(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012754
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】組み立てられた車軸ブレーキディスク
(51)【国際特許分類】
F16D 65/12 20060101AFI20161011BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20161011BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20161011BHJP
B23K 31/02 20060101ALI20161011BHJP
B61H 5/00 20060101ALI20161011BHJP
B23K 103/04 20060101ALN20161011BHJP
【FI】
F16D65/12 R
F16D65/12 B
F16D65/12 U
B23K26/38 Z
B23K1/00 330N
B23K31/02 310B
B23K31/02 310C
B61H5/00
B23K103:04
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-546384(P2014-546384)
(86)(22)【出願日】2012年11月13日
(65)【公表番号】特表2015-508477(P2015-508477A)
(43)【公表日】2015年3月19日
(86)【国際出願番号】EP2012072472
(87)【国際公開番号】WO2013087322
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2015年5月7日
(31)【優先権主張番号】202011052265.2
(32)【優先日】2011年12月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510082916
【氏名又は名称】フェイフェレイ トランスポート ヴィッテン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン ヴルス
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス メーラン
【審査官】
杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】
実開平06−035690(JP,U)
【文献】
特開2001−280381(JP,A)
【文献】
米国特許第03933228(US,A)
【文献】
米国特許第03295641(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0135359(US,A1)
【文献】
特開2008−291997(JP,A)
【文献】
特開昭58−174734(JP,A)
【文献】
特表2009−501880(JP,A)
【文献】
西独国特許第1132950(DE,B)
【文献】
独国特許出願公開第19543799(DE,A1)
【文献】
米国特許第01879744(US,A)
【文献】
仏国特許出願公開第2745349(FR,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第2028387(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00 − 71/04
B61H 5/00
B23K 1/00
B23K 26/38
B23K 31/02
B23K 103/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのハブ(10)と2つの摩擦リング(11,12)とを備え、前記摩擦リング(11,12)は互いに間隔を開けて平行に配置され、前記摩擦リング(11,12)の間に半径方向外方に伸展するアーム(14)をもつ星形の挿入要素(13)を備え、前記挿入要素(13)は前記ハブ(10)と共に複数のねじ接続部(15)を備え、前記挿入要素(13)は穴(16)を備え、前記ハブ(10)は穴(17)をもつ半径方向外側を向く突起(20)を備え、前記ねじ接続部(15)は少なくとも前記挿入要素(13)の前記穴(16)を通りかつ前記突起(20)の前記穴(17)を通るねじ要素(18)を少なくとも備える形状となる、車軸ブレーキディスク(100)。
【請求項2】
前記摩擦リング(11,12)が前記挿入要素(13)に行うろう付けは真空中もしくは保護ガス雰囲気下の高温はんだ付けであることを特徴とする請求項1に記載の車軸ブレーキディスク。
