(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012753
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】タイヤのための騒音減少装置
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20161011BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
B60C11/13 A
B60C11/03 F
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-545171(P2014-545171)
(86)(22)【出願日】2012年11月27日
(65)【公表番号】特表2015-500165(P2015-500165A)
(43)【公表日】2015年1月5日
(86)【国際出願番号】EP2012073669
(87)【国際公開番号】WO2013083428
(87)【国際公開日】20130613
【審査請求日】2015年8月19日
(31)【優先権主張番号】1161164
(32)【優先日】2011年12月5日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】カンパニー ジェネラレ デ エスタブリシュメンツ ミシュラン
(73)【特許権者】
【識別番号】508032479
【氏名又は名称】ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】ロティ ガエル
(72)【発明者】
【氏名】マース ローラン
【審査官】
増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−150812(JP,A)
【文献】
特開昭60−116510(JP,A)
【文献】
特開昭60−121103(JP,A)
【文献】
特開平05−155203(JP,A)
【文献】
特開2003−165310(JP,A)
【文献】
特開平03−276802(JP,A)
【文献】
特開平04−221207(JP,A)
【文献】
特開2008−174198(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01946943(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/13
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ用のトレッドであって、前記トレッドは、路面に接触するようになったトレッド表面(10)を有し、前記トレッドは、互いに向かい合った2つの壁(11,12)によって画定された幅W及び深さPの少なくとも1本の溝(1)を有し、前記壁は、溝底部(13)によって互いに接合され、前記溝底部は、前記壁(11,12)を互いに連結すると共に法上のトレッド摩耗限度インジケータより半径方向の内側に位置する前記溝の部分に相当し、少なくとも1本の溝(1)は、該溝が接触パッチを通過しているときに該溝を少なくとも部分的に閉鎖する少なくとも1つの閉鎖装置を有し、各閉鎖装置は、液体の循環の影響下で撓むことができるのに適した厚さの少なくとも1つの可撓性ブレード(2,2″)を有し、前記少なくとも1つの可撓性ブレードは、前記溝の前記底部に固定され、厚さEの各可撓性ブレードは、路面に接触するようになった接触壁と、各々が前記溝を画定する壁に向いた端壁(21,22)と、前記ブレードの前記厚さEに等しい距離だけ互いに隔てられた側壁(25)とで画定されている、トレッドにおいて、前記溝の前記底部(13)と前記閉鎖装置の各ブレードとの間には少なくとも1つの通路(201,202,230,230′)が形成され、前記通路(201,202,230,230′)は、水で覆われた路面上を走行しているときに水の最小限の流れを保証すると共にトレッド摩耗レベルとは無関係にかかる水の最小限の流れの保証を行うようになっている、トレッド。
【請求項2】
前記溝の前記底部(13)と前記閉鎖装置の可撓性ブレードとの間に形成された前記通路(201,202,230,230′)は、前記溝(1)の断面の幅の方向に測定して長さLpを有し、前記長さLpは、新品状態において前記ブレードの前記接触壁(20)の長さL1の30%以上で且つ70%以下である、請求項1記載のトレッド。
【請求項3】
各閉鎖装置は、単一のブレード(2)を有し、前記単一のブレード(2)は、その長さの各側に設けられていて、前記溝の前記底部と繋がる通路(201,202)を備えている、請求項1又は2記載のトレッド。
