特許第6012771号(P6012771)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サン−ゴバン グラス フランスの特許一覧

特許6012771日除け機能及び断熱機能を備えた合わせガラス
<>
  • 特許6012771-日除け機能及び断熱機能を備えた合わせガラス 図000004
  • 特許6012771-日除け機能及び断熱機能を備えた合わせガラス 図000005
  • 特許6012771-日除け機能及び断熱機能を備えた合わせガラス 図000006
  • 特許6012771-日除け機能及び断熱機能を備えた合わせガラス 図000007
  • 特許6012771-日除け機能及び断熱機能を備えた合わせガラス 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012771
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】日除け機能及び断熱機能を備えた合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20161011BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20161011BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20161011BHJP
   C03C 17/36 20060101ALI20161011BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   C03C27/12 L
   B32B15/08 D
   B32B17/10
   C03C27/12 N
   C03C27/12 K
   C03C17/36
   B60J1/00 W
   B60J1/00 G
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-559133(P2014-559133)
(86)(22)【出願日】2013年1月21日
(65)【公表番号】特表2015-511570(P2015-511570A)
(43)【公表日】2015年4月20日
(86)【国際出願番号】EP2013050999
(87)【国際公開番号】WO2013127563
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2014年10月22日
(31)【優先権主張番号】12157067.5
(32)【優先日】2012年2月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512212885
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
【氏名又は名称原語表記】Saint−Gobain Glass France
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン マンツ
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−039742(JP,A)
【文献】 特表2008−516878(JP,A)
【文献】 特表2011−520755(JP,A)
【文献】 特開2004−051466(JP,A)
【文献】 特開2001−146440(JP,A)
【文献】 特表2007−516144(JP,A)
【文献】 特開2004−026547(JP,A)
【文献】 特表2009−526731(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0028953(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0146172(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0070045(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0257670(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0098354(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
C03C 17/34 − 17/42
B32B 15/04 − 15/08
B32B 17/06 − 17/10
B60J 1/00 − 1/06
E06B 3/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
日除け機能及び断熱機能を備えた合わせガラスであって、外面(I)及び内面(II)を備えた外部ガラス(1)と、外面(III)及び内面(IV)を備えた内部ガラス(2)と、熱可塑性の中間層(3)とから成っており、
- 少なくとも前記内面(II)、前記外面(III)又は前記熱可塑性の中間層(3)における日除け被覆層(4)と、
- 前記内面(IV)における断熱被覆層(5)と、を少なくとも有しており、
前記日除け被覆層(4)は、少なくとも銀を含有する少なくとも1つの機能層を有しており、前記断熱被覆層(5)は、ニオブ、タンタル、モリブデン及びジルコニウムから成るグループからの少なくとも1つの金属を含有する、少なくとも1つの機能層を有しており、
前記外部ガラス(1)及び前記内部ガラス(2)は、可視のスペクトル範囲において70%を超える透過率を有しており、当該合わせガラスは、可視のスペクトル範囲において10%未満の透過率を有していることを特徴とする、日除け機能及び断熱機能を備えた合わせガラス。
【請求項2】
前記断熱被覆層(5)は、ニオブ、タンタル、モリブデン及びジルコニウムから成るグループからの少なくとも1つの金属を含有する、少なくとも2つの機能層を有している、請求項1記載の合わせガラス。
