤を含まない。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の方法に使用される香料は、それ自体の質量の10%未満の第一アルコール、それ自体の質量の15%未満の第二アルコールおよびそれ自体の質量の20%未満の第三アルコールを含む。好ましくは、本発明の方法に使用される香料は、どんな第一アルコールも含まず、15%未満の第二および第三アルコールを含む。
【0014】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、本発明の方法には25〜60%の量の香料が使用され、こうした百分率は、得られるマイクロカプセルスラリーの全質量に対する質量で定義される。
【0015】
本発明の方法に使用されるポリイソシアネートは、少なくとも2つのイソシアネート基を含む。好ましくは、それらは少なくとも3つのイソシアネート基を含む。官能基のこうした数ゆえに、カプセルの壁に最適な網目または網状組織が実現され、香りを長期にわたってゆっくり放ち、消費者製品において優れた安定性を示すマイクロカプセルが提供される。
【0016】
低揮発性ポリイソシアネートは、低毒性であり、好ましい。
【0017】
ポリイソシアネートは、脂肪族のものでも、芳香族のものでも、あるいは芳香族と脂肪族の両方の混合物であってもよい。ポリイソシアネートの混合物の場合、混合物の構成成分はそれぞれ、少なくとも2つのイソシアネート官能基を有する。好ましくは、少なくとも1種のポリイソシアネートは、少なくとも1種の脂肪族ポリイソシアネートと少なくとも1種の芳香族ポリイソシアネートとの混合物の形であり、その両方とも少なくとも2つのイソシアネート官能基を含む。
【0018】
本発明の実施形態のいずれかにしたがった脂肪族ポリイソシアネートと芳香族ポリイソシアネートとの混合物を、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールと組み合わせて使用すると、カプセルの芳香性能および安定性が最適化される。
【0019】
「芳香族ポリイソシアネート」という用語は、本明細書では、芳香族部分を含む任意のポリイソシアネートを包含する。好ましくは、フェニル部分、トルイル部分、キシリル部分、ナフチル部分またはジフェニル部分を含み、より好ましくはトルイルまたはキシリル部分を含む。好ましい芳香族ポリイソシアネートは、ビウレットおよびポリイソシアヌレートであり、より好ましくは上に挙げた特定の芳香族部分の一つを含む。より好ましくは、芳香族ポリイソシアネートは、トルエンジイソシアネートのポリイソシアヌレート(Desmodur(登録商標)RCという商品名でBayerから市販されている)、トルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(Desmodur(登録商標)L75という商品名でBayerから市販されている)、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(Takenate(登録商標)D−110Nという商品名でMitsui Chemicalsから市販されている)である。こうした好ましい芳香族ポリイソシアネートの化学構造を図1に示す。もっとも好ましい実施形態では、芳香族ポリイソシアネートはキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物である。
【0020】
「脂肪族ポリイソシアネート」という用語は、どんな芳香族部分も含まないポリイソシアネートと定義される。好ましい脂肪族ポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、イソホロンジイソシアネートの三量体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(Mitsui Chemicalsから入手可能)またはヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット(Desmodur(登録商標)N100という商品名でBayerから市販されている)であり、これらの中でヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットがさらにより好ましい。この好ましい脂肪族ポリイソシアネートの化学構造を図1に示す。
【0021】
少なくとも1種の脂肪族ポリイソシアネートと少なくとも1種の芳香族ポリイソシアネートとの特定の好ましい混合物の例は、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物との混合物、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとトルエンジイソシアネートのポリイソシアヌレートとの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとトルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物との混合物である。もっとも好ましいのは、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物との混合物である。
