(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
(プリント基板作業装置の構造の説明)
以下に
図1〜
図2を用いて本実施形態のプリント基板作業装置100の構造について説明する。なお、プリント基板作業装置100の長手方向を、X方向とする。また、プリント基板作業装置100の幅方向、つまり、X方向と直交する方向を、Y方向とする。更に、プリント基板作業装置100の上下方向、つまり、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とする。
【0016】
プリント基板作業装置100は、本実施形態では、プリント基板に電子部品を実装するものである。
図1及び
図2に示すように、プリント基板作業装置100は、ベース1、一対の支持壁2、コンベアユニット10、上側ロボット20、上側作業装置30、撮像装置40、下側ロボット50、下側作業装置60、制御部70とから構成されている。
【0017】
ベース1は、台状である。支持壁2は、ベース1上の両側縁(X方向)に沿って、一対設けられている。なお、それぞれの支持壁2には、窓2aが形成されている。
図1に示すように、ベース1上には、本体原点1aが設けられている。本体原点1aは、例えば、円形状のマークである。
【0018】
コンベアユニット10は、ベース1上に、一対の支持壁2の窓2aを貫通するように設けられている。コンベアユニット10は、プリント基板作業装置100の前工程の装置からプリント基板をプリント基板作業装置100に搬入するとともに、プリント基板作業装置100で作業が完了したプリント基板をプリント基板作業装置100の後工程に搬出するものである。コンベアユニット10は、本体11、コンベア装置12、クランプ装置(不図示)を有している。
【0019】
本体11は、板状又はブロック状である。本体11は、一対の側壁の窓2aを貫通して、ベース1上に位置決めされて取り付けられている。
【0020】
コンベア装置12は、本体11の両側端に、本体11の長手方向(Y方向)に沿って設けられている。それぞれのコンベア装置12は、コンベアサーボモータ12b(
図3示)によって、回転駆動される無端のベルト12aを有している。回転駆動される一対のベルト12a上にプリント基板が載置されて、プリント基板が、これらベルト12aによって、Y方向に移動し、前工程、プリント基板作業装置100内の「固定位置」、後工程に順次移動される。クランプ装置は、「固定位置」に搬入されたプリント基板を上方から下方に押圧して、ベルト12aとともに挟持して、プリント基板を「固定位置」において固定するものである。プリント基板は、「固定位置」において、上側作業装置30及び下側作業装置60によって、電子部品が装着される。
【0021】
上側ロボット20は、X移動体21、一対のXガイド22、X移動装置23、Y移動体24、一対のYガイド25、Y移動装置26、Z移動装置27を有している。
【0022】
一対のXガイド22は、支持壁2の上端に、X方向に設けられている。X移動体21は、一対のXガイド22に摺動可能に取り付けられている。このため、X移動体21は、X方向に移動可能となっている。X移動装置23は、X移動体21を、X方向に移動させるものであり、ボールネジ23a、上Xサーボモータ23bとから構成されている。ボールネジ23aは、X移動体21と螺合している。上Xサーボモータ23bは、ボールネジ23aを回転させるものである。上Xサーボモータ23bによってボールネジ23aが回転すると、X移動体21がX方向に移動する。
【0023】
一対のYガイド25は、X移動体21上に、Y方向に設けられている。Y移動体24は、一対のYガイド25に摺動可能に取り付けられている。このため、Y移動体24は、Y方向に移動可能となっている。Y移動装置26は、Y移動体24を、Y方向に移動させるものであり、ボールネジ26a、上Yサーボモータ26bとから構成されている。ボールネジ26aは、Y移動体24と螺合している。上Yサーボモータ26bは、ボールネジ26aを回転させるものである。上Yサーボモータ26bによってボールネジ26aが回転すると、Y移動体24がY方向に移動する。
【0024】
上側作業装置30は、Y移動体24に、Z方向に移動可能に取り付けられている
。
移動装置27は、上側作業装置30をZ方向に移動させるものであり、上側作業装置30と螺合するボールネジ(不図示)、当該ボールネジを回転させる上Zサーボモータ27a(
