特許第6012797号(P6012797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6012797-車外用エアバッグ 図000002
  • 特許6012797-車外用エアバッグ 図000003
  • 特許6012797-車外用エアバッグ 図000004
  • 特許6012797-車外用エアバッグ 図000005
  • 特許6012797-車外用エアバッグ 図000006
  • 特許6012797-車外用エアバッグ 図000007
  • 特許6012797-車外用エアバッグ 図000008
  • 特許6012797-車外用エアバッグ 図000009
  • 特許6012797-車外用エアバッグ 図000010
  • 特許6012797-車外用エアバッグ 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012797
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】車外用エアバッグ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/36 20110101AFI20161011BHJP
【FI】
   B60R21/36
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-46277(P2015-46277)
(22)【出願日】2015年3月9日
(65)【公開番号】特開2016-165946(P2016-165946A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2015年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末棟 寛士
(72)【発明者】
【氏名】橋本 善之
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 晃宏
(72)【発明者】
【氏名】米山 央
(72)【発明者】
【氏名】音辻 大翼
(72)【発明者】
【氏名】長澤 勇
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−104950(JP,A)
【文献】 特開2003−252143(JP,A)
【文献】 特開2006−044569(JP,A)
【文献】 特開2009−161164(JP,A)
【文献】 特開2008−222148(JP,A)
【文献】 特開2006−219046(JP,A)
【文献】 特開2003−291756(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第10062560(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフロントガラスの幅方向両側に位置するフロントピラーのそれぞれの前方において、前記フロントピラーの下端側から前記フロントピラーに沿って上方に向かって延びるように展開して前記フロントピラーを下端から上端まで覆う一対の側縁バッグと、
前記一対の側縁バッグの上端側を互いに連結し、前記フロントガラスの上縁部に沿って設けられたルーフパネルの前縁部を前側から隠すように位置する姿勢保持部材とを備え
前記姿勢保持部材は、幅広く形成された幅広面を有し、前記幅広面が前方を向くように前記フロントガラスに対して傾斜して配置される車外用エアバッグ。
【請求項2】
前記一対の側縁バッグは、前記フロントガラスから前方に張り出した先端部が内側に向かって屈曲するように形成された請求項1に記載の車外用エアバッグ。
【請求項3】
前記一対の側縁バッグは、前記フロントガラスの下縁部側から上縁部側に向かって厚みが徐々に大きくなるように形成される請求項1または2に記載の車外用エアバッグ。
【請求項4】
前記一対の側縁バッグの間に延びる線状部材をさらに有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の車外用エアバッグ。
【請求項5】
前記線状部材は、前記一対の側縁バッグの間に網目状に配置される請求項4に記載の車外用エアバッグ。
【請求項6】
