特許第6012740号(P6012740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6012740分散液、分散液を作製するためのプロセス、インク、および使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012740
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】分散液、分散液を作製するためのプロセス、インク、および使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/00 20060101AFI20161011BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20161011BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20161011BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20161011BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20161011BHJP
   B01F 17/52 20060101ALI20161011BHJP
   B01F 17/14 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   B01J13/00 B
   C09D11/322
   C09D17/00
   C08G18/38
   B41J2/01 501
   B01F17/52
   B01F17/14
【請求項の数】9
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-533976(P2014-533976)
(86)(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公表番号】特表2015-501201(P2015-501201A)
(43)【公表日】2015年1月15日
(86)【国際出願番号】GB2012052361
(87)【国際公開番号】WO2013050737
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2015年9月15日
(31)【優先権主張番号】1117093.3
(32)【優先日】2011年10月5日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514086802
【氏名又は名称】フジフィルム イメージング カラーランツ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100085279
【弁理士】
【氏名又は名称】西元 勝一
(72)【発明者】
【氏名】ライト ギャビン
【審査官】 松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−056806(JP,A)
【文献】 特開平02−287546(JP,A)
【文献】 特開平02−284143(JP,A)
【文献】 特開平02−287547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/00
B01F 17/14
B01F 17/52
B41J 2/01
C08G 18/38
C09D 11/322
C09D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散液の作製のためのプロセスであって:
粒子固体、液体媒体、および分散剤を含む組成物を分散させることを含み;
ここで、前記分散剤は、少なくとも工程a)およびb):
a)少なくとも成分i)、成分ii)、および成分iii)
成分i)少なくとも1つのホスホエステル基、ならびにヒドロキシル、アミノ、チオール、およびヒドラゾ基から独立して選択される2つの基を有するモノマー、
成分ii)ジイソシアネート、
成分iii)エチレングリコール、1,2‐および1,3‐プロピレングリコール、1,2‐;1,3‐;1,4‐;および2,3‐ブチレングリコール、1,6‐ヘキサンジオールおよびネオペンチルグリコール、1,8‐オクタンジオール、ビス‐フェノールA、シクロヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ならびにジブチレングリコールから選択される1つ以上のジオール、
を含むモノマー組成物を共重合し、それによってホスホエステル官能ポリマーを形成する工程;ならびに、
b)前記ホスホエステル官能ポリマー中の前記ホスホエステル基の少なくとも一部を加水分解し、それによってリン含有アニオン性基を有する分散剤を得る工程、
を含むプロセスによって得られる、分散液の作製のためのプロセス。
【請求項2】
成分i)が、式(1)のモノマーを含み:
−A−X 式(1)
式中:
およびXは、各々独立して、アミン、ヒドラゾ、チオール、およびヒドロキシル基から選択され;
Aは、式(2)の1つ以上の基によって置換された有機基であり:
【化1】

式(2)
式中:
各LおよびLは、独立して、H、または所望に応じて置換されていてよいアルキル、アリール、もしくはヘテロ環基であるが、但し、LおよびLの両方がHということはなく;
アスタリスク()は、式(1)の化合物中における式(2)の基の結合点を表し;ならびに、
式(2)中のリン原子は、式(1)中の前記A基と、前記A基中の炭素または酸素原子を介して結合している、
請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
およびLが、各々独立して、無置換C1‐4アルキル基から選択され、XおよびXが、ヒドロキシルである、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
成分i)が、式(3)のモノマーを含み:
【化2】

式(3)
式中:
各LおよびLは、独立して、H、または所望に応じて置換されていてよいアルキル、アリール、もしくはヘテロ環基であるが、但し、LおよびLの両方がHということはなく;
およびTは、各々独立して、各々が単一のヒドロキシル基を有するC1‐6アルキルであり;ならびに、
は、C1‐6アルキレン基である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
成分ii)が、エチレンジイソシアネート、1,6‐ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,4‐フェニレンジイソシアネート、2,4‐トルエンジイソシアネート、2,6‐トルエンジイソシアネート、4,4’‐ジフェニル‐メタンジイソシアネートおよびその水素化誘導体、3,3’‐ジメチルビフェニル‐4,4’‐ジイソシアネート、2,4’‐ジフェニルメタンジイソシアネートおよびその水素化誘導体、1,5‐ナフチレンジイソシアネート、p‐キシリレンジイソシアネート、m‐キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’‐メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン‐2,4‐または(2,6‐)ジイソシアネート、ならびに1,3‐(イソシアナートメチル)シクロヘキサンから選択される1つ以上のジイソシアネートを含む、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記分散剤が、分散剤の1gあたり、0.05から5ミリモル/gのリン含有アニオン性基を有する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記液体媒体が、水を含む、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記粒子固体が、顔料であり、前記分散液が、インクである、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
25℃の温度にて30mPa・s未満の粘度を有するインクである分散液を作製するための、請求項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の分散剤を用いて分散液(特に、顔料分散液)を作製するためのプロセスに関し、さらに、分散液自体にも関する。本発明は、前記分散液を含むインク、特にインクジェット印刷用インクに関する。本発明はまた、インクジェット印刷用インクを作製するための前記分散剤の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