図3示)を有している。
【0025】
上側作業装置30は、本実施形態では、電子部品を吸着する吸着ヘッドであり、Y移動体24に、Z方向移動可能に取り付けられたノズルホルダ31と、ノズルホルダ31の下端に着脱可能に取り付けられた吸着ノズル32を有している。
【0026】
撮像装置40は、Y移動体24に取り付けられている。撮像装置40は、下方、つまり、後述する下側ロボット50や下側作業装置60側を撮像するものである。撮像装置40は、CCDやCMOS等の撮像素子、当該撮像素子に被写像を結像する単数又は複数のレンズを有している。この撮像装置40は、本来、「固定位置」において位置決めされたプリント基板上に設けられた基板マークの位置を検出するものである。なお、基板マークの位置に基づいて、吸着ノズル32で吸着された電子部品をプリント基板に実装する際の、プリント基板に対する上側ロボット20の位置補正が行われる。
【0027】
下側ロボット50は、Y移動体51、一対のYガイド52、Y移動装置53、X移動体54、一対のXガイド55、X移動装置56、Z移動装置57を有している。
【0028】
一対のYガイド52は、コンベアユニット10の本体11上に、Y方向に設けられている。Y移動体51は、一対のYガイド52に摺動可能に取り付けられている。このため、Y移動体51は、Y方向に移動可能となっている。Y移動装置53は、Y移動体51を、Y方向に移動させるものであり、ボールネジ53a、下Yサーボモータ53bとから構成されている。ボールネジ53aは、Y移動体51と螺合している。下Yサーボモータ53bは、ボールネジ53aを回転させるものである。下Yサーボモータ53bによってボールネジ53aが回転すると、Y移動体51がY方向に移動する。
【0029】
一対のXガイド55は、Y移動体51上に、X方向に設けられている。X移動体54は、一対のXガイド55に摺動可能に取り付けられている。このため、X移動体54は、X方向に移動可能となっている。X移動装置56は、X移動体54を、X方向に移動させるものであり、ボールネジ56a、下Xサーボモータ56bとから構成されている。ボールネジ56aは、X移動体54と螺合している。下Xサーボモータ56bは、ボールネジ56aを回転させるものである。下Xサーボモータ56bによってボールネジ56aが回転すると、X移動体54がX方向に移動する。
【0030】
下側作業装置60は、X移動体54に、Z方向に移動可能に取り付けられている
。
移動装置57は、下側作業装置60をZ方向に移動させるものであり、下側作業装置60と螺合するボールネジ(不図示)、当該ボールネジを回転させる下Zサーボモータ57a(
図3示)を有している。
【0031】
下側作業装置60は、本実施形態では、プリント基板に装着された電子部品のリードを、プリント基板の下方において、曲げつつ所望の長さに切断するカット・アンド・クリンチ装置である。下側作業装置60には、検査マーク61が設けられている。検査マーク61は、例えば、円形状のマークである。本実施形態では、下側作業装置60が作業を行う下側作業装置60上における位置と検査マーク61は一致している。
【0032】
(プリント基板作業装置のブロック図の説明)
以下に、
図3を用いて、プリント基板作業装置100のブロック図について説明する。
プリント基板作業装置100は、制御部70によって制御される。制御部70は、CPU71、ROM72、RAM73、及びこれらを接続するバス76を有する。CPU71は、
図4に示すフローチャートに対応したプログラムを実行する。RAM72は同プログラムの実行に必要な変数を一時的に記憶するものである。記憶部73は、不揮発性メモリー等で構成され、前記プログラムを記憶し、後述の各種誤差を記憶するものである。
【0033】
制御部70は、バス76に接続された入力インターフェース74及び出力インターフェース75を有している。入力インターフェース74には、撮像装置40が接続されている。出力インターフェース75には、コンベア駆動回路81、上X駆動回路82、上Y駆動回路83、上Z駆動回路84、下X駆動回路85、下Y駆動回路86、下Z駆動回路87、及び撮像装置制御回路88が接続されている。コンベア駆動回路81、上X駆動回路82、上Y駆動回路83、上Z駆動回路84、下X駆動回路85には、それぞれ、コンベアサーボモータ12b、上Xサーボモータ23b、上Yサーボモータ26b、上Zサーボモータ27a、下Xサーボモータ56b、下Yサーボモータ53b、下Zサーボモータ57aが接続されている。