【請求項3】
前記断熱被覆層(5)の各機能層は、1nm〜35nmの厚さを有していて、すべての機能層の全厚さは、50nm以下である、請求項1又は2記載の合わせガラス。
【請求項4】
前記断熱被覆層(5)の少なくとも1つの機能層は、2つの透明な誘電体層の間に配置されており、該誘電体層は、少なくとも窒化ケイ素を含有していて、5nm〜120nmの厚さを有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の合わせガラス。
【請求項5】
前記断熱被覆層(5)は、少なくとも1つの機能層と少なくとも1つの誘電体層との間に少なくとも1つの犠牲層を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載の合わせガラス。
【請求項6】
前記日除け被覆層(4)は、少なくとも銀を含有する少なくとも2つの機能層を有しており、各機能層は、2つの透明な誘電体層の間に配置されていて、該誘電体層は、少なくとも窒化ケイ素を含有している、請求項1から5までのいずれか1項記載の合わせガラス。
【請求項7】
前記熱可塑性の中間層(3)は、前記日除け被覆層(4)を有するキャリアフィルム(6)を有している、請求項1から6までのいずれか1項記載の合わせガラス。
【請求項8】
当該合わせガラスは、最高で50%の内室側の放射率を有している、請求項1からまでのいずれか1項記載の合わせガラス。
【請求項9】
当該合わせガラスは、基準適正なD65-放射体のスペクトル範囲において、10%を超える外側の反射率を有している、請求項1からまでのいずれか1項記載の合わせガラス。
【請求項10】
当該合わせガラスは、基準適正なD65-放射体のスペクトル範囲において、5%を超える内室側の反射率を有している、請求項1からまでのいずれか1項記載の合わせガラス。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の合わせガラスを製造する方法であって、
- 少なくとも銀を含有する少なくとも1つの機能層を有する日除け被覆層(4)を、内面(II)又は外面(III)に設けるか又は熱可塑性の中間層(3)内に設けるステップと、
- ニオブ、タンタル、モリブデン及びジルコニウムから成るグループからの少なくとも1つの金属を含有する少なくとも1つの機能層を有する断熱被覆層(5)を、内面(IV)に設けるステップと、
- その後で行われる、外部ガラス(1)と内部ガラス(2)とを熱可塑性の中間層(3)を介して結合して、合わせガラスを形成するステップと、
を少なくとも有することを特徴とする、合わせガラスを製造する方法。
【請求項12】
建物における又は、地上、空中又は水上における交通のための移動手段における請求項1から10までのいずれか1項記載の、日除け機能及び断熱機能を備えた合わせガラスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日除け機能及び断熱機能を備えた合わせガラス、合わせガラスの製造、並びに合わせガラスの使用に関する。
【0002】
自動車の内室は、夏期において、外気温が高い場合及び太陽光線が強く直接入射した場合、強く加熱されることがある。乗員が受け入ることのできる温度に関する快適性を得るために、内室は空気調整することができる。しかしながらこのことは、燃費を劣化させることになり、これに関連して温室ガス、特にCOの排出を高めることになる。
【0003】
日除け機能を有するガラスも公知である。このようなガラスは被覆層を備えており、この被覆層は、太陽光線の一部、特に赤外線を反射し、これにより車両内室の加熱を低減する。このような被覆層は、例えば欧州特許出願公開第2268588号明細書、欧州特許出願公開第1993829号明細書及び欧州特許出願公開第1744995号明細書に基づいて公知である。しかしながらガラスは、高い外気温において加熱し、熱を車両の内室内に放射する。
【0004】
特に冬期において見られる現象であるが、外気温が車両内室における温度よりも低い場合には、冷たいガラスが、乗員にとって不快に感じられるヒートシンクとして作用する。
【0005】
独国特許発明第19927683号明細書に基づいて公知の合わせガラスは、日除け被覆層と、熱線を反射する被覆層(低放射率被覆層、断熱被覆層)とを備えている。この場合低放射率被覆層は、フッ素をドーピングされた酸化スズ層である。例えばサイドガラス又はリアガラスにおいて、特にルーフガラスにおいてしばしば望まれていることであるが、可視光の透過率を合わせガラスによって減じることが望まれている場合には、合わせガラスのガラス又はフィルムを着色又はプリントすることが提案される。さらに暗いガラスは、典型的には酸化鉄を多く含有しており、このことは、機能被覆層の腐食を引き起こすことがある。
【0006】
ゆえに本発明の課題は、日除け機能及び断熱機能を備えた改良された合わせガラス、及び該合わせガラスを製造する方法を提供することである。
【0007】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載した、日除け機能及び断熱機能を備えた合わせガラスによって解決された。好適な実施態様は、従属請求項に記載されている。
【0008】
本発明の構成では、日除け機能及び断熱機能を備えた合わせガラスは、外面及び内面を備えた外部ガラスと、外面及び内面を備えた内部ガラスと、熱可塑性の中間層とから成っており、下記の特徴、すなわち、
- 少なくとも外部ガラスの内面、内側ガラスの外面又は熱可塑性の中間層における日除け被覆層と、
- 内部ガラスの内面における断熱被覆層と、を少なくとも有しており、
日除け被覆層は、少なくとも銀を含有する少なくとも1つの機能層を有しており、断熱被覆層は、ニオブ、タンタル、モリブデン及びジルコニウムから成るグループからの少なくとも1つの金属を含有する、少なくとも1つの機能層を有している。
【0009】