インクは、多くの場合、用いられる着色剤の種類に応じて、2つの種類のうちの1つである。染料系インクは、多くの場合、液体媒体中に溶解された染料を含む。顔料インクは、多くの場合、液体ビヒクル中に粒子の形態で分散された顔料を含む。顔料インクは、染料系インクよりも良好な耐オゾン堅牢度および耐光堅牢度を有する傾向にある。しかし、顔料は微細な粒子の形態であることから、インクの保存中および/またはインクの使用中(例:印刷中)に、その粒子は、凝塊または凝集する傾向がある。インクが基材上に印刷される前のそのような凝塊または凝集は、特に、プリンターノズルが非常に小さく、過大であるいかなる粒子状物質によっても閉塞されやすいものであるインクジェット印刷用インクにおいて、非常に望ましくない。従って、インクジェットの分野において、サブミクロンサイズの粒子による顔料分散液を提供し、このような顔料分散液のコロイド安定性を高めるための試みに、多大な労力が費やされてきた。インクは、長期間にわたり、高い印刷画質で印刷可能であることが望ましく、これは、操作性と称されることが多い。
【0003】
また、特に普通紙上に印刷された場合に、高い光学濃度(OD)が得られる顔料インクを提供することも望ましい。
【0004】
顔料分散液は、多くの場合、分散剤によってコロイド的に安定化されている。
【0005】
分散剤安定化顔料インクに関する発明者ら自身による研究において、発明者らは、良好なコロイド安定性と普通紙上での高い光学濃度(ODとも言う)とを同時に示すインクを作製することは特に困難であることを見出した。例えば、発明者らは、高いコロイド安定性を有する本技術分野にて公知の分散剤安定化顔料インクは、普通紙上に印刷された場合に低いODを示し、その逆もまた同様であることを見出した。
【0006】
発明者らはまた、普通紙上に印刷された場合に高いODを示すインクを提供するいくつかの分散剤安定化顔料インクが、例えば顔料分散または粉砕工程において分散剤を溶解/分散させる際の補助として、著しくかつ望ましくない程に高い量の有機液体を必要とする分散剤を使用する傾向にあることも見出した。
【0007】
さらに、分散剤は、分散または粉砕プロセスにおいて効果的であることが望ましい。より短時間でのサブミクロン粒子サイズへの粉砕(例:ミリング)では、多大なエネルギーが節約され、また、目的とするサイズよりも著しく小さい粒子サイズを有する顔料粒子が少なくなるという結果も得られ得る。目的とするサイズよりも非常に小さい粒子は、微粉と称される場合が多い。
【0008】
顔料系インクでは、基材上に印刷される場合、顔料が基材表面上に強く固定されていない最終イメージが作成される場合が多い。顔料系インクからの印刷物は、多くの場合、耐擦過性、耐水性、または耐蛍光ペンスミア性(highlighter smear fastness)が低い。
【0009】
水性のインクおよびインクジェット印刷用インクは、有機インクの場合とは非常に異なるポリマーを分散剤として必要とする。本発明はまた、水性液体ビヒクル中の粒子固体のための分散剤として適するポリマーを提供することも目的とする。加えて、本発明は、大量の有機液体が水と組み合わされて存在する場合であっても、粒子固体の分散液をコロイド的に安定化させることができるポリマーを提供することも試みる。
【0010】
商業的に、上述の問題の1つ以上を、少なくとも部分的に解決する顔料インクの作製に用いることができる分散液が依然として求められている。
【0011】
先行技術
PCT特許出願公開WO99/41320は、顔料系インクジェット印刷用インクを作製するためのポリウレタン分散剤を開示している。WO99/41320は、ポリウレタン分散剤がリン酸またはホスホン酸基を有し得る可能性について述べている。この例は、ページ26、作製9に開示されている。ホスホン酸またはリン酸基の導入は、その酸基を有するモノマーを共重合することによって行われる。
【0012】
PCT特許出願公開WO2003/046038も、顔料系インクジェット印刷用インクを作製するためのポリウレタン分散剤を開示している。ホスホン酸基は、ホスホン酸基を含有するジオールを用いることによってポリウレタン分散剤中に導入することができる(例:アルブライトアンドウィルソン(Albright and Wilson)から販売されているITC 1081という品名の製品 − ページ8、ライン19から26)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らによる詳細な研究から、例えばリン含有アニオン性基を有するポリウレタンの作製は、上述の先行技術文献のものに類似の手法を用いると、若干不充分なものであると証明されることが示された。本発明者らは、公知の方法によって作製されたポリウレタン分散剤について:i)ろ過および精製が困難であり;ii)分散剤としての効果が低いことを見出し;および/またはiii)最終分散液およびインクジェット印刷用インクが、中程度の安定性、操作性、印刷画質、光学濃度、および信頼性しか提供しないことを見出した。本発明者らは、公知の共重合経路では、著しく分岐し、および/または大量のゲル物質(不溶性架橋物質)を含有するポリウレタンポリマーをもたらす独特の傾向が存在することも観察した。分岐および/またはゲル化した物質が、上記の問題の原因であるとする仮説を立てた。ポリウレタン分散剤中に組み込まれるリン含有アニオン性基の量が多いほど、分岐およびゲル物質に関連する問題が悪化することが見出された。
【0014】
従って、本発明者らは、上述の技術的問題点に対処した分散剤を用いて粒子固体の分散液を作製することを探求した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第一の態様によると、分散液の作製のためのプロセスが提供され、それは:
粒子固体、液体媒体、および分散剤を含む組成物を分散させることを含み;
ここで、分散剤は、少なくとも工程a)およびb):
a)少なくとも成分i)およびii):
i)少なくとも1つのホスホエステル基、ならびにヒドロキシル、アミノ、チオール、およびヒドラゾ基から独立して選択される2つの基を有するモノマー、
ii)ジイソシアネート、
を含むモノマー組成物を共重合し、それによってホスホエステル官能ポリマーを形成する工程;ならびに、
b)ホスホエステル官能ポリマー中のホスホエステル基の少なくとも一部を加水分解し、それによってリン含有アニオン性基を有する分散剤を得る工程、
を含むプロセスによって得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
特に断りのない限り、本発明において、「1つの(a)」および「1つの(an)」の単語は、その品目の1つ以上を用いる可能性を含むことを意図している。従って、1つのジイソシアネート(a diisocyanate)は、1つ以上のジイソシアネートを意味する。同様に、1つのモノマー(a monomer)は、1つ以上のモノマーを意味する。
【0017】
粒子固体
粒子固体は、どのような種類のものであってもよい。好ましくは、粒子固体は、着色剤、より好ましくは、顔料である。顔料は、液体媒体に不溶性である無機もしくは有機顔料物質、またはこれらの混合物を含んでよく、好ましくはそれらである。本発明者らが意味する不溶性とは、液体媒体中における1重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下の溶解度のことである。溶解度は、好ましくは、25℃の温度にて測定される。溶解度は、好ましくは、pH7にて測定される。好ましくは、溶解度は、水中にて、より好ましくは、脱イオン水中にて測定される。
【0018】
顔料は、有機または無機であってよい。
【0019】
好ましい顔料は、有機顔料であり、例えば、Third Edition of the Colour Index (1971)およびそれに続く改訂版、ならびにそれに対する補遺にて、「顔料」の見出しの章に記載の顔料クラスのいずれであってもよい。有機顔料の例は、アゾ(ジスアゾおよび縮合アゾを含む)、チオインディゴ、インダントロン、イソインダントロン、アンタントロン、アントラキノン、イソジベンズアントロン、トリフェンジオキサジン、キナクリドン、およびフタロシアニン系、特に銅フタロシアニンおよびその核ハロゲン化誘導体、ならびにさらには酸性、塩基性、および媒染染料のレーキからのものである。好ましい有機顔料は、フタロシアニン、特に銅フタロシアニン顔料、アゾ顔料、インダントロン、アンタントロン、およびキナクリドンである。
【0020】
好ましい無機顔料としては、カーボンブラック(特にガスブラック)、二酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化および硫化鉄が挙げられる。
【0021】
インクジェットの場合、特に適切な顔料は、カーボンブラック、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントブルー15:3、およびC.I.ピグメントイエロー74である。当然、多くの別の選択肢としての顔料も存在する。
【0022】
顔料は、その表面に水分散性基が共有結合するように、表面処理されていないことが好ましい。顔料は、分散剤の補助なしには、水に分散することができないことが好ましい。
【0023】
液体媒体