【請求項4】
前記閉鎖装置は、少なくとも2つの可撓性ブレード(2,2′)によって形成され、前記可撓性ブレードは、これら可撓性ブレードがこれらの端壁のうちの一方を介して互いに触れるよう端と端を突き合わせて位置決めされている、請求項1又は2記載のトレッド。
【請求項5】
前記閉鎖装置は、少なくとも2つの可撓性ブレード(2,2′)によって形成され、前記可撓性ブレードは、前記溝の主要方向に互いにずらされた状態で位置決めされ、この方向は、液体が前記溝内で流れる方向に一致している、請求項1又は2記載のトレッド。
【請求項6】
各可撓性ブレード(2,2′)は、通路(230,230′)を有し、これら2つの通路は、水で覆われた路面上を走行しているときに水が流れることができるようにするオリフィス(3)を形成するよう互いに補足し合っている、請求項4又は5記載のトレッド。
【請求項7】
前記通路(230,230′)によって形成された前記オリフィス(3)の全表面積は、新品状態において、前記閉鎖装置が形成されている溝の断面の全表面積の30%以下である、請求項6記載のトレッド。
【請求項8】
各ブレード(2,2′)の厚さは、新品状態における前記ブレードの前記接触壁(20)と前記溝の前記底部(13)に繋がっている前記連結壁(23)との間で、前記ブレードのどの高さ位置においても、一定の断面の表面積を維持するよう設定されている、請求項1乃至7の何れか1項に記載のトレッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッドに関し、特に溝を有するトレッドに関し、これら溝は、運転中、これら溝内で共鳴する空気によって生じる騒音(ノイズ)を減少させる装置を形成する可撓性装置を有する。
【背景技術】
【0002】
走行中のタイヤが路面に接触すると、溝、特に全体として周方向の向きの溝(これに限られるわけではない)及び路面それ自体によって形成された一種の管の中で空気が循環するようになることが知られており、この管は、両端が開口している。
【0003】
この管の中において空気の柱が形成され、この空気柱(略して気柱ともいう)が接触パッチ内で振動状態になり、その共鳴振動数は、この管の2つの端相互間の長さ及びかくして路面と接触状態にある溝の長さで決まる。
【0004】
溝内における空気のこの共鳴は、これらタイヤを履いた車両に関し、車両の内外で聞こえる騒音発生させるという結果をもたらす。
【0005】
これら車両内外の騒音は、通常、1kHz又はその近傍の振動数に相当しており、この振動数は、人の耳にとって特に敏感な又は耳障りな振動数である。かかる共鳴騒音を減少させるため、各周方向に差し向けられた又は全体として周方向に差し向けられた溝内に、ゴム状材料で作られた複数個の比較的薄いクロージャ(閉鎖)メンブレン又はブレードを配置することが慣例であり、各クロージャメンブレン又はブレードは、溝の断面全体又はこの断面の少なくとも大きな比率を占める。各クロージャメンブレンは、溝の底部から延びるのが良く又は溝を画定する壁のうちの少なくとも一方に固定されるのが良い。
【0006】
これらクロージャメンブレンにより、各周方向溝内の空気柱の長さは、接触パッチ内における溝の全長と比較して減少し、これにより、共鳴振動数の変化が生じる。振動数のこの変化は、人の耳にそれほど敏感ではない共鳴振動数の値に向かう。走行時騒音減少装置を形成する可撓性メンブレンの数は、路面と接触関係をなして共鳴を起こす場合のある溝の長さが耳にとって感じ取りにくい共鳴音を送り出すのに適しているように定められる必要がある。
【0007】
「比較的薄い」という表現は、各可撓性クロージャブレード又はメンブレンが特に雨天において水で覆われた路面上を走行しているときに達成される適当な条件下でのみ撓むことができることを意味している。具体的に説明すると、路面とタイヤとの間で水を排除する機能を維持するためには、このメンブレンは、水圧の作用を受けて撓む必要があり、その目的は、水の流れに対して溝の断面を開くことにある。
【0008】
溝内で振動する空気柱の共鳴を減少させるためのこの種の幾つかの手段が、例えば、仏国特許第2715891号明細書で提案されている。少なくとも1つの可撓性ブレードで形成された騒音減少装置の場合、各可撓性ブレードは、溝の底部に連結され、騒音減少装置は、新品状態では極めて有効であるように見受けられる。しかしながら、この有効性は、かかる騒音減少装置を備えた溝を有するトレッドが部分的に摩耗状態になった後においては低下する。この1つの理由は、各ブレードが部分的に摩耗状態になると各ブレードの曲げ剛性が増大することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】仏国特許第2715891号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、トレッド摩耗によりかかる騒音減少装置の有効性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