【0022】
好ましい実施形態では、少なくとも1種の脂肪族ポリイソシアネートおよび少なくとも1種の芳香族ポリイソシアネートを、80:20〜10:90、好ましくは75:25〜20:80、より好ましくは60:40〜20:80、さらにより好ましくは60:40〜30:70、もっとも好ましくは45:55〜30:70の各成分間モル比で使用する。
【0023】
好ましくは、ポリイソシアネート混合物は、ステップa)で得られた溶液の全質量に対して2〜20質量%の量だけ加える。
【0024】
本発明の方法のステップb)では、乳化剤またはコロイド安定剤の水溶液をステップa)の混合物に加える。好ましい実施形態では、ステップa)で得られた混合物の滴が、乳化剤またはコロイド安定剤の水溶液全体に分散される、分散液またはエマルションが形成される。本発明の目的においては、エマルションは、乳化剤によって油滴が安定化されるという特徴があり、分散液では、滴はコロイド安定剤によって安定化される。分散液またはエマルションは、高剪断混合によって製造でき、所望の液滴直径に調整することができる。液滴直径は、光散乱測定または顕微鏡法で確認できる。好ましくは、コロイド安定剤の水溶液を使用し、分散液が形成される。
【0025】
コロイド安定剤の例には、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロースなど)、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドとポリエチレン(またはポリプロピレンオキシド)とのコポリマー、アクリルアミドとアクリル酸とのコポリマーあるいはカチオン性コポリマー(例えば、ビニルピロリドンと四級化ビニルイミダゾールとのカチオン性コポリマーなどで、Luviquat(登録商標)という商品名(BASFから市販されている)で販売されているものなど)がある。好ましくは、コロイド安定剤は、ポリビニルアルコールまたはカチオン性ポリマー(ビニルピロリドンと四級化ビニルイミダゾールとのコポリマー)、またはそれらの混合物である。
【0026】
乳化剤の例には、陰イオン界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウムまたはStepantex(登録商標)(Stepanから市販されている)など)、非イオン界面活性剤(ポリエチレンオキシドとポリエチレンまたはポリプロピレンオキシドとのジブロックコポリマーなど)がある。
【0027】
本発明の方法のステップc)では、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールを加える。マイクロカプセルのポリ尿素壁は、ステップa)で溶かされたポリイソシアネートとステップc)で加えられた3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールとの界面重合によって生じるものである。
【0028】
本発明の目的においては、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールは、単独で使用しても、あるいはグリセリンと混合してもよい。
【0029】
使用する3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールの量は、普通、ステップa)で香料に溶かされたイソシアネート基1モルにつき、ステップc)で0.5〜3モルのアミン基が加えられるように調整される。好ましくは、ステップa)で香料に溶かされたイソシアネート基1モルにつき、1〜3モル、より好ましくは1〜2モルのアミン基をステップc)で加える。
【0030】
ポリイソシアネートと3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールとの重合を引き起こすために、特定の処置は必要ない。反応は、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールを添加するとすぐに開始する。好ましくは、反応は、2〜15時間、より好ましくは2〜10時間維持される。
【0031】
製品の基剤中で望ましい安定性を示しつつ(例えば、消費者製品の界面活性剤による香料の抽出を効果的に打ち消しつつ)、カプセルが(例えば)布または毛髪に付いたなら、香りが満足のゆく仕方で放たれるようにする目的で放出と残留とのバランスがうまく保たれるようなマイクロカプセルを得る場合、尿素壁の特定の組成が重要である。
【0032】
本発明の方法の任意選択のステップでは、マイクロカプセルをスラリーから分離することができる。別の任意選択のステップでは、マイクロカプセルスラリーを、一般に知られている仕方で乾燥させて、ポリ尿素マイクロカプセル粉末を形成させることができる。当業者に知られている任意の乾燥方法を使用でき、特に、スラリーを噴霧乾燥させてマイクロカプセル粉末を得ることができる。
