【実施例】
【0023】
以下実施例により本発明を具体的に説明する。なお本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0024】
<伸長率>
JIS L1096 A法 カットストリップ法に従って測定した。試験片の幅5cm、つかみ間隔20cmとした。初荷重は試験片の幅で1mの長さにかかる重力に相当する荷重とした。引張速度20cm/minとした。17.7N(1.8kg)荷重時の伸長率(%)を測定した。伸長率はストレッチ性を示す。
【0025】
<水中の摩擦抵抗>
図7〜9に示す測定方法及び装置を使用した。
図7Aはこの測定に使用する円筒状基体(モデル)の側面図、
図7Bは
図7AのI−I線断面図である。この円筒状基体(モデル)31の先端33は球面状であり、後端34は先細り状である。円筒部32には水着の生地サンプル39を取り付ける。取り付けは円筒部32に生地サンプル39を巻き付け、円筒状治具38a,38bで押さえ、先端部33と後端部34を挿入する。円筒部32に取り付ける生地サンプル39の面積は約0.016mm
2である。円筒部32の下部には、おもり35を挿入する。また円筒状基体(モデル)31の軸部には中空部(パイプ)36を入れておき、ここに
図8〜9に示すようにワイヤ37を挿入する。円筒状基体(モデル)31の水中における重さは水着生地を取り付けた状態で0.3N、体積は1.2×10
-3m
3とした。全体は樹脂製である。中空部36は直径2.3mmとした。
モデル31は直径30mm,長さ300mmで、生地を装着する部分が200mmであった。質量は、装着した生地サンプルを含めて88gになるようにし、生地およびモデルの浮力を考慮し基体の内部に錘を装着して、水中での重さが0.3Nとなるよう統一した。
【0026】
図8は水中で円筒状基体が落下する時間を測定する装置40を示す説明図である。アクリル樹脂製等の透明な水槽41に水42を入れておく。水槽41の裏側には遮蔽シート43を貼り付け、後側にはランプ44を配置し、前面にはハイスピードカメラ45を配置する。水槽11は透明なアクリル樹脂製であり、高さ(H)1.7m、幅(L)と奥行きはそれぞれ0.22mとし、ハイスピードカメラ15は水槽から4.25m離した位置であって床面からの高さ0.85mに配置した。ハイスピードカメラ15の撮影速度は1900fpsとした。この状態で水槽の上から円筒状基体(モデル)31を静かに落下させる。円筒状基体(モデル)31はワイヤ37に沿って落下する。
【0027】
図9は同、水中の所定距離を円筒状基体が落下する時間を測定する方法及び装置を示す説明図である。まず円筒状基体(モデル)31の後端が水面に位置するように配置させ、先端46から200mm下方にレーザ点47と、その100mm下方を第1測定ポイント48とし、その100mm下方に第2測定ポイント49としておく。レーザ点47は
図8に示す遮蔽シート43に穴をあけておく。このような状態で円筒状基体(モデル)31を静かに落下させ、その先端46がレーザ点47を通過したときにハイスピードカメラの高速撮影をオンとし、第1測定ポイント48から第2測定ポイント49まで落下する時間を測定する。1試料当たり10回計測してその平均値を用いる。次の計算式(数1)から加速度を求める。
【0028】
【数1】
u
1=k
1/t
1
u
2=k
2/t
2
Δt=t
2
(但し、k
1は
図9のレーザ点47から第1測定ポイント48までの落下距離(mm)、t
1は
図9のレーザ点47から第1測定ポイント48までの通過時間(秒)、k
2 は第1測定ポイント48から第2測定ポイント49までの落下距離(mm)、t
2は第1測定ポイント48から第2測定ポイント49までの通過時間(秒)、本例の場合k
1は100mm、k
2は200mmとした。)
【0029】
水中における水着生地の摩擦抵抗係数C
