【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成25年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、光配線層としての機能を果たす光導波路が形成されたSOI(Silicon on Insulator)基板に、GaAsあるいはInP等の化合物半導体をハイブリッド集積し、光トランシーバ等の機能素子を実現する技術が注目されている。このような機能素子においては、当該機能素子への光入力信号あるいは当該機能素子からの光出力信号を導波する光導波路と、光ファイバ等の外部の光導波路(あるいは光学素子)を結合させるためのスポットサイズ変換器が必要とされる。
【0003】
シリコン素材で形成された導波路コアの先端部に向かって幅方向の寸法が縮小するテーパ形状の部分を含む第1導波路コアと、第1導波路コアのテーパ形状の部分を覆うように、シリコンより低屈折率の素材で形成された第2導波路コアが形成されたスポットサイズ変換器が開示されている(特許文献1参照)。第1導波路コアを伝搬する伝搬光がテーパ形状の部分を先端部に向かって進むにつれて、徐々に第2導波路コアを伝搬する伝搬モードに変換されてモードフィールド径が拡大される。しかしながら、第1導波路コアのテーパ形状の部分は、コア幅だけが単純に狭まる構造であるため、テーパ形状の部分の先端部分において、TE(Transverse Electric)波成分のモードフィールド径は広がるがTM(Transverse Magnetic)波成分のモードフィールド径はあまり広がらない。そのため、TE波成分とTM波成分とでモードフィールド径の拡大(あるいは縮小)の度合いに差が生じる。
【0004】
この課題の解決策として、例えば、シリコン素材で形成された第1導波路コア幅だけでなく、厚み方向の寸法も縮小し、幅及び厚みの両方向に対する2次元テーパ構造とすることによって、TE波及びTM波の両偏波成分に対して共に光閉じ込め効果を小さくすることによって、偏波依存性を解消することが考えられる。例えば、特許文献2に、シリコン導波路コアの厚み方向の寸法を加工する手法が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献2に開示されたテーパ導波路の製造方法によれば、シリコン導波路コアの厚み方向の寸法の加工には、厚みを段階的に低減する複数ステップを形成する手法が用いられている。この様なステップ形状を形成するには、複数回のフォトリソグラフィー及びエッチングプロセスが必要となり、製造工程が複雑となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本願発明の目的は、複数ステップを形成する工程を利用するよりも容易に作製が可能であり、TM波成分に対する光損失が低減され、TE波成分とTM波成分に対するモードフィールド径の変換の度合いに差が生じにくいスポットサイズ変換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の発明者は、シミュレーション解析によって上述の課題が解決できるスポットサイズ変換器の構成を見出した。本願発明の要旨によれば、以下の特徴を具えている。
【0009】
本願発明のスポットサイズ変換器の基本構成は、第1導波路コアと第2導波路コアを備えている。第1導波路コアと第2導波路コアの導波方向に順次設定された第1〜第6構成領域の各構成領域において、第1導波路コアは第1〜第4構成領域の全域にわたって形成され、第2導波路コアは、第3構成領域〜第6構成領域の全域にわたって形成されている。そして、第1導波路コアと第2導波路コアは、両導波路コアの厚み方向に、第1導波路コアの対称中心と第2導波路コアの対称中心とが重なるように、かつ第1導波路コアの導波方向と第2導波路コアの導波方向は互いに平行になるように積み重ねて配置されている。
【0010】
第1導波路コアの、第1構成領域に含まれる部分はコア幅が一定の均一幅導波路コアとして形成され、第2構成領域に含まれる部分は第3構成領域に向かってコアの幅が広まるテーパ構造領域(逆テーパ導波路コア)として形成され、第3構成領域に含まれる部分は第2構成領域に含まれる部分の最大幅に等しい幅の均一幅導波路コアとして形成され、第4構成領域に含まれる部分は第5構成領域に向かってコアの幅が狭まるテーパ構造領域(テーパ導波路コア)として形成されている。