本明細書で用いられる場合、「液体媒体」の単語は、粒子固体および分散剤が分散される際に存在する液体成分を意味する。本明細書で用いられる場合、液体の単語は、好ましくは、25℃の温度にて液体である物質を意味する。ある実施形態では、液体媒体(および液体ビヒクル)は、UVまたは電子線エネルギーによって硬化可能であってよいが、液体媒体(および液体ビヒクル)は、そのように硬化することができないことが好ましい。
【0024】
液体媒体は、完全に有機であってもよいが、水であるかまたは水を含む(すなわち水溶液である)ことが好ましい。
【0025】
ある場合では、液体媒体は、水、および所望に応じて含んでよい1つ以上の有機液体、特に水混和性有機液体を含む。ある場合では、液体媒体は、水、および分散液中に存在する液体の総量に対して50重量%未満、より好ましくは30重量%未満、特には20重量%未満、より特には10%未満、最も特には1重量%未満の水混和性有機液体を含むことが好ましい。ある場合では、分散液のための液体媒体は、水を含み、有機液体は含まない。このような分散液は、特にインクジェット印刷用インクのための、製剤の選択肢を増やすことを容易にするものである。本発明で用いられる分散剤は、水および僅かに少量の水混和性有機液体を含有する液体媒体中にて、または完全に水性である液体媒体(水が液体媒体中に存在する唯一の液体である)中にて、粒子固体を分散させるのに特に適している。
【0026】
液体媒体中に含めるための好ましい水混和性有機液体としては:
i)C1−6アルカノール、好ましくは、メタノール、エタノール、n‐プロパノール、イソプロパノール、n‐ブタノール、sec‐ブタノール、tert‐ブタノール、n‐ペンタノール、シクロペンタノール、およびシクロヘキサノール;
ii)直鎖状アミド、好ましくは、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセタミド;
iii)水混和性エーテル、好ましくは、テトラヒドロフランおよびジオキサン;
iv)ジオール、好ましくは、2から12個の炭素原子を有するジオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、およびチオジグリコール、ならびにオリゴ‐およびポリ‐アルキレングリコール、好ましくは、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコール;
v)トリオール、好ましくは、グリセロールおよび1,2,6‐ヘキサントリオール;
vi)ジオールのモノ‐C1−4‐アルキルエーテル、好ましくは、2から12個の炭素原子を有するジオールのモノ‐C1−4‐アルキルエーテル、特に、2‐メトキシエタノール、2‐(2‐メトキシエトキシ)エタノール、2‐(2‐エトキシエトキシ)‐エタノール、2‐[2‐(2‐メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2‐[2‐(2‐エトキシエトキシ)‐エトキシ]‐エタノール、およびエチレングリコールモノアリルエーテル;
vii)環状アミド、好ましくは、2‐ピロリドン、N‐メチル‐2‐ピロリドン、N‐エチル‐2‐ピロリドン、カプロラクタム、および1,3‐ジメチルイミダゾリドン、
が挙げられる。
【0027】
好ましくは、液体媒体は、水、および所望に応じて含んでよい1つ以上の、特には、所望に応じて含んでよい1から3つの水混和性有機液体を含む。液体媒体中の特に好ましい水混和性有機液体は、ジプロピレングリコールである。
【0028】
分散剤
好ましくは、分散剤は、1000から500000、より好ましくは、5000から200000、特には、10000から100000、より特には、10000から50000の重量平均分子量を有する。
【0029】
分子量は、好ましくは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。用いられる分子量標準は、好ましくは、ポリエチレングリコール、または、より好ましくは、ポリスチレンである。GPCに用いられる溶媒は、好ましくは、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、またはアセトンである。好ましい方法では、標準としてポリスチレンが用いられ、溶媒としてジメチルホルムアミドが用いられる。
【0030】
好ましくは、分散剤は直鎖状である。そのような分散剤の場合、重合反応において反応性である基を3つ以上有するモノマー(例:トリイソシアネートまたはトリオール)が含まれないことが好ましい。
【0031】
好ましくは、分散剤は、2重量%未満、より好ましくは、1重量%未満、特には、0.5重量%未満のゲル分率を有する。より好ましくは、分散剤は、測定可能なゲル分率を持たない。ゲル分率を特定するための好ましい方法は、ソックスレー抽出によるものである。好ましくは、抽出溶媒は、ジメチルホルムアミドである。ジメチルホルムアミドによる抽出は、少なくとも8時間実施されることが好ましい。ゲルのパーセントは、好ましくは、重量法によって測定される。
【0032】
分散剤は、リン含有アニオン性基を有する。好ましくは、リン原子は、酸素または炭素原子を介して、より好ましくは、炭素原子を介して、分散剤構造に共有結合されている。リン含有アニオン性基は、リン酸基であってよいが、より好ましくは、ホスホン酸基である。本研究において、ホスホン酸基は、水性液体媒体中における加水分解に対してより安定であることが見出された。
【0033】
分散剤中におけるリン含有アニオン性基の量は、好ましくは、0.05から10ミリモル/g、より好ましくは、0.05から5ミリモル/g、さらにより好ましくは、0.25から4ミリモル/g、特には、0.25から3ミリモル/g、最も特には、0.25から1.5ミリモル/gである。ある場合では、分散剤中におけるリン含有アニオン性基の量は、好ましくは、0.5から8ミリモル/gである。
【0034】
好ましさが増加する順番にて、分散剤中におけるリン含有アニオン性基の量は、好ましくは、少なくとも0.05ミリモル/g、0.1ミリモル/g、0.25ミリモル/g、および0.5ミリモル/gである。
【0035】
好ましさが増加する順番にて、分散剤中におけるリン含有アニオン性基の量は、好ましくは、10ミリモル/g以下、8ミリモル/g以下、5ミリモル/g以下、4ミリモル/g以下、3ミリモル/g以下、2ミリモル/g以下、および1.5ミリモル/g以下である。
【0036】
分散剤がホスホン酸およびリン酸基から選択される酸性基のみを有する場合、分散剤の酸価は、ホスホン酸およびリン酸基を合計したモル量を単純に2倍したものであるということになる。
【0037】
リン含有アニオン性基の量は、モノマー組成が既知である場合、計算によって特定することができる。別の選択肢として、それは、リンの元素分析から特定することもできる。好ましい方法は、誘導結合プラズマ‐発光分析器(ICP‐OES)である。リン元素特定のための好ましいICP‐OES装置は、Perkin Elmer 3300DVである。
【0038】
1つの場合では、上記の量は、分散剤中のホスホン酸基の量である。
【0039】
好ましくは、分散剤は、0.05から20重量%、より好ましくは、0.5から20重量%、さらにより好ましくは、1から10重量%、特には、1から5重量%、より特には、2から4重量%のリン含有量を有する。
【0040】
好ましさが増加する順番にて、分散剤は、好ましくは、少なくとも0.05重量%、0.1重量%、0.25重量%、0.5重量%、および1重量%のリン含有量を有する。
【0041】
好ましさが増加する順番にて、分散剤は、好ましくは、20重量%以下、10重量%以下、7重量%以下、5重量%以下、および3量%以下のリン含有量を有する。
【0042】
好ましくは、分散剤中に存在するリンはすべて、リン含有酸およびホスホエステル基から選択される基の形態である。当然、これらの基の一部は、本発明の第一の態様にて必要とされるように、リン含有酸基でなければならない。
【0043】
その他のアニオン性基が、所望に応じて分散剤中に存在していてもよい。例えば、分散剤は、カルボン酸および/またはスルホン酸基を追加で有していてよい。しかし、好ましくは、分散剤は、その他のアニオン性基(リン含有アニオン性基以外)を、1ミリモル/g未満、より好ましくは、0.5ミリモル/g未満有し、特にはまったく有さない。カルボン酸基は、滴定によって容易に定量することができる。スルホン酸基は、元素分析によって確認することができる。
【0044】
分散剤中に存在するいずれのアニオン性基も、遊離酸(プロトン化された)の形態、塩の形態、またはこれらの混合であってよい。好ましくは、アニオン性基は、塩の形態である。適切な塩としては、アルカリ金属イオン(特にナトリウム、カリウム、およびリチウム)との塩、ならびにアミン、有機アミン、およびアルカノールアミンとの塩が挙げられる。アニオン性基は、完全に中和されている必要はない。好ましくは、中和度は、30から150モル%、より好ましくは、50から130モル%である。100モル%は、リン含有アニオン性基1モルに対して一塩基性塩基(monobasic base)がちょうど2モルであることを表す。
