特許第6012804号(P6012804)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6012804
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】缶体
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/16 20060101AFI20161011BHJP
   B65D 21/032 20060101ALI20161011BHJP
   B65D 17/32 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   B65D1/16 111
   B65D21/032
   B65D17/32
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-73707(P2015-73707)
(22)【出願日】2015年3月31日
【審査請求日】2016年7月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509219925
【氏名又は名称】日本ナショナル製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福本 隼人
(72)【発明者】
【氏名】田村 政臣
(72)【発明者】
【氏名】宇津野 富男
(72)【発明者】
【氏名】松信 成之
【審査官】 西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−236624(JP,A)
【文献】 特開平2−152667(JP,A)
【文献】 実開昭58−177325(JP,U)
【文献】 特開2002−59928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/16
B65D 17/32−17/34
B65D 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口用のタブを備える缶蓋と、中央を内側に凹ませるドーム部と該ドーム部の周囲にて下側に向けて環状に突出する脚部とを備える缶底を具備し、前記ドーム部と前記脚部の連接部分に当該脚部の外側に向いた凹部を設けた缶体であって、
E<Zの条件で下記式、
L=D・cos(θ1−θ2),
A=X・(L+Y1−Y2)/Y1,
B=L+Y2−Y1を定義し、
0<L<Y2の場合に、
(A+B)・E/Z<1.88を満たすことを特徴とする缶体。
式中、D:前記タブの先端から前記缶蓋の表面までの距離、
E:前記タブの先端より下ろした垂線と前記缶蓋の表面との交差部から前記缶蓋のシーミングパネル頂部までの距離、
θ1:前記交差部と前記シーミングパネル頂部とを結ぶ直線と垂線との角度、
Z:前記脚部の接地部と当該脚部の外側に連接する缶胴の下端までの距離、
θ2:前記接地部と前記缶胴の下端とを結ぶ直線と垂線との角度、
Y1:前記凹部の底部と該凹部の下端までの距離、
Y2:前記底部と前記接地部までの距離、
X:前記凹部の下端を通る垂線と前記底部との距離、
をそれぞれ示す。
【請求項2】
開口用のタブを備える缶蓋と、中央を内側に凹ませるドーム部と該ドーム部の周囲にて下側に向けて環状に突出する脚部とを備える缶底を具備し、前記ドーム部と前記脚部の連接部分に当該脚部の外側に向いた凹部を設けた缶体であって、
E<Zの条件で下記式、
L=D・cos(θ1−θ2),
A=X・(Y1+Y2−L)/Y1,
B=L+Y1−Y2を定義し、
L≧Y2の場合に、
(A+B)・E/Z<1.85を満たすことを特徴とする缶体。
式中、D:前記タブの先端から前記缶蓋の表面までの距離、
E:前記タブの先端より下ろした垂線と前記缶蓋の表面との交差部から前記缶蓋のシーミングパネル頂部までの距離、
θ1:前記交差部と前記シーミングパネル頂部とを結ぶ直線と垂線との角度、
Z:前記脚部の接地部と当該脚部の外側に連接する缶胴の下端までの距離、
θ2:前記接地部と前記缶胴の下端とを結ぶ直線と垂線との角度、
Y1:前記凹部の底部と該凹部の下端までの距離、
Y2:前記底部と前記接地部までの距離、
X:前記凹部の下端を通る垂線と前記底部との距離、
をそれぞれ示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