【0033】
上述のいずれかの実施形態の方法で得られたマイクロカプセルも、本発明の対象である。それゆえに、本発明は、
− 少なくとも2つのイソシアネート官能基を含む少なくとも1種のポリイソシアネートと3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールとの重合の反応生成物を含む、ポリ尿素壁と、
− コロイド安定剤または乳化剤と、
− カプセル化香料と
を含むマイクロカプセルであって、そのようなカプセルがどんなアミノ酸も含まないことを条件とする、マイクロカプセルを提供する。
【0034】
好ましい実施形態によれば、ポリ尿素壁は、少なくとも1種のポリイソシアネートと3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールとの重合による反応生成物である。
【0035】
得られるマイクロカプセルは、平均直径(d(v,0.5))が1〜50μm、好ましくは5〜35μm、より好ましくは5〜20μmである。ここで、「平均直径」は算術平均を表す。本発明者らは、このサイズのマイクロカプセルの場合、標的とした表面(例えば、布、毛髪または皮膚)へのマイクロカプセルの沈着及び/または付着が最適になることを見いだした。
【0036】
ポリイソシアネート、香料およびコロイド安定剤または乳化剤、ならびにカプセルの各成分それぞれの量は、マイクロカプセルの製造方法に関連したいずれかの実施形態において上に定義したとおりである。
【0037】
本発明のマイクロカプセルは、カプセル化香料の制御放出に有利に使用できる。それゆえに、こうしたマイクロカプセルを芳香成分として芳香消費者製品に含めることは特に高く評価される。
【0038】
以下の実施例に示すように、本発明の方法で得られるポリ尿素マイクロカプセルは、特に優れた芳香性能をもたらす。このマイクロカプセルにより、カプセル化香料は制御放出され、前記香料はマイクロカプセルからゆっくり放出され、そのようにして香料の長期持続性および強さがかなり改善される。
【0039】
本発明のカプセルは、安定しているという利点もある。マイクロカプセルは、より好ましくは、消費者製品(例えば、以下に示す消費者製品の1つ)に含ませて、貯蔵した場合、カプセルから漏れる量が、初期香料充填量の60%以下、もっとも好ましくは50%以下であるときに安定であると見なされる。そのような安定性が望ましくは達成される貯蔵時間および温度は、消費者製品の種類によって異なる。好ましくは、そのような安定性結果は、ホームケア製品(織物柔軟剤または洗浄剤など)およびボディケア製品(ボディウォッシュ、デオドラントおよび制汗剤など)の場合、38℃で4週間貯蔵した後に得られる。ヘアケア製品(シャンプーおよびヘアコンディショナーなど)では、貯蔵時間および温度は、好ましくは40℃で少なくとも2週間である。非常に強烈な基剤(ボディーローションなど)では、そのような安定性が保たれる貯蔵時間および温度は、好ましくは25℃で少なくとも2日間である。
【0040】
したがって、本発明のマイクロカプセルを含む芳香消費者製品も本発明の対象である。特に消費者製品は、ホームケアまたはパーソナルケア製品の形態であっても、高級芳香製品の形態であってもよい。パーソナルケア製品の例としては、シャンプー、ヘアコンディショナー、石けん、ボディウォッシュ(シャワーソルトやバスソルト、ムース、オイルまたはゲルなど)、衛生製品、化粧品、ボディーローション、デオドラントおよび制汗剤がある。高級芳香製品の例としては、香水、アフターシェーブローションおよびコロンがある。ホームケア製品の例としては、固体または液体の洗浄剤、万能汚れ落とし、織物柔軟剤や布用消臭剤、アイロン用の水や洗浄剤、柔軟剤およびドライヤーシートがあり、その中でも、液体、粉末および錠剤の洗浄剤および織物柔軟剤が好ましい。洗浄剤としては、本明細書では、例えば、布または固い表面(床、タイル、石床など)の処理を意図した、様々な表面を洗うかまたはきれいにするための洗浄剤組成物または洗浄製品などの製品が含まれる。好ましくは、表面は布または皮膚である。
【0041】
特に好ましい消費者製品としては、粉末および液体の洗浄剤、織物柔軟剤、ボディウォッシュ、デオドラントおよび制汗剤があり、もっとも好ましいのは、ロールオン式デオドラントおよび制汗剤、ヘアシャンプー、ヘアコンディショナーおよびボディーローションである。もっとも好ましいものは、粉末および液体の洗浄剤、ボディーローションおよびヘアケア製品(シャンプーなど)である。
【0042】
本発明の方法で得られるカプセルスラリー自体を、消費者製品に芳香を付与するために使用できる。その場合、反応混合物は、上記の実施形態のいずれかで明示された消費者製品に直接添加される。あるいはまた、本発明の方法で得られるマイクロカプセルは、消費者製品に含める前に、反応混合物から分離することができる。同じように、本発明のマイクロカプセルを含む反応混合物は、乾燥粉末製品(洗浄粉末または粉末洗浄剤など)と混ぜるかまたはそれに吹き付けることができる。あるいはマイクロカプセルは、乾燥させてから、固体形態でこうした製品に加えることもできる。マイクロカプセルは、例えば、噴霧乾燥させることができる。
