(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0024】
本発明の熱伝導部材は、一方の端面から他方の端面まで貫通し、加熱体である第一の流体が流通する流路を有する筒状セラミックス体と、筒状セラミックス体の外周面に嵌合するとともに筒状セラミックス体の外周を囲む環状のひだ部を有する金属管と、筒状セラミックス体と金属管とに挟まれつつ筒状セラミックス体および金属管に接合する中間材と、を備える。そして、本発明の熱伝導部材は、筒状セラミックス体の内部に第一の流体を、金属管の外周面側に第一の流体よりも低温の第二の流体を流通させ、第一の流体と第二の流体との熱交換を行うことができる。本発明の熱伝導部材では、金属管と筒状セラミックス体とを中間材を介して接合し、一体化することにより、第一の流体と第二の流体とが混ざり合うことを防止することができる。
【0025】
本発明の熱伝導部材では、金属管は、ひだ部を有しているので、軸方向(一方の端面と他方の端面とを結ぶ方向)に沿って伸縮することができる。そのため、本発明の熱伝導部材では、金属管における伸縮の大きさが筒状セラミックス体や中間材における伸縮の大きさと異なる状態の時でも、金属管がひだ部の働きによって軸方向に沿って自在に伸縮するので、金属管から筒状セラミックス体へと大きな応力が及びにくい。その結果、本発明の熱伝導部材は、筒状セラミックス体にひびや割れが生じにくい。
【0026】
また、本発明の熱伝導部材が備える金属管では、ひだ部は、1個であっても、複数個であってもよい。また、ひだ部が複数個ある場合には、軸方向に沿った各位置で金属管の伸縮の度合いが異なる態様も可能になるので、金属管の伸縮がさらに自在になる。その結果として、金属管から中間材や筒状セラミックス体に大きな応力が加わりにくくなる。また、本発明の熱伝導部材では、金属管は、ひだ部が軸方向に沿って繰り返し作られている蛇腹構造であってもよい。このように金属管が蛇腹構造である場合には、金属管における伸縮の大きさが筒状セラミックス体や中間材における伸縮の大きさと異なる状態の時でも、金属管から筒状セラミックス体へと大きな応力が加わることがより一層抑えられ、その結果、筒状セラミックス体にひびや割れがより一層生じにくくなる。
【0027】
本発明の熱伝導部材では、金属管は、ひだ部が外側に突出している形態でもよい。あるいは、金属管は、ひだ部が内側に窪んでいる形態でもよい。次に、これらの2つのひだ部形態について具体例を挙げて説明する。
【0028】
まず、ひだ部が外側に突出している形態について説明する。
図1は、本発明の熱伝導部材の一実施形態を模式的に示す斜視図である。本熱伝導部材10は、一方の端面2から他方の端面2まで貫通し、加熱体である第一の流体が流通する流路を有する筒状セラミックス体11と、筒状セラミックス体11の外周面7hに嵌合する金属管12と、筒状セラミックス体11と金属管12とに挟まれつつ筒状セラミックス体11および金属管12に接合する中間材13と、を備える。そして、筒状セラミックス体11の内部に第一の流体を、金属管12の外周面12h側に第一の流体よりも低温の第二の流体を流通させることにより、第一の流体と第二の流体との熱交換を行うことができる。
【0029】
さらに、本熱伝導部材10では、金属管12は、筒状セラミックス体11の外周を囲む環状のひだ部15を有する。ひだ部15は、金属管12が外周側に折れ曲がって突出することにより形作られている。このひだ部15により、金属管12は軸方向(一方の端面2と他方の端面2とを結ぶ方向)に沿って伸縮することができる。
【0030】
図2は、
図1中のA−A’断面の模式図である(当断面の位置は、