本発明に係る合わせガラスは、例えば車両又は建物の開口部において、外部環境に対して内室を隔てるために設けられている。本発明において、外部ガラスというのは、合わせガラスのガラスのうち、取付け位置において外部環境に向けられるために設けられたガラスを意味する。また本発明において、内部ガラスというのは、合わせガラスのガラスのうち、取付け位置において内室に向けられるために設けられたガラスを意味する。本発明において、外面というのは、外部環境に向けられるために設けられた、外部ガラス及び内部ガラスの表面を意味する。また本発明において、内面というのは、内室に向けられるために設けられた、外部ガラス及び内部ガラスの表面を意味する。本発明に係る合わせガラスにおいて、外部ガラスの内面と内部ガラスの外面とは、互いに向かい合っていて、熱可塑性の中間層を介して互いに結合されている。
【0010】
1つの層又はその他のエレメントが少なくとも1つの材料を有している場合、本発明では、層が当該材料から成っている場合をも含む。
【0011】
本発明において1つの被覆層は、異なった材料の2つ以上の個別層を有することができる。しかしながらまた被覆層は、原理的にはただ1つの個別層を有することも可能である。
【0012】
1つの被覆層の第1の層が該被覆層の第2の層の上に配置されている場合、このことは本発明では、第1の層が、被覆層が設けられている表面から、第2の層よりも大きく離れて配置されていることを意味する。1つの被覆層の第1の層が該被覆層の第2の層の下に配置されている場合、このことは本発明では、第2の層が、被覆層が設けられている表面から、第1の層よりも大きく離れて配置されていることを意味する。1つの被覆層の第1の層が該被覆層の第2の層の上か又は下に配置されている場合、このことは本発明では、必ずしも、第1の層と第2の層とが互いに直に接触して位置しているということを意味しない。明示的に排除されていない限り、単数又は複数の別の層が第1の層と第2の層との間に配置されていてよい。1つの第1の層が2つの別の層の間に配置されている場合、このことは本発明では、一方の別の層が第1の層の上に配置され、かつ他方の別の層が第1の層の下に配置されているということを意味する。
【0013】
本発明の特別な利点は、日除け被覆層と断熱被覆層との組合せにある。日除け被覆層によって、特に赤外線のスペクトル範囲における太陽光線の一部が、反射される。これにより、直接的な太陽光線の入射に基づく、合わせガラスによって画定される内室の加熱は、低減される。さらに日除け被覆層は、複合ガラスの加熱を、特に、太陽光線の入射方向で見て日除け被覆層の後ろに配置された内部ガラスのようなエレメントの加熱を減じる。このような加熱は、汎用の合わせガラスでは、合わせガラスから内室へと熱を放射させる。この場合典型的に発生するガラス温度における熱放射は、約5000nmを超える波長を有している。断熱被覆層(しばしば低放射率被覆層(Low-E-Beschichtung)とも呼ばれる)によって、一方では内室内への合わせガラスの長波の熱線の放射が大幅に減じられる。つまり断熱被覆層は、合わせガラスに、低い内室側の放射率を与える。この場合放射率というのは、ガラスが理想的な熱放射体(黒体)との比較において、どれだけ多くの熱放射を生ぜしめるかを示す尺度を意味する。他方において断熱被覆層は、外気温が低い場合に、外部環境への内室の熱の放射を減じる。これによって内室における人間は、本発明に係る合わせガラスを、汎用の合わせガラスに比べて明らかに僅かしか、不快なヒートシンクと感じない。従って内室の空調は、(夏期における)高い外気温においても、(冬期における)低い外気温においても、大幅に改善される。
【0014】
さらに本発明に係る断熱被覆層は、合わせガラスを通過する可視光の透過率を減じる。従って本発明に係る合わせガラスは、特に、光透過率に対する法律的な規制が存在しない箇所における使用、及び減じられた光透過率が例えば美的又は熱的な理由から望まれ得ない箇所における使用のために、車両では、特にBコラムの後ろのサイドガラス、三角ガラス、リアガラス又はルーフガラスのための使用に適している。これによって、調色されたガラス又は着色されたポリマ層の使用を回避することができ、このことは、合わせガラスの製造プロセスを簡単化し、調色されたガラスでは例えば酸化鉄の添加によって惹起される、機能層に対する腐食のおそれを低減する。このことは、本発明の別の大きな利点である。
【0015】
本発明に係る断熱被覆層は、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)及びジルコニウム(Zr)から成るグループからの少なくとも1つの金属を含有する、少なくとも2つの機能層を有している。断熱被覆層は、内部ガラスの内面に配置されている。このことは、内室における温度快適性に関して特に有利であり、この快適性は、夏期においては、内室内への合わせガラス全体からの熱線の放射の低減によって、冬期においては、内室からの熱の放射の低減によって達成される。
【0016】
断熱被覆層は、好ましくは2つの機能層を有しており、これらの機能層は、ニオブ、タンタル、モリブデン及びジルコニウムから成るグループからの少なくとも1つの金属を含有する。これによって、減じられた放射率に関する特に良好な結果が得られる。
【0017】
ニオブ、タンタル、モリブデン及びジルコニウムから成るグループからの金属は、全体的に又は部分的に窒化されていてよい(NbN、TaN、MoN、ZrN)。このことは、機能層の化学的な安定性に関して特に有利である。
【0018】
断熱被覆層の本発明に係る機能層は、外部から入射する可視光の一部を吸収及び反射する。可視のスペクトル範囲における本発明に係る合わせガラスを通る透過率は、これによって低減される。合わせガラスを通る所望の透過率は、当業者が、単数又は複数の機能層の層厚さによって選択することができる。これによって、特に、外部から入射する可視域における太陽光線のうちの僅かしか、内室内に透過しない。本発明に係る断熱被覆層は、可視のスペクトル範囲における内室側の反射が、汎用の調色されたガラスに対して顕著に減じられているように、構成されることができる。このことは、内室側における反射がしばしば不都合に感じられる汎用の調色されたガラスに対して、本発明の大きな利点である。
