(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012784
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】自動ブレーキ操作終了時のジャークを低減するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
B60T 7/12 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
B60T7/12 C
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-15665(P2015-15665)
(22)【出願日】2015年1月29日
(65)【公開番号】特開2015-145232(P2015-145232A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2015年1月29日
(31)【優先権主張番号】61/933,076
(32)【優先日】2014年1月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/603,468
(32)【優先日】2015年1月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】313005662
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティブ システムズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CONTINENTAL AUTOMOTIVE SYSTEMS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】グラハム ラニア フレッチャー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ パトリック ペイアント
【審査官】
佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−148699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12− 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の速度プロファイルをコントロールする方法であって、当該方法は、
車両の現在位置からの、識別された第1の目標停止距離に基づいて、コントローラによって第1の速度プロファイルを決定すること、
前記第1の目標停止距離より短い第2の目標停止距離で前記車両を実質的に停止させるために必要な第2の速度プロファイルを前記コントローラによって決定すること、
前記車両を前記第2の目標停止距離で停止させる第1の制動力を決定すること、および
前記車両が前記第2の目標停止距離に達すると、前記車両を前記第1の目標停止距離で停止させるために決定された第2の制動力に移行すること、
を含み、
前記第1の制動力から前記第2の制動力への前記移行を、所定の所望のジャークに基づいて決定する、または、
前記第1の制動力から前記第2の制動力への前記移行を、所定の速度に基づいて決定する、
ことを特徴とする、車両の速度プロファイルをコントロールする方法。
【請求項2】
前記第1の制動力は、前記第2の制動力よりも大きい、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の速度プロファイルと前記第2の速度プロファイルのうちの少なくとも1つに従って前記車両を操作するために、自動ブレーキシステムによって車両ブレーキを作動させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記自動ブレーキシステムによる前記車両ブレーキの作動は、電子制御ブレーキシステムへ、前記車両ブレーキを作動させるように命令を送信することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
車両用自動ブレーキシステムであって、
前記車両を減速させるためにホイールブレーキを作動させることができる電子制御ブレーキシステムと、
コントローラとを含んでおり、当該コントローラは、
車両の現在位置からの、識別された第1の目標停止距離に基づいて、第1の速度プロファイルを決定する命令と、
前記第1の目標停止距離より短い第2の目標停止距離で前記車両を実質的に停止させるために必要な第2の速度プロファイルを決定する命令と、
前記車両を前記第2の目標停止距離で停止させる第1の制動力を決定する命令と、
前記車両が前記第2の目標停止距離に達すると、前記第1の目標停止距離で前記車両を停止させるために決定された第2の制動力に前記電子制御ブレーキシステムを移行させる命令と、
を含んでおり、
前記第1の制動力から前記第2の制動力への前記移行は、所定の所望のジャークに基づいて決定される、または、
前記第1の制動力から前記第2の制動力への前記移行は、所定の速度に基づいて決定される、
ことを特徴とする車両用自動ブレーキシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記第1の速度プロファイルと前記第2の速度プロファイルのうちの少なくとも1つに従って前記車両を減速させるために、電子制御ブレーキシステムによって車両ブレーキを作動させる命令を含んでいる、請求項5記載の車両用自動ブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、2014年1月29日付け出願の米国仮出願第61/933076号の優先権を主張するものである。
