(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリイソシアネート(B)が、芳香族ポリイソシアネートのカルボジイミド変性体、及び芳香族ポリイソシアネートの多核体を含有する、請求項1〜6のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
さらに、水分吸着剤(D)及びシランカップリング剤(E)からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
さらに、水分吸着剤(D)及び/又は無機充填剤を含有し、且つ水分吸着剤(D)及び/又は無機充填剤の含有量の合計が、前記ポリオール(A)100質量部に対して0.1〜10質量部である、請求項1〜8のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
前記重合油(A1)を、前記ヒマシ油(a1)と前記菜種油(a2)とを有機過酸化物の存在下で反応させて得る工程を含む、請求項1〜10のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物を製造する方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書中において、「含有」なる表現については、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0012】
1.ポリウレタン樹脂組成物
本発明は、ヒマシ油(a1)と植物油(a2)との重合油(A1)を含有するポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)、及びリン酸エステル系難燃剤(C)を含有する、ポリウレタン樹脂組成物に関する。以下、これについて説明する。
【0013】
「ポリオール(A)」は、ヒマシ油(a1)と植物油(a2)との重合油(A1)を含有する。
【0014】
重合油(A1)は、ヒマシ油(a1)と植物油(a2)とを適当なラジカル開始剤の存在下で反応させて得られるものであれば特に限定されない。重合油(A1)は、通常、ヒマシ油(a1)同士が重合した分子、植物油(a2)同士が重合した分子、ヒマシ油(a1)と植物油(a2)が重合した分子、未反応のヒマシ油(a1)、未反応の植物油(a2)等を含有する。
【0015】
ヒマシ油(a1)は、特に制限されず、ポリウレタン樹脂組成物(特に、電気電子部品封止用ポリウレタン樹脂組成物)において用いられているもの又は用いられ得るものを各種使用することが可能である。
【0016】
ヒマシ油(a1)の平均水酸基価は、特に制限されるものではないが、例えば130〜190mgKOH/g、好ましくは140〜180mgKOH/g、より好ましくは150〜170mgKOH/gである。
【0017】
ヒマシ油(a1)の市販品としては、例えばヒマシ油(伊藤製油社製)等が挙げられる。
【0018】
ヒマシ油(a1)は、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0019】
植物油(a2)は、ヒマシ油以外の植物油であれば特に制限されず、ラジカル開始剤の存在下でヒマシ油(a1)と重合し得るものを広く採用することができる。なお、植物油(a2)は、不純物としてヒマシ油を含有していてもよい。植物油(a2)の不純物としての該ヒマシ油は、上記(a1)成分としてのヒマシ油とは区別されるものである。植物油(a2)としては、構成脂肪酸の50%以上(好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、よりさらに好ましくは85%以上、特に好ましくは85〜95%)が不飽和脂肪酸である植物油が好ましい。不飽和脂肪酸としては、例えばオレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸等の炭素数16〜24(好ましくは17〜22、より好ましくは17〜20)の不飽和脂肪酸が挙げられる。また、植物油(a2)を構成する一価不飽和脂肪酸の構成比率は、例えば40%以上、好ましくは50〜70%である。
【0020】
植物油(a2)の具体例としては、菜種油(キャノーラ油)、オリーブ油、ひまわり油、ベニバナ油、ピーナッツオイル、パーム油、コーン油、大豆油、綿実油、ココナッツ油等が挙げられ、好ましくは菜種油(キャノーラ油)、オリーブ油、ひまわり油、ベニバナ油、ピーナッツオイル等が挙げられ、より好ましくは菜種油(キャノーラ油)、オリーブ油等が挙げられ、さらに好ましくは菜種油(キャノーラ油)が挙げられる。
【0021】
植物油(a2)は、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0022】
重合開始剤は、油脂の重合に用いられている又は用いられ得るものである限りにおいて、特に限定されない。重合開始剤としては、例えば有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果をより確実に発揮させることができるという観点から、好ましくは有機過酸化物が挙げられる。