【0019】
断熱被覆層の機能層の厚さは、好ましくは1nm〜35nm、特に好ましくは3nm〜25nmであり、例えば5nm〜15nmであってよい。断熱層が1つの機能層よりも多くの機能層を有している場合、すべての機能層の全層厚さは、好ましくは50nm以下である。個々の機能層の厚さ及びすべての機能層の全厚さに対する上に述べた範囲において、可視のスペクトル範囲における合わせガラスを通る減じられた透過率、及び減じられた放射率に関して、特に良好な結果が得られる。個々の機能層は、等しい厚さを有していても、又は異なった厚さを有していてもよい。
【0020】
断熱被覆層は、好ましくはさらに、少なくとも1つの誘電体層を有している。誘電体層は、誘電材料を含有しているか又は誘電材料から成っていて、好ましくは透明である。誘電体層は、好ましくは、各機能層の内室側に配置されている。本発明の好適な態様では、少なくとも1つの機能層が、2つの誘電体層の間に配置されている。このことは本発明では、一方の誘電体層が機能層の上に配置され、かつ他方の誘電体層が機能層の下に配置されていることを意味する。各機能層が2つの誘電体層の間に配置されていると、特に有利である。これらの機能層及び誘電体層はこの場合好ましくは次のように配置されている。すなわちこの場合、それぞれ2つの互いに隣接する機能層の間には、該機能層の間に別の機能層が配置されておらず、少なくとも1つの誘電体層が配置されており、最上位の機能層の上には、少なくとも1つの別の誘電体層が配置されており、かつ最下位の機能層の下には、少なくとも1つの別の誘電体層が配置されている。しかしながら機能層が必ずしも誘電体層と直に接触して位置する必要はない。単数又は複数の別の層が、機能層と誘電体層との間に配置されていてよい。
【0021】
断熱被覆層の誘電体層は、好ましくは少なくとも窒化ケイ素(Si34)を含有している。窒化ケイ素は特に好ましくは、特にアルミニウムをドーピングされている。このことは、誘電体層の劣化防止に関して特に有利である。さらに、例えば磁界によって促進される陰極スパッタリングによる誘電体層の迅速な析出が達成される。誘電体層における調量の配分は、特に好ましくは5質量%〜10質量%である。これによって特に良好な結果が得られる。
【0022】
しかしながらまた断熱被覆層の誘電体層は、適宜な他の材料、例えばSnO2、Bi23、TiO2、ZnO、SiO2のような酸化物及び/又はAINのような窒化物を含有することもできる。誘電体層のうちの少なくとも1つは例えば、Si34/SiO2又はSi34/SiO2/Si34のような高い屈折率と低い屈折率を有する一連の層を有することもできる。
【0023】
断熱被覆層の誘電体層の厚さは、好ましくは5nm〜120nmの厚さ、特に好ましくは10nm〜70nmの厚さ、極めて特に好ましくは40nm〜60nmの厚さを有している。これによって、被覆層のカラー効果及び被覆層における反射に関して、特に良好な結果が得られる。
【0024】
断熱被覆層は好ましくは、少なくとも1つの犠牲層を有している。この犠牲層は好ましくは少なくともチタン及び/又はニッケルクロムを含有している。犠牲層は好ましくは、少なくとも1つの機能層と少なくとも1つの誘電体層との間に配置されている。犠牲層は好ましくは、機能層と直に接触して位置している。特に好ましくは、各機能層が少なくとも1つの犠牲層と直に接触して位置している。特に好適な態様では、各機能層が2つの犠牲層の間に配置されていて、この場合機能層は好ましくは、該機能層を取り囲む犠牲層と直に接触して位置している。犠牲層によって、特に本発明による合わせガラスの製造中における加熱時に、機能層の保護が達成される。犠牲層の厚さは好ましくは、数ナノメートルの値、例えば1nm〜3nmの値を有している。しかしながらまた、犠牲層は1nm未満の厚さを有することもできる。
【0025】
日除け被覆層は、入射する太陽光線のうち、可視のスペクトル範囲外における光線、特に赤外線のスペクトル範囲における光線部分を反射する。日除け被覆層によって、直接的な太陽光線による内室の加熱が減じられる。
【0026】
日除け被覆層は本発明によれば、少なくとも1つの機能層を有している。この機能層は、少なくとも銀を含有している。機能層はまた、少なくとも1つの銀含有の合金を有することもできる。
【0027】
本発明の好適な態様では、日除け被覆層は、少なくとも2つの機能層、特に好ましくは、2つ又は3つの機能層を有している。複数の機能層を備えた日除け被覆層は、赤外線に対する高い反射率を可能にすると同時に、可視のスペクトル範囲における光線に対する高い透過率を可能にする。しかしながら3つよりも多くの機能層を備えた日除け被覆層は、技術的に手間及びコストのかかる製造を必要とする。
【0028】
日除け被覆層の各機能層の厚さは、好ましくは5nm〜25nm、特に好ましくは10nm〜20nmである。日除け被覆層のすべての機能層の層厚さ全体は、好ましくは20nm〜80nm、特に好ましくは30nm〜60nmである。機能層の厚さ及びすべての機能層の厚さ全体に対するこれらの範囲において、日除け機構及び透明度に関して良好な結果が得られる。
【0029】
日除け被覆層は、好ましくは少なくとも1つの誘電体層を有している。各機能層は特に好ましくは、2つの誘電体層の間に配置されている。この場合機能層及び誘電体層は好ましくは次のように配置されている。すなわちこの場合、互いに隣接する各2つの機能層の間に、該機能層の間には別の機能層は配置されておらず、少なくとも1つの誘電体層が配置されており、最上位の機能層の上に、少なくとも1つの別の誘電体層が配置されており、最下位の機能層の下に、少なくとも1つの別の誘電体層が配置されている。日除け被覆層の誘電体層は、好ましくは少なくとも窒化ケイ素を含有している。窒化ケイ素は、特にアルミニウムのようなドーピング添加剤を有することができる。誘電体層は好ましくは、10nm〜100nmの厚さ、特に好ましくは20nm〜70nmの厚さを有している。