【0045】
好ましくは、中和は、分散液のpHが7から12、より好ましくは、8から12となるようなものである。
【0046】
分散剤は、液体媒体中に不溶性であってよいが、好ましくは、可溶性である。好ましくは、分散剤は、25℃の温度にて可溶性である。好ましくは、分散剤は、液体媒体中にて、少なくとも5重量%、より好ましくは、少なくとも10重量%の溶解度を有する。好ましくは、溶解度は、液体媒体として脱イオン水を用いて特定される。好ましくは、溶解度は、分散剤中のいずれのアニオン性基についても100モル%の中和度である分散剤のカリウム塩を用いて特定される。
【0047】
好ましくは、分散剤は、ポリウレア、ポリチオウレア、またはより好ましくは、ポリウレタンである。
【0048】
分散剤は、本発明またはその請求項の必須部分として、合成される必要はない。従って、例えば、本発明において必要とされる分散剤が、将来的に市販されるようになった場合、単にそれらを購入し、必要とされる分散液の作製に用いればよい。
【0049】
分散剤の作製
工程a)
工程a)では、ホスホエステル官能ポリマーが形成される。成分i)のモノマーはすべて、2つ(そして2つのみ)のイソシアネート反応性基を有し、これらは、独立して、ヒドロキシル(−OH)、アミノ(一級および二級アミノを含む)、チオール(−SH)、またはヒドラゾ(NH−NH−)基から選択されてよい。好ましいイソシアネート反応性基は、アミン、チオール、および特には、ヒドロキシル基である。成分i)の好ましいモノマーは、ジアミン、ジチオール、ジヒドラジン、および特にはジオールである。従って、成分i)の好ましいモノマーは、ホスホエステルジオールである。
【0050】
成分i)のモノマーの各々は、少なくとも1つのホスホエステル基を有する必要がある。ホスホエステルは、リン酸エステルであってよく、またはより好ましくは、ホスホン酸エステルである。ホスホエステルは、一部のアニオン官能性が残っている部分エステルであってよく、より好ましくは、ホスホエステルは、完全エステル(完全にエステル化されている)である。この形では、リン基は、アニオン性電荷も酸性プロトンも持たない。当然、いくつかのリン含有アニオン性基を含む部分ホスホエステルが用いられる場合、加水分解工程b)により、より多くのリン含有アニオン性基を有する分散剤が生成される。すなわち、加水分解工程前に存在していた量よりも多くなる。部分ホスホエステルの使用は、続いて行われるイソシアネートとの反応が、分岐鎖状またはゲル化構造をより生成しやすくなることから、多くの場合、好ましさはより低い。この理由から、完全ホスホエステルが好ましい。
【0051】
好ましくは、成分i)は、式(1)のモノマーを含み:
−A−X 式(1)
式中:
およびXは、各々独立して、アミン、ヒドラゾ、チオール、およびヒドロキシル基から選択され;
Aは、式(2)の1つ以上の基によって置換された有機基であり:
【0052】
【化1】

式(2)
式中:
各LおよびLは、独立して、H、または所望に応じて置換されていてよいアルキル、アリール、もしくはヘテロ環基であるが、但し、LおよびLの両方がHということはなく;
アスタリスク()は、式(1)の化合物中における式(2)の基の結合点を表し;ならびに、
式(2)中のリン原子は、式(1)中のA基と、A基中の炭素または酸素原子を介して結合している。
【0053】
好ましくは、XおよびXは、ヒドロキシル基(−OH)である。
【0054】
好ましくは、式(2)中のリン原子は、式(1)中のA基と、A基中の炭素原子を介して結合している。本発明者らの研究では、そのような基の場合にA基とのより確かな結合が得られ、従って、工程b)において、LおよびL基を、リン基を分散剤構造から開裂除去してしまうことなく、選択的に加水分解することが可能となった。
【0055】
およびL基は、好ましくは、各々独立して、所望に応じて置換されていてよいアルキル、アリール、またはヘテロ環基である。
【0056】
およびL基は、好ましくは、各々独立して、所望に応じて置換されていてよいアルキル基である。好ましいアルキル基は、所望に応じて置換されていてよいC1‐20アルキル、より好ましくは、C1‐8アルキル、特には、C1‐4アルキル基である。好ましいアルキル基は、所望に応じて置換されていてよいメチル、エチル、プロピル、およびブチル基である。これらの中でも、続いて工程b)において行われる加水分解の効率という観点から、メチル、および特にはエチル基が好ましい。好ましいアリール基としては、所望に応じて置換されていてよいフェニルおよびナフチル基が挙げられる。
【0057】
およびL基中に所望に応じて存在してよい置換基は、−NO、CN、ハロ(特にCl、F、Br、およびI)、−NHC(O)C1‐6アルキル、−SONHC1‐6アルキル、−SO1‐6アルキル、−OC1‐6アルキル、および−OC(O)C1‐6アルキルから選択されてよい。LまたはL基中に存在する置換基はいずれも、前記で述べたイソシアネート反応性基を持たないことが好ましい。ハロ置換基も、好ましさはより低い。好ましくは、LおよびLの基は、所望に応じて存在してよい置換基を持たない。
【0058】
およびLは、好ましくは、各々独立して、無置換C1‐4アルキル基(特に、無置換メチルおよびエチル基)から選択される。
【0059】
好ましくは、Aは、所望に応じて1つ以上の窒素、酸素、または硫黄原子が間に挿入されていてよいC1‐30有機基である。Aは、芳香族、脂肪族、ヘテロ環式、またはこれらの組み合わせであってよい。好ましくは、Aは、所望に応じて窒素原子が間に挿入されていてよい脂肪族基である。
【0060】
好ましくは、成分i)は、式(3)のモノマーを含み:
【0061】
【化2】

式(3)
式中:
およびLは、既に定義され、好ましいとされた通りであり;
およびTは、各々独立して、各々が単一のヒドロキシル基を有するC1‐6アルキルであり;ならびに、
は、C1‐6アルキレン基である。
【0062】
好ましくは、TおよびTは、各々独立して、−CHCHOHまたは−CHCH(OH)CHであり、より好ましくは、−CHCH−OHである。
【0063】
好ましくは、Tは、−CH−、−(CH−、−(CH−、または−CH−CH(CH)−であり、より好ましくは、−CH−である。
【0064】
好ましくは、成分i)に存在するモノマーはすべて、式(1)のモノマーであり、より好ましくは、式(3)のモノマーである。
【0065】
式(3)の特に好ましい化合物は、式(4)の化合物である:
【0066】
【化3】

式(4)
【0067】
成分i)は、式(5)のモノマーを含んでよく:
【0068】
【化4】

式(5)
式中:
、L、T、T、およびTは、既に定義され、好ましいとされた通りであり、Tは、HまたはC1‐6アルキルである。
【0069】
成分i)は、式(6)のモノマーを含んでよく:
【0070】
【化5】

式(6)
式中:
、L、T、T、およびTは、既に定義され、好ましいとされた通りであり、Zは、アリール基であり、特に、ベンゼンまたはナフチレン環である。
【0071】
成分i)のモノマーは、市販のものが入手されてよく、またはそれらは、合成によって作製されてもよい。
【0072】
成分i)のモノマーの好ましい種類は、ホスホン酸エステルジオールである。そのようなモノマーは、公知のミカエリス‐アルブーゾフ反応によって作製することができ、ここで、ホスホン酸トリアルキルおよびハロゲン化アルキルが共反応される。加えて、ジオールホスホン酸エステルは、米国特許公開第4,052,487号に開示される方法、または米国特許公開第3,076,010号に開示される方法によって作製することができる。
【0073】
特に有用なジオールホスホン酸エステルを生成する好ましい合成方法では、2‐(1,3‐オキサゾリジン‐3‐イル)エタノール(CAS番号20073‐50‐1)をホスホン酸ジアルキル(特にジエチルまたはジメチル)と反応させる。好ましくは、この合成方法は、30から100℃、より好ましくは、40から80℃、特には、約60℃の温度での加熱を用いて行われる。好ましくは、加熱は、30分間から16時間、より好ましくは、30分間から8時間、特には、30分間から4時間にわたって維持される。2‐(1,3‐オキサゾリジン‐3‐イル)エタノールは、市販のものが入手されてよく、またはそれは、パラホルムアルデヒドとジエタノールアミンとの間の反応によって合成されてもよい。
【0074】
成分i)には、異なるモノマーの混合物が存在していてよい。
【0075】
好ましくは、成分i)は、工程a)でのホスホエステル官能ポリマーの作製に用いられる全モノマー成分の合計モル数に対して、合わせて少なくとも1モル%、より好ましくは、少なくとも3モル%、特には、少なくとも5モル%のモノマーを含む。好ましくは、成分i)は、工程a)でのホスホエステル官能ポリマーの作製に用いられる全成分の合計モル数に対して、合わせて50モル%未満、より好ましくは、30モル%未満、より特には、20モル%未満のモノマーを含む。
【0076】
ジイソシアネート
