特許第6012728号(P6012728)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012728
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】カセット及び試薬セット
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20161011BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20161011BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   G01N35/04 H
   G01N35/00 C
   G01N35/02 D
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-522617(P2014-522617)
(86)(22)【出願日】2013年6月24日
(86)【国際出願番号】JP2013067259
(87)【国際公開番号】WO2014002952
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2016年1月7日
(31)【優先権主張番号】特願2012-142147(P2012-142147)
(32)【優先日】2012年6月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000162478
【氏名又は名称】協和メデックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】笹原 潤
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 陽介
【審査官】 渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−181338(JP,A)
【文献】 特表2010−518401(JP,A)
【文献】 特開平04−208864(JP,A)
【文献】 特開平07−052954(JP,A)
【文献】 特開2002−196006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N35/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌装置に装着される本体部と、
前記本体部に複数形成され、口部が露出するように試薬容器を抜出不能、且つ試薬容器の中心軸回りに回転可能に保持すると共に、試薬容器の底部に、試薬容器と前記撹拌装置とを接続する接続部材を取付け可能とする保持部と、
を備え、
前記本体部は、試薬容器を保持できる間隔を空けて配置された上板及び下板と、前記上板と前記下板とを連結する連結部材と、を有し、
前記保持部は、前記上板に形成され試薬容器の口部のみを挿通させる上孔と、前記下板に形成され試薬容器の底部を挿通させ試薬容器を回転可能に支持する下孔と、を有する、カセット。
【請求項2】
前記連結部材は、前記上板から前記下板へ向けて突設された上板脚部と、前記上板に形成され前記下板と係合する係合片と、を含んで構成される請求項に記載のカセット。
【請求項3】
前記下板には、前記撹拌装置のターンテーブルと前記下板との間に隙間を形成する下板脚部が設けられている請求項又はに記載のカセット。
【請求項4】
前記本体部には、前記撹拌装置のターンテーブルの回転軸に設けられた突起部と係合する係合部が形成されている請求項1〜の何れか1項に記載のカセット。
【請求項5】
請求項1〜の何れか1項に記載のカセットと、
前記カセットに形成された複数の前記保持部に抜出不能に保持された複数の試薬容器と、を有する試薬セット。
【請求項6】
複数の前記保持部に抜出不能に保持された複数の前記試薬容器のうち、少なくとも1つは、前記接続部材を介して前記撹拌装置に接続される請求項に記載の試薬セット。
【請求項7】
前記接続部材を介して前記撹拌装置に接続される試薬容器には、不溶性担体粒子含有試薬が収容されている請求項に記載の試薬セット。
【請求項8】
不溶性担体粒子含有試薬が、磁性担体粒子含有試薬である請求項に記載の試薬セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カセット及び試薬セットに関する。
【背景技術】
【0002】
