(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱可塑性樹脂と前記セルロース繊維の合計質量%を100%とした時に30質量%以上であり50質量%以下の質量%の前記セルロース繊維が前記原料に含まれる、請求項1に記載のファスニング部品。
ミクロフィブリル化したセルロース繊維が熱可塑性樹脂に分散した溶融原料にして、前記熱可塑性樹脂の融点が150〜200℃であり、前記熱可塑性樹脂と前記セルロース繊維の合計質量%を100質量%とした時に20質量%を超え、かつ60質量%未満の質量%の前記セルロース繊維が含まれる溶融原料を金型に供給する第1工程と、
前記金型内に充填された前記溶融原料を冷却する第2工程と、
を備え、
溶融温度220℃で溶融した前記溶融原料について、せん断速度12160sec-1での溶融粘度が500Pa/s以下であり、せん断速度12.16sec-1での溶融粘度が5000Pa/s以上である、ファスニング部品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態に係るファスニング部品は、ミクロフィブリル化したセルロース繊維が熱可塑性樹脂に分散した原料(以下、単に原料と呼ぶ場合がある)にして、熱可塑性樹脂の融点が150〜200℃であり、熱可塑性樹脂とセルロース繊維の合計質量%を100質量%とした時に20質量%を超え、かつ60質量%未満の質量%のセルロース繊維が含まれる原料の成形品である。
【0021】
本実施形態においては、熱可塑性樹脂に含有される強化繊維としてセルロース繊維を採用する。ファスニング部品に通常混合される強化繊維は、ガラス繊維や炭素繊維等の十分な耐熱性を具備するものから選定することが一般的である。本実施形態においては、このような慣行に反してセルロース繊維を強化繊維として採用し、これにより、ファスニング部品の高強度化を図る。熱可塑性樹脂の融点が150〜200℃であるため、溶融樹脂に分散したミクロフィブリル化したセルロース繊維の変質をある程度に抑制することができる。セルロース繊維の質量%が20質量%を超え、かつ60質量%未満であるため、ファスニング部品の強度とファスニング部品の成形時の成形性を適当に両立することができる。この点は、後述の実施例と比較例の対比からも裏付けられる。軽量かつ高強度のセルロース繊維のおかげで所望のファスニング部品の性能を確保できる。セルロース繊維が再生可能なバイオマス資源であるという点を踏まえれば、ファスニング部品の環境性能が高められるとも言える。
【0022】
本実施形態においては、特にミクロフィブリル化したセルロース繊維を強化樹脂として活用することにより、ファスニング部品の強度を好適かつ十分に確保することができる。ミクロフィブリル化したセルロース繊維が3次元の網状に存在し、ファスニング部品の軽量性を損なうことなくその強度が好適に確保される。なお、当業者には周知のように、ミクロフィブリル化したセルロース繊維は、直鎖状セルロースが水素結合して束になったものである。
【0023】
なお、熱可塑性樹脂の融点は、示差走査熱量計、通称DSC(Differential scanning calorimetry)により測定されたものを採用すると良い。示差走査熱量測定は、測定試料と標準試料の間で吸収熱量の差を検出し、これにより、測定試料の融点を測定する手法であり、高分子分野において広く採用されている。例えば、セイコーインスツルメンツ社製の製品名EXSTAR6000のDSCを活用すると良い。熱可塑性樹脂に異なる種類の熱可塑性樹脂が含有される場合、最も高温側の吸熱ピークトップの温度を融点とすると良い。DSCの測定方式は、熱流束、入力補償のいずれでも構わない。基準物質としてα―アルミナを用いても構わないが、基準物質を無しとしても構わない。10℃/minでDSC測定を行うことが良い。
【0024】
熱可塑性樹脂とセルロース繊維の各質量%の測定方法は任意である。例えば、ファスニング部品を溶融した上でセルロース繊維を熱可塑性樹脂から濾過等により分離し、ファスニング部品の質量に対する熱可塑性樹脂の質量比と、ファスニング部品の質量に対するセルロース繊維の質量比を算出して熱可塑性樹脂とセルロース繊維の各質量%を算出しても良い。濾過に際しては、熱可塑性樹脂がポリアミドPA11、ポリアセタールPOMの場合、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を溶媒として使用すると良い。熱可塑性樹脂がポリプロピレンPPの場合、ジクロロベンゼンを溶媒として使用すると良い。
【0025】
(ファスニング部品の形態)
ファスニング部品は、バックルの構成部品、スライドファスナーの構成部品、スナップボタンの構成部品、又は面ファスナーの構成部品である。例えば、ファスニング部品は、
図1及び
図2に示すスライドファスナー100の構成部品である。
【0026】
図1を参照してスライドファスナー100の構成について説明する。