【0030】
しかしながらまた日除け被覆層の誘電体層は、当業者にとって周知の適宜な材料、例えばSnO2、Bi23、TiO2、ZnOのような少なくとも1つの酸化金属及び/又はAINのような少なくとも1つの窒化金属を含有することもできる。
【0031】
日除け被覆層は、当業者にとって周知の、例えば平滑層及び/又は遮断層のような別の層を有することができる。
【0032】
本発明の好適な態様では、日除け被覆層は、外部ガラスの内面に設けられている。この場合日除け被覆層は、外部ガラスと熱可塑性の中間層との間に配置されていて、腐食及びその他の損傷に対して有利に保護されている。別の好適な態様では、日除け被覆層は、2mm〜20mmの幅、好ましくは5mm〜10mmの幅を有する環状でフレーム状の、被覆層のない領域を除いて、透明なベース体(Substrat)の表面全体にわたって延在している。被覆層のない領域は、好ましくは、熱可塑性の中間層又は蒸気拡散バリアとしてのアクリル接着剤によって、気密に封止される。これによって日除け被覆層は、好適に湿気及び空気中の酸素に対して保護される。
【0033】
本発明の択一的な好適な態様では、熱可塑性の中間層は、日除け被覆層を有するキャリアフィルムを有している。日除け被覆層が設けられているキャリアフィルムは、少なくとも1つの第1の熱可塑性のフィルムを介して外部ガラスに結合され、少なくとも1つの第2の熱可塑性のフィルムを介して内部ガラスに結合されている。これによって日除け被覆層は、キャリアシートと2つの熱可塑性のフィルムとによって形成される熱可塑性の中間層内に封入され、好適に損傷及び腐食に対して保護されている。キャリアフィルムは、好ましくは少なくともポリエステル及び/又はポリアミドを含有し、特に好ましくは熱可塑性のポリエステル、例えばポリエチレンナフタレート(PEN)又はポリエチレンテレフタレート(PET)を含有している。キャリアフィルムは、好ましくは10μm〜500μm、特に好ましくは15μm〜200μm、極めて特に好ましくは20μm〜100μmの厚さ、例えば25μm〜50μmの厚さを有している。このことは、キャリアフィルムの安定性及び作業性に関して特に有利である。キャリアフィルムにおける日除け被覆層は、好ましくは、合わせガラスの側縁部まで延びておらず、側部において熱可塑性の中間層によって環状に取り囲まれている。このことは、腐食に対する日除け層の保護に関して特に有利である。そのためにキャリアフィルムは、例えば被覆層のない環状の縁部領域を有することができる。択一的にキャリアフィルムは、内部ガラス、外部ガラス及び熱可塑性のフィルムに比べて小さな大きさを有することができ、結合に適した形態で配置されていてよい。
【0034】
しかしながらまた本発明によれば日除け被覆層は、択一的に、内部ガラスの外面に設けられていてもよい。
【0035】
日除け被覆層及び/又は断熱被覆層は、例えばデータ伝送窓又はコミュニケーション窓として働く、被覆層のない領域を取り囲むこともできる。
【0036】
外部ガラス及び/又は内部ガラスは、好ましくはガラス、特に好ましくは板ガラス、フロートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス又はプラスチック、好ましくは剛性のガラス、特にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチロール、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル及び/又はこれらの混合物を含有している。例えば適宜なガラスは、DE69731268T2の第8頁、段落0053に基づいて公知である。ガラスは、プレストレスを全体的に加えられていても、部分的に加えられていても、又はまったく加えられていなくてもよい。
【0037】
本発明の好適な対象では、外部ガラス及び/又は内部ガラスは、可視のスペクトル範囲において70%を超える、好ましくは85%を超える透過率を有している。この場合ガラスの透過率は、日除け被覆層及び断熱被覆層の無い状態を意味している。外部ガラス及び/又は内部ガラスは、好ましくは無色であるか又は、僅かな着色又は色調を有している。本発明に係る断熱被覆層は、可視のスペクトル範囲における透過率を減じるので、調色されたガラス又は着色されたフィルムなしでも、合わせガラスを暗くすることができる。調色されたガラス又は着色されたフィルムの使用に対する特別な利点は、合わせガラスのより簡単な製造と機能層の腐食可能性の低減にある。しかしながらまた択一的に、例えば合わせガラスの透過率をさらに減じるために又は美的な理由に基づいて、調色された又は着色されたガラス及び/又は着色されたフィルムを使用することも、もちろん可能である。調色されたガラス又は着色されたフィルムは、確かに、吸収された太陽光線によって強く加熱されるが、内室への熱線の放射は本発明に係る断熱被覆層によって効果的に減じられる。
【0038】
外部ガラスの厚さ及び内部ガラスの厚さは、様々なバリエーションが可能であり、個々の事例における必要性に適宜合わせることができる。好ましくは1.0mm〜25mm、特に好ましくは1.4mm〜3.5mmの標準厚さを有するガラスが使用される。外部ガラス及び内部ガラスは、互いに等しい厚さを有していても又は異なった厚さを有していてもよい。
【0039】
本発明に係る合わせガラスの大きさは、様々なバリエーションが可能であり、本発明に係る使用に従って決定される。合わせガラスは、特に車両構造及び建築分野では、200cm2〜4m2の通常の面積を有している。
【0040】
外部ガラス及び内部ガラスは、任意の三次元形状を有することができる。三次元形状は、好ましくは陰影ゾーンを有していないので、ガラスは例えば陰極スパッタリングによってコーティングされることができる。外部ガラス及び内部ガラスは、好ましくは平らであるか又は、程度の差こそあれ、空間の1つの方向又は複数の方向において曲げられている。