定義:
【0012】
トレッドのトレッド表面(「踏み面」と呼ばれる場合がある)は、かかるトレッドを備えたタイヤの走行中、路面に接触するトレッドの表面を意味している。
【0013】
溝は、トレッド内に形成された空間を意味し、この空間は、隆起要素(ブロック、リブ)の材料の壁によって画定され、これら壁は、溝の深さに等しい最大距離だけトレッド表面から離れた溝底部によって互いに接合されている。溝底部は、タイヤトレッドがもはや法上の使用要件を満たさない下限としての法上のトレッド摩耗限度インジケータの半径方向内側に位置した溝の部分に対応している。一般に、複数個のタイヤトレッド摩耗限度インジケータが1本又は2本以上の溝内に配置されている。これらインジケータの半径方向外側部分は、溝の壁とこの溝の底部との間の移行部に対応している。
【0014】
ブロックは、トレッド上に形成された隆起要素であり、この隆起要素は、空所又は溝によって画定され、この要素は、側壁及び接触フェースを有し、接触フェースは、走行中、路面に接触するようになっていて、トレッドのトレッド表面の一部をなす。
【0015】
リブは、トレッド上に形成された隆起要素であり、この隆起要素は、2本の溝によって画定されている。リブは、2つの側壁及び接触フェースを有し、接触フェースは、路面に接触するようになっている。
【0016】
半径方向は、タイヤの回転軸線に垂直な方向を意味している(この方向は、トレッドの厚さの方向に一致している。
【0017】
軸方向は、タイヤの回転軸線に平行な方向を意味している。
【0018】
周方向は、中心が回転軸線上に位置する任意の円の接線の方向を意味している。この方向は、軸方向と半径方向の両方向に垂直である。
【0019】
本発明は、トレッドの溝の共鳴騒音を減少させる装置を得ようとするものであり、この装置は、溝の底部に固定された少なくとも1つの可撓性ブレードを有し、かかる可撓性ブレードは、共鳴騒音を減少させる上での且つかかる装置を備えたトレッドが摩耗している中にあってもその全体を通じて、しかも特に溝の深さの少なくとも50%が摩滅した後でも液体を排出する上でのその有効性を維持する。
【0020】
この装置の具体化は、任意形式の溝が周方向に差し向けられているにせよ横方向に差し向けられているにせよ斜めに差し向けられているにせよいずれにせよ、任意形式の溝にとって有利であると言えることは注目されるべきである。
【0021】
この目的のため、本発明の要旨は、タイヤ用のトレッドであって、トレッドは、路面に接触するようになったトレッド表面を有し、トレッドは、互いに向かい合った2つの壁によって画定された幅W及び深さPの少なくとも1本の溝を有し、壁は、溝底部によって互いに接合され、溝底部は、壁を互いに連結すると共に法上のトレッド摩耗限度インジケータの下に半径方向に位置する溝の部分に相当し、
少なくとも1本の溝は、かかる溝が接触パッチを通過しているときにかかる溝を少なくとも部分的に閉鎖する少なくとも1つの閉鎖装置を有し、各閉鎖装置は、液体の循環の影響下で撓むことができるのに適した厚さの少なくとも1つの可撓性ブレードを有し、少なくとも1つの可撓性ブレードは、溝の底部に固定され、
平均厚さEの各可撓性ブレードは、走行中に路面に接触するようになった接触壁と、各々が溝を画定する壁に向いた端壁と、ブレードの平均厚さEに等しい距離だけ互いに隔てられた側壁とで画定されている。
【0022】
このトレッドは、溝の底部と閉鎖装置の各ブレードとの間には少なくとも1つの通路が形成され、水で覆われた路面上を走行しているときにこの通路が溝内において水の定められた流れを保証するようになっており、この定められた流れは、各ブレードが撓む必要なく起こり、そしてかかる通路がトレッド摩耗レベルとは無関係にかかる水の定められた流れの保証を行うようになっていることを特徴とする。
【0023】
本発明との関連において、「通路」という用語は、一部が溝の底部によって境界付けられ、一部が可撓性ブレードの壁によって境界付けられた空間を意味するものと理解されたい。
【0024】
新品状態における可撓性ブレードの接触壁の長さがL1で示され、溝の底部とのこの同じブレードの連結長さがL2で示される場合、このブレードと溝の底部との間に形成される通路の長さLpは、差(L1−L2)に等しいものとされる。通路のこの長さLpは、少なくともL1の30%に等しく且つ多くともL1の70%に等しい。好ましくは、通路の最大高さHpは、少なくとも法上のトレッド摩耗限度の高さに等しい。