抗原抗体反応を利用して検体中の測定対象物質を測定する免疫学的測定法が臨床検査においてしばしば用いられている。具体的には、反応容器に、不溶性担体粒子、一次抗体、標識化二次抗体、及び検体を添加し、不溶性担体粒子上に、一次抗体、測定対象物質、及び、標識化二次抗体の免疫複合体を形成させて、免疫複合体中の標識量を測定する。この種の免疫学的測定法に使用される免疫測定装置として、特開2002−286726号公報には、不溶性担体粒子を含有する試薬が収容された試薬容器と、一次抗体を含有する試薬が収容された試薬容器と、標識化二次抗体を含有する試薬が収容された試薬容器とが回動するテーブルに複数セットされた免疫測定装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、テーブルに複数の種類の試薬容器をセットするのは手間が掛かる。また、ユーザーが試薬容器をセットする位置を間違えた場合、反応容器へ誤った試薬が注入されることとなり、正確な免疫測定を行うことができなくなる虞がある。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮し、試薬容器のセットミスを抑制すると共に、短時間で試薬容器をセットすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1態様のカセットは、撹拌装置に装着される本体部と、 前記本体部に複数形成され、口部が露出するように試薬容器を抜出不能、且つ試薬容器の中心軸回りに回転可能に保持すると共に、試薬容器の底部に、試薬容器と前記撹拌装置とを接続する接続部材を取付け可能とする保持部と、を備え、前記本体部は、試薬容器を保持できる間隔を空けて配置された上板及び下板と、前記上板と前記下板とを連結する連結部材と、を有し、前記保持部は、前記上板に形成され試薬容器の口部のみを挿通させる上孔と、前記下板に形成され試薬容器の底部を挿通させ試薬容器を回転可能に支持する下孔と、を有する
【0006】
本発明の第1態様のカセットによれば、撹拌装置に装着される本体部を有しており、この本体部には、試薬容器を抜出不能に保持する複数の保持部が形成されている。これにより、誤ってカセットから試薬容器が取り出されることがなくなり、試薬容器の撹拌装置へのセットミスを抑制できる。また、試薬容器は、口部が露出するようにカセットに保持されているので、キャップを開けるだけで試薬容器内の試薬を吸引できる。
【0007】
さらに、保持部は、試薬容器を中心軸回りに回転可能に保持すると共に、試薬容器の底部に、試薬容器と撹拌装置とを接続する接続部材を取付け可能としている。これにより、接続部材を介して撹拌装置が試薬容器を回転させて試薬容器内の試薬を撹拌できる。
【0009】
また、本発明の第態様のカセットによれば、本体部は、連結部材で連結された上板と下板とを有しており、上板に形成された上孔に試薬容器の口部を挿通させ、下板に形成された下円孔に試薬容器の底部を挿通させることで、上板と下板との間に試薬容器が回転可能に支持される。これにより、簡単な構造で試薬容器を取り出し不能、且つ回転可能に保持できる。
【0010】
本発明の第態様のカセットは、第態様のカセットであって、前記連結部材は、前記上板から前記下板へ向けて突設された上板脚部と、前記上板に形成され前記下板と係合する係合片と、を含んで構成される。
【0011】
本発明の第態様のカセットによれば、上板と下板とを連結する連結部材は、上板から下板へ向けて突設された上板脚部と、上板に形成され下板と係合する係合片とを含んで構成されている。これにより、上板と下板との間に試薬容器を保持させて、上板の係合片を下板に係合させることで、試薬容器を取り出し不能にできる。
【0012】
本発明の第態様のカセットは、第態様又は第態様のカセットであって、前記下板には、前記攪拌装置のターンテーブルと前記下板との間に隙間を形成する下板脚部が設けられている。
【0013】
本発明の第態様のカセットによれば、下板に設けられた下板脚部により攪拌装置のターンテーブルと下板との間に隙間が形成されている。これにより、試薬容器の底部とターンテーブルとを接続する接続部材のスペースが確保できる。
【0014】
本発明の第態様のカセットは、第1態様から第態様の何れか1つの態様のカセットであって、前記本体部には、前記撹拌装置のターンテーブルの回転軸に設けられた突起部と係合する係合部が形成されている。
【0015】
本発明の第態様の試薬容器用カセットによれば、本体部には、撹拌装置のターンテーブルの回転軸に設けられた突起部と係合する係合部が形成されている。これにより、ターンテーブルの回転軸に本体部を容易に位置決めできる。
【0016】
本発明の第態様の試薬セットは、第1態様から第態様の何れか1つの態様に記載のカセットと、前記カセットに形成された複数の前記保持部に抜出不能に保持された複数の試薬容器と、を有する。