【0041】
断熱被覆層を備えた内部ガラス及び場合によっては日除け被覆層を備えた外部ガラスは、好ましくは、内部ガラス及び場合によって外部ガラスが、加熱され、溶融され、焼き鈍しされ、凸面状に又は凹面状に曲げられ、膨らまされ、かつ/又はエナメルコーティングされることができる。本発明に係る断熱被覆層及び本発明に係る日除け被覆層はそのために適しているということが、判明している。
【0042】
熱可塑性の中間層は、好ましくは少なくとも1つの熱可塑性のプラスチック、例えばポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含有している。熱可塑性の中間層は、好ましくは、外部ガラスと内部ガラスとを互いに結合する熱可塑性のフィルムによって形成され、このフィルムは、好ましくは0.3mm〜0.9mmの厚さを有している。熱可塑性の中間層は、2つ又はそれ以上のこのような熱可塑性のフィルムによって形成することができる。熱可塑性のフィルムの間には、例えば被覆されたキャリアフィルムが配置されていてよい。熱可塑性の中間層全体の厚さは、好ましくは0.3mm〜2mm、特に好ましくは0.3mm〜1mmである。
【0043】
また、音響効果を改善する、騒音を減衰するフィルムを、熱可塑性の中間層として又は熱可塑性の中間層の一部として使用することも可能である。このことは特に、合わせガラスがルーフガラスとして設けられている場合に有利である。特に降雨時及び降雹時に、ルーフガラスを介して、不都合な騒音が内室内に達することがあり、このような騒音のレベルは、騒音を減衰するフィルムによって低減される。
【0044】
本発明に係る合わせガラスは、好ましくは、最高で50%、特に好ましくは最高で30%、極めて特に好ましくは最高で25%の内室側の放射率を有している。この場合放射率によって通常の全放射グレードが示される。
【0045】
本発明に係る合わせガラスは、好ましくは、基準適正なD65-放射体のスペクトル範囲において10°の入射角の場合に、10%を超える、特に好ましくは25%を超える外側の反射率を有している。
【0046】
本発明に係る合わせガラスは、好ましくは、基準適正なD65-放射体のスペクトル範囲において10°の入射角の場合に、5%を超える、特に好ましくは8%を超える内室側の反射率を有している。
【0047】
本発明に係る合わせガラスは、好ましくは、光形式Aの基準適正な光源の可視のスペクトル範囲において10°の入射角の場合に、7%を未満の、特に好ましくは5%未満の内室側の反射率を有している。
【0048】
本発明に係る合わせガラスは、好ましくは、基準適正なD65-放射体の可視のスペクトル範囲において10°の入射角の場合に、25%未満、特に好ましくは10%未満、極めて特に好ましくは5%未満の、内室への透過率を有している。
【0049】
本発明に係る合わせガラスは、好ましくは、光形式Aの基準適正な光源の可視のスペクトル範囲において10°の入射角の場合に、1%を超える、特に好ましくは1.5%を超える、極めて特に好ましくは2%を超える、内室への透過率を有している。これによって、ガラスは完全には不透明ではないので、ガラスの後ろにおける対象物の視覚的な印象を知覚することができる。
【0050】
この場合外側の反射率というのは、外部ガラスが向いている外部環境から入射する光線のうちの反射された割合を示す。内室側の反射率というのは、内部ガラスが向いている内室から入射する光線のうちの反射された割合を示す。
【0051】
本発明はさらに、日除け機能及び断熱機能を備えた合わせガラスを製造する方法に関し、本発明に係る方法は、
- 少なくとも銀を含有する少なくとも1つの機能層を有する日除け被覆層を、外部ガラスの内面又は内部ガラスの外面に設けるか又は熱可塑性の中間層内に設けるステップと、
- ニオブ、タンタル、モリブデン及びジルコニウムから成るグループからの少なくとも1つの金属を含有する少なくとも1つの機能層を有する断熱被覆層を、内部ガラスの内面に設けるステップと、
- その後で行われる、外部ガラスと内部ガラスとを熱可塑性の中間層を介して結合して、合わせガラスを形成するステップと、
を少なくとも有する。
【0052】
外部ガラスと内部ガラスとは、外部ガラスの内面と内部ガラスの外面とが互いに向かい合うように、互いに結合される。日除け被覆層を設ける作業は、時間的に、断熱被覆層を設ける前、後、又は同時に行うことができる。日除け被覆層と断熱被覆層とが設けられた後で、外部ガラスと内部ガラスとが結合されて、合わせガラスが形成される。
【0053】
熱可塑性の中間層は、1つの熱可塑性のフィルムの形態で準備することができる。しかしながらまた熱可塑性の中間層は、複数のフィルムの形態で、例えば2つの熱可塑性フィルムと1つのキャリアフィルムの形態で準備することもできる。この場合熱可塑性の中間層に日除け被覆層を設けるということは、フィルムのうちの1つに、例えばキャリアフィルムに日除け被覆層を設けることだけを含んでいる。キャリアシートは、ガラスの結合による合わせガラスの形成時に、好ましくは両方の熱可塑性のフィルムの間に配置される。
【0054】
日除け被覆層及び断熱被覆層の個々の層は、公知の方法によって、好ましくは磁界によって促進される陰極スパッタリングにおって析出される。陰極スパッタリングは、例えばアルゴンのような保護ガス雰囲気内において行われるか、又は酸素又は窒素の添加によって反応雰囲気内において行われる。しかしながらまた個々の層は、当業者にとって公知の適宜な他の方法によって、例えば蒸着又は化学的な気相析出によって設けることも可能である。
【0055】
本発明はさらにまた、建物における又は、地上、空中又は水上における交通のための移動手段における、特に自動車のリヤウインド、サイドガラス及び/又はルーフガラスとしての、日除け機能及び断熱機能を備えた本発明に係る合わせガラスの使用に関する。
【0056】