【請求項3】
前記挿入要素(13)は内側に前記ハブ(10)が配置される開口(19)を備えることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の車軸ブレーキディスク。
【請求項4】
少なくとも1つのねじ接続部(15)が、前記摩擦リング(11,12)を備えた前記挿入要素(13)を前記ハブ(10)にポジショニングするために、スライドブロック(21)を、備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車軸ブレーキディスク。
【請求項5】
前記ねじ接続部(15)はナット(22)を備え、ナット(22)が張力をかける止め輪(23)を備えることで特徴づけられる請求項1〜4のいずれかに記載の車軸ブレーキディスク。
【請求項6】
前記挿入要素(13)は平坦な拡張部と前記ハブ(10)が配置される開口(19)が挿入された基本部(24)とを備え、前記基本部(24)が備える前記アーム(14)は半径方向外方に伸展し、半径方向に伸展する前記アーム(14)の側面が湾曲することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の車軸ブレーキディスク。
【請求項7】
前記挿入要素(13)は、3〜30のアーム(14)を備え、該アーム(14)には幅の広い形状のアーム(14)と幅の狭い形状のアーム(14)とがあることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の車軸ブレーキディスク。
【請求項8】
前記挿入要素(13)は前記ハブ(10)が配置される開口(19)が挿入された基本部(24)を備え、複数の前記アーム(14)のうち一部は前記基本部(24)と切り離されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の車軸ブレーキディスク。
【請求項9】
前記挿入要素(13)はお互いの平面の部分で隣接する2つの部分要素(13a,13b)で構成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の車軸ブレーキディスク。
【請求項10】
穴(17)をもつ半径方向外側を向く突起(20)を有する1つのハブ(10)と互いに間隔を開けて平行に配置された2つの摩擦リング(11,12)とを備える車軸ブレーキディスク(100)の製造方法であって、
穴(16)及び半径方向外方に伸展するアーム(14)をもつ星形の平坦な前記挿入要素(13)を作成する段階と、
前記摩擦リング(11,12)の間に前記挿入要素(13)が配置されるように、前記挿入要素(13)の平面の側に前記摩擦リング(11,12)を接合する段階と、
少なくとも前記挿入要素(13)の前記穴(16)を通りかつ前記突起(20)の前記穴(17)を通るねじ要素(18)を少なくとも備える形状である複数のねじ接続部(15)によって前記挿入要素(13)を前記ハブ(10)に取り付ける段階と、を少なくとも含む製造方法。
【請求項11】
前記摩擦リング(11,12)を前記挿入要素(13)に行うろう付けは真空中あるいは保護ガス環境下での高温はんだ付けで行う請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記挿入要素(13)は2つの部分要素(13a,13b)で構成され、2つの部分要素(13a,13b)を互いにろう付けで接合する方法で、前記摩擦リング(11,12)と共に前記挿入要素(13)にろう付けを行う請求項10もしくは11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記摩擦リング(11,12)を前記挿入要素(13)に接合するために、前記摩擦リング(11,12)を前記挿入要素(13)にポジショニングする方法を備え、前記摩擦リング(11,12)に設けられた穴(26)と前記挿入要素(13)に設けられた穴(27)とを締め付けピン(25)を用いてポジショニングする、請求項10〜12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
前記挿入要素(13)は半径方向外方に伸展する複数の前記アーム(14)と前記ハブ(10)が配置される開口(19)が挿入された基本部(24)とを備え、複数の前記アーム(14)のうち一部は前記基本部(24)から切り離される、請求項10〜13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