図1に示すように、スライドファスナー100は、左右一組のファスナーテープ81(81a、81b)、ファスナーテープ81の内側縁に設けられた左右一組のコイルエレメント71(71a、71b)、左右一組の上止め51(51a、51b)、左右共通の下止め61、及び左右一組のコイルエレメント71が挿通された樹脂製のファスナースライダー90から構成される。ファスナースライダー90は、スライダー本体92の柱部94に引手98が取り付けられたものである。スライダー本体92は、周知のように、上翼板と下翼板が連結柱を介して対向配置し、それらの間にY字状のエレメント通路が設けられたものである。
【0027】
図2を参照してスライドファスナー100の他の構成について説明する。
図2に示すスライドファスナー100は、
図1に示すコイルエレメント71に代えて個別のエレメントが所定間隔で設けられた左右のエレメント列75(75a、75b)が採用されている。また、
図1に示す下止め61に代えて開離嵌挿具65が採用されている。開離嵌挿具65は、箱体65a、箱棒65b、及び蝶棒65cから成る。
図1及び
図2に示すスライドファスナー100の構成は、あくまで例示的に示したものであり、これにより本願に開示のファスニング部品が限定解釈されるべきものではない。
【0028】
本願に開示のファスニング部品は、例えば、
図1及び
図2に開示のファスナースライダー90であり、典型的にはスライダー本体92である。スライダー本体92は、高い強度を持たせることが望ましい。
【0029】
本願に開示のファスニング部品は、例えば、
図1に開示の上止め51、若しくは
図1に開示の下止め61又は
図2に開示の開離嵌挿具65である。本願に開示のファスニング部品は、例えば、
図2に開示のエレメント列75を構成するエレメントである。ファスナースライダー90の移動線路を構成若しくは同線路上にあるこれらの要素は、スライドファスナー100の機能を確保する上で重要であり、高い強度を持たせることが望ましい。
【0030】
上述のように本願に開示のファスニング部品は、バックルの構成部品、スナップボタンの構成部品、又は面ファスナーの構成部品であっても良い。これらの個々について個別に図示をして説明することは省略する。バックルに関しては、本願に開示のファスニング部品は、組を為す雄型及び雌型バックルの少なくとも一方となる。スナップボタンに関しては、組を為す雄型及び雌型ボタンの少なくとも一方となる。面ファスナーに関しては、組を為す雄型及び雌型面ファスナーの少なくとも一方となる。ファスニング部品の雄型と雌型の両方について本願に開示のファスニング部品を適用することが望ましい。
【0031】
(セルロース繊維)
原料に含まれるセルロース繊維について詳述する。ミクロフィブリル化したセルロース繊維径は、典型的には4〜1000nmであり、好適には4〜200nmであり、より好ましくは4〜100nmである。なお、植物中においてセルロースがシングルセルロースナノファイバーとして存在しており、その繊維径が4nmである。セルロース繊維に含まれるセルロースを化学的に処置して疎水性を具備させると良い。これにより、セルロース繊維と樹脂との親和性を高めることができる。
【0032】
原料中に含まれるミクロフィブリル化したセルロース繊維の質量%は、上述のように、20質量%を超え、かつ60質量%未満である。実施形態によっては、熱可塑性樹脂とセルロース繊維の合計質量%を100質量%とした時に30質量%以上であり50質量%以下の質量%のセルロース繊維が原料に含まれ、この点は後述の実施例により裏付けられる。30質量%以上であり50質量%以下の場合、ファスニング部品の強度とファスニング部品の成形時の成形性をより適切に両立することができる。
【0033】
(原料におけるセルロース繊維の分散性)
原料中、つまり熱可塑性樹脂中においては、直鎖状のセルロースの適当数が束になった微細なセルロース繊維が一様に分散しており、疎密の分布に多少のバラツキがあるとしても全体としては一様に分散しているものと言える。この点に関して、固体状態のファスニング部品からセルロース繊維の分散性を評価することは一般的に困難であるが、ファスニング部品を溶融してその溶融粘度を測定することにより次のように評価することができる。
【0034】
溶融温度220℃で溶融した原料について、せん断速度12160sec
-1での溶融粘度が500Pa/s以下であり、せん断速度12.16sec
-1での溶融粘度が5000Pa/s以上である。このような溶融粘度が測定される場合、原料におけるセルロース繊維の分散性が適切であり、ファスニング部品の強度が好適に確保される場合が多いと言える。
【0035】
後述の実施例の結果に照らすと、溶融温度220℃で溶融した原料について、せん断速度12160sec
-1での溶融粘度が400Pa/s以下であり、せん断速度12.16sec
-1での溶融粘度が8000Pa/s以上であると良い。
【0036】
溶融粘度の測定方法は、JIS−K7199に準拠して行うものとする。例えば、