次に図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。図面を略示されたものであり、縮尺は忠実ではない。また図面は本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】日除け機能及び断熱機能を備えた本発明に係る合わせガラスの第1の実施形態を示す横断面図である。
図2】日除け機能及び断熱機能を備えた本発明に係る合わせガラスの別の実施形態を示す横断面図である。
図3】日除け機能及び断熱機能を備えた本発明に係る合わせガラスのさらに別の実施形態を示す横断面図である。
図4】本発明に係る方法の1実施形態を示すフローチャートである。
図5】本発明に係る方法の別の実施形態を示すフローチャートである。
【0058】
図1には、日除け機能及び断熱機能を備えた本発明に係る合わせガラスの1構成が、横断面図で示されている。この合わせガラスは、熱可塑性の中間層3を介して互いに結合されている外部ガラス1と内部ガラス2とを有している。合わせガラスは、約1mの大きさを有していて、乗用車のルーフガラスとして設けられており、この場合外部ガラス1は外部環境に向けられ、内部ガラス2は車両内室に向けられている。外部ガラス1は、外面Iと内面IIとを有している。内部ガラス2は、外面IIIと内面IVとを有している。外面I,IIIは外部環境に向けられ、内面II,IVは車両内室に向けられている。外部ガラス1の内面IIと内部ガラス2の外面IIIとは、互いに向かい合っている。外部ガラス1及び内部ガラス2は、ソーダ石灰ガラスを含み、それぞれ2.1mmの厚さを有している。熱可塑性の中間層3は、ポリビニルブチラール(PVB)を含むか又はポリビニルブチラールから成っていて、0.76mmの厚さを有している。
【0059】
外部ガラス1の内面IIには、日除け被覆層4が配置されている。日除け被覆層4は、8mmの幅を有する環状でフレーム状の、被覆層のない領域を除いて、内面II全体にわたって延在している。被覆層のない領域は、熱可塑性の中間層3との接着によって気密に封止されている。これによって日除け被覆層4は、損傷及び腐食に対して好適に保護されている。日除け被覆層4は、例えば少なくとも2つの機能層を有していて、これらの機能層は、少なくとも銀を含有しているか又は銀から成っていて、10nm〜20nmの層厚さを有している。この場合各機能層は、40nm〜70nmの厚さを有する、窒化ケイ素製の2つの誘電体層の間に配置されている。
【0060】
内部ガラス2の内面IVには、断熱層5が配置されている。断熱被覆層5は、所定の順序で内部ガラス2に配置されている複数の層を有している:すなわち、
内部ガラス/Si34/Ti/Nb/Ti/Si34/Ti/Nb/Ti/Si34
【0061】
断熱被覆層5は、2つの機能層を有していて、両機能層は、少なくともニオブ(Nb)を含有しているか又はニオブから成っている。これらの機能層は、例えばそれぞれ約10nmの厚さを有している。これらの機能層は、異なった厚さを有することも可能である。例えば、内部ガラス2に対して僅かな間隔をおいて位置する機能層は、15nm〜20nmの厚さを有することができ、内部ガラス2に対して大きな間隔をおいて位置する機能層は、3nm〜7nmの厚さを有することができる。各機能層は、2つの犠牲層の間に配置されており、両犠牲層は、少なくともチタンを含有しているか又はチタンから成っている。犠牲層は、例えば約1nmの厚さを有している。各機能層と該機能層を取り囲む両犠牲層とから成る複合体は、2つの誘電体層の間に配置されている。誘電体層は、少なくとも窒化ケイ素(Si34)を含有しているか又は窒化ケイ素から成っている。各誘電体層は例えば、40nm〜55nmの厚さを有している。
【0062】
本発明に係る日除け被覆層4は、赤外線放射の反射に基づいて、車両内室及び内部ガラス2が加熱することを減じる。断熱被覆層5は、一方では、特に外気温が高い場合に、合わせガラスを貫いて車両内室内に熱線が放射されることを減じる。他方において断熱被覆層5は、外気温が低い場合に、車両内室から外に熱線が放射されることを減じる。
【0063】
さらに断熱被覆層5は、車両内室への可視光の透過を減じるので、例えばルーフガラスにおけるように、このような減じられた透過が望まれている場合に、調色されたガラスを使用する必要がないか又は僅かに調色されたガラスを使用すればよい。このことは、本発明に係る合わせガラスの大きな利点である。それというのは、車両内室のエアコンディションが大幅に改善され、エアコンディショナを使用する必要性が減じられるからである。
【0064】
日除け被覆層4及び断熱被覆層5は、熱的に高負荷可能であるので、両被覆層4,5は、典型的には600℃を超える温度におけるガラス1,2の温度処理又は曲げに対しても、損傷なしに耐えることができる。
【0065】
図2には、日除け機能及び断熱機能を備えた本発明に係る合わせガラスの別の構成が、横断面図で示されている。外部ガラス1及び内部ガラス2は、ソーダ石灰ガラスを含み、それぞれ2.1mmの厚さを有している。図1とは異なり、日除け被覆層4は、外部ガラス1の内面IIに配置されているのではなく、キャリアフィルム6に配置されている。このキャリアフィルム6は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含んでいるか又はポリエチレンテレフタレートから成っていて、50μmの厚さを有している。日除け被覆層4は、少なくも1つの銀含有の機能層を含む層構造を有している。日除け被覆層4を備えたキャリアフィルム6は、市場で入手可能である(Southwall Technologies, XIR 75)。日除け被覆層4を備えたキャリアフィルム6は、第1の熱可塑性のフィルム3aと第2の熱可塑性のフィルム3bとの間に配置されている。両熱可塑性のフィルム3a,b及びキャリアフィルム6は、熱可塑性の中間層3を形成している。熱可塑性のフィルム3a,3bは、PVBを含んでいるか又はPVBから成っていて、0.38mmの層厚さを有している。キャリアフィルム6は、外部ガラス1、内部ガラス2及び熱可塑性のフィルム3a,3bよりも幾分小さなサイズを有している。キャリアフィルム6は、該キャリアフィルム6が合わせガラスの側縁部にまで達しないように、複合体つまり合わせガラス内に配置されている。これによってキャリアフィルム6は、合わせガラスの縁部領域において、約8mmの幅をもって環状に、熱可塑性のフィルム3a,3bによって取り囲まれている。これによってキャリアフィルム6における日除け被覆層4は、好適に、損傷及び特に腐食に対して保護されている。内部ガラス2の内面IVにおける断熱被覆層5は、図1におけるように形成されている。