【0043】
好ましくは、消費者製品は、0.01〜10%、より好ましくは0.05〜2%の本発明のマイクロカプセルを含み、こうした百分率は消費者製品の全質量に対する質量で定義される。当然ながら、上記の濃度は、それぞれの製品における所望の芳香効果に応じて変えることができる。
【0044】
本発明のマイクロカプセルを混ぜることのできる消費者製品の基剤の配合組成は、そうした製品に関するたくさんの文献中に見いだすことができる。こうした配合組成は、本明細書の詳細な説明を保証するものではなく、それはいかなる場合であってもすべてを網羅するようなものではないであろう。そのような消費者製品を配合する当業者は、当然ながら一般知識および入手可能な文献に基づいて好適な成分を選択することができる。特に、そのような配合組成の例は、そうした製品に関する特許および特許出願、例えば、国際公開第2008/016684号パンフレット(p.10〜14)、米国特許公開第2007/0202063号明細書(段落[0044]〜[0099])、国際公開第2007/062833号パンフレット(p.26〜44)、国際公開第2007/062733号パンフレット(p.22〜40)、国際公開第2005/054422号パンフレット(p.4〜9)、欧州特許第1741775号明細書、英国特許第2432843号明細書、英国特許第2432850号明細書、英国特許第2432851号明細書または英国特許第2432852号明細書中に見いだすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1は3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールおよび本発明で使用できるポリイソシアネートの幾つかの例の化学構造を示す。
【0046】
実施例
以下の実施例は、本発明の実施形態をさらに説明するものであり、また先行技術の教唆に対する本発明のカプセルの利点をさらに示すものである。
【0047】
実施例1
本発明のポリ尿素マイクロカプセルの製造
以下の成分を有する本発明によるポリ尿素マイクロカプセル(カプセルA)を製造した。
【0048】
第1表:カプセルAの組成
【表1】
1)ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット(供給元:Bayer)
2)キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(供給元:Mitsui Chemicals)
3)第1a表の芳香組成物
第1a表:香料の組成
【表2】
a)供給元:Dragoco(ドイツ、ホルツミンデン)
b)供給元:Firmenich SA(スイス、ジュネーヴ)
c)ジヒドロジャスモン酸メチル(供給元:Firmenich SA(スイス、ジュネーヴ))
d)供給元:International Flavors & Fragrances(米国)
e)1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロ−1,2,3,3−ペンタメチル−4h−インデン−4−オン(供給元:International Flavors & Fragrances(米国))
f)3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール(供給元:Givaudan SA(スイス、ヴェルニエ))
g)1−(5,5−ジメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−4−ペンテン−1−オン(供給元:Firmenich SA(スイス、ジュネーヴ))
h)1−(オクタヒドロ−2,3,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−1−エタノン(供給元:International Flavors & Fragrances(米国))
i)ドデカヒドロ−3a,6,6,9a−テトラメチル−ナフト[2,1−b]フラン(供給元:Firmenich SA(スイス、ジュネーヴ))
j)3−メチル−4−(2,6,6−トリメチル−2シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オン(供給元:Givaudan SA(スイス、ヴェルニエ))
k)ペンタデセノリド(供給元:Firmenich SA(スイス、ジュネーヴ))
l)1−メチル−4−(4−メチル−3−ペンテニル)シクロヘキサ−3−エン−1−カルボキシアルデヒド(供給元:International Flavors & Fragrances(米国))
4)Mowiol(登録商標)18−88(供給元:Fluka)
5)塩化テトラエチルアンモニウム(50%水溶液)(供給元:Fluka)
6)供給元:Alfa Aesar
【0049】
