(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012733
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】燃焼室壁
(51)【国際特許分類】
F23R 3/06 20060101AFI20161011BHJP
F23R 3/42 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
F23R3/06
F23R3/42 A
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-526534(P2014-526534)
(86)(22)【出願日】2012年8月22日
(65)【公表番号】特表2014-525557(P2014-525557A)
(43)【公表日】2014年9月29日
(86)【国際出願番号】FR2012051917
(87)【国際公開番号】WO2013030492
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2015年4月22日
(31)【優先権主張番号】1157574
(32)【優先日】2011年8月26日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501107994
【氏名又は名称】ターボメカ
【氏名又は名称原語表記】TURBOMECA
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サバリ,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ベラ,クロード
(72)【発明者】
【氏名】グリアンシュ,ギー
(72)【発明者】
【氏名】ベルトー,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ベルディエール,ユベール・パスカル
【審査官】
橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第01811231(EP,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0023495(US,A1)
【文献】
特開2006−242561(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0196188(US,A1)
【文献】
特開2007−163130(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0130953(US,A1)
【文献】
特開平04−283315(JP,A)
【文献】
米国特許第05233828(US,A)
【文献】
特開平04−332316(JP,A)
【文献】
米国特許第05279127(US,A)
【文献】
米国特許第05261223(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0199563(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0037323(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C1/00−9/58
F23R3/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械の燃焼室(4)の環状壁(11、12)にして、低温側および高温側を有し、燃焼室(4)の内部に燃料の燃焼を与えるために壁(11、12)の高温側に流入するように、壁(11、12)の低温側に流れる空気の第1の流れを可能にするための少なくとも1つの1次孔(17)、および複数の冷却孔(19)が設けられ、それぞれが、壁(11、12)の高温側を冷却するために壁(11、12)の高温側に流入するように、壁(11、12)の低温側に流れる空気の第2の流れを可能にするために1mmを超えない直径を有する、環状壁(11、12)であって、前記複数の冷却孔(19)がまた、冷却孔(19)を通して壁(11、12)の高温側に流入する空気の流れを用いることによって、前記燃焼から生じる燃焼ガス(20)を希釈するのに適していることを特徴とする、環状壁(11、12)。
【請求項2】
前記冷却孔(19)が、壁(11、12)通して空気を通過させるために全表面積の50%以上を有する、請求項1に記載のターボ機械の燃焼室(4)の環状壁(11、12)。
【請求項3】
前記冷却孔(19)が、前記少なくとも1つの1次孔(17)から下流側の壁(11、12)を通して空気を通過させるために全表面積の少なくとも97%を有する、請求項1または請求項2に記載のターボ機械の燃焼室(4)の環状壁(11、12)。