前記挿入要素(13)は2つの部分要素(13a,13b)で構成され、前記摩擦リング(11,12)と前記部分要素(13a,13b)との両方もしくは一方は板要素から作られ、熱と研磨剤との両方もしくは一方の切断方法、レーザー切断法、及び水ジェット切断法のいずれか1つの方法で作られる請求項10〜14のいずれかに記載の製造方法。
【請求項16】
前記挿入要素(13)は2つの部分要素(13a,13b)で構成され、前記摩擦リング(11,12)と前記部分要素(13a,13b)との両方もしくは一方は熱処理され、ろう付けと併せて熱処理が行われる請求項10〜15のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1つのハブと、互いに間隔を開けて平行に配置された2つの摩擦リングとをもつ組み立てられた
車軸ブレーキディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
組み立てられた
車軸ブレーキディスクは特に鉄道車両に使用され、
車軸ブレーキディスクの形成には、個別の構成要素を多数集めて組み立てることができる。
【0003】
組み立てられた
車軸ブレーキディスクは、少なくとも2つの構成要素から組み立てられる
車軸ブレーキディスクであると、まず第一に理解される。組み立てられた
車軸ブレーキディスクは、特に2つの摩擦リングをもつブレーキディスクの事を意味し、それら摩擦リングは一体に形成されず、例えばキャスティング法で知られる方法で同一な構造となるよう、それらを個別に作り、好ましくは接合技術を用いて摩擦リングがペアとなるようにさらなる他の要素を用いて組み立てられる。さらなる一つの(独立した)部品であるハブをペアの摩擦リングに組み込むことができる。
【0004】
例えば、
車軸ブレーキディスクは、2つの摩擦リングが互いに間隔を開けて平行に設けられているハブを備えていることが知られている。2つの摩擦リングの間に、軸方向に働くパッドの接触圧力による力を吸収するようデザインされた接続要素が設けられうる。特に重い鉄道車両の場合は、ブレーキの連結部分により、ブレーキパッドを介してペアの摩擦リングに働くパッドの接触圧力がとても強い力になりうる。このため、2つの摩擦リングの間に接続要素を備える
車軸ブレーキディスクでは、接続要素が充分固くかつ機械的に高い弾性をもつ必要が生じる。
【0005】
さらに放熱性が良い事が必要となるが、それは多くの場合には空気の流れが摩擦リングの間で発生することで満たされ、それには例えば、
車軸ブレーキディスクのハブの側で軸方向の空気が流れ、それがさらに放射状に外側に流れることが挙げられる。ここで、空気が通りぬけることでブレーキディスクは摩擦リングの間で冷却されることがあり、回転軸周りの
車軸ブレーキディスクの回転でこの空気の流れが生じる。特にキャスティング法で作られた鋳造
車軸ブレーキディスクの場合、摩擦リング間のキャスト構造から、
車軸ブレーキディスクを通る摩擦リングの放射状の空気の流れをシミュレーションすることが知られている。
【0006】
特に、セラミックス材料でできた摩擦リングを備えた組み立てられた
車軸ブレーキディスクがセラミックスブレーキディスクとして知られているが、一般的には炭素材料が摩擦リングに用いられる。非金属ブレーキディスクのハブはしばしば鋼材で作られるが、セラミックスもしくは炭素材料と摩擦リングを受ける金属のハブとの間が熱で歪まないように、複雑な接続の形状が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許第19507922(C2)号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第19543799(A1)号明細書
【0008】
ハブに互いに間隔を開けて平行に配置される2つの摩擦リングをもつ組み立てられた
車軸ブレーキディスクが特許文献1で知られている。摩擦リング内の冷却を強化するためにファン挿入部材が摩擦リング間に置かれている。しかしながら、ブレーキ操作によって軸方向に働くパッドの接触圧力による力を受けるためには、示されているファン挿入部材は不適切であり、それは、ブレーキパッドを介してブレーキキャリパーから摩擦リングに働く軸方向の力が摩擦リングとハブとの間の連結部分で受け止められることになる。このような理由で、
車軸ブレーキディスクの形状は機械的負荷能力がやや弱いものとなる。
【0009】
さらに特許文献2によって、他の組み立てられた
車軸ブレーキディスクが知られており、それは炭素材料で作られた摩擦リング間に、軸方向に働くパッドの接触圧力による大きな力を吸収するための連結要素が設けられている。摩擦リングがセラミックスあるいは炭素材材料で作られている組み立てられた