【0034】
各駆動回路81〜87は、制御部70からの指令値に基づいて、各サーボモータ12b、23b、26b、27a、56b、53b、57aに駆動電流を供給して、各サーボモータ12b、23b、26b、27a、56b、53b、57aを指令値に回転させる。なお、コンベア駆動回路81は、コンベア装置12のクランプ装置を駆動するサーボモータに駆動電流を供給して、当該サーボモータを駆動して、クランプ装置を稼働させる。
【0035】
撮像装置制御回路88は、撮像装置40と接続している。撮像装置制御回路88は、制御部70から出力される「撮像指令」に基づいて、撮像装置40を制御して、撮像装置40にて撮像を実行するものである。撮像装置40で撮像された「撮像データ」は、入力インターフェース74を介して、RAM72に記憶される。
【0036】
(送り誤差検出処理)
以下に、
図4に示すフローチャートを用いて、「送り誤差検出処理」について説明する。「送り誤差検出処理」のフローが開始すると、S11において、制御部70は、「本体原点」を取得する。具体的には、制御部70は、上Xサーボモータ23b及び上Yサーボモータ26bを駆動させて、撮像装置40を本体原点1aの上側に移動させる。次に、制御部70は、撮像装置40で本体原点1aを撮像させ、本体原点1aを含む「撮像データ」を取得する。次に、制御部70は、本体原点1aを含む「撮像データ」に基づいて、本体原点1aのX座標及びY座標を演算により取得する。このS11の処理によって、制御部70は、上側ロボット20及び下側ロボット50を移動させるためのプログラム原点を認識する。S11が終了すると、プログラムは、S12に進む。
【0037】
S12において、制御部70は、
図5に示す基準板90をコンベア装置12によって、プリント基板作業装置100のY方向ほぼ中央の「検査位置」に搬送し、クランプ装置によって基準板90を「検査位置」にて位置決め固定する。
図5に示すように、基準板90は、格子交点上に円形の基準マーク91が設けられた板である。言い換えると、基準板90の表面には、X方向に複数列、Y方向に複数行の基準マーク91が設けられている。S12が終了すると、プログラムは、S13に進む。
【0038】
S13において、制御部70は、「マトリックス補正」を実行する。具体的には、制御部70は、上Xサーボモータ23b及び上Yサーボモータ26bを作動させて、撮像装置40を基準板90の各基準マーク91上に移動させて、各基準マーク91を順次撮像して、各基準マーク91を含む「撮像データ」を順次取得する。なお、以下の説明では行の番号をiで表し、列の番号をjで表すこととする。例えば、i行j列の基準マーク91の座標は(xi,j 、yi,j )と表す。
【0039】
基準マーク91を取得すべく基準板90をコンベア装置12上の「検査位置」に固定する場合、基準板90にはコンベア12に対して「位置誤差」が生ずるのが普通である。この「位置誤差」はX方向、Y方向及びZ方向軸線まわりに生ずる。
図6の(A)に示すように、基準板90の中心にX方向にex 、Y方向にey 、軸線まわりに角度θのズレが生じたとすれば、中心からX方向にLx 、Y方向にLy 離れた点に回転によって生ずるX方向及びY方向のズレ量はθLy 及びθLx となり、基準板90上の任意の点の座標は、「位置誤差」がない場合の座標を(x、y)とすれば、(x+ex +θLy 、y+ey +θLx )となる。
【0040】
従って、i行j列の基準マーク91を撮像装置40のX方向の移動により撮像する場合、
図6の(B)に示すように、その基準マーク91は、「位置誤差」がない場合の位置xi、j (「移動指示データ」はこの値を表す)からX方向に(ex +θLyi)だけズレることとなる。このズレ量は、この基準マーク91を撮像する際の撮像装置40の送り誤差Δxi、j と、撮像装置40の撮像により得られた実測値Δxi、j′との和となる。一方、i行j列の基準マーク91を基準板90のY方向の移動により撮像する場合には、基準マーク91は、「位置誤差」がない場合の位置からY方向に(ey +θLxj)だけズレ、このズレ量は、基準板90の送り誤差Δyi、j と撮像装置40の撮像により得られた実測値Δyi、j ′との和に等しい。
【0041】