【請求項4】
複数の前記冷却孔(19)の各孔が、壁(11、12)への投影では壁(11、12)の中心軸線(X)の方向に対して45°以上の角度θを有する軸線に沿って方向付けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載のターボ機械の燃焼室(4)の環状壁(11、12)。
【請求項5】
角度θが85°から95°の範囲にある、請求項4に記載のターボ機械の燃焼室(4)の環状壁(11、12)。
【請求項6】
複数の前記冷却孔(19)の各孔が、壁(11、12)に対して角度βを有する軸線に沿って方向付けられ、角度βが、45°と同じくらいの大きさ、好ましくは30°と同じくらいの大きさである、請求項の1から5のいずれか一項に記載のターボ機械の燃焼室(4)の環状壁(11、12)。
【請求項7】
前記角度βが、15°以上、好ましくは20°以上である、請求項6に記載のターボ機械の燃焼室(4)の環状壁(11、12)。
【請求項8】
同軸である内側壁(11)および外側壁(12)を備えるターボ機械の燃焼室(4)であって、前記内側壁(11)および/または前記外側壁(12)が、請求項1から7のいずれか一項に記載の環状壁である、燃焼室(4)。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の少なくとも1つの環状壁(11、12)を有する燃焼室(4)を含む、ターボ機械(1)。
【請求項10】
ターボ機械の燃焼室(4)の燃焼ガス(20)を希釈する方法にして、前記燃焼室(4)が、低温側および高温側を備える少なくとも1つの環状壁(11、12)を有し、燃焼室(4)の内部に燃料の燃焼を与えるために壁(11、12)の高温側に流入するように、壁(11、12)の低温側に流れる空気の第1の流れを可能にするための少なくとも1つの1次孔(17)、および複数の冷却孔(19)が設けられ、それぞれが、壁(11、12)の高温側を冷却するために壁(11、12)の高温側に流入するように、壁(11、12)の低温側に流れる空気の第2の流れを可能にするために1mmを超えない直径を有する方法であって、壁(11、12)の高温側に流入する空気の流れがまた、燃焼ガス(20)を希釈する働きをすることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ機械の燃焼室の分野、および特にターボ機械の燃焼室の環状壁に関し、その壁は、低温側および高温側を有する。
【背景技術】
【0002】
用語「ターボ機械」は、本文脈では、タービン内で膨張する作動流体によって、作動流体の熱エネルギーを機械エネルギーに変換する機械を意味するために用いられる。下記の説明においては、用語「上流の(upstream)」および「下流の(downstream)」は、ターボ機械を通る作動流体の通常の流れ方向に対して定義される。
【0003】
特に、本発明は、いわゆる「内燃(internal combustion)」ターボ機械に関し、そこでは、タービンの作動流体は、この熱エネルギーを作動流体に供給している燃焼生成物の少なくとも一部を含む。この種のターボ機械は、特に、ガスタービン、ターボジェット、ターボプロップ、およびターボシャフトエンジンを含む。通常、この種の内燃ターボ機械は、タービンから上流に、燃料が作動流体、通常は空気と混合され燃焼される燃焼室を含む。したがって、燃料に含まれる化学エネルギーは、燃焼室内で熱エネルギーに変換され、それによって作動流体を加熱し、その後タービン内で機械エネルギーに変換されるのは、作動流体の熱エネルギーである。通常、この種のターボ機械はまた、燃焼室から上流に、燃焼前に空気を圧縮するために少なくとも1つのタービン段に共通である回転軸によって駆動される圧縮機を含む。
【0004】
この種のターボ機械においては、燃焼室は、通常、壁の低温側に流れる空気を壁の高温側に流入可能にするための孔を備える少なくとも1つの環状壁を有する。この種の壁は、燃料噴射器が通常位置している燃焼室の端壁と燃焼ガス出口との間で作動流体の流れ方向に延びる。燃焼室は、通常、ガス発生器ケーシングの内部に位置しており、そのケーシングは、その中に圧縮されている空気を受け入れるために圧縮機と連通している。
【0005】
この種の燃焼室においては、孔を通る空気の流れは、いくつかの機能を果たす。室の端壁、したがって噴射器に接近した「1次」ゾーンと呼ばれる第1のゾーンにおいては、壁は、噴射器によって噴射される燃料との燃焼反応のために空気を供給するのに主として役立つ少なくとも1つの「1次」孔を含む。それにもかかわらず、「希釈」ゾーンと呼ばれる、さらに下流にある第2のゾーンに位置している孔を通して燃焼室に入る空気は、主として、燃焼室からの出口においてその温度を低減するように燃焼ガスを希釈する働きをし、それによって、燃焼室から下流のタービンの熱応力が制限される。