ジイソシアネートは、特に制限はまったくなく、いかなる種類のものであってもよい。ジイソシアネートは、脂肪族、芳香族、または両者の混合物であってもよい。好ましくは、ジイソシアネートは、イオン性、アミノ、ヒドラゾ(NHNH−)、チオール、またはヒドロキシルの基を持たない。このことは、分散剤のゲル化または分岐を防ぐ手助けとなる。
【0077】
好ましくは、成分ii)は、エチレンジイソシアネート、1,6‐ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,4‐フェニレンジイソシアネート、2,4‐トルエンジイソシアネート、2,6‐トルエンジイソシアネート、4,4’‐ジフェニル‐メタンジイソシアネートおよびその水素化誘導体、3,3’‐ジメチルビフェニル‐4,4’‐ジイソシアネート、2,4’‐ジフェニルメタンジイソシアネートおよびその水素化誘導体、1,5‐ナフチレンジイソシアネート、p‐キシリレンジイソシアネート、m‐キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’‐メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン‐2,4‐または(2,6‐)ジイソシアネート、ならびに1,3‐(イソシアナートメチル)シクロヘキサンから選択される1つ以上のジイソシアネートを含む。これらの中でも、イソホロンジイソシアネートが特に好ましい。好ましくは、成分ii)に存在するジイソシアネートの少なくとも1つが、イソホロンジイソシアネートであるか、またはイソホロンジイソシアネートを含む。
【0078】
好ましくは、成分ii)は、工程a)でのホスホエステル官能ポリマーの作製に用いられる全モノマー成分の合計モル数に対して、合わせて少なくとも20モル%、より好ましくは、少なくとも30モル%、特には、少なくとも40モル%のジイソシアネートを含む。好ましくは、成分ii)は、工程a)でのホスホエステル官能ポリマーの作製に用いられる全モノマー成分の合計モル数に対して、合わせて80モル%未満、より好ましくは、70モル%未満、より特には、60モル%未満のジイソシアネートを含む。
【0079】
好ましくは、ホスホエステル官能ポリマーの作製に用いられる全組成中、イソシアネート基の合計モル数の、ヒドロキシル、アミノ、チオール、およびヒドラゾ基の合計モル数に対する比率は、0.5:1から1.5:1、より好ましくは、0.8:1から1.2:1、特には、0.9:1から1.1:1である。
【0080】
ホスホエステル分散剤が、分子量をなおさらに増加させるために鎖伸長されることになる場合、イソシアネート基の合計モル数の、ヒドロキシル、アミノ、チオール、およびヒドラゾ基の合計モル数に対する比率は、1.05:1から2:1、より好ましくは、1.1:1から1.5:1であることが好ましい。このことにより、例えばジオール、ジチオール、ならびに特にはジアミン、ヒドラジン、およびジヒドラジドによって容易に鎖伸長することができるイソシアネート官能ホスホエステル官能ポリマーが得られる。
【0081】
その他の成分
成分i)および成分ii)に加えて、ホスホエステル官能ポリマーの作製に用いられるモノマー組成物は、各々がホスホエステル基を持たない1つ以上のイソシアネート反応性モノマーである成分iii)を含んでよい。好ましいイソシアネート反応性基は、ここでも、ヒドロキシル、アミノ、チオール、およびヒドラゾ基である。これらの中でも、ヒドロキシル基が好ましい。成分iii)には、比較的少量のモノ、またはトリ‐、およびそれより多い官能性のモノマーが、モノマー組成物中に存在していてもよい(例:モノアルコールおよびトリオール)。好ましくは、モノマー組成物は、工程a)でのホスホエステル官能ポリマーの作製に用いられる全モノマーの合計モル数に対して、5モル%未満、より好ましくは、1モル%未満の3つ以上のイソシアネート反応性基を有するモノマーを含む。より好ましくは、成分iii)は、3つ以上のイソシアネート反応性基を有するモノマーを含まない。
【0082】
成分iii)が存在する場合、それは、好ましくは、各々がホスホエステル基を持たない1つ以上のジオールを含む。好ましくは、ジオールはポリマー性ではない。「ポリマー性」の用語により、本発明者らは、500ダルトン(g/モル)以上の分子量を有するジオールを意味する。成分iii)に含めるのに適する非ポリマー性ジオールの例としては、エチレングリコール、1,2‐および1,3‐プロピレングリコール、1,2‐;1,3‐;1,4‐;および2,3‐ブチレングリコール、1,6‐ヘキサンジオールおよびネオペンチルグリコール、1,8‐オクタンジオール、ビス‐フェノールA、シクロヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコールなどが挙げられる。
【0083】
成分iii)として有用である非ポリマー性ジオールの別の種類は、ジヒドロキシルアルカン酸であり、その中でも、ジメチロールプロピオン酸およびジメチロールブタン酸が特に好ましい。
【0084】
また、ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐5‐ソジオスルホイソフタレートなどのジヒドロキシルスルホン酸も有用である。
【0085】
これらの中でも、エチレングリコールが特に好ましい。好ましくは、成分iii)のモノマーすべてがジオールである。
【0086】
成分iii)は、ポリマー性ジオールを含んでいてもよいが、これらは、好ましくは、工程a)でのホスホエステル官能ポリマーの作製に用いられる全モノマーの合計モル数に対して、10モル%未満、より好ましくは、5モル%未満、特には、1モル%未満で存在する。より好ましくは、成分iii)には、ポリマー性ジオールが存在しない。ポリマー性ジオールの例としては、ポリエーテルジオール(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド)、ポリエステルジオール(ポリカプロラクトンジオール)、アクリルジオール、スチレン‐アクリルジオール、およびポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0087】
存在する場合、成分iii)は、ホスホエステル基を持たないジアミンを含んでよく、その適切な例としては、エチレンジアミン、1,2‐および1,3‐プロパンジアミン、1,4‐ブタンジアミン、1,5‐ペンタンジアミン、1,6‐ヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、シクロヘキサンジアミン、ピペライン(piperaine)、および4,4’‐メチレンビス(シクロヘキシルアミン)が挙げられる。
【0088】
好ましくは、成分iii)は、工程a)でのホスホエステル官能ポリマーの作製に用いられる全成分の合計モル数に対して、合わせて少なくとも5モル%、より好ましくは、少なくとも10モル%、特には、少なくとも20モル%のモノマーを含む。好ましくは、成分iii)は、工程a)でのホスホエステル官能ポリマーの作製に用いられる全成分の合計モル数に対して、合わせて70モル%未満、より好ましくは、60モル%未満、より特には、50モル%未満のモノマーを含む。
【0089】
工程a)のための好ましいモノマー組成物
上記の観点から、工程a)での好ましいモノマー組成物は:
i)1つ以上の上述の式(3)のモノマー;
ii)エチレンジイソシアネート、1,6‐ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,4‐フェニレンジイソシアネート、2,4‐トルエンジイソシアネート、2,6‐トルエンジイソシアネート、4,4’‐ジフェニル‐メタンジイソシアネートおよびその水素化誘導体、3,3’‐ジメチルビフェニル‐4,4’‐ジイソシアネート、2,4’‐ジフェニルメタンジイソシアネートおよびその水素化誘導体、1,5‐ナフチレンジイソシアネート、p‐キシリレンジイソシアネート、m‐キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’‐メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン‐2,4‐または(2,6‐)ジイソシアネート、ならびに1,3‐(イソシアナートメチル)シクロヘキサンから選択される1つ以上のジイソシアネート;
iii)エチレングリコール、1,2‐および1,3‐プロピレングリコール、1,2‐;1,3‐;1,4‐;および2,3‐ブチレングリコール、1,6‐ヘキサンジオールおよびネオペンチルグリコール、1,8‐オクタンジオール、ビス‐フェノールA、シクロヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコールから選択される1つ以上のジオール、
を含む。
【0090】
上述のように、式(3)の化合物は、好ましくは、式(4)の化合物である。上述のように、成分ii)は、好ましくは、イソホロンジイソシアネートを含む。上述のように、成分iii)は、好ましくは、エチレングリコールを含む。
【0091】
工程a)のための反応条件