Desmodur(登録商標)N100およびTakenate(登録商標)D−110Nを香料に溶かした。この油相を、掻き取り式撹拌機とIkaローター/ステーター装置(6500〜24000rpm)とを装備した1リットルの二重ジャケット付ガラス反応器内に入れた。油相を、50rpmで掻き取り式撹拌機によって5分間撹拌した。
【0050】
ポリビニルアルコールを543.5gの脱イオン水に溶かして、安定剤水溶液(安定剤溶液の全質量に対して1質量%)を製造した。この溶液を室温で反応器に入れ、掻き取り式撹拌機を停止した。
【0051】
次いで、13500rpmで10分間、Ikaローター/ステーター装置によって香料相を水性相中に分散させることにより、エマルションになる前のものを製造した。
【0052】
エマルションを製造後、この工程の最後まで200rpmで掻き取り式撹拌機によって撹拌を続行した。
【0053】
塩化テトラエチルアンモニウム溶液をエマルションに加えた。その後、19gの脱イオン水中に3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールを含む溶液を、1時間かけて反応器に加えた。反応混合物の温度は、室温に2時間維持した。カプセル懸濁液中の香料の含有量は、懸濁液の全質量に対しておよそ40%であった。
【0054】
実施例2
本発明のポリ尿素マイクロカプセルの製造
実施例1で説明した方法を用いてカプセルB〜Dを製造した。Desmodur(登録商標)N100およびTakenate(登録商標)D−110Nのそれぞれの量は、以下の表に要約されているようにカプセルそれぞれについて変えた。
【0055】
第2表:カプセルB〜D中のポリイソシアネートの量
【表3】
1)ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット(供給元:Bayer)
2)キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(供給元:Mitsui Chemicals)
【0056】
実施例3(比較例)
炭酸グアニジンをポリアミンとして含むポリ尿素マイクロカプセルの製造
9gの炭酸グアニジン(供給元:Arcos Organics)を3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールの代わりに使用したこと以外は、実施例1および2で述べたようにして、比較カプセル(対照A〜C)を製造した。対照A、BおよびCにおけるポリイソシアネートの種類および量は、カプセルA、BおよびCとそれぞれ同じであった。
【0057】
実施例4
本発明のカプセルの平均直径
カプセルA〜Dの粒度分布は、光学顕微鏡法および光散乱(Mastersizer S(Malvern))で制御し、平均直径をカプセルの各タイプについて計算した(算術平均)。結果を以下の表に要約する。
【0058】
第3表:カプセルA〜Dの平均直径
【表4】
【0059】
実施例5
本発明のポリ尿素マイクロカプセルを含む織物柔軟剤の製造
表4に挙げられている各成分を、示されている量だけ混合して、濃縮無香料織物柔軟剤の基剤を製造した。百分率は、無香料織物柔軟剤の基剤の全質量に対する質量で定義される。
【0060】
第4表:濃縮無香料織物柔軟剤の基剤の配合組成
【表5】
1)供給元:Stepan
2)供給元:Avecia
【0061】
優しく振盪しながら、カプセルA〜Dを、柔軟剤の全質量に対して1.26質量%だけ表4の無香料柔軟剤の基剤に加えることにより、柔軟剤A〜Dを製造した。
【0062】
実施例6
織物柔軟剤の基剤における本発明のポリ尿素マイクロカプセルの安定性
柔軟剤A、CおよびDにおけるカプセルの貯蔵安定性を評価した。カプセルを含む柔軟剤を、38℃で1か月間貯蔵し、カプセルから漏れた香料の量を溶媒抽出およびGC−MS分析で測定した。結果を以下の表に要約する。
【0063】
第5表:柔軟剤A、CおよびDにおけるカプセルの貯蔵安定性
【表6】
【0064】
したがって、本発明のカプセルは織物柔軟剤の基剤中で安定している。
【0065】
実施例7
本発明のポリ尿素マイクロカプセルを含む濃縮液体洗浄剤の製造
カプセルA〜Dを、洗浄剤の全質量に対して0.275質量%だけ、市販の無香料濃縮液体洗浄剤の基剤(香料および色素を含まないTide(登録商標)2X HE(Procter and Gamble(米国)の商標)と混合して、液体洗浄剤A〜Dを製造した。
【0066】
実施例8(比較例)
実施例3のポリ尿素マイクロカプセルを含む濃縮液体洗浄剤の製造
対照A〜Cを、洗浄剤の全質量に対して0.275質量%だけ、市販の無香料濃縮液体洗浄剤の基剤(香料および色素を含まないTide(登録商標)2X HE(Procter and Gamble(米国)の商標)と混合して、対照液体洗浄剤A〜Cを製造した。
【0067】
実施例9
濃縮液体洗浄剤における本発明のポリ尿素マイクロカプセルの芳香性能
その後、カプセルAの芳香性能および対照Aの芳香性能を、実施例7および8の対応する濃縮液体洗浄剤で評価した。
【0068】