省資源・低コスト化などの観点から、缶の薄肉化が図られており、それに伴う缶強度の低下を補うために、様々な缶形状が提案されている。特に、缶底の形状は、耐内圧強度を高めるために、中央を内側ドーム状に凹ませるドーム部を設けると共に、ドーム部の周囲に缶軸下方側に環状に突出する脚部を設ける形状を有したものが一般に知られている。
【0003】
また、炭酸飲料などの内圧が大きくなる内容物を充填する缶体では、更に耐内圧強度を高めるために、脚部とドーム部との内側連接部分を脚部の外側に向けて凹ませるボトムリフォームと呼ばれる成形が一般になされている(例えば、下記特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平01−130916号公報
【特許文献2】特開2014−54999号公報
【特許文献3】実公昭61−29625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
炭酸飲料などを内容物とする缶体は、内容物を充填し缶蓋を巻き締めた後、缶体内部の内圧が高まって缶蓋が上方に湾曲することがあり、このような湾曲が生じると、缶蓋が備える開口用タブの先端が、湾曲した缶蓋の表面(シェル表面)から浮き上がった状態になる。これに対して、内容物が充填された缶体が積み重ねられた状態で、上段に積まれた缶体がバランスを崩すと、上段の缶体における缶底の脚部が、その下段の缶体におけるタブ先端と缶蓋表面との隙間に入り込み、てこの作用でタブを持ち上げて不意の開口が発生してしまう問題がある。前述したボトムリフォームがなされている缶底を有する缶体においては、ボトムリフォームによる凹みによってタブ先端と缶蓋表面との隙間に脚部が入り込み易くなるので、前述した不意の開口が発生し易くなる。
【0006】
このような不意の開口に対する回避策として、缶蓋の形態のみに着目して、シェルに、タブの先端付近に突出する突起を設け、缶底の脚部がタブの下に入り込むのを防ぐことが提案されているが(特許文献3参照)、これによると、缶蓋の加工にコストが掛かるだけでなく、タブの操作性が悪くなる問題が生じる。また、缶底の形態のみに着目すると、前述した不意の開口を避けるためにはボトムリフォームによる凹みを浅くせざるを得ず、炭酸飲料などを内容物とする場合に要求される高い耐内圧強度が得られなくなる。このような事情から、缶蓋の形態と缶底の形態を総合的に勘案して、高い耐内圧強度を確保しながら、不意の開口を抑止できる缶体の形態が求められている。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものである。すなわち、炭酸飲料などの内容物を収める缶体において、耐内圧強度を高めながら、不意の開口が発生するのを抑止できる缶体を提供すること、が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明による缶体は、以下の構成を具備するものである。
【0009】
開口用のタブを備える缶蓋と、中央を内側に凹ませるドーム部と該ドーム部の周囲にて下側に向けて環状に突出する脚部とを備える缶底を具備し、前記ドーム部と前記脚部の連接部分に当該脚部の外側に向いた凹部を設けた缶体であって、E<Zの条件で下記式、
L=D・cos(θ1−θ2),A=X・(L+Y1−Y2)/Y1,
B=L+Y2−Y1を定義し、0<L<Y2の場合に、
(A+B)・E/Z<1.88を満たす缶体とする。
式中、D:前記タブの先端から前記缶蓋の表面までの距離、
E:前記タブの先端より下ろした垂線と前記缶蓋の表面との交差部から前記缶蓋のシーミングパネル頂部までの距離、
θ1:前記交差部と前記シーミングパネル頂部とを結ぶ直線と垂線との角度、
Z:前記脚部の接地部と当該脚部の外側に連接する缶胴の下端までの距離、
θ2:前記接地部と前記缶胴の下端とを結ぶ直線と垂線との角度、
Y1:前記凹部の底部と該凹部の下端までの距離、
Y2:前記底部と前記接地部までの距離、
X:前記凹部の下端を通る垂線と前記底部との距離
をそれぞれ示す。
【0010】
開口用のタブを備える缶蓋と、中央を内側に凹ませるドーム部と該ドーム部の周囲にて下側に向けて環状に突出する脚部とを備える缶底を具備し、前記ドーム部と前記脚部の連接部分に当該脚部の外側に向いた凹部を設けた缶体であって、