【0011】
第2導波路コアの、第3構成領域に含まれる部分は、第3構成領域に含まれる第1導波路コアの幅よりも広い幅の均一幅導波路コアとして形成されており、第4構成領域に含まれる部分は、第5構成領域に向かってコアの幅が広まるテーパ構造領域(逆テーパ導波路コア)として形成されており、第5構成領域に含まれる部分は、第4構成領域に含まれる部分の最大幅に等しい幅の均一幅導波路コアとして形成され、第6構成領域に含まれる部分は、第5構成領域から離れる方向に向かってコアの幅が狭まるテーパ構造領域(テーパ導波路コア)として形成されている。
【0012】
本願発明のスポットサイズ変換器は、上述の基本構成に対して、更に、下部クラッド層、及び上部クラッド層を加えた構成とすることができる。
【0013】
この場合、第1及び第2構成領域は、下部クラッド層、第1導波路コア、上部クラッド層の順に積層され、第3及び第4構成領域は、下部クラッド層、第2導波路コア、第1導波路コア、上部クラッド層の順に積層され、第5及び第6構成領域は、下部クラッド層、第2導波路コア、上部クラッド層の順に積層されている。あるいは、第1及び第2構成領域は、下部クラッド層、第1導波路コア、上部クラッド層の順に積層され、第3及び第4構成領域は、下部クラッド層、第1導波路コア、第2導波路コア、上部クラッド層の順に積層され、第5及び第6構成領域は、下部クラッド層、第2導波路コア、上部クラッド層の順に積層されてもよい。
【0014】
第1導波路コア及び第2導波路コアはシリコン素材で形成し、下部クラッド層及び上部クラッド層は、シリコン素材より屈折率が小さい素材で形成することができる。具体的には下部クラッド層及び上部クラッド層は、酸化シリコン素材あるいは窒化シリコン素材で形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明の要旨のスポットサイズ変換器によれば、後述するシミュレーション結果に示されるように、TM波成分に対する光損失が低減され、TE波成分とTM波成分に対するモードフィールド径の変換の度合いに差が生じにくく、実用上支障のない程度に光損失が小さい、スポットサイズ変換器が実現される。すなわち、SOI基板に形成された光トランシーバ等の機能素子へ外部から光信号を入力させる際、あるいは当該機能素子からの光出力信号を導波する光導波路と光ファイバ等の外部の光導波路を結合させる際に利用して好適なスポットサイズ変換器を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を参照して、この発明の実施形態につき説明する。なお、本願発明のスポットサイズ変換器の概略的構成を示す各図は、この発明の実施形態に係る一構成例を示すものであり、この発明を図示例に限定するものではない。また、以下の説明において、特定の構成素材及び設計条件等を用いることがあるが、これら構成素材及び設計条件等は好適例の一つに過ぎず、したがって、何らこれらに限定されない。また、各図において同様の構成要素については、同一の番号を付して示し、その重複する説明を省略することもある。
【0018】
<従来のスポットサイズ変換器>
まず、
図1(A)及び(B)を参照して、本願発明の理解に資するため、従来のスポットサイズ変換器の構成及びその機能について説明する。
図1(A)は従来のスポットサイズ変換器の概略的構成(平面図と断面図)を示す図であり、
図1(B)は
図1(A)のa及びbで示す各位置における伝搬光のTE波成分及びTM波成分のビームスポットの様子を示す図である。
【0019】
図1(A)に示すように、従来のスポットサイズ変換器は、次のように構成されている。すなわち、シリコン基板10上に下部クラッド層13が形成されており、下部クラッド層13上に配置された断面が四角形のシリコンからなる第1導波路コア11と、第1導波路コア11の終端部を覆うように配置された第2導波路コア12と、第1導波路コア11と第2導波路コア12とを覆うように上部クラッド層14が形成されて構成されている。
【0020】