車軸ブレーキディスクが知られている。炭素材料で作られた摩擦リング間で、一般に鉄製のもので単純な方法では使われることができないハブを確実につなげるため、組み立てて作られる
車軸ブレーキディスクが特に使われる。その結果、摩擦リングとハブとの間のつなぎ目で、ねじ嵌め、圧力嵌め、あるいはフォームフィット嵌め技術が用いられ、鉄製のハブとセラミックスあるいは炭素材料で作られる
摩擦リングとの間で、しばしば異なる熱膨張を相殺するように構成要素が配置され、これらは例えばナットで形成される。
【0010】
特に摩擦リング間において剛性かつ高い弾力性で固体による接続の場合は、摩擦リング間の空間充填度が高いことで
車軸ブレーキディスクの通風が妨げられるという欠点が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それゆえ本発明の目的は、高い機械的負荷能力をもち、かつ内部通風が良い摩擦リングをもつ組み立てられた
車軸ブレーキディスクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
組み立てられた
車軸ブレーキディスクに基づいて、この目的は先行文献を鑑み、請求項1記載の特徴を有し、かつ、請求項
10記載の特徴を有するハブ手段と摩擦リング手段とによって達成される。本発明のさらなる応用は、従属請求項に記載されている。
【0013】
摩擦リングの間に半径方向外方に伸展したアームを有する星形の形態の挿入要素が配置されるという技術的原理を本発明は含む。
【0014】
本発明における、半径方向外方に伸展したアームを有する星形の形態の挿入要素の配置によって、高い機械的回復力をもつ
車軸ブレーキディスクが提供され、当該挿入要素は固体で形成され、望ましくは鋼鉄材料で形成されるのが望ましい。もし
車軸ブレーキディスクが機能し、パッドの接触圧力が摩擦リングに働く時、挿入要素を内包する摩擦リングの固体構造でこの力は大きな弾性ゆがみなしに吸収され得る。一方、
車軸ブレーキディスクが軸方向に高い剛性をもちつつ、挿入要素のアームが回転する事で同時に
車軸ブレーキディスクの通気性が良く、挿入要素の内部通風が良くなるようデザインされている。
【0015】
さらに、摩擦リング間の挿入要素にさらに設置される支持ボルトが供給されることができる。ここで、支持ボルトは挿入要素に接続される必要はなく、特に挿入要素の腕に接続される必要はない。例えば、支持ボルトは挿入要素の腕の間に設置しても良く、摩擦リング間で、腕によって生じる半径方向の空気の流れに加えて、周方向の空気の流れを生み出すものが好ましい。ここで支持ボルトは、例えば円筒状で、冷却機能と同時に、摩擦リングに働くパッドの接触圧力による力を吸収に寄与する支持の機能をもつことができる。
【0016】
摩擦リングは鋼鉄材料で作られ得るのが好ましく、ところが一方、摩擦リングには炭素材料も使う事ができる。特に望ましくは、摩擦リングが耐熱鋼材で作られ、挿入要素は低価格の熱処理鋼を使うことができる。組み立てられた
車軸ブレーキディスクの最小限のコストで迅速な生産のようにシンプルに製作されるため、挿入要素に摩擦リングをはんだ付けすることでなされることも本発明のさらなる利点である。はんだはペースト状もしくは薄片状で挿入要素と摩擦リングとの接合箇所に配置されることができる。はんだ付け法はろう付けでし、高温のはんだ付けが特に好まれ、ここでの高温のはんだ付けは真空もしくは保護ガス雰囲気中で行うことができる。高温のはんだ付けが保護ガス雰囲気中で行われる場合には、保護ガスには特に窒素が用いることができる。特に支持ボルトと摩擦リングの内側の接続もはんだ付け接続ででき、支持ボルトが摩擦リングの穴に保持されることなしに摩擦リングの内側の面に直接的に設置できる。
【0017】
挿入要素もしくは支持ボルトと摩擦リングとの接続で、はんだ付け以外の接続技法は、例えば、ねじ接続、リベット接続、溶接接続でもできる。
【0018】
挿入要素と摩擦リングとを組み合わせた摩擦リングのペアは、ハブを取り
つけずに独立して作ることができる。特に、ハブとは独立して交換可能な部品として摩擦リングは提供されるため、ハブを取り付けられたものより利点があり、例えば鉄道車両の車軸上に取り付けられ得るものは、古い摩擦リングのペアを新しい摩擦リングのペアに交換できる。
【0019】
さらなる利点として、摩擦リングのペアとハブとの間の接続は、挿入要素とハブとの接続でなしうる。挿入要素とハブとの接続は、例えば複数のねじ接続部でなされ、ハブが配置されてかつハブが挿入要素と接続する開口を挿入要素は内側に備える。