次に、上Xサーボモータ23b及び上Yサーボモータ26bの「送り誤差」の検出について具体的に説明する。まず、制御部70は、各基準マーク91を含む「撮像データ」に基づいて、撮像装置40の撮像中心と基準マーク91の中心とのズレΔxi,j ′、Δyi,j ′を演算する。次に、制御部70は、基準板90の位置誤差ex 、ey 及びθを演算する。この演算は次のように行われる。i行j列の基準マーク91を撮像装置40のX方向の移動により撮像する場合を例に取れば、この基準マーク91について(1)式が成り立つ。
【0042】
Δxi,j + Δxi,j ′=ex+θLyi…(1)
【0043】
また、i行(j+1)列の基準マーク91について(2)式が得られる。
Δxi,(j+1)+Δxi,(j+1)′=ex+θLyi…(2)
【0044】
更に、i行j列とi行(j+1)列との基準マーク91間の距離について(3)式が得られる。
xi,(j+1)+Δxi,(j+1)+Δxi,(j+1)′−(xi,j+Δxi,j+Δxi,j′)=P…(3)
【0045】
PはX方向において隣接する基準マーク91間の距離であり、Y方向において隣接する基準マーク91間の距離でもある。また、i行(j+2)列の基準マーク91の撮像結果から(4)、(5)式が得られる。
【0046】
Δxi,(j+2)+Δxi,(j+2)′=ex+θLyi…(4)
xi,(j+2)+Δxi,(j+2)+Δxi,(j+2)′−(xi,(j+1)+Δxi,(j+1)+Δxi,(j+1))′=P…(5)
【0047】
上記5個の式のうち、未知数であるのは、Δxi,j 、Δxi,(j+1) 、Δxi,(j+2) 、ex 及びθの5個であり、5つの式からこれら未知数を演算することができる。これら5つの式はX方向において隣接する3個の基準マーク91を撮像することにより得られ、3個ずつに分けて未知数を演算するとすれば、1行についてex 及びθの値がそれぞれ2つずつ演算されることとなる。また、Y方向に並ぶ基準マーク91についても同様に式を立てることができ、1列毎に2つずつのey 及びθの値が演算されることとなる。これら位置誤差ex 、ey 、θの演算は、正方向移動時のデータと逆方向移動時のデータとの両方についても、いずれか一方についてのみ行ってもよい。
【0048】
次に、制御部70は、複数個ずつ求められたex 、ey 及びθの平均値を演算し、平均位置誤差exm、eym及びθm として、RAM72に記憶する。次に、制御部70は、「位置誤差」と「送り誤差」及び実測値との間に成立する前記式Δxi,j +Δxi,j ′=ex +θLyi、Δyi,j +Δyi,j ′=ey +θLxjのex 、ey 及びθに平均位置誤差exm、eym及びθm を代入し、Δxi,j 及びΔyi,j を演算する。
【0049】
「送り誤差」は基準マーク91の各々について正方向移動時のものと逆方向移動時のものとの2つが求められ、各基準マーク91を撮像したときの「移動指示データ」及び撮像装置40、基準板90の送り方向と対応付けてRAM72に記憶される。基準マーク91はいずれも、X軸に平行な行とY軸に平行な列とに属し、1個の基準マーク91について、その基準マークがX軸に平行な行に属する基準マークとして撮像装置40の正逆両方向の移動により撮像され、求められる2種類の送り誤差と、Y軸に平行な列に属する基準マークとしてY軸テーブル34の正逆両方向に移動により撮像され、求められる2種類の送り誤差との合計4個の「送り誤差」が記憶されることとなる。次に、制御部70は、演算された全ての「送り誤差」の平均することにより、上側ロボット20のベース1に対するX方向及びY方向の「送り誤差」である「上側ロボット送り誤差」を演算する。
【0050】
S14において、制御部70が、「マトリックス補正」が完了したと判断した場合には(S14:YES)、プログラムをS15に進め、「マトリックス補正」が完了していないと判断した場合には(S14:NO)、プログラムをS13に戻す。
【0051】
S15において、制御部70は、「ノーマルキャリブレーション」を実行する。具体的には、制御部70は、上側ロボット20及び下側ロボット50を稼働させて、撮像装置40の撮像中心及び検査マーク61を、X方向及びY方向に関して共通の「検査位置」に移動させる。そして、制御部70は、撮像装置40で検査マーク61を撮像して、検査マーク61を含む「撮像データ」を取得する。次に、制御部70は、検査マーク61を含む「撮像データ」に基づいて、上側ロボット20と下側ロボット50のX方向及びY方向の「相対位置誤差」を演算する。具体的には、制御部70は、検査マーク61を含む「撮像データ」に基づいて、撮像装置40の撮像中心と検査マーク61の中心とのX方向及びY方向のズレを演算し、当該ズレを「相対位置誤差」として演算する。