【0017】
本発明の第態様の試薬セットによれば、カセットに形成された複数の保持部には、試薬容器が抜出不能に保持されている。これにより、試薬容器の位置が入替わることがなく、工場で試薬容器をセットしたカセットを病院等の検査機関へそのまま納品できる。
【0018】
本発明の第態様の試薬セットは、第態様に記載の試薬セットであって、複数の前記保持部に抜出不能に保持された複数の前記試薬容器のうち、少なくとも1つは、前記接続部材を介して前記撹拌装置に接続される。
【0019】
本発明の第態様の試薬セットによれば、保持部に保持された試薬容器のうち、少なくとも1つの試薬容器は、接続部材を介して撹拌装置に接続されている。これにより、試薬容器は、カセットに保持された状態で撹拌装置により撹拌される。
【0020】
本発明の第態様の試薬セットは、の第態様に記載の試薬セットであって、前記接続部材を介して前記撹拌装置に接続される試薬容器に、不溶性担体粒子含有試薬が収容されている。
【0021】
本発明の第態様の試薬セットによれば、接続部材を介して撹拌装置に接続された試薬容器に、不溶性担体粒子含有試薬が収容されている。試薬容器が接続部材を介して撹拌装置に接続されているため、撹拌装置により、試薬容器に収容されている不溶性担体粒子含有試薬が撹拌され、不溶性担体粒子の沈殿が抑制できる。
【0022】
本発明の第態様の試薬セットは、第態様に記載の試薬セットであって、不溶性担体粒子含有試薬が、磁性担体粒子含有試薬である。
【0023】
本発明の第態様の試薬セットによれば、比重の大きい不溶性担体粒子である磁性担体粒子の沈殿が抑制できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、上記の構成としたので、試薬容器のセットミスを抑制すると共に、短時間で試薬容器をセットできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態に係る試薬セットがセットされたターンテーブルを備えた免疫測定装置の基本構成を示す上面図である。
図2】第1実施形態に係る試薬セットを示す分解斜視図である。
図3】第1実施形態に係るカセットの下板の裏面を示す斜視図である。
図4】第1実施形態に係る試薬セットがセットされたターンテーブルを示す一部破断した上面図である。
図5】第1実施形態に係るカセットに保持された試薬容器とターンテーブルとの接続部を説明するための模式図である。
図6】第1実施形態に係るカセットに保持された試薬容器から試薬が吸入される状態を示す斜視図である。
図7】第2実施形態に係るカセットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
<全体構成>
図を参照しながら、本発明の第1実施形態に係るカセット10を含む試薬セット11がセットされた撹拌装置16を有する免疫測定装置200について説明する。図1に示すように、免疫測定装置200は主として、セル供給ユニット14、試薬保管ユニット12、反応テーブル18、検体テーブル20、BFユニット22、及び測定ユニット24を含んで構成されている。なお、以下の説明において、便宜上、検体テーブル20側を装置手前側として説明する。
【0027】
免疫測定装置200の左奥に配置されたセル供給ユニット14は、空のセル(反応容器)を所定の位置へ搬送し、一列に整列させるユニットである。セル供給ユニット14は、セルタンク30、レール32、及びセル送り機構34を含んで構成されている。セル供給ユニット14の手前には、ターンテーブル36を備えた撹拌装置16を収容した試薬保管ユニット12が配置されている。ターンテーブル36にセットされたカセット10には、免疫測定に必要な試薬が収容された複数の試薬容器26A、26B、26Cが保持されている(図2参照)。また、試薬保管ユニット12は、冷却手段(不図示)によって一定の温度に冷却されている。
【0028】
試薬保管ユニット12の右側には、反応テーブル18が配置されている。反応テーブル18は、免疫測定装置200の中央部よりやや左側に位置しており、ヒータ(不図示)を備えている。また、反応テーブル18の外周部には、セルを保持する凹部38が反応テーブル18の全周に亘って形成されている。本実施形態では、一例として、反応テーブル18の周方向に等間隔で60個の凹部38が形成されている。また、ヒータ(不図示)により、凹部38に保持されたセル温め、セル内の試薬を活性化させることができる。
【0029】