織物(2.5kgの綿テリータオル)を、40℃で標準的なヨーロッパの水平軸装置で洗った。洗い始める際に、80gの新たに製造された洗浄剤を、洗浄剤引出しを介して投入した。洗った後、織物をつり干しし、1日乾燥させた後に、綿タオルの香気強さを、20人の訓練を受けた官能試験員からなるパネルが評価した。官能試験員には、手で織物を優しくこすった後に1〜7のスケール(1は無臭、7は非常に強い臭い)でタオルの香気強さを評価するよう依頼した。結果を第6表に示す。
【0069】
第6表:濃縮液体洗浄剤中のカプセルAおよび対照Aの芳香性能
【表7】
【0070】
こすった後、香り強度は、対照カプセルを含む液体洗浄剤で洗った織物よりも、本発明のカプセルを含む液体洗浄剤で洗った織物のほうがより強かったことは、これらの結果から明らかである。
【0071】
したがって、香料は、カプセルを炭酸グアニジンで作った場合よりも、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールで作った場合のほうがより強く知覚される。
【0072】
実施例10
濃縮液体洗浄剤における本発明のポリ尿素マイクロカプセルの安定性
液体洗浄剤A、CおよびDにおけるカプセルの貯蔵安定性を評価した。カプセルを含む洗浄剤を、38℃で4週間貯蔵し、カプセルから漏れた香料の量を溶媒抽出およびGC−MS分析で測定した。結果を以下の表に要約する。
【0073】
第7表:液体洗浄剤A、CおよびDにおける本発明のカプセルの貯蔵安定性
【表8】
【0074】
本発明のカプセルが濃縮液体洗浄剤の基剤中で安定していることは、これらの結果から明白である。
【0075】
実施例11
本発明のポリ尿素マイクロカプセルを含む濃縮粉末洗浄剤の製造
カプセルA〜Dを、洗浄剤の全質量に対して0.275質量%だけ、市販の無香料濃縮粉末洗浄剤の基剤(Ultra Tide(登録商標)Free and Gentle(Procter and Gamble(米国)の商標)と混合して、粉末洗浄剤A〜Dを製造した。
【0076】
実施例12(比較例)
実施例3のポリ尿素マイクロカプセルを含む濃縮粉末洗浄剤の製造
対照A〜Cを、洗浄剤の全質量に対して0.275質量%だけ、市販の無香料濃縮粉末洗浄剤の基剤(Ultra Tide(登録商標)Free and Gentle(Procter and Gamble(米国)の商標)と混合して、対照粉末洗浄剤A〜Cを製造した。
【0077】
実施例13
濃縮粉末洗浄剤における本発明のポリ尿素マイクロカプセルの芳香性能
次いで、カプセルAおよびBの芳香性能ならびに対照AおよびBの芳香性能を、実施例11および12の対応する濃縮粉末洗浄剤で評価した。
【0078】
織物(2.5kgの綿テリータオル)を、40℃で標準的なヨーロッパの水平軸装置で洗った。洗い始める際に、50gの新たに製造された洗浄剤を、洗浄剤引出しを介して投入した。洗った後、織物をつり干しし、1日乾燥させた後に、綿タオルの香気強さを20人の訓練を受けた官能試験員からなるパネルが評価した。官能試験員には、手で織物を優しくこすった後に1〜7のスケール(1は無臭、7は非常に強い臭い)でタオルの香気強さを評価するよう依頼した。結果を第8表に示す。
【0079】
第8表:濃縮粉末洗浄剤におけるカプセルAおよびBならびに対照AおよびBの芳香性能
【表9】
【0080】
こすった後、香り強度は、対照カプセルを含む粉末洗浄剤で洗った織物よりも、本発明のカプセルを含む粉末洗浄剤で洗った織物のほうがより強かったことは、これらの結果から明らかである。
【0081】
したがって、香料は、カプセルを炭酸グアニジンで作った場合よりも、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールで作った場合のほうがより強く知覚される。
【0082】
実施例14
本発明のポリ尿素マイクロカプセルを含むボディウォッシュの製造
第9表に示す各成分を、示されている量だけ混ぜ合わせることにより、ボディウォッシュ配合物を製造した。百分率は、ボディウォッシュ配合物の全質量に対する質量で定義される。
【0083】
第9表:ボディウォッシュ配合物の組成
【表10】
1)ポリアクリレート−1クロスポリマー(供給元:Noveon)
2)(C12〜C15)パレス硫酸ナトリウム(供給元:Zschimmer & Schwarz)
3)コカミドプロピルベタイン(供給元:Goldschmidt AG)
4)DMDMヒダントインおよびヨードプロピニルブチルカルバメート(供給元:Lonza)
【0084】
カプセルA〜Dを、ボディウォッシュの全質量に対して0.5質量%だけ、上で製造したボディウォッシュ配合物に混ぜることにより、ボディウォッシュA〜Dを製造した。
【0085】
実施例15
ボディウォッシュの基剤における本発明のポリ尿素マイクロカプセルの安定性
ボディウォッシュA〜Dにおけるカプセルの貯蔵安定性を評価した。ボディウォッシュを、45℃で4週間貯蔵し、カプセルから漏れた香料の量をSPMEおよびGC−MS分析で測定した。結果を以下の表に要約する。
【0086】