【0066】
図3には、日除け機能及び断熱機能を備えた本発明に係る合わせガラスの別の構成が、横断面図で示されている。図1とは異なり、日除け被覆層4は、外部ガラス1の内面IIに配置されているのではなく、内部ガラス2の外面IIIに配置されており、この場合外面IIIの環状の縁部領域は、約8mmの幅にわたって、日除け被覆層4を備えていない。日除け被覆層4は、この構成においても好適に、損傷及び腐食に対して保護されている。内部ガラス2の内面IVにおける断熱被覆層5は、図1におけるように構成されている。
【0067】
図4には、日除け機能及び断熱機能を備えた合わせガラスを製造する、本発明に係る方法の1実施形態のフローチャートが示されている。
【0068】
図5には、日除け機能及び断熱機能を備えた合わせガラスを製造する、本発明に係る方法の別の実施形態のフローチャートが示されている。
【0069】

図2に示したテストガラスの放射率及び光学特性は、表1及び表2にまとめられている。外部ガラス1及び内部ガラス2は、透明又はほぼ透明である。表1,2に記載された値は、標準化された測定条件下でISO基準 9050(AM1.5)に基づく測定によって得られた値である。本発明に係る合わせガラスに対する光の入射角は、10°である。
【0070】
表は、標準の放射率εを示す。透過率T(A)は、車両内室内に透過された放射エネルギを、光形式Aの基準適正な光源の光学的な放射領域において示す。透過率T(D65)は、車両内室内に透過された放射エネルギを、基準適正な放射体D65の光学的な放射領域において示す。透過率Tは、放射体D65の完全なスペクトルの、車両内室内に透過された放射エネルギを示す。さらに、内側における反射率(車両内室に反射された光)及び外側における反射率(外部環境に反射された光)が示されている。この場合R(A)は、光形式Aの光学的な放射領域における反射された放射エネルギを示し、Rは、放射体D65の完全なスペクトルの反射された放射エネルギを示す。記載a*及びb*は、比色モデル(L***-色空間、放射体D65)による色座標に関連している。
【0071】
比較例
比較のために、広く使用されている調色された汎用の、ルーフガラス用の合わせガラスであって、日除け被覆層4及び断熱被覆層5を有していない合わせガラスが、使用されている。相応の測定値は、表1及び表2に記載されている。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
日除け被覆層4及び断熱被覆層5を備えた本発明に係る合わせガラスは、汎用の合わせガラスに比べて、著しく減じられた透過率を有している。このことは、一方では本発明に係る断熱被覆層5(T(A),T(D65)及びT)によって、他方では、可視のスペクトル範囲において十分に透明な、本発明に係る日除け被覆層4(T)によって得られる。光学的な範囲R(A)における内側の反射は、本発明に係る合わせガラスでは、比較ガラスに比べて減じされており、このことは、乗員に対して心地よい視覚的な印象を与える。しかしながらD65放射体の全放射範囲における内側の反射は、本発明に係る合わせガラスでは、明らかに高められており、このことは、可視域の外における放射線、特に赤外線の範囲における放射線の高められた反射された部分を示唆する。つまり本発明に係る合わせガラスは、車両内室からの熱放射に対して特に良好な反射率を有している。標準の放射率εは0.20で極めて低い。つまり本発明に係る合わせガラスは、車両内室への熱放射を比較的僅かしか生ぜしめない。外側の反射R(A)及びRは、本発明に係る合わせガラスでは、大幅に高められている。この数値の上昇は、全放射範囲における反射Rにおいて、可視域における反射R(A)に比べて、顕著である。このことは、日除け被覆層4による赤外線放射の反射に起因すると見なすことができる。
【0075】
本発明に係る日除け被覆層4によって、赤外線スペクトル範囲における、入射する太陽光線の一部は反射される。これによって、車両内室と、入射する放射線の拡散方向において日除け被覆層4の後ろに配置された、合わせガラスの構成部分、特に内部ガラス2とは、比較的僅かしか加熱されなくなる。内部ガラス2の比較的僅かな加熱によって、車両内室内への内部ガラス2からの熱放射が減じられる。加えて、車両内室への内部ガラス2からの熱放射は、本発明に係る断熱被覆層5によってさらに減じられる。断熱被覆層5はまた、外気温が低い場合には、内室からの(赤外線の)熱線の放射を減じる。さらに本発明に係る断熱被覆層5によって、車両内室内への可視光透過が減じられ、その結果、従来技術に比べて、まったく調色されていない又は少なくともあまり強く調色されていないガラスを、又はポリマ層を使用することができる。
【0076】
すなわち本発明に係る日除け被覆層4と本発明に係る断熱被覆層5との組合せによって、夏期においても冬期においても車室空調が大幅に改善される。このような結果は、当業者にとって予期しない、驚くべきことであった。
【符号の説明】
【0077】
1 外部ガラス
2 内部ガラス
3 熱可塑性の中間層
3a 第1の熱可塑性のフィルム
3b 第2の熱可塑性のフィルム
4 日除け被覆層
5 断熱被覆層
6 キャリアフィルム
I 1の外面
II 1の内面
III 2の外面
IV 2の内面
図1
図2
図3
図4
図5