反応テーブル18の手前には、検体テーブル20が配置されている。検体テーブル20には、検体を収容した複数の試験管40が保持されている。また、反応テーブル18の右側には、後述するセルハンド72を挟んでBFユニット22が配置されている。BFユニット22は、セルを回転搬送するBFテーブル42と、BFテーブル42にセットされたセル内の試薬のB/F分離を行うBFノズルユニット44とを含んで構成されている。なお、本実施形態では、装置の奥側と手前側の2箇所にBFユニット22が配置されているが、1箇所だけに配置してもよい。
【0030】
BFユニット22の右側には、後述するセルハンド74を挟んで測定ユニット24が配置されている。測定ユニット24は、セル内の試薬を撹拌する撹拌部46と、光量を測定する測定室48とを含んで構成されている。
【0031】
免疫測定装置200には、上記の他に、セルを反応テーブル18へ移動させるセルハンド52、試薬を吸引吐出する試薬分注ノズル54及び試薬分注ノズル68が配置されている。また、検体を吸引吐出する検体分注ノズル60が配置されている。さらに、免疫測定装置200を構成するユニット、セルハンド、及びノズル等は、制御部(不図示)に接続されており、制御部からの信号により動作する。
【0032】
<免疫測定法>
次に、免疫測定装置200を用いた免疫測定法の一例を説明する。なお、本実施態様では、不溶性担体粒子含有試薬としてストレプトアビジン結合磁性担体粒子含有試薬を用いているが、これに限らず、他の磁性担体粒子を含有する試薬を用いてもよい。また、磁石を用いずにB/F分離を行う場合は、磁性を有しない不溶性担体粒子、例えば、ラテックス等を用いることができる。本実施態様では、一次抗体含有試薬としてビオチン化一次抗体含有試薬を用いているが、これに限らず、不溶性担体粒子含有試薬の種類に応じて適宜選択される抗体を含有する試薬を用いることができる。本実施態様では、標識化二次抗体含有試薬として、アルカリホスファターゼ標識二次抗体含有試薬を用いているが、これに限らず、測定対象物質の種類に応じて適宜選択される標識物質で標識された抗体を含有する試薬を用いることができる。本実施態様においては、免疫測定法として、サンドイッチ法に基づく化学発光免疫測定法を用いているが、これに限らず、他の免疫測定法を用いてもよい。
【0033】
初めに、セル供給ユニット14のセルタンク30内に使用者が未使用のセルを複数投入する。なお、本実施形態で用いるセル(キュベットともいう)は、一端部が開口したプラスチック製の有底円筒体であり、開口部に鍔が形成された反応容器である。
【0034】
セルタンク30へ投入されたセルは、エレベータ(不図示)により1個ずつセルタンク30の上方へ持ち上げられ、その後、傾いた2本の棒で構成されたレール32を滑ってセル送り機構34へ搬送される。
【0035】
セル送り機構34へ搬送されたセルは、セル送り機構34の整列板50が開閉することによりレール32の終端部32Aへ1つずつ送り込まれる。なお、セル送り機構34を設けずに、セルタンク30からレール32の終端部32Aまでセルを滑らせてもよい。
【0036】
レール32の終端部32Aに到達したセルは、セルハンド52に掴まれ、回転軸52A回りに回転して反応テーブル18の凹部38へセットされる。その後、反応テーブル18の回転により、試薬分注ノズル54の直下へ搬送される。ここで、試薬分注ノズル54が回転軸54A周りに回転し、ターンテーブル36にセットされたカセット10に保持された試薬容器26Aからストレプトアビジン結合磁性担体粒子含有試薬を吸引してセルへ吐出する(図6参照)。
【0037】
次に、別の試薬容器26Bからビオチン化一次抗体含有試薬を吸引してセルへ吐出する。ここで、ストレプトアビジン結合磁性担体粒子含有試薬を吐出した試薬分注ノズル54は、分注ノズル洗浄槽58で一旦洗浄され、その後、ビオチン化一次抗体含有試薬の吸引が行われる。これにより、試薬の混入を防止できる。
【0038】
ストレプトアビジン結合磁性担体粒子含有試薬とビオチン化一次抗体含有試薬とが吐出されたセルは、反応テーブル18の回転により、検体分注ノズル60の近傍へ搬送されながら、反応テーブル18に設けられたヒータにより所定の温度(本実施形態では一例として37℃)で温められ、磁性担体粒子に結合されたストレプトアビジンとビオチン化抗体との反応が促進される。
【0039】
セルが検体分注ノズル60の近傍へ搬送されると、検体分注ノズル60は、回転軸60A回りに回転し、検体テーブル20にセットされた試験管40から検体を吸引して、ストレプトアビジン結合磁性担体粒子含有試薬とビオチン化一次抗体含有試薬とが吐出されたセルへ吐出する。また、測定において希釈液を用いる場合には、検体分注ノズル60は、回転軸60A回りに回転し、希釈液容器64から希釈液を吸引する。次いで、検体テーブル20にセットされた試験管40から検体を吸引して、検体と希釈液の混合物を、ストレプトアビジン結合磁性担体粒子含有試薬とビオチン化一次抗体含有試薬とが吐出されたセルへ吐出する。その後、検体、又は、検体と希釈液の混合物をセルへ吐出した検体分注ノズル60は、検体ノズル洗浄槽62で洗浄される。これにより、検体分注ノズル60における検体による汚染が防止される。