下部クラッド層13と第1導波路コア11と上部クラッド層14は、第1の導波路領域を構成し、下部クラッド層13と第1導波路コア11の終端部と第2導波路コア12と上部クラッド層14とは、モードフィールド径変換部を構成している。また、下部クラッド層13と第2導波路コア12と上部クラッド層14とは、第2の導波路領域を構成している。そして、第1導波路コア11と第2導波路コア12の断面形状は異なっている。
【0021】
この構成によれば、第2導波路コア12上とその周囲に下部クラッド層13と同程度の屈折率のポリマーからなる上部クラッド層14を形成することで、モードフィールド径変換部および第2の導波路領域の光の閉じこめを上部クラッド層14の屈折率で調整することができるため、第2の導波路領域のコアのサイズを大きくすることができるという効果が得られる。
【0022】
しかしながら、第1導波路コア11の終端部はテーパ形状に形成されており、コア幅だけが単純に狭まる構造であるため、テーパ形状の部分の先端部分において、光電場ベクトルの振動方向がコアの幅方向に水平であるTE波成分に対する光閉じ込め効果が弱く、モードフィールド径は広がるが、光電場ベクトルの振動方向がコアの幅方向に垂直(厚さ方向)であるTM波成分に対する光閉じ込め効果は強くモードフィールド径は広がらない。そのため、第1導波路コア11と第2導波路コア12間でモードミスマッチが発生し、光損失が大きくなる。すなわち、TE波成分とTM波成分に対するモードフィールド径の変換の度合いに差が生じる(偏波依存性が生じる)。
【0023】
偏波依存性は、
図1(B)に示す、bで示す位置における伝搬光のTE波成分及びTM波成分のビームスポットの様子を比較すると明瞭である。
【0024】
図1(B)に、第1導波路コア11のaと示す入力端から被スポット変換光が入力され、第2導波路コア12のbと示す出力端からモードフィールド径が拡大されて出力されるとして、ビームスポットの明るさ及びモードフィールド径の変化の様子を示してある。
図1(B)には、第1導波路コア11のaと示す入力端と、第2導波路コア12のbと示す出力端のそれぞれにおけるビームスポットの形状を示してあり、ビームスポット内の光電場の強度の大きさに応じて白黒の濃淡をつけて示してある。
【0025】
第1導波路コア11の垂直断面形状が正方形でなく長方形であるので、TM波とTE波の伝搬モードは若干異なる。このため、第1導波路コア11のaと示す位置での両者のビームスポットは楕円形であるが、ビームスポットの中心部の光強度はほぼ等しい。
【0026】
第1導波路コア11のaと示す入力端から被スポット変換光が入力され、第2導波路コア12のbと示す出力端からモードフィールド径が拡大されて出力される形態でスポットサイズ変換器を使用する場合、bで示す位置における伝搬光のTE波成分及びTM波成分のビームスポットの中心部の明るさ及びモードフィールド径は等しいことが望ましい。しかしながら、bで示す位置における出力光のTE波成分及びTM波成分のビームスポットの様子を比較すると、TM波成分のビームスポットの明るさはTE波成分のビームスポットの明るさより非常に暗い。しかも、TM波成分のモードフィールド径はTE波成分のモードフィールド径より非常に小さい。すなわち、モードフィールド径の変換機能に偏波依存性があることを示している。
【0027】
<第1及び第2実施形態のスポットサイズ変換器>
図2(A)及び(B)を参照して、第1実施形態のスポットサイズ変換器の構成について説明する。
図2は、このスポットサイズ変換器の概略的構成を示す図である。
図2において、(A)はy−z面を示す平面図、(B)は(A)に示す一点破線(II-II)で示した位置で切断したx−z面を示す概略的断面構造図である。ここで、説明の便宜上、
図2に示すように、導波方向をz軸方向とし、導波路の幅方向をy軸方向、導波路の深さ方向をx軸方向と定義する。
【0028】
ここで、
図2に示すように、第1導波路コア1(1-1、1-2、1-3、1-4)と第2導波路コア2(2-1、2-2、2-3、2-4)の導波方向(z軸方向)に、第1構成領域〜第6構成領域を順次設定する。
【0029】