図1において金属管12の外周面12h上にある点線で示す)。図示されるように、本熱伝導部材10を軸方向(中心軸20の延びる方向)に沿った切り口の断面からみると、ひだ部15は、頂部(峰)を境に、一方の端面2の側の面と、もう一方の端面2の側の面とが向かい合うかたちになっている。金属管12において軸方向に沿った応力が作用すると、ひだ部15は、頂部(峰)を境に向かい合う2つ面の間を開いたり、閉じたりしながら伸縮することができる。また、ひだ部15の内面15sには中間材13と接合していない部分があり、この中間材13と接合していないひだ部15の内面15sは、頂部(峰)を境に向かい合う2つ面の内面にあたる。言い換えると、中間材13においては、ひだ部15の2つの面に挟まれた領域に、金属管12と接合していない部分がある。この接合していない部分で中間材13が伸縮する場合、ひだ部15の2つの面の開き度合いを変化させることにより、金属管12は中間材13との接合状態を保ち続けることができる。
【0031】
本熱伝導部材10では、ひだ部15が2つの面の開き度合いを変化させることにより、金属管12から中間材13や筒状セラミックス体11に大きな応力が加わることを抑えている。中間材13や筒状セラミックス体11が伸長する場合には、金属管12は自身もひだ部15の働きによって伸長することにより、中間材13や筒状セラミックス体11を収縮させようとする応力が加わることを抑えている。また、中間材13や筒状セラミックス体11が収縮する場合には、金属管12は自身もひだ部15の働きによって収縮することにより、中間材13や筒状セラミックス体11を伸長させようとする応力が加わることを抑えている。このように、本熱伝導部材10では、金属管12における伸縮の大きさが筒状セラミックス体11や中間材13における伸縮の大きさと異なる状態の時でも、金属管12がひだ部15の働きによって軸方向に沿って自在に伸縮するので、金属管12から筒状セラミックス体11へと大きな応力が及びにくい。その結果、本熱伝導部材10は、筒状セラミックス体11にひびや割れが生じにくい。
【0032】
本熱伝導部材10が備える金属管12のようにひだ部15が外側に突出している形態の場合においては、ひだ部15は、1個であっても、複数個であってもよい。また、ひだ部15が複数個ある場合には、各ひだ部15の内面に中間材13と接合していない部分があっても良い。このように金属管12と中間材13との非接合部分の数が多くなると、上述したようなひだ部15による応力の緩和作用が増すので、金属管12から中間材13や筒状セラミックス体11に大きな応力が加わりにくくなる。
【0033】
また、ひだ部15の高さは、0.1mm〜20mmであることが好ましく、1mm〜10mmであることがより好ましく、1mm〜5mmであることが特に好ましい。また、ひだ部15の幅は、0.1mm〜20mmであることが好ましく、1mm〜10mmであることがより好ましく、1mm〜5mmであることが特に好ましい。ひだ部15の高さやひだ部15の幅が0.1mmよりも小さくなると、ひだ部15による応力の緩和作用が十分に得られなくなる場合があり、20mmよりも大きくなると熱伝導効率が低下するため好ましくない。なお、ひだ部15の高さとは、金属管12の外周面の平滑な面からひだ部15の頂部(峰)までの高さを意味する。また、ひだ部15の幅とは、金属管12の外周面の平滑な面から、ひだ部15の高さにして2分の1の高さの位置におけるひだ部15の幅を意味する。
【0034】
また、本熱伝導部材10が備える金属管12のようにひだ部15が外側に突出している形態の場合においては、金属管12は、ひだ部15が軸方向に沿って繰り返し作られている蛇腹構造であってもよい。金属管12が蛇腹構造である場合には、金属管12は、中間材13と接合状態を保ったままでも、より一層自在に伸縮可能になる。このように金属管12が蛇腹構造である場合には、金属管12における伸縮の大きさが筒状セラミックス体11や中間材13における伸縮の大きさと異なる状態の時でも、金属管12から筒状セラミックス体11へと大きな応力が加わることがより一層抑えられ、その結果、筒状セラミックス体11にひびや割れがより一層生じにくくなる。
【0035】
本熱伝導部材10では、中間材13については、金属を溶融させて溶湯を作製し、この溶湯を金属管12と筒状セラミックス体11との隙間に充填し、固化させることにより形成することができる。