【0025】
各可撓性ブレード上に形成された通路は、任意の幾何学的形状を取ることができる。この通路を画定する可撓性ブレードの部分は、直線状の輪郭形状、円形の輪郭形状又は任意他の適当な幾何学的形状を辿ることができる。可撓性ブレードのこの部分と溝の底部との連結部は、特にこれら部分に適当な曲率半径を与えることによって応力の集中を制限するよう構成されるのが良い。
【0026】
本発明の変形形態では、閉鎖装置は、事実上、溝の断面全体を閉じる単一の可撓性ブレードで形成され、この単一の可撓性ブレード自体と溝の底部との間には少なくとも1つの通路が形成されている。
【0027】
変形形態では、この単一のブレードは、溝の底部とのその連結長さL2の各側に設けられた溝を有する。
【0028】
本発明の別の変形形態では、各可撓性ブレードは、通路を有し、これら2つの通路は、2つの可撓性ブレードで形成された騒音減少装置を通って延びる単一のオリフィスを形成するよう互いに補足し合うのが良い。
【0029】
各通路は、トレッド摩耗インジケータの高さに少なくとも等しい高さを有する。
【0030】
通路により形成された開口部の全表面積は、新品状態において、閉鎖装置が形成されている溝の断面の表面積の多くとも30%に等しい。開口部のこの同じ全表面積は、この溝が本発明の出願時点における乗用車用タイヤに関する法上のトレッド摩耗限度に対応した1.6mmの高さに制限される場合、溝の断面の表面積の少なくとも30%に等しい。
【0031】
本発明により、各ブレードの曲げ剛性は、これがたとえ例え摩耗につれて次第に増大しても、その高さが減少するので、それにもかかわらず、雨天における走行時に液体の最小の流れを可能にするのに適したままであり、トレッド摩耗レベルとは無関係にそのようになる。
【0032】
注目されるべきこととして、摩耗がトレッドの高さの50%超になった後、溝内の共鳴と関連した騒音の問題は、相当軽減され、従って、もはや騒音減少装置を必要としない。
【0033】
溝底部との各ブレードの連結のための表面積の減少を考慮に入れるため、この減少は、このブレードと溝の底部との間に少なくとも1つの通路が存在していることの結果であり、この断面積を少なくとも局所的に増大させることが有利であり、その目的は、ブレードの成形を容易にすることにある。また、表面積のこの局所的増大により、各ブレードとブレードが成形される溝の底部との連結部が補強され、これは、曲げサイクルに耐えるブレードの能力の観点から有益である。
【0034】
本発明の特徴及び他の利点は、非限定的な例により本発明の内容の実施形態の取り得る形態を示す添付の図面を参照して以下に与えられる説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の2つの可撓性ブレードを有する閉鎖装置の一形態を示す図であり、これらブレードが互いに向かい合って配置されている状態を示す図である。
【
図3】本発明の2つの可撓性ブレードを有する閉鎖装置の別の形態を示す図であり、これらブレードが互いにずらされている状態を示す図である。
【
図5】ブレードの断面の表面積がその高さ全体にわたって一定である形態を示す図である。
【
図7】本発明の単一のブレードを有する閉鎖装置の別の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本明細書に添付された図中、同一の参照符号は、同じ種類が構造的であれ又は機能的であれいずれにせよ同一種類の要素をこれら参照符号が示す場合、本発明の変形形態を説明するために用いられる場合がある。
【0037】
図1は、本発明の2つの可撓性ブレードを有する閉鎖装置の一形態を示す図であり、これらブレードは、互いに向かい合って配置されている。
【0038】
図1は、サイズ225/55R17のタイヤに設けられた本発明のトレッドの部分図を断面で示している。この
図1は、トレッドの2つの隆起要素2,3によって境界付けられた溝1を示し、この溝1は、実質的に、トレッドが取り付けられたタイヤの周方向に延びている。幅W(新品状態においてトレッド表面10上で測定される)が13mmに等しく且つ深さPが7.5mmに等しいこの溝1は、互いに向かい合った第1の側壁11と第1の側壁12及びこれら側壁を互いに接合した溝底部10によって境界付けられている。トレッドは、走行中、路面と接触関係をなすようになったトレッド表面10を有する。以下の説明において、溝の底部は、トレッドが国の規則によって定められると共に一般にトレッド摩耗限度インジケータによって指示される法上の限度まで摩耗した後に残っている溝の部分に対応している。