前記フロントガラスの下縁部側に位置するカウルパネルに沿って展開する下縁バッグをさらに有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の車外用エアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車外用エアバッグに係り、特に、フロントピラーに沿って上方に向かって延びるように展開する車外用エアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、歩行者などの保護対象者が自動車に衝突する際に、衝突の衝撃から保護対象者を保護する車外用エアバッグが用いられている。一般的に、車外用エアバッグは、自動車に折り畳まれて収容されており、内部に展開ガスを注入することにより展開される。この展開された車外用エアバッグが保護対象者を受け止める際に保護対象者からの圧力に応じて変形することにより、保護対象者の衝突エネルギーを吸収することができる。
車外用エアバッグとしては、例えば、自動車において硬く形成されたフロントピラーに沿うように展開するものが実用化されている。保護対象者は、フロントピラーに対して様々な方向および速度で衝突するため、これらの衝突に対応した車外用エアバッグが求められている。
【0003】
そこで、速い速度で衝突する保護対象者を保護する技術として、例えば、特許文献1には、カバー部材に形成される扉部が、ミラー本体の前側に配置されて内縁側を外側に向けるように開く前扉部と、ミラー本体の内側に配置されて前縁側を後方に向けるように開く内扉部とを有するエアバッグ装置が提案されている。このエアバッグ装置では、エアバッグの展開時に、前扉部と内扉部とが開いて形成された突出用開口からバッグ本体を迅速に突出させるため、保護対象者がフロントピラーに衝突する前に展開して保護対象者を保護することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−213142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、エアバッグは、フロントピラーに沿って延びるように展開するため展開時および展開後の姿勢が不安定となる。特許文献1のエアバッグ装置では、支持膨張部などを設けることによりエアバッグの展開後の姿勢を安定化させているが、これにより装置構成が複雑化して展開の妨げとなるおそれがあった。
【0006】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、展開時および展開後の姿勢を容易に安定させることができる車外用エアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る車外用エアバッグは、自動車のフロントガラスの幅方向両側に位置するフロントピラーのそれぞれの前方において、フロントピラーの下端側からフロントピラーに沿って上方に向かって延びるように展開してフロントピラーを下端から上端まで覆う一対の側縁バッグと、一対の側縁バッグの上端側を互いに連結し、フロントガラスの上縁部に沿って設けられたルーフパネルの前縁部を前側から隠すように位置する姿勢保持部材とを備え、姿勢保持部材は、幅広く形成された幅広面を有し、幅広面が前方を向くようにフロントガラスに対して傾斜して配置されるものである。
【0008】
ここで、一対の側縁バッグは、フロントガラスから前方に張り出した先端部が内側に向かって屈曲するように形成されることが好ましい。
【0009】
また、一対の側縁バッグは、フロントガラスの下縁部側から上縁部側に向かって厚みが徐々に大きくなるように形成されることが好ましい。
【0010】
また、一対の側縁バッグの間に延びる線状部材をさらに有することができる。また、線状部材は、一対の側縁バッグの間に網目状に配置することができる。
【0011】
また、フロントガラスの下縁部側に位置するカウルパネルに沿って展開する下縁バッグをさらに有することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、一対の側縁バッグの上端側を姿勢保持部材で互いに連結するので、展開時および展開後の姿勢を容易に安定させることができる車外用エアバッグを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の実施の形態1に係る車外用エアバッグの構成を示し、(A)は正面図、(B)は側面図である。
図2】自動車に収容された車外用エアバッグを示す図である。
図3】車外用エアバッグが展開する様子を示す図である。