E<Zの条件で下記式、
L=D・cos(θ1−θ2),A=X・(Y1+Y2−L)/Y1,
B=L+Y1−Y2を定義し、L≧Y2の場合に、
(A+B)・E/Z<1.85を満たす缶体とする。
式中、D:前記タブの先端から前記缶蓋の表面までの距離、
E:前記タブの先端より下ろした垂線と前記缶蓋の表面との交差部から前記缶蓋のシーミングパネル頂部までの距離、
θ1:前記交差部と前記シーミングパネル頂部とを結ぶ直線と垂線との角度、
Z:前記脚部の接地部と当該脚部の外側に連接する缶胴の下端までの距離、
θ2:前記接地部と前記缶胴の下端とを結ぶ直線と垂線との角度、
Y1:前記凹部の底部と該凹部の下端までの距離、
Y2:前記底部と前記接地部までの距離、
X:前記凹部の下端を通る垂線と前記底部との距離、
をそれぞれ示す。
【発明の効果】
【0011】
このような特徴を有する本発明の缶体は、前述した缶蓋と缶底の寸法に関する条件を満たすことで、耐内圧強度が高められたボトムリフォーム缶であっても、積み重ねた缶体の下段に生じる不意の開口を効果的に抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】缶体における缶蓋の要部を示した縦断面輪郭図である。
図2】缶体における缶底の要部を示した縦断面輪郭図である。
図3】缶体における缶底のボトムリフォーム部(脚部周辺)を示した縦断面輪郭図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1図3は、本発明の実施形態に係る缶体の要部を示している。缶体1は、缶蓋2、缶底3、缶胴4を備えている。一例として、缶体1は、アルミ又はスチール材の2ピース缶であり、一体の缶底3と缶胴4を備え、缶胴4のフランジ部に対して、アルミ材のステイオンタブ方式の缶蓋2が2重巻き締めされている。缶体1は、内容物が充填されており、所定の内圧を有するものを対象としている。
【0014】
缶蓋2は、周知の構造であり、中央のシェル20に開口用のタブ21が装着されており、シェル20の周囲には缶胴4のフランジ部に2重巻き締めされることでシーミングパネル22が形成されている。缶底3は、中央を内側に凹ませるドーム部30とドーム部30の周囲で下側に向けて環状に突出する脚部31を備えている。缶底3におけるドーム部30と脚部31の連接部分には、脚部31の外側に向いた凹部32が成形されたボトムリフォーム部が形成されている。また、図2に示す例では、脚部31の外側部分と胴部4とは、曲率半径Rの湾曲部31Rで連接されている。
【0015】
この缶体1の形状は、以下の部位を特定することができるものであれば、輪郭の曲線形状や直線形状はどのようなものであってもよい。特定されるべき部位は、図1図3に示すように、脚部31の接地部a(図2参照)、脚部31の外側に連接する缶胴4の下端b(図2参照)、凹部32の下端c(図3参照)、凹部32の底部d(図3参照)、タブの先端f(図1参照)、その先端fから下ろした垂線と缶蓋2の表面(シェル20の表面)との交差部e(図1参照)、シーミングパネル22の頂部g(図1参照)である。
【0016】
そして、前述した各部a〜gを適宜選択することによって特定される寸法を以下のように定める。
【0017】
D:タブ21の先端fから缶蓋2の表面(交差部e)までの距離(D=D1+(1/2)T、D1はタブ21と缶蓋2の表面との隙間であり、Tはタブ厚さ)。
E:タブ21の先端fより下ろした垂線と缶蓋2の表面との交差部eから缶蓋2のシーミングパネル22の頂部gまでの距離。
θ1:交差部eとシーミングパネル22の頂部gとを結ぶ直線と垂線との角度。
Z:脚部31の接地部aと脚部31の外側に連接する缶胴4の下端bまでの距離。
θ2:接地部aと缶胴4の下端bとを結ぶ直線と垂線との角度。
Y1;凹部32の底部dと凹部32の下端cまでの距離。
Y2:底部dと接地部aまでの距離。
X:凹部32の下端cを通る垂線と底部dとの距離。
【0018】