【0020】
ねじ止めがなされるように、挿入要素は多数の穴を有すことができ、ハブには穴を有する半径方向外側を向く多数の突起を備えることができる。ねじ止めをするために、挿入要素の穴とハブの突起内の穴との両方をねじでつなぐねじ要素を用いることができる。例えば、ハブと挿入要素の穴との間で円周上に等間隔離れた9箇所でねじで接続されうる。
【0021】
さらに利点をもつように、摩擦リングを備える挿入要素をハブにポジショニングするためのねじ接続部はスライドブロックと共に、1箇所、より好ましくは複数個所、特に好ましくは3箇所に備えられ得る。スライドブロックの一部分は、ハブの突起を切削して作られた窪みに接することができ、スライドブロックの他方の部分は、挿入要素に設けられたセンタ穴に挿入され得る。あるいは、ポケットの内側で挿入要素上にねじ溝ナットを挿入するのも好都合である。
【0022】
さらに、挿入要素の穴とハブの突起の穴とをねじ要素が貫通する時に、ねじ要素にねじ接続するナットをねじ接続部に含むのも有利である。ナットが張力をかける止め輪の使用も有利である。止め輪は輪の形状にすることができ、ねじ要素が通る多くの穴が設けられる。最後に、ナットはねじ要素の末端にねじ止めすることができ、止め輪に張力をかけるが、特に押さえばね板を使う。
【0023】
挿入要素は平坦な拡張部を有することができる。挿入要素の厚さは、例えば摩擦要素の約2倍の厚さとすることができる。
車軸ブレーキディスクの回転軸が中心に設置される円形の開口が挿入要素の中央に設けられることができる。必然的に、挿入要素は基本部から形成されることができ、当該基本部から複数のアームが半径方向外方に伸展する。必然的に、挿入要素は星形となり、
車軸ブレーキディスクの軸方向に働くパッドの接触圧力を吸収するためにアームは摩擦リング間に必要不可欠な支持体となる。摩擦リングもハブ側に開口をもち、そこにハブが挿入される。ここで、挿入要素の基本部の最大の直径を、摩擦リングの中央の開口よりも小さくすることができる。従って、摩擦リング間には挿入要素のアームのみが伸展している。
【0024】
例えば、挿入要素は、6〜30、好ましくは12〜24、そして特に好ましくは18のアームを備えることができ、アームには幅の広い形状のアームと幅の狭い形状のアームとを備えることができる。特に挿入要素の基本部に幅の広いものと幅の狭いものとが交互に配置される。それゆえ、幅の広いアームの両隣りには幅の狭いアームが隣接しており、幅の狭いアームの両隣りには幅の広いアームが隣接している。従って、9つの幅の狭いアームと9つの幅の狭いアームが挿入要素の基本部に配置され得る。
【0025】
特に、
車軸ブレーキディスクの内部の通風の通気を良くするために、一部の複数のアーム、特に幅の狭いアームが、基本部から離れている事は利点となる。従って、挿入要素を備える摩擦リングのペアとハブとの間を接続できるのは、幅の広いアームだけである。アームと基本部から離れた構造をとるには、基本部の一部を削除することで形成されるが、それは例えばアームと挿入要素の基本部の中央の開口との間で伸展して橋渡しをしている部分を取り除くことでなされる。その橋渡しをしている部分を取り除くには、例えばフライス加工でなされ、レーザービーム切断法や水ジェット切断法でもなされる。結果的に、幅の狭いアームは摩擦リングの外側から摩擦リングの内側まで伸展でき、幅の広いアームは摩擦リングの外側からハブの突起の接合箇所まで伸展できる。
【0026】
2つの部分要素を互いの平面で接合し挿入要素を形成することができ、接合には特にはんだ付けで実現される。挿入要素の半分だけの厚さの基材を部分要素が含むことができ、2つの部分要素もろう付け法あるいは高温はんだ付け法により互いが接合されうる。
【0027】
1つのハブと2つの摩擦リングとを備え、2つの摩擦リングは互いに間隔を開けて平行に配置された
車軸ブレーキディスクの製造方法にも本発明の目的がある。ここで、製造段階は、半径方向外方に伸展している複数のアームをもつ星形で平坦な挿入要素を作成する段階と、摩擦リングの間に挿入要素が配置されるように摩擦リングを挿入要素の平面の側に接合する段階と、そしてさらに、挿入要素をハブに接合する段階が、少なくとも想定される。
【0028】
摩擦要素を挿入要素に接合するには、はんだ付けでなしうり、好ましくはろう付けで、特に好ましくは真空中あるいは保護ガス環境下での高温はんだ付けで行われる。特に挿入要素と摩擦リングとの両方もしくは一方は熱処理がされうり、熱処理は特にろう付けの段階もしくは真空中あるいは保護ガス環境下での高温はんだ付けの段階と組み合わせて行うことができる。
【0029】