【0039】
この溝1は、溝内に成形により設けられた複数個の可撓性障害物によって形成された騒音減少装置を有する。各障害物は、各々が溝1の断面の半分を占める2つのブレード2,2′から成り、これらブレード2,2′は、互いの延長部をなし、各ブレードは、他方のブレードの端壁と接触状態にある端壁を有する。各ブレード2,2′は、溝1の底部13から突き出ている。
【0040】
各可撓性ブレード2,2′は、水が雨天での走行時に溝1に沿って流れることができるようにすると同時に乾いた路面上での走行時に(乾いた路面上における走行条件下においては、空気圧力は、これらブレードが撓むようにするのに足るほど高くはない)空気の循環に対して障害物として作用する目的で、各ブレード2,2′が各ブレード2,2′と溝の底部13との接続部にほぼ沿って軸線回りに容易に撓むことができるのに適した厚さ(この特定の場合、0.6mmに等しい)を有する。
【0041】
第1のブレード2は、一方が溝1を画定している壁11に向き、他方が第2の可撓性ブレード2′の端壁21′に向いた2つの端壁21,22と、路面に接触するようになった接触壁20と、ブレード2の厚さEに等しい距離だけ互いに隔てられた側壁25,26(
図2に見える)とで画定されている。この第1のブレード2は、壁23によって溝の底部13に連結されている。第1のブレード2と溝の底部13との間には、タイヤトレッド摩耗限度に実質的に等しい最大高さHpの三角形の形をした通路230が形成されている。
【0042】
各ブレード2,2′は、6mmに等しい幅L1を有し、この幅L1は、新品状態(即ち、ブレードの走行前の状態)におけるブレードの接触壁上で溝1の幅Wの方向に測定される。溝底部とのブレード2の連結長さは、L2で示され、この長さL2は、この特定の場合、長さL1の約50%に等しい。
【0043】
この第1のブレード2と組み合わせて同じ幾何学的形状の第2のブレード2′が形成され、この第2のブレードは、同様に、長さL2に等しい長さによって溝の底部に連結されている。このブレードは、同様に、接触壁20′を有し、接触壁20′は、第1のブレードの接触壁20と同様、新品状態においてトレッドのトレッド表面10に対して僅かにずらされている。この第2のブレード2′と溝の底部との間には、別の三角形の通路230′が形成されている。
【0044】
図示の方式では、第1のブレード2及び第2のブレード2′は、各々がトレッドを成形した後に互いに向かい合った状態で位置決めされる端部分22,21′を有し、これら端部分が互いに接触関係をなし又はほぼ接触関係をなすよう形成されている。
【0045】
この変形形態では、2つのブレード2,2′の組み合わせは、断面積が各通路230,230′の断面積の和に実質的に等しいオリフィス3を形成している。
【0046】
図1の溝1の一部の平面図である
図2では、同じ厚さEの2つのブレード2,2′が端と端を突き合わせた状態で位置決めされていて、これらブレードが溝の幅Wをほぼ完全に閉じるようになっていることが示されている。可撓性ブレードと溝を画定している壁との間には適当な隙間が維持されているに過ぎない。
【0047】
図3は、本発明の閉鎖装置の別の形態を示しており、この装置は、2つの可撓性ブレード2,2′を有し、これらブレードは、溝1の主要方向に互いにずらされており、これらブレードは又、新品状態ではトレッド表面10から僅かに引っ込められている。溝の主要方向は、水で覆われた路面上を走行しているときに水の流れる溝の最大寸法方向に一致している。トレッド摩耗インジケータ4が溝の底部13に成形により設けられた突起として示されている。形成されたオリフィス3の高さHpは、トレッド摩耗インジケータ4の高さよりも大きいことが見て分かる。
【0048】
各ブレードは、
図1を参照して説明した装置のブレードとほぼ同じであり、唯一の違いは、互いに対するブレードのレイアウト及び各ブレードの長さL1にある。確かに、各ブレードは、新品状態において、溝の幅Wの半分よりも大きいその接触壁の長さL1を有している。この変形形態では、形成されるオリフィス3は、曲線上の輪郭の壁によって境界付けられている。
【0049】
図3に示されたこの溝1の一部の平面図である
図4では、溝の主要方向XX′に互いにずらされた2つのブレード2,2′を観察することが可能である。トレッド摩耗限度をユーザに示すために溝の底部13に成形により形成されたトレッド摩耗インジケータ4を見て取ることができる。図示のように、オリフィス3の最大高さは、溝の底部13から測定したインジケータ4の高さよりも大きいように設計されている。かくして、タイヤ摩耗が限度に近づいているときでも、ブレードも又摩耗し、従って、ブレードの新品状態のときの曲げ剛性よりも高い曲げ剛性を有する。トレッド摩耗インジケータ4の高さLよりも大きい最大高さHpを有するオリフィス3の存在は、ブレードが容易には撓むことがない場合であっても水が溝内で流れることができるようにする一手法である。この同じ