図3に示すキャピラリーレオメーター(溶融粘度測定装置)10を用いる。キャピラリーレオメーター10は、シリンダー21の下端側から順に固定金具22、キャピラリーノズル23、及びエントランス24を有する。シリンダー21の上端側には、棒部25の下端にロッド26が設けられたピストン29がシリンダー21内を上下可動に配される。ピストン29の外周とシリンダー21の内周の間にはOリング27が配され、これによりピストン29の下方の空間が液密に保たれる。ロッド26の下端には圧力センサ28が任意の態様で設けられる。シリンダー21の下方に溶融試料20が配され、毛細管現象によりキャピラリーノズル23、エントランス24を介してロッド26下の空間へ導入される。
【0037】
試料(ミクロフィブリル化したセルロース繊維が熱可塑性樹脂に分散した原料)の溶融粘度ηは、次式により算出される。なお、せん断応力は、圧力センサの出力値に応じて決定される。せん断速度は、ピストン29の下降速度に応じたものである。
【数1】
【0038】
例示的な試験温度は、220℃であり、これは、熱可塑性樹脂の融点150〜200℃を上回る温度である。キャピラリーノズル23について、長さ10mm、内径1mmとする。上述の試料を80℃にて6時間に亘り真空乾燥させたものを測定試料とする。測定試料をシリンダーに充填後、5分間に亘り加熱し、粘度特定試験を行う。例示的な試験速度は、0.5、1、2、5、10、20、50、100、200、500、1000(mm/min)である。例示的なせん断速度は、6.08、12.16、24.32、60.80、121.6、243.2、608.0、1216、2432、6080、12160(1/s)である。
【0039】
溶融粘度に関しては、一般的に、せん断速度を大きくすると溶融粘度が低下する。本実施形態においてもこの傾向が見られるが、セルロース繊維がミクロフィブリル化しているため、低せん断速度の領域においてセルロース繊維が熱可塑性樹脂の動きを十分に阻害して比較的高い溶融粘度、つまり上述の5000Pa/s以上若しくは8000Pa/s以上が測定され、高せん断速度の範囲において配向したセルロース繊維が熱可塑性樹脂の動きを阻害する要因としては機能せず比較的低い溶融粘度、つまり上述の500Pa以下若しくは400Pa/s以下が測定されるものと推定される。
【0040】
後述の実施例の結果に照らすと、溶融温度220℃で溶融した原料について、せん断速度12.16sec
-1での溶融粘度をMとし、せん断速度12160sec
-1での溶融粘度をNとしたとき、40≦M/N≦120を満足すると良く、より好ましくは、45≦M/N≦116を満足する。
【0041】
(無機顔料の添加)
実施形態によっては、原料には無機顔料を添加しても構わない。これにより、成形時の熱的影響によりセルロース繊維が焼けてファスニング部品が変色する程度を緩和することができる。また場合によっては、成形時の熱的影響等による熱可塑性樹脂の変色による色再現性の悪化を補うことができる。適当量の無機顔料の添加によっても強度低下が生じないことは、ガラス繊維等と比較してセルロース繊維の分散サイズが小さいためであることが推定される。ガラス繊維の分散サイズは、径10μm×長さ300μmである。他方、セルロース繊維の分散サイズは、径0.004〜0.02μm×長さ1μmである。顔料の単独若しくは凝集体の径が0.2〜5μmの時、顔料粒子からみてガラス繊維よりもセルロース繊維が格段に細い繊維として存在する。
【0042】
無機顔料は、白色顔料、赤色顔料、青色顔料、黄色顔料、及び黒色顔料の群から選択される1以上の顔料である。白色顔料は、例えば、二酸化チタン(ルチル、アナターゼ)TiO
2、硫化亜鉛ZnS、鉛白2PbCo
3・Pb(OH)
2、亜鉛華ZnO、リトポンBaSO
4+ZnS、三酸化アンチモンSb
2O
3等であるが、これに限られるべきものではない。赤色顔料は、例えば、コバルトバイオレットCo
3(PO
4)
2、カドミウムレッドCdS・nCdSe、朱(バーミリオン)HgS、モリブデンオレンジMoPbO
4、ベンガラFe
2O
3であるが、これに限られるべきものではない。青色顔料は、例えば、酸化クロムCr
2O
3、群青2(Al
2Na
2SiO)、紺青KFe[Fe(CN)
6]、コバルトブルーCoO・nAl
2O
3であるが、これに限られるべきものではない。黄色顔料は、例えば、黄鉛PbCrO
4、カドミウムイエローCdS、ジンククロメートZnCrO
4、イエローオーカーFeO・OHであるが、これに限られるべきものではない。黒色顔料は、典型的にはカーボンブラックであるが、これに限られるべきものではない。安価な色調調整剤として、硫酸バリウムBaSO
4、炭酸バリウムBaCO
3、炭酸カルシウムCaCO
3、石膏CaCO
4、及びシリカSiO
2等を用いても良い。
【0043】
粉状の無機顔料を用いることが望ましい。無機顔料の質量%や粒子径は、十分な分散性や発色性を得るべく適当に調整可能である。無機顔料の粒子径が大きすぎると無機顔料による色調整度合が低下し、小さすぎるとファンデルワールス力による凝集を引き起こしてしまうおそれがある。このような観点から、無機顔料のメジアン径は、典型的には5.0μm以下であり、好ましくは3.0μm以下であり、典型的には0.1μm以上であり、好ましくは0.2μm以上である。顔料粉体のメジアン径はJIS8825−1:2001に準拠して、レーザー回折法により測定可能である。