【0002】
技術分野
本開示内容は自動車両に関し、より詳細には、自動車両の運転者支援システムに関する。
【背景技術】
【0003】
センサ技術の進歩によって、車両用安全システムの改善が可能になった。衝突を検出し、回避するための装置および方法が利用可能になってきている。このような運転者支援システムは、迫っている衝突を検出するために、車両に配置されているセンサを使用する。このシステムは、運転者に、種々の運転状況を警告し、衝突を阻止するまたは最小化する。このようなシステムは特に、自立運転状態または準自立運転状態にある車両の安全性を高めるために有用である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
車両の速度プロファイルをコントロールする方法であって、当該方法は、
車両の現在位置からの、識別された第1の目標停止距離に基づいて、コントローラによって第1の速度プロファイルを決定すること、
前記第1の目標停止距離より短い第2の目標停止距離で前記車両を実質的に停止させるために必要な第2の速度プロファイルを前記コントローラによって決定すること、
前記車両を前記第2の目標停止距離で停止させる第1の制動力を決定すること、および
前記車両が前記第2の目標停止距離に達すると、前記車両を前記第1の目標停止距離で停止させるために決定された第2の制動力に移行すること、
を含む、
ことを特徴とする、車両の速度プロファイルをコントロールする方法。
【0005】
車両用自動ブレーキシステムであって、
前記車両を減速させるためにホイールブレーキを作動させることができる電子制御ブレーキシステムと、
コントローラとを含んでおり、当該コントローラは、
車両の現在位置からの、識別された第1の目標停止距離に基づいて、第1の速度プロファイルを決定する命令と、
前記第1の目標停止距離より短い第2の目標停止距離で前記車両を実質的に停止させるために必要な第2の速度プロファイルを決定する命令と、
前記車両を前記第2の目標停止距離で停止させる第1の制動力を決定する命令と、
前記車両が前記第2の目標停止距離に達すると、前記第1の目標停止距離で前記車両を停止させるために決定された第2の制動力に前記電子制御ブレーキシステムを移行させる命令と、
を含んでいる、
ことを特徴とする車両用自動ブレーキシステム。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】開示される自動ブレーキシステムを使用している車両の概略的な上面図
【
図2】ジャークを低減させる方式のブレーキ操作を終端期間の速度曲線のグラフ
【
図3】ジャークが低減されているブレーキ操作の間の加速のグラフ
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書に記載される背景技術の説明は、概して本開示のコンテキストを提示することを目的とする。本背景技術の章に説明される範囲の、本明細書に記名される発明者の著作物、並びに、その他の点でも出願時における先行技術として見なされ得ない、説明の側面は、本開示に対する先行技術として明示的にも暗示的にも認められるものではない。
【0008】
開示された、車両用の自動ブレーキシステムは、電子制御ブレーキシステムを含む。これは、車両を減速させるためにホイールブレーキを作動させることができる。このシステムはさらに、コントローラを含む。このコントローラは、自動ブレーキ操作終了時のジャークが低減するようにブレーキシステム作動させる。
【0009】
コントローラは、車両の現在の位置からの識別された目標停止距離に基づいて、ブレーキ操作を決める命令を含んでいる。この操作の終了時のジャークを低減させるために、コントローラは、目標停止距離での停止に必要である制動力よりも大きい制動力で最初は制動するように命令を送信し、その後、車両が目標停止距離に到達すると、この制動力をゼロの方向に傾斜させるように命令を送信する。
【0010】
種々の実施例は、図面に示された特定の構成要素を有しているが、本開示の実施形態は、それらの特定の組み合わせに限定されるものではない。ある1つの実施例のいくつかの特徴または構成要素を、別の1つの実施例のいくつかの特徴または構成要素と組み合わせて使用することが可能である。
【0011】
本明細書に開示される特徴およびその他の特徴は、以下の説明および図面から非常に良好に理解することができる。以下に、各図を簡単に説明する。
【0012】
本開示は、以下の詳細な説明および添付の図面からより完全に理解されるであろう。
【実施例】
【0013】
以下の説明は性質的に単なる例示であり、開示内容、その適用、または、その使用を限定することを意図するものではない。明確性を期するために、図面においては、同様の構成要素を識別するために同一の参照符号が使用される。
【0014】
図1を参照する。自動ブレーキシステム12を含んでいる車両10が概略的に示されている。ここでこの自動ブレーキシステム12は、車両の自立運転および準自立運転の間、車両10を制動するために使用され得る。自動ブレーキシステム12は、後進操作の間にも使用され得る。本明細書を通して、相対的な前進方向および後進方向は、車両10の操作者が車両10の操作時に主に面するであろう方向に関している。
【0015】