【0052】
なお、上側ロボット20は、既にS13の「マトリックス補正」で「送り誤差」が補正されているので、制御部70が出力する「検査位置」に移動させる「指令値」と上側ロボット20の実際の送り位置とに誤差が無く、撮像装置40の撮像中心は「検査位置」に正確に位置される。一方で、「ノーマルキャリブレーション」を実行する前では、制御部70が出力する「検査位置」に移動させる「指令値」と下側ロボット50の実際の送り位置との間には誤差がある。
【0053】
なお、
図7に示すように、「ノーマルキャリブレーション」では、上述の「検査位置」は、X方向及びY方向に平行な面上の格子交点201であり、X方向に複数列、Y方向に複数行設定されている。格子交点201は、プリント基板999が「固定位置」に固定された場合において、プリント基板999の領域内に位置している。つまり、「検査位置」である格子交点201は、プリント基板が、「固定位置」において、上側作業装置30及び下側作業装置60によって電子部品が装着される際における、上側作業装置30及び下側作業装置60の可動範囲内に位置している。なお、i行j列の格子交点201の座標は(Xi,j 、Yi,j )と表す。勿論、「ノーマルキャリブレーション」の実行時には、プリント基板999は、「固定位置」には無い。
【0054】
制御部70は、「検査位置」である全ての格子交点201において、「相対位置誤差」を演算し、RAM72及び記憶部73の少なくとも一方に記憶する。
【0055】
次に、制御部70は、「上側ロボット送り誤差」及び「相対位置誤差」に基づいて、下側ロボット50のベース1に対するX方向及びY方向の「送り誤差」である「下側ロボット送り誤差」を演算する。
図8の(B)や(D)に示すように、「上側ロボット送り誤差」と「相対位置誤差」を加算することにより、「下側ロボット送り誤差」を算出する。
図8の(C)に示すように、「上側ロボット送り誤差」と「相対位置誤差」の方向が異なる場合には、「上側ロボット送り誤差」に、「上側ロボット送り誤差」と逆方向(−方向)の「相対位置誤差」を加算することにより、つまり、「上側ロボット送り誤差」に「相対位置誤差」の絶対値を減算することにより「下側ロボット送り誤差」を演算する。
【0056】
図8においては、X方向についての「下側ロボット送り誤差」の演算手法について示しているが、制御部70は、Y方向についての「下側ロボット送り誤差」も同様の手法によって演算する。制御部70は、全ての格子交点201について、「下側ロボット送り誤差」演算してRAM72及び記憶部73の少なくとも一方に記憶する。
【0057】
S16において、制御部70が、「ノーマルキャリブレーション」が完了したと判断した場合には(S16:YES)、プログラムをS17に進め、「ノーマルキャリブレーション」が完了していないと判断した場合には(S16:NO)、プログラムをS15に戻す。
【0058】
S17において、制御部70が、高精度位置決めが必要であると判断した場合には(S17:YES)、プログラムをS18に進め、高精度位置決めが必要でないと判断した場合には(S17:NO)、「送り誤差検出処理」が終了する。なお、例えば、プリント基板の電子部品の装着ミスが発生した場合や、プリント基板作業装置100の設定が変更された場合に、高精度位置決めが必要であると判断される。
【0059】
S18において、制御部70は「ファインキャリブレーション」を実行する。具体的には、制御部70は、上側ロボット20及び下側ロボット50を稼働させて、下側作業装置60が実際に作業する「作業位置」に、撮像装置40の撮像中心及び検査マーク61を移動させる。そして、制御部70は、撮像装置40で検査マーク61を撮像して、検査マーク61を含む「撮像データ」を取得する。次に、制御部70は、検査マーク61を含む「撮像データ」に基づいて、上側ロボット20と下側ロボット50のX方向及びY方向の相対位置誤差である「相対位置誤差」を演算する。
【0060】