図4】自転車を運転する保護対象者が自動車に衝突する様子を示す図である。
図5】保護対象者を受け止める様子を示す図である。
図6】この発明の実施の形態2に係る車外用エアバッグの構成を示す正面図である。
図7】この発明の実施の形態2の変形例に係る車外用エアバッグの構成を示す正面図である。
図8】この発明の実施の形態3に係る車外用エアバッグの構成を示し、図8(A)は斜視図、図8(B)は図8(A)のA−A線断面図である。
図9】この発明の実施の形態4に係る車外用エアバッグの構成を示す側面図である。
図10】実施の形態1〜4の変形例に係る車外用エアバッグの構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1(A)および(B)に、この発明の実施の形態1に係る車外用エアバッグの構成を示す。この車外用エアバッグは、自動車MのフロントガラスWの幅方向両側に位置する一対のフロントピラーPの前方において一対のフロントピラーPの下端側から一対のフロントピラーPに沿って上方に向かって延びるように展開する一対の側縁バッグ1と、フロントガラスWの下縁部側に位置するカウルパネルLに沿って延びるように展開する下縁バッグ2と、一対の側縁バッグ1の上端側を互いに連結する姿勢保持部材3とを有する。
【0015】
なお、自動車Mは、フロントガラスWが下縁部から上縁部に向かって後方に傾斜して設けられると共に一対のフロントピラーPがフロントガラスWの両側縁部に沿って傾斜して設けられ、ルーフパネルがフロントガラスWの上縁部から後方に向かって配置されている。また、フロントガラスWの下縁部に沿ってカウルパネルLが配置されると共にフロントガラスWの上縁部に沿ってルーフパネルの前縁部B(フロントブレースに対応する箇所)が位置し、フロントガラスWの下縁部近傍から前方に張り出して自動車Mの前部を覆うようにフロントフードHが設けられている。
【0016】
一対の側縁バッグ1は、一対のフロントピラーPを下端から上端まで覆うように展開する。
下縁バッグ2は、カウルパネルLを前側から覆うように展開し、その両端部が一対の側縁バッグ1の下端部に接続されている。また、下縁バッグ2の下部は、自動車Mに固定されている。
側縁バッグ1と下縁バッグ2は、一定の厚みTでフロントガラスWから前方に大きく張り出すように形成されている。また、側縁バッグ1と下縁バッグ2は、連続する環状の横断面を有し、中空に形成された内部が互いに連通するように接続されている。
【0017】
姿勢保持部材3は、一対の側縁バッグ1を互いに支持して姿勢を保持させるもので、細長く延びた形状を有し、一端が一方の側縁バッグ1の上端側に連結されると共に他端が他方の側縁バッグ1の上端側に連結されている。また、姿勢保持部材3は、フロントガラスWに沿う方向に幅広く形成されており、ルーフパネルの前縁部Bを前側から隠すようにルーフパネルの前縁部Bにほぼ対向して配置されている。姿勢保持部材3としては、例えばテザー、車外用エアバッグの基布および細いエアバッグなどから構成することができる。
【0018】
図2に、自動車Mに収容される車外用エアバッグを示す。
車外用エアバッグは、自動車Mの前部を覆うフロントフードHの後縁部の下側に配置された収容部4に折り畳まれた状態で収容されている。ここで、姿勢保持部材3は薄く形成されており、側縁バッグ1および下縁バッグ2と比較してコンパクトに収容することができる。また、収容部4にはインフレータ5が設けられ、このインフレータ5が下縁バッグ2に接続されている。インフレータ5から下縁バッグ2を介して車外用エアバッグ内に展開ガスが注入されることにより、フロントフードHの後縁部とフロントガラスWの下縁部との間の隙間を介して車外用エアバッグが車外に展開される。
【0019】
この時、車外用エアバッグは、図3に示すように、側縁バッグ1の上端部と共に姿勢保持部材3が最初に車外に露出し、側縁バッグ1がフロントピラーPに沿って上方に延びるように展開される。ここで、側縁バッグ1は、下縁バッグ2を介して下端部のみで自動車Mに固定され、フロントピラーPの下端部から上端部まで延びる部分は自動車Mに固定されていない。このため、側縁バッグ1を支持しないで展開すると姿勢が安定せず、例えば側縁バッグSのように側方に揺れながら展開するおそれがある。そこで、姿勢保持部材3により連結して一対の側縁バッグ1を互いに支持することで、側縁バッグ1の展開時の姿勢が安定化し、側縁バッグ1によりフロントピラーPを速やかに覆うことができる。
【0020】