工程a)での共重合は、適切ないかなる方法で行われてもよい。実質的に無水である条件が好ましい。30℃から130℃の温度が好ましい。好ましくは、この反応は、成分ii)中のジイソシアネート基と、ヒドロキシル、アミノ、チオール、およびヒドラゾ基などのイソシアネート反応性基との間の反応が完了するまで継続される。反応を加速するために触媒が添加されてよい。重合反応に適する触媒は、本技術分野にて公知であり、スズ化合物およびヒンダードアミンが挙げられる。反応時間は、典型的には、30分間から48時間、より典型的には、1から24時間、最も典型的には、1から16時間である。得られたポリマーの析出の防止、または混合物が粘稠になりすぎることの防止のために、溶媒が添加されてよい。好ましい溶媒としては、N‐メチルピロリドン、2‐ピロリドン、およびスルホランが挙げられる。
【0092】
工程b)加水分解
工程b)では、ホスホエステル官能ポリマー中のホスホエステル基の少なくとも一部(しかし必ずしもすべてである必要はない)が加水分解される。加水分解反応は、適切ないかなる試薬または条件を用いて行われてもよい。水による加水分解反応は、酵素、酸、塩基、または金属複合体の使用によって加速されてよい。
【0093】
好ましい酵素としては、エステラーゼまたはリパーゼが挙げられる。
【0094】
酸は、スルホン酸、硫酸、ホスホン酸、リン酸、またはハロ酸(特に、HCl、HF、HI、および最も特には、HBr)であってよい。
【0095】
塩基は、アミンまたはアルカリ金属水酸化物であってよい。
【0096】
金属複合体は、例えば、3+酸化状態のランタン、2+酸化状態のCu、Ni、またはZnであってよい。
【0097】
上記すべての中で、ハロ酸、特にHBrによる加水分解が好ましい。
【0098】
加水分解反応は、好ましくは、30分間から10時間、より好ましくは、1から6時間にわたって行われる。ホスホエステル官能ポリマーの加水分解は、好ましくは、水、酢酸、およびN,N‐ジメチルアセタミドの存在下にて行われる。加水分解反応の温度は、好ましくは、30から100℃、より好ましくは、50から100℃、特には、60から90℃である。
【0099】
加水分解反応では、好ましくは、式(6a)および/または(6b)の基が得られ;
【0100】
【化6】

式(6a) 式(6b)
式中、Lは、所望に応じて置換されていてよいアルキル、アリール、もしくはヘテロ環基であり、アスタリスク()は、酸素、より好ましくは炭素原子を介しての分散剤との結合点を示している。Lは、既に好ましいとされた通りである。好ましくは、結合は、式(1)で述べたように、A基とのものである。
【0101】
式(6a)および(6b)の基は、遊離酸(プロトン化)の形態で示されているが、それらはまた、前述のように、塩、または遊離酸と塩との混合の形態であってもよい。
【0102】
加水分解反応は、リン原子と式(1)のA基との間の結合のいかなる開裂も最小限に抑えられる形であることが好ましい。
【0103】
加水分解反応は、最終分散剤が、式(6b)のリン含有アニオン性基のみを有するように、完了まで進行されてよい。
【0104】
同様に、加水分解は、分散剤が、式(6a)、(6b)の基、およびまったく加水分解を受けていないいくつかのホスホエステル基を有するように、部分的に完了していてもよい。
【0105】
分散工程で用いられる分散剤は、リン含有アニオン性基を有する。これらは、好ましくは、リン酸ではなく、ホスホン酸、および/またはそのアニオン性部分エステルである。上述のように、式(6a)および(6b)の基のリン原子は、分散剤構造中の炭素原子(酸素原子ではなく)と結合していることが好ましい。このことは、LおよびL基の加水分解の過程にて、リン基が分散剤から開裂除去されることを防ぐ手助けとなる。
【0106】
分散
粒子固体、液体媒体、および分散剤は、適切ないかなる手段で分散されてもよい。攪拌、回転、振とう、タンブリングなどの低せん断分散法が用いられてよい。より好ましくは、分散法は、粉砕法であるか、または粉砕法を含む。すなわち、液体媒体中の粒子固体の粒子サイズを大きく低下させる傾向のある分散法である。適切な粉砕法の例としては、超音波処理、マイクロフルイダイゼーション(商標)、ホモジナイゼーション、および特にビーズミリングが挙げられる。これらの方法の組み合わせが用いられてもよい。
【0107】
粉砕の前では、粒子固体、特に顔料は、多くの場合、1ミクロンを超えるZ平均粒子サイズを有する。
【0108】
粉砕工程の後では、分散液中の粒子固体は、好ましくは、50から300nm、より好ましくは、70から200nm、特には、80から150nmのZ平均粒子サイズを有する。粒子サイズは、好ましくは、光散乱装置、特にMalvern Zetasizer(商標)によって測定される。
【0109】
好ましくは、分散液は:
i)0.1から40部、より好ましくは、0.1から20部の分散剤;
ii)0.1から40部、より好ましくは、0.1から20部の粒子固体;
iii)50から99.8、より好ましくは、60から99.8部の液体媒体;
を含み、ここで、i)からiii)の部の合計は100部であり、部はすべて重量基準である。
【0110】
好ましくは、分散剤は、粒子固体の表面に少なくとも部分的に吸着されている。
【0111】
分散液中の分散剤の量は、好ましくは、粒子固体の重量に基づいて、1から150重量%、より好ましくは、5から100重量%、さらにより好ましくは、5から80重量%、特には、5から70重量%、さらにより特には、20から70重量%、最も特には、30から70重量%である。
【0112】
これらの値により、コロイド安定性と最終印刷光学濃度との最良のバランスが提供されることが見出された。
【0113】
好ましくは、分散工程の過程で存在する唯一の分散剤が、工程a)およびb)を含むプロセスによって得られるものである。
【0114】
分散液
本発明によって作製される分散液が、好ましくは液体分散液であることは、容易に理解される。好ましくは、本発明者らが意味する液体は、25℃の温度にて液体である。好ましい液体媒体は水であるか、または水を含むことから、好ましい分散液は、水溶液ということになる。
【0115】
所望に応じて行ってよい架橋
多くの場合、粒子固体および液体媒体の存在下にて分散剤を架橋させる工程が追加されることが好ましい。このことにより、封入された粒子固体の分散液が得られる。封入された粒子固体は、より良好なコロイド安定性を有する。それはまた、より多用途でもあり、より高い割合の有機液体を含有し、および/または吸着性の強い界面活性剤を有するインクへ配合することができる。架橋工程は、好ましくは、分散工程の後に行われる。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、架橋工程は、粒子固体表面上の適切な位置に分散剤を固定し、通常の分散剤の脱着を阻害または防止すると考えられる。ある実施形態では、分散剤は、粒子固体のコアを封入する架橋されたシェルを形成する。分散剤は、粒子固体の表面と結合しないことが好ましい。
【0116】
架橋反応は、イオン性架橋であってよいが、より好ましくは、架橋は、共有結合を形成する。このような共有結合は、好ましくは、分散剤分子を一緒に結合させ、それによって、固体の各粒子の周囲に架橋された分散剤のシェルを形成する。この結果、分散剤分子は、各粒子固体の粒子と恒久的に会合される。
【0117】
架橋は、自己架橋性分散剤を用いることで達成されてよい。より好ましくは、架橋剤を用いて、分散剤が架橋される。分散剤中の架橋性基および架橋剤中の架橋性基の適切な組み合わせの例は、PCT特許出願公開WO2005/061087、ページ6、表1に列挙されている。これらの中でも、ポリマー中の架橋性基は、アニオン性基、特には、リン含有アニオン性基またはカルボン酸基であることが好ましく、より好ましくは、リン含有アニオン性基である。アニオン性基は、遊離酸または塩の形態であってよい。これらの架橋性基に対して、架橋剤は、好ましくは、メラミン、カルボジイミド、オキセタン、イソシアネート、アジリジン、および特には、エポキシドから選択される。好ましくは、架橋は、エポキシ架橋剤によって行われる。
【0118】
分散剤は、鎖中および/または末端基中であってよいヒドロキシル(HO−)基を、所望に応じて有していてよい。これらのヒドロキシル基は、上述の架橋剤を用いて架橋されてよい。
【0119】
好ましくは、少なくとも一部の、より好ましくはすべての架橋反応が、リン含有アニオン性基(特には、ホスホン酸基)とエポキシ基との間で発生する。
【0120】
架橋反応は、好ましくは、7から12、より好ましくは、8から12のpHにて行われる。
【0121】
架橋反応は、好ましくは、30から150℃、より好ましくは、40から100℃の温度にて行われる。架橋反応の時間は、好ましくは、30分間から24時間である。
【0122】
所望に応じて行ってよい精製
特に、分散液がインクジェット印刷用インクの作製に用いられることになる場合、分散液を精製することが望ましい。精製のための好ましい方法は、膜ろ過、特には限外ろ過である。好ましくは、膜ろ過は、クロスフローモードで行われる。
【0123】
インク