第1〜第6構成領域の各構成領域において、第1導波路コア1は第1〜第4構成領域の全域にわたって形成され、第2導波路コア2は、第3構成領域〜第6構成領域の全域にわたって形成されている。そして、第1導波路コア1と第2導波路コア2は、両導波路コアの厚み方向(x軸方向)に、第1導波路コア1の対称中心と第2導波路コア2の対称中心とが重なるように、かつ第1導波路コア1の導波方向と第2導波路コア2の導波方向は互いに平行になるように積み重ねて配置されている。
【0030】
図2では、第1導波路コア1のうち第1構成領域に含まれる部分を第1導波路コア1-1と示し、第2構成領域に含まれる部分を第1導波路コア1-2と示し、第3構成領域に含まれる部分を第1導波路コア1-3と示し、第4構成領域に含まれる部分を第1導波路コア1-4と示してある。また、第2導波路コア2のうち第3構成領域に含まれる部分を第2導波路コア2-1と示し、第4構成領域に含まれる部分を第2導波路コア2-2と示し、第5構成領域に含まれる部分を第2導波路コア2-3と示し、第6構成領域に含まれる部分を第2導波路コア2-4と示してある。
【0031】
第1導波路コア1は、第1〜第4構成領域にわたって当該導波路の上面(第1導波路コア1の上部クラッド層3と接する面)は平坦に形成されている。また、第2導波路コア2は、第3〜第6構成領域にわたって当該導波路の下面(第2導波路コア2の下部クラッド層4と接する面)は平坦に形成されている。
【0032】
第1導波路コア1の、第1構成領域に含まれる部分(第1導波路コア1-1)はコア幅(y軸方向の寸法)が一定の均一幅導波路コアとして形成され、第2構成領域に含まれる部分(第1導波路コア1-2)は第3構成領域に向かってコアの幅が広まるテーパ構造領域として形成され、第3構成領域に含まれる部分(第1導波路コア1-3)は第2構成領域に含まれる部分の最大幅に等しい幅の均一幅導波路コアとして形成され、第4構成領域に含まれる部分(第1導波路コア1-4)は第5構成領域に向かってコアの幅が狭まるテーパ構造領域として形成されている。
【0033】
第2導波路コア2の、第3構成領域に含まれる部分(第2導波路コア2-1)は、第3構成領域に含まれる第1導波路コアの幅よりも広い幅の均一幅導波路コアとして形成されており、第4構成領域に含まれる部分(第2導波路コア2-2)は、第5構成領域に向かってコアの幅が広まるテーパ構造領域として形成されており、第5構成領域に含まれる部分(第2導波路コア2-3)は、第4構成領域に含まれる部分(第2導波路コア2-2)の最大幅に等しい幅の均一幅導波路コアとして形成され、第6構成領域に含まれる部分(第2導波路コア2-4)は、第5構成領域から離れる方向に向かってコアの幅が狭まるテーパ構造領域として形成されている。
【0034】
図2に示すように、第1導波路コア1-1の幅はW
1であり、第1導波路コア1-3の幅はW
2であり、第1導波路コア1-4のテーパ構造領域の最小幅(第5構成領域と接する導波路コア端面での幅)はW
3、第2導波路コア2-1の幅はW
4、第2導波路コア2-3の幅はW
5、第2導波路コア2-4のテーパ構造領域の最小幅(第5構成領域から最も離れた位置の導波路コア端面での幅)はW
6としてある。第1導波路コア1-1及び1-2の厚みはt
1+t
2であり、第1導波路コア1-3及び1-4の厚みはt
1であり、第2導波路コア2-1〜2-4の厚みはt
2である。また、第4構成領域の長さ(第1導波路コア1-4、第2導波路コア2-2の長さ)をLとした。
【0035】
第1導波路コア1と第2導波路コア2は、第3構成領域及び第4構成領域において互いに接触している。第3及び第4構成領域では、第1導波路コアを伝搬する伝搬光と第2導波路コアを伝搬する伝搬光とが互いのエバネッセント場を介して光結合される。
【0036】
第1導波路コア1及び第2導波路コア2は、下部クラッド層4と上部クラッド層3に挟まれている。このような構成とした場合、下部クラッド層4及び上部クラッド層3の屈折率は、第1導波路コア1及び第2導波路コア2の屈折率より小さく設定する。
【0037】
そして、第1及び第2構成領域は、下部クラッド層4、第1導波路コア1、上部クラッド層3の順に積層され、第3及び第4構成領域は、下部クラッド層4、第2導波路コア2、第1導波路コア1、上部クラッド層3の順に積層され、第5及び第6構成領域は、下部クラッド層4、第2導波路コア2、上部クラッド層3の順に積層される。
【0038】
次に、