【0044】
原料中の顔料の含有量は任意であるが、少なくとも原料中のセルロース繊維の質量%未満であることが望ましい。顔料の質量%をセルロース繊維の質量%よりも大きくすると、原料の成形性が悪化し、またファスニング部品の強度を十分に確保することが困難になってしまうだろう。原料中の顔料の質量%は、原料中のセルロース繊維の質量%と比べて十分に低いことが望ましい。原料には、合計100質量%の熱可塑性樹脂とセルロース繊維に加えて、0.5〜5質量%の無機顔料が含まれる、と良い。この範囲に限らず、10.0質量%以下であり、好適には5.0質量%以下としても良い。原料中の顔料の質量%は、色再現性の観点から、0.5質量%以上とすることが好ましく、1.0質量%以上とすることがより好ましい。
【0045】
(熱可塑性樹脂について)
熱可塑性樹脂の材料については融点150〜200℃であれば任意である。好ましい実施形態においては、熱可塑性樹脂がポリアミドである。ポリアミドは分子構造によって融点が異なるが、セルロース繊維の焼けを抑制する観点から融点150〜200℃のものを活用する。ポリアミドは、高融点になれば黄変する傾向があり、低融点になると強度や剛性が低下する傾向にある。このような観点からも融点150〜200℃のポリアミドを活用することが望ましい。ポリアミドの黄変は、白色等の無機顔料の添加により補うことができる。ポリアミドの融点は、上述のように示差走査熱量計を活用して決定づけられる。
【0046】
ポリアミドは、ジアミンとジカルボン酸の共重縮合、ω−アミノ酸の重縮合及びラクタム類の開環重合などによって得られる。ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルプロパンジアミン、3−メチルプロパンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカンジアミン及びドデカンジアミンなどの直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族ジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン及びパラフェニレンジアミンなどの芳香族ジアミン、イソホロンジアミン、2−アミノメチルピペリジン、4−アミノメチルピペリジン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシレンメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシレンメタン、1,3−ジ(4−ピペリジル)−プロパン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、N−アミノプロピルピペラジン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシレンプロパン、1,2−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及び1,4−ビス(アミノプロピル)ピペラジンなどの脂環族ジアミンが挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、プロパン二酸、ブタン二酸、ペンタン二酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ドデカン二酸、ウンデカン二酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸及び1,5−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロフタル酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸などの非芳香族環式基を有するジカルボン酸が挙げられる。ω−アミノ酸としては、例えば、6−アミノヘキサン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、4−ピペリジンカルボン酸、3−ピペリジンカルボン酸、及び2−ピペリジンカルボン酸などが挙げられる。ラクタムとしては、ε−カプロラクタム、ウンデカンラクタム及びラウリルラクタムなどが挙げられる。
【0047】