【0023】
有機過酸化物としては、特に制限されるものではないが、例えばジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキシフタレート、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはジ−tert−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイドが挙げられる。アゾ化合物としては、特に制限されるものではないが、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)等が挙げられる。
【0024】
重合開始剤は、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0025】
重合油(A1)の平均水酸基価は、特に制限されるものではないが、例えば85〜145mgKOH/g、好ましくは90〜140mgKOH/g、より好ましくは90〜135mgKOH/g、さらに好ましくは95〜130mgKOH/gである。上記範囲の平均水酸基価の重合油(A1)を用いることにより、難燃性の耐熱安定性をより向上させ、さらには耐加水分解性(特に高温下における耐加水分解性)をより向上させることができ、またブリードを抑制することもできる。
【0026】
重合油(A1)の酸価は、特に制限されるものではないが、例えば0.4〜2mgKOH/g、好ましくは0.6〜1.5mgKOH/g、より好ましくは0.8〜1.2mgKOH/gである。
【0027】
重合油(A1)の粘度は、特に限定されるものではないが、25℃において、例えば500〜1200mPa・s、より好ましくは500〜1000mPa・s、さらに好ましくは500〜800mPa・s、よりさらに好ましくは550〜800mPa・sである。上記範囲の粘度の重合油(A1)を用いることにより、難燃性の耐熱安定性をより向上させ、さらには耐加水分解性(特に高温下における耐加水分解性)をより向上させることができ、またブリードを抑制することもできる。
【0028】
重合油(A1)は、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0029】
重合油(A1)は、上記したように、ヒマシ油(a1)と植物油(a2)とを適当なラジカル開始剤の存在下で反応させることにより製造することができる。
【0030】
該反応系に投入する、ヒマシ油(a1)と植物油(a2)の質量比は、ヒマシ油(a1)100質量部に対して、植物油(a2)が例えば10〜90質量部、好ましくは15〜80質量部、より好ましくは20〜75質量部である。質量比をこのような範囲に設定することにより、上記した好ましい平均水酸基価及び粘度を有する重合油(A1)を得ることができる。
【0031】
該反応系に投入するラジカル開始剤(好ましくは有機過酸化物)の量は、ヒマシ油(a1)と植物油(a2)との合計100質量部に対して、例えば0.2〜8質量部、好ましくは0.5〜6質量部、より好ましくは1〜6質量部、さらに好ましくは1〜6質量部、よりさらに好ましくは2〜5質量部である。ラジカル開始剤の量をこのような範囲に設定することにより、上記した好ましい平均水酸基価及び粘度を有する重合油(A1)を得ることができる。なお、ラジカル開始剤は、ヒマシ油(a1)と植物油(a2)を含有する反応系に対して、徐々に(例えば0.2〜2時間かけて、好ましくは0.5〜1.5時間かけて)添加することが好ましい。
【0032】
該反応の反応温度は、重合油(A1)が形成される限りにおいて特に限定されない。該反応温度は、使用するラジカル開始剤の種類等によっても異なるが、例えば100〜200℃、好ましくは120〜160℃である。
【0033】
該反応の反応時間(ラジカル開始剤添加から、反応を終了させるまでの時間)は、重合油(A1)が形成される限りにおいて特に限定されない。該反応時間は、使用するラジカル開始剤の種類等によっても異なるが、例えば2〜10時間、好ましくは4〜6時間である。
【0034】
重合油(A1)の含有量は、特に制限されない。該含有量は、初期難燃性及び難燃性の耐熱安定性をより向上させることができるという観点から、ポリオール(A)100質量%に対して、例えば10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。
【0035】
ポリオール(A)は、重合油(A1)以外に、他のポリオールを含有していてもよい。他のポリオールは、ポリウレタン樹脂組成物(特に、電気電子部品封止用ポリウレタン樹脂組成物)において用いられている成分又は用いられ得る成分を各種使用することが可能である。他のポリオールの具体例としては、ヒマシ油系ポリオール(A2)、ポリブタジエンポリオール、ダイマー酸ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、これらの水素化物(例えば、ポリブタジエンポリオールの水素化物、ポリイソプレンポリオールの水素化物等のポリジエンポリオールの水素化物;ヒマシ油の水素化物等)等が挙げられ、好ましくはヒマシ油系ポリオール(A2)が挙げられる。