図3は、熱伝導部材10を製造するための方法、具体的には、溶湯80を金属管12と筒状セラミックス体11との隙間に充填する方法の一例を示す模式図である。図示されたように、金属管12と筒状セラミックス体11との間隙に溶湯80を流入する際には、軸方向の一方の端面2から他方の端面2まで長手方向に向かって溶湯80を射出することにより、溶湯80を充填することができる。このとき、筒状セラミックス体11を金属管12の内部に挿入しておき、さらに筒状セラミックス体11の両端面2を蓋71で塞いだ状態で溶湯80を射出する台72の上に置いた後、溶湯80を金属管12と筒状セラミックス体11との間隙に射出するとよい。
【0036】
また、本熱伝導部材10が備える金属管12のようにひだ部15が外側に突出している形態の場合においては、金属管12のひだ部15の内面15sと中間材13との隙間19に充填材を備えることも好ましい様態である。特に、充填材が軟質の材質によって作られている場合には、熱交換効率を維持しつつひだ部15による応力の緩和作用を発揮することができる。本発明の熱伝導部材10に使用できる充填材としては、膨張黒鉛、またはアルミナ、カーボン、シリカなどのセラミック繊維からなるものを挙げることができる。
【0037】
次に、ひだ部が内側に窪んでいる形態について説明する。
図4は、本発明の熱伝導部材の他の実施形態の模式的な断面図である。この図は、本熱伝導部材40は、一方の端面32から他方の端面32まで貫通し、加熱体である第一の流体が流通する流路を有する筒状セラミックス体41と、筒状セラミックス体41の外周面37hに嵌合する金属管42と、筒状セラミックス体41と金属管42とに挟まれつつ筒状セラミックス体41および金属管42に接合する中間材43と、を備える。
【0038】
さらに、本熱伝導部材40では、金属管42は、筒状セラミックス体41の外周を囲む環状のひだ部45を有する。ひだ部45は、金属管42が内側に折れ曲がって窪むことにより形作られている。このひだ部45により、金属管42は軸方向(一方の端面32と他方の端面32とを結ぶ方向)に沿って伸縮することができる。
【0039】
また、図示されるように、本熱伝導部材40を軸方向(中心軸50の延びる方向)に沿った切り口の断面からみると、ひだ部45は、溝形状になっている。この溝形状の底部を境に、一方の端面32の側の面(側面45s)と、もう一方の端面32の側の面(側面45s)とが向かい合うかたちになっている。金属管42において軸方向に沿った応力が作用すると、ひだ部45は、溝形状の底部を境に向かい合う2つ面(側面45s)の間を開いたり、閉じたりしながら伸縮することができる。
【0040】
本熱伝導部材40では、溝形状のひだ部45が向かい合った2つの側面45sの開き度合いを変化させることにより、金属管42から中間材43や筒状セラミックス体41に大きな応力が加わることを抑えている。中間材43や筒状セラミックス体41が伸長する場合には、金属管42は自身もひだ部45の働きによって伸長することにより、中間材43や筒状セラミックス体41を収縮させようとする応力が加わることを抑えている。また、中間材43や筒状セラミックス体41が収縮する場合には、金属管12は自身もひだ部45の働きによって収縮することにより、中間材43や筒状セラミックス体41を伸長させようとする応力が加わることを抑えている。このように、本熱伝導部材40では、金属管42における伸縮の大きさが筒状セラミックス体41や中間材43における伸縮の大きさと異なる状態の時でも、金属管42がひだ部45の働きによって軸方向に沿って自在に伸縮するので、金属管42から筒状セラミックス体41へと大きな応力が及びにくい。その結果、本熱伝導部材40は、筒状セラミックス体41にひびや割れが生じにくい。
【0041】