【0006】
それにもかかわらず、ターボ機械の熱力学サイクルの効率を増大させるために、その傾向は、ますます燃焼室の温度を増加させることにある。これにより、燃焼室のシェルの壁に同時に生じるかなりの熱応力がもたらされる。これらの壁を冷却するために、これらは、小さな直径、通常1ミリメートル(mm)を超えないたくさんの冷却孔を有することができる。これらの冷却孔を通して燃焼室に入る空気は、各壁の高温側に比較的低温の薄膜を形成し、それによって壁の材料が燃焼熱から保護される。
【0007】
従来技術の燃焼室の希釈ゾーンにおいては、それにもかかわらず、燃焼ガスを希釈するために大きな直径の、通常1mmよりも大きな希釈孔と、また燃焼室の壁を冷却するために1mmを超えない小さな直径の冷却孔との両方が見出されることになる。なぜなら、当業者には、空気の噴流が希釈空気と燃焼ガスとの間に下流でよりよい混合を得るように燃焼室において流れに深く流入できるようになるために、大きな直径の孔によってのみ生成され得る空気の噴流を有することが必要であるという選択肢があるからである。それにもかかわらず、それは、他の欠点を生じる。特に、それらの希釈空気噴流は、燃焼室の内部に大量の温度の不均一性を生じる場合がある。残念ながら、環境上の理由のためおよび燃焼効率上の理由のため、温度は、燃焼室内で、できるだけ均一に分布されること確保することが重要である。そこに任意の温度ピークが、形成されている一酸化二窒素を生じさせることがあるが、燃料は、より低い温度のゾーンで燃え残る場合がある。
【0008】
したがって、本発明は、ターボ機械の燃焼室の環状壁に関するものであり、壁は、低温側および高温側を有し、前記壁には、燃焼室の内部に燃料の燃焼を与えるために壁の高温側に流入するように、壁の低温側に流れる空気の第1の流れを可能にするための少なくとも1つの1次孔、および複数の冷却孔が設けられ、それぞれは、壁の高温側を冷却するために壁の高温側に流入するように、壁の低温側に流れる空気の第2の流れを可能にするために1mmを超えない直径を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、燃焼室内の温度分布をより均一にすると同時に、ターボ機械の熱力学サイクル効率を増大させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これを行うために、本発明のターボ機械の燃焼室の環状壁の少なくとも1つの実施形態においては、複数の冷却孔はまた、冷却孔を通して壁の高温側に流入する空気の流れを用いることによって、前記燃焼から生じる燃焼ガスを希釈するのに適している。当業者の先入観とは反対に、小さな直径のこの種のオリフィスに空気を供給することは、燃焼室の壁を冷却するばかりでなく、小さな直径のこれらのオリフィスを介して供給される空気との燃焼ガスの効果的な混合を実現するのにも十分であり、それによって、燃焼ガスの効果的な希釈が実現されることが分かっている。
【0011】
特に、本発明の第2の態様においては、この種の燃焼室では、前記冷却孔は、壁を通して空気を通過させるために全表面積の50%以上、より詳細には、前記少なくとも1つの1次孔から下流の壁を通して空気を通過させるために全表面積の少なくとも97%を有することができる。したがって、燃焼ガスを希釈するための大きな直径の多数のオリフィスを省略することができ、それによって、燃焼室において流れの不均一性を回避するのに役立つばかりでなく、燃焼室の希釈ゾーンを構成することをより容易にもする。
【0012】
第3の態様においては、燃焼ガスと冷却孔を介して供給される空気との間の混合を改善するために、複数の前記冷却孔の各孔は、壁への投影では壁の中心軸線の方向に対して45°以上の角度θを有する軸線に沿って方向付けられる。特に、前記角度θは、85°から95°の範囲にあってもよい。したがって、冷却孔を通して燃焼室に噴射される空気は、螺旋経路に従い、それによって、燃焼室でのその通過時間が長くなり、壁の高温側に隣接する比較的低温の空気の薄膜が厚くなり、したがって、壁の冷却ばかりでなく、このより厚い薄膜における空気との燃焼ガスの混合にも益する。
【0013】
第4の態様においては、また、冷却孔を介して導入される空気との燃焼ガスの混合を改善するために、複数の前記冷却孔の各孔は、壁に対して角度βを有する軸線に沿って方向付けられ、角度βは、45°と同じくらいの大きさ、好ましくは30°と同じくらいの大きさである。これにより、壁の高温側に隣接する比較的低温の空気の薄膜が安定であることが確実にされる。
【0014】
それにもかかわらず、第5の態様においては、また、低温の空気の薄膜を安定化させる目的で、前記角度βは、15°以上、好ましくは20°以上である。