粒子固体が着色剤(特に顔料)である場合、本発明の第一の態様に従うプロセスは、インクである分散液の作製に特に適している。
【0124】
好ましくは、インクを作製するためには、本発明の第一の態様に従うプロセスは、粘度調整剤、pH緩衝剤、腐食防止剤、殺生物剤、染料、さらなる顔料、コゲーション低減添加剤(kogation-reducing additives)、キレート化剤、界面活性剤、水混和性有機液体、およびバインダーから選択される1つ以上のインク添加剤を添加する工程をさらに含む。
【0125】
好ましい粘度調整剤としては、ポリエチレングリコールポリマーが挙げられる。
【0126】
好ましい界面活性剤としては、アセチレンジオール、特には、Surfynol(商標)の商品名で販売されているものが挙げられる。
【0127】
好ましくは、インクは、25℃にて液体である。
【0128】
好ましくは、インクは、30mPa・s未満、より好ましくは、20mPa・s未満、特には、10mPa・s未満の粘度を有する。粘度は、好ましくは、少なくとも2mPa・sである。好ましくは、粘度は、ニュートン粘性である。好ましくは、粘度は、25℃にて測定される。好ましくは、粘度は、100秒−1のせん断速度を用いて測定される。粘度は、好ましくは、コーンプレート型の形状を用いて測定される。粘度測定のための好ましい装置は、TAインスツルメンツ(TA Instruments)のレオメーターである。このインク粘度は、低粘度液体ビヒクル(例:水)を用いること、インクに対して10重量%未満の粒子固体を用いること、およびいかなる増粘剤(例:セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド)をも回避することによって達成することができる。
【0129】
好ましくは、インクは、25℃の温度で測定された場合に、20から65ダイン/cm、より好ましくは、30から60ダイン/cmの表面張力を有する。表面張力は、好ましくは、Kibron AquaPiを用いて測定される。適切な表面張力は、インク中に界面活性剤が存在することによって達成することができる。好ましくは、界面活性剤は、インクに対して0.01から5重量%、より好ましくは、0.05から4重量%、特には、0.5から3重量%でインク中に存在する。アセチレン界面活性剤(アセチレンジオールおよびエトキシル化ジオールを含む)が、界面活性剤として特に適している。適切な例としては、エアプロダクツ(Air Products)からSurfynol(商標)の商品名で販売されているものが挙げられる。
【0130】
インクのpHは、好ましくは、4から11、より好ましくは、7から10である。
【0131】
インクは、1ミクロンよりも大きい粒子サイズを有する粒子が除去されるように処理されたものであることが好ましい。これは、遠心分離および/またはろ過によって行われてよい。
【0132】
好ましくは、インク中の唯一の分散剤が、少なくとも工程a)およびb)を含むプロセスによって得られたものである。
【0133】
好ましくは、インク中に存在する唯一の顔料が、本発明の第一の態様に従って得られた分散剤から作製されたものである。
【0134】
液体ビヒクル
インクの液体成分は、本明細書にて、液体ビヒクルと称する。これらは、液体媒体において前述したものと同じであってよいが、インクは、液体のより複雑な混合物を含む場合が多い。
【0135】
好ましくは、液体ビヒクルは、水であるか、または水を含む。従って、好ましいインクは、水性である。
【0136】
好ましさが増加する順番にて、水の量は、好ましくは、液体ビヒクル中に存在する全成分に対して、1重量%、2重量%、5重量%、10重量%、20重量%、35重量%、50重量%、60重量%、および70重量%である。100重量%を満たすために必要とされる残部は、好ましくは、液体媒体に関して上記で述べ、好ましいとされた通りの、1つ以上の水混和性有機液体である。インク用の水混和性有機液体は、好ましくは、グリセロール、2‐ピロリドン、エチレングリコール、および1,2ヘキサンジオールから選択される。
【0137】
好ましくは、液体ビヒクルは、水、および1つ以上の有機液体、特には、水混和性有機液体を含む。好ましくは、液体ビヒクルは、水、ならびに液体ビヒクルの総量に対して1重量%超、より好ましくは、5重量%超、特には、10重量%超、最も特には、20重量%超の1つ以上の水混和性有機液体を含む。好ましくは、水混和性有機液体は、液体ビヒクルの全成分に対して、90重量%以下、より好ましくは、70重量%以下、特には、50重量%以下で存在する。
【0138】
1つの場合では、液体ビヒクルのいずいれの成分も、光重合性ではない。
【0139】
好ましくは、インクは:
i)0.1から10部、より好ましくは、1から10部の分散剤;
ii)0.1から10部、より好ましくは、1から10部の顔料;
iii)80から99.8部、より好ましくは、80から98部の液体ビヒクル;
を含み、ここで、部はすべて重量基準である。
【0140】
インクがインクジェット印刷用に用いられる場合、適切な色の顔料を用いて、シアン、マゼンタ、イエロー、おおびブラックのインクを作製することが好ましい。シアンインクの顔料は、好ましくは、銅フタロシアニンである。マゼンタインクの顔料は、好ましくは、C.I.ピグメントレッド122である。イエローインクの顔料は、好ましくは、C.I.ピグメントイエロー74である。これらは、インクセットを構成することが好ましい。
【0141】
得られるまたは得ることができる分散液
本発明の第二の態様によると、本発明の第一の態様に従うプロセスによって得られるまたは得ることができる分散液が提供される。
【0142】
インクジェット印刷用インク
本発明の第三の態様によると、本発明の第二の態様に従う分散液を含むインクジェット印刷用インクが提供される。
【0143】
インクジェット印刷用インクは、熱、圧電、または音波による液滴放出機構を用いるものを含む適切ないずれのインクジェットプリンターで印刷されてもよい。インクジェット印刷機構は、スキャンモードまたは単一パスであってよい。
【0144】
容器+インク
本発明の第四の態様によると、本発明の第三の態様に従うインクジェット印刷用インクを含有する容器が提供される。容器は、インクジェットプリンターカートリッジであってよい。容器は、ドラム、ボトル、タブ、タンク、またはインクの貯蔵に適するいかなる形態であってもよい。ある例では、容器は、インクジェットプリンターと容易に接続することができるように、適切に適合されていてよい。
【0145】
使用
本発明の第五の態様によると、液体ビヒクル、分散剤、および粒子固体を含むインクジェット印刷用インクを作製するための分散剤の使用が提供され;
ここで、分散剤は、本発明の第一の態様において既に定義されたように、少なくとも工程a)およびb)を含むプロセスによって得られる。
【0146】
分散剤、液体ビヒクル、および粒子固体は、既に記述され、好ましいとされた通りである。
【実施例】
【0147】
1. 分散剤(1)の作製
1.1. 2‐(1,3‐オキサゾリジン‐3‐イル)エタノールの作製
【0148】
【化7】

パラホルムアルデヒド(2.5mol、75g)を、50から60℃の温度にてジエタノールアミン(2.5mol、262.5g)へ少しずつ添加し、反応混合物を形成した。添加完了後、この反応混合物を、50から60℃にて30分間攪拌し、透明溶液を得た。トルエン(300mL)をこの反応混合物へ添加し、続いてこれを、還流下にて3時間攪拌した。この間、反応混合物中に生成された水は、ディーンスターク分離器で除去した。反応完了後、トルエンを減圧除去して、2‐(1,3‐オキサゾリジン‐3‐イル)エタノールを淡黄色液体として得た。
【0149】
1.2. ジエチル [ビス(2‐ヒドロキシエチル)アミノ]メチルホスホネート
【0150】
【化8】

ホスホン酸ジエチル(2.5mol、352/3g)を、ステージ(1.1)からの生成物とAmberlight(商標)IR120樹脂‐酸型(アルドリッチから入手可能、100g)との混合物へゆっくり添加し、反応混合物を形成した。添加完了後、この反応混合物を60℃にて2時間攪拌し、次に、25℃の温度まで冷却した。この生成物を、ジエチルエーテルと酢酸エチルとの2:1混合物で抽出し(5×300mL)、1つにまとめた抽出物を、硫酸マグネシウム上で乾燥し、蒸発させて、354gのジエチル [ビス(2‐ヒドロキシエチル)アミノ]メチルホスホネートを淡黄色液体の形態で得た。この生成物を4Aモレキュラーシーブ上で保存した。これをモノマー(1)と称した。
【0151】
1.3. ホスホエステル官能ポリマーの作製(共重合‐工程a)
上記工程1.2で作製したモノマー(1)(0.300mol、38.29g)、エチレングリコール(0.951mol、29.5g)、イソホロンジイソシアネート(1.190mol、132.21g)、およびN‐メチルピロリドン(200g)の混合物を、攪拌し、50℃に加熱し、2滴のスズエチルヘキサノエート触媒を添加した。これによって反応混合物が形成された。この反応混合物を、95から100℃の温度にて18時間攪拌し、次に25℃まで冷却した。この反応混合物を、水(4000mL)に添加し、攪拌して、白色析出物を得た。得られた固体をろ過で回収し、水(500mL)で洗浄し、乾燥した。得られたポリウレタン分散剤は、GPCによって特定された14,647の数平均分子量および22,555の重量平均分子量を有しており、これをさらなる精製を行わずに次のステージで用いた。これを、ホスホエステル官能ポリマー(1)と称した。