本熱伝導部材40が備える金属管42のようにひだ部45が内側に窪んでいる形態の場合においては、ひだ部45は、1個であっても、複数個であってもよい。ひだ部45の数が多くなると、上述したようなひだ部45による応力の緩和作用が増すので、金属管42から中間材43や筒状セラミックス体41に大きな応力が加わりにくくなる。
【0042】
また、ひだ部45の深さは、0.1mm〜20mmであることが好ましく、1mm〜10mmであることがより好ましく、1mm〜5mmであることが特に好ましい。また、ひだ部45の幅は、0.1mm〜20mmであることが好ましく、1mm〜10mmであることがより好ましく、1mm〜5mmであることが特に好ましい。ひだ部45の高さやひだ部45の幅が0.1mmよりも小さくなると、ひだ部45による応力の緩和作用が十分に得られなくなる場合があり、20mmよりも大きくなると熱伝導効率が低下するため好ましくない。なお、ひだ部45の深さとは、金属管42の外周面の平滑な面からひだ部45の底部までの深さを意味する。また、ひだ部45の幅とは、金属管42の外周面の平滑な面から、ひだ部45の深さにして2分の1の深さの位置におけるひだ部45の幅を意味する。
【0043】
本熱伝導部材40では、中間材43については、金属を溶融させて溶湯を作製し、この溶湯を金属管12と筒状セラミックス体11との隙間に充填し、固化させることにより形成することができる。
図5は、熱伝導部材40を製造するための方法、具体的には、溶湯80を金属管12と筒状セラミックス体11との隙間に充填する方法の一例を示す模式図である。また、
図6は、
図5中のB−B’断面の模式図である。図示されたように、金属管42と筒状セラミックス体41との間隙に溶湯80を流入する際には、金属管42の側面に流入口85を設けておき、この金属管42の内部に筒状セラミックス体11を挿入した状態で、流入口85から金属管12と筒状セラミックス体11との間隙に溶湯80を注入するとよい。本熱伝導部材40では、金属管42のひだ部45の底部が筒状セラミックス体の外周面37hに接触しているので、ひだ部45によって溶湯80の流れが遮られてしまう。このような場合には、ひだ部45に挟まれた領域のそれぞれに少なくとも1つの流入口85を設けておき、各流入口85から金属管12と筒状セラミックス体11との間隙に溶湯80を注入するとよい。なお、金属管42には、流入口85の他に、通気口を設けておくと、溶湯80を注入した際に金属管12と筒状セラミックス体11との間隙に存在する空気を排出できるので、溶湯80を注入しやすくなる。
【0044】
次に、本発明の熱伝導部材が備える筒状セラミックス体や金属管について
図2(熱伝導部材10)を参照しつつ説明する(なお、
図4に示した熱伝導部材40のような形態についても、以下に説明する内容を適用することができる)。
【0045】
筒状セラミックス体11は、熱伝導率が100W/m・K以上であることが好ましい。より好ましくは、120〜300W/m・K、さらに好ましくは、150〜300W/m・Kである。この範囲とすることにより、熱伝導性が良好となり、効率的に筒状セラミックス体11内の熱を金属管12の外側に放出できる。
【0046】
筒状セラミックス体11は、耐熱性に優れるセラミックスを用いることが好ましく、特に伝熱性を考慮すると、熱伝導性が高いSiC(炭化珪素)が主成分であることが好ましい。なお、主成分とは、筒状セラミックス体11の50質量%以上がSiC(炭化珪素)であることを意味する。
【0047】
ただし、必ずしも筒状セラミックス体11の全体がSiC(炭化珪素)で構成されている必要はなく、SiC(炭化珪素)が本体中に含まれていれば良い。即ち、筒状セラミックス体11は、SiC(炭化珪素)を含むセラミックスからなるものであることが好ましい。
【0048】
また、SiC(炭化珪素)であっても多孔体の場合は高い熱伝導率が得られないため、筒状セラミックス体11の作製過程でシリコンを含浸させて緻密体構造とすることが好ましい。緻密体構造にすることで高い熱伝導率が得られる。例えば、SiC(炭化珪素)の多孔体の場合、熱伝導率は、20W/m・K程度であるが、緻密体とすることにより、150W/m・K程度とすることができる。