最初に、摩擦リングと挿入要素との少なくとも一方は、熱あるいは研磨剤を用いた切断方法、特にレーザー切断法もしくは水ジェット切断法で金属板から切り取られ得る。ここで、同一の構造をもつ2つの部分要素が、お互いの平面で平行に設置されて挿入要素が作られ得る。そして、部分要素もはんだ付けでお互いに接合され得る。あるいは、直径640mmの円形の材料を適切な厚さに鋸で切断して作られる。
【0030】
摩擦リングと挿入要素を作る時、レーザー切断法もしくは水ジェット切断法で摩擦リングと挿入要素に穴を備えることができる。摩擦リングと挿入要素とを接合して1つに組み合わせる際にはこれらの穴に締め付けピンを通すことができる。その結果、挿入要素上の摩擦リングの心出しがされる。挿入要素の部分要素の接合部分および摩擦リングと挿入要素の接合部分にはんだを配置した後、真空炉内に挿入要素と摩擦リングとを1つに組み合せたものが位置することができる。これは、摩擦リング及び挿入要素が例えば1050〜1070℃といった、はんだが溶ける温度に加熱され、はんだが溶けて全ての接合箇所が接合されるまでその温度は保たれることでなされる。そして、挿入要素及び摩擦リングを1つに組み合せたものは、独立したものとして扱いうる摩擦リングがペアに形成されており、真空炉内、例えば窒素ガスを用いて冷却され、焼きなまされる。その結果、はんだ付けの過程に伴って必要な熱処理が行われている。ここで、すべての過程は真空炉内で行うことができる。あるいは、はんだ付けの過程のみ真空炉内で行うことができ、続いて、摩擦リングのペアを別の炉に移して熱処理をし、冷却速度を上げるためにオイルといった冷却媒体を用いることができる。冷却媒体には、水や高分子あるいは他の媒体も使用可能である。その結果、摩擦リングだけでなく挿入要素も堅実な骨格構造(フレームワーク)を持つことができ、これは
車軸ブレーキディスクに特に有利な材料特性を与える。はんだ付けの後もしくは熱処理後、摩擦リングのペアは決められた厚さになるように、摩擦リングの外表面が機械加工され得る。締め付けピンの長さは摩擦リングのペアの厚さよりも短くしうる。あるいは、摩擦リングのペアを機械加工して締め付けピンの突き出た部分を削除でき、もしくは、はんだ付けのプロセスの後に締め付けピンは再び摩擦リングから取り除くことができる。
【0031】
半径方向外方に伸展する複数のアームが配置された基本部を挿入要素は備える事ができ、さらに、特に摩擦リングのペアを製造する最後の段階で、特に機械切断のプロセスで基本部を切断して、多くのアームのうち一部のアームは基本部と切り離されうる。特に、幅の狭いアームが摩擦リングの外側から摩擦リングの内側へと半径方向に伸展するだけの構造となるように、幅の狭いアームの付け根の基本部に連結している部分を切削し、幅の狭いアームは基本部と切り離されうる。これに対して、ハブと幅の広いアームとにねじ接続部を設けるために、幅の広いアームは摩擦リングの外側からハブの突起と重なる部分へと半径方向内側に伸展している。これらの手段の結果、挿入要素の基本部は通風を妨げないので、特に
車軸ブレーキディスクの内部の通風は改善される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の特徴を備えた
車軸ブレーキディスクの代表的な実施形態の透視図である。
【
図2】挿入要素及び摩擦リングを配置した
車軸ブレーキディスクの横断面図である。
【
図3】挿入要素のさらなる代表的な実施形態の透視図である。
【
図4】摩擦リングを挿入要素上にポジショニングする締め付けピンが示されている、挿入要素及び摩擦リングの横断面図である。
【
図5】挿入要素を切断する前の、摩擦リングおよび挿入要素をもつ
車軸ブレーキディスクの上面図である。
【
図6】ハブが挿入要素に接続されている、挿入要素を切断した後の
車軸ブレーキディスクの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明を発展させた手段の詳細に関し、好適な実施形態を図の説明と共に下記に記す。なお、異なる複数の実施形態で、わずかに異なる特徴をもち、かつ同じ機能を有する部品は、同一の参照番号を付してある。
【0034】
図1は本発明の実施形態の
車軸ブレーキディスク100の透視図で、
車軸ブレーキディスク100はさまざまな個別の部品から組み立てられるので、
車軸ブレーキディスク100は組み立てられた
車軸ブレーキディスク100として設計されている。
【0035】
車軸ブレーキディスク100はハブ10を含み、ハブ10には中心通路が作られており、
車軸ブレーキディスク100を取り付けるシャフトが中心通路を伸展しうる。さらに、