【0040】
検体、又は、検体と希釈液とが吐出されたセルは、反応テーブル18の外周に沿って設けられた撹拌機構66の位置まで搬送され、撹拌機構66によりセル内の試薬、検体、及び希釈液が非接触で撹拌される。撹拌は、セルの底部を円錐振り子の軌道で回転させて行われるが、これに限らず、セルを掴んで遥動してもよい。また、非接触での撹拌に限らず、撹拌棒をセルへ入れて直接撹拌してもよい。この場合、コンタミネーションを防止するため、撹拌終了後に撹拌棒を洗浄する必要がある。
【0041】
以上により、検体中の測定対象物質が一次抗体に結合され、磁性担体粒子上に、一次抗体、及び測定対象物質の複合体が形成される。次に、試薬分注ノズル68が回転軸68A回りに回転し、試薬保管ユニット12のカセット10の所定の位置に保持された試薬容器26Cからアルカリホスファターゼ標識二次抗体を吸引し、セルへ吐出する。試薬分注ノズル68は、アルカリホスファターゼ標識二次抗体を吐出した後、分注ノズル洗浄槽70に移動して洗浄が行われる。
【0042】
アルカリホスファターゼ標識二次抗体が吐出されたセル内の試薬類は、撹拌機構66により撹拌され、アルカリホスファターゼ標識二次抗体と検体中の測定対象物質との反応が促進される。これにより、磁性担体粒子上に、一次抗体、測定対象物質、及びアルカリホスファターゼ標識二次抗体からなる複合体(免疫複合体)が形成される。
【0043】
次に、セルは、反応テーブル18の回転によりセルハンド72の近傍へ搬送され、セルハンド72に掴まれ、回転軸72A回りに回転して一方のBFユニット22へ搬送される。BFユニット22に搬送されたセルは、BFテーブル42の外周部に設けられた凹部42Aへセットされる。ここで、BFテーブル42の内部には、セルの外周面を取り囲んでネオジム磁石(不図示)が設けられており、凹部38へセットされたセル内の磁性担体粒子を集磁する。
【0044】
次に、BFノズルユニット44が凹部42Aにセットされたセルの上方へ移動する。そして、BFノズルユニット44を構成する4本のBFノズル44Aが、それぞれの凹部42Aにセットされたセルに対して、未反応の試薬類の吸引と洗浄液の吐出を行う。このとき、ネオジム磁石に集磁されている磁性担体粒子、及び磁性担体粒子と結合した免疫複合体は、BFノズル44Aに吸引されず、セル内に残留する。
【0045】
一方、磁性担体粒子と結合しなかった試薬類は、BFノズル44Aに吸引されて、セルから除去される。以上のようにして、磁性担体粒子と結合した物質(Bind)と、結合しなかった物質(Free)が分離(B/F分離)される。なお、本実施形態では、B/F分離を繰り返し行い、磁性担体粒子と結合しなかった試薬類を確実に取り除くようにしている。
【0046】
B/F分離が行われたセルは、セルハンド74に掴まれ、回転軸74A回りに回転して測定ユニット24の撹拌部46へ搬送される。このとき、セルハンド74に設けられたチューブ(不図示)から検出試薬(発光基質試薬)がセルへ吐出される。撹拌部46では、免疫複合体と、発光基質試薬とが撹拌され、免疫複合体中のアルカリホスファターゼが発光基質試薬と反応して発光する。
【0047】
次に、セルは、セルハンド74に掴まれ、回転軸74A回りに回転して測定室48内へ搬送される。測定室48は、完全に閉塞されて光が入らない空間となっており、測定室48では、免疫複合体中のアルカリホスファターゼと発光基質試薬との反応により生成した光の発光量が測定される。この測定された発光量から検体中の測定対象物質の濃度を決定される。測定が終わったセルは、セルハンド74に掴まれ、廃棄管76へ廃棄される。制御部は、検体中の測定対象物質の濃度をデータとして蓄積し、また、測定結果をモニタ(不図示)等に表示させる。
【0048】
<試薬セットの構成>
次に、本実施形態に係る試薬セット11の構成を説明する。図2に示すように、試薬セット11は、カセット10と、カセット10に保持される3つの試薬容器26A、26B、26Cを有している。なお、以下の説明において、特に区別しない場合は単に試薬容器26と表記する。
【0049】
カセット10は、上面視で3箇所の角部X、Y、Zを有する略三角形状の樹脂部材であり、本体部79を有している。本体部79は、主として上板78と、下板80と、係合片82と、上板脚部78Bとを含んで構成されている。上板78は、本体部79の上部に位置しており、厚み方向に貫通した3つの上孔としての上円孔84が形成されている。