次に、制御部70は、「上側ロボット送り誤差」及び「相対位置誤差」に基づいて、下側ロボット50のベース1に対するX方向及びY方向の「送り誤差」である「下側ロボット送り誤差」を演算する。なお、「下側ロボット送り誤差」の演算方法は、上述の「ノーマルキャリブレーション」と同一である。演算された「下側ロボット送り誤差」は、RAM72及び記憶部73の少なくとも一方に記憶される。
【0061】
S19において、制御部70が、「ファインキャリブレーション」が完了したと判断した場合には(S19:YES)、「送り誤差検出処理」が終了し、「ファインキャリブレーション」が完了していないと判断した場合には(S19:NO)、プログラムをS18に戻す。
【0062】
(下側ロボットの稼働方法)
図4に示す「送り誤差検出処理」において、「ノーマルキャリブレーション」のみしか実行されていない場合には、制御部70は、下側作業装置60の作業位置301(
図7示)の近傍の複数の「検査位置」において検出された「下側ロボット送り誤差」に基づいて、「作業位置」における「下側ロボット送り誤差」を演算する。当該演算方法は、X方向及びY方向のそれぞれについて、作業位置301の両側の「検査位置」(
図7の破線で示される領域内の格子交点201)のそれぞれにおいて演算された「下側ロボット送り誤差」から、作業位置301における「下側ロボット送り誤差」を補完することにより演算される。つまり、作業位置301の両側の格子交点201の「下側ロボット送り誤差」を、作業位置301の両側の格子交点201と作業位置301との距離に反比例配分することにより、作業位置301の「下側ロボット送り誤差」が演算される。
【0063】
そして、制御部70は、「下側ロボット送り誤差」を加味して、下X駆動回路85及び下Y駆動回路86に制御信号を出力して、下Xサーボモータ56b及び下Yサーボモータ53bを作動させて、下側ロボット50を稼働させて、下側作業装置60を作業位置301に移動させる。
【0064】
一方で、
図4に示す「送り誤差検出処理」において、「ファインキャリブレーション」が実行されている場合には、制御部70は、下側作業装置60の「作業位置」における「下側ロボット送り誤差」を加味して、下X駆動回路85及び下Y駆動回路86に制御信号を出力して、下Xサーボモータ56b及び下Yサーボモータ53bを作動させて、下側ロボット50を稼働させて、下側作業装置60を「作業位置」に移動させる。
【0065】
(本実施形態の効果)
上述した説明から明らかなように、
図4のS15において、制御部70(相対位置検出手段)は、上側ロボット20(第一ロボット)に取り付けられている撮像装置40の撮像中心及び下側ロボット50(第二ロボット)に取り付けられている下側作業装置60の検査マーク61を、X方向及びY方向に関して「検査位置」に移動させる。そして、制御部70は、「検査位置」において撮像され検査マーク61に基づいて、上側ロボット20と下側ロボット50の「相対位置誤差」を検出する。次に、制御部70(第二ロボット送り誤差検出手段)は、既に検出されている「上側ロボット送り誤差」(第一ロボット送り誤差)及び「相対位置誤差」に基づいて、ベース1(本体)に対する「下側ロボット送り誤差」(第二ロボット送り誤差)を検出する。このため、上側ロボット20とZ方向に異なる位置に設けられた下側ロボット50の「送り誤差」を検出することができる。
【0066】
本実施形態では、プリント基板上に設けられた基板マークの位置を検出する既存の撮像装置40を用いて、下側作業装置60の検査マーク61を撮像して、「相対位置誤差」を検出している。このため、下側作業装置60に検査マーク61を設けるとともに、
図4に示す「送り誤差検出処理」のプログラムを追加するだけで、「下側ロボット送り誤差」を検出することができる。このため、容易且つ低コストに、「下側ロボット送り誤差」を検出することができるプリント基板作業装置100を提供することができる。
【0067】
また、
図4のS15において、制御部70は、下側作業装置60の「作業位置」の近傍の「検査位置」において検出された複数の「下側ロボット送り誤差」に基づいて、「作業位置」における「下側ロボット送り誤差」を演算する。言い換えると、「作業位置」の近傍の複数の格子交点201において検出された「相対位置誤差」に基づいて、「作業位置」における「下側ロボット送り誤差」を演算する。このように、単一の「相対位置誤差」に基づいて、「下側ロボット送り誤差」を演算するのでは無く、下側作業装置60が実際に作業する「作業位置」の近傍の複数の格子交点201に検出された「相対位置誤差」に基づいて、「下側ロボット送り誤差」を演算するので、「作業位置」においてより精度高い「下側ロボット送り誤差」を取得することができる。