【0049】
筒状セラミックス体11としては、Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiC、金属複合SiC、再結晶SiC、Si
3N
4、及びSiC等を採用することができるが、高い熱交換率を得るための緻密体構造とするためにSi含浸SiC、(Si+Al)含浸SiCを採用することができる。Si含浸SiCは、SiC粒子表面を金属珪素融体の凝固物が取り囲むとともに、金属珪素を介してSiCが一体に接合した構造を有するため、炭化珪素が酸素を含む雰囲気から遮断され、酸化が防止される。さらに、SiCは、熱伝導率が高く、放熱しやすいという特徴を有するが、Siを含浸するSiCは、高い熱伝導率や耐熱性を示しつつ、緻密に形成され、伝熱部材として十分な強度を示す。つまり、Si−SiC系[Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiC]材料からなる筒状セラミックス体11は、耐熱性、耐熱衝撃性、耐酸化性をはじめ、酸やアルカリなどに対する耐蝕性に優れた特性を示すとともに、高熱伝導率を示す。
【0050】
なお、筒状セラミックス体11とは、セラミックスで筒状に形成され、軸方向の一方の端面2から他方の端面2まで貫通する流体の流路を有するものである。筒状とは、円筒状(円柱状)に限らず、軸(長手)方向に垂直な断面が四角形、またはその他の多角形の、角柱状であってもよい。
【0051】
図7は、多数のセルが形成されたハニカム構造体1を筒状セラミックス体11として用いた実施形態を模式的に示す。筒状セラミックス体11は、隔壁4を有し、隔壁4によって、流体の流路となる多数のセルが区画形成されたハニカム構造体1であることが好ましい。隔壁4を有することにより、筒状セラミックス体11の内部を流通する流体からの熱を効率よく集熱し、外部に伝達することができる。
図7に示されているハニカム構造体1(筒状セラミックス体11)は、その外周に外周壁7が設けられている。
【0052】
筒状セラミックス体11を、隔壁4によって流路となる複数のセル3が区画形成されたハニカム構造体1として形成する場合、セル形状は、円形、楕円形、三角形、四角形、その他の多角形等の中から所望の形状を適宜選択すればよい。
【0053】
ハニカム構造体1のセル密度(即ち、単位断面積当たりのセルの数)については特に制限はなく、目的に応じて適宜設計すればよいが、25〜2000セル/平方インチ(4〜320セル/cm
2)の範囲であることが好ましい。セル密度が25セル/平方インチより小さくなると、隔壁4の強度、ひいてはハニカム構造体1自体の強度及び有効GSA(幾何学的表面積)が不足するおそれがある。一方、セル密度が2000セル/平方インチを超えると、熱媒体が流れる際の圧力損失が大きくなるおそれがある。
【0054】
また、ハニカム構造体1の1つ当たりのセル数は、1〜10,000が望ましく、200〜2,000が特に望ましい。セル数が多すぎるとハニカム自体が大きくなるため第一の流体側から第二の流体側までの熱伝導距離が長くなり、熱伝導ロスが大きくなり熱流束が小さくなる。またセル数が少ない時には第一の流体側の熱伝達面積が小さくなり第一の流体側の熱抵抗を下げることが出来ず熱流束が小さくなる。
【0055】
ハニカム構造体1のセル3の隔壁4の厚さ(壁厚)についても、目的に応じて適宜設計すればよく、特に制限はない。壁厚を50μm〜2mmとすることが好ましく、60〜500μmとすることが更に好ましい。壁厚を50μm未満とすると、機械的強度が低下して衝撃や熱応力によって破損することがある。一方、2mmを超えると、ハニカム構造体側に占めるセル容積の割合が低くなったり、流体の圧力損失が大きくなったり、熱媒体が透過する熱交換率が低下するといった不具合が発生するおそれがある。
【0056】
ハニカム構造体1のセル3の隔壁4の密度は、0.5〜5g/cm