ポリアミドの具体例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリパラキシリレンアジパミド(ナイロンPXD6)、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン106)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリビス(3−メチル−4−アミノヘキシル)メタンテレフタルアミド(ナイロンPACMT)、ポリビス(3−メチル−4−アミノヘキシル)メタンイソフタルアミド(ナイロンPACMI)、ポリビス(3−メチル−4−アミノヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノヘキシル)メタンテトラデカミド(ナイロンPACM14)、ポリテトラメチレンテレフタルアミド(ナイロン4T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド(ナイロン5T)、ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド(ナイロンM−5T)、ポリヘキサメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ナイロン6T(H))、ポリ2−メチル−オクタメチレンテレフタルアミド、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン12T)、ポリビス(3−メチル−4−アミノヘキシル)メタンテレフタルアミド(ナイロンPACMT)、ポリビス(3−メチル−4−アミノヘキシル)メタンイソフタルアミド(ナイロンPACMI)、ポリビス(3−メチル−4−アミノヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、及びポリビス(3−メチル−4−アミノヘキシル)メタンテトラデカミド(ナイロンPACM14)などが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
更に、ポリアミドの繰返単位の任意の組合せで得られる共重合体も用いることができる。限定的ではないが、このようなポリアミド共重合体としては、カプロラクタム/ヘキサメチレン・アジポアミド共重合体(ナイロン6/6,6)、ヘキサメチレン・アジポアミド/カプロラクタム共重合体(ナイロン6,6/6)、ヘキサメチレン・アジポアミド/ヘキサメチレン−アゼラインアミド共重合体(ナイロン6,6/6,9)等が挙げられる。
【0049】
(ファスニング部品の強度特性)
後述の実施例に照らせば明らかなように、好ましい実施形態においては、ファスニング部品を溶融して得た所定寸法の試験片の曲げ強度が100MPa以上である。好ましい実施形態においては、ファスニング部品を溶融して得た所定寸法の試験片の曲げ弾性率が4000GPa以上である。
【0050】
曲げ試験は、JIS−K7171、ISO178に準拠して行うものとする。代表的な試験片の寸法は、長さ×巾×厚さの順で80×10×4mmである。試験速度は、10mm/minである。試験片を支持する支点間の距離Lは、L=64mmである。圧子の半径R1は、R1=5mmである。
【0051】
曲げ応力は、数2により算出され、σの最大値が曲げ強度である。
【数2】
ここで、σが曲げ応力である。Fが曲げ荷重である。Lが支点間距離である。bは、試験片幅である。hは、試験片厚である。
【0052】
曲げ弾性率は、区間0.05〜0.25%の規定ひずみ区間の曲げ応力勾配により弾性率を算出する割線法に準拠して算出する。数3により算出されたたわみ(mm)時の荷重から数2により曲げ応力σ
1と曲げ応力σ
2を算出して数4により曲げ弾性率Eを算出する。
【0053】
【数3】
ここで、Sがたわみであり、単位がmmである。ε
iが歪であり、詳細には、i=1のときの歪についてはε
1=0.0005であり、i=2のときの歪についてはε
2=0.0025である。Lが支点間距離である。hは、試験片厚である。
【0054】
【数4】
ここで、ε
1=0.0005であり、ε
2=0.0025である。σ
1が、ε
1=0.0005に対応する曲げ応力である。σ
2が、ε
2=0.0025に対応する曲げ応力である。
【0055】
なお、試験片の強度特性を他の方法にて測定しても構わない。
【0056】
(ファスニング部品の製造方法)
本実施形態に係る製造方法は、ミクロフィブリル化したセルロース繊維が熱可塑性樹脂に分散した溶融原料にして、熱可塑性樹脂の融点が150〜200℃であり、20質量%を超え、かつ60質量%未満の質量%のセルロース繊維が含まれる溶融原料を金型に供給する第1工程と、金型内に充填された溶融原料を冷却する第2工程と、を含む。
【0057】
図4に例示的に示す成形装置200を活用してファスニング部品を製造しても良い。成形装置200は、溶融原料を撹拌する撹拌部210と、撹拌部210から供給される溶融原料を成形する成形部220を有する。撹拌部210においては、中空のシリンダー201内に搬送スクリュー202が回動可能に配され、搬送スクリュー202の回動により溶融原料が搬送され、またこの過程で熱可塑性樹脂内においてセルロース繊維が十分に分散される。撹拌部210の導入部203の導入口が広口に構成されており、これにより、シリンダー201の内部空間への溶融原料の導入が容易化されている。撹拌部210のノズル204を介してシリンダー201内から成形部220側へ溶融原料が供給される。
【0058】