【0152】
1.4. 加水分解(工程b)
工程1.3で作製したホスホエステル官能ポリマー(1)を、酢酸(500mL)およびN,N‐ジメチルアセタミド(500mL)の混合物に溶解し、60℃に加温して、反応混合物を形成した。48%臭化水素酸水溶液(300g)を、この反応混合物にゆっくり添加し、続いてこれを、75から80℃の温度にて3時間攪拌し、次に25℃まで冷却した。この反応混合物を、水(4000mL)に添加して溶液とし、次に、pHが0.5に下がるまで濃塩酸を添加して酸性化した。得られた析出物をろ過で回収し、次に水(2000mL)に懸濁した。この懸濁液のpHを、水酸化リチウムを添加することで11に調節し、次にこの懸濁液を1時間攪拌した。上述した酸性化に続いて、析出物を回収し、pH=11(LiOH)にて水(500mL)に懸濁し、透析を行って導電率を10μS/cm未満とした。透析溶液を60℃のオーブン中にて蒸発させて、151gのクリーム色固体を得た。これを、分散剤(1)と称した。
【0153】
ICP‐OESを用いた生成物のリン分析により、1.8重量/重量%の含有量が示された。これは、1.2mmol/gの酸価または0.6mmol/gのホスホン酸基含有量と同等であった。
【0154】
1.5. 分散剤(2)の作製
分散剤(2)を、分散剤(1)についての記載に従って、但し、工程1.3においてエチレングリコールの代わりにジプロピレングリコール(0.951mol)を用いて作製した。
【0155】
1.6. 分散剤(3)の作製
分散剤(3)を、分散剤(1)についての記載に従って、但し、工程1.3においてエチレングリコールの代わりに平均Mn=425のポリプロピレングリコール(0.951mol)、およびイソホロンジイソシアネートの代わりに4,4’‐メチレンビス(フェニルイソシアネート)(1.190mol)を用いて作製した。
【0156】
2. 分散剤溶液(1)の作製
工程1.4で作製した分散剤(1)(100g)、水酸化カリウム溶液(45重量/重量%)(20.6g)、および脱イオン水(607.8g)を、反応器中、70℃にて1時間加熱した。分散剤を攪拌し、完全に溶解した。さらなる水酸化カリウム溶液(45重量/重量%)を、約pH9に到達するまで滴下した。これを、分散剤溶液(1)と称した。この溶液は、約15重量%の分散剤(1)を含有していた。
【0157】
3. ミルベース(1)の作製
顔料粉末(NIPex(商標)170IQカーボンブラック顔料の75g、エボニックデグッサ(Evonik Degussa)より)、水(383.75g)と共に工程2で作製した分散剤溶液(1)(100g)、およびジプロピレングリコール(156.25g)を、スパチュラを用いて手で一緒に混合して、プレ混合物を形成した。
【0158】
このプレ混合物を、0.8〜1mmのビーズを入れた縦型ビーズミルに移した。次に、この混合物を4.5時間粉砕(ミリング)した。
【0159】
次に、ミリングビーズを、ミリングした混合物から分離した。これにより、ミルベース(1)が得られた。ミルベース(1)は、約12重量%の顔料を含有していた。得られたミルベース中の顔料粒子は、128nmのZ平均粒子サイズを有していた。Z平均粒子サイズは、マルバーン(Malvern)製のZetasizer(登録商標)ZS90を用いて確認した。
【0160】
4. 分散剤の架橋
上記の項目3で作製されたミルベース(1)は、水(180g)を添加することで、約8重量%の固形分に調節した。
【0161】
次に、ミルベース中の分散剤を、0.09gの架橋剤、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(Nagase ChemteX)より入手したDenacol EX‐521、エポキシあたりの重量=214.5、以降EX‐521と略す)を用いて架橋した。これにより、分散剤中のカルボン酸基を架橋し、それによって顔料粒子を封入した。架橋反応は、0.026gのホウ酸(アルドリッチより入手)の存在によって制御した。架橋反応は、上述の混合物を、約65℃の温度に5時間加熱することによって行った。これにより、封入顔料分散液(1)を作製した。
【0162】
5. 膜ろ過
上記の項目4で作製した封入顔料分散液を、0.1ミクロンのポアサイズを有する膜を用いて精製した。封入顔料分散液(1)を、封入顔料分散液(1)の体積1に対して約10から40洗浄体積分の純粋脱イオン水によるダイアフィルトレーションに掛けた。次に、膜を用いて封入顔料分散液(1)を濃縮し、約10.9重量%の顔料含有量に戻した。これにより、精製分散液(1)を得た。
【0163】
6. インク(1)の作製
工程5で作製した精製分散液(1)を用いて、以下の組成を有するインク(1)を作製した:
インクビヒクル
精製分散液(1) 55.05g
2‐ピロリドン 3.00g
グリセロール 15.00g
1,2ヘキサンジオール 4.00g
エチレングリコール 5.00g
Surfynol(商標)465 0.50g
純水 17.45g
Surfynol(登録商標)465は、エアプロダクツから入手可能である界面活性剤である。
【0164】
インク(2)および(3)の作製を、上記工程2から5に従って行ったが、但し、分散剤(1)の代わりに分散剤(2)および(3)を用い、工程4において、Denacol EX521の代わりにDenacol EX321を用いた。Denacol EX321は、ナガセケムテックスから販売されているトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルであり、インク製剤中に用いられる分散剤の量に対して7.6重量%の投入量で用いた。
【0165】
7. 印刷の作製
工程6で作製したインク(1)から(3)を、普通(未処理)紙、すなわちCanon GF500紙に印刷した。印刷は、Epson SX100シリーズ インクジェットプリンターによって行い、ブラックの100%ブロックを印刷した。
【0166】
8. 光学濃度の測定
反射光学濃度(ROD)は、Gretag Macbeth key wizard V2.5 Spectrolino光学濃度計(photodensitometer)の装置を用い、D65光源を用いて観察者角(observer angle)2°およびフィルター無しにて照射して測定した。測定は、印刷に沿って少なくとも2点で行い、次にそれを平均した。
【0167】
9. 光学濃度の測定結果
ROD測定の結果を以下の表1にまとめた。
【0168】
【表1】

表1:インク(1)から(3)より得られた印刷
【0169】
表1から、本発明の第一の態様に従うプロセスによって作製された分散液が、極めて良好な光学濃度を有するインクを提供することが容易に分かる。比較のために、PCT出願公開WO2011/104526のページ43および44、表3の結果から、約1.30を超えるODを有するポリウレタン分散カーボンブラックインクを作製することが、極めて困難であることが分かる。
【0170】
10. さらなる実施例
分散剤のさらなる実施例を、上述の工程1.1から1.4に従って作製した。表2は、工程1.3で用いたジイソシアネートおよびジオールを示す。分散剤(4)から(9)を、カーボンブラック顔料および水と混合することで対応するミルベースに変換し、ブランソン(Branson)の超音波ミルを用いて粉砕した。ミルベースのインクへの配合および印刷を上述のように行い、やはり高光学濃度を示した。
【0171】
【表2】
【0172】
11. さらなるインク
表IおよびIIに記載のさらなるインクを作製することができ、ここで、PDは、工程5において上記で作製された精製分散液の略語であり、インク添加剤は以下で定める通りである。以降の第二のカラムに示す数値は、該当する成分の部の数値を意味し、部はすべて重量基準である。インクは、熱、圧電、またはメムジェット(Memjet)インクジェット印刷によって紙に適用することができる。
【0173】
以下の略語を、表IおよびIIで用いる:
PG=プロピレングリコール
DEG=ジエチレングリコール
NMP=N‐メチルピロリドン
DMK=ジメチルケトン
IPA=イソプロパノール
MEOH=メタノール
2P=2‐ピロリドン
MIBK=メチルイソブチルケトン
P12=プロパン‐1,2‐ジオール
BDL=ブタン‐2,3‐ジオール
Surf=エアプロダクツ製Surfynol(商標)465
PHO=NaHPO および
TBT=ターシャリーブタノール
TDG=チオジグリコール
GLY=グリセロール
nBDPG=ジプロピレングリコールのモノ‐n‐ブチルエーテル
nBDEG=ジエチレングリコールのモノ‐n‐ブチルエーテル
nBTEG =トリエチレングリコールのモノ‐n‐ブチルエーテル
【0174】
【表3】
【0175】
【表4】