第10表:ボディウォッシュA〜Dにおける本発明のカプセルの貯蔵安定性
【表11】
【0087】
本発明のカプセルがボディウォッシュの基剤中で安定していることは、これらの結果から明白である。
【0088】
実施例16
本発明のポリ尿素マイクロカプセルを含むロールオン式制汗デオドラント製品の製造
表11に示す各成分を、示されている量だけ混ぜ合わせることにより、ロールオン式制汗デオドラントエマルション配合物を製造した。百分率は、ロールオン式制汗デオドラントエマルション配合物の全質量に対する質量で定義される。
【0089】
第11表:ロールオン式制汗デオドラント配合物の組成
【表12】
1)供給元:Croda
2)供給元:Croda
3)供給元:Croda
4)供給元:Clariant
【0090】
カプセルA〜Dを、ロールオン式制汗デオドラントの全質量に対して1.26質量%だけ、上で製造したロールオン式制汗デオドラントエマルション配合物に混ぜることにより、デオドラントA〜Dを製造した。
【0091】
実施例17
ロールオン式制汗デオドラントにおける本発明のポリ尿素マイクロカプセルの安定性
デオドラントA〜Dにおけるカプセルの貯蔵安定性を評価した。デオドラントを、45℃で4週間貯蔵し、カプセルから漏れた香料の量をSPMEおよびGC−MS分析で測定した。結果を以下の表に要約する。
【0092】
第12表:デオドラントA〜Dにおける本発明のカプセルの貯蔵安定性
【表13】
【0093】
本発明のカプセルがロールオン式制汗剤デオドラントの基剤中で安定していることは、これらの結果から明白である。
【0094】
実施例18
本発明のポリ尿素マイクロカプセルを含むヘアシャンプーの製造
第13表に示す各成分を、示されている量だけ混ぜ合わせることにより、ヘアシャンプー配合物を製造した。百分率は、ヘアシャンプー配合物の全質量に対する質量で定義される。
【0095】
第13表:ヘアシャンプー配合物の組成
【表14】
1)供給元:Rhodia
2)供給元:Cognis
3)供給元:Cognis
4)供給元:Cognis
5)供給元:Degussa
6)供給元:Lonza
【0096】
カプセルA〜Dを、シャンプーの全質量に対して0.5質量%だけ、上記で製造したヘアシャンプー配合物に混ぜることにより、シャンプーA〜Dを製造した。
【0097】
実施例19(比較例)
実施例3のポリ尿素マイクロカプセルを含むヘアシャンプーの製造
対照A〜Cを、ヘアシャンプーの全質量に対して0.5質量%だけ、実施例18で製造したヘアシャンプー配合物に加えることにより、対照シャンプーA〜Cを製造した。
【0098】
実施例20
ヘアシャンプーにおける本発明のポリ尿素マイクロカプセルの芳香性能
次いで、カプセルA〜Cの芳香性能ならびに対照A〜Cの芳香性能を、実施例18および19の対応するヘアシャンプーで評価した。
【0099】
10gの毛髪見本をまず2.5gのシャンプーで洗い、37℃の水道水で30秒間すすいでから、同様に二度目の洗い/すすぎを繰り返した。次いで、毛髪見本を室温で6時間放置乾燥させてから評価した。
【0100】
シャンプーで洗った毛髪見本の香料の知覚の強度を、10人の訓練を受けた官能試験員からなるパネルが評価した。官能試験員には、毛髪見本を3回優しく櫛ですいてから、1〜7の範囲のスケール(1が無臭、7が非常に強い臭い)で香料知覚の強度を評価するよう依頼した。
【0101】
第14表:ヘアシャンプーにおけるカプセルA〜Cおよび対照A〜Cの芳香性能
【表15】
【0102】
こすった後に、香り強度が、対照カプセルを含むシャンプーで洗った毛髪よりも、本発明のカプセルを含むシャンプーで洗った毛髪のほうがより強かったことは、これらの結果から明らかである。
【0103】
香料は、カプセルを炭酸グアニジンで作った場合よりも、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールで作った場合のほうがより強く知覚される。
【0104】
実施例21
ヘアシャンプーにおける本発明のポリ尿素マイクロカプセルの安定性
シャンプーA〜Dにおけるカプセルの貯蔵安定性を評価した。ヘアシャンプーを、40℃で2週間貯蔵し、カプセルから漏れた香料の量をSPMEおよびGC−MS分析で測定した。結果を以下の表に要約する。
【0105】
第15表:シャンプーA〜Dにおける本発明のカプセルの貯蔵安定性
【表16】
【0106】
本発明のカプセルがヘアシャンプーの基剤中で安定していることは、これらの結果から明白である。
【0107】
実施例22
本発明のポリ尿素マイクロカプセルを含むリンスオフヘアコンディショナーの製造
カプセルA〜Dを、リンスオフヘアコンディショナーの全質量に対して0.5質量%だけ、市販のPantene(登録商標)リンスオフヘアコンディショナー配合物(Procter and Gamble(米国)の商標)に混ぜて、リンスオフヘアコンディショナー(以下、リンスオフ)A〜Dを製造した。
【0108】
実施例23
リンスオフヘアコンディショナーの基剤における本発明のポリ尿素マイクロカプセルの安定性