成形部220は、1以上の金型から構成された一般的な成形装置であり、必ずしもこの態様に限られるべきものではないが
図3においては第1金型221aと第2金型221bから構成される。第1金型221aと第2金型221bには、成形品を成形するための成型キャビティー(不図示)が個別に設けられている。また、少なくとも第2金型221bには第2金型221bの成型キャビティーとノズル204間を連通するランナー(不図示)が設けられる。溶融原料を成形キャビティーに供給している際、第1金型221aと第2金型221bが熱可塑性樹脂の融点付近の温度に保たれる。成形キャビティーに充填された溶融原料を凝固する際には第1金型221aと第2金型221bを任意の手段により冷却する。
【0059】
撹拌部210が撹拌する原料は、ミクロフィブリル化したセルロース繊維が熱可塑性樹脂に分散した溶融原料である。好ましくは、導入部203の導入口を介してシリンダー201内に導入される時点において原料が溶融状態にあるが、必ずしもこの限りではなく、シリンダー201での加熱により原料を溶融状態としても構わない。撹拌時の保温温度を熱可塑性樹脂の融点150〜200℃と同等に設定すれば、より高融点の熱可塑性樹脂を採用する場合と比較してプロセスの低温化を図ることができる。
【0060】
(ミクロフィブリル化したセルロース繊維の製造方法)
ミクロフィブリル化したセルロース繊維自体の製造方法は任意であるが、典型的かつ好適な製造方法について例示的に説明する。例えば、水にパルプを懸濁した懸濁液をビーズミルに入れてパルプを解繊すれば良い。パルプは、典型的には木材等のパルプ化処理又は紙資源の再利用化処理により得られたパルプである。例えば、ケミカルパルプ(クラフトパルプ(KP)、亜硫酸パルプ(SP))、セミケミカルパルプ(SCP)、セミグランドパルプ(CGP)、ケミメカニカルパルプ(CMP)、砕木パルプ(GP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、及びケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)の群から選択される1以上のパルプを採用しても良い。パルプに対して、脱リグニン又は漂白を行い、植物繊維中のリグニン量を調整しても良い。
【0061】
パルプの中でも、繊維強度が強い針葉樹由来の各種クラフトパルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(以下、NUKPということがある)、針葉樹酸素晒し未漂白クラフトパルプ(以下、NOKPということがある)、針葉樹漂白クラフトパルプ(以下、NBKPということがある))が特に好ましい。
【0062】
ミクロフィブリル化したセルロース繊維は、グルコース単位の水酸基を一部変性したものであっても構わない。例えば、(i)疎水化剤によって変性された疎水化変性セルロース繊維に、(ii)アニオン化剤によって変性されたアニオン変性セルロース繊維、又は(iii)カチオン化剤によって変性されたカチオン変性セルロース繊維を用いても構わない。疎水化変性セルロース繊維を採用することにより樹脂との親和性を高めることができる。
【0063】
セルロース繊維を疎水化変性する疎水化変性反応としては、公知の方法により行うことができるが、酸ハロゲン化物を用いてエステル化しても良い。酸ハロゲン化物としては、炭素数4〜18の酸クロライド、具体的には、ブチリルクロライド、ヘキサノイルクロライド、オクタノイルクロライド、デカノイルクロライド、ドデカノイルクロライド、ステアロイルクロライド、オレオイルクロライド等のアルキル基又はアルケニル基を有する酸クロライド、ベンジルクロライド等の芳香環を有する酸クロライドが例示され、これらは1種類、又は2種類以上を併用して用いることができる。
【0064】
酸ハロゲン化物を用いたエステル化に代えて、アルキル又はアルケニル無水コハク酸によるセルロース繊維のハーフエステル化後、生成したカルボン酸の一部、又は全部を金属水酸化物等のアルカリで中和しても良い。アルキル又はアルケニル無水コハク酸としては、炭素数4〜20のオレフィン由来の骨格と無水マレイン酸骨格を持つ化合物が例示される。具体的には、オクチル無水コハク酸、ドデシル無水コハク酸、ヘキサデシル無水コハク酸、オクタデシル無水コハク酸等のアルキル無水コハク酸、ペンテニル無水コハク酸、ヘキセニル無水コハク酸、オクテニル無水コハク酸、デセニル無水コハク酸、ウンデセニル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、トリデセニル無水コハク酸、ヘキサデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物等のアルケニルコハク酸無水物が例示されこれらは1種類、又は2種類以上を併用して用いることができる。例えば炭素数16のオレフィン骨格を持つアルケニル無水コハク酸を「ASA-C16」と表記することがある。
【0065】
1)酸ハロゲン化物を用いた反応