【0036】
ヒマシ油系ポリオール(A2)として、具体的には、例えばヒマシ油、ヒマシ油誘導体等が挙げられる。ヒマシ油誘導体としては、特に限定されないが、例えばヒマシ油脂肪酸;ヒマシ油又はヒマシ油脂肪酸に水素付加した水添ヒマシ油;ヒマシ油とその他の油脂のエステル交換物;ヒマシ油と多価アルコールとの反応物;ヒマシ油脂肪酸と多価アルコールとのエステル化反応物;これらにアルキレンオキサイドを付加重合したもの等が挙げられる。
【0037】
ヒマシ油系ポリオール(A2)の数平均分子量は、通常100〜4000の範囲であり、好ましくは300〜2500の範囲である。
【0038】
また、ヒマシ油系ポリオール(A2)において水酸基の含有量は、水酸基価として、通常30〜500mgKOH/gの範囲内であり、好ましくは100〜200mgKOH/gの範囲内である。
【0039】
ヒマシ油系ポリオール(A2)として用いることができる市販品としては、例えば伊藤製油社製のヒマシ油、ユーリックY−403(水酸基価160、官能基数2)、ユーリックH−30(水酸基価160、官能基数3)、ユーリックH−57(水酸基価100、官能基数3)、ユーリックH−52(水酸基価200、官能基数3)等が挙げられる。
【0040】
なお、数平均分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)により行うことができる。GPC法による数平均分子量は、具体的には、測定装置として昭和電工(株)社製ShodexGPC System21を、カラムとして昭和電工(株)社製ShodexLF−804/KF−803/KF−804を、移動相としてNMPを用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0041】
ポリオール(A)がヒマシ油系ポリオール(A2)を含有する場合、その含有量は、ポリオール(A)100質量%に対して、例えば20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%、より好ましくは40〜60質量%である。
【0042】
ポリオール(A)は、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0043】
ポリオール(A)の含有量は、ポリウレタン樹脂組成物(特に、電気電子部品封止用ポリウレタン樹脂組成物)において採用され得る量である限り特に限定されない。該含有量は、本発明のポリウレタン樹脂組成物が無機充填剤を含有しない場合であれば、本発明のポリウレタン樹脂組成物100質量%に対して、例えば20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%、より好ましくは40〜70質量%、さらに好ましくは50〜70質量%である。また、該含有量は、本発明のポリウレタン樹脂組成物が無機充填材を含有する場合であれば、本発明のポリウレタン樹脂組成物100質量%に対して、例えば0.5〜80質量%、好ましくは0.5〜30質量%である。
【0044】
「ポリイソシアネート(B)」は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物(特に、電気電子部品封止用ポリウレタン樹脂組成物)において用いられている成分又は用いられ得る成分を各種使用することが可能である。ポリイソシアネート(B)としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物、芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物等のポリイソシアネート化合物; ポリイソシアネート化合物の変性体(例えば、イソシアヌレート体、カルボジイミド体、アダクト体、ビウレット体、アロファネート体等)、ポリイソシアネート化合物の多核体等が挙げられる。
【0045】
これらの中でも、難燃性(初期難燃性及び加熱後難燃性の両方)をより向上させることができるという観点から、好ましくはポリイソシアネート化合物の変性体が挙げられ、より好ましくは芳香族ポリイソシアネート化合物の変性体が挙げられ、さらに好ましくは芳香族ポリイソシアネート化合物のカルボジイミド変性体が挙げられる。これらの好ましいポリイソシアネートに加えて、ポリイソシアネート(B)は、耐加水分解性(特に、高温下における耐加水分解性)をより向上させることができるという観点から、さらにポリイソシアネート化合物の多核体、好ましくは芳香族ポリイソシアネート化合物の多核体を含有することが望ましい。
【0046】
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート等が挙げられ、好ましくはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等が挙げられる。
【0047】
脂環族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0048】
芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等が挙げられ、好ましくは2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等が挙げられる。
【0049】
芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0050】
ポリイソシアネート化合物の多核体の粘度は、特に限定されるものではないが、25℃において、好ましくは100〜800mPa・s、より好ましくは100〜500mPa・s、さらに好ましくは100〜300mPa・s、よりさらに好ましくは150〜250mPa・sである。
【0051】
ポリイソシアネート化合物の多核体のNCO含量は、特に限定されるものではないが、好ましくは20〜45%、より好ましくは25〜40%、さらに好ましくは28〜35%である。
【0052】
ポリイソシアネート(B)の市販品としては、例えばミリオネートMTL(東ソー株式会社製)、ミリオネートMR−200等が挙げられる。
【0053】
ポリイソシアネート(B)は、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0054】
ポリイソシアネート(B)の含有量は、ポリウレタン樹脂組成物(特に、電気電子部品封止用ポリウレタン樹脂組成物)において採用され得る量である限り特に限定されない。該含有量は、ポリオール(A)100質量部に対して、例えば5〜50質量部、好ましくは15〜50質量部、より好ましくは25〜45質量部、さらに好ましくは30〜40質量部である。
【0055】
また、ポリイソシアネート(B)としてポリイソシアネート化合物の変性体(より好ましくは芳香族ポリイソシアネート化合物の変性体、さらに好ましくは芳香族ポリイソシアネート化合物のカルボジイミド変性体)を含有している場合、その含有量は、ポリイソシアネート(B)100質量%に対して、例えば80質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上である。
【0056】
一方で、ポリイソシアネート(B)としてポリイソシアネート化合物の変性体(より好ましくは芳香族ポリイソシアネート化合物の変性体、さらに好ましくは芳香族ポリイソシアネート化合物のカルボジイミド変性体)及びポリイソシアネート化合物の多核体(好ましくは芳香族ポリイソシアネート化合物の多核体)を含有している場合、それぞれの含有量は、ポリイソシアネート(B)100質量%に対して例えば20〜80質量%であり、これらの合計の含有量は、ポリイソシアネート(B)100質量%に対して、例えば80質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上である。これら2種のポリイソシアネートの含有量を上記範囲に調整することにより、難燃性(初期難燃性及び加熱後難燃性の両方)をより向上させることができ、さらに耐加水分解性(特に、高温下における耐加水分解性)もより向上させることができる。
【0057】
本発明のポリウレタン樹脂組成物において、ポリイソシアネート(B)と、ポリオール(A)とのNCO/OH比は、0.6〜2.0であることが好ましく、0.8〜1.2であることがより好ましい。
【0058】
「リン酸エステル系難燃剤(C)」は、特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物(特に、電気電子部品封止用ポリウレタン樹脂組成物)において用いられている成分又は用いられ得る成分を各種使用することが可能である。リン酸エステル系難燃剤(C)としては、例えば、トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)、クレジルジ2,6−キシレニルホスフェート、トリアリルフォスフェート(IPPP)等の非ハロゲンリン酸エステル; 芳香族縮合リン酸エステル等の非ハロゲン縮合リン酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、非ハロゲンリン酸エステルが好ましく、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、トリフェニルホスフェート(TPP)がより好ましいく、トリクレジルホスフェート(TCP)がさらに好ましい。
【0059】
リン酸エステル系難燃剤(C)は、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0060】
リン酸エステル系難燃剤(C)の含有量は、特に限定されるものではないが、ポリオール(A)100質量部に対して、例えば5〜50質量部、好ましくは15〜45質量部、より好ましくは25〜45質量部、さらに好ましくは30〜40質量部である。リン酸エステル系難燃剤(C)の含有量を上記範囲内とすることにより、ポリウレタン樹脂組成物の難燃性、さらには該難燃性の耐熱安定性を高めることができる。