3であることが好ましい。0.5g/cm
3未満の場合、隔壁4は強度不足となり、第一流体が流路内を通り抜ける際に圧力により隔壁4が破損する可能性がある。また、5g/cm
3を超えると、ハニカム構造体1自体が重くなり、軽量化の特徴が損なわれる可能性がある。上記の範囲の密度とすることにより、ハニカム構造体1を強固なものとすることができる。また、熱伝導率を向上させる効果も得られる。
【0057】
金属管12としては、耐熱性、耐蝕性のあるものが好ましく、例えば、SUS管、銅管、真鍮管等を用いることができる。
【0058】
また、金属管12の肉厚については、0.1mm〜2mmが好ましく、0.15〜1.0mmがより好ましい。0.1mmよりも小さいと、溶接や加工等が難しくなるためコスト高になる場合があり、2mmよりも大きいとひだ部15による応力の緩和作用が十分に得られなくなる場合がある。
【0059】
次に、本発明の一実施形態の熱伝導部材10(
図7を参照)の製造方法を説明する。まず、セラミックス粉末を含む坏土を所望の形状に押し出し、ハニカム成形体を作製する。ハニカム構造体1の材料としては、前述のセラミックスを用いることができるが、例えば、Si含浸SiC複合材料を主成分とするハニカム構造体1を製造する場合、所定量のC粉末、SiC粉末、バインダー、水又は有機溶媒を混練し坏土とし、成形して所望形状のハニカム成形体を得る。
【0060】
そしてハニカム成形体を乾燥し、Si含浸焼成することによって、隔壁4によってガス(流体)の流路となる複数のセル3が区画形成されたハニカム構造体1を得ることができる。
【0061】
続いて、金属を溶融させて溶湯を作製し、この溶湯を金属管12とハニカム構造体1との隙間に充填し、次いで溶湯を固化させることにより、中間材13を金属管12とハニカム構造体1との間に設けることができる。このように溶湯を用いると、中間材13を介した金属管12とハニカム構造体1との接合を強めることができる。なお、本明細書にいう溶融状態とは、完全溶融状態のみならず、半溶融状態(固体から、固液共存になった状態)、半凝固状態(一度液体にしてから、液固共存になった状態)のセミソリッドも含む。
【0062】
金属管12とハニカム構造体1との間隙に溶湯を充填する方法としては、重力鋳造、低圧鋳造、ダイキャスト(高圧鋳造)等を用いることができる。ダイキャストは、サイクルタイム(コスト)に優れ、狭い隙間に溶湯を充填しやすい。また、低圧鋳造は、サイクルタイムは長くなるが、品質、材料歩留り等に優れる。
【0063】
あるいは、中間材13としてろう材を用いてもよい。この方法では、金属管12の内面とハニカム構造体1の外周面7hとをろう付けする。ハニカム構造体1に金属管12を被せて、ハニカム構造体1と金属管12との間隙にろう材を充填する。ろう材としては、銀ろう材、銅ろう材、黄銅ろう材、アルミろう材、Niろう材等を用いることができる。ろう材は、ペースト状、シート状のものを利用することができる。常温で入らない場合は、金属管12を温めるとよい。そして、真空中でろう材の固相線温度以上に昇温してろう付けする。その際に、金属管12の外側から型で圧縮、矯正した状態でろう付けしても良い。間隙に充填されたろう材は、昇温、冷却により中間材13となり、金属管12とハニカム構造体1とが接合される。
【0064】
また、金属管12の外側に突出したひだ部15を有する場合は、金属管12の内面では、ひだ部15が窪んでいる。この窪んだ部分に充填材を予め入れておき、その後、金属管12とハニカム構造体1とを中間材13を介して接合してもよい。この方法により、金属管12のひだ部15の内面15sと中間材13との隙間に充填材を備えた熱伝導部材10を製造することができる。
【0065】
図8に本発明の熱伝導部材10を含む熱交換器30の一実施形態の模式的な斜視図を示す。