また、側縁バッグ1がフロントピラーPに沿って展開している間に、下縁バッグ2も車外に露出されて、下縁バッグ2がカウルパネルLに沿うように展開される。このようにして、図1(A)および(B)に示すように、側縁バッグ1がフロントピラーPを覆うと共に下縁バッグ2がカウルパネルLを覆うように展開する。この展開後においても姿勢保持部材3により一対の側縁バッグ1が互いに支持されているため、一対の側縁バッグ1の姿勢を安定させることができる。
【0021】
なお、車外用エアバッグの展開方向は、例えば、インフレータ5から注入される展開ガスの方向、車外用エアバッグの形状および車外用エアバッグの折り畳み方などで制御することができる。また、車外用エアバッグを展開させる順番は、折り畳み方などで制御することができ、例えば側縁バッグ1の上端部と姿勢保持部材3が外側に位置するように折り畳むことで上記のように車外用エアバッグを展開させることができる。
【0022】
次に、車外用エアバッグを展開させて保護対象者を保護する一例を説明する。
まず、歩行者および自転車の運転者などの保護対象者が自動車Mの前部に接近すると、自動車Mに搭載された図示しない検出センサが保護対象者を検出する。検出センサとしては、例えば、レーザを保護対象者に照射して検出するセンサ、およびカメラから得られる画像に基づいて検出するセンサなどを利用することができる。
この検出センサから得られる検出情報に基づいて保護対象者が自動車Mに衝突すると判断されると、図2に示すように、収容部4に収容された車外用エアバッグ内にインフレータ5から展開ガスが注入される。
【0023】
展開ガスが注入された車外用エアバッグは、図3に示すように、一対の側縁バッグ1の上端部と姿勢保持部材3が収容部4内から車外に最初に露出される。続いて、一対の側縁バッグ1が一対のフロントピラーPに沿って下端側から上方に向かって延びるように展開すると共に、側縁バッグ1の展開に伴って姿勢保持部材3がフロントガラスWに沿って上方に移動される。この時、一対の側縁バッグ1は、姿勢保持部材3により上端部が互いに連結されて支持されているため、展開時の姿勢が安定してスムーズに展開させることができる。
特に、側縁バッグ1は、フロントピラーPを下端から上端まで覆うと共に前方に大きく張り出すように大型に形成されている。このため、側縁バッグ1は、展開時に姿勢が大きく崩れるおそれがあるが、姿勢保持部材3を設けることにより側縁バッグ1の姿勢を確実に安定させることができる。
【0024】
側縁バッグ1がフロントピラーPの下端部から上端部まで覆うように展開されると、姿勢保持部材3がルーフパネルの前縁部Bを前側から隠すように位置される。また、側縁バッグ1が展開している間に、下縁バッグ2がカウルパネルLを覆うように展開される。
このように、側縁バッグ1と下縁バッグ2は、フロントピラーPとカウルパネルLに沿って展開されるため自動車Mを運転する運転者の視界を遮ることがなく、展開時における運転者の視界を確保することができる。また、展開された車外用エアバッグは、フロントガラスWの縁部を囲むような形状を有するため、展開後においても運転者の視界を確保することができる。
【0025】
このようにして、車外用エアバッグは、図1(A)および(B)に示すように、フロントガラスWの縁部を囲むように展開される。
ここで、自動車Mに衝突した保護対象者は、幅広い範囲に飛ばされるおそれがある。特に、図4に示すように、自転車を運転する保護対象者Cに自動車Mが衝突した場合には、保護対象者Cの重心位置が高いため、より後方の広い範囲に飛ばされるおそれがあり、例えば自動車Mの上方に向かって飛ばされた保護対象者Cはルーフパネルの前縁部Bに衝突した後にさらにルーフパネルの後方へ大きく飛ばされるおそれがある。また、自動車Mの側方に飛ばされた保護対象者Cは、フロントピラーPの側部に衝突してさらに側方に飛ばされ、対向車などに2次衝突するおそれもある。
【0026】
そこで、上記のように車外用エアバッグを展開することにより、幅広い範囲に飛ばされる保護対象者Cを確実に受け止めることができる。