fは下記式(数2)(数3)により算出する。摩擦抵抗係数C
fの計測精度は0.001の値まで出すことができる。
【0030】
【数2】
【0031】
【数3】
但し、Wは重力でW=mg(mは円筒状基体の質量(kg),gは重力加速度(m/s
2))、Bは浮力でB=ρ
wgV(ρ
wは水の密度(kg/m
3),Vは円筒状基体の体積(m
3))、Dは抵抗でD=C
f×(1/2)×ρu
2A(ρは水の密度,uは落下速度,Aは水着生地の表面積)
【0032】
図10Aは前記円筒状基体を展開したときの斜視図、
図10Bは同平面図である。生地サンプルを取り付けるには、円筒部32に生地を巻き付け、円筒状治具38a,38bで押さえ、先端部33と後端部34を挿入する。
【0033】
(実施例1)
<糸使い>
ポリエステルマルチフィラメント生糸(44decitex)、とスパンデックス繊維(“ライクラ254B” 44decitex)を使用した。
<編物>
32ゲージのトリコット編機を使用してハーフトリコット組織の編物を編成した。この編物を染色し、撥水処理した。撥水処理は公知のフッ素系撥水処理剤を使用して編み物に固着させた。次いでエンボス加工した。エンボス加工はロール温度220℃、線圧5500kgf、ロール速度6〜10m/min程度とした。この編物は単位面積当たりの質量(目付)230g/m
2であった。この編物を
図7〜9の測定装置で測定した摩擦抵抗値は0.078であった。
図2における各寸法は次のとおりであった。
凹部ストライプ部と凸部ストライプ部の合計長さa1:16mm
凹部ストライプ部2の幅a2:7mm
凸部ストライプ部3の幅a3:9mm
凸部ストライプ部3の両端から凹部ダイヤ柄4の端までの長さa4,a6:各1mm
凹部ダイヤ柄4の幅a5:1mm
凹部ダイヤ柄4の長さa7:1.14mm
凹部ダイヤ柄4の体長方向の間隔a8:2.3mm
凹部ストライプ部2の深さ:約0.05mm
凹部ダイヤ柄4の深さ:約0.03mm
編物の厚さ:0.60mm
この編物の伸長率はタテ方向(体長方向)134%,ヨコ方向 123%であった。
<水着>
得られた編物を用いて
図4〜6に示す競泳用水着を縫製した。この水着を着用試験したところ、ストレッチ性が高く着用し易く、人体の肌への密着性も良く、水流抵抗も低く感じられ、競泳に適した水着であることが確認できた。
【0034】
(実施例2)
<糸使い>
被覆糸:ナイロンフィラメント生糸(繊度33decitex、フィラメント本数10本)、芯糸:“ライクラ176B”(繊度44decitex)、シングルカバーリングヤーン(SCY)を使用した。
<織物>
上記の糸を使い、ストレッチ織物を作成した。レピア織機を使用し、タテ密度:180本/2.54cm、ヨコ密度:178本/2.54cm、単位面積当たりの重量(目付)135g/m
2、同厚さ0.28mmであった。織組織は平織とした。この織物を実施例1と同様に撥水加工し、エンボス加工した。この織物の伸長率は経糸方向56.2%,緯糸方向51.9%、であった。また摩擦抵抗係数は0.077であった。得られた編物を用いて
図4〜6に示す競泳用水着を縫製した。この水着を着用試験したところ、ストレッチ性が高く着用し易く、人体の肌への密着性も良く、水流抵抗も低く感じられ、競泳に適した水着であることが確認できた。
【0035】
(比較例1)
凹部ダイヤ柄4を作成しない以外は実施例1と同様に編物を作成した。得られた編物の摩擦抵抗係数は0.081であった。得られた編物を用いて
図4〜6に示す競泳用水着を縫製した。この水着を着用試験したところ、実施例1と比較して水流抵抗は高く感じられた。
【0036】
(比較例2)
凹部ダイヤ柄4を作成しない以外は実施例2と同様に織物を作成した。得られた織物の摩擦抵抗係数は0.079であった。得られた編物を用いて
図4〜6に示す競泳用水着を縫製した。この水着を着用試験したところ、実施例2と比較して水流抵抗は高く感じられた。