酸ハロゲン化物の使用量は、セルロース繊維含有材料100重量部に対して0.1〜200重量部程度が好ましく、0.5〜150重量部程度がより好ましく、1〜100重量部が更に好ましい。
【0066】
セルロース繊維含有材料と酸ハロゲン化物とを作用(反応)させる温度は、−20〜150℃程度が好ましく、好ましくは−10〜130℃程度がより好ましく、0〜100℃程度が更に好ましい。また、セルロース繊維含有材料と疎水化剤とを作用(反応)させる時間は、酸ハロゲン化物の種類にもよるが反応が完了したかどうかは赤外スペクトルによりエステルのC=O伸縮振動のピークを追尾することで確認できる。なお、疎水化反応を行う圧力については、特に制限がなく、大気圧下で行えばよい。
【0067】
反応溶媒の使用量としては、セルロース繊維含有材料100重量部に対して、0.1〜1000重量部程度が好ましく、1〜500重量部程度がより好ましく、10〜100重量部程度が更に好ましい。
【0068】
酸ハロゲン化物を用いた反応の結果ハロゲンが生成するため、これを中和する塩基が必要となる。使用する塩基は、通常、アルカリ金属水酸化物、特に水酸化ナトリウムである。使用する塩基の量は、酸ハロゲン化物に対しモル比で塩基/酸ハロゲン化物=1.0〜1.5である。
【0069】
酸ハロゲン化物を用いた反応では、必要に応じて触媒を用いてもよく、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、4−ピロリジノピリジン等が用いられるが、4−ジメチルアミノピリジンが好ましい。
【0070】
使用する触媒の量は、セルロースのグルコース単位1モルに対し0.01〜10000モルが好ましく、0.02〜5000モルが好ましく、0.02〜3000モルが特に好ましい。触媒の量が1モル以上の場合は触媒が溶媒の役割も果たしているが、この量がグルコースに対し10000モルをこえる場合、触媒としての観点から有効に役割を果たしていない。また0.01モル未満の場合は反応に多大な時間を要する。
【0071】
疎水化反応は水中で行うことができるが、非水系溶媒中で行ってもよい。非水系溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、THF、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のエーテル類、及びこれらのメチル、ジメチル、エチル、ジエチル化物、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド化溶媒、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン等の非極性溶媒、又はこれらの混合溶媒である。また、これらから選ばれた2種以上の混合溶媒を使用してもよい。
【0072】
2)「アルキル又はアルケニル無水コハク酸」によるハーフエステル化と中和反応
「アルキル又はアルケニル無水コハク酸」の使用量は、セルロース繊維含有材料100重量部に対して、0.1〜1000重量部程度が好ましく、0.5〜500重量部程度がより好ましく、1〜500重量部が更に好ましい。
【0073】
セルロース繊維含有材料と、アルキル又はアルケニル無水コハク酸とを作用(反応)させる温度は、100〜200℃程度が好ましく、100〜180℃程度がより好ましく、100〜150℃程度が更に好ましい。また、セルロース繊維含有材料と、アルキル又はアルケニル無水コハク酸とを作用(反応)させる時間は、その種類にもよるが反応が完了したかどうかは赤外スペクトルによりエステルのC=O伸縮振動のピークを追尾することで確認できる。なお、疎水化反応を行う圧力については、特に制限がなく、大気圧下で行えばよい。
【0074】
セルロース繊維含有材料と「アルキル又はアルケニル無水コハク酸」との反応は無水条件で行えば特に制限はないが、例えば、1)セルロース繊維含有材料を乾燥させた後に有機溶媒に分散させ、アルキル又はアルケニル無水コハク酸を加え、加熱攪拌により反応させる方法、2)含水のセルロース繊維を有機溶媒に分散させた後にろ過し、溶媒をある程度除いた後、ろ過残を再度有機溶媒に分散させることを繰り返すことにより水を除く、いわゆる溶媒置換法で分散させた後に「アルキル又はアルケニル無水コハク酸」を加え、加熱攪拌により反応させる方法、3)含水のセルロース繊維に液状の疎水基を含む環状酸無水物を加え、攪拌しながら加熱し脱水させ液状の「アルキル又はアルケニル無水コハク酸」中にセルロース繊維含有材料を分散させつつ、セルロース繊維と疎水基を含む環状酸無水物との反応を進行させる方法等が例示される。この中でも、3)の方法が、反応濃度が高く、反応が効率的であるだけでなく、反応後に溶媒を除去する必要がないので好ましい。
【0075】