【0050】
3つの上円孔84はそれぞれ、上板78の角部X、Y、Zの近傍に形成されており、後述する下板80の下円孔88とで保持部56を構成する。本実施形態では、同じ径で3つの上円孔84が形成されているが、これに限らず、保持する試薬容器26の大きさに合わせて異なる径の上円孔84を形成してもよい。また、4つ以上の上円孔84を形成してもよい。
【0051】
上板78の角部X、Y、Zにはそれぞれ、下板80へ延びる上板脚部78Bが形成されている。また、上板78の外周端部には、周辺フランジ78Aが上板脚部78Bの間に形成され、上板78の剛性を高めている。さらに、上板78の角部Xには、上板脚部78Bを上板78の内側へ凹ませたスリット状の上溝部86が形成されている。
【0052】
上溝部86とは反対側の端部には、上板78の角部Yと角部Zの間に係合片82が形成されている。係合片82は、周辺フランジ78Aから下板80へ延びており、上板脚部78Bとほぼ同じ長さに形成された矩形状の平板82Aと、平板82Aの先端中央部に形成された爪部82Bとを含んで構成されている。なお、本実施形態では、上板78と係合片82は一体に形成されているが、別体に形成してもよい。
【0053】
上板78の角部Y、及び角部Zには、高さ方向に延びるピン87が取り付けられている。ピン87は、細長の円柱部材であり、ピン87の上端部は、上板78の裏面に固定されており、ピン87の下端部には、ピン87より小径で円柱状の位置決め部87Aが形成されている。また、上板78の角部Xには、上板脚部78Bの下端部から下方へ突出した2つの突起部89が形成されている。
【0054】
下板80は、上板78と同じ略三角形状で、厚み方向に貫通する下孔としての下円孔88が形成されている。下円孔88は、上円孔84と同形状、且つ上円孔84と同軸的に形成されている。
【0055】
下板80の角部X、Y、Zにはそれぞれ、下方へ延びる下板脚部80Bが形成されており、下板80の外周端部には、下板脚部80Bの間に周辺フランジ80Aが形成されている。周辺フランジ80Aは、下板脚部80Bより短い長さで形成されている。また、周辺フランジ80Aの一方(図中奥側)の側面には、下板脚部80Bと同じ長さのシール添付領域80Cが形成されている(図3参照)。シール添付領域80Cは、試薬容器26内の試薬の情報やロット番号などが記載されたシールを添付する部位である。
【0056】
下板80の角部Xには、上溝部86と同形状の下溝部90が形成されており、上溝部86及び下溝部90は、ターンテーブル36の回転軸96に設けられた突起部としてのリブ96Aと係合する係合部を構成する(図4参照)。
【0057】
図3に示すように、下溝部90とは反対側の端部には、角部Yと角部Zの間に係合片82の爪部82Bが引っ掛かる被係合部80Dが形成されている。被係合部80Dは、係合片82の厚み分だけ下板80を内側へ凹ませて形成されており、爪部82Bが係合した状態を維持できるように構成されている。
【0058】
下板80の角部X、Y、Zの近傍には、下板80の裏面から下方へ延びるピン92が形成されている。ピン92は細長の円筒部材であり、ピン92の下端部には、下板脚部80Bの下端部より下方まで延びた先細り部92Aが形成されている。ここで、先細り部92Aは、カセット10を撹拌装置16に装着する際に、撹拌装置16のターンテーブル36に形成された凹部98へ嵌め込まれる(図4参照)。
【0059】
図2に示すように、ピン92の上端部には、下板80の上面から下方へ凹ませて上板78に形成されたピン87の位置決め部87Aが差し込まれる凹部91が形成されている。また、下板80の角部Xの上面には上板78の突起部89が差し込まれる凹部93が形成されている。
【0060】
上板78の上板脚部78Bにより設けられた上板78と下板80との間の空間には、3つの試薬容器26A,26B、26Cが保持される。試薬容器26はそれぞれ、上端が開口した樹脂製の有底筒状部材であり、射出成型等により形成される。また、試薬容器26は、キャップ28が捩じ込まれる雄ねじ部を有する口部27Aと、口部27Aの下部に形成された大径部27Bと、大径部27Bの下部に形成された底部27Cとからなる容器本体27を有している。さらに、試薬容器26Aの容器本体27の底部27Cには、接続部材としての円筒体94が取り付けられる。円筒体94の上部内壁には、容器本体27の底部27Cに形成された凹部27Dと係合する突起部94Aが対向して2箇所に形成されており、円筒体94の下端部には、上方に凹んだ切り欠き部94Bが対向して2箇所に形成されている。
【0061】