リンスオフA、CおよびDにおけるカプセルの貯蔵安定性を評価した。カプセルを含むリンスオフを、40℃で2週間貯蔵し、カプセルから漏れた香料の量を溶媒抽出およびGC−MS分析で測定した。結果を以下の表に要約する。
【0109】
第16表:リンスオフA、CおよびDにおける本発明のカプセルの貯蔵安定性
【表17】
【0110】
本発明のカプセルがリンスオフコンデショナーの基剤中で安定していることは、これらの結果から明白である。
【0111】
実施例24
本発明のポリ尿素マイクロカプセルを含むリーブオンヘアコンディショナーの製造
第17表に示す各成分を、示されている量だけ混ぜ合わせることにより、リーブオンヘアコンディショナー配合物を製造した。百分率は、リーブオンヘアコンディショナー配合物の全質量に対する質量で定義される。
【0112】
第17表:リーブオンヘアコンディショナー配合物の組成
【表18】
1)供給元:Rhodia
2)供給元:Ciba
3)供給元:Rohm&Haas
4)供給元:Wacker
5)供給元:Clariant
【0113】
カプセルA〜Dを、リーブオンヘアコンディショナーの全質量に対して0.26質量%だけ、上記で製造したリーブオンヘアコンディショナー配合物に混ぜて、リーブオンヘアコンディショナー(以下、リーブオン)A〜Dを製造した。
【0114】
実施例25(比較例)
実施例3のポリ尿素マイクロカプセルを含むリーブオンヘアコンディショナーの製造
対照A〜Cを、リーブオンヘアコンディショナーの全質量に対して0.26質量%だけ、実施例24で製造したリーブオンヘアコンディショナー配合物に混ぜて、対照リーブオンヘアコンディショナー(以下、リーブオン)A〜Cを製造した。
【0115】
実施例26
リーブオンヘアコンディショナーの基剤における本発明のポリ尿素マイクロカプセルの安定性
リーブオンA〜Dおよび対照リーブオンA〜Cにおけるカプセルの貯蔵安定性を評価した。カプセルを含むリーブオンコンディショナーを、45℃で2週間貯蔵し、カプセルから漏れた香料の量を溶媒抽出およびGC−MS分析で測定した。結果を以下の表に要約する。
【0116】
第18表:リーブオンA〜Dにおける本発明のカプセルの貯蔵安定性
【表19】
【0117】
本発明のカプセルは、濃縮リーブオンヘアコンディショナーの基剤において、グアニジンで作られた対応する対照よりも安定していることが、これらの結果から明白である。
【0118】
実施例27
本発明のポリ尿素マイクロカプセルを含むボディーローションの製造
カプセルA〜Dを、ボディーローションの全質量に対して1.25質量%だけ、市販のボディーローション配合物(Bath & Body Work(米国))に分散させて、ボディーローションA〜Dを製造した。
【0119】
実施例28(比較例)
実施例3のポリ尿素マイクロカプセルを含むボディーローションの製造
カプセルA〜Cを、ボディーローションの全質量に対して1.25質量%だけ、市販のボディーローション配合物(供給元:Bath & Body Work(米国))に分散させて、対照ボディーローションA〜Cを製造した。
【0120】
実施例29
ボディーローションにおける本発明のポリ尿素マイクロカプセルの芳香性能
次いで、カプセルA〜Cの芳香性能および対照A〜Cの芳香性能を、実施例27および28の対応するボディーローションで評価した。
【0121】
各ボディーローション0.15gを、吸い取り紙(4.5cm*12cm)に塗り、室温で1時間放置乾燥させてから評価した。
【0122】
上記のボディーローションで処理した吸い取り紙上の香料の知覚の強度を、10人の訓練を受けた官能試験員からなるパネルが評価した。官能試験員には、吸い取り紙を1本の指で優しくこすってから0〜10の範囲のスケール(0が無臭、10が非常に強い臭い)で香料知覚の強度を評価するよう依頼した。結果を以下の表に要約する。
【0123】
第19表:ボディーローションにおけるカプセルA〜Cおよび対照A〜Cの芳香性能
【表20】
【0124】
こすった後に、香り強度が、対照カプセルを含むボディーローションで処理した吸い取り紙の場合よりも、本発明のカプセルを含むボディーローションで処理した吸い取り紙の場合のほうがより強かったことは、これらの結果から明らかである。
【0125】
したがって、香料は、カプセルを炭酸グアニジンで作った場合よりも、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールで作った場合のほうがより強く知覚される。
【0126】
実施例30
ボディーローションにおける本発明のポリ尿素マイクロカプセルの安定性
ボディーローションA、CおよびDにおけるカプセルの貯蔵安定性を評価した。ボディーローションを、25℃で2日間貯蔵し、カプセルから漏れた香料の量をSPMEおよびGC−MS分析で測定した。結果を以下の表に要約する。
【0127】
第20表:ボディーローションA、CおよびDにおける本発明のカプセルの貯蔵安定性
【表21】
【0128】
本発明のカプセルがボディーローションの基剤中で安定していることは、これらの結果から明白である。
図1