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、THF、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のエーテル類、及びこれらのメチル、ジメチル、エチル、ジエチル化物、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド化溶媒、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン等の非極性溶媒、又はこれらの混合溶媒である。また、これらから選ばれた2種以上の混合溶媒を使用してもよい。
【0076】
反応では必要に応じて触媒を用いてもよく、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、4−ピロリジノピリジン等が用いられるが4−ジメチルアミノピリジンが好ましい。使用する触媒の量はセルロースのグルコース単位1モルに対し0.01〜10000モルが好ましく、0.02〜5000モルが好ましく、0.02〜3000モルが特に好ましい。触媒の量が1モル以上の場合は触媒が溶媒の役割も果たしているが、この量がグルコースに対し10000モルをこえる場合、触媒としての観点から有効に役割を果たしていない。
【0077】
1)〜3)の反応の反応装置としては加熱・攪拌出来れば特に制限はないが、例えば、攪拌羽を装備したフラスコ、攪拌子を持つビーカー、ニーダー、二軸押出し機、ラボプラストミル、ビーズミル、ボールミル等が挙げられる。反応は基本的に固液反応であるので、反応効率を上げるためには攪拌効率高い攪拌装置が好ましく、具体的にはニーダー、二軸押出し機、ラボプラストミル、ビーズミル、ボールミル等が例示される。
【0078】
反応後は洗浄しなくても良いし、未反応の疎水基を含む環状酸無水物を除くために有機溶媒で洗浄操作をしても良い。また、反応により生成したカルボキシル基の一部、又は全部を中和することが好ましい。中和に用いるアルカリとしては中和出来れば特に制限はないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が例示される。
【0079】
なお、カルボン酸を中和しないでビーズミル等により強力な機械的せん断力をかけるとセルロース繊維に含まれるセルロース等の加水分解を誘発し、得られたミクロフィブリル化セルロース繊維の切断が起こってしまうため、好ましくない。
【0080】
<実施例>
以下、実施例について説明する。実施例1乃至5では、熱可塑性樹脂として融点190℃のポリアミドPA11を用いた。実施例1、2、4、5では、アルケマ製のRilsan(登録商標)BESN0の高粘度のポリアミドPA11を用いた。実施例3では、アルケマ製のRilsan(登録商標)BMN0の低粘度のポリアミドPA11を用いた。ポリアミド中に分散したセルロース繊維は上述に開示の手法によりミクロフィブリル化したものであり、ミクロフィブリル化の処理対象の原料にNBKPパルプを用いた。白色の無機顔料としてTiO
2を用いた。原料中の各材料の質量%は、表1に開示のとおりである。なお、実施例においては、熱可塑性樹脂とセルロース繊維の合計質量%が100%となるように計算している。顔料については外部数として扱っている。ファスニング部品の製造は、
図4を参照して説明した条件に即して行った。なお、実施例1乃至5では、ファスニング部品を製造することに代えて、長さ×巾×厚さの順で80×10×4mmの試験片を製造した。試験片の特性結果は、ファスニング部品の特性にもそのまま反映される。
【0081】
曲げ弾性率、及び曲げ強度は、上述の開示の方法にて測定した。溶融粘度についても同様である。なお、溶融粘度に関して、条件1は、せん断速度が12.16sec
-1であり、条件2は、せん断速度が12160sec
-1である。M/Nは、小数点3ケタ以下を四捨五入している。
【0083】
表2に比較例を示す。比較例1では、熱可塑性樹脂としてアルケマ製のRilsan(登録商標)BESNOを用いた。比較例2、4では、熱可塑性樹脂としてプライムポリプロJ106Gを用いた。比較例3では、熱可塑性樹脂としてテナック7511Cを用いた。比較例1では、セルロース繊維の質量%が高すぎた結果、金型内へ溶融原料を供給すること自体が容易ではない状態となった。比較例2では、セルロース繊維の質量%が低い結果、十分な曲げ強度を確保することができなかった。比較例3についても比較例2と同様、十分な曲げ強度を確保することができなかった。比較例4についても十分な曲げ強度を確保することができなかった。比較例1では成形自体できなかったため、曲げ弾性率等の結果は得られなかった。
【0085】
なお、ファスニング部品をファスナースライダーとした場合の特性は、各表に記載の曲げ弾性率、曲げ強度、原料の溶融粘度等に対応したものになる。曲げ弾性率、曲げ強度、溶融粘度等はファスニング部品の形状に依存することなく測定されるべきものである。従って、ファスナースライダー等に成形されたファスニング部品については、所定寸法の試験片に成形したうえで測定されるべきである。
【0086】
上述の教示を踏まえると、当業者をすれば、各実施形態に対して様々な変更を加えることができる。請求の範囲に盛り込まれた符号は、参考のためであり、請求の範囲を限定解釈する目的で参照されるべきものではない。