【0061】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、「水分吸着剤(D)」を含有することが好ましい。これにより、本発明のポリウレタン樹脂組成物の耐加水分解性、さらには高温下における耐加水分解性をさらに高めることができる。水分吸着剤(D)は、特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物(特に、電気電子部品封止用ポリウレタン樹脂組成物)において用いられている成分又は用いられ得る成分を各種使用することが可能である。水分吸着剤(D)としては、例えばゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ等が挙げられ、耐加水分解性、作業性等の観点から、好ましくはゼオライトが挙げられる。
【0062】
ゼオライトとしては、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の結晶性含水アルミノ珪酸塩が好ましい。ゼオライトの結晶形は、特に限定されず、A型、X型、LSX型等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはA型が挙げられる。ゼオライト中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、特に限定されず、カリウム、ナトリウム、カルシウム、リチウム等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはカリウムが挙げられる。
【0063】
ゼオライトの平均細孔径は、0.2〜1.0nm程度が好ましく、0.3〜0.5nm程度がより好ましい。
【0064】
ゼオライトの平均粒径は、特に限定されないが、例えば、0.1〜10μm、好まし
くは0.1〜5μm程度であることができる。
【0065】
水分吸着剤(D)は、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0066】
水分吸着剤(D)の含有量は、特に限定されないが、ポリオール(A)100質量部に対して、例えば0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部、より好ましくは0.5〜2質量部である。水分吸着剤(D)の含有量を上記範囲内とすることにより、ポリウレタン樹脂組成物の耐加水分解性、さらには高温下における耐加水分解性をさらに高めることができる。
【0067】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、「シランカップリング剤(E)」を含有することが好ましい。シランカップリング剤(E)は、特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物(特に、電気電子部品封止用ポリウレタン樹脂組成物)において用いられている成分又は用いられ得る成分を各種使用することが可能である。シランカップリング剤(E)としては、例えばビニルシラン系(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシシラン)等)、アクリルシラン系(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)、エポキシシラン系(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシメチルジエトキシシラン等)、アミノシラン系(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等)、メルカプトシラン系(γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等)、クロロシラン系(γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン等)等が挙げられる。
【0068】
シランカップリング剤(E)は、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0069】
シランカップリング剤(E)の含有量は、特に限定されないが、ポリオール(A)100質量部に対して、例えば0.001〜10質量部、好ましくは0.1〜8質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。
【0070】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、必要に応じて「重合触媒(F)」を含有することができる。重合触媒(F)は、特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物(特に、電気電子部品封止用ポリウレタン樹脂組成物)において用いられている成分又は用いられ得る成分を各種使用することができる。重合触媒(F)としては、例えば、有機錫触媒、有機鉛触媒、有機ビスマス触媒等の金属触媒、アミン触媒などを例示できる。有機錫触媒としては、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテート等が挙げられる。有機鉛触媒としては、オクチル酸鉛、オクテン酸鉛、ナフテン酸鉛等が挙げられる。有機ビスマス触媒としては、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス等が挙げられる。アミン触媒としては、ジエチレントリアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジエチレントリアミン、トリメチレンジアミン、ジメチルアミノエタノ−ル、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エ−テル等が挙げられる。また、重合触媒としては、有機金属化合物、金属錯体化合物等を用いてもよい。