図3(A)及び(B)を参照して、第2実施形態のスポットサイズ変換器について説明する。
図3において、(A)はy−z面を示す平面図、(B)は(A)に示す一点破線(II-II)で示した位置で切断したx−z面を示す概略的断面構造図である。
【0039】
第1実施形態のスポットサイズ変換器は、第2導波路コア2が下部クラッド層4に近い側に設置されており、第1導波路コア1(1-3、1-4)が第2導波路コア2(2-1、2-2)上に積層されている。これに対して、第2実施形態のスポットサイズ変換器は、下部クラッド層4から順次積層される、第1導波路コア1と第2導波路コア2の積層順序を逆にして、
図3に示すように、第1及び第2構成領域は、下部クラッド層4、第1導波路コア1、上部クラッド層3の順に積層し、第3及び第4構成領域は、下部クラッド層4、第1導波路コア1、第2導波路コア2、上部クラッド層3の順に積層し、第5及び第6構成領域は、下部クラッド層4、第2導波路コア2、上部クラッド層3の順に積層されている。
【0040】
第2実施形態のスポットサイズ変換器は、この積層順序だけが相違しており、その他の構成部分は第1実施形態のスポットサイズ変換器と同一なので、重複する説明を省略する。
【0041】
第1及び第2実施形態のスポットサイズ変換器において、第1導波路コア1及び第2導波路コア2は、シリコン素材で形成されるシリコン導波路コアとすることが好適である。また、上部クラッド層3と下部クラッド層4は、酸化シリコンあるいは窒化シリコンで形成することができる。
【0042】
第1導波路コア1、第2導波路コア2の形状、及び下部クラッド層4、及び上部クラッド層3の厚み及び屈折率は、このスポットサイズ変換器と結合させる光ファイバを伝搬する光あるいは外部光源の出力光のモードフィールド径等から決定される。すなわち、スポットサイズの拡大あるいは縮小率の条件、及びこのスポットサイズ変換器において発生する光量損失等許容値等を勘案して決定される。
【0043】
図2及び
図3において、第1導波路コア1の左端を入力ポートとして、スポットサイズ被変換光を入力させると、第1導波路コア1を基本伝搬モードで伝搬する伝搬光が徐々に第2導波路コア2に浸み出していき、最終的に第2導波路コア2の基本伝搬モードに結合される。すなわち、第3及び第4構成領域において、第1導波路コア1を伝搬する伝搬光と第2導波路コア2を伝搬する伝搬光とが互いのエバネッセント場を介して光結合される。
【0044】
第1導波路コア1-1の左端を入力ポートとして、スポットサイズ被変換光を入力させれば、第1〜第6構成領域を通過することによって、伝搬中にスポットサイズ(モードフィールド径)が拡大される。もちろん、第2導波路コア2-4の右端を入力ポートとし、第1導波路コア1-1の左端を出力ポートとして、モードフィールド径が大きな入力光を第2導波路コア2-4の右端から入力させ、モードフィールド径を縮小させて、第1導波路コア1-1の左端から出力させることも可能である。
【0045】
このように、モードフィールド径の小さな入力光が第1導波路コア1-1に入力されると、モードフィールド径が拡大されて第2導波路コア2-4の出力端(出力ポート)から出力される。この出力光は、第2導波路コア2-4の出力端の後段に配置される、光ファイバ等に光量損失をあまり発生させないで入力させることができる。
【0046】
<スポットサイズ変換器の動作シミュレーション>
第1及び第2実施形態のスポットサイズ変換器の両者の動作に大きな相違はないので、ここでは、
図2に示した第1実施形態のスポットサイズ変換器に対する動作シミュレーションの結果を説明する。このシミュレーションは、3次元ビーム伝搬法(3D-BPM: 3D-Beam Propagation Method)によって行った。3D-BPMを実施するに当たっては、スポットサイズ変換の対象とする光の波長を1.5μmとし、第1及び第2導波路コアはシリコン素材で形成され、上部クラッド層及び下部クラッド層はSiO
2素材で形成されているものとした。
【0047】
また、導波路コア幅等の寸法は次のように設定した。第1導波路コア1-1の幅W
1を285 nmとし、第1導波路コア1-3の幅W
2を500 nmとし、第1導波路コア1-4のテーパ構造領域の最小幅である第5構成領域と接する導波路コア端面での幅W