例えば、図5(A)に示すように、フロントピラーPに向かって飛ばされた保護対象者Cは、大きな厚みTを有する側縁バッグ1の内壁部で受け止められ、側縁バッグ1が変形することにより保護対象者Cの衝突エネルギーが吸収される。この時、一対の側縁バッグ1が姿勢保持部材3により互いに連結されていない場合には、側方へ向かう保護対象者Cからの圧力により側縁バッグSのように上端部が側方に大きく開き、保護対象者CがフロントピラーPの側方へ飛ばされるおそれがある。そこで、姿勢保持部材3により一対の側縁バッグ1の上端側を互いに連結して一対の側縁バッグ1を互いに支持することで、保護対象者Cを側縁バッグ1の内壁部で受け止めた際に、保護対象者Cが側縁バッグ1の外側へ飛び出すことを抑制することができる。また、側縁バッグ1がフロントピラーPを覆うように配置されているため、保護対象者Cを受け止める際に保護対象者CがフロントピラーPに直接衝突することを防ぐこともできる。
【0027】
また、図5(B)に示すように、保護対象者Cがルーフパネルの前縁部Bに向かって飛ばされた場合には、保護対象者Cは姿勢保持部材3で受け止められる。この時、後方へ向かう保護対象者Cからの圧力に応じて、姿勢保持部材3が内側に折り畳まれるように変形すると共に一対の側縁バッグ1が上端部を互いに近づけるように変形する。これにより、保護対象者Cの衝突エネルギーをスムーズに吸収すると共に保護対象者Cが姿勢保持部材3を乗り越えてルーフパネルの後方に大きく飛ばされることを抑制することができる。また、姿勢保持部材3がルーフパネルの前縁部Bを前側から隠すように配置されることにより、例えば保護対象者Cの頭部などを姿勢保持部材3の幅広く形成された面で受け止めることができ、保護対象者Cがルーフパネルの前縁部Bに直接衝突することを防ぐこともできる。
【0028】
なお、一対の側縁バッグ1は、保護対象者Cが側縁バッグ1の内側に収まるような厚みTでフロントガラスWから前方に張り出すように展開されることが好ましい。また、姿勢保持部材3は、側縁バッグ1aおよび1bの厚みT方向において上方側に設けることが好ましい。これにより、保護対象者Cが側縁バッグ1および姿勢保持部材3を乗り越えて車外用エアバッグの外側へ飛ばされることを確実に抑制することができる。
【0029】
このようにして、フロントピラーPおよびルーフパネルの前縁部Bに保護対象者Cが直接衝突することを防ぐと同時に、保護対象者Cが側縁バッグ1および姿勢保持部材3の外側に飛ばされて対向車などに2次衝突することを防ぐことができる。
また、保護対象者CがカウルパネルLに向かって飛ばされた場合には、保護対象者Cは下縁バッグ2で受け止められ、カウルパネルLに直接衝突することを防ぐことができる。
【0030】
本実施の形態によれば、一対の側縁バッグ1の上端側を姿勢保持部材3で連結することにより、展開時および展開後において車外用エアバッグの姿勢を容易に安定させることができる。また、側縁バッグ1、下縁バッグ2および姿勢保持部材3により保護対象者Cが自動車Mの硬部箇所に直接衝突することを防ぐと同時に、様々な方向に飛ばされる保護対象者Cを車外用エアバッグの内側に留めることができる。
【0031】
実施の形態2
実施の形態1の車外用エアバッグにおいて、一対の側縁バッグ1の間に延びる線状部材を設けることができる。
例えば、図6に示すように、一対の側縁バッグ1の間に網目状に延びる線状部材21を配置することができる。この線状部材21は、フロントガラスWの幅方向に延びて一対の側縁バッグ1の内壁部を互いに接続する複数の横線状部材と、フロントガラスWに沿って上下方向に延びると共に最も上方に位置する横線状部材と下縁バッグ2の内壁部とを互いに接続する複数の縦線状部材とを有する。ここで、複数の横線状部材は一対の側縁バッグ1の厚みT方向において内壁部の中央部近傍に接続され、複数の縦線状部材は下縁バッグ2の厚みT方向において内壁部の中央部近傍に接続されている。
【0032】
これにより、フロントガラスWに向かって飛ばされた保護対象者Cを線状部材21で受け止めることができる。この時、線状部材31とフロントガラスWとの間の空間に線状部材31が撓むことで保護対象者Cの衝突エネルギーを吸収し、保護対象者CがフロントガラスWに直接衝突することを防ぐことができる。なお、自動車Mの側方に向かって飛ばされた保護対象者Cは一対の側縁バッグ1の内壁部の上半部側で受け止めることができ、自動車Mの上方に向かって飛ばされた保護対象者Cは姿勢保持部材3で受け止めることができる。
また、一対の側縁バッグ1が線状部材21により互いに接続されるため、展開時および展開後において車外用エアバッグの姿勢をより安定させることができる。さらに、線状部材21を網目状に配置することにより、運転者の視界を確保することもできる。
【0033】