車軸ブレーキディスク100は摩擦リング11及び12を備え、摩擦リング11及び12は互いに間隔を開けて平行に配置され、ブレーキパッドと接触する摩擦表面を形成する。
【0036】
本発明では、挿入要素13は摩擦リング11と12の間に挿入され、半径方向外方に伸展するアーム14を複数、星形に備える。アーム14は
車軸ブレーキディスク100の円周方向に等間隔をあけて設けられ、実施形態ではアーム14を9本含む。アーム14は摩擦リング11及び12の外周を端とする長さに設計されている。
【0037】
ハブ10の有する突起20は、挿入要素13の基本部24と重なるように広がっている。挿入要素13の基本部24とハブ10の突起20との間で、ねじ接続部15が提供されており、これは必然的にねじ要素18で形成される。つまり、摩擦リング11及び12は挿入要素13と共に摩擦リングのペアを形成し、摩擦リングのペアはハブに個別に取り付けることができ、組み立てられたものとして用意されうる。例えば、必要なメンテナンスである
車軸ブレーキディスク100上の摩耗した摩擦リングのペアの交換を行う場合には、摩擦リングのペアをハブ10から取り外し、それを新しい摩擦リングのペアに交換するだけで済む。
【0038】
基本部24と基本部24から半径方向外方に伸展したアーム14とをもつ挿入要素13の星形の構造のために、
車軸ディスク100を通る空気の流れが生じ、その流れは
車軸ブレーキディスク100の内側から外側へと流れ、それはアーム14の間で空気の流れを生じる。
【0039】
詳細を示さないが、冷却要素を摩擦リング11と12の間に備えることができ、それは例えば摩擦リング11と12の少なくとも一つの内側の面に配置される。冷却要素は摩擦リング11及び12の内側、例えばスタッド溶接やねじで接続、あるいははんだ付けで設置することができる。その結果、
車軸ブレーキディスク100の通風がさらに改善できる。
【0040】
図2は
車軸ブレーキディスク100の半分のみを横断面で示している。ここで、ハブ10は突起20と共に横断面に示してあり、突起20にねじ接続部15を用いて挿入要素13が配置されている。挿入要素13の穴16と突起20の穴17とを貫通するねじ要素18をねじ接続部15は示している。スライドブロック21は突起20に隣接して配置されており、突起部20に仕上げ加工されたポケットに適当な形で位置する。スライドブロック21を介して挿入要素13がハブ10の中心になるように、スライドブロック21の他の部分は挿入要素13の穴16内に適当な形で伸長している。
【0041】
さらに、ねじ接続部15はねじ要素18のねじの軸の自由端にねじ込まれたナット22を含む。ナット22の下には、ハブの周囲を囲む止め輪23と共にワッシャー28が配置されている。止め輪23を通ることで多くのねじ要素18を導くために、止め輪23には多くの穴が備えら
れている。
【0042】
挿入要素13の外側に摩擦リング11及び12が配置される。挿入要素13は第1部分要素13a及び第2部分要素13bで構成され、部分要素13a及び13bは互いに平行な平面で接合している。摩擦リング11と12の間及び挿入要素13の部分要素13aと13bの間における接合29は、はんだ付けでなされるよう設計されている。特に部分要素13aと13bと共に、摩擦リング11と12は挿入要素13と真空炉内で高温はんだ付け法によってはんだ付けされる。接合29が、摩擦リング11と12及び挿入要素13との間での接続に限定されるように、挿入要素13は1つの部品としても設計できる。
【0043】
図3には基本部24を備える挿入要素13の透視図が示されている。合計18のアーム14が基本部24から半径方向外方に伸展している。基本部24にはハブ10が配置されうる開口19が設けられている。
【0044】
アーム14には幅の狭い形状のアーム14と幅の広い形状のアーム14とがある。アーム14は、挿入要素13の基本部24に隣接する形で、幅の広い形状のものと幅の狭い形状のものとが交互に配置されている。挿入要素13の代表的な実施形態は、アーム14が横方向に曲がった形状をもつ。アーム14は輪郭が膨らみ、幅の狭い形状のアーム14はアームの付け根30の基本部24との境で大幅に先細りになる。これに対して幅の広い形状のアーム14は対応する基本部24との境は、先細りせず広い幅をもつ。
【0045】
さらに、次の
図4に詳細を示すように、例えば3つのアーム14には穴27を形成されている。摩擦リング11と12は穴27を介して挿入要素13にポジショニングされうる。
【0046】
図4は摩擦リング11と12及び挿入要素13を備える摩擦リングのペアの横断面図を示している。
図4では挿入要素13が2つの要素13a及び部分要素13bで構成されている。既に