【0071】
重合触媒(F)は、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0072】
重合触媒(F)の含有量は、特に制限されないが、ポリオール(A)100質量部に対して、例えば0.00001〜10質量部、好ましくは0.0001〜5質量部、より好ましくは0.001〜1質量部、さらに好ましくは0.005〜0.2質量部、よりさらに好ましくは0.01〜0.1質量部である。
【0073】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、必要に応じて無機充填剤を含有することができる。無機充填剤は、特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物(特に、電気電子部品封止用ポリウレタン樹脂組成物)において用いられている成分又は用いられ得る成分を各種使用することができる。無機充填剤としては、例えば水酸化アルミニウム、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、ゼオライト等が挙げられる。これらの中でも、熱伝導性や難燃性に優れ、電気電子部品の封止用に適しているという観点から、好ましくは金属水酸化物が挙げられ、金属水酸化物の中でも好ましくは水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等、より好ましくは水酸化アルミニウムが挙げられる。また、無機充填剤の形状は、球状、不定形状のいずれでもよい。
【0074】
無機充填剤は、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0075】
無機充填剤の含有量は、ポリウレタン樹脂組成物(特に、電気電子部品封止用ポリウレタン樹脂組成物)において採用され得る含有量を適宜採用することができる。ただ、より確実に本発明の効果を発揮させるという観点から、該含有量は、ポリオール(A)100質量部に対して、例えば0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部、より好ましくは0.5〜2質量部である。
【0076】
本発明のポリウレタン樹脂組成物においては、水分吸着剤及び無機充填剤の両方を含有する場合、それらの含有量の合計は、特に制限されないが、より確実に本発明の効果を発揮させるという観点から、ポリオール(A)100質量部に対して、例えば0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部、より好ましくは0.5〜2質量部である。
【0077】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、必要に応じて各種「添加剤」を含有することができる。添加剤は、ポリウレタン樹脂組成物(特に、電気電子部品封止用ポリウレタン樹脂組成物)に用いられ得る成分であれば特に限定されない。添加剤の具体例としては、粘着付与剤、硬化促進剤、着色剤、消泡剤、鎖延長剤、架橋剤、フィラー、顔料、難燃剤、ウレタン化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防黴剤等が挙げられる。
【0078】
これらの添加剤の含有量は、その使用目的に応じて、ポリウレタン樹脂組成物の所望の特性を阻害することのないように、通常の添加量と同程度の範囲から適宜決定することができる。
【0079】
なお、本発明のポリウレタン樹脂組成物は、発泡剤を添加することはない。即ち、本発明のポリウレタン樹脂組成物は、主に電気電子部品の樹脂封止を目的としているのに対して、発泡剤を含む発泡ウレタンフォームは断熱等を目的としていることから、両者は目的が異なるものである。
【0080】
本発明のポリウレタン樹脂組成物が硬化前の液状である場合、その粘度は1000mPa・s以下が好ましく、500mPa・s以下がより好ましい。このような範囲の粘度であれば、より高い作業性を示すことができる。
【0081】
なお、本明細書において、硬化前のポリウレタン樹脂組成物の粘度は、以下に示す測定方法により測定される値である。すなわち、ポリオールを含む成分を調製してB成分とし、混合機(商品名:あわとり練太郎、シンキ−社製)を用いて2000rpmで3分混合した後23℃に調整する。また、別途ポリイソシアネートを含む成分を調製してA成分とし、23℃に調整する。次いで、B成分にA成分を添加して、60秒間混合する。混合開始から3分後の混合液の粘度をBH型粘度計を用いて測定し、硬化前のポリウレタン樹脂組成物の粘度(混合初期粘度)の測定値とする。