【0015】
また、本発明は、同軸である内側壁および外側壁を含むターボ機械の燃焼室を提供する。内側壁および/または外側壁は、本発明の実施形態を構成する環状壁であってもよく、したがって複数の冷却孔を含み、それぞれは、壁の高温側を冷却するために壁の高温側に流入するように、壁の低温側に流れる空気の第2の流れを可能にするために1mmを超えない直径を有し、また、冷却孔を通して壁の高温側に流入する空気の流れを用いることによって、前記燃焼から生じる燃焼ガスの希釈を確実にする。それにもかかわらず、燃焼室は、この環状形状以外の形状を有することができる。たとえば、これは、複数の別個の火炎管を形成するために、ターボ機械の中心軸線を中心に配置される異なる中心軸線を備える複数のこの種の環状壁によって形成されることができる。
【0016】
また、本発明は、ガスタービン、ターボジェット、ターボプロップ、またはターボシャフトエンジンなどの、特に航空用途のためのターボ機械を提供し、エンジンは、複数の冷却孔を含む少なくとも1つの環状壁を備える燃焼室を含み、それぞれは、壁の高温側を冷却するために壁の高温側に流入するように、壁の低温側に流れる空気の第2の流れを可能にするために1mmを超えない直径を有し、また、冷却孔を通して壁の高温側に流入する空気の流れを用いることによって、前記燃焼から生じる燃焼ガスの希釈を確実にする。
【0017】
また、本発明は、ターボ機械の燃焼室における燃焼ガスを希釈する方法を提供し、前記燃焼室は、低温側および高温側を備える少なくとも1つの環状壁を有し、燃焼室の内部に燃料の燃焼を与えるために壁の高温側に流入するように、壁の低温側に流れる空気の第1の流れを可能にするための少なくとも1つの1次孔、および複数の冷却孔が設けられ、それぞれは、壁の高温側を冷却するために壁の高温側に流入するように、壁の低温側に流れる空気の第2の流れを可能にするために1mmを超えない直径を有し、本方法は、壁の高温側に流入する空気の流れがまた、燃焼ガスを希釈する働きをすることを特徴とする。
【0018】
本発明は、非限定的な例示として与えられる実施形態の次の詳細な説明を読むと、よく理解されることができ、その利点がより明らかになる。説明は添付の図面を参照している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】従来技術の燃焼室の概略長手方向断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態の燃焼室の概略長手方向断面図である。
【
図4A】円筒投影法での
図3の燃焼室の壁の詳細図である。
【
図4B】線IVB−IVBによる断面での同じ壁の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ターボ機械、およびより詳細にはターボシャフトエンジン1が、
図1に説明のために概略的に示されている。作動流体の流れ方向に、このエンジン1は、遠心圧縮機3、環状燃焼室4、第1の軸流タービン5、および第2の軸流タービン6を備える。さらに、エンジン1はまた、第1の回転軸7、および第1の回転軸7と同軸の第2の回転軸8を有する。
【0021】
第2の回転軸8は、燃焼室4から下流の第1の軸流タービン5における作動流体の膨張が燃焼室4から上流の圧縮機3を駆動する働きをするように、遠心圧縮機3を第1の軸流タービン5に接続する。第1の回転軸7は、第1の軸流タービン5から下流の第2の軸流タービン6における作動流体の続いて起こる作動流体の膨張が動力取出し装置9を駆動する働きをするように、第2の軸流タービン6をエンジンから下流および/または上流に配置される動力取出し装置9に接続する。
【0022】
したがって、遠心圧縮機3における作動流体の圧縮とこれに続く燃焼室4における作動流体の加熱、および第2の軸流タービン6におけるその膨張により、燃焼室4における燃焼によって得られる熱エネルギーの一部が動力取出し装置9から取り出される機械的仕事に変換されることができるようになる。示されたエンジンにおいては、駆動流体は空気であり、燃料がそれに加えられ、燃焼室4で燃焼され、その燃料は、たとえば炭化水素であってもよい。
【0023】
従来技術の燃焼室204が
図2に示されている。この燃焼室204は、内側壁211および外側壁212を備え、その壁は、環状で同軸であり、2つの壁211および212が一緒に接合する端壁213から燃焼ガス出口まで延びる。燃焼室204は、燃料噴射器215が位置している1次ゾーン204a、および1次ゾーン204aから下流にある希釈ゾーン204bにさらに分割され得る。示された例では、燃焼室204は、その軸線方向範囲を限定するために、ベンド216を有するタイプのものである。このタイプの燃焼室は、
図1に示されるように、特にターボ機械がターボシャフトエンジンである場合、遠心圧縮機を有するターボ機械に特に広く行きわたっている。