図4は、水が溝内で流れているときに撓み後におけるブレード2,2′の各々により取られた位置を示している(点線で画かれた線が参照符号200,200′で示されている)。
【0050】
図5は、溝1の断面が単一のブレード2を有する騒音減少装置によって閉じられる別の形態を示している。溝1は、側壁11,12によって画定され、これら側壁はこれら自体、底部13によって互いに連結されている。これら側壁は互いに、僅かであるが「ゼロ」ではない角度をなす。ブレード2は、接触壁20及び幾分側壁を辿る端壁21,22を有し、後には、水で覆われた路面上を走行しているときにブレードが水圧の作用を受けて撓むことができるのに足るほどの隙間は残されている。初期状態でトレッド表面10から僅かに引っ込められたこのブレード2は、連結壁23によって底部13に連結され、連結壁23は、半円形の形をした通路3によって互いに隔てられた状態の2つの互いに離隔した部分を有する。
【0051】
さらに、
図5のVI‐VI線矢視断面図である
図6で理解できるように、ブレード2は、初期条件における接触壁と溝の底部に形成された通路3の最大高さHpに対応した高さ位置との間にのみ一定の厚さを有する。具体的に説明すると、ブレード2の断面の表面積は、その高さ全体にわたって一定であり、この結果を達成するため、通路3を画定している部分に関してブレードの厚さを変化させて溝の底部13のところで測定されたブレードの断面の表面積がこのブレードに沿う任意他の高さ位置のところで取った断面の任意他の表面積に等しくなるようにすることが必要である。このようにすると、厚さの増大は、溝の底部13との連結部のところで生じ、この厚さは、次に、ブレードと底部13との間に形成された通路の最大高さHpまで次第に減少する。
【0052】
有利には、高さの増大は、ブレードの高さに沿って考慮した高さ位置がどのようなものであれ、一定又はほぼ一定であるブレードの断面の表面積に好適である。かくして、この特徴により、この種のブレードを成形するために用いられるモールドのキャビティにトレッドを構成するゴムコンパウンドを充填することは、満足の行くほどに容易である。
【0053】
図7に示された本発明の変形形態では、閉鎖装置は、作られた2つのオリフィス31,32を備えた単一のブレードを有している。
【0054】
溝1内の共鳴騒音を減少させる装置は、この溝1の断面を横方向に閉鎖する単一のブレード2で形成されている。このブレードは、新品状態において長さL1を有していて路面に接触するようになった接触壁20及び溝1を画定している2つの壁11,12に向いた2つの端壁21,22を有する。ブレード2は、長さL2を有する壁23によって溝の底部13に連結されている。可撓性ブレード2と溝の底部13とのこの接続部の各側には、同じ寸法の2つの通路201,202が形成されている。各通路は、ブレードの最大長さL1の25%を占める長さLp及び新品状態で測定した可撓性ブレードの高さHの20%に等しい高さHpを有する。この特定の場合、各通路201,202の高さHpは、トレッド摩耗限度インジケータ4の高さWiよりも僅かに大きい。
【0055】
図示の方式では、通路201,202によって形成された開口部の全表面積は、閉鎖装置が形成されている溝の新品状態における断面の全表面積の20%に等しい。開口部のこの同じ全表面積は、この場合、1.6mmに等しく且つトレッド摩耗限度の高さに一致した高さWiに制限された溝の断面の表面積の50%に等しい。
【0056】
本発明を一般的に且つ多くの形態によって説明したが、理解されなければならないこととして、本発明は、図示すると共に説明したこれらの形態にのみ限定されるものではない。本明細書において説明した種々の形態は、達成しようとする目的に合うよう、特に、説明した種々の装置を同一のタイヤ内に用いることによって当業者によって互いに組み合わせ可能である。
【0057】
明らかなこととして、本発明の全体的範囲から逸脱することなく種々の改造例を想到することができる。具体的に言えば、本明細書において説明した形態は全て(
図7の形態を除く)、接触壁が新品状態においてトレッド表面に対して内側に向かって僅かにオフセットされたブレードを示しているが、これらブレードを同じ高さ位置に又は同じトレッド表面の外側に向かって僅かにオフセットした状態で提供することは、問題なく可能である。本発明の騒音減少装置を周方向又は斜めに差し向けられた溝、即ち、全体的して周方向とゼロではない角度をなす溝内に使用することができる。