【0082】
2.ポリウレタン樹脂組成物の製造方法
本発明のポリウレタン樹脂組成物を製造する方法としては特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物を製造する方法として用いられる従来公知の方法に従って、或いはそれに準じた方法によって製造することができる。
【0083】
このような製造方法としては、例えば、ポリイソシアネートを含む成分を調製してA剤、ポリオールを含む成分を調製してB剤とし、A剤とB剤とを混合することにより反応させてポリウレタン樹脂として、当該ポリウレタン樹脂を含有するポリウレタン樹脂組成物を製造する方法が挙げられる。
【0084】
上記A剤がポリイソシアネートを含有し、上記B剤がポリオールを含有していれば、他の成分は、A成分又はB成分のどちらに含有されていてもよい。好ましくは、A剤がポリイソシアネート及びリン酸エステル系難燃剤を含有し、B剤がポリオール及び必要に応じて添加されるその他の成分(シランカップリング剤、水分吸着剤、重合触媒等)を含有する。
【0085】
なお、B剤の調製においては、B剤の各成分の混合物を加温処理及び/又は減圧処理して、脱水することが望ましい。加温処理の温度条件は、本発明の効果の観点から、好ましくは40℃〜70℃、より好ましくは50〜70℃である。減圧処理の気圧条件は、本発明の効果の観点から、好ましくは30mmHg以下、より好ましくは20mmHg以下、さらに好ましくは10mmHg以下である。工程aにおいては、加温処理及び減圧処理を同時に行うことが好ましい。加温処理及び/又は減圧処理の時間は、例えば0.25〜5時間程度、好ましくは0.5〜4時間程度、より好ましくは1〜3時間程度である。
【0086】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、硬化前の液状であってもよいし、硬化していてもよい。ポリウレタン樹脂組成物を硬化させる方法としては、上記A剤及びB剤を混合することにより、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させてポリウレタン樹脂とすることによりポリウレタン樹脂組成物を経時的に硬化させる方法が挙げられるが、加熱により硬化させてもよい。この場合、加熱温度は40〜120℃程度が好ましく、加熱時間は、0.1〜24時間程度が好ましい。加熱後は、必要に応じて、例えば室温で放置(例えば8〜48時間、好ましくは16〜32時間)することにより、さらに硬化させてもよい。
【0087】
3.ポリウレタン樹脂組成物の用途
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、高温放置後の難燃性の低下が抑制されている(或いは高温放置後でも高い難燃性を維持できる)、すなわち難燃性の耐熱安定性に優れている。さらには、これに加えて、耐加水分解性、さらには高温下における耐加水分解性にも優れている。したがって、例えば電気電子部品の樹脂封止用、特に高温下(特に、高温高湿環境下)で(特に長期間)使用される電気電子部品の樹脂封止用に適している。
【0088】
このような電気電子部品としては、トランスコイル、チョークコイル、リアクトルコイル等の変圧器、機器制御基盤、各種センサー等が挙げられる。このような電気電子部品も、本発明の一つである。本発明の電気電子部品は、電気洗濯機、便座、湯沸し器、浄水器、風呂、食器洗浄機、電動工具、自動車、バイク等に用いることができる。
【0089】
4.難燃性の耐熱安定性を向上させる方法
本発明は、ポリウレタン樹脂組成物において、ヒマシ油(a1)と植物油(a2)との重合油(A1)を含有するポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)、及びリン酸エステル系難燃剤(C)を配合すること含む、ポリウレタン樹脂組成物の難燃性の耐熱安定性を向上させる方法にも関する。
【0090】
この方法における各用語の定義、その他の成分、含有量等については、上述の「1.ポリウレタン樹脂組成物」〜「3.ポリウレタン樹脂組成物の用途」に記載のとおりである。
【実施例】
【0091】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0092】
(1)重合油の調製
以下の重合油1〜5の調製に使用した原料は以下のとおりである:
<ヒマシ油>商品名:ヒマシ油(伊藤製油社製)、水酸基価:160mgKOH/g
<菜種油>商品名:菜種白絞油(J−オイルミルズ社製)
<有機過酸化物>商品名:ジ−tert−Butyl Peroxide(東京化成工業製)。
【0093】
また、重合油の水酸基価、酸価、粘度はJISK1557‐1により測定し、酸価及び粘度はJIS1557−5により測定した。
【0094】
(1−1)重合油1の調製