ここで、本発明の実施形態は、タブ21の先端fより下ろした垂線と缶蓋2の表面との交差部eから缶蓋2のシーミングパネル22の頂部gまでの距離Eと脚部31の接地部aと脚部31の外側に連接する缶胴4の下端bまでの距離Zとの関係が、E<Zの関係にあることを前提条件とする。ここで特定するE<Zの関係は、缶体1を上段・下段に積み重ねて、上段の缶体1がバランスを崩した場合に、缶体1の胴部4がシーミングパネル22の頂部gに当接した状態で、脚部31の接地部aがタブ21と缶蓋2の表面との間の隙間D1に入り込むような状態にはならないことを示している。E≧Zの寸法関係になると、上段の缶体1がバランスを崩した場合に、缶体1の胴部4がシーミングパネル22の頂部gに当接した状態で、脚部31の接地部aがタブ21と缶蓋2の表面との間の隙間D1に入り込むような状態になる場合があるが、このような寸法関係になるものは、本発明の実施形態から除いている。
【0019】
そして、本発明の実施形態に係る缶体1は、前述した寸法により下記式によって求められる値Lを定義している。
【0020】
L=D・cos(θ1−θ2)
【0021】
この値Lは、積み重ねられた上段の缶体1がバランスを崩した場合に、下段の缶体1におけるタブ21の先端fが上段の缶体1の脚部31内側のどの辺りに接触するかを仮想的に評価するための値である。
【0022】
この値Lを用い、0<L<Y2の場合とL≧Y2の場合で区分して、下記式にて、缶蓋2と缶底3との寸法関係によって不意の開口が発生し易いことを評価する評価指数αを定義する。
【0023】
α=(A+B)・E/Z
但し、
0<L<Y2の場合、
A=X・(L+Y1−Y2)/Y1,B=L+Y2−Y1
L≧Y2の場合、
A=X・(Y1+Y2−L)/Y1,B=L+Y1−Y2
【0024】
この評価指数αは、前述した缶蓋2の各部寸法(E,D,θ1)と前述した缶底3の各部寸法(Z,θ2,X,Y1,Y2)のみによって一義的に決まる値であり、缶蓋2の形状と缶底3の形状との関係を総合的に評価して、不意開口の発生が起こり易いか否かを評価することができる指数である。基本的には、評価指数αの値は、タブ21の先端fから缶蓋2の表面(交差部e)までの距離Dに比例する値Lが大きい程、大きな値になるので、評価指数αの値が大きい程、不意開口の発生が起こり易いと言える。評価指数αの上限値を適正な値に特定することで、不意開口が起こり難い缶体1の寸法(缶蓋と缶底の寸法)を設計することができる。
【0025】
以下に、缶蓋2の形状と缶底3の形状を様々に設定して内容物を充填した缶体1に対して、前述した寸法を実測して評価指数αを求め、不意開口が発生するか否かの試験結果を合わせて、評価指数αの適正な上限値を求める。
【0026】
<缶蓋形状>
缶蓋2の形状としては、2つのサンプル(「サンプルA」と「サンプルB」)の寸法を実測した。各サンプルから実測された寸法D,E,θ1,Lは表1に示すとおりである。
【0027】
【表1】
【0028】
<缶底形状>
缶底3の形状としては、脚部31の外側形状の寸法Z,θ2を表2に示すように一定とし、脚部31の内側形状(ボトムリフォーム形状)については、成形高さが1.95,2.41,2.85,3.3mmの異なる成形ロールの設定で、リフォーム径d0が46.6,46.8,47.0,47.2,47.4,47.6mmとなる成形を行って得られた缶体1に対して、凹部32の寸法(X,Y1,Y2)を実測した。実測した結果を表3に示す。ここで、リフォーム径d0は、凹部32の底部dに対応する直径であり、成形高さは、凹部32を成形する成形ロールの接触位置高さを示している。
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
<評価指数αの算出>
缶蓋2のサンプル毎(サンプルA,サンプルB)、成形高さとリフォーム径毎に、L≧Y2となる場合と0<L<Y2となる場合とを区分して、評価指数αを算出した。算出結果を表4(サンプルAについての算出結果)及び表5(サンプルBについての算出結果)に示す。
【0032】
【表4】
【0033】
【表5】
【0034】
<不意開口発生を確認する試験>
上下2段に評価対象の缶体1を積み重ね、上段の缶体1がバランスを崩した状態(上段の缶体1における脚部31が下段の缶体1におけるタブ21の下に掛かった状態)を実現し、下段の缶体1を徐々に傾斜させて、上段の缶体1が落下した時の下段の缶体1の傾斜角度を計測する。ここで、計測される下段の缶体1の傾斜角度が大きいということは、タブ21下の隙間に脚部31が深く掛かった状態にあることを意味するので、不意開口発生の可能性が高い状態であると言える。具体的には、下段の缶体1の傾斜角度が30°以上傾斜しても上段の缶体が落下しない場合を不意開口発生の虞有り(不良)と評価し、表中において下線にて示した。