【0068】
また、
図4のS18において、下側作業装置60が実際に作業する「作業位置」において「相対位置誤差」が検出され、当該「相対位置誤差」に基づいて「下側ロボット送り誤差」が検出されるので、「作業位置」においてより精度高い「下側ロボット送り誤差」を取得することができる。
【0069】
また、
図4のS13の「マトリックス補正」において、複数の格子交点において撮像された基準マーク91(
図5示)に基づいて、「上側ロボット送り誤差」(第一ロボット送り誤差)が検出される。このため、上述したように、基準板90のコンベア装置12に対するX方向、Y方向及びZ方向軸線まわりの「位置誤差」を正確に検出することができ、正確な「位置誤差」に基づいて「上側ロボット送り誤差」が演算されるので、より精度高い「上側ロボット送り誤差」を取得することができる。この結果、より精度高い「下側ロボット送り誤差」を取得することができる。
【0070】
(別の実施形態)
以上説明した実施形態では、検査マーク61は、下側作業装置60に設けられている。しかし、下側ロボット50のX移動体54に検査マーク61設けられている実施形態であっても差し支え無い。
【0071】
なお、下側作業装置60が作業を行う位置と検査マーク61を一致させることが困難な場合には、1対の検査マーク61を下側作業装置60に設け、1対の検査マーク61の中間位置が、下側作業装置60が作業を行う位置と一致するようにする。この実施形態では、
図4のS15及びS18において、撮像装置40によって1対の検査マーク61の中間位置が検出され、当該「中間位置」と撮像装置40の撮像中心のズレから、「相対位置誤差」が演算される。
【0072】
以上説明した実施形態では、
図4のS18において、制御部70は、上側ロボット20及び下側ロボット50を稼働させて、下側作業装置60が実際に作業する「作業位置」に、撮像装置40の撮像中心及び検査マーク61を移動させている。しかし、X方向及びY方向関して、下側作業装置60が作業を行う下側作業装置60上における位置と検査マーク61の位置がズレている場合には、下側作業装置60が作業を行う位置を「作業位置」に移動させた状態における検査マーク61の位置に、撮像装置40の撮像中心を移動させて、「ファインキャリブレーション」を実行する。
【0073】
以上説明した実施形態では、「マトリックス補正」が実行される「第一ロボット」が上側ロボット20であり、「ノーマルキャリブレーション」及び「ファインキャリブレーション」が実行される「第二ロボット」が下側ロボット50である実施形態について本発明を説明した。しかし、「第一ロボット」が下側ロボット50であり、「第二ロボット」が上側ロボット20であっても差し支え無い。この実施形態の場合には、下側ロボット50のX移動体54に、上側ロボット20側を撮像する撮像装置40が取り付けられている。また、基準板90は、プリント基板作業装置100の撮像装置40と対向する位置に位置決めされて固定されるようになっている。そして、検査マーク61は、上側作業装置30又は上側ロボット20のY移動体24に設けられている。
【0074】
以上説明した実施形態では、X移動装置23、56、Y移動装置26、53は、ボールネジ及びサーボモータから構成されている。しかし、X移動装置23、56、Y移動装置26、53としてリニアモータを用いた実施形態であっても差し支え無い。
【0075】
以上説明した実施形態では、上側作業装置30は、吸着ヘッドである。しかし、上側作業装置30はこれに限定されず、他の形式の部品搬送装置やクリームハンダ塗布装置、接着材塗布装置、部品装置着検査装置等であっても差し支え無い。また、以上説明した実施形態では、下側作業装置60は、カット・アンド・クリンチ装置である。しかし、下側作業装置60はこれに限定されず、例えば、ネジ締め装置や部品装置着検査装置等であっても差し支え無い。以上説明した実施形態では、上側ロボット20及び下側ロボット50を有する「作業装置」は、プリント基板に電子部品を実装するプリント基板作業装置100である。しかし、「作業装置」は、これに限定されず、例えば、太陽電池パネル製造装置等の製造装置等であっても差し支え無い。