また、図7に示すように、一方の側縁バッグ1の上端側から他方の側縁バッグ1の下端側に延びると共に他方の側縁バッグ1の上端側から一方の側縁バッグ1の下端側に延びるように線状部材22を配置することもできる。これにより、保護対象者CがフロントガラスWに直接衝突することを防ぐことができ、自動車Mの上方および側方に向かって飛ばされた保護対象者Cを姿勢保持部材3および一対の側縁バッグ1で受け止めることもできる。さらに、展開時および展開後において車外用エアバッグの姿勢を安定させることができ、運転者の視界を確保することもできる。
なお、線状部材は、例えば、テザー、車外用エアバッグの基布および細いエアバッグなどから構成することができる。
【0034】
実施の形態3
実施の形態1および2では、一対の側縁バッグ1と下縁バッグ2は連続する環状の横断面を有するように形成されたが、保護対象者Cを受け止めることができればよく、この形状に限られるものではない。
【0035】
例えば、図8(A)および(B)に示すように、実施の形態1の一対の側縁バッグ1に換えて、一対の側縁バッグ31を配置することができる。一対の側縁バッグ31は、フロントガラスWから前方に張り出す方向の先端部32が内側に向かって屈曲するように形成されている。これにより、フロントピラーPに向かって飛ばされる保護対象者Cを側縁バッグ31で受け止める際に、内側から外側へ向かう保護対象者Cを確実に支持し、保護対象者Cが側縁バッグ31を乗り越えて外側へ飛ばされることを抑制することができる。
【0036】
本実施の形態によれば、側縁バッグ31の先端部32を内側に向かって屈曲するように形成することにより、外側へ向かう保護対象者Cを確実に支持し、保護対象者Cを車外用エアバッグの内側に留めることができる。
【0037】
実施の形態4
実施の形態1〜3では、一対の側縁バッグおよび下縁バッグは一定の厚みTで形成されたが、配置箇所に応じてその厚みTを変えることもできる。
【0038】
例えば、図9に示すように、実施の形態1の一対の側縁バッグ1および下縁バッグ2に換えて、一対の側縁バッグ41および下縁バッグ42を配置することができる。この一対の側縁バッグ41は、フロントガラスWから前方に張り出す厚みTが下端部から上端部に向かって徐々に大きくなるように形成されている。また、下縁バッグ42の厚みTは、側縁バッグ41の下端部の厚みTと同じ大きさで形成されている。すなわち、車外用エアバッグは、フロントガラスWから前方に張り出した厚みTがフロントガラスWの下縁部側から上縁部側に向かって徐々に大きくなるように形成されている。
なお、姿勢保持部材3は、一対の側縁バッグ41の上端側において厚み方向Tの中央部近傍を互いに連結するように設けられている。
【0039】
本実施の形態によれば、一部の厚みTを小さく形成することで展開速度を向上させると共に収容スペースを小さくすることができ、側縁バッグ41の上端側の厚みTは大きく保つことで保護対象者Cを受け止める機能を維持することができる。なお、車外用エアバッグの厚みTは保護対象者Cが飛ばされる方向に応じて変えることが好ましく、例えばフロントガラスWの下縁部に向かって保護対象者Cが飛ばされる可能性が高い場合には、フロントガラスWの上縁側から下縁側に向かって厚みTが徐々に大きくなるように形成してもよい。
【0040】
なお、実施の形態1〜4において、姿勢保持部材3は、幅広く形成された面がフロントガラスWとほぼ平行となるように配置されたが、一対の側縁バッグの上端側を連結していればよく、その形状および向きは特に限定されるものではない。
例えば、図10に示すように、実施の形態1の姿勢保持部材3に換えて、姿勢保持部材51を配置することができる。この姿勢保持部材51は、幅広く形成された幅広面52が前方を向くようにフロントガラスWに対して傾斜して配置されている。これにより、姿勢保持部材51の幅広面52を保護対象者Cが飛ばされる方向を向くように配置することができ、ルーフパネルの前縁部Bに向かって飛ばされた保護対象者Cの頭部などを幅広面52の正面で受け止めることができる。
【符号の説明】
【0041】
1,31,41 一対の側縁バッグ、2,42 下縁バッグ、3,51 姿勢保持部材、4 収容部、5 インフレータ、21,22 線状部材、32 先端部、52 幅広面、M 自動車、W フロントガラス、P 一対のフロントピラー、L カウルパネル、B ルーフパネルの前縁部、H フロントフード、T 厚み、S 側縁バッグ、C 保護対象者。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10