図8に示すように、熱交換器30は、熱伝導部材10(ハニカム構造体1+中間材13+金属管12)と、熱伝導部材10を内部に含むケーシング21とによって形成されている。筒状セラミックス体11のハニカム構造体1のセル3が第一の流体が流通する第一流体流通部5となる。熱交換器30は、ハニカム構造体1のセル3内を、第二の流体よりも高温の第一の流体が流通するように構成されている。また、ケーシング21に第二の流体の入口22及び出口23が形成されており、第二の流体は、熱伝導部材10の金属管12の外周面12h上を流通する。
【0066】
つまり、ケーシング21の内側面24と金属管12の外周面12hとによって第二流体流通部6が形成されている。第二流体流通部6は、ケーシング21と金属管12の外周面12hとによって形成された第二の流体の流通部であり、第一流体流通部5とハニカム構造体1の隔壁4、中間材13、金属管12によって隔たれて熱伝導可能とされており、第一流体流通部5を流通する第一の流体の熱を隔壁4、中間材13、金属管12を介して受け取り、流通する第二の流体である被加熱体へ熱を伝達する。第一の流体と第二の流体とは、完全に分離されており、これらの流体は混じり合わないように構成されている。
【0067】
第一流体流通部5は、ハニカム構造として形成されており、ハニカム構造の場合、流体がセル3の中を通り抜ける時には、流体は隔壁4により別のセル3に流れ込むことが出来ず、ハニカム構造体1の入口から出口へと直線的に流体が進む。また、本発明の熱交換器30内のハニカム構造体1は、目封止されておらず、流体の伝熱面積が増し熱交換器30のサイズを小さくすることができる。これにより、熱交換器30の単位体積あたりの伝熱量を大きくすることができる。さらに、ハニカム構造体1に目封止部の形成やスリットの形成等の加工を施すことが不要なため、熱交換器30は、製造コストを低減することができる。
【0068】
熱交換器30は、第二の流体よりも高温である第一の流体を流通させ、第一の流体から第二の流体へ熱伝導するようにすることが好ましい。第一の流体として気体を流通させ、第二の流体として液体を流通させると、第一の流体と第二の流体の熱交換を効率よく行うことができる。つまり、本発明の熱交換器30は、気体/液体熱交換器として適用することができる。
【0069】
以上のような構成の本発明の熱交換器30に流通させる第一の流体である加熱体としては、熱を有する媒体であれば、気体、液体等、特に限定されない。例えば、気体であれば自動車の排ガス等が挙げられる。また、加熱体から熱を奪う(熱交換する)第二の流体である被加熱体は、加熱体よりも低い温度であれば、媒体としては、気体、液体等、特に限定されない。
【0070】
また、熱交換器30(
図8参照)に流通させる第一の流体(高温側)が排ガスの場合、第一の流体(高温側)が通過するハニカム構造体1のセル3内部の壁面(隔壁4)には、触媒が担持されていることが好ましい。これは、排ガス浄化の役割に加えて、排ガス浄化の際に発生する反応熱(発熱反応)も熱交換することが可能になるためである。貴金属(白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、インジウム、銀、及び金)、アルミニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、セリウム、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、亜鉛、スズ、鉄、ニオブ、マグネシウム、ランタン、サマリウム、ビスマス及びバリウムからなる群から選択された元素を少なくとも一種を含有すると良い。これらは金属、酸化物、及びそれ以外の化合物であっても良い。
【0071】
第一の流体(高温側)が通過するハニカム構造体1の第一流体流通部5のセル3の隔壁4に担持される触媒(触媒金属+担持体)の担持量としては、10〜400g/Lであることが好ましく、貴金属であれば0.1〜5g/Lであることが更に好ましい。触媒(触媒金属+担持体)の担持量を10g/L未満とすると、触媒作用が発現し難いおそれがある。一方、400g/Lを超えると、圧損が大きくなる他、製造コストが上昇するおそれがある。