加熱装置、冷却装置、撹拌機、温度計、コンデンサー、滴下ロート及び減圧装置を備えた2リットルの反応器に、ヒマシ油800質量部及び菜種油200質量部を空気中の水分が混入しないように仕込んだ。常圧下、温度を140℃に調整し、撹拌しながら有機過酸化物20質量部を1時間かけて滴下した。滴下後、150℃で5時間反応を継続し、有機過酸化物の分解物は真空下、同温度で回収した。反応終了後、1ミクロンの濾紙で濾過精製し、当該重合油を得た。
水酸基価 128mgKOH/g 酸価1.0mgKOH/g、粘度(25℃)650mPa・s。
【0095】
(1−2)重合油2の調製
ヒマシ油700質量部及び菜種油300質量部を用いる以外は、重合油1と同様にして調製した。
水酸基価 112mgKOH/g 酸価1.0mgKOH/g、粘度(25℃)750mPa・s。
【0096】
(1−3)重合油3の調製
ヒマシ油600質量部及び菜種油400質量部を用いる以外は、重合油1と同様にして調製した。
水酸基価 96mgKOH/g 酸価1.0mgKOH/g、粘度(25℃)596mPa・s。
【0097】
(1−4)重合油4の調製
ヒマシ油500質量部及び菜種油500質量部を用いる以外は、重合油1と同様にして調製した。
水酸基価 80mgKOH/g 酸価1.0mgKOH/g、粘度(25℃)460mPa・s
【0098】
(1−5)重合油5の調製
ヒマシ油950質量部及び菜種油50質量部を用いる以外は、重合油1と同様にして調製した。
水酸基価 150mgKOH/g 酸価1.0mgKOH/g、粘度(25℃)1500mPa・s
【0099】
(2)ポリウレタン樹脂組成物の調製
表1に示す配合に従いポリウレタン樹脂組成物を調製した。調製手順は次のとおりである。表1のB剤の各成分を、混合機(商品名:あわとり練太郎、シンキ−社製)を用いて2000rpmで3分間混合した。これを、密閉状態で加熱、冷却、撹拌、及び減圧が可能な装置を備えた反応釜に空気中の水分が混入しないように投入した。該反応釜中、60℃の温度で、10mmHg以下の圧力下で2時間かけて脱水し、B剤を調製した。このB剤と、ポリイソシアネート及びリン酸エステル系難燃剤を含有するA剤(ポリイソシアネートの含有量は、NCO/OH比が1.0になるように調整されている)とを、混合機を用いて2000rpmで1分間混合し、脱泡した。得られた混合物を、ポリウレタン樹脂組成物として以下の「(3)試験片の作製」に用いた。
【0100】
【表1】
【0101】
(3)試験片の作製
125×13×1.5mmの成型用型Aに調製したポリウレタン樹脂組成物を注入し、60℃で16時間加熱した後、室温で1日放置して硬化させて、試験片Aを得た。さらに、成型用型Aに代えて内径30mm、高さ10mmの成形用型Bを用いる以外は試験片Aの作製方法と同様の方法で、試験片Bを得た。試験片A及びBを用いて、以下に示す方法で初期難燃性、加熱後難燃性及び耐加水分解性を評価した。
【0102】
(4)難燃性(初期)の評価
試験片Aを用いて難燃性試験を行った。難燃性試験は、米国のUnderwriters Laboratories,Inc.により制定された燃焼試験規格(UL94)に基づいて行った。難燃性試験で得られたグレードに基づいて下記評価基準に従って難燃性を評価した。結果を表1に示す。
○:難燃性試験で得られたグレードがV−0
△:難燃性試験で得られたグレードがV−2
×:難燃性試験で得られたグレードがHB
【0103】
(5)難燃性(加熱後)の評価
試験片Aを加熱した後、上記燃焼試験規格(UL94)に基づいて難燃性試験を行った。なお、加熱は、100℃の温度条件下で1週間放置することにより行った。難燃性試験で得られたグレードに基づいて下記評価基準に従って難燃性を評価した。結果を表1に示す。
○:難燃性試験で得られたグレードがV−0(加熱前)→V−0(加熱後)
○:難燃性試験で得られたグレードがV−2(加熱前)→V−0(加熱後)
△:難燃性試験で得られたグレードがV−2(加熱前)→V−2(加熱後)
×:難燃性試験で得られたグレードがV−0(加熱前)→V−2(加熱後)
【0104】
(6)耐加水分解性の評価
沸騰した水中に試験片Bを100時間放置して耐加水分解性試験を行った。試験前と試験後の試験片Bの硬度をJIS K6253に準拠した測定方法により測定し、下記式に従って硬度変化率を算出した。
<式>[硬度変化率]={[(試験前硬度)−(試験後硬度)]÷(試験前硬度)}×100
算出された硬度変化率に基づいて下記評価基準に従って耐加水分解性を評価した。結果を表1に示す。
○:硬度変化率が50%未満である
△:硬度変化率が50〜75%である
×:硬度変化率が75%を超える
【課題】高温放置後の難燃性の低下が抑制された(或いは高温放置後でも高い難燃性を維持できる)、すなわち難燃性の耐熱安定性に優れるポリウレタン樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】ヒマシ油(a1)と植物油(a2)との重合油(A1)を含有するポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)、及びリン酸エステル系難燃剤(C)を含有する、ポリウレタン樹脂組成物。