【0035】
<評価指数αの算出値と試験結果の関係>
表4に示す評価指数αの値で、成形高さが1.95mmの場合には、リフォーム径d0=46.6mm〜47.6mmの範囲で全てL≧Y2となり、評価指数αは1.53〜1.88となるが、不意開口発生の虞有りと評価された値は、1.88のみであった。
【0036】
表4に示す評価指数αの値で、成形高さが2.41mmの場合には、リフォーム径d0=46.6mm〜47.6mmの範囲で全てL≧Y2となり、評価指数αは1.64〜2.01となるが、不意開口発生の虞有りと評価された値は、1.86〜2.01であった。
【0037】
表4に示す評価指数αの値で、成形高さが2.85mmの場合には、リフォーム径d0=46.6mm〜47.6mmの範囲で全て0<L<Y2となり、評価指数αは1.66〜2.23となるが、不意開口発生の虞有りと評価された値は、1.89〜2.23であった。
【0038】
表4に示す評価指数αの値で、成形高さが3.3mmの場合には、リフォーム径d0=46.6mm〜47.6mmの範囲で全て0<L<Y2となり、評価指数αは1.59〜2.14となるが、不意開口発生の虞有りと評価された値は、1.95〜2.14であった。
【0039】
表5に示す評価指数αの値で、成形高さが1.95mmの場合には、リフォーム径d0=46.6mm〜47.6mmの範囲で全てL≧Y2となり、評価指数αは1.34〜1.73となるが、不意開口発生の虞有りと評価された値は無かった。
【0040】
表5に示す評価指数αの値で、成形高さが2.41mmの場合には、リフォーム径d0=46.6mm〜47.6mmの範囲で全てL≧Y2となり、評価指数αは1.45〜1.87となるが、不意開口発生の虞有りと評価された値は、1.87のみであった。
【0041】
表5に示す評価指数αの値で、成形高さが2.85mmの場合には、リフォーム径d0=46.6mm〜47.6mmの範囲で全て0<L<Y2となり、評価指数αは1.41〜1.93となるが、不意開口発生の虞有りと評価された値は、1.93のみであった。
【0042】
表5に示す評価指数αの値で、成形高さが3.3mmの場合には、リフォーム径d0=46.6mm〜47.6mmの範囲で全て0<L<Y2となり、評価指数αは1.34〜1.84となるが、不意開口発生の虞有りと評価された値は無かった。
【0043】
以上示した評価指数αと試験結果との関係からすると、評価指数αの上限値を設定することで、不意開口発生を回避しうる缶蓋寸法と缶底寸法を総合的に設定可能なことが示されている。また、この試験結果から、L≧Y2の場合には、α<1.85(或いはα<1.86)で不意開口発生を回避しうることが判り、L>Y2の場合には、α<1.88(α<1.89)で不意開口発生を回避しうることが判る。
【0044】
このように本発明によると、不意の開口が発生する可能性があるか否かを、缶体1の缶蓋2の寸法と缶底3の寸法を総合的に勘案した評価指数αを用いることで、的確に評価することができる。これによって、評価指数αの適正範囲内で缶体1の形状や胴径(容量)などを自由に設計することができ、耐内部圧力が高く、不意の開口が発生しない缶体を様々な形状バリエーションで得ることが可能になる。
【符号の説明】
【0045】
1:缶体,2:缶蓋,3:缶底,4:缶胴,
20:シェル,21:タブ,22:シーミングパネル,
30:ドーム部,31:脚部,31R:湾曲部,32:凹部
【要約】      (修正有)
【課題】耐内圧強度を高めた缶体において、積み重ねた際の下段の缶体の不意の開口を抑止できる缶体を提供する。
【解決手段】E<Zの条件で下記式、L=D・cos(θ1−θ2),A=X・(L+Y1−Y2)/Y1,B=L+Y2−Y1を定義し、0<L<Y2の場合に、(A+B)・E/Z<1.88を満たすことを特徴とする缶体。式中、D:タブの先端から缶蓋の表面までの距離、E:タブの先端より下ろした垂線と缶蓋の表面との交差部eから缶蓋のシーミングパネル頂部gまでの距離、θ1:交差部eとシーミングパネル頂部gとを結ぶ直線と垂線との角度、Z:脚部31の接地部aと脚部の外側に連接する缶胴の下端bまでの距離、θ2:接地部aと缶胴の下端とを結ぶ直線と垂線との角度、Y1:凹部32の底部dと凹部の下端cまでの距離、Y2:底部dと接地部aまでの距離、X:凹部の下端cを通る垂線と底部dとの距離、をそれぞれ示す。
【選択図】図3
図1
図2
図3