3を80 nmとし、第2導波路コア2-1の幅W
4を600 nmとし、第2導波路コア2-3の幅W
5を700 nmとし、第2導波路コア2-4のテーパ構造領域の最小幅である第5構成領域から最も離れた位置の導波路コア端面での幅W
6を80 nmとし、第1導波路コア1-3及び1-4の厚みt
1を150 nmとし、第2導波路コア2-1〜2-4の厚みt
2を150 nmとし、第4構成領域の長さ(第1導波路コア1-4、第2導波路コア2-2の長さ)Lを100μmとした。
【0048】
これ以外の、第1及び第2導波路コアの詳細な寸法、及び下部クラッド層4及び上部クラッド層3の厚み等は、シミュレーションの都合を勘案して適宜設定した。ここでは、下部クラッド層4及び上部クラッド層3をSiO
2で形成するものとしたが、下部クラッド層4、及び上部クラッド層3は、SiO
2よりも屈折率の大きい酸化シリコン(SiO
x)素材で形成することができ、この屈折率は、酸化シリコン材の酸素含有量(SiO
x)のxの値を調整することによって適宜設定することが可能である。このxの値の調整は、これらの部分を形成するために利用する化学気相成長(CVD: Chemical Vapor Deposition)装置等において、酸化シリコン層の形成条件を決定するパラメータを調整することで実現される。
【0049】
図4(A)〜(C)を参照して、3D-BPMによるシミュレーションで得られた、スポットサイズ変換器のa〜eで示す各位置における伝搬光のTM波成分及びTE波成分のビームスポットのサイズの変化について説明する。
図4において、(A)はスポットサイズ変換器のどの位置におけるビームスポットであるかを示すための、概略的平面図と断面図である。(B)及び(C)はa〜eとして示す各所に対応するビームスポットの形状を示してあり、(B)はTM波成分及び(C)はTE波成分について、伝搬光のスポット内の光電場の強度の大きさを白黒の濃淡によって示してある。
【0050】
第1構成領域における第1導波路コア1の入出力端面の位置aから、第3構成領域と第4構成領域との境界位置b、第4構成領域と第5構成領域との境界位置c、第5構成領域と第6構成領域との境界位置d、第6構成領域における第2導波路コア2の入出力端面の位置eの順に進むにつれて、TM波成分に対してもTE波成分に対しても同様に、伝搬光のモードフィールド径は大きくなっている。
【0051】
また、第1導波路コア1の入出力端面の位置aから入力された入力光のビームスポットの中心位置での光強度と、第2導波路コア2の入出力端面の位置eでのビームスポットの中心位置での光強度とを比較すると、後者の光強度が減少している。そして、
図4(B)に示すように、TM波成分に対する光強度の減少量が、TE波成分に対する光強度の減少量より若干多い。しかしながら、実用上大きな問題となるほどの減少量ではない。
【0052】
第1導波路コア1及び第2導波路コア2を伝搬中の光損失は、第1及び第2導波路コアを伝搬中に発生する吸収損失と、モードミスマッチによる光量損失とに起因する。モードミスマッチによる光量損失(以後、モードミスマッチ損失という)は、第1導波路コア1を伝搬する伝搬光と第2導波路コア2を伝搬する伝搬光とが互い光結合する第3及び第4構成領域で主に発生する。
【0053】
第1及び第2導波路コアを伝搬中に発生する吸収損失は、TM波成分とTE波成分のいずれに対しても同程度発生する。一方、モードミスマッチ損失は、モードフィールド径が、z軸方向に沿って急激に変化する個所がスポットサイズ変換器中に存在すると大きくなる。
【0054】
図1で示した従来のスポットサイズ変換器の場合と比較勘案すると、
図4(B)及び(C)に示すビームスポットの明るさ及びモードフィールド径の変化の様子は、TM波成分及びTE波成分に対して互いによく類似しているといえる。これは、本願のスポットサイズ変換器においては、TM波成分とTE波成分のそれぞれに対して発生するモードミスマッチ損失に大差のないことを示している。
【0055】
このことから、本願のスポットサイズ変換器によれば、TM波成分に対する光損失が従来のスポットサイズ変換器と比較して低減され、TE波成分とTM波成分に対するモードフィールド径の変換の度合いに差が生じにくくなっている(偏波依存性が低減されている)ことがわかる。