ここで、試薬容器26を本体部79に保持させるには、初めに、容器本体27の底部27Cを下板80の下円孔88へ挿通させる。これにより、容器本体27が下円孔88に回転可能に支持される。このとき、不溶性担体粒子含有試薬が収容された試薬容器26Aは、下板80の角部X側の下円孔88へ挿通させる。
【0062】
次に、上板78を試薬容器26の上方から下板80に取り付ける。このとき、上板78のピン87に形成された位置決め部87Aと下板80の凹部91、及び上板78の角部Xに形成された突起部89と下板80の凹部93とが係合して、上板78と下板80とが位置決めされる。
【0063】
また、係合片82の爪部82Bが被係合部80Dに引っ掛かり、上板78と下板80とが離れないように固定する。このとき、容器本体27の口部27Aは、上板78の上円孔84を挿通して上板78の上面から突出する。
【0064】
この状態で、容器本体27の大径部27Bは、下板80と上板78との間に回転可能に保持され、カセット10から抜出不能となる。次に、容器本体27の口部27Aにキャップ28を捩じ込んで取付ける。なお、キャップ28の外径が上円孔84より小径である場合、上板78を下板80へ取り付ける前に、予めキャップ28を試薬容器26に取り付けてもよい。
【0065】
また、本実施形態では、上板78及び下板80に、円形の上円孔84及び下円孔88を形成したが、これに限らず、試薬容器26を回転可能に保持できる形状に形成されていればよく、例えば、矩形状等の孔でも、また、多角形状の孔でもよい。
【0066】
<撹拌装置の構成>
次に、試薬セット11がセットされる撹拌装置16の構成について説明する。図4に示すように、本実施形態に係る撹拌装置16は、回動可能なターンテーブル36を有している。ターンテーブル36は、上面視で円形の板材であり、10個の試薬セット11がセット可能となっている。ターンテーブル36の中心には、回転軸96がターンテーブル36を貫通して上方(紙面手前側)へ延びており、回転軸96の外周部には、回転軸96周りに等間隔で突起部としての10個のリブ96Aが放射状に突出している。
【0067】
ターンテーブル36の外周部と中央部の間には、回転軸96周りに10個の貫通孔100が形成されている。貫通孔100は、ターンテーブル36に試薬セット11をセットしたときに、試薬セット11の角部X側の上円孔84及び下円孔88と対応する位置に形成されており、この貫通孔100の中心には、円柱状の回転軸102が設けられている。
【0068】
回転軸102は、ターンテーブル36の上面から僅かに突出しており、回転軸102の端面には回転子104が取り付けられている。回転子104は、図5に示すように、貫通孔100の孔径より長さが長い板状の部材であり、回転子104の上端部の中心部が円弧状にくり抜かれた湾曲部104Aとなっている。
【0069】
ここで、図4に示すように、ターンテーブル36の裏面側には、回転軸96と同軸的に歯車106が撹拌装置16の基部(不図示)に固定されている。また、回転軸96は、ベアリング(不図示)を介して歯車106に挿通されている。さらに、回転子104が取り付けられた回転軸102は、歯車106と噛み合う複数の遊星歯車108に挿通されている。このため、回転軸102は、遊星歯車108と一体に回転する。ここで、駆動手段がターンテーブル36を矢印A方向に回転させると、遊星歯車108は、歯車106の外周に沿って歯車106と噛み合いながら同じ回転方向(矢印B方向)に回転する。これにより、回転子104も同様に矢印B方向に回転する。なお、歯車106を回転軸96にベアリングを介さずに直接固定し、歯車106の回転方向と回転子104の回転方向とが逆方向になるように構成してもよい。
【0070】
ターンテーブル36の外周端部には、円形の凹部98が複数形成されており、貫通孔100より径方向中央側にも同様の凹部98が形成されている。ここで、ターンテーブル36へ試薬セット11をセットする場合、初めにターンテーブル36の回転軸96のリブ96Aに対して、本体部79の上溝部86及び下溝部90を差し込む。次に、凹部98へカセット10の下板80に形成されたピン92を差し込むことで、試薬セット11の位置決めが行われる。
【0071】
また、図5に示すように、試薬容器26Aに取り付けられた円筒体94の切り欠き部94Bは、回転子104へ差し込まれる。ここで、回転子104には、湾曲部104Aが形成されているので、切り欠き部94Bに回転子104を差し込んでも試薬容器26Aが圧迫されることがない。また、切り欠き部94Bが回転子104へ差し込まれていない場合でも、回転子104が回転することにより、切り欠き部94Bが回転子104へ差し込まれ、試薬容器26Aが貫通穴100にセットされるので、不都合はない。