【0024】
燃焼室204の壁211および212は、3つの異なるタイプの孔を有し、その3つはすべて、燃焼室204の外側の壁211、212の低温側から燃焼室204の内側の壁211、212の高温側に空気の流れを通過させるのに使用される。第1のタイプの孔は、「1次」孔217と言われ、1次ゾーン204aに位置しており、噴射器215によって噴射される燃料の燃焼を与えるのに使用される空気を通過させる働きをする。これらの1次孔217から下流に、壁211、212はまた、「希釈」孔218と呼ばれる第2のタイプの孔を有し、燃焼ガス220を希釈するのに使用される空気を通過させる働きをし、この燃焼ガス220は、1次孔217を介して入る空気と反応する、噴射器215によって噴射される燃料の燃焼から生じる。また、壁211、212は、「冷却」孔219と呼ばれる第3のタイプの孔を有し、壁211、212のそれぞれの高温側を冷却するのに使用される空気が通過できるようになっている。孔の3つのタイプは、特に、それらの異なるサイズが異なる。したがって、1次孔217、および特に希釈孔218は、冷却孔219の直径よりも著しく大きい直径を有する。冷却孔は、壁211、212の表面にわたって数多く配置され、それらのそれぞれは1mmを超えない直径を有するが、希釈孔218は、約5mm以上の直径を有する。したがって、エンジンが運転中の場合、冷却孔219を通して壁211、212の高温側に流入する空気は、燃焼ガス220の熱からそれらを保護するために、壁211、212に隣接したままである比較的低温の空気の薄膜221を形成し、希釈孔218を通して流入する空気は、希釈ゾーン204bにおいて燃焼ガス220と混じり合うために、燃焼室204に深く流入する噴流222を形成する。
【0025】
本発明の実施形態の燃焼室4が
図3に示されている。また、この燃焼室4は、環状で同軸であり、壁11および12が一緒に接合する端壁13から燃焼ガス出口まで延びる内側壁11および外側壁12を有する。同様に、燃焼室4は、燃料噴射器15が位置している1次ゾーン4a、および1次ゾーン4aから下流の希釈ゾーン4bにさらに分割され得る。示された実施形態においては、内側壁および外側壁は、最大半径方向距離hによって間隔を置いて設けられ、燃焼室の中心軸線Xの方向に沿った1次ゾーンの深さは、前記距離hに等しい。示された例においては、燃焼室4は、同様に、その軸線方向範囲を限定するために、ベンド16を有するタイプのものである。
【0026】
それにもかかわらず、従来技術の燃焼室204とは違って、この燃焼室4は、燃焼室4の外側の壁11、12の低温側から燃焼室4の内側の壁11、12の高温側に空気の流れを通過させるための2つのタイプの孔だけを有し、これは、1次孔17および冷却孔19である。したがって、前記1次孔17から下流に向かって、および特に希釈ゾーン4bにおいて、壁11、12は、1mmよりも大きな直径の空気を通過させるための孔を実際に1つも有しない。壁11、12は、たとえば燃焼室4の内視鏡検査用の孔などの、ある一定の他のオリフィスを有してもよいが、冷却孔19は、壁11、12を通して空気を通過させるために全表面積の少なくとも50%、および希釈ゾーン4bでは少なくとも97%を有する。
【0027】
この燃焼室4においては、より大きな直径の特定の希釈孔は存在せず、したがって、燃焼ガス20は、冷却孔19を通して燃焼室4に流入する空気によって実際に専ら希釈され、壁11、12に隣接する空気の薄膜21は、燃焼ガス20と効果的に混合する。この混合を容易にするために、示された実施形態においては、冷却孔19は、これらの冷却孔19を通して燃焼室4に流入する空気を螺旋形の軌道に押しやるように方向付けられる。したがって、
図4Aおよび
図4Bに示されるように、この実施形態においては、各冷却孔19は、壁11、12に対して角度βを有する軸線に沿って方向付けられ、角度βは20°から30°の範囲にあり、中心軸線Xの方向に対しておよそ90°の角度βを有する、壁への投影部を有する。このように示されている燃焼室4は、均一にかつ効果的な方法で燃焼ガス20をうまく希釈すると同時に、大きな直径の特定の希釈孔を省略し、それによって、それに関連する欠点が回避される。
【0028】
本発明は特定の実施形態を参照して説明されているが、さまざまな改造および変更が、特許請求の範囲によって規定されているような本発明の一般的範囲を超えることなくこの例に対して行われ得ることは明らかである。たとえば、他の角度θおよびβ、特にθ≧45°および15°≦β≦45°の範囲の角度θおよびβを考えることができる。さらに、言及されたさまざまな実施形態の個々の特徴は、追加の実施形態を構成するように結合され得る。したがって、説明および図面は、限定的な意味ではなく例示の意味で考慮されるべきである。