図2で説明したように、ねじ要素18は摩擦リングのペアを挿入要素13を介してハブ10に取り付けるためのもので、ねじ要素18を導き通す穴16が挿入要素13内に図示されている。
【0047】
摩擦リング11と12を挿入要素13の中心に設置するために、摩擦リング11と12のそれぞれに穴26が設けられ、穴26は挿入要素13の穴27と同じ高さにある。締め付けピン25は穴26及び27に挿入されることで、摩擦リング11及び12を挿入要素13に位置を合わせる。全体的に、穴27は3つのアーム14に設けられうる。アーム14の穴27に対応し、摩擦リング11及び12のそれぞれにも3つの穴26が設けられる。ここで、熱もしくは研磨剤の少なくとも一方を用いた切削プロセスを用いる挿入要素13を製造する過程と同様、摩擦リング11と12を製造する過程の時に、穴26と27は設けることができる。挿入要素13に摩擦リング11と12の必要とされる位置合わせを保証するために、穴26と27の寸法精度は、例えば、レーザー切断法もしくは水ジェット切断法を用いることで充分に確保できる。
【0048】
図5は
車軸ブレーキディスク100の上面図で、摩擦リング11及び12を挿入要素13に配置したものである。摩擦リング11及び12は挿入要素13に既にはんだ付けしてあり、摩擦リング11及び12の中央の開口31の内側に挿入要素13の基本部24が突き出ている。挿入要素13は幅の広い形状と幅の狭い形状のアーム14を含む。幅の狭い形状のアーム14の一つは、挿入要素13の基本部24の切断部分32と図示されている部分の、アーム14の付け根を含む。
【0049】
代表的な実施形態の
車軸ブレーキディスク100の製造方法には、幅の狭い形状のアーム14それぞれの切断部分32が挿入要素13の基本部24から切削工程によって取り除かれる段階を含む。例えば、幅の狭い形状のアーム14が摩擦リング11及び12の間に残るように、切断部分32は基本部24から削られる。それゆえ、ハブ10との接続は、穴16の設けられた幅の広い形状のアーム14の半径方向内側の端でなされる。ここで、
図2に示すように、穴16’は通路として形成され、穴16’よりも大きな径をもつ穴16はスライドブロック21を保持する役割をもつ。
【0050】
最後に、
図6には
車軸ブレーキディスク100の完成形を図示してある。今や摩擦リング11と12の間で半径方向に伸展するアーム14で形成される挿入要素13が、摩擦リング11と12の間に位置している。アーム14のうち幅の狭い形状のものは、摩擦リング11及び12の中央の開口31から外側の端へと伸展しており、アーム14のうち幅の広い形状のものは摩擦リング11及び12の外側の端から開口31へとハブ10の突起20と重なる部分をもつよう伸展する。最後に、アーム14のうち幅の広い形状のものは、ねじ接続部15を介して突起20でハブ10に取り付けられ得る。これは、摩擦リング11と12を備える摩擦リングのペアが、幅の広い形状のアーム14を介して、ハブ10に取り付けられている配置となっている。
図5に示してある挿入要素13の切断部32は、ここでは既に切削工程で切り取られている。切断部32を取り除いた結果アーム14は互いに切り離されており、挿入要素13の基本部24は今やアーム14の半径方向内側に向いている端の部分のみが残っている。
【0051】
挿入要素13がアーム14に限定されることで、摩擦リング11と12の間で内側から外側へ自由に空気が流れることができるので、
車軸ブレーキディスク100の通気はかなり最適化される。同時に、摩擦リング11と12の間のアーム14は充分に高い剛性をもつため、
車軸ブレーキディスク100は高い剛性を備えかつ比較的軽量になっている。
【0052】
本発明の実施形態は、上記の好ましい代表的な実施形態に限定されない。かなり数多くの変形例が可能であり、基本的に異なる形式の実施形態のものにさえも、説明された解決策を利用することができる。請求項、記述あるいは図面に含まれる構造の詳細や空間的配置による、すべての特徴や利点は、それそのもの、及びそれらを組み合わせてできる多くの異なるものに、本発明の権利が適用される。
【符号の説明】
【0053】
100
車軸ブレーキディスク
10 ハブ
11 摩擦リング
12 摩擦リング
13 挿入要素
13a 第1部分要素
13b 第2部要素
14 アーム
15 ねじ接続部
16 穴(挿入要素内)
17 穴(突起内)
18 ねじ要素
19 開口
20 突起
21 スライドブロック
22 ナット
23 止め輪
24 基本部
25 締め付けピン
26 穴(摩擦リング内)
27 穴(挿入要素内)
28 ワッシャー
29 接合
30 アームの付け根
31 開口
32 切断部分