【0072】
<作用>
次に、本実施形態に係るカセット10及び試薬セット11の作用について説明する。図2に示すように、試薬容器26が上板78及び下板80の間の空間に抜出不能に保持されているので、使用者が試薬容器26の位置を入れ替えることができず、試薬容器26のセットミスを抑制できる。
【0073】
また、試薬セット11をターンテーブル36へセットするだけで3個の試薬容器26を一度にセットできるので、試薬容器26を個別にターンテーブル36へセットする場合と比べて、短時間かつ容易に試薬容器26をセットできる。
【0074】
さらに、試薬セット11をターンテーブル36へセットした後、試薬容器26のキャップ28を取り外すだけで試薬容器26の口部26Aが露出し、試薬が吸引可能となる。例えば、図1及び図6に示すように、試薬分注ノズル54により試薬容器26内の試薬を吸引する際には、キャップ28を外した試薬容器26の上方に試薬分注ノズル54を移動させ、試薬分注ノズル54のノズル部110を下降させるだけで試薬容器26内の試薬を吸引できる。なお、周辺フランジ78Aと下板80との間の空間に試薬容器26の大径部27Bが露出しているので、容易にキャップ28を取り外すことができる。
【0075】
ここで、カセット10の角部X側に保持された試薬容器26Aには、不溶性担体粒子を含有した試薬が収容されているので、不溶性担体粒子が沈殿しないように撹拌する必要がある。本実施形態に係る試薬セット11では、カセット10をターンテーブル36にセットすると、不溶性担体粒子含有試薬が収容された試薬容器26Aの底部27Cに取り付けられた円筒体94と、ターンテーブル36の回転子104とが接続される。このため、図4に示すように、ターンテーブル36を回転(公転)するだけで、回転子104が回転して試薬容器26が回転(自転)する。従って、特別な撹拌装置を用いることなく、不溶性担体粒子を撹拌することができ、不溶性担体粒子の沈殿を抑制できる。特に、不溶性担体粒子として、比重の大きい磁性担体粒子を用いる場合、磁性担体粒子の沈殿が抑制され、磁性担体粒子が均一に撹拌されるので好ましい。
【0076】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る試薬セットを構成するカセット120について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。図7に示すように、カセット120は、上板122と、下板124と、上板122と下板124とを連結する係合片126とを含んで構成されている。
【0077】
上板122及び下板124は、上面視で細長の矩形状であり、長手方向の一端部が先端に向かって先細りしたテーパ状に形成されている。また、上板122には、直線状に3つの上円孔128が形成されており、下板124にも同様の位置に下円孔130が形成されている。
【0078】
本実施形態に係るカセット120では、第1実施形態に係るカセット10より狭幅に形成したので、ターンテーブルの周方向により多くのカセット120をセットすることができる。また、上円孔128及び下円孔130が直線状に形成されているので、例えば、図4の遊星歯車108の径方向外側に、別の遊星歯車を設けて互いを噛み合わせることができる。これにより、図7のカセット120に不溶性担体粒子含有試薬が収容された試薬容器26を複数保持する場合であっても、複数の試薬容器26内の試薬を撹拌できる。
【0079】
以上、本発明の第1実施形態及び第2実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、図2の試薬容器26Aの底部27Cへ取り付けられる円筒体94は、試薬容器26Aの底部27Cへ取付可能な形状であれば、いかなる形状であってもよく、例えば、角筒であってもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 カセット
11 試薬セット
16 撹拌装置
26 試薬容器
27A 口部
27C 底部
36 ターンテーブル
56 保持部
78 上板
78B 上板脚部(連結部材)
79 本体部
80 下板
80B 下板脚部
82 係合片(連結部材)
84 上円孔(上孔)
86 上溝部(係合部)
88 下円孔(下孔)
90 下溝部(係合部)
94 円筒体(接続部材)
96 回転軸
96A リブ(突起部)
120 カセット
122 上板
124 下板
126 係合片(連結部材)
128 上円孔(上孔)
130 下円孔(下孔)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7