自動ブレーキシステム12を、他の安全システムと一緒に使用することができる。これは例えば、後進時衝突回避システム14および電子制御ブレーキシステム(EBS)16である。共通のまたは別個のコントローラ18が、システム12、14、16によって使用されてもよい。衝突回避システム14は、シグナリングデバイス22を含んでいてもよい。これは、車両客室内に配置されており、操作者に、周辺の対象物22と衝突が起こり得ることを警告する。
【0016】
開示された例では、システム12、14および16は、車両10内に配置されているセンサから得られた情報を使用する。この例では、カメラ30と近接センサ36とが設けられている。これらは、車両10の周辺環境にある対象物34に関する情報を調達する。さらに、システム12、14および16は、車両10内に設けられているグローバル・ポジショニング・システム38から情報を得ることができる。車両の周辺環境に関する情報を提供する他の方法および装置が、開示されたシステムとともに使用可能であり、これらは、本開示内容の企図内に含まれている。
【0017】
自動ブレーキシステム12は、ブレーキイベントが必要なときを定め、各ホイール20で必要とされる制動力を定め、車両10が前進方向に進んでいるのかまたは後進方向に進んでいるのかを定める。
【0018】
短期間の間に減速度を著しく変えるブレーキ操作は、車両のジャークまたは急激な揺すぶりを生じさせ得る。これは車両の乗員にとって不快なものであり、かつ、不所望なものである。自動ブレーキシステム12による予測および早期の介入によって、ブレーキ操作のよりコントロールされた終了とともに、より緩やかな制動が可能になる。
【0019】
自動ブレーキシステム12は、ブレーキイベントが生じる必要があるときを決める。コントローラ18は、速度プロファイルおよび、車両10に対してブレーキが掛けられる場合に必要となる、必要な制動力を決定することができる。速度プロファイルは、EBS16とは別個の、自動ブレーキシステム12用のアルゴリズムによって決定される。自動ブレーキシステム12は、停止へと漸次的に移行するために、自動ブレーキ操作の終端での、傾斜しながら消えていく(ramp out)制動力を決定するために、この決定された速度プロファイルを使用する。
【0020】
このアルゴリズムおよび、結果として生じる、制動力の傾斜しながらの消失は、単に、動的な摩擦から静的な摩擦への移行に着目しているのではない。この方法およびシステムは、車両速度がゼロになったときに、車両10がスムーズに、ゼロに近い最終制動減速へと移行するように、実際の速度プロファイルを定める。
【0021】
ゼロへの車両速度の移行に付随する典型的なジャークは、コントローラ18によって格段に低減されるまたは回避される。ここでこのコントローラ18は、一連のブレーキ操作にわたって、所望の制動力を事前に計画する。自動ブレーキ操作は、故意に、所望の停止位置より前の位置で最大制動力に達する、これによって、制動力は、車両10が所望の位置および時間で停止する前に、ゼロに向かって傾斜しながら消えていく。
【0022】
図1を参照しつつ、
図2を参照する。グラフ70は、時間にわたった車両の減速曲線を示している。車両が所定の位置および時間で停止することを要求する対象物34または何らかの他のイベントまたは障害物が検出されると、コントローラ18は、第1の制動操作を決定する。これは、線72によって示された第1の減速を結果として生じさせる。この第1の減速は、車両10を、78で示される目標距離および時間で停止させる。しかし、このような停止は、不所望なジャークまたは急激な揺れを生じさせ得る。
【0023】
従って、コントローラ18は、第2の制動操作74を決定する。これは最初は、線72によって示された操作の減速よりも大きい減速を有している。しかしこれは、車両が、76で示される第2の時間で所望の停止位置に達する前に、ゼロに向かって傾斜して後退する(ramps back)。
【0024】
図2を参照しつつ、
図3を参照する。所定の時間または距離で、コントローラ18は、制動力が傾斜して後退するように命令をする。これによって、加速度が、82で示される増大する振幅の第1のセグメントから、84で示される低減する振幅の第2のセグメントへと変化する。これは、ゼロの方向へ動き、目標停止距離および時間での、速度ゼロへの漸次的な移行を提供する。速度ゼロに達すると、減速の瞬時の変化は、線74によって示される操作の場合は、線72によって示されるものよりも格段に小さくなる。従って、例示されたブレーキシステム12は、緩やかな停止特徴を含む。これは、車両が実質的に完全に停止する際に、ジャークを低減させる。
【0025】
第1の制動力および第1の速度プロファイルと、第2の制動力および第2の速度プロファイルとの間の移行は、車両の現在の動きの第2の状態を基に決定される。1つの例では、この移行は、所定の停止距離からの距離に基づいて決定される。従ってこの移行は、車両が最終的に停止するまでの所定の距離に基づいている。これは、車両がゼロの加速度およびゼロの速度に達する、最終停止への距離または時間に基づき得る。
【0026】
この移行が、車両の最終停止位置での許容可能なジャーク量に基づいていてもよい。許容可能な最終的なジャーク量および移行点は次のように定められる。すなわち、車両の最終的な停止が結果として、規定の範囲内のジャークを生じさせるように、定められる。
【0027】
以上、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明してきたが、本開示の正当な範囲はこれらの形態に限定されるべきではない。なぜなら、本発明に関連する分野に精通する当業者であれば、添付の特許請求の範囲内において、本発明を実施するための種々異なる複数の択一的設計および実施形態が存在することを明確に理解するからである。